特許第6382969号(P6382969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム アンド ハース カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許6382969-メタクロレインを分離するための方法 図000002
  • 特許6382969-メタクロレインを分離するための方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382969
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】メタクロレインを分離するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/80 20060101AFI20180820BHJP
   C07C 45/82 20060101ALI20180820BHJP
   C07C 45/75 20060101ALI20180820BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20180820BHJP
   C07C 67/39 20060101ALI20180820BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   C07C45/80
   C07C45/82
   C07C45/75
   C07C47/22 K
   C07C67/39
   C07C69/54 Z
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-525086(P2016-525086)
(86)(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公表番号】特表2016-538259(P2016-538259A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】US2014056268
(87)【国際公開番号】WO2015065610
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年8月28日
(31)【優先権主張番号】61/896,378
(32)【優先日】2013年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー・ウィリアム・ホイ・フォース
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリ・エイ・クラプトシェトワ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エイ・シルヴァーノ
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公告第00825021(GB,A)
【文献】 特開昭58−188831(JP,A)
【文献】 特公昭58−023409(JP,B1)
【文献】 特開昭59−087002(JP,A)
【文献】 特開昭62−103035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07C
B01D 1/00 − 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水、及びメタクロレイン含むが、ただし、少なくとも8重量%の水を含むことを条件とする第1の流を相分離器に提供することと、
(b)前記第1の流を、主にメタクロレインを含む有機相と主に水を含む水相に分相させることと、
(c)脱水塔内で前記有機相を蒸留して、主にメタクロレインを含む生成物流を生成することと、を含
前記生成物流は、前記脱水塔の横抜き流または塔底流として回収される、方法。
【請求項2】
前記第1の流は、さらにメタノールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の流は、主に液体流であり、少なくとも10重量%の水を含む、請求項1または2に記載の法。
【請求項4】
前記生成物流は、前記生成物流の重量に基づき、2重量%未満の水を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の法。
【請求項5】
前記生成物流は、前記生成物流の重量に基づき、1重量%未満の水を含む、請求項1〜のいずれかに記載の法。
【請求項6】
前記生成物流は、前記生成物流の重量に基づき、0.5重量%未満の水を含む、請求項1〜のいずれかに記載の法。
【請求項7】
塔頂流は、前記脱水塔から取り出され、前記方法は、(d)前記脱水塔の塔頂流の少なくとも一部を相分離器に送ることをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の法。
【請求項8】
前記生成物流は、前記脱水塔の塔底流として回収される、請求項1〜7のいずれかに記載の法。
【請求項9】
(a)水、及びメタクロレインを含むが、ただし、少なくとも8重量%の水を含むことを条件とする第1の流を相分離器に提供することと、
(b)前記第1の流を、主にメタクロレインを含む有機相と主に水を含む水相に分相させることと、
(c)脱水塔内で前記有機相を蒸留して、主にメタクロレインを含む生成物流を生成することと、を含み
前記脱水塔は、ストリッパとして動作する、法。
【請求項10】
前記第1の流は、さらにメタノールを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
MMAを生成するのに十分な反応条件において、触媒の存在下で、メタクロレインをメタノール及び酸素含有ガスと接触させることを含む方法に、前記生成物流を供することをさらに含む、請求項1〜10のいずれかに記載の法。
【請求項12】
前記第1の流は、プロピオンアルデヒドをメタクロレインに変換することによって調製される、請求項1〜11のいずれかに記載の法。
【請求項13】
前記プロピオンアルデヒドは、前記プロピオンアルデヒドを生成するのに十分な反応条件において、ヒドロホルミル化触媒の存在下で、エチレンをCO及びHと接触させることによって、少なくとも部分的に生成される、請求項12に記載の法。
【請求項14】
(e)第2の蒸留塔内で前記相分離器からの前記水相を蒸留して、(1)主に水を含む第2の蒸留塔の塔底流及び(2)第2の蒸留塔の塔頂流を生成することと、
(f)前記第2の蒸留塔の塔頂流の少なくとも一部を相分離器に送ることと、をさらに含む、請求項7に記載の法。
【請求項15】
MMAの調製のための方法であって、
(1)プロピオンアルデヒドを生成するのに十分な反応条件において、ヒドロホルミル化触媒の存在下で、エチレンをCO及びHと接触させることと、
(2)触媒の存在下で、前記プロピオンアルデヒドの少なくとも一部分をホルムアルデヒドと接触させて、メタクロレインを生成することであって、前記メタクロレインは、水、及びメタクロレイン含むが、ただし、少なくとも10重量%の水を含むことを条件とする第1の流中に存在する、メタクロレインを生成することと、
(3)前記第1の流の少なくとも一部分を相分離器に提供することと、
(4)前記第1の流の少なくとも一部分を、前記相分離器内で、主にメタクロレインを含む有機相と主に水を含む水相に分相させることと、
(5)脱水塔内で前記有機相の少なくとも一部分を蒸留して、主にメタクロレインを含む生成物流あって、重量%未満の水を含前記脱水塔の横抜き流または塔底流として回収される生成物流を生成することと、
(6)MMAを生成するのに十分な反応条件において、酸化エステル化触媒の存在下で、前記メタクロレインをメタノール及び酸素含有ガスと接触させることを含む方法に、前記生成物流の少なくとも一部分を供することと、を含む、前記方法。
【請求項16】
前記第1の流は、さらにメタノールを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記生成物流は、前記生成物流の重量に基づき、0.5重量%未満の水を含む、請求項15または16に記載の法。
【請求項18】
前記有機相は、前記脱水塔の上半分に給される、請求項15〜17のいずれかに記載の法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、乾燥メタクロレインを調製するための方法、及びメチルメタクリレートを作製するための方法に関する。
【0002】
メタクロレイン(MA)は、メチルメタクリレート(MMA)生成において一般的な中間体である。MAは、米国第4,496,770号に開示される液相プロピオンアルデヒド凝縮などによる、より豊富に存在するエチレン(C)原料から、または米国第5,969,578号に開示される蒸気相C酸化などによる、あまり豊富に存在しないイソブチレンもしくはtert−ブタノール(C)原料から生成され得る。メタクロレイン生成物流は、Cベース及びCベースのメタクロレイン生成方法のために相当量の水を含む。しかしながら、水は、単一ステップでメタクロレインをメチルメタクリレートに変換し、それ故に他の既知の方法の中間体メタクリル酸(MAA)生成ステップを有利に回避する、米国第5,969,178号、米国第6,107,515号、及び米国第6,040,472号に開示されるような後続の酸化エステル化プロセスに有害である。したがって、従来のプロセスからのMA流が下流の酸化エステル化プロセス用の供給流として使用される場合、それは有利に、最初に脱水される。
【0003】
米国第5,969,578号は、C酸化プロセスによって生成されるガス状メタクロレイン含有生成物流を脱水するための方法を記載する。ガス流中に含まれる水が分縮によって除去される一方で、メタノール及びメタクロレイン成分は、ガス状のまま残される。次いで、ガス状メタクロレイン含有混合物は、非常に乾燥した冷却されたメタノール含有流と接触して、メタクロレインを吸収する。結果として得られる吸収体底部の生成物混合物は、メタノール中25〜69%のメタクロレイン及び<1%の水を含有する。この混合物は、下流の酸化エステル化反応器に供給するのに十分乾燥している。しかしながら、このスキームは、いくつかの不利点に悩まされる。例えば、それは、複数の塔を通して大量の非凝縮物を運び、それ故に不利に大きい機器を必要とし、複数の上流装置と下流装置との間に大きい吸収剤再循環流を含む可能性があり、純メタノールまたは非常に乾燥したメタノール含有吸収剤流を必要とし、比較的希釈なメタクロレインを生成し、複数の装置間のその重再循環統合によるプロセス不調に敏感であり得る。さらに、そのようなスキームがC酸化プロセスから得られる希釈なガス状メタクロレイン流に適応し得る一方で、それは、米国第4,496,770号に記載されるプロピオンアルデヒド−ホルムアルデヒド凝縮プロセスなどのCベースのプロセスにおいて生成される高度に水性のメタクロレイン流には実用的ではない。実際に、米国第5,969,578号は、メタクロレイン生成のために接触溶媒として水を使用する方法の使用を抑制しており、水及びメタクロレインの共凝縮を完全に回避するのにかなりの努力をしている。
【0004】
酸化プロセスのガス状メタクロレイン含有生成物を処理する別の方法は、米国第3,597,880号に記載されており、それは、ガス状メタクロレイン含有混合物がメタノールと接触して、メタクロレイン及び水を吸収する方法を開示する。結果として得られる液体混合物は、メタノール、メタクロレイン、及び適度な量、例えば、実施例1に示される5.8%の水を含有する。次いで、液体混合物は、水を用いた抽出蒸留に供され、抽出蒸留ゾーンの吸収セクションにおける液相中の水の濃度は、50〜90モル%の濃度に制御される。上記の水の濃度は、メタクロレイン−メタノール共沸混合物の形成を回避するために、かつ上流の吸収ステップで使用するために再循環される過剰なメタノールからのメタクロレインの分離を可能にするために目標とされる。したがって、メタクロレインが塔頂蒸留物として回収される一方で、抽出蒸留塔の塔底液体は、水からメタノールを分離するためにさらに蒸留される。約7%の水を含有する水及びメタクロレインの共沸混合物(米国第5,969,578号に従って、共沸点63.6℃、メタクロレイン/水の重量比100/7.9)である、抽出蒸留塔の塔頂蒸留物流は、主にメタクロレイン、及び液液平衡によって決定されるレベルの水、約3%の水を含有する有機液相を得るために分相される。水性液相は、主に水、及び液液平衡によって決定されるレベルのメタクロレイン、すなわち、約6%のメタクロレインを含有する。しかしながら、この方法は、メタクロレイン生成物をさらに乾燥させることに関与せず、それ故に約3%の水を含有するメタクロレインを生成する。この特許は、メタクロレイン生成物がさらなる蒸留などによってさらに精製され得ると述べている。その方法は、ガス状C酸化生成物流からメタクロレインを捕捉することを目的とし、関連した吸収体底部は、主にメタノール、メタクロレイン、及びわずかな量の水、例えば、実施例1に示される5.8%の水を含む。この方法は、C原料と共に使用される、米国第4,496,770号に記載されるようなプロピオンアルデヒド凝縮プロセスの高度に水性の、例えば、65%水の液体メタクロレイン生成物流には実用的ではない。
【0005】
米国第2,514,966号及び米国第2,514,967号は、アクロレイン(または他の不飽和アルデヒド)及び蒸気を含有するガスが水中に吸収される方法を開示する。この方法は、約2重量%のアクロレインを含有する水溶液を形成するために、高圧下で、大量の水を用いてアクロレイン含有ガス状混合物を洗浄し、次いで、水性アクロレイン溶液をストリッピング、精留、及び抽出蒸留に供して、アクロレインを回収することによって実施される。そのような方法は、水中でのアクロレインの本質的に低い可溶性により、ガス状反応混合物からアクロレインを吸収するために非常に大量の水が高圧下で使用されなければならないという点で不利である(米国第3,957,880号に従って、20℃で21.4重量%)。この問題は、メタクロレインが水中でさらに可溶性が低いため(25℃で6.1重量%)、この方法がメタクロレインに適用される場合に悪化し得る。この方法の別の不利点は、アクロレイン分離ステップにおいて、抽出蒸留が、溶媒として非常に大量の水を使用して、35℃未満の温度で実施されるという点である。不均一抽出蒸留ゾーンを回避するために大量の水が必要とされ、さもなければ実現されないアクロレイン分離に好ましい相対揮発度体制を達成するために低温が必要とされる。そのような動作条件は、50mmHg程度に低い圧力を必要とする。アクロレイン分離の光熱費は、大量の水が使用されるため、高くなる。アクロレイン分離方法の資本費用も、高い水流量を処理するのに必要とされる塔の直径が大きいため、高くなる。これらの費用は、水中のメタクロレインの低い可溶性により、さらに多くの水(メタクロレインを含有する混合物の少なくとも94重量%)が不均一抽出蒸留ゾーンを回避するために必要とされるため、この抽出蒸留方法がメタクロレインに適用される場合、さらに悪化し得る。実行されたとしても、そのようなスキームは、生成物メタクロレイン中で共沸混合物のような水レベルを得るために、MA:水共沸混合物によって制限され得る。具体的には、メタクロレインは、メタクロレイン及び水の共沸混合物の形態で回収され得る[米国第5,969,578号に従って、共沸点63.6℃及び100:7.9]。したがって、米国第2,514,966号及び米国第2,514,967号は、不均一抽出蒸留構成を回避する重要性を教示し、それ故に高レベルの水を提言する。
【0006】
がより豊富に存在する原料であり、かつ世界中の多くの地域で経済的利点を提供するという事実にもかかわらず、プロピオンアルデヒド凝縮などのCベースのプロセスにおいて遭遇する高度に水性のメタクロレイン流を脱水するのに望ましい方法は記載されていない。Cベースの従来技術の欠陥、及び高度に水性のC由来の液体メタクロレイン流を効率的に脱水するための好適な方法の欠如を考慮して、C由来の液体メタクロレイン流のための改良された脱水方法を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、(a)水、メタクロレイン、及び任意にメタノールを含む第1の流を相分離器に提供することであって、ただし、第1の流は、少なくとも8重量%の水を含む、第1の流を相分離器に提供することと、(b)第1の流を、主にメタクロレインを含む有機相と主に水を含む水相に分相させることと、(c)脱水塔内で有機相を蒸留して、主にメタクロレインを含む生成物流を生成することと、を含む、方法である。
【0008】
本発明の方法は、驚くべきことに、2重量%未満の水を有する濃縮された(>90%)メタクロレイン流を生成し、従来技術の多くの不利点を回避する。
【0009】
一態様では、本発明は、エチレンからのMMAの生成のための方法であって、該方法は、
(1)プロピオンアルデヒドを生成するのに十分な反応条件において、ヒドロホルミル化触媒の存在下で、エチレンをCO及びHと接触させることと、
(2)触媒の存在下で、プロピオンアルデヒドの少なくとも一部分をホルムアルデヒドと接触させて、メタクロレインを生成することであって、メタクロレインは、水、メタクロレイン、及び任意にメタノールを含むが、ただし、少なくとも10重量%の水を含むことを条件とする第1の流中に存在する、生成することと、
(3)第1の流の少なくとも一部分を相分離器に提供することと、
(4)第1の流の少なくとも一部分を、相分離器内で、主にメタクロレインを含む有機相と主に水を含む水相に分相させることと、
(5)脱水塔内で有機相の少なくとも一部分を蒸留して、主にメタクロレインを含む生成物流を生成することであって、生成物流は、2重量%未満の水を含む、生成することと、
(6)MMAを生成するのに十分な反応条件において、酸化エステル化触媒の存在下で、メタクロレインをメタノール及び酸素含有ガスと接触させることを含む方法に、生成物流の少なくとも一部分を供することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の概略図である。
図2】本発明の別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上」は、同じ意味で使われる。「備える」、「含む」、及びそれらの変形の用語は、これらの用語が現れる明細書及び請求項において、限定的意味を有さない。それ故、例えば、「1つの」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、「1つ以上」の疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物を意味すると解釈され得る。
【0012】
また、本明細書で、終了点による数値範囲の列挙は、その範囲に包含されるすべての数字を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。本発明の目的上、当業者が理解しているであろうことと一貫する数値範囲は、その範囲に含まれるすべての考えられる副範囲を含み裏付けることを意図することが理解される。例えば、1〜100の範囲は、1.01〜100、1〜99.99、1.01〜99.99、40〜60、1〜55等を伝えることを意図する。
【0013】
また、本明細書で、請求項のそのような列挙を含む数値範囲及び/または数値の列挙は、「約」という用語を含むと読むことができる。そのような場合、「約」という用語は、本明細書に列挙されるこれらと実質上同一である数値範囲及び/または数値を示す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「(メタ)」という用語とそれに続くアクリレート等の別の用語の使用は、アクリレート及びメタクリレートの両方を示す。例えば、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかを示し、「(メタ)アクリル」という用語はアクリルまたはメタクリルのいずれかを示し、及び「(メタ)アクリル酸」という用語はアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかを示す。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「wppm」の使用は、重量による100万分の1を意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「塔の頂部に供給される」の使用は、例えば、パッキンまたはトレイを備え得る、塔内部の最高点にある点またはそれ以上の点において、関連流が関連塔に供給されることを意味する。
【0017】
それに反して述べるまたは文脈から含意されない限り、すべての割合及びパーセントは重量を基にし、すべての試験方法は、本出願の出願日付けで最新である。米国特許実務の目的上、参照される特許、特許出願、または公開の内容は特に、定義の開示(本開示に具体的に提供されるあらゆる定義に反しない程度において)及び当該分野の一般知識に関し、その全体が参照により組み込まれる(またはその同等の米国版が、参照によりそのように組み込まれる)。
【0018】
本発明の方法は、湿潤MA供給流を用いる。供給流は、MA及び水を含み、上流のプロセスからの残留触媒など、他の材料を含んでもよい。本発明の一実施形態では、供給流は、流の重量に基づき、少なくとも10重量%の水を含み、他の実施形態では、供給流は、少なくとも20または少なくとも40重量%の水を含む。
【0019】
湿潤メタクロレイン源は、特に重要ではない。本発明の方法は、好ましくは、米国第4,496,770号の方法によってプロピオンアルデヒドから生成されるものなど、高度に水性のCベースのメタクロレイン流と共に用いられる。しかしながら、本発明の方法は、米国第5,969,178号の方法によって生成されるものなど、希釈なガス状Cベースのメタクロレイン流を凝縮後に脱水するために使用され得る。
【0020】
本発明の一実施形態は、図1に示される。湿潤MA供給流10は、デカンタ100に供給され、そこで供給流10は、水性及び有機相中に分離される。有機相は、凝縮器201及び再沸器202を装備したMA脱水塔200への供給流20として使用される。塔200において、流20は、凝縮器201中で凝縮される軽質成分を除去するために蒸留またはストリッピングされる。塔200の動作に有利である場合、凝縮された流の一部分31は、塔200に還流され得る。凝縮された塔頂流30は、必要に応じて、プロセス再循環スキームに組み込まれ得る。例えば、流30の少なくとも一部分32が、デカンタ100に再循環され得る一方で、流30の別の部分31は、塔200への還流として使用され得る。しかしながら、例えば、塔200がストリッパとして動作する場合のように、還流として流30のいずれかを使用する必要はない。別の実施例では、流30は、別個のデカンタ(図示せず)に供給され得、その有機生成物は、塔200に供給され得(流20を介して、あるいは還流を介して)、その水性生成物は、さらなる処理のために流50と組み合わされ得る。塔200の塔底流は、少量の水を有するMAを含む最終MA生成物流40として回収される。MA生成物流40は、直接あるいはさらなる処理後に、全体的または部分的に、他の工業化学プロセスへの供給物として使用され得る。例えば、MA生成物流40は、MMAを生成するための酸化エステル化プロセスへの供給物として使用され得る。デカンタ100からの水相は、ライン50を介して除去される。
【0021】
本発明の別の実施形態は、図2に示され、それは図1の方法を踏まえる。デカンタ100からの水相は、ライン50を介して、凝縮器301及び再沸器302を装備した水パージ塔300に送られる。塔300からの塔頂流は、凝縮された塔頂流80を生成するために凝縮器301中で凝縮され、その少なくとも一部分82は、デカンタ100に再循環される。塔300の動作に有利な場合、凝縮された流80の一部分81は、塔300に還流され得る。水パージ流60は、塔300から横抜き流として取り出される。塔底流70は、触媒などの材料を流10の源である反応ステップに送り戻すために、直接あるいはさらなる検査後に、再循環流として使用され得る。本発明の一実施形態では、パージ流60は用いられず、塔底流70が、過剰な水を除去するために別々に蒸留される。
【0022】
本発明の別の実施形態は、塔200及び300が、凝縮器201及び301のそれぞれを出る液体凝縮物流によって供給される、相分離装置、例えば、デカンタ203及び303(図示せず)も装備していることを除いて、図2に示されるものと同様である。本実施形態では、分離装置203の有機相の一部分は、塔200に還流され、別の部分は、MA生成物として流40と組み合わされる。装置203からの水相は、相分離装置303に送られる。装置303に関して、その有機相は、直接あるいは流20を介して塔200に送られ、その水相は、塔300に還流される。
【0023】
したがって、主にMAを含む生成物流を生成するための方法に対して、上記のステップ(a)〜(c)後に以下の方法ステップを追加することが可能である。
(d)脱水塔からの塔頂流の少なくとも一部を相分離器に提供するステップ、
(e)例えば、上記の塔300であり得る第2の蒸留塔内で、相分離器からの水相を蒸留して、(1)主に水を含む第2の蒸留塔の塔底流及び(2)第2の蒸留塔の塔頂流を生成するステップ、ならびに
(f)第2の蒸留塔の塔頂流の少なくとも一部を相分離器に送るステップ。
【0024】
MA脱水塔は有利に、所望の量の水を有するMA生成物流を生成するのに十分な条件下で動作する。本発明の一実施形態では、塔底部における温度は、65〜90℃である。当業者に既知のように、塔内の圧力は、用いられる温度及び蒸留される材料の組成の関数である。
【0025】
水パージ塔は有利に、水相からMAを回収し、プロセスから反応水及び望ましくない有機化合物を除去するのに十分な条件下で動作する。本発明の一実施形態では、水パージ塔の底部における温度は、80〜110℃である。当業者に既知のように、水パージ塔内の圧力は、用いられる温度及び蒸留される材料の組成の関数である。
【0026】
本発明の方法は有利に、メタクロレイン脱水を達成するためにメタノールを必要とせず、メタクロレイン脱水のための単一の蒸留塔を使用し、下流の装置からの再循環は除外されないが、下流のプロセス装置からの再循環を必要としない。結果として、本発明の脱水方法は、従来技術の脱水方法と比較して、より自己完結型であり、かつ周囲のプロセス装置における動作不調に対して頑強である、本質的に単純な方法である。
【0027】
本方法は、当業者によく知られているように、任意の好適な構成材料から調製される任意の好適な機器を用い得る。例えば、本塔は、パッキン、トレイ、または両方の組み合わせを使用し得る。
【0028】
MA生成物流は有利に、最終MA生成物流の重量に基づき、2重量%未満の水、好ましくは1重量%未満の水、及びより好ましくは0.5重量%未満の水を含む。
【0029】
本発明の一実施形態では、生成物MA流は、触媒の存在下におけるメタノール及び酸素含有ガスとMAの反応を介して、MAがMMAに変換される、酸化エステル化プロセスへの供給流として使用される。酸化エステル化プロセスはよく知られている。例えば、米国特許第5,969,178号、米国第6,107,515号、同第6,040,472号、同第5,892,102号、同第4,249,019号、同第4,518,796号を参照されたい。さらに、同時係属の米国特許出願第61/859,526号、同第61/859,539号、同第61/859,544号、及び同第61/859,551号は、酸化エステル化及びそのための触媒を考察する。
【0030】
当業者に既知のように、MA酸化エステル化反応において用いられるメタクロレインの量に対する用いられるメタノールのモル比は特に制限されず、反応は、1:10〜1,000:1、好ましくは1:1〜10:1のメタノール:メタクロレインなどの幅広いモル比にわたって実施されてもよい。
【0031】
酸化エステル化のための酸素含有ガスは、酸素ガス、あるいは酸素ガス及び例えば、窒素、二酸化炭素などの反応に対して不活性の希釈剤を含む混合ガスであってもよい。空気は、酸素含有ガスとして使用し得る。反応系に有利に存在し得る酸素の量は、反応に必要な理論量以上で、好適には理論量の1.2倍以上である。過酸化水素が、酸化剤として反応系に導入されてもよい。
【0032】
MA酸化エステル化のために使用され得る触媒は、当業者によく知られており、2つ以上の金属の組み合わせを含有する、パラジウム系、金系、及び他の金属間化合物を含む。触媒元素は典型的に、それらが互いと何らかの相互作用を有することができる形態で、反応系中に存在する。上記に列挙される酸化エステル化特許は、好適な酸化エステル化触媒のいくつかの実施例を示す。
【0033】
触媒元素は、シリカまたはアルミナなどの担体上で支持されてもよく、担体上で支持される触媒成分の量は有利に、担体の重量に基づき、0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であってもよい。好適な担体の例としては、シリカ、α−アルミナ、及びγ−アルミナが挙げられる。担体は、当業者に既知のように修飾され得る。例えば、シリカ担体は、アルミナ及び/またはマグネシアで修飾されてもよい。担体の組み合わせが用いられてもよい。触媒成分はまた、担体上でそれらを支持することなく、金属形態で、または化合物の形態で使用されてもよい。
【0034】
酸化エステル化触媒は、触媒量で用いられる。触媒量、すなわち、触媒元素及び任意選択の担体の量は、出発物質の種類及び量、触媒の調製方法、方法の操作条件等により、自由に変更され得るが、触媒:出発MAの重量比は、一般に1:1000〜20:1である。有利に、触媒:MAの重量比は、1:100〜2:1である。しかしながら、触媒は、この範囲外の量で使用されてもよい。
【0035】
酸化エステル化反応は、0℃〜120℃、好ましくは40℃〜90℃の温度で実施されてもよい。反応は減圧、大気圧、または過圧下で実施され得るが、周囲圧力で反応系中に酸素含有ガスを吹き込む非常に単純な方法によって、所望の生成物を生成することが可能である。反応は、バッチ式、セミバッチ式、または連続的な方法で実施されてもよい。有利に、反応は液相において行われる。
【0036】
重合抑制剤は、生成物及び/または反応物が1つ以上の重合可能な化合物を含む方法で用いられ得る。幅広い種類の抑制剤が既知であり、市販されている。
【0037】
本発明の一実施形態では、水、メタクロレイン、及び任意にメタノールを含む第1の流は、プロピオンアルデヒドをMAに変換するプロセスから得られる。液相中のアミンまたはアミン酸触媒の存在下で、ホルムアルデヒドを用いたマンニッヒ縮合を介して、プロピオンアルデヒドをMAに変換するためのプロセスは、当業者によく知られている。例えば、米国特許第4,496,770号及び同第7,141,702号を参照されたい。例えば、メタクロレインへのプロピオンアルデヒド及びホルムアルデヒドのマンニッヒ縮合は、第2級アミン、例えば、ジメチルアミンの存在下で、かつ酸、例えば、酢酸の存在下または非存在下で実施され得る。反応は、反応が進行する任意の好適な条件下で実施され得る。例えば、反応は、少なくとも20℃の温度及び少なくとも大気圧で実施され得る。本発明の一実施形態では、反応は、150℃超、例えば、160〜210℃で、かつ過圧、例えば、40〜80バールで、液相中で実施される。プロピオンアルデヒド:ホルムアルデヒドのモル比は特に制限されないが、有利に、約1:1で維持され得る。反応滞留時間は、好ましくは、25分以下であり、より好ましくは、0.05〜0.3分、例えば、9秒である。アミン:酸のモル比は、好ましくは、結果として得られるpHが2.5〜7であるようなモル比である。
【0038】
本発明の一実施形態では、MAを調製するための原料として使用されるプロピオンアルデヒドは、エチレンのヒドロホルミル化によって調製される。ヒドロホルミル化プロセスは、よく知られている。例えば、米国特許第4,247,486号、同第5,087,763号、同第4,716,250号、同第4,731,486号、及び同第5,288,918号を参照されたい。それは、対応するアルデヒド(複数可)を生成するのに十分な反応条件において、ヒドロホルミル化触媒の存在下で、オレフィンをCO及び水素と接触させることを伴う。エチレンの場合、対応するアルデヒドは、プロピオンアルデヒドである。
【0039】
ヒドロホルミル化触媒は、よく知られており、任意の好適なそのような触媒が用いられ得る。ヒドロホルミル化触媒は有利に、金属有機リンリガンド錯体を含む。好適な有機リンリガンドとしては、有機ホスフィン、有機ホスファイト、及び有機ホスホラミダイトが挙げられる。有機ホスフィンは、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス−p−トリルホスフィン、トリス−p−メトキシフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルジフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィンなどのトリ有機ホスフィン、ならびに例えば、(トリ−m−スルホフェニル)ホスフィン及び(m−スルホフェニル)ジフェニルホスフィンの塩などのスルホン化トリフェニルホスフィンのアルカリ及びアルカリ土類金属塩などであってもよい。リガンドとして機能し得る有機ホスファイトとしては、モノ有機ホスファイト、ジ有機ホスファイト、及びトリ有機ホスファイトが挙げられ、それらの使用及び調製は、当該技術においてよく知られている。例示的な有機ホスホラミダイトの例は、欧州特許第2 740 535号において見られる。
【0040】
ヒドロホルミル化プロセスの反応条件もまた、よく知られており、アルデヒドを生成するために用いられる任意の好適なヒドロホルミル化条件を含み得る。ヒドロホルミル化プロセスの水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物の総ガス圧は、1〜69,000kPaに及んでもよい。しかしながら、概して、そのプロセスは、14,000kPa未満、及びより好ましくは3,400kPa未満の水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物の総ガス圧で動作することが好ましい。最小総圧力は、所望の反応速度を得るために必要な反応物の量によって主に制限される。より具体的には、ヒドロホルミル化プロセスの一酸化炭素分圧が、好ましくは1〜6,900kPa、及びより好ましくは21〜5,500kPaである一方で、水素分圧は、好ましくは34〜3,400kPa、及びより好ましくは69〜2,100kPaである。概して、ガス状H:COのモル比は、1:10〜100:1またはそれ以上に及んでもよく、より好ましいモル比は、1:10〜10:1である。
【0041】
概して、ヒドロホルミル化プロセスは、任意の動作可能な反応温度で実施され得る。有意に、ヒドロホルミル化プロセスは、−25℃〜200℃、好ましくは50℃〜120℃の反応温度で実施される。
【0042】
一態様では、本発明は、エチレンからのMMAの生成のための方法であって、該方法は、
(1)プロピオンアルデヒドを生成するのに十分な反応条件において、ヒドロホルミル化触媒の存在下で、エチレンをCO及びHと接触させることと、
(2)触媒の存在下で、プロピオンアルデヒドの少なくとも一部分をホルムアルデヒドと接触させて、メタクロレインを生成することであって、メタクロレインは、水、メタクロレイン、及び任意にメタノールを含むが、ただし、少なくとも10重量%の水を含むことを条件とする第1の流中に存在する、生成することと、
(3)第1の流の少なくとも一部分を相分離器に提供することと、
(4)第1の流の少なくとも一部分を、相分離器内で、主にメタクロレインを含む有機相と主に水を含む水相に分相させることと、
(5)脱水塔内で有機相の少なくとも一部分を蒸留して、主にメタクロレインを含む生成物流を生成することであって、生成物流は、2重量%未満の水を含む、生成することと、
(6)MMAを生成するのに十分な反応条件において、酸化エステル化触媒の存在下で、メタクロレインをメタノール及び酸素含有ガスと接触させることを含む方法に、生成物流の少なくとも一部分を供することと、を含む。
【0043】
本発明の目的で、上記の方法ステップのそれぞれにおいて、関係するプロセス装置の動作が、100%ではない効率性を有し得、所望の生成物への出発物質の完全ではない変換を伴い得、例えば、当業者によって予測され得るように、いくつかの副生成物が生成され得るか、または分離ステップがその供給流の成分の完全ではない分離を提供し得ることを理解されたい。
【0044】
本発明の特定の実施形態
下記の実施例は、本発明を例示説明するために挙げられており、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0045】
実施例1
31.2%のメタクロレイン、61.2%の水、4.1%のメタノール、0.9%のジメチルアミン、1.3%の酢酸、600wppmのヒドロキノン、及び600wppmのフェノチアジンを含む液体メタクロレイン反応器排水を、液体−液体デカンタ内に671g/時間で供給する。デカンタの温度及び圧力は、それぞれ、5℃及び1atmである。供給物は、デカンタ内の2つの相に分離し、有機相:水相の質量比は、約1:2.5である。94.8%のメタクロレイン、2.8%の水、及び0.9%のメタノールを含むデカンタからの有機相排水を蓄積する。
【0046】
デカンタからの蓄積された有機相排水を、760g/時間の速度でメタクロレイン脱水塔に供給する。脱水塔は、強制循環再沸器及び塔頂冷水冷却凝縮器を装備した、ガラス製の、20トレイ、33mmのOldershaw塔である。デカンタからの有機相排水を頂部トレイにおいて脱水塔に供給し、還流を塔に戻さず、したがって、脱水塔をストリッパとして動作させる。デカンタからの同じ有機相排水中に溶解された2%ヒドロキノン及び2%フェノチアジンからなる抑制剤を、6.5g/時間の速度で塔頂凝縮器にポンプ注入する。塔を、7.7psigの凝縮器圧力及び約80℃の底部温度で、4時間の期間にわたって連続して動作させる。底部生成物は、約98%のメタクロレイン、0.5%のメタノール、及び0.2%の水を含む。底部生成物:塔供給物の重量比は、0.66:1である。
【0047】
デカンタの水相排水を後続の処理のために蓄積する。
【0048】
本実施例は、本発明の方法が、大量の水を有するメタクロレイン流を乾燥させ、高いメタクロレイン濃度及び低い水濃度を有する生成物流を生成するのに有効であることを実証する。驚くべきことに、メタクロレイン生成物流中の水濃度は、従来技術の種々の方法によって達成されたものよりもはるかに低い。
図1
図2