【実施例】
【0056】
実施例1:ペプチドの合成
配列番号1のペプチド(以下「PEP 1」とする)を従来に知られた固相ペプチド合成法(SPPS)によって製造した。具体的には、ペプチドは、ASP48S(Peptron、Inc.,大韓民国・大田)を利用して、Fmoc固相合成法を介して、C末端からアミノ酸一つずつカップリングすることによって合成した。次のように、ペプチドのC末端の最初のアミノ酸が樹脂に付着されたものを使用した。例えば、次の通りである:
NH
2−Lys(Boc)−2−クロロ−トリチルレジン
NH
2−Ala−2−クロロ−トリチルレジン
NH
2−Arg(Pbf)−2−クロロ−トリチルレジン
【0057】
ペプチド合成に使用した全てのアミノ酸原料は、N−termがFmocで保護され、残基はいずれも酸で除去される、Trt、Boc、t−Bu(t−ブチルエステル)、Pbf(2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニル)などで保護されたものを使用した。例えば、次の通りである:
Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Glu(OtBu)−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Ile−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、Fmoc−Thr(tBu)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Gln(Trt)−OH、Fmoc−Trp(Boc)−OH、Fmoc−Met−OH、Fmoc−Asn(Trt)−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Ahx−OH、Trt−メルカプト酢酸。
【0058】
カップリング試薬としては、HBTU[2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート]/HOBt[N−ヒドロキシベンゾトリアゾール]/NMM[4−メチルモルホリン]を使用した。Fmoc除去は、20%のDMF中のピペリジンを利用した。合成されたペプチドをレジンから分離し、残基の保護基除去には、切断カクテル[TFA(トリフルオロ酢酸)/TIS(トリイソプロピルシラン)/EDT(エタンジチオール)/H
2O=92.5/2.5/2.5/2.5]を使用した。
【0059】
アミノ酸保護基が結合された出発アミノ酸が固相支持体に結合されている状態を利用して、ここに当該アミノ酸をそれぞれ反応させ、溶媒で洗浄した後、脱保護する過程を反復することにより、各ペプチドを合成した。合成されたペプチドを樹脂から切り取った後、HPLCで精製し、合成いかんをMSで確認して凍結乾燥させた。
【0060】
本実施例に使用されたペプチドに対して、高性能液体クロマトグラフィ結果、全てのペプチドの純度は、95%以上であった。
【0061】
PEP 1製造に係わる具体的な過程について説明すれば、次の通りである。
1)カップリング
NH
2−Lys(Boc)−2−クロロ−トリチルレジンで保護されたアミノ酸(8当量)と、カップリング試薬HBTU(8当量)/HOBt(8当量)/NMM(16当量)とをDMFに溶解させて添加した後、常温で2時間反応させ、DMF、MeOH、DMFの順に洗浄した。
2)Fmoc脱保護
20%のDMF中のピペリジンを加え、常温で5分間2回反応させ、DMF、MeOH、DMFの順に洗浄した。
3)1及び2の反応を反復して行い、ペプチド基本骨格NH
2−E(OtBu)−A−R(Pbf)−P−A−L−L−T(tBu)−S(tBu)−R(Pbf)L−R(Pbf)−F−I−P−K(Boc)−2−クロロ−トリチルレジン)を作った。
4)切断:合成が完了したペプチドレジンに、切断カクテルを加え、ペプチドをレジンから分離した。
5)得られた混合物に、冷ジエチルエーテルを加えた後、遠心分離して得られたペプチドを沈澱させる。
6)Prep−HPLCで精製した後、LC/MSで分子量を確認して凍結させ、パウダーに製造した。
【0062】
実施例2:前立腺肥大症誘発動物実験を通じるPEP1の前立腺肥大症に対する効能確認
1)前立腺肥大症誘発実験動物の準備
アンドロゲンとして、主に体内に作用するホルモンは、テストステロンである。しかし、前立腺の発達に関与するアンドロゲンにおいて最も影響力あるホルモンは、5αジヒドロテストステロン(DHT)であり、テストステロンと5αリダクターゼとが結合しながら生成される。ラットにおいて、スルピリドを30日間40mg/kgの用量で投与すれば、2型ドーパミン受容体を阻害し、体内のプロラクチン濃度を高め、高プロラクチン血症を誘導し、5αリダクターゼを活性化させ、テストステロンと反応し、シナジー(相乗)効果を示す。高プロラクチン血症によって生成されたDHTは、前立腺の背部、腹部、側面、四肢(lobe)のうち、側面四肢に相対的にさらに多くの重量増加を起こすと知られている。その事実に基づいて、次のように、前立腺肥大症誘発動物に対する、実施例1から用意されたPEP1単独、又は試験物質との併用の投与実験が進められた。成熟したSprague−Dawley雄性ラット(6週齢)を、第一実験動物センターから分けてもらい、1週間順化飼育した後(約7週齢、49日齢)で試験に使用した。前立腺肥大症を誘導するために、スルピリド(40mg/kg)を毎日1回30日間経口投与した。全ての実験は、先行研究結果によって行われ(Van Coppenolleら、2001)、試験物質投与は、全ての動物に対して、毎日午前10時に投与を始めた。試験物質投与後、毎日動物の一般状態及び特異症状などを観察した。また、試験物質投与前、全動物の体重を測定した後で記録した。
【0063】
2)試験物質及び投与用量
試験物質であるスルピリドはSigma Chemical Co.(St.Louis,MO、米国)から購入して試験に利用した。本研究陣は、高プロラクチン血症による前立腺肥大を誘導するために、スルピリド40mg/kgを、1日1回60日間連続して腹腔投与した。スルピリドは、0.1N濃度塩酸(HCl)溶液にまず溶解させた後、0.1N濃度水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を使用して、pH7.0で中和させる方法で、毎日試験物質投与前に製造した。併用投与群においては、スルピリドを腹腔投与した後、実施例1によって製造されたPEP1及びフィナステリドをそれぞれ投与した。PEP1(0.01、0.1、1及び10mg/kg)は、毎日の使用時に製造して皮下注射した。フィナステリドは、15%エタノール/トウモロコシ油(v/v)をベヒクル(vehicle)にして毎日製造した。試験物質の投与用量は、0.5ml/kgであって、毎日体重を測定して算出した。下記表2に示されているように、7個の群に対して、PEP1の前立腺肥大症に対する効能を調べるために投与した。
【0064】
【表2】
【0065】
3)前立腺肥大症誘発実験動物に対するPEP1、及び試験物質投与実験後の動物組織の採取、保管及び重さ測定
試験物質を60日間投与した後、24時間で、全ての動物は、エーテルで麻酔した後、腹部大動脈から血液を採取して血清を分離した。分離した血清は、ホルモン分析のために−80℃で保管した。
【0066】
全ての動物に対して、亀頭包皮分離(PPS:prepuce separation)の有無を検査した後、亀頭(Gp:gland penis)、精嚢(SV:seminal vesicles and coagulating glands)、腹側前立腺(VP:ventral prostate)、クーパー腺(CpG:cowper’s glands)及びLABC(levator ani plus bulbocavernosus muscle)などの副生殖腺を順に分離した。それぞれの細部分離過程は、OECDプロトコルによって実施した。
【0067】
亀頭(Gp)の分離は、
図1に図示されているように、ピンセットで亀頭部位を取り、包皮の分離線に沿って切る。また、肺の場合は、
図1に図示されているように、腹部筋肉層から膀胱を分離した後、脂肪層によって覆い包まれた肺の左右葉を露出させながら、膀胱をSVに向けて出した後、微細なピンセットで、肺の左右葉から脂肪を分離し、両手で微細なピンセットで、肺の左側葉を尿道から軽く引き出し、はさみで除去した後、鉗子で肺の右側葉を取り、尿道部から肺の左側葉を露出させて切り捨てる。凝固線を含んだSVの場合は、
図1に図示されているように、筋肉、脂肪層及び腺(gland)を区分するために、精嚢(SV)下に紙タオルを載せる。尿道と連結された輸精管が位置した精嚢(SV)の基底部(base)をクランプで固定し、精嚢を切除する間、液漏出を防止する。その後、脂肪を除去した後、関連付属器官を整理してクランプを除去した後、精嚢お皿に載せて重さを測定する。
【0068】
4)PEP1の投与が、前立腺肥大症誘発実験動物の5αリダクターゼmRNA発現に及ぼす影響
スルピリド及び試験物質をそれぞれ併用して60日間投与した後、腹側前立腺を摘出し、5αリダクターゼの発現に及ぼす影響を、RT−PCRを利用して測定した。詳細には、腹側前立腺(ventral prostate、25mg)から総RNAを分離し、DEPC−treated waterを加えて再懸濁させた。その後、光学スペクトロメーターを利用してRNAを定量した。最初の鎖cDNAを、Torres及びOrtega(2004)の方法によって合成した。PCRプロファイルは、変性94℃(30秒)、アニーリング55℃(30秒)、伸長72℃(30秒)、サイクル回数30〜35回で行った。そのとき、定量のための電気泳動時、対照群として、発現量が薬物によってあまり変わらないGAPDHを使用した。その結果、スルピリド投与によって増加した5αリダクターゼの発現が、PEP1投与群において、用量依存的に抑制効果が示され、高用量(GV10、PEP1を10mg投与した群)群では、フィナステリドより抑制効果が高く示された(
図2参照)。従って、PEP1は、用量依存的に、前立腺肥大症に対して、5αリダクターゼ抑制による治療又は改善の効果を示すように見られる。
【0069】
5)PEP1の投与が、前立腺肥大症誘発実験動物の臓器に及ぼす影響
下記表3には、ペプチドPEP1が、実験群の精嚢重さ、前立腺重さ、前立腺指数(prostate index)に及ぼす影響を示した。表3に示した前立腺指数は、体重/最終前立腺重量の算式によって計算されたものである。
【0070】
【表3】
【0071】
表3の結果をグラフで示したもの、すなわち、スルピリドを投与した後、前立腺肥大症が誘発された動物に、PEP1及びフィナステリド(5mg/kg)をそれぞれ投与して精嚢の重さを観察した結果、PEP1を高濃度(10mg/kg)で投与した場合、精嚢の重さが対照群に比べて有意的に減少するということを確認することができた(
図3参照)。また、スルピリドとPEP1とを併用投与した結果でも、精嚢と類似して、スルピリドによって前立腺肥大症が誘発された実験動物において、前立腺重さが有意的に減少するということを確認することができた(
図4参照)。p値は、0.05以下であれば、有意であるということを示す。
【0072】
従って、実施例2の結果を介して、スルピリドによって前立腺肥大症が誘発された動物に対するPEP1の投与は、濃度依存的に、5αリダクターゼの発現減少、精嚢重さ減少、前立腺重さ減少の効果を示すということを確認することができる。それは、PEP1の投与が、5αリダクターゼ発現、及び生殖器重さで示される前立腺肥大症疾患症状の治療及び改善に効果的であると見られる。
【0073】
実施例3:DHTによる前立腺実質細胞、及び上皮細胞の増殖変化確認を介したPEP1の前立腺肥大症に対する効能確認
1)実験細胞準備及び実験進行方式
テストステロンは、体内に注入されれば、5αリダクターゼによってDHTの形態になり、前立腺細胞増殖を促進し、それにより、前立腺肥大症(BPH)を誘発する。その事実に基づき、次のように、前立腺細胞株の細胞増殖抑制効果に対する、実施例1から準備されたPEP1投与実験が進められた。細胞株は、前立腺肥大動物モデルで得た前立腺の実質細胞株(WPMY−1)及び上皮細胞株(RWPE−1)を使用した。実験方法は、WPMY−1(2.5×10
3細胞)とRWPE−1(1×10
4細胞)とを、96ウェルに播種し、表4のような実験群を対象に、増殖変化を確認した。増殖変化確認は、培養液を吸引後、CCK−8溶液を各ウェルに10μLずつ入れた後、1−4時間、450nmで光学密度を測定する方式で進めた。
【0074】
2)測定結果及び効能確認
DHTを処理していないグループ(1−3グループ)間では、PEP1を投与していないグループ(1グループ)と、投与した(2及び3グループ)グループとにおいて、目立つ違いが、実質細胞株(WPMY−1)及び上皮細胞株(RWPE−1)のいずれにおいても見られないということが分かった。DHTを処理したグループ(4−6グループ)間では、PEP1を投与していないグループ(4グループ)と、投与した(5及び6グループ)グループとにおいて、有意的な違いを示し、PEP1を処理したグループにおいて、確実な増殖抑制効果があるということが分かった(表4及び
図5,6参照)。従って、DHTによる前立腺肥大症に影響を与える前立腺細胞増殖抑制に、PEP1が効果があると見られる。
【0075】
【表4】
【0076】
実施例4:PEP1のアンドロゲン受容体結合能確認及び前立腺肥大症抑制メカニズム確認
1)実験細胞準備及び実験進行方式
5αリダクターゼによって生成されたDHTは、アンドロゲン受容体に結合し、前立腺細胞増殖を促進し、それにより、前立腺肥大症(BPH)を誘発する。その事実に基づき、次のように、前立腺細胞株の細胞増殖抑制効果に対する、実施例1から準備されたPEP1投与実験が進められた。細胞株は、前立腺肥大動物モデルで得た前立腺の実質細胞株(WPMY−1)及び上皮細胞株(RWPE−1)を使用した。前立腺の実質細胞株(WPMY−1)及び上皮細胞株(RWPE−1)を、抗アンドロゲン受容体と、そのイソタイプ対照群として実験する対象群とにそれぞれ分けた後、それぞれの抗体と共に、1時間培養した実験群に、PEP1−FITC(フルオレセインイソチオシアネート)結合体を入れて競争テストを進め、その結果を蛍光値で測定した。蛍光値測定は、流細胞(フローサイトメトリー)分析法を使用した。
【0077】
2)測定結果及び効能確認
実質細胞株(WPMY−1)及び上皮細胞株(RWPE−1)それぞれに対して、抗アンドロゲン受容体イソタイプ対照群抗体をまず反応させた(抗体と競争させる)場合、(最右側ピーク)、抗アンドロゲン受容体抗体をまず反応させた(抗体と競争させる)場合(中央に位置したピーク)、及び2抗体いずれも入れず、FITCも結合させていない場合(最左側ピーク)に分け、その蛍光値を測定した(
図7及び
図8参照)。抗アンドロゲン受容体イソタイプ対照群抗体と競争した場合、PEP1が抗アンドロゲン受容体と結合するので、PEP1−FITC結合体の蛍光発現率が上昇した結果が示された(ヒストグラムグラフのピークが右側に押される)。抗アンドロゲン受容体抗体と競争した場合、PEP1の抗アンドロゲン受容体との結合力が低下し、蛍光発現率が低下した結果が示された(ヒストグラムグラフのピークが左に押される)。従って、DHTが抗アンドロゲン受容体と結合し、前立腺肥大症の誘導を防ぐPEP1の作用を見るとき、PEP1がアンドロゲン受容体と直接結合することにより、前立腺肥大症に効果があると見られる。
【0078】
実施例5:前立腺肥大症誘発動物モデルを介したPEP1の前立腺肥大症に対する生体内効果確認
1)実験動物の準備
本実施例は、6−8週齢雄C57BL/6(n=10/group)マウスを利用し、マウスは、ソウル大学校医科大学実験動物室SPF(特定病原体未感染)区域で飼育した。注射用テストエナント酸テストステロン(TE:エナント酸テストステロン、EVER Pharma Hena GmbH、ドイツから購入)と、エストラジオールバレレート(吉草酸エストラジオール、EVER Pharma Hena GmbH、ドイツから購入)とを、それぞれ50mg、0.5mgずつ70μlボリュームに合わせて混合し、マイクロ浸透圧ポンプ(Alzet pump,DURECT Corporation、米国から購入)に入れた後、マウスを麻酔し、背部に移植した。ポンプは、浸透現象を利用して、時間当り0.11μlずつ28日(2週間)間、徐々にホルモンをマウスに放出するように考案された。
【0079】
2)試験物質及び投与用量
試験物質としては、テストステロン及びフィナステリドを使用した。準備された動物モデルに、個体(25gネズミモデル基準)当たり、頭部に、実施例1から準備したPEP1の場合、250μgを毎日皮下投与し、フィナステリドの場合、2,500μg(DMSO内又はシクロデキストリン内、Sigma Aldrich、米国から購入)を毎日皮下投与(注射)し、試験物質注入から2週間後(動物モデルに対するポンプ移植から4週間後)、血液を眼窩静脈から採取し、14,000rpm、4℃、30分間、遠心分離して血清を分離し、前立腺を摘出して液体窒素で凍らせ、−70℃で保管するか、あるいは固定液で固定した。試験結果のための実験群を分ければ、下記表5の通りである。
【0080】
【表5】
【0081】
3)前立腺肥大症誘発因子の減少測定
前立腺肥大症誘発によって、前立腺組織においては、PCNA(複製に必須タンパク質)及びKi67(MKI67、細胞増殖に必須タンパク質)の発現が増加する。その事実に基づき、PEP1が、前立腺肥大症誘発ネズミモデルにおいて、PCNA及びKi67の発現を抑制する効果を測定した。PCNAは、前立腺組織から抽出した細胞において得たタンパク質を、2Dゲル電気泳動を使用して発現を測定し、Ki67は、免疫染色検定法を使用して、組織における発現程度を測定した。測定結果、前立腺肥大症が誘発された動物の前立腺組織において増加したPCNA及びKi67の発現が、PEP1処理によって抑制されるということを確認した(
図9及び
図10参照)。従って、PEP1は、前立腺肥大症誘発因子の発現を抑制し、前立腺肥大症の治療及び改善に効果があると見られる。
【0082】
4)前立腺肥大症誘発関連組織の変化測定
前立腺肥大症は、前立腺の腺を構成している実質細胞(stromal cell)及び上皮細胞の異常増殖によって誘発されると知られている。その事実に基づき、PEP1が、前立腺肥大症対象の前立腺組織に変化をもたらすということを調べるために、前立腺肥大症誘発動物モデルを対象にした組織学的分析を行った。一般的な組織の変化を見るために、H&E染色法を使用して、炎症反応程度を確認するために、マッソントリクローム染色を行い、核形態をさらにはっきりと確認した。分析結果、対照群に比べ、前立腺肥大症を誘発した群においては、上皮細胞の層が厚くなる現象が、前立腺組織全般にかけて示されることを確認することができたが、PEP1を投与した群においては、ほとんどの場合、上皮細胞の配列が対照群と類似して一列に押しなべて配列されており、それら細胞が集まって作る上皮の厚さも、前立腺肥大症誘発群に比べ、相対的に薄いということを確認することができた(
図11及び
図12参照)。従って、PEP1は、前立腺肥大症誘発関連組織の変化を、前立腺肥大症が示されていない正常組織と類似するように戻して治癒する効果があると見られる。
【0083】
5)前立腺肥大症関連臓器の変化測定
前立腺肥大症は、前立腺及び精嚢の重量増加でも分かる。その事実に基づき、PEP1が、前立腺肥大症の症状が直接示される臓器である前立腺と精嚢との重さに与える影響を調べるために、前立腺肥大症誘発動物モデルを対象に、体重、前立腺重さ、精嚢重さを測定した。測定結果を、表5での群別にグラフで示した(
図13,14及び15参照)。全体的な体重の変化は示されていないが、ホルモンを投与した群において、著しく増加した前立腺重さが、PEP1を投与した群において有意的に減少し、それは、既存の前立腺肥大症治療剤であるフィナステリドを投与した群と比べるときも、類似した減少程度を示すので、PEP1を投与した群の減少が、有意的であるということをさらに確認することができた。精嚢の場合にも、ホルモンを投与した群に比べ、PEP1を投与した群において重さが減少する傾向を見せた。従って、PEP1は、前立腺肥大症の症状が直接示される臓器の実質的な重さ減少にも、効果があると見られる。
【0084】
前記実施例においてPEP1は、前立腺肥大症誘発動物モデルを介した実験において、インビトロ及びインビボで観察した結果、前立腺肥大症関連誘発因子、ホルモン受容体、及び直接的な生殖器(臓器)に治療的に肯定的な効果を示すということが分かった。従って、PEP1を利用した前立腺肥大症の治療及び改善、予防は、効果的であると見られ、さらには、前立腺肥大症の効果的な治療剤及び治療方法としての開発可能性が高いと見られる。