特許第6382995号(P6382995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6382995コントラスト強調超音波撮像を用いた頸動脈プラークの評価
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6382995
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】コントラスト強調超音波撮像を用いた頸動脈プラークの評価
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20180820BHJP
   A61B 8/06 20060101ALI20180820BHJP
   A61B 8/04 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61B8/08
   A61B8/06
   A61B8/04
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-547943(P2016-547943)
(86)(22)【出願日】2015年1月21日
(65)【公表番号】特表2017-503603(P2017-503603A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】IB2015050452
(87)【国際公開番号】WO2015110961
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2018年1月18日
(31)【優先権主張番号】61/930,655
(32)【優先日】2014年1月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】アバーキオウ ミカラキス
(72)【発明者】
【氏名】クリストフィデス ダミアノス
(72)【発明者】
【氏名】レーン エドワード ラム シャン
【審査官】 奥田 雄介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−200598(JP,A)
【文献】 特開2011−98016(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118267(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/08
A61B 8/04
A61B 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントラスト強調超音波によるプラークの評価のための超音波診断撮像システムであって、
造影剤の供給の間において頸動脈のプラーク領域の一連の超音波画像を取得するアレイ状トランスジューサを備えた超音波撮像プローブと、
前記プラーク領域における灌流の度合いを表示するディスプレイと、
を有する、超音波診断撮像システムにおいて、
前記一連の超音波画像の前記プラーク領域における造影剤が存在する各ピクセルに関して時間輝度曲線を形成する時間輝度曲線計算器と、
前記プラーク領域におけるピクセルに関する前記時間輝度曲線に基づいて、前記プラーク領域における灌流が存在するピクセルを識別する比較器と
前記プラーク領域における灌流を示すピクセルのパーセンテージを定量化する灌流定量化装置と、
を更に有することを特徴とする、超音波診断撮像システム。
【請求項2】
何処に灌流が存在するかを示す前記プラーク領域の解剖学的マップを生成する画像プロセッサを更に有する、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項3】
前記取得された一連の超音波画像を記憶するフレームメモリを更に有する、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項4】
フレーム間の動きを補償する画像安定器を更に有する、請求項に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項5】
頸動脈画像内のプラークの輪郭を描くプラークトレーサを更に有する、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項6】
前記プラークトレーサが超音波システム制御パネルのユーザ制御子を更に有する、請求項に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項7】
前記比較器が更に前記プラーク領域への造影剤の到達前後のピクセル輝度値を比較する、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項8】
コントラスト強調超音波によりプラークを評価する方法であって、
造影剤の供給の間においてプラークを有する頸動脈の一連の超音波画像を取得するステップと、
前記一連の超音波画像内のプラーク領域を識別するステップと
前記プラーク領域における灌流の度合いを表示するステップと、
を有する、方法において、
前記プラーク領域における造影剤が存在する各ピクセルに関する時間輝度曲線を形成するステップと、
前記プラーク領域におけるピクセルに関する前記時間輝度曲線に基づいて、前記プラーク領域における灌流が存在する1以上のピクセルを識別するステップと、
前記プラーク領域における灌流を示すピクセルのパーセンテージを定量化するステップと、
を特徴とする、方法
【請求項9】
前記プラーク領域を識別するステップが、前記超音波画像のうちの1つにおいてプラークの領域の輪郭を描くステップを更に有する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
灌流が識別されたピクセルを示す前記プラーク領域の解剖学的マップを形成するステップを更に有する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記一連の超音波画像におけるフレーム間の動きを補償するステップを更に有する、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記プラーク領域の画像における灌流が識別されたピクセルを、前記プラーク領域の画像における動きが存在するピクセルに相関させるステップを更に有する、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記プラーク領域内からの平均信号の時間輝度曲線を形成して、該プラーク領域への前記造影剤の到達を識別するステップを更に有する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断撮像システムに係り、特には、卒中(stroke)の危険性を評価するためのコントラスト強調超音波撮像の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血管系におけるプラークの形成、特に頸動脈におけるアテローム性動脈硬化は、多くの患者において普通に発生することである。プラークは、血管の部分的な及び全体の閉塞さえもが発生し得る程度まで蓄積し得る。図1は、内部の内腔16を示すために血管壁18が部分的に切除された血管10を図示し、該内腔16にはプラークの蓄積24が見られる。プラーク24は最も厚い位置で当該内腔の殆どに満ちているので、該プラークは当該血管を介しての血液の流れを部分的に閉ざしている。斯かるプラークは、閉塞部より下流の組織及び臓器への新鮮な血液の供給を制限するのみならず、狭められた内腔に血栓を捕捉し得、全血流を阻止し得る。更なる、同様に深刻な事態も、頸動脈のプラークから生じ得る。頸動脈は脳に対する血液の供給を行うので、頸動脈血流内の粒状物質は頭部血管の閉塞及び潜在的な卒中の危険性を生じ得る。プラークの小片は頸動脈の内膜から遊離して脳まで流れ得るものであり、脳において、これらプラーク小片は当該プラーク粒子の寸法及び流路に依存して異なる寸法及び機能の頭部血管を閉塞し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような可能性を持つプラークを識別することができ、卒中の可能性を最小化又は防止するために介入治療を行うことができるようにすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の原理に従い、頸動脈内のプラークの蓄積から卒中の危険性の評価を可能にする超音波診断撮像システム及び方法が記載される。頸動脈アテローム硬化性プラークはプラーク新血管形成及び潅流の領域を有している。プラーク潅流パターンに基づいて症状のある患者と無症状の患者との間を区別するために、24人の患者からの画像を用いた研究が実施された。この研究において、症状のある及び無症状の患者の間での潅流の差を調べるために、頸動脈プラークの潅流が定性的及び定量的の両方で評価された。患者には超音波微小気泡(マイクロバブル)造影剤であるSonovue(Bracco社、ミラノ、イタリア)が2ml注入され、1分間の超音波ループが、該造影剤が頸動脈及び当該プラークの微小血管系を介して流れる際に取得され記憶された。これらの超音波画像はBモード撮像により取得することができ、これはプラークに灌流する微小気泡からの増加する信号強度を示す。好ましくは、これら画像はカラーフロー撮像により取得され、微小気泡の動きを信号強度と共に同時に検出することができるようにする。同一の場所にドプラにより検出された動きと一緒に高強度高調波リターン(反射)を示す信号は、該場所における微小気泡の動きを示す。この相関は、しばしばアーチファクトである静止した明るい反射体からの信号反射を区別して拒否するために使用することができる。その結果は、プラーク血管系内の動的な造影剤の微小流動の検出である。
【0005】
コントラスト強調超音波画像系列は、当該プラーク内の各点におけるコントラスト時間輝度曲線(T-I曲線)を計算するために使用されるべきものであるから、画像内のプラークが画像系列にわたって空間的に相関するように、画像収集の間において撮像プローブを可能な限り静止状態に保持することが重要である。空間的相関は、例えば手ぶれ補正機構の使用により、及び/又はプローブの動き又は拍動性からの生理的運動若しくは患者の動きにより発生し得る画像内の全体的動きを検出及び補償することにより改善することができる。
【0006】
プラークのコントラスト(造影剤)灌流の評価のために、当該画像におけるプラークの周囲に関心領域(ROI)が描かれる。このことは、当該プラークを内腔信号の如何なる部分も含まずに線引きするので、頸動脈内腔内を流れる造影剤から戻る潜在的に大きな振幅の信号は当該分析から除外される。一構成例において、当該プラーク内の個々の点からの輝度信号(ピクセル)を使用することができるか、又はピクセル群を集め、集められたピクセル群からの信号の平均輝度を使用することができる。他の構成例においては、当該プラークを含むROI内からの平均輝度造影剤信号が画像から画像へと時間にわたってサンプリングされ、頸動脈プラークの時間輝度曲線を発生させる。当該プラーク内の輝度信号を分析するために、これら及び他の技術を用いることができる。信号輝度データは、当該信号レベルを閾ノイズレベルに対して比較することにより、及び造影剤到達前後の輝度値の分布を評価することにより評価される。造影剤蓄積(増加)に特徴的な値の著しい差及び分布が存在する場合、当該ピクセルは灌流を示すものとして識別される。プラークROIへの微小気泡の到達後の平均T−I曲線信号振幅が、各ピクセルに関して計算される。これらピクセルの平均輝度信号振幅の定性的画像を、当該プラークの血管新生を定性的に示すために一連の値のカラー又は輝度として表示することができる。
【0007】
本発明の他の態様によれば、ピクセルデータに対して定量的灌流評価が実行される。灌流を有するピクセルの全数が、当該プラークの輪郭を描かれた画像におけるピクセルの全数により除算される。この場合、この結果には一構成例では二進評点方式が適用される。ゼロは50%未満の頸動脈プラーク領域が移動する微小気泡を含んだことを表し、1は該頸動脈プラーク領域の50%以上が移動する微小気泡を含んだことを表す。当該研究の患者の場合、当該プラークからの平均造影剤輝度信号は、症状のある患者(血流内にプラーク粒子の履歴を持つ患者)より無症状患者(プラーク粒子の離散の履歴のない患者)に対しての方が大幅に高いことが分かった。該研究の定性的分析結果は、症状のある患者の67%(8/12)と比較して、無症状患者の25%(3/12)のみが0のスコアを有することを示した。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、プラークを含む血管の図である。
図2図2は、本発明の原理に従って構築された超音波システムをブロック図の形で示す。
図3図3は、コントラスト時間輝度曲線を示す。
図4a図4aは、頸動脈内のプラークが輪郭で描かれた超音波画像である。
図4b図4bは、図4aのプラーク領域における信号強度の変化を、プラークへの造影剤の流れの到達と共に示す。
図5a図5aは、頸動脈内のプラークが輪郭で描かれた超音波画像である。
図5b図5bは、図5aのプラーク領域における信号強度の変化を、プラークへの造影剤の流れの到達と共に示す。
図6図6は、本発明の方法のステップを示すフローチャートである。
図7図7は、異なるパーセンテージの灌流を持つアテローム硬化性プラーク領域の4つの定性的画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
幾つかの実施態様において、本発明はコントラスト強調超音波によるプラークの評価のための超音波撮像システム、例えば超音波診断撮像システムを提供する。これらのシステムは、造影剤の供給の間にプラークの一連の超音波画像を取得するアレイ状トランスジューサを備えた超音波撮像プローブを含むことができる。特定の実施態様において、これらシステムは、造影剤が存在するプラーク画像内の各点に関して時間輝度曲線を形成する時間輝度曲線計算器及び灌流が存在する該プラーク画像内のピクセルを識別する比較器として機能するプロセッサ、メモリ及び他の構造体を含むように構成することができる。幾つかの実施態様において、上記比較器は当該プラークへの造影剤の到達前後のピクセル輝度値を比較するように動作することができる。当該システムは、当該プラークにおける灌流の度合いを表示する表示器(ディスプレイ)を更に含むことができる。特定の実施態様において、当該システムは、何処に灌流が存在するかを示す当該プラークの解剖学的マップを生成する画像プロセッサを含むことができる。更に、当該システムは、灌流を示すプラーク画像におけるピクセルのパーセンテージを定量化する灌流定量化装置として機能するプロセッサ、メモリ及び他の構造体を含むように構成することができる。当該システムは、幾つかの実施態様においては、取得された超音波画像の系列を記憶するフレームメモリを含むことができる。特定の実施態様において、当該システムは、上記フレームメモリに記憶された画像に応答してフレーム間(frame-to-frame)の動きを補償する手振れ補正器(画像安定器)として機能するプロセッサ、メモリ及び他の構造体を含むように構成することができる。幾つかの実施態様において、当該システムは、頸動脈画像内のプラークの輪郭を描くプラークトレーサとして機能するプロセッサ、メモリ及び他の構造体を含むように構成することができる。幾つかの実施態様において、該プラークトレーサは、超音波システム制御パネルのユーザ制御子を介して、ユーザがディスプレイ上に示されるプラークを手作業でトレースすることができるように制御することができる。
【0010】
幾つかの実施態様において、本発明のシステムは、造影剤の供給の間に超音波プローブを用いてプラークの一連の超音波画像を取得し、造影剤が存在するプラーク画像内の各点に関して時間輝度曲線を計算し、灌流が存在する該プラーク画像内のピクセルを識別し、該プラーク内の灌流の程度を表示するように構成することができる。上記種々の機能を実行するために当該システムには種々のハードウェア構成要素を含めることができる。例えば、データを入力し、該データに対して特定の機能を実行し、次いで該処理されたデータを出力するように構成された独立型プロセッサである。他の例として、当該システムは、種々のステップを実行するためにコード化ソフトウェアプロトコルに従って一緒に動作する幾つかのハードウェア構成要素(例えば、複数のプロセッサ)を含むこともできる。上記機能を実行するための斯様なソフトウェア及び構成は、当業者にとり容易に明らかとなるであろう。
【0011】
ここで図2を参照すると、本発明の原理に従って構成された超音波システムがブロック図の形態で示されている。超音波プローブ12は、超音波信号を送信及び受信する超音波トランスジューサ素子のアレイ14を含んでいる。アレイ14は、二次元撮像のための一次元の直線状又は湾曲したアレイとすることができるか、又は三次元における電子的ビームステアリングのためのトランスジューサ素子の二次元(2D)マトリクスとすることができる。また、該アレイ14は、身体の三次元ボリュームを走査するために当該超音波プローブ12により前後に機械的に掃引される一次元アレイとすることもできる。アレイ14における超音波トランスジューサは、超音波エネルギを送信すると共に、この送信に応答して返されるエコーを受信する。送信/受信(“T/R”)スイッチ22は、アレイ14内の超音波トランスジューサに結合されて、受信動作フェーズの間に上記トランスジューサ素子からのエコー信号をA/D変換器30に選択的に結合する。アレイ14が信号を送信するために活性化される時点は、内部システムクロックに同期され得るか、又は心拍サイクル等の身体機能に同期させることができ、後者のために心電図(ECG)装置26により心拍サイクル波形が供給される。心拍がECG装置26により供給される波形により決定された該心拍のサイクルの所望のフェーズにある場合、超音波プローブ12は超音波画像を取得するように命令される。本発明の方法の実行においては、造影剤を含む血液が頸動脈におけるプラークの血管構造に灌流し始める際に、頸動脈のリアルタイム画像フレームの連続した系列が取得される。
【0012】
送信された超音波エネルギからのエコーは、アレイ14のトランスジューサ素子により受信され、これら素子はエコー信号を発生し、これらエコー信号はT/Rスイッチ22を介して結合されて、当該システムがデジタルビーム形成器を使用する場合はアナログ/デジタル(“A/D”)変換器30によりデジタル化される。アナログビーム形成器を代わりに使用することもできる。A/D変換器30は、入力されるエコー信号を、中央コントローラ28により発生される信号fにより制御されるサンプリング周波数でサンプリングする。標本理論により支配される所望のサンプリング率は、入力される帯域幅の最高周波数の少なくとも2倍であり、30〜40MHzのオーダであり得る。最小要件よりも高いサンプリング率も望ましい。当該超音波システムの制御及びプローブ選択等の撮像のための種々のパラメータの設定は、中央コントローラ28に結合されると共に該中央コントローラを介して自身の制御を適用する制御パネル20におけるユーザインターフェースの制御子のユーザ操作により影響を受ける。
【0013】
アレイ14の個々のトランスジューサ素子からのエコー信号サンプルはビーム形成器32により遅延されると共に合計されて、デジタルのコヒーレントなエコー信号を形成する。二次元アレイによる3D撮像の場合、米国特許第6,013,032号(Savord)及び米国特許第6,375,617号(Fraser)に記載されたように、ビーム形成器32を超音波プローブ12内に配置されたマイクロビーム形成器と、システムメインフレーム内の主ビーム形成器との間に分割することが好ましい。次いで、上記デジタルコヒーレントエコー信号はデジタルフィルタ34によりフィルタ処理される。この実施態様において、プローブの送信周波数及び受信器の周波数は個別に制御され、ビーム形成器32が、高調波の造影剤の検出のための高調波周波数帯域等の、送信帯域とは異なる帯域の周波数を自由に受信するようにする。デジタルフィルタ34は当該信号の帯域フィルタ処理を行うと共に、当該周波数帯域を一層低い又は帯域の周波数範囲にシフトすることもできる。デジタルフィルタ34は、例えば米国特許第5,833,613号(Averkiou他)に開示されたタイプのものとすることができる。連続した画像フレームの走査からのフィルタ処理されたエコー信号は、フレームメモリ42に記憶される。正確な時間輝度曲線の計算にとっては、連続する画像フレームのピクセルが空間的に整合されていることが重要であるので、連続するフレームの位置合わせが画像手振れ補正器(画像安定器)44により実行される。この空間的相関は、好ましくは、米国特許第6,589,176号(Jago他)に記載されたような画像手振れ補正器の使用により実行される。
【0014】
該空間的に整合された画像フレームは、通常のBモード処理及び2DのBモード画像の作成のためにフレームメモリ42からBモードプロセッサ36に結合される。これら画像フレーム、及び特には微小気泡から返された斯かる画像フレームの高調波造影剤信号成分は、コントラスト信号プロセッサ38に結合される。該コントラスト信号プロセッサ38は、好ましくは、高調波造影剤から返されたエコーをパルス反転技術により分離し、該技術においては画像位置への複数のパルスの送信から生じるエコーが、基本信号成分を相殺すると共に高調波成分を増強するために組み合わされる。好ましいパルス反転技術は、米国特許第6,186,950号(Averkiou他)に記載されている。
【0015】
フレームメモリ42からのフィルタ処理されたエコー信号は、速度及び/又はパワードプラ画像を生成するための通常のドプラ処理用のドプラプロセッサ40にも結合される。これら3つのプロセッサ36、38及び40の出力信号は走査変換されて、平面的2D画像として表示することができ、そのために、これらプロセッサの出力はディスプレイ52用の画像プロセッサ50に結合される。3D走査が実行される場合、これらの出力画像は三次元(3D)画像としてレンダリングすることもでき、これら画像は表示のためにディスプレイ52上で処理することもできる。
【0016】
一連の画像フレームが造影剤供給の間に取得され、フレームメモリ42に記憶された後、ユーザは当該画像をBモードで見直すことができる。これら画像の例が図4a及び図5aに示されている。これらは、プラークを含む頸動脈の画像である。これら画像における大きな明るい領域62は、造影剤を含む血流の領域であり、特に強い(従って、明るく表示される)エコー信号を返す。血管壁18は、図4aに、自身の血管構造に造影剤が灌流されて明確に示されている。眼識のあるユーザは、これら画像内にプラークを見付けることもできる。血管の内腔とは異なり、プラークの微小血管系は非常に少ない造影剤しか含まず、従って当該画像では一層暗い領域に見える。プラークは種々のやり方でトレース(輪郭を描く)することができる。例えば、当該システムはスクリーン上に表示されたプラークをトレースするために自動的に又は手動制御の下で使用することができるプラークトレーサを含むことができる。ユーザは、例えば、これらプラークを見付けられた場合にトレース又は輪郭をなぞることができ、これらの輪郭をなぞられたプラーク領域は後に説明するように処理される。該プラークトレーサは当該システム内に、データを入力し、該データに対して特定の機能を実行し、次いで該処理されたデータを出力するように構成された独立型のプロセッサとして含めることができる。他の例として、当該システムは、当該プラークトレーサにより実行される種々のステップを実行するためにコード化ソフトウェアプロトコルに従って一緒に動作する幾つかのハードウェア構成要素(例えば、複数のプロセッサ)を含むこともできる。上記機能を実行するための斯様なソフトウェア及び構成は、当業者にとり容易に明らかとなるであろう。図4a及び図5aは、各々、制御パネル20上のトラックボール又はマウス等の制御子を用いて輪郭を描いたプラーク60を含んでいる。
【0017】
プラーク輪郭領域60の識別情報は、図2に示されるように時間輝度(T−I)曲線計算器46に結合される。該時間輝度曲線計算器は、図示されたように、当該システムにデータを入力し、該データに対し特定の機能を実行し、次いで該処理されたデータを出力するように構成された独立型のプロセッサとして含めることができる。他の例として、当該システムは、該T−I曲線計算器により実行される種々のステップを実行するためにコード化ソフトウェアプロトコルに従って一緒に動作する幾つかのハードウェア構成要素(例えば、複数のプロセッサ)を含むこともできる。上記機能を実行するための斯様なソフトウェア及び構成は、当業者にとり容易に明らかであろう。次いで、該T−I曲線計算器は一連の画像フレームにおける当該プラークのピクセルを処理し、該プラーク内の各点に関して時間輝度曲線を形成する。造影剤供給の間において造影剤が当該プラークにおける特定の点に流れつつある場合、該造影剤は、図4b及び図5b(図4a及び図5aにおける点に対応する)に示されるように、初期到達時点に続いて増加するであろう。上記T−I曲線計算器は、米国特許出願公開第2012/0253190号(Gauthier他)及び米国特許第8,460,194号(Averkiou他)に記載されているように該コントラスト信号輝度の増加を処理して、時間輝度曲線を生成する。理想化された時間輝度曲線60が図3に示されている。この曲線は時点tにおける造影剤の初期到達に続いて増加し、最大造影剤灌流の時点における最大振幅Aまで増加し、次いで造影剤が身体の当該領域から流出するにつれて徐々に下降する。
【0018】
比較器48は、上記時間輝度曲線のデータに対して幾つかのチェックを実行し、時間輝度曲線が生成された各点に造影剤が確かに存在するかを検証する。図示された比較器は、当該システムに上記曲線データを入力し、造影剤の存在を検証するように構成された独立型のプロセッサとして含めることができる。他の例として、当該システムは、当該比較器により実行される種々のステップを実行するためのコード化ソフトウェアプロトコルに従って一緒に動作する幾つかのハードウェア構成要素(例えば、複数のプロセッサ)を含むこともできる。上記機能を実行するための斯様なソフトウェア及び構成は、当業者にとり容易に明らかであろう。(或る点において造影剤の流れが存在しない場合、該点に対して時間輝度曲線は存在しないであろう。)。1つのチェック法は、造影剤の到達前の輝度値の分布(即ち、ノイズ分布)を造影剤の到達後の値の分布と比較することである。一構成例においては、コルモゴロフ−スミルノフ2サンプル検定が用いられる。輝度分布を比較するために、追加の統計的検定又は方法を用いることもできる。造影剤の到達前の輝度値の分布、即ちノイズが、造影剤の到達後の値の分布とは統計的に異なる場合、当該ピクセル又はピクセルのグループは、灌流されていると見なされる。他の構成例では、当該時間輝度曲線の振幅がノイズ閾値と比較される。これにより、当該画像データにおけるアーチファクトからの振幅スパイクは、コントラストとしての考察から削除される。他の検査法は曲線60の最大振幅領域をコントラスト閾値に対して比較することである。この閾値は、造影剤応答が或る持続時間を超えるべきレベルである。当該プラーク内の或る点からの時間輝度曲線が、これら検定の両方に合格した場合、該点に造影剤の流れが存在したことが確認される。
【0019】
次に、当該プラーク領域に対して灌流の定性的画像を形成することができる。時間輝度曲線の最大輝度振幅A若しくは平均信号強度又は造影剤が存在した点における灌流の統計的確率を、カラーマップの対応するカラーにマッピングすることができ、該カラーマップを米国特許第6,692,438号(Skyba他)に記載されているように当該プラーク領域のBモード画像上にパラメータ的重ね情報(オーバーレイ)として表示することができる。例えば、造影剤灌流の領域は赤の変化する陰影で表示することができ、灌流のない領域は黒として表示することができる。このように、ユーザはプラークの灌流の程度、即ち該プラークが血管新生を含む程度を観察することができる。図7は、各々が黒の背景に対して示された、種々の程度の灌流を持つプラーク70の4つの領域を示している。各プラーク領域において、灌流されている点は白で示される一方、灌流のない点は黒で示されている。図7のaにおいて、プラーク領域70は100%灌流されている。図7のbにおいて、プラーク領域70は76%灌流されている。図7のcにおいてはプラーク領域70は38%灌流され、図7のdではプラーク領域70は26%だけ灌流されている。
【0020】
本発明の他の態様によれば、プラークの全体の灌流が灌流定量化装置により定量化される。図示された灌流定量化装置は、当該システムにデータを入力し、プラークの灌流を定量化するように構成された独立型プロセッサとして含めることができる。他の例として、当該システムは、当該定量化装置により実行される種々のステップを実行するためのコード化ソフトウェアプロトコルに従って一緒に動作する幾つかのハードウェア構成要素(例えば、複数のプロセッサ)を含むこともできる。上記機能を実行するための斯様なソフトウェア及び構成は、当業者にとり容易に明らかであろう。プラーク領域70における灌流を有するピクセルの全体の数は、該プラークの画像内のピクセルの合計数により除算される。一構成例においては、この結果に二進格付けシステムを適用することができる。ゼロは頸動脈プラーク領域70の50%未満が移動する微小気泡を含んだことを表し、1は該頸動脈プラーク領域の50%以上が移動する微小気泡を含んだことを表す。ゼロ及び1が決定される閾値は、灌流検出技術、該技術の感度、有意であると見なされる統計的確率、及び最適な臨床的閾値を決定するために実施される後続の何らかの実験的又は臨床的研究に従って変化し得る。これらの結果の信頼性を向上させるために、当該灌流定量化装置はプラークのドプラフローマップを入力する。コントラストの有効な時間輝度曲線が見付かった各点は、該ドプラフローマップにおける対応する点においても動きを示すものとして見付けられなければならない。何故なら、この点では造影剤が流れていなければならないからである。コントラスト(造影剤)及び時間輝度曲線が見付かった点におけるドプラにより識別された動きの存在は、該点を造影剤が存在するものとして確認することになる。これにより、灌流の高信頼度の定量化が行われ、ディスプレイ52上に表示される。プラークからの平均造影剤輝度信号は、無症状患者(プラーク粒子の離散の履歴がない患者)の場合、症状のある患者、即ち血流中のプラーク粒子の履歴のある患者より非常に高いことが分かった。卒中の危険性の分類は、当該プラークの微小血管系の何らかの破壊、血栓の存在又プラーク間出血がある場合に一層複雑になり得る。卒中の臨床的予測因子が、ここに概説する灌流検出技術に基づいて評価され、調べられるべきである。
【0021】
幾つかの実施態様において、本発明はプラークを評価する方法を含む。例えば、本発明はコントラスト強調超音波によりプラークを評価する方法を含む。該方法は、プラークを含む頸動脈の造影剤供給の間において一連の超音波画像を取得するステップと、超音波画像においてプラークを識別するステップと、造影剤の到達前後の当該プラーク内の位置における輝度値を比較するステップと、当該画像内の灌流を有する点を識別するステップと、当該プラークにおける灌流の度合いを表示するステップとを含むことができる。幾つかの実施態様において、上記プラークを識別するステップは、前記超音波画像のうちの1つにおいてプラークの輪郭を描くステップを含むことができる。特定の実施態様において、当該方法は前記プラークにおける造影剤が存在する各点において時間輝度曲線を形成するステップを含むことができる。当該方法は、前記プラークの灌流が識別された点を示す解剖学的マップを形成するステップ、及び/又は前記プラークの画像における灌流を示す点のパーセンテージを定量化するステップを含むことができる。特定の実施態様において、当該方法は、前記一連の超音波画像におけるフレーム間の動きを補償するステップ、及び/又は前記プラークの画像における灌流が識別された点を前記プラークの画像における動きが存在する点に相関させるステップを含むことができる。当該方法は、前記プラーク内からの平均信号の時間輝度曲線を形成して、前記プラークにおける前記造影剤の到達を識別するステップも含むことができる。
【0022】
図6は、本発明の方法のフローチャートである。ステップ100において、典型的には造影剤の注入後少なくとも1分間続く頸動脈の画像シーケンスが取得される。このステップは、造影剤を含む如何なるプラークの微小な流れの画像も捕捉する。ステップ102において、フレーム間の動きが動き補償技術を用いて補償され、当該プラークが上記画像シーケンスにわたり同一のピクセルに位置合わせされるようにする。ステップ104において、当該画像においてトレース処理等によりプラーク領域の輪郭が描かれる。ステップ106において、当該プラーク領域における各ピクセルに関して時間輝度曲線が形成される。造影剤到達時間を、全体のプラーク、ピクセルのグループ又は個々のピクセル内の平均輝度のノイズレベル上への所与の増加に基づいて推定することができる。ステップ108において、造影剤が存在する各点における輝度値が造影剤の到達の前後において比較され、大きな差がある場合、当該ピクセルは灌流を有すると識別される。この灌流の識別は、各ピクセル又は各ピクセルグループに関して実施される(ステップ110)。ステップ112において、当該プラークにおける灌流を示す全ピクセルのパーセンテージが定量化される。このことは、灌流を有するピクセルの全数を、当該プラークの画像内のピクセルの合計数により除算することにより実行される。ステップ114において、定性的結果は、当該プラークの灌流されたパーセンテージの解剖学的マップを形成することにより図7に示されるように提示される。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7a)】
図7b)】
図7c)】
図7d)】