【課題を解決するための手段】
【0003】
この課題は独立請求項の特徴を有する電子デバイスにより解決される。有利な構成および派生例は従属請求項に記載のものに示されている。
【0004】
本発明による電子デバイスは、1つの積層体となるように重なって配設された複数の機能層,複数の第1の内部電極,および複数の第2の内部電極を備え、ここで各々の第1および第2の内部電極は2つの隣り合った機能層の間に配設されている。これに対応して、好適には、本電子デバイスは、複数の第1の内部電極および複数の第2の内部電極を備える。
【0005】
本電子デバイスは、好ましくは多層デバイスである。上記の機能層は、好ましくは電気的に活性であり、たとえば高温導体の層であり、すなわち負の温度係数を有する層である。好適には、これらの機能層は、セラミック層であり、すなわち金属酸化物(複数)から成っているかまたはこれらを含んでいる。
【0006】
上記の第1の内部電極(複数)は、好ましくはそれぞれ直接、本電子デバイスの1つの第1の外部接続部と電気的に導通して接続されている。さらに加えて、上記の第2の内部電極(複数)は、好ましくはそれぞれ直接、本電子デバイスの1つの第2の外部接続部と電気的に導通して接続されている。上記の第2の外部接続部は、好適には上記の第1の外部接続部とは別になっており、たとえば本電子デバイスの上記の第1の外部接続部の反対側の面上に配設されている。上記の第1および第2の外部接続部は、それぞれ本電子デバイスの1つの外部電極であってよい。好適には上記の第1の内部電極(複数)は、上記の第1の外部接続部のみと電気的に導通して接続されており、上記の第2の内部電極(複数)は、上記の第2の外部接続部のみと電気的に導通して接続されている。
【0007】
さらに上記の機能層(複数)は、本電子デバイスの第1および第2の外部接続部が、本電子デバイスの初期状態においても、また本電子デバイスの高温状態においても、すなわち初期状態のおける本電子デバイスの温度よりも高い温度でも、上記の機能層(複数)を介して電気的に導通して互いに接続されているように設定されている。
【0008】
上記の機能層(複数)および/または内部電極(複数)は、好ましくは上記の積層体中で等間隔に配設されている。
初期状態とは、たとえば本電子デバイスに電力が全く印加されていない、無負荷の状態であってよい。とりわけ好ましくは、上記の初期状態は、室温すなわち具体的には25℃での本電子デバイスの状態を表している。この初期状態は、基準温度ならびに基準圧力の条件を表すものであってよい。
【0009】
これに対して、上記の高温状態は、1つの負荷状態であってよく、たとえばこのデバイスおよび/または上記の外部接続部に電圧が印加されているかまたは電流が印加されていることを意味してよい。
【0010】
代替としてまたは追加的に、上記の初期状態と上記の高温状態との間の温度範囲は、たとえば−55℃〜+180℃に渡るどのような温度範囲であってよく、すなわちこの範囲に渡るものであってよい。好ましくは、上記の初期状態と上記の高温状態との間の温度範囲は、−40℃〜+150℃の範囲に渡っていてよい。
【0011】
さらに、本電子デバイスは、1つのNTCデバイスであり、すなわち負の温度係数を有する1つの高温導体デバイスである。この観点から、本電子デバイスの高温状態とは、好ましくはたとえば印加された電力によって加熱された本電子デバイスの1つの状態を表すものである。さらにこの高温状態とは、好ましくはこのデバイスの1つの一定した温度状態であってよい。
【0012】
上記の第1の外部接続部と上記の第2の外部接続部との間の電気的に導通した接続によって、特に本電子デバイスの上記の初期状態においては、たとえば25℃での初期状態においてΩまたはkΩ領域の公称抵抗を有する従来のNTCデバイスに対して、たとえば本電子デバイスに対して適宜直列に回路接続されて用いられる1つの電気的負荷の突入電流を、たとえばスイッチオン時の電圧が他の重要な電子部品の電源用にはまだ十分に高くなっている程度に、有利に制限することができる。
【0013】
これはたとえば本電子デバイスの自動車部門でのアプリケーション、具体的には自動車での電気スタータモータ(「スタート/ストップシステム」用の突入電流リミッタとして使用する際に有利であり、および/または必要なものであり得る。たとえばこの突入電流が充分にあるいは適切に制限されない場合、車載電源電圧は、ABSおよびESPのような他の安全に関連する用途に、期待される電圧をもはや供給することができない程度まで低下し得る。この観点において、本願に示す電子デバイスは、安全性の面に対して、および/または道路交通におけるエネルギー効率に対して貢献するものである。
【0014】
NTCデバイスは、一般的にいわゆる「ホットスポット」(ドイツ語の"heisse Stellen"に対する英語"hotspots")、すなわちたとえばそれぞれのデバイスの動作の際に、偶然または構造的なものにより、他の領域より熱くなる領域、の形成が起こり易い。この「ホットスポット」は、正のフィードバックによってさらなる加熱の原因となる。換言すれば、この「ホットスポット」は、その高温導体特性により温度の上昇と共に電気抵抗が低下することによって、追加の過熱を生じることを意味する。これは場合によってはこのデバイスの破壊をもたらし得る。本願に示す電子バイスの多層構造によって、この「ホットスポット」の生成もまた有利に防止あるいは制限することができる。これは一方では上記の電極間の短い距離すなわち電流経路のおかげであり、これによって上記の「ホットスポット」の生成のリスクを制限することができるものである。他方では、具体的には上記の内部電極の低温導体(PTC−)特性によって、および本電子デバイスの動作中の電流が同様にこれらの内部電極を通ってほとんどが流れ、こうして本電子デバイスの電気抵抗が同様に実質的にこれらの内部電極によって決定されることによって、「ホットスポット」の生成を防止あるいは少なくとも制限することができる。換言すれば、上記の内部電極の電気特性は、上述の高温導体の機能層(複数)における上記の正のフィードバックおよび上記の「ホットスポット」の生成を少なくとも部分的に補償あるいは防止することができる。
【0015】
1つの好ましい実施形態によれば、上記の機能層(複数)の電気比抵抗、好ましくはこれらの機能層の各々の個々の電気比抵抗は、本電子デバイスの初期値において0.1Ωm〜0.3Ωmとなっている。この実施形態によって、有利に、本発明による上記の第1の外部接続部と上記の第2の外部接続との間の電気的に導通した接続が、上記の機能層を介して可能となり得る。
【0016】
1つの好ましい実施形態においては、本電子デバイスの機能層の数は20〜120となっている。この実施形態によって、すなわちこの本電子デバイスの多層の実施形態によって、原理的に2つの隣り合う逆極性、すなわち異なる内部電極の間および/または上記の第1の外部接続部と上記の第2の外部接続部の間の電気抵抗およびまたはそれぞれの電圧降下を好適に低減することができる。さらに本電子デバイスの電流負荷容量(Strombelastbarkeit)および/または通電容量(Stromtragfahigkeit)をこの多層の実施形態によって有利に大きくすることができる。
【0017】
具体的には、上記の複数の第1の内部電極と上記の複数の第2の内部電極の上記の第1あるいは第2の外部接続部への電気的接続では、これらの内部電極がそれぞれ2つの隣り合う機能層の間に配設されており、実質的に個々のNTCデバイスの並列回路続となっており、これによって本電子デバイスに負荷をかける際の電流が個々の内部電極すなわち機能層に分割される。
【0018】
1つの好ましい実施形態においては、上記の機能層は、1つのドーピングされた半導体材料を含み、具体的には1つの化合物半導体材料および/または1つのセラミック材料を含む。この実施形態によって、本発明での電気特性、たとえば上記の外部接続部(複数)間の電気的に導通した接続は、このデバイスの初期状態において、とりわけ好適に実現および/または設定することができる。
【0019】
1つの好ましい実施形態においては、上記の機能層は、鉄,コバルト,ニッケル,銅,または錫の元素の少なくとも1つの酸化物を含む。好ましくは、上記の機能層は、これらの材料または酸化物を主成分として含有し、すなわちたとえば質量単位,体積単位,またはモル単位で50%より多い成分を有している。
【0020】
上記の材料への追加として、上記の機能層はさらなる化学的な安定化用の酸化物を含んでよい。この酸化物はたとえば本電子デバイスの電気的特性を損なう上記の機能層の(さらなる)酸化を防止する。
【0021】
1つの好ましい実施形態においては、上記の機能層は、それぞれ10μm〜100μmの層厚を有し、好ましくは20μm〜40μmの層厚を有する。
【0022】
本実施形態において上記の機能層に関して適用される場合、好ましくは、上述の機能層(複数)の個々の層の各々について適用される。
【0023】
1つの好ましい実施形態においては、上記の第1および第2の内部電極の各々は、たとえば2μm〜15μmの層厚を有する1つの内部電極層である。代替として、上記の第1および第2の内部電極の各々は、上述したように、1つの内部電極層を備えてよい。とりわけ好ましくは、上記の第1および第2の内部電極は5μm〜10μmの層厚となっている。
【0024】
1つの好ましい実施形態においては、上記の第1の電極および上記の第2の電極は重なり合い、および/またはそれぞれ他の形態に関して同様に構成されている。
【0025】
上述した機能層の層厚ならびに上述した内部電極の層厚は、具体的には本電子デバイスの電気的特性に関して、および本デバイスの製造、すなわちたとえばシルクスクリーン印刷を用いた内部電極の堆積に関して好適なものである。
【0026】
1つの好ましい実施形態においては、本電子デバイスの公称電気抵抗は、10mΩ〜25mΩとなっている。
【0027】
この公称電気抵抗は、好ましくは、25℃の環境温度での、無負荷の電子デバイスの、上記の外部接続部(複数)の間の電気抵抗を表している。
【0028】
1つの好ましい実施形態においては、上記の第1および第2の内部電極は、積層方向で見て交互に上下に重なって配設されている。この実施形態によって、1つの電気的に活性な領域、たとえば一方の上記の第1の内部電極と、他方の上記の第2の内部電極との間の重なり領域をとりわけ好適に形成することができる。
【0029】
これに対応して1つの好ましい実施形態においては、上記の第1の内部電極(複数)は上記の第2の内部電極(複数)と重なっている。
【0030】
1つの好ましい実施形態においては、上記の第1および第2の内部電極は、それぞれ上記の第1あるいは第2の外部接続部と直接電気的に導通して結合されている。
【0031】
本発明による電子デバイスでは、具体的には上記の外部接続部(複数)の上記の機能層(複数)を介した電気的に導通した接続に対し、これらの内部電極の内部抵抗すなわち直列抵抗をとりわけ小さくするために有利となっている。これはたとえば上記の機能層と比較して厚い内部電極によって達成することができる。これに対し、上記の機能層(複数)の厚さの低減は、たとえば上記の内部電極(複数)が同一の厚さとなっている場合は、技術的に、たとえばこれに適したシルクスクリーン印刷を用いてもこれだけでは実現できず、あるいは実現が非常に難しい。
【0032】
1つの好ましい実施形態においては、本電子デバイスは、電気的には上記の機能層を介してのみ接続されている、すなわち間接的に上記の第1および第2の内部電極と接続されている、さらなる自由電極(複数)を備える。これらの自由電極も同様に、好ましくは本電子デバイスの内部電極となっている。この実施形態によれば、好ましくはこれらの自由電極の各々は、本電子デバイスの上面から見て、少なくとも部分的に、上記の第1および第2の内部電極と重なっている。こうしてこの実施形態によれば、さらに、本電子デバイスの1つの内側あるいは内部の連続して接続された回路すなわち多層の連続した接続回路を有利に形成することができる。この連続した接続回路の特別な利点は、上記の内部電極(複数)のとりわけ小さな直列抵抗の構成を可能とすることであり、および/または上記の機能層あるいは本電子デバイスの熱容量を、別のパラメータに整合することおよび/または増大することを可能とすることである。これは具体的には、低減された層厚(複数)によって、および/または、たとえば上記の機能層と比較して低減された上記の内部電極(複数)の厚さによって達成することができる。
【0033】
1つの好ましい実施形態においては、上記の自由電極は上下に重なって積層されて配設されている。この実施形態も同様に、上述の多層の連続した接続回路を有する実施形態を好適に可能とする。
【0034】
1つの好ましい実施形態においては、本電子デバイスの上面から見て、上記の第1および第2の内部電極は離間している。換言すれば、たとえば本電子デバイスの上面から見て、これらの第1および第2の内部電極は、重なっていない。これらの重なっていない第1および第2の内部電極に実施形態は、さらにとりわけ上記の多層の連続した接続回路に好適である。
【0035】
1つの好ましい実施形態においては、本電子デバイスは、多重の内部の連続した接続回路によって形成されている。この実施形態によれば、他の電極も好ましくは同様に重なっており、ただし上記の機能層(複数)を間接的にのみ介して互いに接続された複数の部分積層体で構成されている。この実施形態によれば、上記の内部電極の直列抵抗は、好ましくはさらに低減することができる
【0036】
本願発明のもう1つの態様は、複数の上述したような電子デバイスの1つの並列回路を備える1つの構成体に関する。この実施形態によれば、同様に、好ましくはそれぞれ多層デバイスとして形成されている複数の電子バイスは、好ましくは並列に回路接続されている。この実施形態によって、本構成体の電流負荷容量または通電容量を、1つの単一の電子デバイスに対して有利にさらに高めることができる。以上により本構成体は、好ましくは1つのNTC構成体である。
【0037】
本願発明のもう1つの態様は、本電子デバイスを有する1つのシステムまたは本構成体を有する1つのシステムであり、これはさらに1つの、好適には電気的な、負荷装置(Verbrauchereinrichtung)を備える。この電気的な負荷装置は、本電子デバイスまたは本構成体に対して電気的に直列に回路接続されており、本電子デバイスまたは本構成体と共に環境温度、好ましくは、具体的には1つの共用の、単一の環境温度に曝される。さらに本システムは、加熱時間、すなわち上記の負荷装置の突入電流が、本電子デバイスあるいは本構成体を定常状態の温度まで加熱する時間が、上記の負荷装置の電気的な立上り時間に合わせ込まれているように構成されている。またこの立上り時間は、いつ上記の突入電流がこの負荷装置の公称電流まで低下するかを決定する。
【0038】
以上より本システムは、1つの電力源を備えてよく、この電力源は、好適には、上述の突入電流を提供するように構成されている。
【0039】
上記の定常状態の温度は、好ましくは本電子デバイスの上述の高温状態の温度となっている。さらに、上記の定常状態の温度は、好ましくは、代替としてまたは追加的に、本システムの1つの平衡温度および/または1つの動作温度を表している。上記の定常状態の温度は、好ましくは120℃または約120℃となっている。
【0040】
好適には、本電子デバイスあるいは本構成体は、好ましくは上記の突入電流によってもたらされる自己発熱によってのみ、上記の定常状態の温度に加熱され、ここで熱放射による加熱、または本システムのいくつかの他の部品によるかまたはこれらの部品の熱伝導は、無視できるかまたは主たるものではない。
【0041】
上記の立上り時間への上記の加熱時間の合わせ込みによって、あるいはこの逆によって、たとえば上記の加熱時間が電気的な立上り時間に対して短
か過ぎると評価されている場合に対して、電気的に本システムまたは上記の負荷装置と相互作用する、他の部品の損傷を有利に防止することができる。
【0042】
さらに上述の合わせ込みによって、たとえば上記の加熱時間が電気的な立上り時間に対して長すぎると評価されている場合に対して、上記の負荷装置の適切な許容され得る動作を、たとえば上述の、本システムまたはこの負荷装置と相互作用する、他の部品と協働して実現することができる。
【0043】
上記の加熱時間は、好ましくは、または好適には、上記の立上り時間に等しいかまたは僅かにこれより短い。全体として、本電子デバイス,本構成体および/または本システムは、好ましくは、上記の加熱時間および上記の立上り時間が少なくとも概ね等しくなるように構成されている。このためたとえば上記の負荷装置の電気的な立上り特性が、上記の機能層および/または本電子デバイスまたは本構成体の加熱特性に対応して、調整されていてよい。上記の立上り時間は約50msとなっている。
【0044】
上述した他の部品は、上記したように、ABSまたはESPシステム等の自動車の車載電源の電気部品であってよい。
【0045】
本システムの1つの好ましい実施形態においては、上記の加熱時間および上記の電気的な立上り時間は等しくなっている。
【0046】
本システムの1つの好ましい実施形態においては、上記の加熱時間および上記の電気的な立上り時間は0.5〜1.5の比で相互に密接に関連している。
【0047】
本願のもう1つの態様は、1つの電子デバイスあるいは上述のシステム用の構成体の使用に関する。上記の負荷装置は、たとえば自動車用のスタータモータであってよい。ここで本電子デバイスは、突入電流リミッタ(英語で"inrush current limiter")として好適に機能する。
【0048】
さらに本発明は本システムを製造するため、あるいは合わせ込むための方法を提示する。本方法は、1つの電子デバイスまたはこれを備える1つの構成体,これに電気的に直列に回路接続された負荷装置,および上述の部品に接続された電源を、1つの共通した環境温度で提供するステップを備える。さらに本方法は、上記の加熱時間、すなわち上記の負荷装置に対する突入電流が本電子デバイスあるいは本構成体を定常状態の温度に加熱する時間に、上記の電気的な立上り時間を合わせ込むステップを備え、この電気的な立上り時間は、この突入電流がいつこの負荷装置の公称電流にまで低下するかを決定している。さらに本方法は、本システムを完成するステップを備える。
【0049】
本方法の1つの好ましい実施形態においては、上記の加熱時間は、上記の機能層の材料およびその厚さと数を選択することによって、上記の立上り時間に合わせ込まれる。この実施形態によって、上述の合わせ込みは、上記の機能層の熱容量によって有利に達成することができる。
【0050】
代替として、逆に、本システムおよび/または本方法に基づき、上述の立上り時間が、上記の加熱時間に対応して合わせ込まれていてよく、または合わせ込まれてよい。
【0051】
上述のシステムまたは本電子デバイスあるいは本構成体は、好ましくはここに記載する方法を用いて製造可能であり、または製造されている。具体的には、本方法用に開示された特徴の全てが上述のシステムまたは本電子デバイスあるいは本構成体に適用することができ、またこの逆も成り立つ。
【0052】
本発明のさらなる利点,有利な実施形態,および有用性が、以下の実施例の、図を参照した説明により示される。