(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383016
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】登坂方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20180820BHJP
F16H 61/688 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/688
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-572484(P2016-572484)
(86)(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公表番号】特表2017-517702(P2017-517702A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】EP2015062176
(87)【国際公開番号】WO2015189065
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】1410449.1
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】マーカス・ホース
【審査官】
岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−236630(JP,A)
【文献】
特開平01−197128(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/027111(WO,A1)
【文献】
特開2011−179597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02
F16H 61/688
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションを持つ車両の制御方法であって、該トランスミッションは少なくとも1つの前進及び少なくとも1つの後進の選択可能なギヤ比を持ち、それぞれが少なくとも1つの前記ギヤ比でエンジンもしくは原動機と少なくとも1つの車輪とをつなぎ得る少なくとも2つのクラッチを持ち、前記方法が、第一のクラッチにより前進もしくは後進ギヤ比を選択及び/又は連結するステップと、
第一のクラッチにより前進ギヤ比が選択及び/又は連結されている場合、第二のクラッチにより後進ギヤ比を予備選択する、又は第一のクラッチにより後進ギヤ比が選択及び/又は連結されている場合、第二のクラッチにより前進ギヤ比を予備選択するステップと、
登り坂の失敗の判断をするステップと、
予備選択された後進ギヤ比を選択及び/又は連結する、又は予備選択された前進ギヤ比を選択及び/又は連結するステップを含む方法。
【請求項2】
失敗登坂の判断に際し車両の車輪ブレーキを自動的にかけるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
失敗登坂が、
i/ 車両速度と合わせた傾斜の測定値、
ii/ 摩擦概算と合わせた傾斜の測定値、
iii/トルク、パワー、もしくはスロットルの閾値の到達、
iv/ トルクもしくはパワー要求値の突然の変化、
v/ 車輪速度の突然の変化、
vi/ 車輪速度の測定値と一致する車両移動の欠如、
vii/ 車輪スリップ量の所定値もしくは閾値、
viii/ 車両が利用可能な総トラクション量の到達、及び/又はそれ以上のトラクション取得がないことの判断、
ix/ パワーもしくはトルクの運転者要求の中断、
x/ 車両の運転者によるブレーキ、
xi/ パワーもしくはトルクの運転者要求の中断と車両の運転者によるブレーキ要求の組み合わせ、
xii/ 低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比が選択されエンジンが最大トルク、パワーもしくはスロットルの設定となる状況、
xiii/ 低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比が選択されエンジンが最大トルク、パワーもしくはスロットルの設定となる状況と車両が利用可能な総トラクション量の到達、及び/又はそれ以上のトラクション取得がないことの判断の組み合わせ、
xiv/ 低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比が選択されエンジンが最大トルク、パワーもしくはスロットルのうちの閾値もしくは所定割合となる状況、
xv/ 低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比が選択されエンジンが最大トルク、パワーもしくはスロットルのうちの閾値もしくは所定割合となる状況と車両が利用可能な総トラクション量の到達、及び/又はそれ以上のトラクション取得がないことの判断の組み合わせ、
のうちの1つ以上の検出により判断される、請求項1もしくは2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
後進もしくは前進ギヤ比の予備選択が車両による斜面の登り走行の前もしくは途中に起こる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記予備選択が、
i/ 低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比の選択、
ii/ ドライブモード、選択的にトラクション制御モード、選択的に「登り坂モード」もしくは「ローレンジモード」の選択、
iii/ ドライブモード、選択的にトラクション制御モード、選択的に「登り坂モード」もしくは「ローレンジモード」の選択への応答としての低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比の選択、
iv/ そこまでのギヤ比選択が連続的にギヤダウンであったという判断、
v/ 車両のエンジンのパワーもしくはトルク要求の減少無しに、その時点までのギヤ比選択が連続的にギヤダウンであったという判断、
vi/ 最低速の前進もしくは後進ギヤ比の選択がされたが大きなパワーもしくはトルク要求がされたという判断、
vii/ 車両体勢の閾値の検出、
viii/ 車両ピッチ角の閾値の検出、
ix/ エンジンのトルク要求閾値の検出、
x/ 車両が坂を登っているという判断、
xi/ 車両が今まさに坂を登ろうとしているという判断、
xii/ 車輪スリップ量の閾値の判断、
xiii/ 車両が坂を登っており、横切っている路面タイプが選択的に砂、雪、氷、泥、草、砂利のうちの1つであることの判断、
xiv/ 車両速度が第一の閾値より低く、トルク要求が第二の閾値より大きいという判断、
のうちの1つ以上もしくはいずれかの組み合わせに対する応答として起こる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前進もしくは後進ギヤ比の選択が、
i/ 低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比の選択命令、
ii/ ドライブモード、選択的にトラクション制御モード、選択的に「登り坂モード」もしくは「ローレンジモード」の選択、
iii/ そこまでのギヤ比選択が連続的にギヤダウンであったという判断、
iv/ 車両のエンジンのパワーもしくはトルク要求の減少無しに、そこまでのギヤ比選択が連続的にギヤダウンであったという判断、
vi/ 車両体勢の閾値の検出、
vii/ 車両ピッチ角の閾値の検出、
viii/ エンジンのトルク要求閾値の検出、
ix/ 車両が坂を登っているという判断、
x/ 車両が今まさに坂を登ろうとしているという判断、
xi/ 車両が坂を登っていて、横切っている路面タイプが選択的に砂、雪、氷、泥、草、砂利のうちの1つであることの判断、
xiv/ 車両速度が第一の閾値より低く、トルク要求が第二の閾値より大きいという判断、
のうちの1つ以上に対する応答として起こる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
選択される前進もしくは後進ギヤ比が使用可能な最も低速な前進もしくは後進ギヤ比である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
車両の運転者に失敗登坂の発生を通知するステップを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
車輪ブレーキを解放するステップを含む、請求項2〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
車輪ブレーキの解放が運転者の入力に応答して起こる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記運転者の入力が、
i/ タッチスクリーン入力、
ii/ 音声命令、
iii/ ブレーキペダルの踏み込み、及び/又は解放、
iv/ アクセルペダルの踏み込み、及び/又は解放、
v/ クラッチペダルの踏み込み、及び/又は解放、
vi/ スイッチ、トグル、ノブ、もしくは他の回転式スイッチの起動もしくは使用、
vii/ 車両のドライブモードの選択もしくは起動、
viii/ 車両の制御システムの選択もしくは起動、
ix/ 車両のギヤ比もしくはその等価物の選択、
のうちの1つ以上もしくはいずれかの組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
車両の失敗登坂の際の制御方法であって、前記車両は、少なくとも1つの前進及び少なくとも1つの後進の選択可能なギヤ比を含むオートマチックトランスミッションと、前記トランスミッションにより駆動される少なくとも1つの車輪を持ち、前記方法が、
i/ 前進もしくは後進ギヤ比を選択するステップと、
ii/ 登り坂の失敗の判断をするステップと、
iii/ 車両にブレーキをかけるステップと、
iv/ 前進ギヤ比がi/で既に選択及び/又は連結されている場合、後進ギヤ比を選択及び/又は連結する、もしくは後進ギヤ比がi/で既に選択及び/又は連結されている場合、前進ギヤ比を選択及び/又は連結するステップを含み、
ステップii/、iii/、もしくはiv/のいずれか1つ以上が自動的である方法。
【請求項13】
車両の運転者に失敗登坂を通知するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
車輪ブレーキを解放するステップを含む、請求項12もしくは13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
車輪ブレーキの解放が運転者の入力に応答して起こる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記運転者の入力が、
i/ タッチスクリーン入力、
ii/ 音声命令、
iii/ ブレーキペダルの踏み込み、及び/又は解放、
iv/ アクセルペダルの踏み込み、及び/又は解放、
v/ クラッチペダルの踏み込み、及び/又は解放、
vi/ スイッチ、トグル、ノブ、もしくは他の回転式スイッチの起動もしくは使用、
vii/ 車両のドライブモードの選択もしくは起動、
viii/ 車両の制御システムの選択もしくは起動、
ix/ 車両のギヤ比もしくはその等価物の選択、
のうちの1つ以上もしくはいずれかの組み合わせである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の方法を実施するよう構成されるコントローラもしくはシステム。
【請求項18】
原動機、複数の選択可能な前進ギヤ比、及び少なくとも1つの選択可能な後進ギヤ比を持つトランスミッション、原動機からのトルクを1つ以上の選択可能なギヤ比に連結するための少なくとも1つのクラッチ、及び前記トランスミッションにより駆動されるよう構成される少なくとも1つの車輪を持つ車両のコントローラもしくはコントロールシステムであり、車両の失敗登坂を検出し、前記失敗登坂を検出すると1つ以上のブレーキを車両の1つ以上の車輪に自動的にかけ、前記1つ以上のブレーキの作動後に失敗登坂のときに前進ギヤ比がトランスミッションに連結していた場合、後進ギヤ比をトランスミッションに自動的に選択及び/又は連結する、又は、失敗登坂のときに後進ギヤ比がトランスミッションに連結していた場合、前進ギヤ比をトランスミッションに自動的に選択及び/又は連結するよう構成されるコントローラもしくはコントロールシステム。
【請求項19】
請求項17もしくは18のいずれかに記載のコントローラもしくはシステムを含む車両。
【請求項20】
車両の運転者によって有効化及び/又は無効化がされるよう構成される、請求項17もしくは18のいずれかに記載のもしくは請求項19の車両に搭載のコントローラもしくはシステム。
【請求項21】
トランスミッションを持つ車両の制御方法であって、該トランスミッションは少なくとも1つの前進及び少なくとも1つの後進の選択可能なギヤ比を持ち、それぞれが少なくとも1つの前記ギヤ比でエンジンもしくは原動機と少なくとも1つの車輪とをつなぎ得る少なくとも2つのクラッチを持ち、
前記方法が、
第一のクラッチにより前進ギヤ比を選択及び/又は連結するステップと、
第二のクラッチにより後進ギヤ比を予備選択するステップと、
登り坂の失敗の判断をするステップと、
予備選択された後進ギヤ比を選択及び/又は連結するステップを含む方法。
【請求項22】
トランスミッションを持つ車両の制御方法であって、該トランスミッションは少なくとも1つの前進及び少なくとも1つの後進の選択可能なギヤ比を持ち、それぞれが少なくとも1つの前記ギヤ比でエンジンもしくは原動機と少なくとも1つの車輪とをつなぎ得る少なくとも2つのクラッチを持ち、
前記方法が、
第一のクラッチにより後進ギヤ比を選択及び/又は連結するステップと、
第二のクラッチにより前進ギヤ比を予備選択するステップと、
登り坂の失敗の判断をするステップと、
予備選択された前進ギヤ比を選択及び/又は連結するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のトラクション制御の方法に関し、特に斜面を登る車両、制御方法を実施するための制御システム、そのような制御システムを備えるパワートレイン、及びそのようなパワートレインもしくは制御システムを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のオフロードモードが提供され得るトラクション制御システムを車両に搭載することは知られていて、それに限定ではないが特に四輪駆動に搭載され、さらにそれに限定ではないが特にオフロード及び/又は困難な条件での走行が必要とされる車両に搭載され、ここで困難な条件とはテレイン(地形、terrain)タイプもしくは天候条件の結果である。そのような条件(及びそれらに関連するモード)は草地、砂利、及び雪(GGS、Grass, Gravel and Snow)を含み得て、さらに岩場テレイン(もしくは「岩場のろのろ」)、泥と轍、氷、砂、及び/又は急斜面も含み得る。特にそのような車両は特に急峻な傾斜部分も含む坂を登る必要があり得る。そのような車両は「下り坂」モードを備えている可能性があり、それは通常運転者が手動でブレーキを使用したり手動でギヤ変更をしたりする必要なく、急な下り坂を制御下で下ることができることを意味する。下り坂の方法は当業でよく知られここではこれ以上の説明は不要である。
【0003】
時折、車両が坂を登り始めるものの登り切れず最終的に前進不能になることがあり、「失敗登坂」と呼ぶ。これはエンジンもしくは原動機からのパワー不足の結果であり得るが、それより十分なトラクションを失うことの結果によるほうが普通である。適切に訓練されない限り、そのような状況の運転者が制御機能の喪失を感じることはよくある。
【0004】
マニュアルギヤボックスを備える車両において先行技術での失敗登坂の正しい対応は下記のような方法である。
【0005】
もしも登坂に失敗したと運転者が気づいた場合、すなわち車輪は回っているのに車両が登らないもしくは後退さえする場合、正しい対応は強くブレーキを踏みエンジンストップを起こさせることである。ほとんどの状況において車両は坂道でブレーキがかかり停止する。
【0006】
あるいは、登坂はエンジンがストップすることで失敗し得る。正しい対応はこの場合もブレーキを踏み車両を坂道でブレーキがかかった停止状態にすることである。
【0007】
どちらの場合も、失敗登坂の結果車両が坂道でブレーキがかかり停止状態となる。ブレーキを踏んだままで運転者はクラッチをオープンにし(クラッチペダルを踏み)後進ギヤを選択し、クラッチを再び繋ぐ(クラッチペダルを放す)。
【0008】
次にブレーキペダルを放す。車両は坂道でドライブライン及び後進ギヤを通じてエンジン摩擦により保持される。
【0009】
車両のエンジンが次に再起動される。車両はエンジンブレーキ下で後進ギヤの状態で坂道を降りる。もしも車両に搭載されている場合下り坂モードを使って下り走行の制御を補助し得る。一旦坂道から抜けると、運転者は登り坂に再挑戦するか、もしくは代替ルートを選び得る。
【0010】
オートマチックギヤボックスを備える車両の場合、同等の方法は下記のとおりである。
【0011】
運転者が登りの失敗に気づくと、正しい対処方法はブレーキを踏み、車両を坂道でブレーキがかかった停止状態にすることである。
【0012】
状況によってはこのシナリオ下で車両のエンジンはストップする。運転者はその場合ブレーキを踏みニュートラルギヤを選択し、エンジンを再起動し、後進ギヤを選択し、ブレーキを放す。すると車両は後進ギヤのエンジンブレーキ下で安定した状態で坂道を下る。
【0013】
あるいはエンジンがストップしていない場合は、運転者は単に後進ギヤを選択し、ブレーキを放す。すると車両は後進ギヤのエンジンブレーキ下で安定した状態で坂道を下る。
【0014】
一方、どちらのシナリオでも(エンジンストップの有無)運転者は車輪ブレーキもしくはもしも装備されていれば下り坂モードを利用して下りの制御を補助し得る。
【0015】
一旦坂道を脱出すると、登り坂の再挑戦をし得る、もしくは代替ルートを選択し得る。
【0016】
上記の失敗登坂からの脱出方法はオフロードの運転に慣れている人には知られている。しかし不慣れな運転者は登り坂の失敗を認識するとパニックを起こし得る。失敗は例えばトラクションの限界に達したことによるのに、単にアクセルをより強く踏み込んで登坂を続けようとすることがよくある反応である。車両のエンジンがストップした状況での自然な反応はブレーキを強く踏むことである。後進ギヤを選択する等のさらなるステップは知られていないことが多く、車輪ブレーキだけによる制御で車両を下り坂の後退をさせようとする試みがされ得る。これは、エンジンがかかっていない場合は、サーボ補助がないためブレーキが効果的でない可能性があり、さらに下り坂モードによる補助も起動しない可能性が高いため、薦められない。
【0017】
さらに、車両は前輪のほうにブレーキが効きやすいように設計される傾向があり、従って後退しながら坂を下るときのブレーキは前輪をロックさせ(中央差動器が備わっていてそれがロックされない限り)、車両前部の横方向安定性を喪失させる望まざる結果となることが多い。運転者によっては、エンジンを再起動させて登り坂を続けようとするかも知れず、これは非常に困難な登り坂発進につながり、ほとんどの場合さらなる失敗の結果となる。
【0018】
失敗登坂の際の向上された対処方法が必要とされる。前記方法は運転者が未熟であると想定して運転者からの入力を必要としない適切な対応法であり得て、最大限の制御を保持するものであり得る。
【発明の概要】
【0019】
近年の車両のトランスミッションは例えば「パワーシフト」もしくは「デュアルクラッチ」ギヤボックス等、複数のギヤ比を予備選択しそれらの間での切換ができるマルチスピードギヤボックスを含み得る。
【0020】
少なくとも1つの入力及び出力を持ち、前記入力もしくは入力群及び出力の間に2つ以上の前進速度比及び1つ以上の後進速度比を持ち、さらに複数のクラッチを持つマルチスピード常時噛み合いギヤボックスが提供されることは知られており、及び本発明の実施形態がそれを提供することを想定している。前記複数のクラッチの少なくとも1つは複数のギヤ及びギヤボックス軸と様々な組み合わせで連結し得る摩擦クラッチであることが望ましく、様々な速度比が可能となる。前記ギヤボックスは次に使われる必要のある速度比を予備選択するよう適合され、現在の速度比から前記次に必要とされる速度比への切換は前記入力間でのドライブの切換で行われる。前記速度比は、2つの前進速度比間の切換、2つの後進速度比間の切換、及び/又は前進と後進速度比の間の切換を提供するよう予備選択され構成される。
【0021】
普通デュアルクラッチトランスミッション(DCT)に関連してそのようなギヤボックスへは内燃エンジン等の原動力からの2つの入力が使われトランスミッションへの駆動を交互に提供する2つの入力があり得る。DCTトランスミッションは普通交互につながる2つのクラッチを持つことを特徴とし、1つのクラッチが奇数番号の比に関連し、1つのクラッチが偶数番号の比に関連する。一般にクラッチの1つが車両が停止状態である条件でつながるように適合され、さらにハイウェイのトランスミッションに関連する速度比セットの内の通常第一の速度比にも関連する。DCTトランスミッションはよく知られているのでここでさらに説明する必要はない。本発明の実施形態に係るトランスミッションのギヤ輪、シャフト、及びクラッチの構成は前進速度比内、後進速度比内、及び前進及び後進速度比での切換(車両の駆動輪への実質的に連続的なトルクのトランスミッション)を提供する。そのような構成はオンハイウェイ及びオフハイウェイの両方に適する多様性をトランスミッションに与える。
【0022】
上記で説明されたトランスミッションはここで説明される失敗登坂の問題に関して意外な有利点を提供し得ることが発見された。
【0023】
本発明の態様の1つによると、トランスミッションを持つ車両の制御方法が提供され、該トランスミッションは少なくとも1つの前進及び少なくとも1つの後進の選択可能なギヤ比を備え、それぞれが少なくとも1つの前記ギヤ比でエンジンもしくは原動機と少なくとも1つのトランスミッションによって駆動する車輪とをつなぎ得る少なくとも2つのクラッチを持ち、前記方法が、第一のクラッチにより前進もしくは後進ギヤ比を選択及び/又は連結するステップと、第二のクラッチにより逆向きの後進もしくは前進ギヤを予備選択するステップと、登り坂の失敗の判断をするステップと、逆向きの後進もしくは前進ギヤを選択及び/又は連結するステップを含む方法である。
【0024】
車両が前進しつつ坂を登るとき、初期に選択されるギヤ比は前進ギヤであり、予備選択され次に連結されるギヤ比は後進ギヤである。
【0025】
かわりに車両が後進しつつ坂を登るとき、その方法は第一のクラッチで後進ギヤ比を選択し、次に前進ギヤ比を予備選択し第二のクラッチで連結することを含む。クラッチは摩擦クラッチを含み得る。
【0026】
この出願の範囲内での説明の多くの場合において、用語の無駄な反復及び説明の無駄な複雑化を避けており、車両が坂もしくは斜面を後ろ向きもしくは前向きに登る場合等、車両の相対的な動きを説明するときに「前進」という用語は「後進」(もしくは「後退」)に置き換えができ、その逆も置き換えができると解釈されることは当業者には明らかである。
【0027】
本発明の一態様においては、車両の失敗登坂の際の制御方法が提供され、前記車両は、少なくとも1つの前進及び少なくとも1つの後進の選択可能なギヤ比を含むトランスミッションと、それぞれが少なくとも1つの前記ギヤ比で車両のエンジンもしくは原動機をつなぎ得る少なくとも2つのクラッチと、前記トランスミッションにより駆動される少なくとも1つの車輪を持ち、前記方法が、第一のクラッチにより前進もしくは後進ギヤ比を選択及び/又は連結するステップと、第二のクラッチにより逆向きの後進もしくは前進ギヤを予備選択するステップと、登り坂の失敗の判断をするステップと、前記逆向きの後進もしくは前進ギヤを選択及び/又は連結するステップを含む方法である。
【0028】
実施形態において、逆向きギヤの予備選択は登坂の途中もしくは登坂の前に起こり得る。
【0029】
失敗登坂に際し前進ギヤから後進ギヤに切り換えた結果、車両は次に後進ギヤでのエンジンブレーキによる補助で安定して斜面を後進しつつ下り得る。1つの実施形態において、車両に装備されていれば、例えば下り坂制御(Hill Descent Control、商標)もしくはHDC(登録商標)等の「下り坂モード」に入り得て、それは下り坂走行中に運転者を補助する。そのような下り坂モードは手動で選択され得る、もしくはシステムもしくはコントローラもしくはテレインレスポンス(地形応答、Terrain Response、登録商標)モードもしくはその同等物等の他のモードにより自動的に選択され得る。
【0030】
1つの実施形態において、ギヤ比の選択及び/又は予備選択は自動的にされ得る、及び/又はシステムもしくはコントローラもしくは車両モードにより制御され得る。
【0031】
1つの実施形態において、前記方法は車輪ブレーキをかけるステップを含む。失敗登坂の検出もしくは判断に際して車両の車輪ブレーキがかけられ得る。これは車両内に装備されるシステムもしくはコントローラによる制御下で起こり得る。前記システムはソフトウェアもしくはハードウェアを含み得て、他のいかなる車両システムもしくはコントローラの一部でもあり得る。例えばECU等、そのようなシステムもしくはコントローラは知られている。本実施形態において、低速のもしくは最低速のギヤが選択され、後進のギヤが予備選択された状態で失敗登坂の検出もしくは判断がされる。次に車輪ブレーキがかけられる。これは先行技術の運転者制御による失敗登坂の対策方法と事実上同じである。方法のステップの1つであり得る連結された前進ギヤの連結を解くことは車輪ブレーキをかける以前、途中、もしくは以後に起こり得る。方法のステップの1つである予備選択された後進ギヤの連結をすることも同様に車輪ブレーキをかける以前、途中、もしくは以後に起こり得る。連結されたギヤとブレーキされた状態との間のいかなるシステム衝突をも回避もしくは管理するために、クラッチもしくは他の連結手段が使われ得る、及び/又は制御され得る。
【0032】
1つの実施形態において車輪ブレーキの作動及び連結された前進ギヤの連結を解くことは少なくとも部分的に同時に起こり(言い換えると、これら2つの動作はそれぞれの動作期間が少なくとも部分的に重複するように起こり得る)、それにより車両は停止し、坂道でブレーキされた状態で停止状態となる。車両はこの「休止期間」にある期間留まり、この期間の長さはあらかじめ決められる、もしくは運転者からの入力に依存し得る。例えば、車両は説明のとおり停止し得て、そこで車両の情報システムが車両の運転者に失敗登坂の発生を通知し得る。これは、前記運転者がなぜ車両が停止したかを知ることになることを意味する。これは、上記「背景技術」のセクションで仮定したとおり未熟な運転者の場合、説明されたようなパニックもしくは他の不安を回避する。運転者は続いてまた、例えば後進ギヤの選択/連結が起こり坂道の下り走行が始まり得るとの失敗登坂の対処方法の次の動作もしくは一連の動作を通知され得る。運転者は次にその動作が起こることへの準備ができていることを信号で知らせるように促され得て、それは休止期間の終了を知らせる信号でもあり得る。前記信号は、ブレーキペダルの踏み込みと解放、もしくはブレーキペダルの解放、もしくはアクセルペダルの踏み込みもしくは解放、もしくは車両モードの選択もしくはボタンを押すこと等、他のあらゆる適切な信号であり得る。該ボタンは実際のボタンもしくは仮想ボタンであり得て、仮想ボタンは例えば車両のタッチスクリーンに現れるもしくは表示され得る。休止期間が終了するとき、後進ギヤが選択され車輪ブレーキが解放されるが、これらの動作は少なくとも部分的に同時に起こり得る。ここで他に記述されたとおり、次に車両は後進ギヤで坂道を安定状態で下り得る。
【0033】
さらなる実施形態において、車両の車輪ブレーキがかかり、及び/又は前進ギヤの連結が解放されるとき、車両のエンジンへのスロットルもしくはアクセル信号は抑制される。前記抑制はエンジン速度/トルクの運転者による要求値の減少もしくは低下を意味し得る。これは失敗登坂が検出され本発明の方法が実施されているが、車両のおそらく未熟な運転者がトルク要求を続ける(アクセルペダルを踏み続ける等)状況を回避し得る。ギヤ連結が解放されたシナリオではこれは非常に高いエンジン速度となる結果となり、過剰な騒音を発生させ得るだけではあるが運転者をさらに不安にさせ得る。他の望ましくない効果としては、いずれかのギヤが選択された場合の急加速が含まれ得る。エンジンはアイドリング状態もしくは他の比較的低い速度を維持するよう制御され得る。
【0034】
1つの実施形態において後進ギヤ比の予備選択は急な坂道の前もしくは登坂の途中のいずれかで起こる。
【0035】
実施形態において、後進ギヤ比の予備選択は、急な坂道の登りが試みられていることを示す条件に対する応答であり得る。そのような条件は、低速もしくは最低速の前進ギヤが自動ギヤボックスにより選択されることであり得て、特にそのギヤがほとんどの運転条件で通常必要とされない場合である。これは、特にDCTタイプギヤボックス等のそのようなギヤボックスの先行技術での通常の使用法と異なる。通常の使用法では低速もしくは最低速の前進ギヤ(例えばファーストギヤ)は、車両が低速ギヤで加速し次に必要と通常予測されるギヤである次に低速のギヤ(例えばセカンドギヤ)の予備選択を伴う。
【0036】
前記条件は、登坂に潜在的に関連する特定の車両モードが運転者により、もしくはシステム、コントローラもしくは車両に備えられる他のモードにより選択されたことであり得る。そのようなモードとは山道、岩場、砂地、に適するモードであり得て、もしくは他のあらゆる適切な特定のトラクション制御モードであり得る。いくつかの他の車両モードの選択肢間の切換を制御するモード、コントローラもしくはシステムは、「オートテレインレスポンス」(Auto Terrain Response、商標)として知られるもの、もしくは当業で知られる類似した他のモード、コントローラもしくはシステムであり得る。登坂の次に下り坂走行が起こると予想され得るため、HDC(登録商標)もしくはそれに類似したモードが選択モードであり得る。当業者は、モード、コントローラ及びシステムを知り、それらの適性を理解する。
【0037】
特に最低速のギヤ比が通常の運転条件で使用されない場合にもしもそのような適切なモードが選択されると、最低速の前進ギヤ比が選択され得て、及び/又は後進ギヤ比の予備選択が次に自動的に起こり得る。
【0038】
後進ギヤ比を予備選択する条件の1つは、その時点までのギヤ選択が、エンジンからのパワーもしくはトルク要求の減少を伴わずに連続的にシフトダウン(例えば4段ギヤからサードギヤへ、続いてセカンドギヤへ、ファーストギヤ(すなわち最低速ギヤ)へ)であることである。これは、通常のもしくは道路上の走行の際に体験され得るとおりエンジンへのトルクもしくはパワーの要求も無くもしくは少ないまま速度が減少している等、単に減速のためにギヤ切換をしている車両とは対照的に、坂を登ろうとしている車両で起こることと一致する。パワーもしくはトルクの要求の減少が無くギヤ切換が連続的にダウンである本実施形態において、一旦ファーストギヤ/最低速ギヤが選択されたにも関わらずより大きなパワーもしくはトルクの要求がされるとき、登坂が想定され得て、後進ギヤの予備選択の条件が整う。
【0039】
最低速前進ギヤ比の選択及び/又は後進ギヤの予備選択の条件は、車両が坂を登り始めようとしているという判断に対する応答であり得る。この判断は運転者によりされる、もしくは車両システムによりされる。そのようなシステムは視覚システム(例えばカメラ)、レーダシステム、GPSもしくは他のナビゲーションシステム、もしくは駐車センサシステムで少し使われ得るもの等の超音波検出システムを含み得る。そのようなシステムはカメラ、レーダ、GPS等からの入力が登り坂の接近を示すという判断をするソフトウェアを含み得る。
【0040】
1つの実施形態において、最低速前進ギヤの選択及び/又は後進ギヤの予備選択の条件は、車両の体勢限界の検出であり得て、これは例えば車両のピッチ角度が特定の閾値にあるもしくはそれ以上であることの検出である。1つの実施形態において車両もしくは車両内のシステムに例えば3軸ジャイロスコープ等のジャイロスコープが備えられ、例にすぎないがピッチ角40度が所定の閾値であり得る。もしもジャイロスコープが車両がこの角度までピッチ傾斜していることを検出すると、最低速の前進ギヤが次に選択され得て、及び/又は後進ギヤが予備選択され得る。1つの実施形態において車両もしくはその中のシステムには傾斜計が備えられ得て、ピッチ等の車両の体勢を直接測定可能である。
【0041】
最低速前進ギヤの選択及び/又は後進ギヤの予備選択の条件の1つは、トルク限界値であり得る。例えば、利用可能なエンジントルク全部が要求される、及び/又はそれに近づくとき(例えば、要求が利用可能なエンジントルクの95%に達するとき)、エンジンストップもしくは失敗登坂が差し迫っていると判断され得る。それにより後進が予備選択され、エンジンストップもしくは失敗登坂の他のモードが起こる場合に後進が早急に利用可能となる。
【0042】
失敗登坂の検出はある条件の検出と一致し得る。低速、最低速もしくは前進ファーストギヤの選択と共にもしくはそれに引き続いて、後進ギヤを予備選択するステップを踏んだ後に、失敗登坂の検出を判断し、それにより後進を選択する条件は下記のリストの1つ以上であり得る。
トルク限界値の到達、
トルク要求値の急変、もしくは車輪速度の急変(これらは、車輪のトラクションの喪失及びスリップの発生と一貫性があり得る)、
車輪速度と一致する車両の移動の欠如の検出(これは例えば、いくつかもしくは全ての車輪が動いているもしくはある量の車輪スリップが起こっているのと対照的に車両が移動していないことを示すGPS信号の検出であり得て、代わりに、地上の車両速度を直接測定できるレーダシステムもしくはカメラもしくはカメラシステムが車両移動の欠如を示し得る)、
当業者に知られる方法に基づく車輪スリップ量の検出手段による、所定量の車輪スリップ量の検出、
当業で知られる方法による車輪スリップの閾値の検出、
トラクション制御システムもしくはその類似システムにより、車両が利用可能なトラクションの限界に到達した、及び/又はこれ以上のトラクションが得られる事が無いという推定(そのような推定方法は当業で知られている)、
パワーもしくはトルクの要求の中断(アクセルペダルから完全に足を放すのと一貫性がある突然であり得る中断)、
ブレーキの作動(運転者の足がブレーキペダルを強く突然踏み込むのと一貫性がある突然であり得る作動)、
パワーもしくはトルクの要求の中断とブレーキ要求の組み合わせ(運転者の足がアクセルペダルを離れブレーキペダルに移動して踏み込むのと一貫性があり得て、実施形態ではブレーキ要求はアクセルペダルの解放後に起こり得る、もしくはアクセルペダルの解放前に、左足ブレーキもしくは「ヒールアンドトゥ」テクニックと一貫性をもって起こり得る)、
低速もしくは最低速の前進ギヤ比が選択され、エンジンが最大トルク、パワーもしくはスロットルの設定となっており、選択的に利用可能な総トラクションの到達/これ以上のトラクションの取得不能な状況、
低速もしくは最低速の前進ギヤ比が選択され、エンジンが最大トルク、パワーもしくはスロットルの閾値もしくは例として99%もしくは95%等の所定の割合に達しており、選択的に利用可能な総トラクションの到達/これ以上のトラクションの取得不能な状況。
【0043】
本出願の範囲において上記の段落、請求項、及び/又は下記の説明及び図面に示す種々の態様、実施形態、例、及び代替案、そして特にそれらの個々の特徴は、独自にもしくはあらゆる組み合わせで解釈され得ることが明白に意図されている。すなわち、全ての実施形態及び/又はいずれかの実施形態の特徴は、その特徴が非互換性ではない限り、あらゆる方法及び/又は組み合わせで結合可能である。出願者は元来提出したいかなる請求項の変更もしくはいかなる新規請求項の提出の権利をも保有し、元来提出したいかなる請求項も変更し、元来そのように請求されていなくても、いかなる他の請求項のいかなる特徴にも従属及び/又は組み込ませる権利も含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の1つ以上の実施形態が、例示としてのみ添付の図面を参照にここに説明される。
【0045】
【
図1】
図1は、失敗登坂の可能性のある坂に近づく車両を示す。
【
図4】
図4は、本発明の態様に従って使用され得るデュアルクラッチギヤボックスの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施形態に係る方法が添付図面を参照してここに説明される。
【0047】
図4は、マルチスピード常時噛み合いデュアルクラッチトランスミッション(DCT)の図解であり、それぞれが関連する摩擦クラッチ(A、B)を持つ2つの入力(21、22)、1つの出力(23)、2つ以上の前進速度比及び2つ以上の後進速度比を前記入力と出力の間に持つ。前記速度比は個々に選択可能なギヤ輪トレインを含み、前記前進速度比の1つ及び前記後進速度比の1つが1つの入力と関連し、前記前進速度比の1つ及び前記後進速度比の1つがもう1つの入力と関連する。前記ギヤボックスは次に使われる速度比を予備選択するよう適合され、現在の速度比から前記次に必要とされる速度比への切換は前記入力間でのドライブの切換で行われる。前記速度比は、2つの前進速度比間の切換、2つの後進速度比間の切換、及び/又は前進及び後進速度比の間の切換を提供するよう選択され構成される。
【0048】
図示の実施形態において、第一の入力(21)はクラッチA及び下記のギヤ比と関連する。すなわち低速後進(Reverse Low、RL)、ファースト、サード、そして第5ギヤ等の奇数番号ギヤである。第二の入力(22)は、クラッチB及び残りのギヤ比、すなわち高速後進(Reverse High、RH)、セカンド、第4ギヤ、そして第6ギヤ等の偶数番号ギヤと関連する。
【0049】
図1、2、及び3に示される車両にはそのようなトランスミッションが備わる。
【0050】
図1は、
図4に示されるもののようなDCTを備える(
図1には図示なし)車両1を示す。車両1は坂/斜面2に近づいている。車両のエンジン(図示なし)からの駆動トルクがDCTを介して2つ(3、4)が図示される車両の車輪に供給される。
【0051】
坂に近づいている途中もしくは登坂の前に車両が停止しているときのいずれかで、急な斜面を含む坂を今まさに登り始めるという決断がされ得る。運転者(5)は前方の地形の視覚的観察によりこの決断をし得る。その結果、運転者は登りに備えて、車両の「ローレンジ」(山間部、low range)モード、もしくは「岩場のろのろモード」もしくは「登り坂モード」その他の適切なオフロードモードを選択し得て、もしくは車両の低速ギヤもしくは最低速ギヤを選択する、もしくは選択命令を出し得る。代わりに、1つ以上のカメラ(6)、GPSその他の衛星ナビゲーションシステム(7a、7b)、もしくは電磁気、音波/超音波による近接センサもしくはレーダシステムの一部であるセンサ(8)を利用した車両に備えられるシステムによる前方地形の観察を使って決断がされ得る。
【0052】
急な坂を登り始めるという決断の結果、DCTの低速もしくは最低速の前進ギヤ(すなわち
図4のファーストギヤ)が選択され得る。車両の構成によっては、最低速の前進ギヤは通常、オフロード条件等の特定の状況でのみ使われる。
【0053】
そのようにDCTの低速もしくは最低速の前進ギヤが選択され、急な坂を登り始める決断がされると、DCTの後進ギヤの1つ(すなわち
図4のRH)の予備選択も行われる。
【0054】
別のシナリオでは、そこまで平らな地形を安定したペースで走行してきた車両1が、運転者もしくはその他のシステム入力による変更が特になく、単に坂を登り始める。
【0055】
図2は、矢印9の方向に坂2を登り始めた時点の
図1で上述のものと同様の車両1を示す。上述の実施形態によると、車両は既に低速前進ギヤ(もしくは最低速、すなわち
図4のファーストギヤ)にあり、後進ギヤ(すなわち
図4のRH)が予備選択された状態であり得る。
【0056】
しかし、他の実施形態において、車両は前進ギヤのいくつかの選択肢のうちのいずれかであり得る。しかし車両が坂を登り始めると、トランスミッションが通常に作動すると、例えばサードギヤからセカンドギヤへ、続いてファーストギヤへ連続的にギヤを下げる結果となり得る。しかし車両のエンジンに要求されるトルク及び/又はパワーは、変わらないもしくは登りが急になるにつれ実際は増加し得る。連結するギヤが下がるのに、パワー及び/又はトルクの要求は変わらないもしくは増加さえするこの状況では急な登坂が着手されていると判断され得る。従ってそのとき例えばファーストギヤ等の低速ギヤが選択されると、後進ギヤ(すなわち
図4のRH)が予備選択される。
【0057】
実施形態において、車両がピッチ角度10を検出することで坂道にいることを判断するためにジャイロスコープもしくは加速度計等の手段(図示なし)を車両は備えている。走行中の登り坂が「急峻」とみなされるピッチ角度の閾値があらかじめ決定され得て(もしくは例えば車両エンジンの出力に影響を与えうる標高、もしくは選択された車両モード等の他の要因も考慮して決定され得て)、失敗登坂の可能性が存在するため、もしくはそのような角度の登坂には低速ギヤが必要であるため、低速もしくは最低速の前進ギヤが選択され得て、加えて後進ギヤが予備選択され得る。車両速度が初期に速すぎて低速もしくは最低速の前進ギヤが有効に選択できない場合の実施形態において(例えば、坂に高速で接近する場合)、低速もしくは最低速の前進ギヤが登坂途中で選択されるときに後進ギヤの予備選択が自動的に起こり得る。1つの実施形態において後進ギヤの予備選択は車両が登坂中にトラクション制御システムの介在により起こる。
【0058】
1つの実施形態において車両の速度が判断され得る。エンジンに要求されるトルクも判断され得る。登坂途中であるという判断はトルク要求値がある閾値に達することでされ得る。例えば速度が低いのにかかわらずトルク要求が高い等、登坂の判断はトルク要求と車両速度の組み合わせに依存してされ得る。速度に対するトルクの図表が登坂が想定され得るトルク及び速度の範囲の判断に使われ得る。前記図表は標高等の他の要因も考慮にいれ得る。前記図表は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、もしくは他のあらゆる形態のコンピュータメモリに電子フォーマットで記憶されるチャート、もしくは参照表、もしくはルックアップテーブルの形態をとり得る。一定のトルクの範囲もしくはトルク対速度の範囲は失敗登坂の可能性のある登坂を示すとみなされ得る。そのような判断がされるもしくはそのような可能性が示されると次に後進ギヤの予備選択がされ得る。
【0059】
1つの実施形態において、本発明の態様による方法は、車両が坂を登るにつれ(もしくは坂を登り始めるときに)走行中の路面タイプを判断することを含み得る。例として、傾斜が同じ場合、砂地面は、タールマック舗装面と比較して失敗登坂の可能性が高いと見なされる。路面タイプは、例えば「砂地モード」もしくは「草地/砂利/雪(GGS)モード」等、運転者による車両モードの選択により判断され得る。そのような判断は、坂もしくは斜面が「急峻」であるとみなされるためのピッチ角度に影響を与え、従って失敗登坂の可能性に備えて後進ギヤの予備選択をするタイミングに影響を与える。
【0060】
実施形態において車両は1つ以上の車輪で「車輪スリップ」が起こっていると判断する手段を備え得る。一定の閾値レベルのスリップが検出されると、後進ギヤが予備選択され得る。これは失敗登坂が可能性として予測され、それに備えるためである。ここに記す車輪スリップの判断は、上記の路面タイプの判断と合わせ、及び/又は勾配/傾斜の判断と合わせ、後進ギヤの予備選択の起動に使われ得る。車両がどの前進ギヤにあるかの判断もされ得て、この情報も後進ギヤの予備選択をするかどうかの判断の際、考慮され得る。
【0061】
図3は、斜面2でこれ以上前進ができない地点、すなわち失敗登坂位置、に達した車両1を示す。車両は低速もしくは最低速の前進ギヤにあり、
図1もしくは
図2に関連して上述のいずれかの状況に従って、もしくはここに説明されるその他の態様もしくは実施形態のいずれかに従って、後進ギヤの予備選択がされている。
【0062】
説明されるとおり本発明の態様及び実施形態に従って、失敗登坂が発生したとここで判断される。
【0063】
この例では、車両の前進を維持するために十分なトラクションを得ることができないため、失敗登坂が発生した。運転者はアクセルを強く踏み、エンジンはトルク出力能力の99%(85%から100%までのいずれかの値で置き換え得る)を発生させている。車両のシステムは車輪スリップが発生していると判断し、車両の衛星ナビゲーションシステム7aは車両が停止していると判断した。車両のさらなるシステムが、ジャイロスコープから車両1のピッチを判断し登坂中の斜面2が35度以上であると判断した。車両のコントローラは従って失敗登坂が発生したと判断する。
【0064】
前記コントローラは続いて下記の動作をする。
【0065】
コントローラは車両のABSシステムに制御信号を送信して車輪ブレーキをかけ始める。それと同時に前進ギヤの連結の切り離しを開始し、車両の車輪(3、4)が停止するとき、車両のドライブラインから車輪を駆動するエンジンの正味のトルクが存在しないようにする。この例ではコントローラは車両のトランスミッションコントローラと連動する。
【0066】
ドライブラインから伝達されるトルクが減るにつれ、コントローラはまた運転者からのエンジントルク要求を軽減させ、車両の車輪が停止するときエンジンはアイドリング速度となるようにする。
【0067】
一旦車両の車輪が停止すると、車両は斜面で車輪ブレーキがかかりエンジンがアイドリング状態で停止し、休止期間が始まる。運転者5に対し車両の表示スクリーン11に失敗登坂の発生を知らせるメッセージが表示される。「車両は安全状態」もしくはそれに似た安心させるメッセージを表示してもよい。この例ではタッチスクリーンである表示スクリーンに例えば「車両の安全な復旧作業の継続の「了承」ボタンを押してください」というさらなるメッセージと「了承」と書かれた仮想ボタンが表示される。メッセージを見ると、運転者は「了承」ボタンを押す。
【0068】
さらなるメッセージが次に表示され、運転者に車両の復旧のために後進ギヤが連結され車両は「下り坂モード」で後退しつつ坂を下りることを通知する。さらに運転者がそれを起動できることを通知するために例えば「復旧の開始には、全てのペダル操作を解放してブレーキペダルを踏んで下さい。下りの開始準備ができたらブレーキペダルを解放して下さい。」というメッセージを表示する。このメッセージの中の「全てのペダル操作を解放して」の部分は運転者が、おそらくブレーキペダルと間違えてまだアクセルペダルを踏んでいるとコントローラが判断することへの応答である。もしもペダルが踏まれていなければこの部分のメッセージは省略できる。
【0069】
ここで説明されているメッセージは単に表示可能な種類のメッセージの代表に過ぎず、他の似たメッセージもしくは他の意思伝達手段も使用可能であることは明らかである。
【0070】
指示に従って運転者はアクセルペダルを解放し、続いてブレーキペダルを踏み、続いて解放する。予備選択されている後進ギヤが次に連結され、同時に車輪ブレーキが解放される。車両の下り坂モードが起動し車両は後進しつつ下りを開始する。車両は下り坂モードの起動なしでも後進で下れる。運転者によるアクセル入力も選択的に必要とされ得る、もしくは利用可能である。
【0071】
クラッチ及びトランスミッション部品の制御の詳細は車両に備わるトランスミッションのタイプによって変わることは明らかである。例えば、オートマチックトランスミッション、自動化されたマニュアルトランスミッションもしくはパワーシフトトランスミッション、もしくはここで図面に示される例のようなDCTなどがある。熟練者はここで説明される方法(もしくはそれを実施するためのシステムもしくはコントローラ)を修正改変して適合させて方法を生かすことができ、そのような適合は本明細の範囲内、そして特にここに添付の請求項の範囲内であると想定される。
【0072】
一態様において車両の失敗登坂の制御方法が提供され、車両は、少なくとも1つの前進及び少なくとも1つの後進ギヤ比を選択可能に含むオートマチックトランスミッション、及び前記トランスミッションによって駆動される少なくとも1つの車輪を含み、前記方法は、前進もしくは後進のギヤ比を選択する、及び/又は連結するステップと、失敗登坂の判断をするステップと、車両のブレーキをかけるステップと、逆向きの後進もしくは前進のギヤを選択する、及び/又は連結するステップと、ブレーキを解放するステップを含む。
【0073】
実施形態において、運転者が下りの開始の準備ができたことを確認するステップがあり得て、それはブレーキの解放、及び/又は逆向きのギヤの連結の前に起こり得る。運転者の確認とはトランスミッションの選択装置を後進の位置へ動かすことであり得る。
【0074】
実施形態において、失敗登坂の判断はいかなる方法でもされ得る、もしくは本発明の他のいずれかの態様に関してここに説明されるような判断であり得る。実施形態において、前進もしくは後進のギヤ比選択のステップは、いかなる方法でもされ得る、もしくは本発明の他のいずれかの態様に関してここに説明されるような判断であり得る。実施形態において、失敗登坂の判断ステップ、ブレーキの作動、逆向きのギヤの連結は自動的にコントローラもしくはその類似物による制御の下で行われ得る。さらなる、及び/又は追加のステップも同様に自動的であり得る。そのようなステップは運転者に対しさらなるステップを踏むべきであることを承認するよう求めることを含み得て、他のいずれかの態様に関してここに説明されるような方法で起こり得る。
【0075】
本発明の種々の変更及び修正が本出願の範囲の中で可能であると理解されたい。本発明のさらなる態様が下記の番号付き段落に示される。
【0076】
段落1:
トランスミッションを持つ車両の制御方法であって、該トランスミッションは少なくとも1つの前進及び少なくとも1つの後進の選択可能なギヤ比を持ち、それぞれが少なくとも1つの前記ギヤ比でエンジンもしくは原動機と少なくとも1つの車輪とをつなぎ得る少なくとも2つのクラッチを持ち、前記方法が、第一のクラッチにより前進もしくは後進ギヤ比を選択及び/又は連結するステップと、第二のクラッチにより逆向きの後進もしくは前進ギヤを予備選択するステップと、登り坂の失敗の判断をするステップと、逆向きの後進もしくは前進ギヤを選択及び/又は連結するステップを含む方法。
【0077】
段落2:
失敗登坂の判断に際し車両の車輪ブレーキを自動的にかけるステップを含む、段落1に記載の方法。
【0078】
段落3:
失敗登坂が、
車両速度と合わせた傾斜の測定値、
摩擦概算と合わせた傾斜の測定値、
トルク、パワー、もしくはスロットルの閾値の到達、
トルクもしくはパワー要求値の突然の変化、
車輪速度の突然の変化、
車輪速度の測定値と一致する車両移動の欠如、
車輪スリップ量の所定値もしくは閾値、
車両が利用可能な総トラクション量の到達、及び/又はそれ以上のトラクション取得がないことの判断、
パワーもしくはトルクの運転者要求の中断、
車両の運転者によるブレーキ、
パワーもしくはトルクの運転者要求の中断と車両の運転者によるブレーキ要求の組み合わせ、
低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比が選択されエンジンが最大トルク、パワーもしくはスロットルの設定となる状況、
低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比が選択されエンジンが最大トルク、パワーもしくはスロットルの設定となる状況と車両が利用可能な総トラクション量の到達、及び/又はそれ以上のトラクション取得がないことの判断の組み合わせ、
低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比が選択されエンジンが最大トルク、パワーもしくはスロットルのうちの閾値もしくは所定割合となる状況、
低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比が選択されエンジンが最大トルク、パワーもしくはスロットルのうちの閾値もしくは所定割合となる状況と車両が利用可能な総トラクション量の到達、及び/又はそれ以上のトラクション取得がないことの判断の組み合わせ、
のうちの1つ以上もしくはいずれかの組み合わせの検出により判断される、段落1に記載の方法。
【0079】
段落4:
逆向きの後進もしくは前進ギヤの予備選択が車両による斜面の登り走行の前もしくは途中に起こる、段落1に記載の方法。
【0080】
段落5:
前記予備選択が、
i/ 低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比の選択、
ii/ ドライブモード、選択的にトラクション制御モード、選択的に「登り坂モード」もしくは「ローレンジモード」の選択、
iii/ ドライブモード、選択的にトラクション制御モード、選択的に「登り坂モード」もしくは「ローレンジモード」の選択への応答としての低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比の選択、
iv/ そこまでのギヤ比選択が連続的にギヤダウンであったという判断、
v/ 車両のエンジンのパワーもしくはトルク要求の減少無しに、その時点までのギヤ比選択が連続的にギヤダウンであったという判断、
vi/ 最低速の前進もしくは後進ギヤ比の選択がされたが大きなパワーもしくはトルク要求がされたという判断、
vii/ 車両体勢の閾値の検出、
viii/ 車両ピッチ角の閾値の検出、
ix/ エンジンのトルク要求閾値の検出、
x/ 車両が坂を登っているという判断、
xi/ 車両が今まさに坂を登ろうとしているという判断、
xii/ 車輪スリップ量の閾値の判断、
xiii/ 車両が坂を登っており、横切っている路面タイプが選択的に砂、雪、氷、泥、草、砂利のうちの1つであることの判断、
xiv/ 車両速度が第一の閾値より低く、トルク要求が第二の閾値より大きいという判断、
のうちの1つ以上もしくはいずれかの組み合わせに対する応答として起こる、段落4に記載の方法。
【0081】
段落6:
前進もしくは後進ギヤ比の選択が、
i/ 低速もしくは可能な最低速の前進もしくは後進ギヤ比の選択命令、
ii/ ドライブモード、選択的にトラクション制御モード、選択的に「登り坂モード」もしくは「ローレンジモード」の選択、
iii/ そこまでのギヤ比選択が連続的にギヤダウンであったという判断、
iv/ 車両のエンジンのパワーもしくはトルク要求の減少無しに、そこまでのギヤ比選択が連続的にギヤダウンであったという判断、
vi/ 車両体勢の閾値の検出、
vii/ 車両ピッチ角の閾値の検出、
viii/ エンジンのトルク要求閾値の検出、
ix/ 車両が坂を登っているという判断、
x/ 車両が今まさに坂を登ろうとしているという判断、
xi/ 車両が坂を登っていて、横切っている路面タイプが選択的に砂、雪、氷、泥、草、砂利のうちの1つであることの判断、
xiv/ 車両速度が第一の閾値より低く、トルク要求が第二の閾値より大きいという判断、
のうちの1つ以上もしくはいずれかの組み合わせに対する応答として起こる、段落1に記載の方法。
【0082】
段落7:
選択される前進もしくは後進ギヤ比が使用可能な最も低速な前進もしくは後進ギヤ比である、段落6に記載の方法。
【0083】
段落8:
車両の運転者に失敗登坂の発生を通知するステップを含む、段落1に記載の方法。
【0084】
段落9:
車輪ブレーキを解放するステップを含む、段落2に記載の方法。
【0085】
段落10:
車輪ブレーキの解放が運転者の入力に応答して起こる、段落9に記載の方法。
【0086】
段落11:
前記運転者の入力が、
i/ タッチスクリーン入力、
ii/ 音声命令、
iii/ ブレーキペダルの踏み込み、及び/又は解放、
iv/ アクセルペダルの踏み込み、及び/又は解放、
v/ クラッチペダルの踏み込み、及び/又は解放、
vi/ スイッチ、トグル、ノブ、もしくは他の回転式スイッチの起動もしくは使用、
vii/ 車両のドライブモードの選択もしくは起動、
viii/ 車両の制御システムの選択もしくは起動、
ix/ 車両のギヤ比もしくはその等価物の選択、
のうちの1つ以上もしくはいずれかの組み合わせである、段落10に記載の方法。
【0087】
段落12:
車両の失敗登坂の際の制御方法であって、前記車両は、少なくとも1つの前進及び少なくとも1つの後進の選択可能なギヤ比を含むオートマチックトランスミッションと、前記トランスミッションにより駆動される少なくとも1つの車輪を持ち、前記方法が、前進もしくは後進ギヤ比を選択するステップと、登り坂の失敗の判断をするステップと、車両にブレーキをかけるステップと、逆向きの後進もしくは前進ギヤを連結するステップを含む方法。
【0088】
段落13:
車両の運転者に失敗登坂を通知するステップを含む、段落12に記載の方法。
【0089】
段落14:
車輪ブレーキを解放するステップを含む、段落12に記載の方法。
【0090】
段落15:
車輪ブレーキの解放が運転者の入力に応答して起こる、段落14に記載の方法。
【0091】
段落16:
前記運転者の入力が、
i/ タッチスクリーン入力、
ii/ 音声命令、
iii/ ブレーキペダルの踏み込み、及び/又は解放、
iv/ アクセルペダルの踏み込み、及び/又は解放、
v/ クラッチペダルの踏み込み、及び/又は解放、
vi/ スイッチ、トグル、ノブ、もしくは他の回転式スイッチの起動もしくは使用、
vii/ 車両のドライブモードの選択もしくは起動、
viii/ 車両の制御システムの選択もしくは起動、
ix/ 車両のギヤ比もしくはその等価物の選択、
のうちの1つ以上もしくはいずれかの組み合わせである、段落15に記載の方法。
【0092】
段落17:
段落1〜16のいずれかに記載の方法を実施するよう構成されるコントローラもしくはシステム。
【0093】
段落18:
段落17に記載のコントローラもしくはシステムを含む車両。
【0094】
段落19:
車両の運転者によって有効化及び/又は無効化がされ得る、段落17に記載のもしくは段落18の車両に搭載のコントローラもしくはシステム。