【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、薬剤で充填すべきカートリッジ用のピストンを提供する。ピストンは、カートリッジの内側容積を気密封止するために、近位封止としてカートリッジの管形状の本体内へ配置される。さらに、ピストンは、カートリッジの容積の内側で対応する流体圧力を蓄積するために、ピストンロッドを用いて、または薬物送達デバイスの駆動機構の同等の駆動部材を介して、遠位方向に変位されるように適合および設計される。
【0013】
通常、カートリッジは、遠位端に別の穿孔可能な封止部材を有することを特色とし、カートリッジの管状の本体に対するピストンの変位が遠位方向に誘導されることに応答して、この穿孔可能な封止部材を介して、カートリッジから液体の薬剤を排出することができる。
【0014】
ピストンは、第1の材料を含み、または第1の材料から作られ、カートリッジの内側容積の方を向くピストンの遠位端面を形成する第1のピストン部材を含む。ピストンは、第1の材料より圧縮率が低い第2の材料を含む第2のピストン部材をさらに含む。さらに、第2のピストン部材は、第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内に配置され、ピストンの近位端面に推力を受ける面(thrust receiving surface)を形成する。
【0015】
特許文献1に開示されている実施形態とは対照的に、第2のピストン部材は、薬物送達デバイスの駆動機構の推力を及ぼす部材(thrust exerting membe
r)に動作可能に係合されるように直接適合される。第2のピストン部材の近位方向に誘導される端面は、ピストンの外側からアクセス可能であることが明らかである。したがって、第2のピストン部材は、第1のピストン部材によって完全に埋め込まれ、または取り囲まれるのではなく、たとえば薬物送達デバイスのピストンロッドに直接係合するように設計および適合される。第2のピストン部材は、ピストンの近位端面を少なくとも部分的に提供する。
【0016】
そのように第2のピストン部材の近位推力を受ける面に外部からアクセスできることは、投与精度の点から有益である。推力を及ぼす部材、たとえばピストンロッドと、比較的低い圧縮率を有することを特色とする第2のピストン部材との間の直接の当接および接触により、特に最初の遠位方向に誘導されるピストン変位の過程で普通なら上昇しうるピストンの軸方向の圧縮が著しく低減される。
【0017】
第2のピストン部材にアクセスできることは、ピストンの製造プロセスの点からもさらに有益である。実際に、第1のピストン部材と第2のピストン部材は、別個に製造することができ、カートリッジの内側でピストンを最後に組立てるまで相互に組立てることを必要とするだけである。第1のピストン部材と第2のピストン部材の組立ては、必ずしも射出成形を介して行う必要はなく、個々の構成要素、すなわち第1のピストン部材と第2のピストン部材が別個に製造された後に、別個の組立てプロセスを行うことを介して、すべて機械的に実施することができる。
【0018】
さらに、ピストンが中で組立てられる特定のカートリッジに応じて、事前定義された寸法を有することを特色とする第2のピストン部材を、異なる機械的または幾何学的特性を有することを特色とする多種多様な第1のピストン部材とともに使用することもできる。追加として、ピストンの軸方向の圧縮率を全体として修正するために、事前定義されたタイプおよび/または寸法の第1のピストン部材が、様々な異なる第2のピストン部材に連結されることも考えられる。
【0019】
第2のピストン部材は、第1の材料と比較するとより低い圧縮率の材料を含むため、第2のピストン部材は、剛性の芯として、またはピストンの機械的な剛直性および剛性を強化する補強構成要素として働くことができ、かなり弾性の第1のピストン部材はやはり、カートリッジの内側容積を封止するのに十分な弾性を提供する。
【0020】
さらに、第1のピストン部材および第2のピストン部材は、ピストン全体を形成または構成することができる。したがって、通常はカートリッジ内に摺動可能に配置されるピストンは、第1のピストン部材および第2のピストン部材のみからなることができ、それによって第1のピストン部材および第2のピストン部材の推力を受ける共通の近位面をさらに形成または提供して、送達デバイスの推力を及ぼすピストンロッドまたはプランジャに機械的に当接させることができる。
【0021】
この文脈では、ピストンは、カートリッジの近位封止として働き、市場および顧客への送達前にカートリッジ内に組立てられる。したがって、カートリッジのガラス質またはポリマーベースの本体、およびその中に組立てられるピストンは、駆動機構に動作可能に連結されるように事前に構成されたカートリッジを形成し、この駆動機構を介して、カートリッジの本体に対してピストンを変位させて液体の薬剤をカートリッジから排出することができる。
【0022】
好ましい実施形態によれば、第1の材料および/または第2の材料はポリマー材料を含む。
【0023】
さらに、これは、第1の材料が天然および/または合成ゴムを含むときに有益である。好ましくは、第1の材料は、ブロモブチルゴムのようなブチルゴムを含む。さらに好ましい実施形態では、第2の材料は、第1の材料の圧縮率より実質上小さい機械圧縮率を有することを特色とする環状オレフィンコポリマー(COC)を含む。言い換えれば、第2のピストン部材の硬度または剛性は、第1のピストン部材のものより実質上大きい。
【0024】
具体的には、第1の材料と第2の材料はまた、それらの比重に関して実質上異なることができる。第1のピストン部材だけがピストンの遠位端面を形成するため、異なる比重を有することを特色とする第1の材料および第2の材料を第1のピストン部材および第2のピストン部材に対して使用するとき、ピストン全体の重心を軸方向に変位させることができる。特に大量生産または大量組立てプロセスでは、たとえば多数のピストンを明確な向きにするために、重心のそのような変位をさらに使用することができる。好ましくは、第2のピストン部材の比重は、第1のピストン部材の比重を少なくとも5%、10%、15%、20%、またはさらには30%超過する。
【0025】
別の実施形態によれば、第1のピストン部材および/または第2のピストン部材は、円筒形または管状の形状であり、第1のピストン部材は、第2のピストン部材を少なくとも横方向に取り巻くことがさらなる利益である。さらに、第1のピストン部材はピストンの遠位面を形成するため、第1のピストン部材はまた、第2のピストン部材の遠位方向に誘導される端面を取り巻いてそれを覆う。好ましくは、第1のピストン部材は、第2のピストン部材を完全に受ける。また、第2のピストン部材は、好ましくは、第1のピストン部材内に設けられるレセプタクルを完全に充填する形状および幾何形状を含む。こうして、第1のピストン部材のレセプタクルの内部のあらゆる中空の空間は、かなり剛性かつ非圧縮性の材料で実質上充填することができる。
【0026】
さらに好ましい実施形態では、第2のピストン部材は、軸方向(z)で第1のピストン部材の底面に当接する。第2のピストン部材の遠位方向に誘導される端面が、第1のピストン部材のレセプタクルの近位方向に誘導される底面に当接するときが、特定の利益となる。こうして、推力伝達要素として働く第2のピストン部材は、ピストンの遠位方向に位置する底面に直接接触し、この遠位方向に位置する底面は、その反対に位置する遠位方向に誘導される表面とともに、カートリッジの内側容積を閉じ込める。
【0027】
本発明によるピストンは、その結果生じる第2のピストン部材および第1のピストン部材の軸方向の変位が、第1のピストン部材の円周で径方向に外側に配置された近位方向に位置する封止面に、押すのではなく引きずるように伝達されるような形状および幾何形状を含む。したがって、第1のピストン部材の環状封止面の遠位方向に誘導される変位は、押すのではなく引きずることによって主に調整される。したがって、封止面は、第2のピストン部材の推力を受ける面の動きに追従する。実際には、第1のピストン部材の環状の円周側壁部分は、遠位方向に誘導される変位中に圧縮ではなく軸方向の伸長を受ける。したがって、軸方向の圧縮を効果的に打ち消すことができる。
【0028】
したがって、第2のピストン部材を取り囲み、または取り巻くことができる第1のピストン部材の横方向の側壁は、ピストンロッドおよび/または第2のピストン部材の遠位方向に誘導される変位中に、軸方向の圧縮を受けなくなる。軸方向の圧縮は、第1のピストン部材の底部部分のみで生じることがある。次いで、第1のピストン部材の底部部分
の軸方向の伸びは、ピストンおよび/または第1のピストン部材の全体的な軸方向の
伸びの20%未満、好ましくは10%未満、またはさらには5%未満
であることが、特定の利益となる。第1のピストン部材の推力を伝送する底部部分の軸方向の寸法を低減させることによって、ピストンの全体的な軸方向の圧縮および/または弛緩をかなり低いレベルで維持することができる。
【0029】
さらに好ましい実施形態では、第2のピストン部材の推力を受ける面は、第1のピストン部材の近位端面に実質上同一平面に取り付けられる。こうして、ピストン全体の平滑および/または平坦な近位面を得ることができる。しかし、第2のピストン部材の推力を受ける面は、第1のピストン部材の近位端面と比較すると、軸方向にずれて位置することも考えられる。第2のピストン部材は、第1のピストン部材から近位方向に軸方向に突出することができ、または完全に第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内に位置することもできる。
【0030】
ピストンロッドの横方向の寸法および全体的な幾何形状に応じて、ピストンの近位端面における第1のピストン部材および第2のピストン部材の突出する配置、凹状の配置、または同一平面に取り付けられた配置が好ましいことがある。
【0031】
別の実施形態では、第1のピストン部材は、第1のピストン部材内にプレス嵌めされる。第1のピストン部材と第2のピストン部材の相互の組立ては、たとえば、すべて機械的なプレス嵌めの組立て工程によって得ることができ、たとえば第2のピストン部材は、第1のピストン部材のカップ状のレセプタクルの内側に押し込まれる。さらに、第1および周辺のピストン部材はまた、剛性の第2のピストン部材上で押したり引いたりすることができる。ここで、第1のピストン部材および第2のピストン部材は、相互に組立てられたときに第1のピストン部材および/または第2のピストン部材の弾性の変形から生じる機械的な復元力によって、組立て構成内に維持および固定することができる。
【0032】
この文脈では、第1のピストン部材と第2のピストン部材は、少なくとも第2のピストン部材が第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内に配置されるときに摩擦係合することも考えられる。追加または別法として、第1のピストン部材と第2のピストン部材はまた、接着剤を用いて相互に連結することができ、接着剤は、第1のピストン部材および/または第2のピストン部材の接触面の少なくとも1つの上へ塗布される。
【0033】
第2のピストン部材を第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内へ挿入するには、第1のピストン部材のカップ状のレセプタクルが第2のピストン部材を滑らかに受けるように円筒形の形状であるときが、特定の利益になる。
【0034】
射出成形を介して第1のピストン部材と第2のピストン部材の接合された分離できない相互連結を実現することも、概ね考えられる。したがって、少なくとも第2のピストン部材は、第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内へ射出成形することができ、それによって第1のピストン部材は鋳型として働く。射出成形プロセスの過程で、第1のピストン部材および第2のピストン部材の内側および外側の側壁区分を相互に当接する相互接合を得ることができる。
【0035】
ピストンの2つの別個の構成要素相互の組立ては、電子回路のようなさらなる構成要素をピストン内へ統合するのにさらに有益である。したがって、別の好ましい態様によれば、第1のピストン部材と第2のピストン部材との間、好ましくは第1のピストン部材の相互に当接する底面と、第2のピストン部材の遠位方向に誘導される端面との間に、電子回路を配置することができる。しかし、第1のピストン部材および第2のピストン部材の前記底部の遠位端面は、軸方向に誘導される推力を伝達するように適合されるため、別の実施形態によって、第2のピストン部材の遠位端面および/または第1のピストン部材の底面は、電子回路を少なくとも部分的に受けるための少なくとも1つの凹部を含むときが、さらなる利益になることができる。こうして、電子回路は、第1のピストン部材と第2のピストン部材のインターフェース内で生じる機械的な衝撃から効果的に保護することができる。
【0036】
電子回路は、好ましくはマイクロチップとして設計され、少なくとも製造日および/または時間を提供するデータ記憶装置を備えることができる。さらに、電子回路は、ピストンおよび/または付随するカートリッジが許容できない環境条件に露出されたかどうかを検出するために、感温、感圧、または感光センサのような異なるタイプのセンサを装備することができる。電子回路は、通信ユニット、好ましくは無線通信ユニットをさらに装備することができ、この通信ユニットを介して、記憶されたデータの内容を要求に応じて取り出すことができる。
【0037】
たとえば、電子回路は、対応する読取りデバイスと無線で通信することが可能であるRFID要素を含むことができる。こうして、偽造されたカートリッジおよびピストンを容易に検出することができる。追加として、偽造防止電子回路は、第1のピストン部材および第2のピストン部材によって完全に覆うことができ、したがって、使用者または販売業者には見えないようになっている。
【0038】
さらに別の実施形態では、第2のピストン部材
の軸方向の伸びは、ピストンの全体的な軸方向の
伸びの少なくとも80%、90%、または好ましくはさらには
少なくとも95%
である。第2のピストン部材の軸方向の
伸びを最大にすることによって、ピストン全体の軸方向の圧縮率をさらに低減させることができる。第2のピストン部材の軸方向の
伸びの最大化は、第1のピストン部材の底部部分の封止特性のみによって制限される。
【0039】
したがって、第1のピストン部材の対応する底部部分の軸方向の
伸びは、十分な封止をそれでもなお提供できるような最小値までしか低減させることができない。
【0040】
他の独立の態様では、本発明はまた、薬物送達デバイスとともに使用されるカートリッジに関し、このカートリッジは、薬剤で少なくとも部分的に充填された内側容積を閉じ込める管形状の本体を備え、上述したピストンによって封止される。したがって、前記カートリッジのピストンは、第1のピストン部材および第2のピストン部材を備え、第2のピストン部材は、第1のピストン部材より低い圧縮率を有することを特色とする。
【0041】
他の独立の態様では、本発明はまた、上述したピストンを製造する方法に関する。この製造方法は、第1の材料を有し、その近位端の方へ開いたカップ状のレセプタクルを備える第1のピストン部材を設ける工程を含む。第2の工程では、第2の材料から作られ、第1の材料と比較するとより低い圧縮率を有することを特色とする第2のピストン部材が、カップ状のレセプタクル内へ挿入され、第2のピストン部材は、ピストンの近位端に推力を受ける面を形成する近位端面を含む。
【0042】
第1のピストン部材および第2のピストン部材に使用される材料のタイプに応じて、様々な異なる相互組立て方法が概ね考えられる。たとえば、第1のピストン部材と第2のピストン部材をプレス嵌めすることができる。別法として、異なる材料の2つのピストン部材を有するピストンは、射出成形または接合を介して製造することもできる。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、第1のピストン部材の前記レセプタクル内への第2のピストン部材の挿入前に、第1のピストン部材のレセプタクル内および/または第2のピストン部材の遠位方向に誘導される凹部内に電子回路が位置する。実際には、第1のピストン部材と第2のピストン部材の相互の機械的な組立ては、第1のピストン部材と第2のピストン部材との間でピストンの最終のアセンブリでは見えない領域内に電子回路を組立てまたは埋め込むのに有益である。
【0044】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な
化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0045】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0046】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0047】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0048】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39
)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0049】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0050】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳
下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0051】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0052】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0053】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0054】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0055】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0056】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0057】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(V
L)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0058】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0059】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0060】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0061】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本発明に加えることができることが、当業者にはさらに明らかになるであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用されるあらゆる参照符号は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0062】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照することによって説明する: