特許第6383017号(P6383017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許6383017薬物送達デバイス内で使用するためのカートリッジ用のピストン
<>
  • 特許6383017-薬物送達デバイス内で使用するためのカートリッジ用のピストン 図000002
  • 特許6383017-薬物送達デバイス内で使用するためのカートリッジ用のピストン 図000003
  • 特許6383017-薬物送達デバイス内で使用するためのカートリッジ用のピストン 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383017
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス内で使用するためのカートリッジ用のピストン
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   A61M5/315 510
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-6352(P2017-6352)
(22)【出願日】2017年1月18日
(62)【分割の表示】特願2014-539333(P2014-539333)の分割
【原出願日】2012年11月1日
(65)【公開番号】特開2017-94151(P2017-94151A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】11187479.8
(32)【優先日】2011年11月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ラマトゥラ・クァリシ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・オッテン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・トリンクレ
(72)【発明者】
【氏名】イェルン・メッケル
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ティール
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/133676(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0233075(US,A1)
【文献】 特開2005−106168(JP,A)
【文献】 特開2008−096404(JP,A)
【文献】 特開平05−099769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/00− 9/00
A61M 31/00
A61M 39/00−39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤で充填されるカートリッジ用のピストンであって:
第1の材料を含み、前記ピストンの遠位端面(22)を形成する第1のピストン部材(12)と、
第1の材料と比較するとより低い圧縮率の第2の材料を含む第2のピストン部材(14)とを備え、
ここで、第2のピストン部材(14)は、第1のピストン部材(12)のカップ状のレセプタクル(16)内に配置され、前記ピストンの近位端(24)に推力を受ける面(25)を提供し、
さらに、第1のピストン部材(12)と第2のピストン部材(14)との間のインターフェース領域内に配置された、外側からは見えないようになっている電子回路(30)を含み、ここで、電子回路(30)は、マイクロチップとして設計されている、
ことを特徴とする上記ピストン。
【請求項2】
電子回路(30)は、データ記憶装置を備える、請求項1に記載のピストン。
【請求項3】
電子回路(30)は、感温センサおよび感光センサの少なくとも1つを備える、請求項1または2に記載のピストン。
【請求項4】
電子回路(30)は、通信ユニットを備える、請求項1または2に記載のピストン。
【請求項5】
前記通信ユニットは、無線通信ユニットである、請求項4に記載のピストン。
【請求項6】
前記通信ユニットは、読取りデバイスと通信するように構成されたRFID要素を備える、請求項5に記載のピストン。
【請求項7】
前記データ記憶装置は、少なくとも製造日および/または時間を記憶するように構成されている、請求項2に記載のピストン。
【請求項8】
電子回路(30)は、第1のピストン部材(12)の近位方向に方向付けられる底面と、第2のピストン部材(14)の遠位方向に方向付けられる端面との間に配置され、前記底面と前記端面は互いに当接する、請求項1または2に記載のピストン。
【請求項9】
第2のピストン部材(14)の推力を受ける面(25)は、ピストンの平滑または平坦な形状の近位面を形成するように、第1のピストン部材(12)の近位端面に同一平面に取り付けられる、請求項1または2に記載のピストン。
【請求項10】
第1のピストン部材(12)および第2のピストン部材(14)は、前記ピストン全体を形成または構成する、請求項1に記載のピストン。
【請求項11】
第1のピストン部材(12)は、円筒形または管状の形状であり、第2のピストン部材(14)を横方向に取り巻く、請求項1に記載のピストン。
【請求項12】
第2のピストン部材(14)は、第1のピストン部材(12)内に設けられるレセプタクル(16)を完全に充填する形状および幾何形状を含む、請求項1に記載のピストン。
【請求項13】
第2のピストン部材(14)は、軸方向(1、2)で第1のピストン部材(12)の底面(18)に当接する、請求項1に記載のピストン。
【請求項14】
第1のピストン部材(12)の底部部分の軸方向の伸びは、前記ピストンまたは第1のピストン部材(12)の全体的な軸方向の伸びの20%未満、10%未満または5%未満である、請求項1に記載のピストン。
【請求項15】
第2のピストン部材(14)は、第1のピストン部材(12)のレセプタクル(16)内に嵌合されている、請求項1に記載のピストン。
【請求項16】
第2のピストン部材(14)の遠位端面および/または第1のピストン部材(12)の底面(18)は、電子回路(30)を受けるための凹部を含む、請求項1に記載のピストン。
【請求項17】
第2のピストン部材(14)の軸方向の伸びは、ピストンの全体的な軸方向の伸びの少なくとも80%、90%、または少なくとも95%である、請求項1〜16のいずれか1項に記載のピストン。
【請求項18】
薬物送達デバイスとともに使用されるカートリッジであって、薬剤で少なくとも部分的に充填された内側容積(44)を閉じ込める管形状の本体(42)を備え、ピストン(10)が軸方向(1、2)で管状の本体(42)内に変位可能に配置されることによって封止され、
ここで、前記ピストンは、
該ピストンの遠位端面を形成する第1のピストン部材と、
第2のピストン部材とを備え、
ここで、第2のピストン部材は、第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内に配置され、前記ピストンの近位端(24)に推力を受ける面を提供し、
さらに、第1のピストン部材と第2のピストン部材との間のインターフェース領域内に配置された、外側からは見えないようになっている電子回路を含み、ここで、前記電子回路は、マイクロチップとして設計されている、
ことを特徴とする上記カートリッジ。
【請求項19】
ピストンを製造する方法であって:
カップ状のレセプタクル(16)を有する第1のピストン部材(12)を用意する工程と、
第2のピストン部材(14)を前記レセプタクル内へ挿入する工程と、
第1のピストン部材(12)のレセプタクル(16)内への第2のピストン部材(14)の挿入前に、第1のピストン部材(12)のレセプタクル(16)内または第2のピストン部材(14)の凹部内に電子回路(13)を配置する工程を含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤で少なくとも部分的に充填されたカートリッジ用のピストンに関する。詳細には、本発明は、ペン注射器のような薬物送達デバイス内で使用される管形状のカートリッジに対する封止として働くピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
使用者操作式の薬物送達デバイスは、それ自体、従来技術で知られている。これらのデバイスは通常、正式な医療訓練を受けていない人、すなわち患者が、ヘパリンまたはインシュリンなどの医薬品の正確な所定の用量を投与する必要がある状況で適用可能である。具体的には、そのようなデバイスは、短期間または長期間にわたって規則的または不規則に薬剤が投与される場合に適用される。
【0003】
これらの要求に対応するために、そのようなデバイスは、複数の要件を満たさなければならない。第1に、デバイスは、使用者による取扱いおよびその動作の理解、ならびに必要な用量または薬剤の送達の点から、構造上頑丈でありながら、それでもなお容易に使用できなければならない。用量設定は、容易かつ明瞭でなければならない。デバイスが再利用可能ではなく使い捨てである場合、デバイスは、安価に製造でき、かつ容易に処分できるべきである。
【0004】
そのようなデバイス、具体的にはペン注射器は通常、デバイスによって配置される、薬剤を収容および提供する交換可能または使い捨てのカートリッジを受けるように適合される。カートリッジは、流体を伝達するように穿孔要素、たとえば注射針、カニューレなどに連結される出口を備える。遠位投薬端の反対側では、カートリッジは通常、カートリッジの本体内に摺動可能に配置される変位可能なピストンを介して封止される。所定の用量の薬剤を排出するために、薬物送達デバイスのプランジャまたはピストンロッドは、ピストンに作用して、前記ピストンを遠位方向、したがって用量投薬方向に所定の距離だけ変位させるように適合される。
【0005】
一方では、ピストンは、薬剤のあらゆる制御されていない流出を防止するために、耐久性のある漏れない封止を提供しなければならない。他方では、ピストンはまた、カートリッジの薬物受入れ容積(drug receiving volume)への不純物または他の外部の物質の侵入を防止しなければならない。その封止能力とは別に、ピストンは、カートリッジの側壁に対して変位可能でなければならない。カートリッジの容易で滑らかな動作を可能にするためには、カートリッジの側壁とピストンとの接触面に本質的に存在する摩擦力を最小に維持するべきである。
【0006】
具体的には、デバイスおよび/またはそのカートリッジが初めて使用されるとき、投与精度(dosing accuracy)は最適とはいえないものであり、したがって非常に重要なものとなることがある。特にデバイスを最初に使用する前には、その機械的に相互作用する構成要素は、まだ完全に係合していないことがあり、かつ/またはカートリッジのピストンロッドとピストンとの相互の当接は、ピストンロッドの最初の遠位方向の変位中にしか得られない。そのような状況では、デバイスによって投薬される最初の用量は、少なすぎることがある。さらに、カートリッジのガラス質の管形状の本体を封止するピストンは、比較的弾性および圧縮性のある材料からできているため、ピストン自体も、ピストンロッドの最初の変位中に、対応する軸方向の圧縮を受けることがある。そのような最初の圧縮は、カートリッジの本体の内向きの側壁と、ピストンの横方向もしくは円周方向の側壁または対応する封止リップとの間の摩擦力のため、さらに維持されることがあ
る。
【0007】
さらに、ピストンの偶発的な軸方向の弛緩は、かえって不利であり、カートリッジの内側で流体圧力の増大をもたらすことがある。カートリッジがまだたとえば穿孔要素と流動的に連通している状況では、そのような内部圧力により、穿孔アセンブリの遠位先端部で投薬後の小滴の生成が観察されることがある。
【0008】
たとえば、特許文献1は、遠位および近位端面を有する薬物収容カートリッジ用の栓を開示している。この栓はまた、少なくとも2つの異なる材料を含み、第1の材料は、栓の横方向領域全体を覆い、第2の材料は、栓の内側に少なくとも部分的に配置される。さらに、第1の材料は、第2の材料より大きい圧縮率を有する。
【0009】
この栓の軸方向の圧縮率は低減されるとはいえ、第2の材料は第1の材料によって完全に取り囲まれるため、そのようなピストンの製造は煩雑であり、費用集約的である。たとえば、そのような栓の製造には、多構成の注射成型プロセスが必要となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2010/133675A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、低減された圧縮度を特色とし、投与精度の点で有益である、薬物送達デバイス内で使用されるカートリッジ用の改善されたピストンを提供することである。さらに、ピストンは、費用効率的に容易に組立てることができるべきである。ピストンおよびピストンを組立てる方法は、製品の偽造を確実に防ぐことに関して、さらに有益になるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、薬剤で充填すべきカートリッジ用のピストンを提供する。ピストンは、カートリッジの内側容積を気密封止するために、近位封止としてカートリッジの管形状の本体内へ配置される。さらに、ピストンは、カートリッジの容積の内側で対応する流体圧力を蓄積するために、ピストンロッドを用いて、または薬物送達デバイスの駆動機構の同等の駆動部材を介して、遠位方向に変位されるように適合および設計される。
【0013】
通常、カートリッジは、遠位端に別の穿孔可能な封止部材を有することを特色とし、カートリッジの管状の本体に対するピストンの変位が遠位方向に誘導されることに応答して、この穿孔可能な封止部材を介して、カートリッジから液体の薬剤を排出することができる。
【0014】
ピストンは、第1の材料を含み、または第1の材料から作られ、カートリッジの内側容積の方を向くピストンの遠位端面を形成する第1のピストン部材を含む。ピストンは、第1の材料より圧縮率が低い第2の材料を含む第2のピストン部材をさらに含む。さらに、第2のピストン部材は、第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内に配置され、ピストンの近位端面に推力を受ける面(thrust receiving surface)を形成する。
【0015】
特許文献1に開示されている実施形態とは対照的に、第2のピストン部材は、薬物送達デバイスの駆動機構の推力を及ぼす部材(thrust exerting membe
r)に動作可能に係合されるように直接適合される。第2のピストン部材の近位方向に誘導される端面は、ピストンの外側からアクセス可能であることが明らかである。したがって、第2のピストン部材は、第1のピストン部材によって完全に埋め込まれ、または取り囲まれるのではなく、たとえば薬物送達デバイスのピストンロッドに直接係合するように設計および適合される。第2のピストン部材は、ピストンの近位端面を少なくとも部分的に提供する。
【0016】
そのように第2のピストン部材の近位推力を受ける面に外部からアクセスできることは、投与精度の点から有益である。推力を及ぼす部材、たとえばピストンロッドと、比較的低い圧縮率を有することを特色とする第2のピストン部材との間の直接の当接および接触により、特に最初の遠位方向に誘導されるピストン変位の過程で普通なら上昇しうるピストンの軸方向の圧縮が著しく低減される。
【0017】
第2のピストン部材にアクセスできることは、ピストンの製造プロセスの点からもさらに有益である。実際に、第1のピストン部材と第2のピストン部材は、別個に製造することができ、カートリッジの内側でピストンを最後に組立てるまで相互に組立てることを必要とするだけである。第1のピストン部材と第2のピストン部材の組立ては、必ずしも射出成形を介して行う必要はなく、個々の構成要素、すなわち第1のピストン部材と第2のピストン部材が別個に製造された後に、別個の組立てプロセスを行うことを介して、すべて機械的に実施することができる。
【0018】
さらに、ピストンが中で組立てられる特定のカートリッジに応じて、事前定義された寸法を有することを特色とする第2のピストン部材を、異なる機械的または幾何学的特性を有することを特色とする多種多様な第1のピストン部材とともに使用することもできる。追加として、ピストンの軸方向の圧縮率を全体として修正するために、事前定義されたタイプおよび/または寸法の第1のピストン部材が、様々な異なる第2のピストン部材に連結されることも考えられる。
【0019】
第2のピストン部材は、第1の材料と比較するとより低い圧縮率の材料を含むため、第2のピストン部材は、剛性の芯として、またはピストンの機械的な剛直性および剛性を強化する補強構成要素として働くことができ、かなり弾性の第1のピストン部材はやはり、カートリッジの内側容積を封止するのに十分な弾性を提供する。
【0020】
さらに、第1のピストン部材および第2のピストン部材は、ピストン全体を形成または構成することができる。したがって、通常はカートリッジ内に摺動可能に配置されるピストンは、第1のピストン部材および第2のピストン部材のみからなることができ、それによって第1のピストン部材および第2のピストン部材の推力を受ける共通の近位面をさらに形成または提供して、送達デバイスの推力を及ぼすピストンロッドまたはプランジャに機械的に当接させることができる。
【0021】
この文脈では、ピストンは、カートリッジの近位封止として働き、市場および顧客への送達前にカートリッジ内に組立てられる。したがって、カートリッジのガラス質またはポリマーベースの本体、およびその中に組立てられるピストンは、駆動機構に動作可能に連結されるように事前に構成されたカートリッジを形成し、この駆動機構を介して、カートリッジの本体に対してピストンを変位させて液体の薬剤をカートリッジから排出することができる。
【0022】
好ましい実施形態によれば、第1の材料および/または第2の材料はポリマー材料を含む。
【0023】
さらに、これは、第1の材料が天然および/または合成ゴムを含むときに有益である。好ましくは、第1の材料は、ブロモブチルゴムのようなブチルゴムを含む。さらに好ましい実施形態では、第2の材料は、第1の材料の圧縮率より実質上小さい機械圧縮率を有することを特色とする環状オレフィンコポリマー(COC)を含む。言い換えれば、第2のピストン部材の硬度または剛性は、第1のピストン部材のものより実質上大きい。
【0024】
具体的には、第1の材料と第2の材料はまた、それらの比重に関して実質上異なることができる。第1のピストン部材だけがピストンの遠位端面を形成するため、異なる比重を有することを特色とする第1の材料および第2の材料を第1のピストン部材および第2のピストン部材に対して使用するとき、ピストン全体の重心を軸方向に変位させることができる。特に大量生産または大量組立てプロセスでは、たとえば多数のピストンを明確な向きにするために、重心のそのような変位をさらに使用することができる。好ましくは、第2のピストン部材の比重は、第1のピストン部材の比重を少なくとも5%、10%、15%、20%、またはさらには30%超過する。
【0025】
別の実施形態によれば、第1のピストン部材および/または第2のピストン部材は、円筒形または管状の形状であり、第1のピストン部材は、第2のピストン部材を少なくとも横方向に取り巻くことがさらなる利益である。さらに、第1のピストン部材はピストンの遠位面を形成するため、第1のピストン部材はまた、第2のピストン部材の遠位方向に誘導される端面を取り巻いてそれを覆う。好ましくは、第1のピストン部材は、第2のピストン部材を完全に受ける。また、第2のピストン部材は、好ましくは、第1のピストン部材内に設けられるレセプタクルを完全に充填する形状および幾何形状を含む。こうして、第1のピストン部材のレセプタクルの内部のあらゆる中空の空間は、かなり剛性かつ非圧縮性の材料で実質上充填することができる。
【0026】
さらに好ましい実施形態では、第2のピストン部材は、軸方向(z)で第1のピストン部材の底面に当接する。第2のピストン部材の遠位方向に誘導される端面が、第1のピストン部材のレセプタクルの近位方向に誘導される底面に当接するときが、特定の利益となる。こうして、推力伝達要素として働く第2のピストン部材は、ピストンの遠位方向に位置する底面に直接接触し、この遠位方向に位置する底面は、その反対に位置する遠位方向に誘導される表面とともに、カートリッジの内側容積を閉じ込める。
【0027】
本発明によるピストンは、その結果生じる第2のピストン部材および第1のピストン部材の軸方向の変位が、第1のピストン部材の円周で径方向に外側に配置された近位方向に位置する封止面に、押すのではなく引きずるように伝達されるような形状および幾何形状を含む。したがって、第1のピストン部材の環状封止面の遠位方向に誘導される変位は、押すのではなく引きずることによって主に調整される。したがって、封止面は、第2のピストン部材の推力を受ける面の動きに追従する。実際には、第1のピストン部材の環状の円周側壁部分は、遠位方向に誘導される変位中に圧縮ではなく軸方向の伸長を受ける。したがって、軸方向の圧縮を効果的に打ち消すことができる。
【0028】
したがって、第2のピストン部材を取り囲み、または取り巻くことができる第1のピストン部材の横方向の側壁は、ピストンロッドおよび/または第2のピストン部材の遠位方向に誘導される変位中に、軸方向の圧縮を受けなくなる。軸方向の圧縮は、第1のピストン部材の底部部分のみで生じることがある。次いで、第1のピストン部材の底部部分の軸方向の伸びは、ピストンおよび/または第1のピストン部材の全体的な軸方向の伸びの20%未満、好ましくは10%未満、またはさらには5%未満であることが、特定の利益となる。第1のピストン部材の推力を伝送する底部部分の軸方向の寸法を低減させることによって、ピストンの全体的な軸方向の圧縮および/または弛緩をかなり低いレベルで維持することができる。
【0029】
さらに好ましい実施形態では、第2のピストン部材の推力を受ける面は、第1のピストン部材の近位端面に実質上同一平面に取り付けられる。こうして、ピストン全体の平滑および/または平坦な近位面を得ることができる。しかし、第2のピストン部材の推力を受ける面は、第1のピストン部材の近位端面と比較すると、軸方向にずれて位置することも考えられる。第2のピストン部材は、第1のピストン部材から近位方向に軸方向に突出することができ、または完全に第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内に位置することもできる。
【0030】
ピストンロッドの横方向の寸法および全体的な幾何形状に応じて、ピストンの近位端面における第1のピストン部材および第2のピストン部材の突出する配置、凹状の配置、または同一平面に取り付けられた配置が好ましいことがある。
【0031】
別の実施形態では、第1のピストン部材は、第1のピストン部材内にプレス嵌めされる。第1のピストン部材と第2のピストン部材の相互の組立ては、たとえば、すべて機械的なプレス嵌めの組立て工程によって得ることができ、たとえば第2のピストン部材は、第1のピストン部材のカップ状のレセプタクルの内側に押し込まれる。さらに、第1および周辺のピストン部材はまた、剛性の第2のピストン部材上で押したり引いたりすることができる。ここで、第1のピストン部材および第2のピストン部材は、相互に組立てられたときに第1のピストン部材および/または第2のピストン部材の弾性の変形から生じる機械的な復元力によって、組立て構成内に維持および固定することができる。
【0032】
この文脈では、第1のピストン部材と第2のピストン部材は、少なくとも第2のピストン部材が第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内に配置されるときに摩擦係合することも考えられる。追加または別法として、第1のピストン部材と第2のピストン部材はまた、接着剤を用いて相互に連結することができ、接着剤は、第1のピストン部材および/または第2のピストン部材の接触面の少なくとも1つの上へ塗布される。
【0033】
第2のピストン部材を第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内へ挿入するには、第1のピストン部材のカップ状のレセプタクルが第2のピストン部材を滑らかに受けるように円筒形の形状であるときが、特定の利益になる。
【0034】
射出成形を介して第1のピストン部材と第2のピストン部材の接合された分離できない相互連結を実現することも、概ね考えられる。したがって、少なくとも第2のピストン部材は、第1のピストン部材のカップ状のレセプタクル内へ射出成形することができ、それによって第1のピストン部材は鋳型として働く。射出成形プロセスの過程で、第1のピストン部材および第2のピストン部材の内側および外側の側壁区分を相互に当接する相互接合を得ることができる。
【0035】
ピストンの2つの別個の構成要素相互の組立ては、電子回路のようなさらなる構成要素をピストン内へ統合するのにさらに有益である。したがって、別の好ましい態様によれば、第1のピストン部材と第2のピストン部材との間、好ましくは第1のピストン部材の相互に当接する底面と、第2のピストン部材の遠位方向に誘導される端面との間に、電子回路を配置することができる。しかし、第1のピストン部材および第2のピストン部材の前記底部の遠位端面は、軸方向に誘導される推力を伝達するように適合されるため、別の実施形態によって、第2のピストン部材の遠位端面および/または第1のピストン部材の底面は、電子回路を少なくとも部分的に受けるための少なくとも1つの凹部を含むときが、さらなる利益になることができる。こうして、電子回路は、第1のピストン部材と第2のピストン部材のインターフェース内で生じる機械的な衝撃から効果的に保護することができる。
【0036】
電子回路は、好ましくはマイクロチップとして設計され、少なくとも製造日および/または時間を提供するデータ記憶装置を備えることができる。さらに、電子回路は、ピストンおよび/または付随するカートリッジが許容できない環境条件に露出されたかどうかを検出するために、感温、感圧、または感光センサのような異なるタイプのセンサを装備することができる。電子回路は、通信ユニット、好ましくは無線通信ユニットをさらに装備することができ、この通信ユニットを介して、記憶されたデータの内容を要求に応じて取り出すことができる。
【0037】
たとえば、電子回路は、対応する読取りデバイスと無線で通信することが可能であるRFID要素を含むことができる。こうして、偽造されたカートリッジおよびピストンを容易に検出することができる。追加として、偽造防止電子回路は、第1のピストン部材および第2のピストン部材によって完全に覆うことができ、したがって、使用者または販売業者には見えないようになっている。
【0038】
さらに別の実施形態では、第2のピストン部材の軸方向の伸びは、ピストンの全体的な軸方向の伸びの少なくとも80%、90%、または好ましくはさらには少なくとも95%である。第2のピストン部材の軸方向の伸びを最大にすることによって、ピストン全体の軸方向の圧縮率をさらに低減させることができる。第2のピストン部材の軸方向の伸びの最大化は、第1のピストン部材の底部部分の封止特性のみによって制限される。
【0039】
したがって、第1のピストン部材の対応する底部部分の軸方向の伸びは、十分な封止をそれでもなお提供できるような最小値までしか低減させることができない。
【0040】
他の独立の態様では、本発明はまた、薬物送達デバイスとともに使用されるカートリッジに関し、このカートリッジは、薬剤で少なくとも部分的に充填された内側容積を閉じ込める管形状の本体を備え、上述したピストンによって封止される。したがって、前記カートリッジのピストンは、第1のピストン部材および第2のピストン部材を備え、第2のピストン部材は、第1のピストン部材より低い圧縮率を有することを特色とする。
【0041】
他の独立の態様では、本発明はまた、上述したピストンを製造する方法に関する。この製造方法は、第1の材料を有し、その近位端の方へ開いたカップ状のレセプタクルを備える第1のピストン部材を設ける工程を含む。第2の工程では、第2の材料から作られ、第1の材料と比較するとより低い圧縮率を有することを特色とする第2のピストン部材が、カップ状のレセプタクル内へ挿入され、第2のピストン部材は、ピストンの近位端に推力を受ける面を形成する近位端面を含む。
【0042】
第1のピストン部材および第2のピストン部材に使用される材料のタイプに応じて、様々な異なる相互組立て方法が概ね考えられる。たとえば、第1のピストン部材と第2のピストン部材をプレス嵌めすることができる。別法として、異なる材料の2つのピストン部材を有するピストンは、射出成形または接合を介して製造することもできる。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、第1のピストン部材の前記レセプタクル内への第2のピストン部材の挿入前に、第1のピストン部材のレセプタクル内および/または第2のピストン部材の遠位方向に誘導される凹部内に電子回路が位置する。実際には、第1のピストン部材と第2のピストン部材の相互の機械的な組立ては、第1のピストン部材と第2のピストン部材との間でピストンの最終のアセンブリでは見えない領域内に電子回路を組立てまたは埋め込むのに有益である。
【0044】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な
化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0045】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0046】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0047】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0048】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39
)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0049】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0050】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳
下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0051】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0052】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0053】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0054】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0055】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0056】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0057】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(V
L)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0058】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0059】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0060】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0061】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本発明に加えることができることが、当業者にはさらに明らかになるであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用されるあらゆる参照符号は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0062】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照することによって説明する:
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】ピストンの概略横断側面図である。
図2図1によるピストンをA−Aに沿って示す横方向横断面図である。
図3】典型的なカートリッジ設計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1および図2に示すピストン10は、2つの構成要素、すなわち外側および円周の第1のピストン部材12と、ピストン10全体の軸方向の圧縮率を低減させるための剛性の芯として働く内側の第2のピストン部材14とを備える。通常はブロモブチレンゴムまたはクロロブチレンゴムから作られ、それによって比較的大きい機械的圧縮率を有すること
を特色とする第1のピストン部材12は、ピストン10の近位端からアクセスできる実質上円筒形の形状のカップ状のレセプタクル16を有する。
【0065】
この文脈では、遠位方向1が、たとえば図3に示すカートリッジ40の内側容積の方を指す。反対側の近位方向2は、明示されていないピストンロッドのような推力を及ぼす機械構成要素の方を指す。したがって、図1に示すピストン10は、カートリッジ40の内側容積、したがって液体の薬剤に直接接触する遠位端面22を含む。反対側の端面24は、推力を受ける面として作用し、推力を及ぼす機械構成要素、たとえば薬物送達デバイスの駆動機構のピストンロッドに直接接触するように適合される。
【0066】
第1のピストン部材12のカップ状のレセプタクル16は、第1のピストン部材12の材料より低い圧縮率を有することを特色とする第2のピストン部材14で完全に充填される。こうして、第2のピストン部材14は、強化された機械的剛性および安定性を提供し、したがって近位端面24に作用する遠位方向に誘導される推力をピストン10が受けるときに、ピストン10の軸方向の圧縮率を低減させる。第2のピストン部材14は、第1のピストン部材12に使用される材料より低い圧縮率を有するCOCなどのポリマー材料を含むことができる。第1のピストン部材12と第2のピストン部材14は、たとえば摩擦係合される。円筒形の形状の第2のピストン部材14の横方向の側壁は、第1のピストン部材12の内側向きの側壁20に直接、摩擦で接触する。
【0067】
さらに図1に示すように、第2のピストン部材14の近位方向に位置する端面25が、第1のピストン部材12の近位端面27に同一平面に取り付けられる。こうして、第2のピストン部材14および第1のピストン部材12の近位端面25、27は、ピストン10の実質上平坦かつ平滑な形状の近位推力を受ける面24を提供するように相互に補完する。代替実施形態では、第2のピストン部材14の近位端面25は、第1のピストン部材から近位方向に突出することができ、または遠位方向1に凹ませることもできる。
【0068】
第2のピストン部材14の径方向の寸法が、ピストンロッドの推力を及ぼす遠位構成要素または薬物送達デバイスの同等の駆動部材に嵌合および一致するときが、さらなる利益となる。こうして、遠位方向に誘導される推力は、第2のピストン部材14へ完全に伝達することができ、第2のピストン部材14は、対応する推力を第1のピストン部材12の底部部分13の内向きの底面18に伝達するように適合される。したがって、外部から印加される遠位方向に誘導される推力は、第1のピストン部材12の底部部分13へ直接伝達することができ、第1のピストン部材12は、第2のピストン部材14の軸方向の寸法と比較すると、その軸方向の寸法が低減されているため、ほんのわずかな軸方向の圧縮しか受けることはない。
【0069】
第1のピストン部材12の横方向の側壁区分15は、軸方向に誘導された張力または抗力しか受けることはない。実際には、側壁15は、軸方向の圧縮を受けることがなくなる。
【0070】
第1のピストン部材12は、径方向に外側に延び、カートリッジの本体の内側向きの側壁に摩擦係合されるように適合された遠位方向に位置する封止リップ26および/または近位方向に位置する封止リップ28をさらに備えることができる。
【0071】
図1にさらに示すように、第1のピストン部材12と第2のピストン部材14との間のインターフェース領域内には、少なくとも1つの電子回路30を配置することができる。この目的で、第1のピストン部材12および/または第2のピストン部材14は、電子回路30を受けるための凹部を含むことができ、電子回路30は、ピストン部材12とピストン部材14との間に配置されることによって、外側からは見えないようになっている。
【0072】
しかし、電子回路30は、ピストンおよび/またはカートリッジに関する本物の情報を読み出すことを可能にするRFID要素のような無線通信手段を装備することができる。こうして、有効な偽造防止手段を、実質上見えない形でピストン10内へ組み込むことができる。
【0073】
図3にさらに示すように、ピストン10は通常、カートリッジ40の内側容積44を閉じ込める近位封止として働く。ピストン10は、カートリッジの管形状の本体42内に摺動可能に位置する。遠位端付近では、カートリッジ40は、隘路になった出口端46を備える。出口端46には、セプタムとして作用する別の穿孔可能な封止48が設けられる。封止48は、ビーズ付きのキャップ50を介して定位置で維持される。セプタム48は、所定の用量の薬剤をたとえば生体組織内へ投薬するために、両頭針52によって穿孔されるものとする。
【符号の説明】
【0074】
1 遠位方向
2 近位方向
10 ピストン
12 第1のピストン部材
13 底部部分
14 第2のピストン部材
15 横方向の側壁
16 カップ状のレセプタクル
18 底面
20 側壁
22 遠位面
24 近位面
25 推力を受ける面
26 封止リップ
27 近位面
28 封止リップ
30 電子回路
40 カートリッジ
42 本体
44 内側容積
46 出口端
48 封止
50 キャップ
52 針
図1
図2
図3