(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルムが、フィルム形成プロセスの完了直後の押出フィルムの幅に対して2%未満の幅収縮値を有し、前記幅収縮値が、フィルム形成プロセスの完了直後に計測されるフィルム幅1)とフィルム形成プロセスの完了後96時間以降に計測されるフィルム幅2)との差として計算される、請求項1に記載のフィルム形成プロセス。
押出フィルムが押出機のヘッドとフロストラインの間の距離を進む間に、フィルム中のエラストマーの粒子の蓄積エネルギーが放出される、請求項1から5までのいずれか1項に記載のフィルム形成プロセス。
動的加硫アロイが、硬化剤、相溶化剤、加工助剤およびフィラーのうちの少なくとも1種を更に含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載のフィルム形成プロセス。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、経時特性が向上した熱可塑性エラストマーフィルム、およびかかるフィルムを得る方法を対象とする。本発明のフィルムは経時収縮特性が向上しており、フィルムを組み込んだ物品の最終製品性能を向上させる。所望の収縮特性の低下は、以下に記載するように、吹込フィルムを押し出して延伸させる改良型プロセスによって得られる。
好適な実施形態、および請求する発明の理解を目的として本明細書において採用する定義を含め、本発明の様々な具体的実施形態、様式および例について説明する。例示的実施形態が詳細に記載されるが、当然ながら本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な他の変形例が当業者には明らかとなり、当業者によって容易に実現できることが理解される。侵害の判定に際し、「発明」の範囲は、添付の請求項のいずれか一つまたは複数を意味し、それらの均等物、および記載されているものに均等な要素または限定を含む。
【0009】
定義
ここに記載する発明に適用できる定義は、以下に記載する通りである。
ポリマーとは、ホモポリマー、コポリマー、インターポリマー、ターポリマー等を指して用いられてもよい。同様に、コポリマーは、少なくとも2種類のモノマーを含むポリマーを意味してもよく、他のモノマーを含んでもよい。ポリマーがモノマーを含むものとしていう場合、モノマーは、モノマーの重合形態、またはモノマーに由来する誘導体(即ち、モノマー単位)の重合形態でポリマー中に存在する。ただし、参照を容易にするため、「(それぞれの)モノマーを含む」または同種の語句を簡潔表現として使用する。同様に、触媒成分が中性安定形態の成分を含むものとして記載される場合、成分のイオン型がモノマーと反応してポリマーを生成する形態であることは、当業者には十分理解される。
【0010】
エラストマーとは、ASTM D1566の定義「大きな変形から回復でき、加硫処理した場合、溶媒中で本質的に不溶性の状態(しかし、膨張はできる)に変化させることができる、または既に変化している材料。」に一致する、任意のポリマーまたはポリマーの組成物を指す。エラストマーは、ゴムと呼ばれることも多い。エラストマーという用語は、本明細書ではゴムという用語と交換可能に用いることがある。
「phr」という用語は、ゴム100部当たりの部数または「部」であり、全エラストマー成分の合計に対して組成物の成分を計測する当技術分野では一般的な単位である。1種、2種、3種またはそれ以上の異なるゴム成分が所与の配合に存在するか否かにかかわらず、全てのゴム成分についての合計phrまたは部数は、通常は100phrと定義される。他の非ゴム成分全てがゴム100部に対する比率で示され、phrで表される。これにより、例えば硬化剤のレベルまたはフィラー充填量等を、同じ相対比率のゴムを基準として、異なる組成物間で容易に比較でき、1種のみまたはそれ以上の成分のレベルを調節した後にそれぞれの成分のパーセンテージを再計算する必要がない。
【0011】
イソオレフィンとは、少なくとも1つの炭素を有し、その炭素上に2つの置換を有する任意のオレフィンモノマーを指す。マルチオレフィンとは、2以上の二重結合を有する任意のモノマーを指す。好適な実施形態において、マルチオレフィンは2つの共役二重結合を含む任意のモノマー、例えばイソプレンのような共役ジエンである。
イソブチレンベースのエラストマーまたはポリマーとは、イソブチレン由来の繰り返し単位を少なくとも70mol%含むエラストマーまたはポリマーを指す。
【0012】
エラストマー
本発明に有用なエラストマー組成物としては、少なくとも1種のC
4−C
7イソオレフィンモノマー成分と少なくとも1種のマルチオレフィンモノマー成分から誘導されるエラストマーが挙げられる。イソオレフィンは、いずれの実施形態においてもモノマーの総量の70〜99.5質量%の範囲で、または、いずれの実施形態においても85〜99.5質量%の範囲で存在する。マルチオレフィンから誘導される成分は、いずれの実施形態においても30〜約0.5質量%、または、いずれの実施形態においても15〜0.5質量%、または、いずれの実施形態においても8〜0.5質量%の範囲の量で存在する。
イソオレフィンは、C
4−C
7化合物である。その非制限的例は、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキセン、および4−メチル−1−ペンテンといった化合物である。マルチオレフィンは、C
4−C
14マルチオレフィン、例えば、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチル−フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、およびピペリレンである。他の重合性モノマー、例えばスチレンおよびジクロロスチレンも、単独重合または共重合に適している。
本発明の実施において有用な好適なエラストマーとしては、イソブチレンベースのコポリマーが挙げられる。上記のように、イソブチレンベースのエラストマーまたはポリマーとは、イソブチレン由来の繰り返し単位を少なくとも70mol%と少なくとも1種の他の重合性ユニットとを含むエラストマーまたはポリマーを指す。イソブチレンベースのコポリマーは、ハロゲン化されていても、されていなくてもよい。
【0013】
本発明のいずれの実施形態においても、エラストマーは、ブチル系ゴムまたは分岐ブチル系ゴム、とりわけ、それらエラストマーのハロゲン化されたものであってもよい。有用なエラストマーは、不飽和ブチルゴム、例えばオレフィンまたはイソオレフィンとマルチオレフィンのコポリマーである。本発明の方法および組成物において有用な不飽和エラストマーの非制限例は、ポリ(イソブチレン−co−イソプレン)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、天然ゴム、星状分岐ブチルゴム、およびこれらの混合物である。本発明において有用なエラストマーは、本技術分野で公知の任意適切な手段によって製造され、この点で本発明はエラストマーを生成する方法によって限定されない。本発明のブチルゴムポリマーは、イソブチレンを0.5〜8質量%のイソプレンと反応させることによって、またはイソブチレンを0.5質量%〜5.0質量%のイソプレンと反応させることによって得られ、ポリマーの残りの質量パーセントはイソブチレンから誘導されるものである。
【0014】
本発明のエラストマー組成物は、C
4−C
7イソオレフィンとアルキルスチレンコモノマーとを含む少なくとも1種のランダムコポリマーを更に含んでもよい。イソオレフィンは、上に挙げたC
4−C
7イソオレフィンモノマーのいずれかから選択されてもよく、好ましくはイソモノオレフィンであり、いずれの実施形態においても、イソブチレンであってもよい。アルキルスチレンは、少なくとも80%、あるいは少なくとも90質量%のパラ異性体を含有するパラメチルスチレンであってもよい。ランダムコポリマーは、官能化インターポリマーを含んでもよい。官能化インターポリマーは、スチレンモノマー単位中に存在する少なくとも1つまたは複数のアルキル置換基を有する。置換基は、ベンジル位ハロゲンまたは何らかの他の官能基であってもよい。いずれの実施形態においても、ポリマーは、C
4−C
6α−オレフィンとアルキルスチレンコモノマーのランダムエラストマーコポリマーであってもよい。ランダムコモノマーは、官能化インターポリマーを含んでもよく、スチレンモノマー単位中に存在する少なくとも1つまたは複数のアルキル置換基がベンジル位ハロゲンまたは何らかの他の官能基を含有する。いずれの実施形態においても、ランダムポリマー構造に存在する置換スチレンの60mol%までが官能化されていてもよい。あるいは、いずれの実施形態においても、存在する置換スチレンの0.1〜5mol%または0.2〜3mol%が官能化されていてもよい。
【0015】
官能基は、ハロゲン、または何らかの他の官能基であってもよく、これらの他の官能基は、ベンジル位ハロゲンを他の基、例えばカルボン酸;カルボキシ塩;カルボキシエステル、アミドおよびイミド;ヒドロキシ;アルコキシド;フェノキシド;チオラート;チオエーテル;キサンタート;シアン化物;シアナート;アミノならびにこれらの混合物で求核置換することによって組み込まれたものであってもよい。これらの官能化イソモノオレフィンコポリマー、その調製方法、官能化法および硬化は、米国特許第5,162,445号に更に詳細に開示されている。
【0016】
いずれの実施形態においても、エラストマーは、イソブチレンと0.5〜20mol%のパラメチルスチレンのランダムポリマーを含み、ベンジル環上に存在するメチル置換基の60mol%までが、臭素もしくは塩素等のハロゲン、酸、またはエステルで官能化されている。いずれの実施形態においても、官能性は、ポリマー成分を高温で混合すると、マトリクスポリマー中に存在する官能基、例えば、酸、アミノまたはヒドロキシル官能基と反応できるまたは極性結合を形成できるように選択される。
【0017】
本発明において有用な臭素化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)「BIMSM」ポリマーは一般に、コポリマー中のモノマー由来単位の総量に対して0.1〜5mol%のブロモメチルスチレン基を含有する。本発明のBIMSMを使用するいずれの実施形態においても、ブロモメチル基の量は、0.5〜3.0mol%、または0.3〜2.8mol%、または0.4〜2.5mol%、または0.5〜2.0mol%であり、本発明にとって望ましい範囲は、いずれかの上限といずれかの下限との任意の組合せであってもよい。また、本発明によれば、BIMSMポリマーは、1.0〜2.0mol%のブロモメチル基、または1.0〜1.5mol%のブロモメチル基のいずれかを有する。別の言い方をすれば、本発明において有用な例示的BIMSMポリマーは、ポリマーの質量を基準として0.2〜10質量%の臭素、または0.4〜6質量%、または0.6〜5.6質量%の臭素を含有する。有用なBIMSMポリマーは、ポリマー骨格鎖に実質的にハロゲン環またはハロゲンを含まなくてもよい。いずれの実施形態においても、ランダムポリマーは、C
4−C
7イソオレフィン由来単位(またはイソモノオレフィン)、パラメチルスチレン由来単位、およびパラ(ハロメチルスチレン)由来単位のポリマーであって、パラメチルスチレンの総数を基準としてパラ(ハロメチルスチレン)単位がポリマーに0.5〜2.0mol%存在し、ポリマーの総質量を基準としてパラメチルスチレン由来単位が5〜15質量%、または7〜12質量%存在する。いずれの実施形態においても、パラ(ハロメチルスチレン)は、パラ(ブロモメチルスチレン)である。
【0018】
熱可塑性樹脂
本発明の目的のため、熱可塑性物質(あるいは熱可塑性樹脂という)は23℃で200MPaを超えるヤング率を有する、熱可塑性ポリマー、コポリマーまたはそれらの混合物である。樹脂は、約170℃〜約260℃、好ましくは260℃未満、最も好ましくは約240℃未満の溶融温度を有すべきである。従来の定義では、熱可塑性物質は、熱を加えると軟化し、冷却すると元の特性を回復する合成樹脂である。
【0019】
かかる熱可塑性樹脂は、単独で使用しても、組合せて使用してもよく、一般的には、窒素、酸素、ハロゲン、硫黄、または芳香族官能基と相互作用できる他の基、例えばハロゲン基または酸性基を含有する。適する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボナート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN)、スチレン無水マレイン酸樹脂(SMA)、芳香族ポリケトン(PEEK、PED、およびPEKK)、エチレンコポリマー樹脂(EVAまたはEVOH)、およびこれらの混合物からなる群から選択される樹脂が挙げられる。
【0020】
適するポリアミド(ナイロン)は、ポリマー鎖内に繰り返しアミド単位を有するコポリマーおよびターポリマーを含む、結晶質または樹脂性の高分子量固体ポリマーを含む。ポリアミドは、1つまたは複数のイプシロンラクタム、例えばカプロラクタム、ピロリジノン(pyrrolidione)、ラウリルラクタムおよびアミノウンデカン酸ラクタム、もしくはアミノ酸の重合によって調製してもよく、または二塩基酸とジアミンとの縮合によって調製してもよい。繊維形成グレードおよび成形グレードのナイロンはどちらも適している。かかるポリアミドの例は、ポリカプロラクタム(ナイロン−6)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンアゼルアミド(ナイロン−6,9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン−6、IP)、および11−アミノ−ウンデカン酸の縮合生成物(ナイロン−11)である。市販のポリアミドも本発明の実施に有利に使用し得るものであり、160と260℃の間の軟化点または融点を有する線状結晶質ポリアミドが好適である。
採用し得る適するポリエステルとしては、無水物の脂肪族または芳香族ポリカルボン酸エステルの1種または混合物と、ジオールの1種または混合物とのポリマー反応生成物が挙げられる。申し分のないポリエステルの例としては、ポリ(trans−1,4−シクロへキシレンC
2-6アルカンジカルボキシラート、例えばポリ(trans−1,4−シクロへキシレンスクシナート)およびポリ(trans−1,4−シクロへキシレンアジパート);ポリ(cisまたはtrans−1,4−シクロヘキサンジメチレン)アルカンジカルボキシラート、例えばポリ(cis−1,4−シクロヘキサンジメチレン)オキサラートおよびポリ−(cis−1,4−シクロヘキサンジメチレン)スクシナート;ポリ(C
2-4アルキレンテレフタラート)、例えばポリエチレンテレフタラートおよびポリテトラメチレンテレフタラート;ポリ(C
2-4アルキレンイソフタラート)、例えば、ポリエチレンイソフタラートおよびポリテトラメチレンイソフタラート、ならびに同種の物質が挙げられる。好適なポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、例えばナフタレン酸またはフタル酸とC
2−C
4ジオールから誘導されるもの、例えばポリエチレンテレフタラートおよびポリブチレンテレフタラートである。好適なポリエステルは、160℃〜260℃の範囲の融点を有する。
【0021】
本発明に従って使用し得るポリ(フェニレンエーテル)(PPE)樹脂は周知であり、アルキル置換フェノールの酸化カップリング重合によって生成される市販の材料である。これらは一般に、190℃〜235℃の範囲のガラス転移点を有する線状の非晶質ポリマーである。
【0022】
本発明において有用なエチレンコポリマー樹脂としては、エチレンと低級カルボン酸の不飽和エステルとのコポリマーの他に、カルボン酸自体とのコポリマーが挙げられる。特に、エチレンと、酢酸ビニルまたはアクリル酸アルキル、例えばアクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルとのコポリマーを採用できる。これらのエチレンコポリマーは、典型的には約60〜約99質量%のエチレン、好ましくは約70〜95質量%のエチレン、より好ましくは約75〜約90質量%のエチレンを含む。「エチレンコポリマー樹脂」という表現は、本明細書において使用された場合、一般にエチレンと、低級(C
1−C
4)モノカルボン酸の不飽和エステルおよび酸自体、例えばアクリル酸、ビニルエステル、またはアクリル酸アルキルとのコポリマーを意味する。また、「EVA」と「EVOH」の両方を含むことも意味する。これは、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、およびその加水分解対応物であるエチレン−ビニルアルコールを意味する。
【0023】
熱可塑性エラストマー組成物
上記エラストマーのいずれかの少なくとも1種と、上記熱可塑性物質のいずれかの少なくとも1種をブレンドして動的加硫アロイを形成する。「動的加硫」という用語は、本明細書においては、高せん断および昇温条件下にて熱可塑性物質の存在下で加硫可能なエラストマーを加硫処理する加硫プロセスを意味するために使用される。結果として、加硫可能なエラストマーは、少なくとも部分的に架橋されると同時に、好ましくは「ミクロゲル」のサブミクロンサイズ微粒子として熱可塑性物質中に分散される。結果として得られる材料は、多くの場合動的加硫アロイ(「DVA」)と称される。
【0024】
動的加硫は、ロールミル、Banbury(商標)ミキサー、連続ミキサー、混練機または混合押出機、例えば、Buss混練機、二軸押出機または多軸押出機等の設備において、原材料をエラストマーの硬化温度以上の温度であって、更には熱可塑性成分の溶融温度を超える温度で混合することによって実施される。動的に硬化させた組成物の特異な特性は、エラストマー成分が完全に硬化している可能性があるにもかかわらず、組成物は従来の熱可塑性物質加工技法、例えばフィルム吹込加工、押し出し、射出成形、圧縮成形等によって加工および再加工が可能なことである。小片またはバリも、回収して再加工可能である。当業者は、従来のエラストマーの熱硬化性小片は、エラストマーポリマーのみを含み、加硫処理したポリマーの架橋特性のために容易に再加工できないことを理解する。
好ましくは、ポリマーブレンドを基準として、熱可塑性樹脂は、約10〜98質量%、好ましくは約20〜95質量%の範囲の量で存在してもよく、エラストマーは、約2〜90質量%、好ましくは約5〜80質量%の範囲の量で存在してもよい。エラストマーに富むブレンドの場合、ポリマーブレンド中の熱可塑性樹脂の量は45〜10質量%の範囲であり、エラストマーは90〜55質量%の範囲の量で存在する。
【0025】
エラストマーは、いずれの実施形態においても、組成物中に90質量%までの範囲で存在してもよく、または、いずれの実施形態においても80質量%までの範囲で存在してもよく、または、いずれの実施形態においても70質量%までの範囲で存在してもよい。本発明において、エラストマーは、少なくとも2質量%、別の実施形態においては少なくとも5質量%、更に別の実施形態においては少なくとも5質量%、更に別の実施形態においては少なくとも10質量%存在してもよい。望ましい実施形態は、質量%のいずれかの上限と質量%のいずれかの下限の任意の組合せを含んでもよい。
【0026】
本発明のいずれの実施形態においても、加硫可能な一次エラストマーと一次熱可塑性樹脂とは、エラストマーと熱可塑性樹脂を形成するモノマーに共通のモノマーがないように選択される。例えば、エチレン−プロピレンエラストマーコポリマーを含む熱可塑性エラストマーと、エチレンベースの樹脂、例えばポリエチレンまたはエチレン−酢酸ビニルとは、本発明の範囲外となる。このような除外の理由は、かかるエラストマーは、主にC
4−C
7イソオレフィンモノマーから誘導されるエラストマーポリマーと、特に、イソブチレンベースのエラストマーを用いて得ることができる不透過特性を実現できない点にある。
DVAの調製には、ブレンダーでエラストマーと熱可塑性物質とを混合する前に他の材料をエラストマーまたは熱可塑性物質のいずれかとブレンドしても、熱可塑性物質とエラストマーとを互いに導入する際に、または導入した後にミキサーに添加してもよい。こうした他の材料は、DVAの調製を支援するために、または所望の物理的性質をDVAに付与するために添加してもよい。かかる追加材料としては、硬化剤、相溶化剤、増量剤およびポリアミドオリゴマーまたは低分子量ポリアミド、ならびに、参照することによって組み込まれる米国特許第8,021,730B2号に記載される他の滑剤が挙げられるが、これらに限らない。
【0027】
開示する発明のエラストマーに関して、「加硫処理する」または「硬化させる」とは、エラストマーのポリマー鎖同士の間に結合または架橋を形成する化学反応を指す。エラストマーの硬化は、一般には硬化剤および/または促進剤の導入によって達成され、このような添加剤の混合物全体は、硬化系または硬化パッケージと呼ばれる。
【0028】
適する硬化成分としては、硫黄、金属酸化物、有機金属化合物、ラジカル開始剤が挙げられる。通常の硬化剤としては、ZnO、CaO、MgO、Al
2O
3、CrO
3、FeO、Fe
2O
3、およびNiOが挙げられる。これら金属酸化物は、単独で使用することも、金属ステアリン酸塩錯体(例えば、Zn、Ca、MgおよびAlのステアリン酸塩)と併用することも、あるいはステアリン酸もしくは他の有機酸、および硫黄化合物またはアルキルもしくはアリール過酸化物化合物またはジアゾフリーラジカル開始剤のいずれかと併用することもできる。過酸化物を使用する場合、本技術分野において通常使用される過酸化物助剤を採用してもよい。
記載したように、促進物質(促進剤としても公知である)を硬化剤と共に添加して硬化パッケージを形成してもよい。適する硬化促進剤としては、アミン、グアニジン、チオウレア、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、スルフェンイミド、チオカルバマート、キサンタート等が挙げられる。多くの促進剤が本技術分野において公知であり、以下を含むが、これらに限らない:ステアリン酸、ジフェニルグアニジン(DPG)、二硫化テトラメチルチウラム(TMTD)、4,4’−ジチオジモルホリン(DTDM)、二硫化テトラブチルチウラム(TBTD)、2,2’−二硫化ベンゾチアジル(MBTS)、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオフルファートジナトリウム塩二水和物、2−(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール(MBSまたはMOR)、90%のMORと10%のMBTSとの組成物(MOR90)、N−ターシャリーブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、およびN−オキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシジエチレンスルホンアミド(OTOS)、2−エチルヘキサン酸亜鉛(ZEH)、N,N’−ジエチルチオウレア。
【0029】
本発明のいずれの実施形態においても、典型的には少なくとも1種の硬化剤が、約0.1〜約15phr;あるいは約1.0〜約10phr、または約1.0〜3.0phr、または約1.0〜2.5phrで存在する。単一の硬化剤のみが使用される場合、好ましくは金属酸化物、例えば酸化亜鉛である。
エラストマーと熱可塑性成分との間で粘度を一致させるために使用される成分としては、低分子量ポリアミド、無水コハク酸、または無水マレイン酸官能化オリゴマーであって、500〜5000の範囲の分子量を有し、官能化オリゴマーの質量を基準として数パーセントから約30質量%まで、あるいは7〜17質量%の無水物レベルを有するオリゴマー(AFO)、およそ10,000以上の分子量を有する無水マレイン酸グラフト化ポリマー、メタクリラートコポリマー、3級アミン、および2級ジアミンを挙げることができる。相溶化剤の一般的な一群は、無水マレイン酸グラフト化エチレン−アクリル酸エチルコポリマー(JISK6710に従って計測される7g/10分のメルトフローレートを有する、Mitsui−DuPontからAR−201として入手可能な固体ゴム状材料)である。これらの化合物は、エラストマー/熱可塑性化合物における熱可塑性材料の「有効」量を増加させるように作用する。DVAの特性に悪影響を与えることなく所望の類似粘度を達成するために、添加剤の量を選択する。通常可塑剤と呼ばれる化合物は、典型的には相溶化剤としても採用されてきた。本発明のいずれの実施形態においても、通常使用されるアロイ中に存在しない熱可塑性物質相溶化剤の一つは、スルホンアミド、例えばブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)である。
【0030】
いずれの実施形態においても、相溶化剤、または相溶化剤の組合せは、DVA中に、最小量で約2phr、5phr、8phrまたは10phrから、最大量で12phr、15phr、20phr、25phrまたは30phrまでの範囲の量で存在する。相溶化剤(複数可)の範囲は、上記の最小のいずれかから上記の最大のいずれかまでの範囲であってもよく、相溶化剤(複数可)の量は、いずれの範囲内であってもよい。
【0031】
良好な形態を中相対粘度ナイロンまたは高相対粘度ナイロンと中相対粘度ナイロンおよび/または低相対粘度ナイロンのブレンドを他の相溶化剤と組合せて選択的に使用することよって支援することができる。耐久性と加工性のバランスのためには、組成物中に存在する低分子量ナイロン、即ち、10,000未満のMWを有するナイロンは組成物の総量の0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは組成物の総量の0質量%の量である。言い換えれば、本発明における低分子量ナイロンの量は、化合物における熱可塑性成分の総「有効量」の0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0質量%である。
【0032】
エラストマーに富む組成物の場合、即ち、組成物中のエラストマーが55質量%を超える場合、熱可塑性樹脂ドメイン内に分散させたエラストマーの形態を得るには、熱可塑性物質プラス相溶化剤の粘度がエラストマーの粘度よりも低くなければならない。DVAの混合中に熱可塑性樹脂とグラフトする相溶化剤の場合、相溶化剤は、熱可塑性樹脂と同時に、またはミキサー/押出機内で熱可塑性樹脂が溶融し始めたときにミキサー/押出機中に添加される。グラフト反応の結果として、相溶化剤はDVA内部に固定され、DVAの後処理操作、例えばフィルム吹込加工または物品の硬化中に揮発することはない。これは、考えられる熱可塑性物質全てで起こるものと考えられ、かかるグラフト化は、組成物が極性熱可塑性物質を含有する場合、より容易に起こる。
【0033】
フィルム押し出し
DVA組成物の形成後のある時点で、熱可塑性エラストマーが空気バリア層として使用される用途の場合、DVAは、フィルムに形成される。フィルム形成は、流延または押し出しのいずれかによって達成してもよい。本発明はフィルムの押し出しを対象とするが、本明細書に開示する、DVAフィルムの収縮を低減するためのフロストラインの位置の制御および発明の他の態様は、流延フィルムにも適用し得る。
【0034】
本発明の目標は、フィルム押し出し後所定時間経過後のフィルム幅の収縮が従来のフィルム形成の場合の収縮値と比較して低減されているDVAフィルムの形成である。フィルム幅の収縮は、フィルム形成直後にフィルム(即ち、新しいフィルム)の幅の1回目の計測を行い、1回目のフィルム幅測定後96時間以降にフィルムの幅(即ち、経時フィルム幅)を計測し、新しいフィルムの幅に対するフィルム幅値の変化のパーセンテージを計算することによって判定される。新しいフィルムの幅は、形成直後のフィルムの必要な伸張、例えば本明細書において更に検討するようにDVA材料を押し出す場合には、吹込フィルムのバブルの伸張が全て終了した後(フィルムがフィルムフロストラインを通過して進んだ後)に計測される。フィルムが流延フィルムである場合、形成直後のフィルム伸張は、フィルム形成プロセスにおいて必要なステップまたは所望のステップではない場合もある。この1回目の測定は、形成されたフィルムを保存または輸送のためにロールに巻き取るとき、またはその直前に行ってもよく、形成されたフィルムが何らかの製造プロセスにおける別のステップに入ったときに、またはその直前に行ってもよい。所望のフィルム収縮は、新しいフィルム幅の2%未満、新しいフィルムの幅の1.5%未満、より好ましくは新しいフィルムの幅の1%未満であり、最も好ましくは新しいフィルムの幅の0.5%未満である。
【0035】
エラストマーが製造されるフィルムの主成分であって、DVA中の加硫処理したエラストマーがフィルムの特性に大きく影響する本発明の材料の場合、押出フィルムの収縮特性は、従来の熱可塑性フィルムとは異なるものである。DVAの場合、熱可塑性樹脂の結晶化、およびフィルム押出機においてDVAを素練りすることによって生じるエラストマーの蓄積弾性の緩和に関する懸念がある。蓄積弾性が緩和される前に熱可塑性樹脂の結晶が固定状態になると、フィルムは経時と共に大幅な収縮を生じることになる。エラストマーは、縮むまたは引き延ばされていない状態に戻るので、エラストマーと熱可塑性樹脂の間のグラフト化作用のために、固定された熱可塑性結晶を一緒に引っ張ってしまう。
【0036】
本発明によれば、示差走査熱量測定による結晶化溶融温度とフィルム吹込加工中(「冷却下」としても公知である)のフィルム再結晶化温度の差を縮めることにより、フィルム収縮が制御される。あるいは、この差は、押出機ダイの吐出オリフィス(複数可)から出てくるポリマー溶融物の温度(即ち、押出ダイ出口フィルム温度)とフィルムフロストラインにおける温度(即ち、フロストラインフィルム温度)との温度差で表されてもよい。この場合、フィルム形成後の収縮の低減には、フィルム冷却速度がより低いためにフロストラインがより高くなることが望ましい。所望の過冷却は、より低い空冷管空気流量の使用によって達成される(空気流は、キログラム毎rpmまたはkPa単位の空気圧のいずれかで報告してもよい)。一定の動作条件の場合の冷却速度は、ダイ吐出温度とフロストライン温度の温度差をダイ吐出オリフィス(複数可)からフロストラインに到達するまでのフィルム滞留時間の長さで割ることで計算できる。この滞留時間は、押出機ダイ吐出オリフィス(複数可)とフロストラインの間の距離をフィルム巻き取り速度で割ることで計算される。
本発明のいずれか実施形態によると、フィルムは、毎秒97℃未満、または毎秒90℃未満、または毎秒75℃未満、または毎秒60℃未満、または毎秒40℃未満の速度で冷却される。フィルム冷却速度が低いほどフロストラインの押出機ダイ吐出オリフィス(複数可)からの距離がより高い位置となる。本発明のいずれかの実施形態によると、押し出されたDVAフィルムのフロストラインは、押出機ダイ吐出オリフィス(複数可)から少なくとも135mm、または押出機ダイ吐出オリフィス(複数可)から少なくとも150mm、または押出機ダイ吐出オリフィス(複数可)から少なくとも170mm、または押出機ダイ吐出オリフィス(複数可)から少なくとも180mm、または押出機ダイ吐出オリフィス(複数可)から少なくとも195mm、または押出機ダイ吐出オリフィス(複数可)から少なくとも225mmである。
【0037】
本発明のいずれかの実施形態によると、6.0以下のドローダウン比と組合せた2.8以下のブローアップ比も、所望の収縮低減を達成するのに有益である。あるいは、ブローアップ比は1.9〜2.8の範囲であり、ドローダウン比は2.8〜6.0の範囲である。比較的低いブローアップ比と低いドローダウン比(従来の熱可塑性フィルムの吹込加工のブローアップ比およびドローダウン比と比較して)との組合せを用いることにより、望ましい過冷却が達成され、フィルムに蓄積される弾性が低減する。適切なダイ設計(直径およびダイギャップ)の使用により、所望の折径のためのブローアップ比とドローダウン比の両方の制御が可能となり、収縮を管理できる。これがDVA中のエラストマーの圧縮量または蓄積弾性の低下につながり、それによってフィルムの収縮が低減する。
【0038】
図1は、上記のDVAを押し出して吹込フィルムとするのに有用な従来の熱可塑性樹脂押出機ダイを例示する。DVAペレットが通常はホッパー(図示せず)を通して押出機に送り込まれ、そこでペレットは素練りされて流動性を有する押出物となる。押出物は押出機ダイ11内のチャネル13を通過し、溶融状態のチューブ状フィルムバブル14を形成するオリフィス(複数可)12へと入る。導管15を介してガスがフィルムの内部に注入され、フィルムバブル14を膨らませる。ガスは、一端のダイ11と、反対端の一対のニップロール39によってフィルムバブル14内に閉じ込められ、それによりフィルム16をダイ11から離れる方向に引き、平坦な2層フィルム40を形成する力を与える。フィルム16は100の方向に移動する。
図1は、鉛直方向上向きに移動するフィルムを図示しているが、フィルムが鉛直方向下向きに移動するように、設備の向きおよびフィルムの移動方向が逆であってもよい。
【0039】
ダイ11とニップロール39の間でフィルムバブル14は最大直径まで膨らまされ、冷却される。バブル14は、空冷管に入る空気が吹込フィルムの外部冷却を行う外部空冷管19によって冷却される。空冷管の中には、空気の安定性と冷却速度を制御するために2以上の空気の出口を有するものがある。フィルム16が冷える際に、フィルム内の熱可塑性樹脂は固体への相変化をし、フロストライン18Aを創出する。この相変化のため、フロストライン18Aにおけるフィルムバブル14の幅が、最大膨張時のものとなる。本発明によると、移動するフィルムがフロストラインに到達する前にフィルムバブル14内の分散させたエラストマー粒子の蓄積エネルギーが放出されることが望ましい。
【0040】
図1に図示した押し出し機構は単層押出物のものであるが、押出フィルムが多層押出物である場合、および/または押出フィルムが同時に接着材料でコーティングされる場合も本発明の範囲内である。DVAアロイと接着剤との多数の層を共押し出しするための方法およびダイは、米国特許公開第2013−0157049号に開示されており、その内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
本発明の押出フィルムは、90〜200μmのゲージ厚を有する。
【0041】
従って、本発明は、以下の実施形態を提供する:
A.動的加硫アロイのフィルムを形成するためのプロセスであって、i)熱可塑性樹脂の連続ドメイン中に分散した少なくとも1種のエラストマーを含む動的加硫アロイを少なくとも1つの押出機ダイ吐出オリフィスを通して押し出して、押し出しダイ出口フィルム温度を有する押出フィルムを形成する工程、ii)空気を押出フィルムの上に流して、押出フィルムの温度を低下させ、フィルムフロストラインを創出する工程、およびiii)フィルムフロストラインを通過したフィルムを移動させて、フィルム形成プロセスを完了させる工程、を含み、押出フィルムの温度を毎秒97℃未満の冷却速度で低下させ、押出機ダイ吐出オリフィスから135mmを超える距離のところに押出フィルムのフィルムフロストラインが創出される、プロセス;
B.冷却速度が毎秒90℃未満、または毎秒75℃未満、または毎秒60℃未満である、実施形態Aのプロセス;
C.フィルムが、2%未満、または1.5%未満、または1%未満、または0.5%未満の幅収縮値を有し、全ての値が、フィルム形成時から1回目のフィルム幅測定後96時間以降までに計測される値に対する値であることを特徴とする、実施形態AまたはBのプロセス;
D.ブローアップ比が2.8以下であり、押出フィルムのドローダウン比が6.0以下である、あるいは、ブローアップ比が1.9〜2.8の範囲であり、ドローダウン比が2.8〜6.0の範囲である、先行する実施形態AからCのいずれかまたはその任意の組合せのプロセス;
E.押し出されたアロイの少なくとも一面上の接着剤コーティングと共に、フィルムが共押出される、先行する実施形態AからDのいずれかまたはその任意の組合せのプロセス;
F.押出フィルムが多層押出品である、先行する実施形態AからEのいずれかまたはその任意の組合せのプロセス;
G.押出フィルムが押出機ダイにおけるフィルムの押し出し部から押出フィルムのフロストラインの間の距離を進む間に、フィルム中のエラストマーの粒子の蓄積エネルギーが放出される、先行する実施形態AからFのいずれかまたはその任意の組合せのプロセス;
H.少なくとも1種のエラストマーが、少なくとも1種のC
4−C
7イソオレフィンモノマーと少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される硬化性エラストマーであり、少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、23℃で200MPaを超えるヤング率を有する、熱可塑性ポリマー、コポリマーまたはそれらの混合物である、先行する実施形態AからGのいずれかまたはその任意の組合せのプロセス;
I.少なくとも1種のエラストマーが官能化エラストマーであり、エラストマーが、少なくとも1種のC
4−C
7イソオレフィンモノマーから誘導され、官能化がハロゲン、酸およびエステルの少なくとも1つから誘導される、先行する実施形態AからHのいずれかまたはその任意の組合せのアロイ;
J.動的加硫アロイが、硬化剤、相溶化剤、加工助剤およびフィラーのうちの少なくとも1種を更に含む、先行する実施形態AからIのいずれかまたはその任意の組合せのアロイ;
K.先行する実施形態AからJのいずれかまたはその任意の組合せのプロセスによって形成されたフィルム。
L.少なくとも1種の熱可塑性樹脂の連続相中に加硫または部分的加硫された粒子として分散された少なくとも1種のエラストマーを含む動的加硫アロイのフィルムであって、フィルムが、1.5%未満の収縮、または1.0%未満の収縮、または0.5%未満の収縮を有し、収縮のパーセンテージが、フィルムを形成しフィルムフロストラインを通過した時点に計測されるフィルムの最大幅からフィルム形成後96時間以降までに計測されたフィルムの最大幅までの差から計算されたものであることを特徴とするフィルム;
M.フィルムが接着剤層でコーティングされている、実施形態KまたはLのフィルム;
N.フィルムが多層押出フィルムである、実施形態KからMのいずれかのフィルム;
O.少なくとも1種のエラストマーが、少なくとも1種のC
4−C
7イソオレフィンモノマーと少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される硬化性エラストマーであり、少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、23℃で200MPaを超えるヤング率を有する、熱可塑性ポリマー、コポリマーまたはそれらの混合物である、実施形態KからNのいずれかまたはその任意の組合せのフィルム;
P.少なくとも1種のエラストマーが官能化エラストマーであり、エラストマーが、少なくとも1種のC
4−C
7イソオレフィンモノマーから誘導され、官能化がハロゲン、酸およびエステルの少なくとも1つから誘導される、実施形態KからOのいずれかまたはその任意の組合せのフィルム;
Q.少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、少なくとも2種の熱可塑性樹脂の混合物である、実施形態KからPのいずれかまたはその任意の組合せのフィルム;
R.エラストマーがハロゲン化ブチルゴム、またはイソブチレン由来単位とアルキルスチレン由来単位のコポリマーである、実施形態KからQのいずれかまたはその任意の組合せのフィルム;
S.前記エラストマーがイソブチレンとパラメチルスチレンのコポリマーであり、ハロゲン化されていてもよい、先行する実施形態KからRのいずれかまたはその任意の組合せのフィルム;
T.熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボナート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂、芳香族ポリケトン、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、およびこれらの混合物のうちの少なくとも1種である、先行する実施形態KからSのいずれかまたはその任意の組合せのフィルム;
U.熱可塑性樹脂が少なくとも1種のアミンから誘導される、先行する実施形態KからTのいずれかまたはその任意の組合せのフィルム;
V.エラストマーがアロイ中に55〜90質量%の範囲の量で存在する、先行する実施形態KからUのいずれかまたはその任意の組合せのフィルム;
W.エラストマーがイソブチレンとパラメチルスチレン由来単位のハロゲン化ポリマーであり、ポリマーが7〜12質量%のパラメチルスチレン由来単位を含む、先行する実施形態KからVのいずれかまたはその任意の組合せのフィルム;および
X.アロイが少なくとも1種の硬化剤を2〜6phr含む、先行する実施形態KからWのいずれかまたはその任意の組合せのフィルム。
【実施例】
【0042】
フィルム押し出しに使用するDVAペレットを二軸スクリュー押出機で調製した。DVAを形成する成分、およびそれぞれの量を以下の表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
ペレットをスクリュー押出機で素練りして材料を所望の押し出し温度にすることにより、フィルム吹込加工のためにペレットを準備した。フィルムのゲージ厚、空気圧値およびダイギャップを変化させて、フロストラインおよびフィルムの過冷却、更には経時フィルムの結果として得られる収縮特性に対する押し出しパラメーターの影響を判定した。押し出し速度は全ての試行で71kg/時であり、以下の表2のデータについては、フィルムの折径は約410mmのバブル直径から得られる610mmであった。データを以下の表2に記載する。
データを概観すると、ゲージ厚が最も大きい200μmである2件の場合に経時フィルム収縮値が最も低いことがわかる。これはおそらく、厚さが大きい熱可塑性ドメインほどフィルム中のエラストマーの収縮を弱めるように作用するためである。
【0045】
データから明らかなように、フィルムに対する空気圧を低下させると、フィルム冷却速度が低下し、フロストライン高さが増加する。これも、フィルムの収縮率の低下をもたらす。上記のように、これにより、樹脂構造の再結晶化のため、熱可塑性樹脂ドメインの固定より先にエラストマー材料が蓄積エネルギーを放出できる。
ゲージ厚が単一の複数の試行、即ち、ゲージ厚90μmの試行およびゲージ厚130μmの試行を比較すると、空気圧を低下させるとフィルムの収縮特性も低下することが明らかである。
1kPaの単一の空気圧でフィルムゲージ厚が増加しているデータセットを見ると、ゲージ厚が増加するとフィルム速度が低下し、収縮率が低下する。
【0046】
所定の折径とダイギャップに対してブローアップ比とドローダウン比を変化させた、第二のセットの押し出し試行を実施した。4週間という長期間経過後に計測された収縮率を各試行について計算した。試験パラメーターおよび結果を表3に記載し、
図2および3にグラフ表示する。
グラフにすると、ブローアップ比が一定の場合、ドローダウン比が低下すると経時フィルム収縮は低減することが明らかである。加えて、ブローアップ比が一定の場合、ダイギャップが小さくなると、収縮値は驚くほど低下する。
出願人は、フィルムの収縮を低減するために目標とするフィルムゲージ厚を維持するには、ダイ直径とダイリップのギャップの両方の制御が有用であると判断した。追加の押し出し試行に関する追加データを表4および5に示した。
【0047】
表4において、試行20および21では、フィルムを膨らませる空気圧と、空気温度は同一であり、ブローアップ比と折径は非常に近くなっている。試行21は、試行20に比べてライン速度が高くドローダウン比が比較的大きい試行であって、押出フィルムのゲージ厚が比較的小さくなるという結果であった。試行21のドローダウン比は好適なドローダウン比値である6以下よりも高く、結果として得られるフィルムは、2.0を超える望ましくない収縮率を有するものである。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0048】
試行22〜24では、フィルムのゲージ厚が同一のフィルムを得たが、ライン速度は試行22から試行24にかけて低下させた。ライン速度の低下に伴いブローアップ比は増加し、ドローダウン比は低下した。押出フィルムの収縮はブローアップ比が増加し折径が大きくなると共に増加した。
【0049】
試行25〜27では、押出機は1.0mmのギャップを有し、押出フィルムは130μmのゲージ厚を有した。ブローアップ比とドローダウン比の値が互いに逆に変化するのに伴い、折径は増加した。約4週間後に計測された収縮値は全て2.0未満である。試行27のブローアップ比の値は好適量である2.8を超えているが、1.0mmという狭いダイギャップを使用すると、押出フィルムのより良好な制御と望ましい収縮値が(ダイギャップが1.5mmの押出機を使用した場合と比較して)可能であった。
【0050】
表に記載したデータは、フィルム押し出し後約4週間後、即ち、約672時間後に計測された収縮のパーセンテージを示している。フィルムは96時間から672時間までの期間中収縮し続けるともいえるが、フィルム材料ドメインにおける熱可塑性樹脂結晶の再配置およびフィルム材料内に分散させたゴム粒子の収縮は、フィルム押し出し後96時間(4日)以内に実質的に完了することを当業者は理解する。
【0051】
従来の熱可塑性樹脂フィルムの収縮は、更なる物品形成に使用する場合にはあまり重要なことではない場合もあるが、その一方で、本フィルム組成物は、タイヤのような積層し加硫処理した物品において空気バリア層として有用であり使用されるものである。直前にフィルムを調製する(タイヤ製造工場で、またはジャストインタイム式の供給業者によって提供される)場合、経時フィルム収縮をなくすまたは減らすように形成されていなければ、インナーライナーとしてタイヤに組込むと、組み立て、硬化または後硬化中にフィルムの収縮のためにタイヤインナーライナー材料が後退する場合がある。かかる後退は、インナーライナーの重ね継ぎ部分を損傷するおそれがあり、タイヤインナーライナーの亀裂を生じる場合もある。潜在的な問題はいずれも、タイヤの寿命およびタイヤの空気保持特性に影響を与え、それらを低下させる可能性がある。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕動的加硫アロイのフィルムを形成するためのプロセスであって、
a.動的加硫アロイを少なくとも1つの押出機ダイ吐出オリフィスを通して押し出して、押し出しダイ出口フィルム温度を有する押出フィルムを形成する工程、ここで、前記動的加硫アロイは、少なくとも1種の熱可塑性樹脂の連続ドメイン中に分散した少なくとも1種のエラストマーを含む、
b.空気を前記押出フィルムの上に流して、前記押出フィルムの温度を低下させ、フィルムフロストラインを創出する工程、および
c.フィルムフロストラインを通過したフィルムを移動させて、フィルム形成プロセスを完了させる工程、を含み、
前記押出フィルムの温度を毎秒97℃未満の冷却速度で低下させ、少なくとも1つの押出機ダイ吐出オリフィスから135mmを超える距離のところに押出フィルムのフィルムフロストラインが創出される、
プロセス。
〔2〕前記フィルムが、フィルム形成プロセスの完了直後の押出フィルムの幅に対して2%未満の幅収縮値を有し、前記幅収縮値が、フィルム形成プロセスの完了直後に計測されるフィルム幅1)とフィルム形成プロセスの完了後96時間以降に計測されるフィルム幅2)との差として計算される、前記〔1〕に記載のフィルム形成プロセス。
〔3〕ブローアップ比が2.8以下であり、押出フィルムのドローダウン比が6.0以下である、前記〔1〕または〔2〕に記載のフィルム形成プロセス。
〔4〕押し出されたアロイの少なくとも一面上の接着剤コーティングと共に、フィルムが共押出される、前記〔1〕から〔3〕までのいずれか1項に記載のフィルム形成プロセス。
〔5〕押出フィルムが多層押出品である、前記〔1〕から〔4〕までのいずれか1項に記載のフィルム形成プロセス。
〔6〕押出フィルムが押出機のヘッドとフロストラインの間の距離を進む間に、フィルム中のエラストマーの粒子の蓄積エネルギーが放出される、前記〔1〕から〔5〕までのいずれか1項に記載のフィルム形成プロセス。
〔7〕少なくとも1種のエラストマーが、少なくとも1種のC4−C7イソオレフィンモノマーと少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される硬化性エラストマーであり、前記少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、23℃で200MPaを超えるヤング率を有する、熱可塑性ポリマー、コポリマーまたはそれらの混合物である、前記〔1〕から〔6〕までのいずれか1項に記載のフィルム形成プロセス。
〔8〕前記少なくとも1種のエラストマーが官能化エラストマーであり、前記エラストマーが、少なくとも1種のC4−C7イソオレフィンモノマーから誘導され、官能化がハロゲン、酸およびエステルの少なくとも1つから誘導される、前記〔1〕から〔6〕までのいずれか1項に記載のフィルム形成プロセス。
〔9〕動的加硫アロイが、硬化剤、相溶化剤、加工助剤およびフィラーのうちの少なくとも1種を更に含む、前記〔1〕から〔8〕までのいずれか1項に記載のフィルム形成プロセス。
〔10〕前記〔1〕から〔9〕までのいずれか1項に記載のプロセスによって形成されたフィルム。
〔11〕少なくとも1種の熱可塑性樹脂の連続相中に加硫または部分的加硫された粒子として分散された少なくとも1種のエラストマーを含む動的加硫アロイのフィルムであって、前記フィルムが、1.5%未満の収縮を有し、前記収縮のパーセンテージが、前記フィルムの形成時点に計測されるフィルムの最大幅から前記フィルムの形成完了後96時間以降までに計算されたものである、フィルム。
〔12〕フィルムが接着剤層でコーティングされている、前記〔11〕に記載のフィルム。
〔13〕フィルムが多層押出フィルムである、前記〔11〕または〔12〕に記載のフィルム。
〔14〕少なくとも1種のエラストマーが、少なくとも1種のC4−C7イソオレフィンモノマーと少なくとも1種のマルチオレフィンモノマーから誘導される硬化性エラストマーであり、前記少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、23℃で200MPaを超えるヤング率を有する、熱可塑性ポリマー、コポリマーまたはそれらの混合物である、前記〔11〕から〔13〕までのいずれか1項に記載のフィルム。
〔15〕少なくとも1種のエラストマーが官能化エラストマーであり、前記エラストマーが、少なくとも1種のC4−C7イソオレフィンモノマーから誘導され、官能化がハロゲン、酸およびエステルの少なくとも1つから誘導される、前記〔11〕から〔13〕までのいずれか1項に記載のフィルム。
〔16〕少なくとも1種の熱可塑性樹脂が、少なくとも2種の熱可塑性樹脂の混合物である、前記〔11〕から〔15〕までのいずれか1項に記載のフィルム。
〔17〕エラストマーが、ハロゲン化ブチルゴム、またはイソブチレン由来単位とアルキルスチレン由来単位のコポリマーである、前記〔11〕から〔16〕までのいずれか1項に記載のフィルム。
〔18〕熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボナート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂、芳香族ポリケトン、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、およびこれらの混合物のうちの少なくとも1種である、前記〔11〕から〔17〕までのいずれか1項に記載のフィルム。
〔19〕エラストマーがアロイ中に55〜90質量%の範囲の量で存在する、前記〔1〕から〔15〕までのいずれか1項に記載のフィルム。