(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属基質を鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、金、タンタル、アルミニウム、モリブデン、タングステン、錫、亜鉛、クロム、チタンおよびそれらの合金から成る群より選択する請求項1記載の方法。
段階d)の前または後に紫外線硬化性インクジェットインクを用いて前記金属基質の少なくとも1つの表面に2番目のイメージ(7、8)を噴出させて紫外線で硬化させることに続いて電気メッキまたは酸によるエッチングを行う請求項1または2記載の方法。
着色剤を含有させた紫外線硬化性インクジェットインクを噴出させ、紫外線で硬化させたそれのイメージ(8)をアルカリ水溶液を用いた除去または可溶化で取り除くことをしない請求項3記載の方法。
前記少なくとも1個のアルカリ加水分解性基H−3をイミダゾール基、ベンゾイミダゾール基、トリアゾール基およびベンゾトリアゾール基から成る群より選択しかつ前記少なくとも1個のアルカリ加水分解性基H−4をスクシニミド基およびフタリミド基から成る群より選択する請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
前記1種以上の加水分解性多官能単量体もしくはオリゴマーにしゅう酸エステル基を前記少なくとも1個のアルカリ加水分解性基として有する二官能多官能単量体もしくはオリゴマーを含める請求項6または7記載の方法。
前記重合性組成物Bを含有させる前記紫外線硬化性インクジェットインクにpHが10以上の時に脱色する着色剤を含有させる請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
前記金属品を打ち抜き工具、細かいスクリーンおよびメッシュ、開口部およびマスク、バッテリーグリッド、燃料電池構成要素、センサー、スプリング、圧膜、ヒートシンク、加熱素子、機械構成要素、半導体リードフレーム、モーターおよびトランスフォーマーラミネーション、金属ガスケットおよびシール、シールドおよびリテーナ、電気接点、エンコーダーおよびライトチョッパー、EMI/RFIシールド、ジュエリーおよびウォッシャー、フィルター、眼鏡フレーム、美術品、鍵、ツール、玩具、コイン、ICパッキングリードフレーム、スチールルールダイスおよび名刺から成る群より選択する請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1に、金属品を金属基質から製造する方法の好適な態様を示す。最初に、紫外線硬化イメージ(2)を金属基質(1)にインクジェット印刷する。次に、
図1.c1に示すように、保護されていないいずれかの金属表面から金属をエッチングで除去する一方で紫外線硬化イメージ(3)で保護されている金属は実質的に無傷のままである。紫外線硬化イメージを除去するか或は可溶化させた後、特定の金属レリーフ(4)を有する金属品(5)を得る。別法として、
図1.c2に示すように、金属(6)を金属メッキで付着させ、紫外線硬化イメージを除去するか或は可溶化させた後、金属品(5)に付着させた金属(6)によって異なる金属レリーフを得る。
【
図2】
図2に、金属基質(1)にエッチングを受けさせるに適した配置を示す。
図2Aに示すように、フレーム(10)を金属基質(1)にしっかりと取り付ける。
図2B(
図5Aに示す破線に沿った断面である)に示すように、最初に金属基質(1)をα角に傾けた後、エッチング液入り口(11)をフレーム(10)の片面に位置させる。エッチング液はエッチング液入り口(11)を通って方向(120)の方向に流れた後に金属基質(1)の表面の上を方向(13)の方向に流れ、その後、エッチング液出口(15)を通って方向(14)の方向に出て行く。そのエッチング液はα角に応じてエッチング液出口(152)からエッチング液入り口(11)に向かって複数回再循環する。
【
図3】
図3に、金属基質から部分的に色づけされた金属レリーフを有する金属品を製造する方法の好適な態様を示す。最初に、紫外線硬化イメージ(2)を金属基質(1)にインクジェット印刷する。次に、保護されていない金属表面から金属をエッチングで除去する一方で紫外線硬化イメージ(3)で保護されている金属は実質的に無傷のままである。2番目の紫外線硬化イメージ(7)および除去不能な紫外線硬化イメージ(8)を前記金属表面にインクジェット印刷する。保護されていない金属表面から再びエッチングで金属を除去する。紫外線硬化イメージ(2)および2番目の紫外線硬化イメージ(8)を除去するか或は可溶化させた後、2番目の金属レリーフ(9)より高い位置にある金属レリーフ(4)および除去不能紫外線硬化イメージ(8)によって上部が色づけされた金属レリーフを含有するレリーフを有する金属品(5)を得る。
【
図4】
図4に、立方形状の金属基質(1)を示す。紫外線硬化イメージ(2)を立方体の上面および右側にインクジェット印刷すると同時に前面を除去不能紫外線硬化イメージ(8)でインクジェット印刷する。エッチングおよび除去を実施した後、前面にはこの前面に色を与える除去不能紫外線硬化イメージ(8)によって囲まれた四角い穴(8)が開いている。円形の穴を取り囲む紫外線硬化イメージ(2)を除去処理で取り除くと再び金属が表面として現われる。
【
図5】
図5に、実施例5で製造した金属品の写真を示す。この金属品は、孔径が写真の上部から下部に向かって小さくなっている楕円形の細かいスクリーンである。
【0013】
[態様の説明]
定義
例えば単官能重合性化合物における用語“単官能”は重合性化合物が含有する重合性基が1個であることを意味する。
【0014】
例えば二官能重合性化合物における用語“二官能”は重合性化合物が含有する重合性基が2個であることを意味する。
【0015】
例えば多官能重合性化合物における用語“多官能”は重合性化合物が含有する重合性基が3個以上であることを意味する。
【0016】
用語“アルキル”はアルキル基の炭素原子数各々に可能なあらゆる変形、即ちメチル、エチル、炭素原子数が3の場合のn−プロピルおよびイソプロピル、炭素原子数が4の場合のn−ブチル、イソブチルおよびt−ブチル、炭素原子数が5の場合のn−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピルおよび2−メチル−ブチルなどを意味する。
【0017】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アルキル基は好適にはC
1からC
6−アルキル基である。
【0018】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アルケニル基は好適にはC
1からC
6−アルケニル基である。
【0019】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アルキニル基は好適にはC
1からC
6−アルキニル基である。
【0020】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アラルキル基は好適にはC
1からC
6−アルキル基を1、2、3またはそれ以上含有するフェニルまたはナフチル基である。
【0021】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アルカリール基は好適にはフェニル基またはナフチル基を含有するC
7からC
20−アルキル基である。
【0022】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換アリール基は好適にはフェニル基またはナフチル基である。
【0023】
特に明記しない限り、置換もしくは非置換ヘテロアリール基は好適には1、2または3個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはこれらの組み合わせに置き換わっている5員もしくは6員環である。
【0024】
用語“置換”、例えば置換アルキル基における置換は、アルキル基がそのような基に通常存在する原子、即ち炭素および水素以外の他の原子で置換されていてもよいことを意味する。例えば、置換アルキル基はハロゲン原子またはチオール基を含有していてもよい。非置換アルキル基が含有するのは炭素および水素原子のみである。
【0025】
特に明記しない限り、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリール基、置換アリールおよび置換ヘテロアリール基は好適にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびt−ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキサイド、スルホン、スルホン酸エステル、スルホンアミド、−Cl、−Br、−I、−OH、−SH、−CNおよび−NO
2から成る群より選択される1個以上の置換基で置換されている。
【0026】
金属品の製造方法
本発明の好適な態様に従って金属品(5)を金属基質(1)から製造する方法は、a)紫外線硬化性インクジェットインクを用いてイメージを金属基質の少なくとも1つの表面に噴出させ、b)前記イメージ(2)を紫外線で硬化させ、c)前記紫外線で硬化させたイメージで覆われていない少なくとも1つの金属表面を電気メッキまたは酸でエッチングし、そしてd)前記紫外線で硬化させたイメージをアルカリ水溶液で除去するか或は可溶化させる段階を包含し、ここで、前記紫外線硬化性インクジェットインクは25℃において1,000秒
-1のせん断速度で100mPa.s以下の粘度を示し、そしてここでは、前記紫外線硬化性インクジェットインクに、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤およびチオキサントン系光開始剤の中の少なくとも1種を包含する光開始剤を20重量%以下の量で含有させ、かつ重合性組成物A[この重合性組成物の少なくとも80重量%は、a)15.0から70.0重量%の量のアクリルアミド、b)20.0から75.0重量%の量の多官能アクリレート、およびc)1.0から15.0重量%の量のカルボン酸基含有単官能(メタ)アクリレートから成り、ここで、重量パーセント(重量%)は全部が重合性組成物の総重量が基になっている]、および重合性組成物B[これは、a)多官能単量体もしくはオリゴマーが有する2個の重合性基の間の原子鎖内に位置するアルカリ加水分解性基を少なくとも1個有する1種以上の加水分解性多官能単量体もしくはオリゴマー、およびb)ヒドロキシル基、エチレンオキサイドもしくはオリゴ−エチレンオキサイド基、第三級アミン基、pK
aが3以上の酸性基および5から7員の芳香もしくは非芳香複素環式基から成る群より選択される官能基を少なくとも1個含有する単官能もしくは二官能単量体である1種以上の水吸収制御用単量体を含有する]から成る群より選択した重合性組成物を含有させる。
【0027】
好適な態様では、段階d)の前または後に紫外線硬化性インクジェットインクを用いて前記金属基質の少なくとも1つの表面に2番目のイメージを噴出させて紫外線で硬化させることに続いて金属メッキまたは酸によるエッチングを行う。これの例を
図3で例示し、この図では、高さが異なる金属レリーフ(4)と2番目の金属レリーフ(9)が作り出される。
【0028】
別の態様(これをまた付随してこの上に示した態様と組み合わせてもよい)では、着色剤、好適にはカラー顔料を含有させた紫外線硬化性インクジェットインクを噴出させるが、この場合にはそれの紫外線で硬化させたイメージ(8)をアルカリ水溶液を用いた除去もしくは可溶化で取り除くことはしない。これを最も好適には除去不能紫外線硬化性インクジェットインクを用いて達成する。別法として、紫外線で硬化させた他のイメージの除去も可溶化も行う必要がない場合、除去または可溶化用のアルカリ水溶液を用いた最終的処理を省いてもよい。これの利点は、金属品のレリーフ部分に色を着けるか或は装飾を付けることができる点にあり、これを他の方法で達成しようとするのは非常に困難である。
例えば、
図3で例示するように、色を着けた紫外線硬化性インクジェットインクを後で金属レリーフ(9)に付着させようとするのは困難である。金属レリーフ(9)をカラーインク溶液に浸漬するとまた色が着けたくない金属レリーフ(4)にも着いてしまうであろう。
【0029】
2番目の紫外線硬化イメージをインクジェット印刷できるばかりでなく必要に応じて3番目、4番目、5番目などの紫外線硬化イメージを紫外線硬化性インクジェットで印刷することができかつ各場合ともその後に必要に応じてエッチングまたは金属メッキを行って所望の金属品を得ることができることは明らかであろう。
【0030】
紫外線で硬化させたイメージをエッチングまたは金属メッキ後に除去してもよいが、好適には紫外線で硬化させたイメージをアルカリ水溶液で可溶化させる。その利点は、紫外線で硬化させたイメージに由来する薄片が金属品の隅または穴に粘着する可能性がない点にある。
【0031】
その紫外線で硬化させたイメージを金属表面から除去用アルカリ溶液、好適には有機溶媒が入っていない溶液で除去する、と言うのは、それによってエッチングで除去された金属イオンを前記除去用溶液から環境に優しい様式で回収することができるからである。その除去された紫外線硬化イメージ薄片を濾過で回収する。
【0032】
好適な態様では、その紫外線で硬化させたイメージを金属表面から除去して除去用アルカリ溶液に溶解させる。このような除去方法を用いるとまた紫外線硬化イメージ薄片によるフィルター詰まりの問題も回避される。
【0033】
本発明の製造方法で製造可能な好適な金属品には、打ち抜き工具、細かいスクリーンおよびメッシュ、開口部およびマスク、バッテリーグリッド、燃料電池構成要素、センサー、スプリング、圧膜、ヒートシンク、加熱素子、機械構成要素、半導体リードフレーム、モーターおよびトランスフォーマーラミネーション、金属ガスケットおよびシール、シールドおよびリテーナ、電気接点、エンコーダーおよびライトチョッパー、EMI/RFI
シールド、ジュエリーおよびウォッシャー、フィルター、眼鏡フレーム、美術品、鍵、ツール、玩具、コイン、名刺および他の読み取り可能物から成る群より選択した金属品が含まれる。
【0034】
金属基質
金属基質は好適には鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、金、タンタル、アルミニウム、モリブデン、タングステン、錫、亜鉛、クロム、チタンおよびそれらの合金から成る群より選択した金属基質である。
【0035】
この金属基質は好適には鉄、ニッケル、コバルト、銀、金、タンタル、アルミニウム、モリブデン、タングステン、錫、亜鉛、クロム、チタンおよびそれらの合金から成る群より選択した金属基質である。
【0036】
最も好適な金属基質は鋼(鉄炭素合金)または鋼合金、例えばInvar(ニッケル)、Kovar(ニッケル、コバルト)およびステンレス鋼などである。
【0037】
好適な態様における金属基質は、銅の合金、例えばベリリウム銅、真鍮(亜鉛)および青銅(錫、アルミニウム)などである。
【0038】
好適な態様における金属基質は、ニッケルおよびコバルトの合金、例えばMu Metal、HyMu 80、Alloy 52、Elgiloy(Phynox)、Kova
r、Hastelloys、Inconels、Haynes合金およびNicroferなどである。
【0039】
この金属基質は好適には自己支持型であり、このことは金属基質が非金属支持体、例えばセラミック、ガラスまたはポリイミドの如きプラスチックなどと結合していないことを意味する。
【0040】
金属基質の寸法にも形状にも制限はない。それは球または立方体のような真の三次元物であってもよい(
図4に示すように)。別法として、それは金属板または箔、好適には厚みが15μmから5mmのものであってもよい。
【0041】
エッチング
金属表面のエッチングを段階c)に示すように酸性エッチング液を用いて実施する。そのエッチング液は好適にはpHが<3の水溶液である。
【0042】
好適な態様におけるエッチング液は、pHが2未満の酸水溶液である。その酸エッチング液は好適には硝酸、ピクリン酸、塩酸、フッ化水素酸および硫酸から成る群より選択される少なくとも1種の酸が入っている液である。
【0043】
当該技術分野で公知の好適なエッチング液には、Kalling’s N°2、ASTM N° 30、Kellers Etch、Klemm’s Reagent、Kroll’s Reagent、Marble’s Reagent、Murakami’s
Reagent、PicralおよびVilella’s Reagentが含まれる。
【0044】
そのエッチング液にはまた金属塩、例えば二塩化銅、硫酸銅、フェリシアン化カリウムおよび三塩化鉄などが入っていてもよい。
【0045】
エッチングの時間は所望の形状およびレリーフの高さに左右される。生産性の理由で、エッチングを好適には1時間以内の時間枠、好適には5から45分の時間枠、より好適には10から30分以内に実施する。温度を高くすれば一般的にエッチングが加速される。エッチングを好適には35から50℃の範囲の温度で実施する。
【0046】
好適な態様では、エッチングを好適には圧力を少なくとも1バール、より好適には1から2バールにして噴霧で実施する。後者の場合に最適なエッチング性能が達成される。
【0047】
エッチングに先立って、紫外線硬化性インクジェット印刷されたイメージに好適には熱処理を好適には130から170℃で10から45分間、より好適には150℃で20から30分間受けさせておく。
【0048】
エッチングの後に好適には水を用いた濯ぎを実施することでいくらか残存するエッチング液を除去する。
【0049】
エッチング後、紫外線で硬化させたイメージを除去用アルカリ溶液を用いた除去または可溶化で取り除いてもよい。そのような除去用アルカリ溶液は一般にpHが>10の水溶液である。
【0050】
金属メッキ
金属メッキはエッチングの逆である。エッチングで金属を金属表面から除去する場合、金属メッキで金属を金属表面に付着させる。
【0051】
金属を付着させる目的で用いる方法の種類には実際上制限はない。好適な金属メッキ方法を好適には電気メッキ、無電解メッキおよび(電気)亜鉛メッキから選択し、より好適には金属メッキを無電解メッキで実施する。
【0052】
金属メッキを様々な事例で実施する場合、金属メッキ方法の組み合わせ、例えば、新しい紫外線硬化イメージをインクジェット印刷した後に無電解メッキに続いて亜鉛メッキを実施することなどを利用してもよい。
【0053】
亜鉛メッキについて述べると、付着させる金属は必ずしも金属基質のそれと同じである必要はないことは明らかである。異なる金属を付着させると最終的金属品に有利な効果が得られる可能性がある。例えば、電気亜鉛メッキは鋼を腐食に対して保護する目的で亜鉛の層をそれに結合させる方法である。その方法は、亜鉛陽極および鋼導電体を用いて電流を食塩水/亜鉛溶液に通しながら電気メッキすることを伴う。
【0054】
電気メッキ
電気メッキは、金属カチオンが電極に密着した金属被膜を形成するように溶解している金属カチオンに還元を受けさせる目的で電流を用いる方法である。本発明における電極は金属基質である。
【0055】
本発明に示す電気メッキを実施する方法に関して、通常公知の方法のいずれも使用可能である。電気メッキで使用可能な金属の例には、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、錫および亜鉛が含まれる。
【0056】
電気メッキで得る付着金属層の厚みは意図した使用に従って多様であり得るが、メッキ溶液に入れる金属の濃度、電流密度などを調整することで調節可能である。
【0057】
無電解メッキ
無電解メッキ(これはまた化学的または自動触媒メッキとしても知られる)は、外部の電力を用いることなく水溶液中で化学反応を起させることを伴うメッキ方法である。無電解方法のための水溶液には、下記の形態:
【0058】
【化1】
【0059】
で表される化学反応が起こり得るように、付着させるべき意図した金属のイオンおよび還元剤を入れておく必要がある。本発明における触媒表面は、如何なる紫外線硬化イメージによっても保護されていない金属表面であり、そしてM
solidは、金属基質の金属表面に付着させる金属である。
【0060】
原則として、水素が基になった如何なる還元剤も使用可能であるが、還元剤半電池の酸化還元電位は液体化学に固有のエネルギーバリヤーに打ち勝つに充分なほど高くなければならない。例えば、無電解ニッケルメッキでは一般に次亜リン酸塩が還元剤として用いられる一方、銀、金および銅のような他の金属のメッキでは典型的に低分子量のアルデヒドが用いられる。
【0061】
電気メッキと比べた時のそのような方策の主な利点は、電源もメッキ溶液も必要でないことから製造コストが低い点にある。その技術を用いるとまた多様な形状および種類の表
面にメッキを施すことも可能になる。否定的側面は、メッキ工程の速度が一般に遅くかつ金属をそのように厚く付着させることができない点である。
【0062】
一般に、無電解メッキ溶液には溶媒に加えて1.メッキ用金属イオン、2.還元剤および3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主要成分として入っている。このメッキ溶液にこの上に示した成分に加えて更に公知の添加剤を入れることも可能である。
【0063】
メッキで用いられる金属イオンには制限がない。頻繁に用いられる金属イオンには、銅、錫、鉛、ニッケル、金、パラジウムおよびロジウムが含まれる。
【0064】
メッキ溶液で用いられる有機溶媒は好適には水に溶解する溶媒であり、この観点から、ケトン、例えばアセトンなど、またはアルコール、例えばメタノール、エタノールまたはイソプロパノールなどが好適に用いられる。
【0065】
金属の種類に応じて好適な還元剤および添加剤が存在する。そのような還元剤は通常の無電解メッキ技術分野で良く知られており、それには例えばホウ素が基になった還元剤、例えばホウ水素化ナトリウムまたはジメチルアミンボランなど、およびホルムアルデヒドまたは次亜燐酸などの如き還元剤が含まれる。
【0066】
例えば、銅の無電解メッキで用いられる無電解メッキ溶液には好適にはCuSO4が銅塩として入っており、HCOHが還元剤として入っておりかつ銅イオンの安定剤として働くキレート剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)またはロッシェル塩、トリアルカノールアミンなどが添加剤として入っている。
【0067】
CoNiPの無電解メッキで用いられる無電解メッキ溶液には好適には硫酸コバルトおよび硫酸ニッケルがそれ用の金属塩として入っており、次亜リン酸ナトリウムが還元剤として入っておりかつマロン酸ナトリウム、マレイン酸ナトリウムまたはこはく酸ナトリウムが錯化剤として入っている。
【0068】
パラジウムの無電解メッキで用いられる無電解メッキ溶液には好適には(Pd(NH3)4)Cl2が金属イオンとして入っており、NH3またはH2NNH2が還元剤として入っておりかつEDTAが安定剤として入っている。
【0069】
そのようなメッキ溶液には更にこの上に示した成分以外の成分も入っている可能性がある。
【0070】
除去および可溶化
除去用溶液または除去用浴液は好適にはソーダ、炭酸カリウム、アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウムもしくはカリウムなど、またはアミンが基になったもの、例えばモノもしくはトリエタノールアミンおよび水酸化テトラメチルアンモニウムなどが入っているアルカリ溶液である。好適な除去用溶液は水酸化ナトリウムもしくはカリウムが少なくとも2重量%入っている溶液である。使用時にはその除去用溶液の温度を好適には30℃から85℃、より好適には40℃から55℃の温度にする。その除去用溶液には好適には有機溶媒を実質的に入れず、最も好適には有機溶媒を全く入れない。後者にすると使用済み除去用溶液から金属を環境に優しい様式で回収するのが容易になる。好適な態様では、その除去用溶液を付着させる目的で噴霧を用いる。除去中に噴霧を用いる時に圧力をかけると除去速度が速くなりかつ薄片の分解速度が改善される。
【0071】
エッチングまたは金属メッキそして除去を実施するに適した装置は、金属基質/品の用
途および寸法に依存する。金属板にエッチングを受けさせる場合に可能な配置を
図2に示す。別法として、エッチ溶液を用い、この中に通して、硬化した紫外線硬化イメージ1種または2種以上を担持する金属基質を制御した速度で移動させる。金属基質をエッチング液/メッキ液の中に特定時間浸けて特定温度に加熱するエッチング/金属メッキ用の簡単な溶液は、適切な装置の最も単純な概念である。
【0072】
好適な態様では、紫外線硬化性インクジェットインクを印刷する前に金属表面を奇麗にしておく。これは特に金属表面を手袋の着用無しに手で取り扱う時に好ましい。その洗浄によって紫外線硬化性インクジェットインクと金属表面の接着を妨害する可能性のある粉じん粒子および油を除去する。脱脂以外に金属表面のブラッシングまたはミクロエッチングによって好適には粗さを導入する。それによって一般に紫外線硬化性インクジェットインクと金属表面の接着力が向上する結果として耐エッチ抵抗性が改善される。
【0073】
紫外線硬化性インクジェットインク
紫外線硬化性インクジェットインクを金属表面に印刷した後、紫外線で硬化させることで、接着させる金属表面を保護する紫外線硬化イメージを生じさせる。
【0074】
この紫外線硬化性インクジェットインクはカチオン硬化性であってもよいが、好適にはフリーラジカル紫外線硬化性インクジェットインクである。その紫外線硬化性インクジェットインクを電子ビームで硬化させてもよいが、好適には紫外光、より好適には紫外線LEDによる紫外光で硬化させてもよい。
【0075】
エッチングまたは金属メッキの後、その紫外線硬化性インクジェットインクの紫外線硬化イメージを通常はアルカリ水溶液で除去するか或は他の様式で可溶化させる。しかしながら、装飾、保護または情報の目的で除去不能紫外線硬化性インクジェットインクをインクジェット印刷することも可能であり、その場合には(さらなる)エッチングも金属メッキも必要でない。
【0076】
信頼できる工業的インクジェット印刷を行う目的で、紫外線硬化性インクジェットインクの粘度を好適には45℃で20mPa.s以下、より好適には45℃で1および18mPa.s、最も好適には45℃で4および14mPa.sの範囲にする。
【0077】
良好なイメージ品質および接着力を得る目的で、紫外線硬化性インクジェットインクの表面張力を好適には25℃で18mN/mから70mN/mの範囲、より好適には25℃で約20mN/mから約40mN/mの範囲にする。
除去不能紫外線硬化性インクジェットインク
金属表面に優れた接着力を示す数多くの紫外線硬化性インクジェットインクが当該技術分野で公知であるが、しかしながら、それらの大部分は除去も可溶化も不可能である。
【0078】
そのような除去不能紫外線硬化性インクジェットインクに好適には着色剤、好適にはカラー顔料を含有させる。これの利点は金属品に装飾的(色着き表面)または情報(例えば安全指示または機械部品に付ける参照番号)を伴う紫外線硬化イメージを持たせる点にある。装飾目的を向上させる目的で様々な色を有する複数の除去不能紫外線硬化性インクジェットインクを用いることができる。
【0079】
また、無色の除去不能紫外線硬化性インクジェットインクを用いることも可能である。その場合、そのような紫外線で硬化させたイメージに単に保護の目的、例えば腐食を防止する目的などを持たせることができる。
【0080】
除去可能紫外線硬化性インクジェットインク
エッチングまたは金属メッキの後、その紫外線で硬化させたイメージをアルカリ水溶液
で金属表面から薄片状に除去することができる。このことは、紫外線硬化性インクジェットインクが酸性エッチング液には抵抗性を示すがアルカリ性の除去用溶液には抵抗性を示さないことを意味する。これを達成するには特定の紫外線硬化性インクジェットインク組成が必要である。
【0081】
特に好適な態様では、当該紫外線硬化性インクジェットインクに重合性組成物を含有させ、その重合性組成物の少なくとも80重量%、好適には少なくとも90重量%、最も好適には100重量%が
a)15.0から70.0重量%の量のアクリルアミド、
b)20.0から75.0重量%り量の多官能アクリレート、および
c)1.0から15.0重量%の量のカルボン酸基含有単官能(メタ)アクリレート、
から成るようにするが、ここで、重量パーセント(重量%)は全部が前記重合性組成物の総重量が基になっている。
【0082】
この上に示した好適な紫外線硬化性インクジェットインクに含める重合性組成物にアクリルアミドを少なくとも15.0から70.0重量%、好適には少なくとも20.0から65.0重量%、最も好適には少なくとも30.0から60.0重量%含有させるが、ここで、重量パーセント(重量%)は全部が前記重合性組成物の総重量が基になっている。単一のアクリルアミドまたはアクリルアミドの混合物を用いてもよい。好適なアクリルアミドを
表1に開示する。
【0083】
【表1】
【0084】
好適な態様におけるアクリルアミドは環式アクリルアミドである。紫外線硬化性インクジェットインクの最も好適な態様におけるアクリルアミドはアクリロイルモルホリンである。
【0085】
この上に示した好適な紫外線硬化性インクジェットインクに含める重合性組成物に多官能アクリレートを少なくとも20.0から75.0重量%、好適には少なくとも30.0から65.0重量%、最も好適には少なくとも40.0から55.0重量%含有させるが、ここで、重量パーセント(重量%)は全部が前記重合性組成物の総重量が基になっている。
【0086】
単一の多官能アクリレートまたは多官能アクリレートの混合物を用いることができる。
【0087】
好適な態様では、多官能アクリレートをジプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール(2xプロポキシル化)ジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジトリメチロイルプロパンテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびポリエチレングリコールジアクリレートから成る群より選択する。
【0088】
紫外線硬化性インクジェットインクの最も好適な態様では、多官能アクリレートにネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレートを含める。
【0089】
この上に示した好適な紫外線硬化性インクジェットインクに含める重合性組成物にカルボン酸基含有(メタ)アクリレートを少なくとも1から15重量%、好適には少なくとも2から12重量%、最も好適には少なくとも4から8重量%含有させるが、重量パーセント(重量%)は全部が前記重合性組成物の総重量が基になっている。
【0090】
カルボン酸基含有単官能(メタ)アクリレートの適切な例には、式(I):
【0091】
【化2】
【0092】
[式中、
Rは水素原子またはメチル基、好適には水素原子を表しそしてZは二価の有機基を表す]で表される化合物が含まれる。
【0093】
Zの好適な例は、
*−(CH2)n−
*[ここで、nは2から12の整数を表す]、
*−CH2−CH2−O−CO−Z’−
*[ここで、Z’は下記から選択される二価の有機基を表す]、
*−C6H4−
*、
*−C6H4−(CH2)n−
*[ここで、nは1から12の整数を表す]、
*−(CH2)n−C6H4−
*[ここで、nは1から12の整数を表す]、および
*−(CH2)n−O−C6H4−
*[ここで、nは1から12の整数を表す]であり、ここで、
*は結合部位を表す。
【0094】
カルボン酸基を含有する(メタ)アクリレートの好適な例を
表2に開示する。
【0095】
【表2】
【0096】
紫外線硬化性インクジェットインクの特に好適な態様では、カルボン酸基含有(メタ)アクリレートをアクリル酸2−カルボキシエチルおよびこはく酸2−アクリロイルエチルから成る群より選択する。最も好適なカルボン酸基含有(メタ)アクリレートはアクリル酸2−カルボキシエチルである。
【0097】
可溶紫外線硬化性インクジェットインク
より好適な態様では、紫外線硬化性インクジェットインクを除去用溶液で可溶化させるが、このことは、この上の態様で示したような除去用溶液から濾過で除去すべき薄片が生じないことを意味する。
【0098】
この態様に好適な紫外線硬化性インクジェットインクには、a)1種以上の光開始剤、b)場合により着色剤、好適には10以上のpHで脱色する着色剤、c)多官能単量体もしくはオリゴマーが有する2個の重合性基の間の原子鎖内に位置するアルカリ加水分解性基を少なくとも1個有する1種以上の加水分解性多官能単量体もしくはオリゴマー、およびd)ヒドロキシル基、エチレンオキサイドもしくはオリゴ−エチレンオキサイド基、第三級アミン基、pK
aが3以上の酸性基および5から7員の芳香もしくは非芳香複素環式基から成る群より選択される官能基を少なくとも1個含有する単官能もしくは二官能単量体である1種以上の水吸収制御用単量体が入っている。
【0099】
前記加水分解性多官能単量体もしくはオリゴマーが硬化インクジェットインクイメージが除去用溶液中で示す分解の一因になっており、その結果として、その硬化インクジェットインクイメージが除去用溶液に完全に溶解する。しかしながら、許容される製造時間を得るには2番目の単量体を含める必要がある。その水吸収制御用単量体が硬化インクイメージが除去用溶液中で示す膨潤性の一因になる。それによって硬化インクイメージが除去用溶液中に存在するアルカリによって起す溶解が加速される。
【0100】
好適な態様では、多官能単量体もしくはオリゴマーが有する2個の重合性基の間の原子
鎖内に位置する少なくとも1個のアルカリ加水分解性基を式H−1からH−4:
【0101】
【化3】
【0102】
[式中、
Qは5員芳香環基を形成するに必要な原子を表し、Zは5もしくは6員環基を形成するに必要な原子を表し、そして破線は多官能単量体もしくはオリゴマーの残りとの結合を表す]
から成る群より選択する。
【0103】
さらなる好適な態様では、前記少なくとも1個のアルカリ加水分解性基H−3をイミダゾール基、ベンゾイミダゾール基、トリアゾール基およびベンゾトリアゾール基から成る群より選択する。
【0104】
さらなる好適な態様では、前記少なくとも1個のアルカリ加水分解性基H−4をスクシニミド基およびフタリミド基から成る群より選択する。
【0105】
特に好適な態様における少なくとも1個のアルカリ加水分解性基はしゅう酸エステル基である。
【0106】
前記1種以上の加水分解性多官能単量体もしくはオリゴマーは好適にはアクリレート基、メタアクリレート基、アクリルアミド基、メタアクリルアミド基、スチレン基、マレエート基、フマレート基、イタコネート基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アリルエーテル基およびアリルエステル基から成る群より独立して選択される重合性基を含有する。
【0107】
多官能単量体およびオリゴマーが有する2個の重合性基の間の原子鎖内に位置するアルカリ加水分解性基を少なくとも1個有する加水分解性多官能単量体およびオリゴマーの典型的例を
表3に示すが、それらに限定するものでない。
【0108】
【表3-1】
【0109】
【表3-2】
【0110】
多官能単量体もしくはオリゴマーが有する2個の重合性基の間の原子鎖内に位置するアルカリ加水分解性基を少なくとも1個有する1種以上の加水分解性多官能単量体もしくはオリゴマーを紫外線硬化性インクジェットインクに紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にして好適には少なくとも25重量%の量、より好適には少なくとも30重量%の量で存在させる。
【0111】
3番目の態様の紫外線硬化性インクジェットインクには1種以上の水吸収制御用単量体を含有させる。水吸収制御用単量体は、ヒドロキシル基、エチレンオキサイドもしくはオリゴ−エチレンオキサイド基、第三級アミン、pK
aが3以上の酸官能および5から7員の芳香または非芳香複素環から成る群より選択される官能基を少なくとも1個含有する単官能もしくは二官能単量体である。
【0112】
好適な態様における1種以上の水吸収制御用単量体は、ヒドロキシル基、エチレンオキサイドもしくはオリゴ−エチレンオキサイド基、カルボン酸基、フェノール基、5から7員のラクタム基およびモルホリノ基から成る群より選択される官能基を少なくとも1個含有する。
【0113】
最も好適な態様における1種以上の水吸収制御用単量体は、エチレンオキサイドもしくはオリゴ−エチレンオキサイド基、ヒドロキシル基およびモルホリノ基から成る群より選択される官能基を少なくとも1個含有する。
【0114】
その水吸収制御用単量体は好適には単官能単量体である。
【0115】
その1種以上の水吸収制御用単量体は好適にはアクリレート基、メタアクリレート基、アクリルアミド基およびメタアクリルアミド基から成る群より選択される重合性基を含有する。
【0116】
その1種以上の水吸収制御用単量体は好適にはアクリレート基およびアクリルアミド基から成る群より選択される重合性基を含有する。
【0117】
適切な水吸収制御用単量体を
表4に示すが、それらに限定するものでない。
【0118】
【表4-1】
【0119】
【表4-2】
【0120】
そのような1種以上の水吸収制御用単量体を好適には紫外線硬化性インクジェットインクに紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にして少なくとも20重量%の量で存在させる。
【0121】
他の重合性化合物
紫外線硬化性インクジェットインクを除去しない1番目の態様では、インクジェットインクがエッチ抵抗性である限り重合性組成物には実際上制限はない。また、2番目および3番目の態様のインクジェットインクも除去を行わない製造工程で用いることができることは明らかであろう。
【0122】
除去可能紫外線硬化性インクジェットインクにこの上に開示した重合性化合物以外の重合性化合物を含有させることも可能である。それらを紫外線硬化性インクジェットインクに0から20重量%の量、より好適には15重量%以下、最も好適には10重量%以下の量で存在させてもよいが、重量パーセント(重量%)は全部が重合性組成物の総重量が基になっている。
【0123】
可溶紫外線硬化性インクジェットインクに前記1種以上の加水分解性多官能単量体およびオリゴマーおよび1種以上の水吸収制御用単量体以外にまた他の1種以上の単量体およびオリゴマーを含有させることも可能であるが、好適には、紫外線硬化性インクジェットインクに1種以上の加水分解性多官能単量体およびオリゴマーおよび1種以上の水吸収制御用単量体を含有させる。
【0124】
可溶紫外線硬化性インクジェットインクに他の1種以上の単量体およびオリゴマーを含有させてもよく、好適にはそれを紫外線硬化性インクジェットインクに紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にして25重量%以下の量、より好適には15重量%以下、最も好適には0から10重量%の量で存在させる。
【0125】
この上に記述した紫外線硬化性インクジェットインクに含める他の重合性化合物は、異なる官能度を持っていてもよい単量体およびオリゴマーであってもよく、そして単官能、二官能、三官能およびそれ以上の官能性の単量体、オリゴマーおよび/またはプレポリマーの組み合わせを含有する混合物を用いることも可能である。紫外線硬化性インクジェットインクが示す粘度の調整は単量体とオリゴマーの比率を変えることで実施可能である。
【0126】
特に好適な他の単量体およびオリゴマーはEP 1911814 A(AGFA)の中の[0106]から[0115]に挙げられているそれらである。
【0127】
着色剤
本紫外線硬化性インクジェットは実質的に無色のインクジェットインクであってもよいが、好適には紫外線硬化性インクジェットインクに少なくとも1種の着色剤を含有させる。その着色剤によって一時的マスクを金属品製造業者が明確に見ることができることで品質の可視的検査が可能になる。
【0128】
着色剤は顔料または染料であってもよいが、好適には紫外線硬化性インクジェットインクのインクジェット印刷工程中の紫外線硬化段階によって染み出すことがない染料である。一般に、染料が示す光退色の方が顔料が示すそれよりも高いが、それが原因で噴出性に問題が生じことはない。しかしながら、最も好適な着色剤は、インクジェット印刷工程中の紫外線硬化段階に生き残る染料である。染料は顔料および分散剤とは異なり一般にエッチングおよび除去用溶液中にスラッジをもたらすことはない。
【0129】
アントラキノン染料が紫外線硬化性インクジェット印刷で用いられる通常の紫外線硬化
条件下で示す光退色は僅かのみであることを見いだした。
【0130】
顔料は黒色、白色、シアン、赤紫色、黄色、赤色、オレンジ色、紫色、青色、緑色、褐色、それらの混合物などであってもよい。着色顔料はHERBST、Willy他のIndustrial Organic Pigments、Production、Properties、Applications、第3版、Wiley−VCH、2004、ISBN 3527305769に開示されているそれらから選択可能である。
【0131】
適切な顔料がWO 2008/074548(AGFA GRAPHICS)のパラグラフ[0128]から[0138]に開示されている。
【0132】
インクジェットインクに入れる顔料の粒子はインクジェット印刷装置、特に噴出ノズルの所を通るインクが自由に流れるに充分なほど小さくなければならない。また、色強度が最大限になりかつ沈降速度が遅くなるように小さい粒子を用いる方が好ましい。最も好適には、顔料の平均粒径を150nm以下にする。顔料粒子の平均粒径の測定を好適には動的光散乱の原理が基になったBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて行う。
【0133】
特に好適な態様における紫外線硬化性インクジェットインクに入れる着色剤はアントラキノン染料、例えばLANXESSのMacrolex
TM Blue 3R(CASRN
325781−98−4)などである。
【0134】
他の好適な染料にはクリスタルバイオレットおよび銅フタロシアニン染料が含まれる。
【0135】
好適な態様におけるインクジェットインクに入れる着色剤はpHが10以上の時に脱色する染料である。
【0136】
好適な態様における着色剤は放射線硬化性インクジェットインクに溶解する、即ちそれは染料である。染料は顔料に比べてずっと速く脱色する。それらはまたインクジェットインク中で沈降が原因で起こる分散の安定性の問題を引き起こすこともない。
【0137】
1番目の好適な態様における着色剤の代表例はラクトンが基になった開放形態のロイコ染料である。さらなる好適な態様におけるロイコ染料は下記の式(I)から(VIII)に従うロイコ染料である:
【0138】
【化4】
【0139】
[式中、
R
1およびR
2は独立して置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から
成る群より選択され、nおよびmは独立して0から3の整数を表し、R
3およびR
4は独立して置換もしくは非置換アルキル基、アルコキシ基およびハロゲンから成る群より選択され、R
5は置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基、ハロゲン、アルコキシ基、エステル、アミド、アミンおよびカルボン酸から成る群より選択され、そしてoは0から4の整数を表す]
【0140】
【化5】
【0141】
[式中、
R8およびR9は独立して水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択され、R10およびR11は独立して置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基および置換もしくは非置換アルキニル基から選択され、nは0から3の整数を表し、そしてmは0から5の整数を表す]
【0142】
【化6】
【0143】
[式中、
R12、R13、R16およびR17は独立して置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択され、R14およびR15は独立して水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択される]
【0144】
【化7】
【0145】
[式中、
R20からR23は独立して置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択され、R18およびR19は独立して水素、置換もしくは非置換アルキル基およびアルコキシ基から成る群より選択される]
【0146】
【化8】
【0147】
[式中、
R24およびR25は独立して置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択され、R26からR29は独立して水素、置換もしくは非置換アルキル基、および基R26からR29の中の2つが置換もしくは非置換芳香環を形成することによって生じる基から成る群より選択される]
【0148】
【化9】
【0149】
[式中、
R30からR33は独立して置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択される]
【0150】
【化10】
【0151】
[式中、
R34は置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択され、R35は水素、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択される]。
【0152】
ラクトンが基になったロイコ染料の典型的な例を
表5に示すが、それらに限定するものでない。
【0153】
【表5-1】
【0154】
【表5-2】
【0155】
2番目の好適な態様における着色剤の代表例はトリアリールメタン染料、より好適には式(IX)
【0156】
【化11】
【0157】
[式中、
R36は水素、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルコキシ基、ハロゲン、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択され、R37は置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択され、そしてXは正電荷を相殺する対イオンを表す]
に従うトリアリールメタン染料である。
【0158】
3番目の好適な態様における着色剤の代表例はシアニン染料、メロシアニン染料およびオキソノール染料である。特に下記の一般式(X)から(XIII)に従うシアニン染料が好適である:
【0159】
【化12】
【0160】
[式中、
Xは水素、ニトリル、ニトロ、ハロゲンおよびスルホンから選択される基を表し、EWGは電子求引基、好適にはエステル基を表し、R38、R39およびR41は独立して置換もしくは非置換アルキ基を表し、R40およびR42は独立して置換もしくは非置換アリール基および置換もしくは非置換ヘテロアリール基から成る群より選択され、そしてYは正電荷を相殺する対イオンを表す]。
【0161】
他の好適な着色剤の代表例は式(XIII)および(XIV):
【0162】
【化13】
【0163】
[式中、
R43、R44およびR45は独立して置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択され、R46は水素、アルコキシ基、ハロゲン、カルボキシ基またはそれのエステル、スルホン酸またはそれの塩、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択され、R47は水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基、アミノ基、アミド基およびスルホンアミド基から成る群より選択され、R48は置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基および置換もしくは非置換アリールもしくはヘテロアリール基から成る群より選択される]
である。
【0164】
特に好適な態様の着色剤は、着色剤もしくはそれの脱色形態と除去用水溶液を相溶させる能力を有する置換基を少なくとも1個含有する。前記着色剤もしくはそれの脱色形態を相溶させる能力を有するそのような置換基を好適にはカルボン酸またはそれの塩、スルホン酸またはそれの塩、ホスホン酸またはそれの塩、硫酸の半エステルまたはそれの塩、燐酸のモノ−またはジエステルまたはそれの塩、フェノール基、エチレンオキサイド基およ
びヒドロキシル基から成る群より選択するが、カルボン酸、ヒドロキシル基およびエチレンオキサイド基が特に好適である。
【0165】
式(IX)から(XIV)に従う典型的な着色剤を
表6に示すが、それらに限定するものでない。
【0166】
【表6-1】
【0167】
【表6-2】
【0168】
そのような着色剤を紫外線硬化性インクジェットインクに目に見える色を硬化インクパターンに与えるに充分な量で存在させる。好適な態様では、着色剤を0.1から6.0重量%の量で存在させる。染料の場合には一般にその量を紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にして2重量%未満、より好適には1重量%未満にすることで充分である。
【0169】
高分子量分散剤
紫外線硬化性インクジェットインクにカラー顔料を入れる場合、その顔料を分散させる目的で、紫外線硬化性インクジェットインクに好適には分散剤、より好適には高分子量分散剤を含有させる。
【0170】
適切な高分子量分散剤は、2種類の単量体から作られた共重合体であるが、それに3種類、4種類、5種類またはそれ以上の種類の単量体を含有させることも可能である。その高分子量分散剤の特性は当該単量体の性質およびそれらが重合体中で示す分布の両方に依存する。共重合体である分散剤に好適には下記の重合体組成を持たせる:
・ 単量体を統計学的に重合(例えば単量体AおよびBを重合させてABBAABABにする)、
・ 単量体を交互に重合させる(例えば単量体AおよびBを重合させてABABABABにする)、
・ 単量体を勾配(先細)重合させる(例えば単量体AおよびBを重合させてAAABAABBABBBにする)、
・ ブロック共重合体(例えば単量体AおよびBを重合させてAAAAABBBBBBにする)[ブロック各々のブロック長(2、3、4、5またはそれ以上)が高分子量分散剤の分散能力にとって重要である]、
・ グラフト共重合体(グラフト共重合体は重合体側鎖が重合体バックボーンに結合しているバックボーンで構成されている)、および
・ そのような重合体の混合形態、例えばブロック状勾配共重合体。
【0171】
適切な高分子量分散剤がEP 1911814 A(AGFA)の中の“Dispersants”のセクション、より具体的には[0064]から[0070]および[0074]から[0077]に挙げられている。
【0172】
高分子量分散剤の商業的例は下記である:
・ BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYK
TM 分散剤、
・ NOVEONから入手可能なSOLSPERSE
TM 分散剤、
・ NOVEONのTEGO
TM DISPERS
TM 分散剤、
・ MUENZING CHEMIEのEDAPLAN
TM 分散剤、
・ LYONDELLのETHACRYL
TM 分散剤、
・ ISPのGANEX
TM 分散剤、
・ CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCのDISPEX
TM およびEFKA
TM 分散剤、
・ DEUCHEMのDISPONER
TM 分散剤、および
・ JOHNSON POLYMERのJONCRYL
TM 分散剤。
【0173】
光開始剤および光開始系
紫外線硬化性インクジェットインクに少なくとも1種の光開始剤を含有させるが、複数の光開始剤および/または共開始剤を含有する光開始系を含有させることも可能である。
【0174】
紫外線硬化性インクジェットインクに入れる光開始剤は好適にはフリーラジカル開始剤
、より具体的にはノリッシュI型開始剤またはノリッシュII型開始剤である。フリーラジカル光開始剤は、化学作用のある放射線に暴露された時にフリーラジカルを生成することで単量体およびオリゴマーの重合を開始させる化学的化合物である。ノリッシュI型開始剤は、励起後に開裂を起して直ちに開始用ラジカルを発生する開始剤である。ノリッシュII型開始剤は、化学作用のある放射線によって活性化して実際の開始用フリーラジカルになる二次的化合物から水素を引き抜くことによってフリーラジカルを生成する光開始剤である。そのような二次的化合物は重合相乗剤または共開始剤と呼ばれる。本発明ではI型およびII型両方の光開始剤を単独または組み合わせて用いることができる。
【0175】
適切な光開始剤がCRIVELLO、J.V.他のPhotoinitiators for Free Radical Cationic and Anionic Photopolymerization、第2版、BRADLEY、G.編集、London、UK:John Wiley and Sons Ltd、1998、287−294頁に開示されている。
【0176】
光開始剤の具体例には、これらに限定するものでないが、下記の化合物またはそれらの組み合わせ:ベンゾフェノンおよび置換ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、例えばイソプロピルチオキサントンなど、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6 トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンまたは5,7−ジヨード−3−ブトキシ−6−フルオロンが含まれ得る。
【0177】
適切な商業的光開始剤には、Irgacure
TM 184、Irgacure
TM 500、Irgacure
TM 369、Irgacure
TM 1700、Irgacure
TM 651、Irgacure
TM 819、Irgacure
TM 1000、Irgacure
TM 1300、Irgacure
TM 1870、Darocur
TM 1173、Darocur
TM 2959、Darocur
TM 4265およびDarocur
TM ITX(CIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能)、Lucerin
TM TPO(BASF AGから入手可能)、Esacure
TM KT046、Esacure
TM KIP150、Esacure
TM KT37およびEsacure
TM EDB(LAMBERTIから入手可能)、H−Nu
TM 470およびH−Nu
TM 470X(SPECTRA GROUP Ltd.から入手可能)が含まれる。
【0178】
光開始剤を好適にはいわゆる拡散障害光開始剤にする。拡散障害光開始剤は、単官能光開始剤、例えばベンゾフェノンなどに比べて硬化インク層内でずっと低い可動性を示す光開始剤である。いくつかの方法を用いて光開始剤の可動性を低くすることができる。1つの方法は、拡散速度が低くなるように光開始剤の分子量を大きくする方法、例えば高分子量の光開始剤を用いる方法である。別の方法は、重合する網目構造の中に組み入れられるように反応性を高める方法、例えば多官能光開始剤(光開始基を2、3またはそれ以上有する)および重合性光開始剤を用いる方法である。
【0179】
紫外線硬化性インクジェットインク用の拡散障害光開始剤を好適には高分子量ではない多官能光開始剤、オリゴマー状または高分子量の光開始剤および重合性光開始剤から成る群より選択する。最も好適な拡散障害光開始剤は重合性開始剤または高分子量光開始剤である。
【0180】
好適な拡散障害光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α,αジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、αアミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイド、アシルホスフィンスルフィド、α−ハロケトン、α−ハロスルホンおよびフェニルグリオキサレートから成る群より選択されるノリッシュI型光開始剤に由来する光開始官能基を1個以上含有する。
【0181】
好適な拡散障害光開始剤は、ベンゾフェノン、チオキサントン、1,2−ジケトンおよびアントラキノンから成る群より選択されるノリッシュII型開始剤に由来する光開始官能基を1個以上含有する。
【0182】
適切な拡散障害光開始剤はまたEP 2065362 A(AGFA)の中の二官能および多官能光開始剤に関してはパラグラフ[0074]および[0075]、高分子量光開始剤に関してはパラグラフ[0077]から[0080]および重合性光開始剤に関してはパラグラフ[0081]から[0083]に開示されているそれらである。
【0183】
光開始剤の好適な量は紫外線硬化性インクジェットインクの総重量の0.1−20重量%、より好適には2−15重量%、最も好適には3−10重量%である。
【0184】
感光性を更に高める目的で、紫外線硬化性インクジェットインクに追加的に共開始剤を含有させることも可能である。共開始剤の適切な例は下記の3グループに分類分け可能である:1)第三級脂肪族アミン、例えばメチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンおよびN−メチルモルホリン、(2)芳香族アミン、例えばアミルパラジメチルアミノベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートおよび2−エチルヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、および(3)(メタ)アクリレート化アミン、例えばジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジエチルアミノエチルアクリレート)またはN−モルホリノアルキル−(メタ)アクリレート(例えばN−モルホリノエチル−アクリレート)。好適な共開始剤はアミノベンゾエートである。
【0185】
1種以上の共開始剤を紫外線硬化性インクジェットインクに含める場合、そのような共開始剤を好適には拡散障害にする。
【0186】
拡散障害共開始剤を好適には高分子ではない二または多官能共開始剤、オリゴマー状または高分子量共開始剤および重合性共開始剤から成る群より選択する。より好適には、拡散障害共開始剤を高分子量共開始剤および重合性共開始剤から成る群より選択する。最も好適な拡散障害共開始剤は、(メタ)アクリレート基を少なくとも1個、より好適にはアクリレート基を少なくとも1個有する重合性共開始剤である。
【0187】
紫外線硬化性インクジェットインクに好適には重合性もしくは高分子量の第三級アミン系共開始剤を含有させる。
【0188】
好適な拡散障害共開始剤はEP 2053101 A(AGFA)のパラグラフ[0088]および[0097]に開示されている重合性共開始剤である。
【0189】
紫外線硬化性インクジェットインクに好適には(拡散障害)共開始剤を紫外線硬化性インクジェットインクの総重量の0.1から20重量%の量、より好適には0.5から15重量%の量、最も好適には1から10重量%の量で含有させる。
【0190】
重合禁止剤
紫外線硬化性インクジェットインクの熱安定性を向上させる目的でインクに少なくとも1種の禁止剤を含有させてもよい。
【0191】
適切な重合禁止剤には、フェノール型抗酸化剤、障害アミン系光安定剤、蛍光体型抗酸化剤、ヒドロキノンモノメチルエーテル[(メタ)アクリレート単量体で通常用いられる]が含まれ、そしてまたヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(=BHT)も使用可能である。
【0192】
適切な商業的禁止剤は、例えば、Sumilizer
TM GA−80、Sumilizer
TM GMおよびSumilizer
TM GS(住友化学株式会社が製造)、Genorad
TM 16、Genorad
TM 18およびGenorad
TM 20(Rahn AG)、Irgastab
TM UV10およびIrgastab
TM UV22、Tinuvin
TM 460およびCGS20(Ciba Specialty Chemicals)、Floorstab
TM UV range(UV−1、UV−2、UV−5およびUV−8)(Kromachem Ltd)、Additol
TM S range(S100、S110、S120およびS130)(Cytec Surface Specialties)である。
【0193】
禁止剤を好適には重合性禁止剤にする。
【0194】
そのような重合禁止剤を過剰に添加すると硬化速度が遅くなる可能性があることから、重合を妨害し得る量を混合前に決定しておくのが好適である。重合禁止剤の量を好適には紫外線硬化性インクジェットインクの総量の5重量%以下、より好適には3重量%以下にする。
【0195】
界面活性剤
紫外線硬化性インクジェットインクに少なくとも1種の界面活性剤を含有させてもよいが、好適には界面活性剤を存在させない。界面活性剤を存在させないと紫外線硬化性インクジェットインクが金属板上に良好に拡散しないことで薄い導電ラインを生じさせることができなくなる可能性がある。
【0196】
そのような界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非イオン性または双性イオン性であってもよく、それを添加する総量を通常は紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にして1重量%未満にする。
【0197】
適切な界面活性剤には、フッ素化界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、高級アルコールのアルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホこはく酸エステル塩および燐酸エステル塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびジオクチルスルホこはく酸ナトリウム)、高級アルコールのエチレンオキサイド付加体、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加体、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加体およびアセチレングリコールおよびそれのエチレンオキサイド付加体(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびSURFYNOL
TM 104、104H、440、465およびTG[AIR PRODUCTS & CHEMICALS INC.から入手可能])が含まれる。
【0198】
好適な界面活性剤をフッ素系界面活性剤(例えばフッ素化炭化水素)およびシリコーン系界面活性剤から選択する。シリコーン系界面活性剤は好適にはシロキサンであり、それにアルコキシル化、ポリエーテル改質、ポリエーテル改質ヒドロキシ官能、アミン改質、エポキシ改質および他の改質またはこれらの組み合わせを受けさせてもよい。好適なシロ
キサンは高分子量、例えばポリジメチルシロキサンなどである。
【0199】
好適な商業的シリコーン系界面活性剤にはBYK ChemieのBYK
TM 333およびBYK
TM UV3510が含まれる。
【0200】
好適な態様の界面活性剤は重合性化合物である。
【0201】
好適な重合性シリコーン系界面活性剤には、(メタ)アクリレート化シリコーン系界面活性剤が含まれる。最も好適な(メタ)アクリレート化シリコーン系界面活性剤はアクリレート化シリコーン系界面活性剤である、と言うのは、アクリレートが示す反応性の方がメタアクリレートのそれよりも高いからである。
【0202】
好適な態様の(メタ)アクリレート化シリコーン系界面活性剤は、ポリエーテル改質(メタ)アクリレート化ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル改質(メタ)アクリレート化ポリジメチルシロキサンである。
【0203】
好適には、界面活性剤を紫外線硬化性インクジェットインクに紫外線硬化性インクジェットインクの総重量を基準にして0から0.05重量%の量で存在させる。
【0204】
インクジェット印刷装置
小さい液滴をノズルに通してプリントヘッド1個または2個以上と関連して動いている基質上に制御様式で噴出する1個以上のプリントヘッドを用いて紫外線硬化性インクジェットインクを噴出させることができる。
【0205】
インクジェット印刷装置用の好適なプリントヘッドは圧電ヘッドである。圧電インクジェット印刷は、電圧がかかった時にセラミック製圧電トランスデューサーが動くことが基になっている。電圧をかけるとプリントヘッドの中のセラミック製圧電トランスデューサーの形状が変化して空隙部が生じ、それがインクで満たされる。電圧を再び取り除くとセラミックが元々の形状にまで膨張することでインクの液滴がプリントヘッドから噴出される。しかしながら、本発明に従うインクジェット印刷方法を圧電インクジェット印刷に限定するものでない。他のインクジェットプリントヘッドも使用可能であり、それには様々な種類、例えば連続型などが含まれる。
【0206】
インクジェットプリントヘッドは一般に移動しているインク受け入れ表面を横切る横方向に前後走査する。インクジェットプリントヘッドはしばしば戻って来る時には印刷しない。高い面積処理量を得ようとする時には2方向印刷が好適である。別の好適な印刷方法は“単一通過印刷方法”であり、これはページの幅のインクジェットプリントヘッドまたは複数のジグザグ状インクジェットプリントヘッド(金属板の幅全体を覆う)を用いて実施可能である。単一通過印刷方法の場合、インクジェットプリントヘッドは一般に静止したままでありそして金属基質がインクジェットプリントヘッドの下を移動する。
【0207】
本質的に金属板のような二次元ではない、即ち球またはより複雑なもの、例えば円筒形と立方体の組み合わせなどのような三次元形状を有する金属基質の場合には、プリントヘッドを紫外線硬化性インクジェットインクを塗布するように三次元物の形状を追跡することが可能なロボットアームに取り付けてもよい。そのような技術は当該技術分野、例えば米国特許第2015042716号(HEIDELBERGER DRUCKMASCHINEN AG)、WO 2014/001850(PROJECTA ENGINEERING)および米国特許第2015009254号(LAC CORP)などで公知である。
【0208】
金属品(5)を金属基質(1)から製造する好適な方法は、
a)ロボットアームに取り付けたプリントヘッドを用いて紫外線硬化性インクジェットインクを用いたイメージを金属基質の少なくとも1つの表面に噴出させ、
b)前記イメージ(2)を紫外線で硬化させ、
c)前記紫外線で硬化させたイメージで覆われていない少なくとも1つの金属表面を電気メッキまたは酸でエッチングし、そして
d)前記紫外線で硬化させたイメージをアルカリ水溶液で除去するか或は可溶化させる、段階を包含する。
【0209】
ここで、以下の実施例4に示すように、イメージを金属板の片面にインクジェット印刷する(前記金属板の反対面を紫外線硬化性インクジェットインクで完全に覆いながら)。この金属品製造方法の好適な態様では、生産速度が速くなるようにイメージを金属板の両面にインクジェット印刷する、と言うのは、その時点でエッチングを両面に同時に起させることができるからである。見当が合うようにイメージを金属板の両面にインクジェット印刷することを達成しようとする場合、好適には、金属板を固定しそして移動する構台に取り付けておいた1個以上のインクジェットプリントヘッドでインクジェット印刷する。走査するプリントヘッドを担持する移動する構台が備わっているそのようなプリンターは当該技術分野で公知である。一例は、x軸とy軸上に高い精度で印刷するための移動する構台が備わっているJeti Mira
TM フラットベッドプリンターである(http://www.agfagraphics.com/global/en/product−finder/jeti−mira.htmlを参照)。
【0210】
金属品(5)を金属基質(1)から製造する好適な方法は、
a)構台に取り付けておいた1個以上のプリントヘッドを用いて紫外線硬化性インクジェットインクを用いたイメージを金属基質の1番目の表面に紫外線インクジェット印刷するが、ここで、前記1個以上のプリントヘッドによる走査がその固定した1番目の表面を横切る横方向に前後に起こるようにしかつ前記構台が前記横方向に対して垂直方向に移動するようにし、
b)前記1番目の表面の反対側にある反対面である2番目の表面にインクジェット印刷することができるように金属基質を位置させ、
c)構台に取り付けておいた1個以上のプリントヘッドを用いて紫外線硬化性インクジェットインクを用いたイメージを前記金属基質の2番目の表面に紫外線インクジェット印刷するが、ここで、前記1個以上のプリントヘッドによる走査がその固定した2番目の表面を横切る横方向に前後に起こるようにしかつ前記構台が前記横方向に対して垂直方向に移動するようにし、
c)前記紫外線で硬化させたイメージで覆われていない金属表面を電気メッキまたは酸でエッチングし、そして
d)前記紫外線で硬化させたイメージをアルカリ水溶液で除去するか或は可溶化させる、段階を包含する。
【0211】
硬化装置
紫外線硬化性インクジェットインクの硬化はそれを化学作用のある放射線、例えば電子ビームまたは紫外放射線などに暴露させることで実施可能であり、好適には紫外線硬化性インクジェットインクの硬化を紫外放射線、好適には紫外線LED硬化で起させる。
【0212】
インクジェット印刷では、硬化手段をインクジェットプリンターのプリントヘッドと組み合わせてそれらを一緒に移動させることで硬化性液体が噴射された直ぐ後に硬化用放射線に暴露されるように配置させてもよい。
【0213】
そのような配置では、紫外線LEDを除き、プリントヘッドに連結していてそれらと一
緒に移動するに充分なほど小さな放射線源を装備するのは困難であり得る。従って、固定式静止型放射線源、例えば硬化用紫外光源などを用いてもよく、それを柔軟な放射線伝達手段、例えば光学繊維束または内部反射性軟質管などで放射線源と連結させてもよい。
【0214】
別法として、鏡を放射ヘッドの上に装備する鏡配置を用いて化学作用のある放射線を固定源から放射ヘッドに当てることも可能である。
【0215】
また、放射線源は硬化させるべき基質を横切って横方向に伸びる細長い放射線源であってもよい。それをプリントヘッドの横方向路に隣接させて位置させてもよく、その結果としてプリントヘッドによって生じる次の列のイメージが放射線源の下を段階的または連続的に通るようにする。
【0216】
発射される光の一部が光開始剤もしくは光開始剤系に吸収され得る限り如何なる紫外光源も放射線源として使用可能であり、例えば高もしくは低圧水銀ランプ、冷陰極管、ブラックライト、紫外LED、紫外レーザーおよびフラッシュライトなどが使用可能である。これらの中で好適な源は、主波長が300−400nmの比較的長波長の紫外寄与を示す源である。具体的には、UV−A光源が好適である、と言うのは、それらを用いた時の光散乱度合が低い結果として効率がより高い内部硬化がもたらされるからである。
【0217】
紫外放射線は一般に下記の如くUV−A、UV−BおよびUV−Cとして分類分けされる:
・UV−A:400nmから320nm
・UV−B:320nmから290nm
・UV−C:290nmから100nm。
【0218】
好適な態様では、紫外線硬化性インクジェットインクの硬化を紫外LEDを用いて起させる。インクジェット印刷装置に好適には1個以上の紫外LED、好適には波長が360nm以上のもの、好適には波長が380nm以上の紫外LED、最も好適には波長が約395nm以上の紫外LEDを1個以上装備する。
【0219】
その上、異なる波長または照度を有する2個の光源を逐次または同時に用いてインクパターンを硬化させることも可能である。例えば、1番目の紫外源をUV−Cが豊富、特に260nm−200nmの範囲になるように選択してもよい。その上、2番目の紫外源をUV−Aが豊富になるようにし、例えガリウムがドーパントとして添加されているランプまたはUV−AとUV−Bの両方が高い異なるランプにしてもよい。2個の紫外源を用いる方が有利、例えば硬化速度が速くなることおよび硬化度が高くなることなどの利点が得られることを見いだした。
【0220】
硬化を速める目的で、インクジェット印刷装置にはしばしば1個以上の酸素欠乏装置が備わっている。酸素欠乏装置は、硬化環境内の酸素濃度を低下させる目的で、窒素または他の比較的不活性なガス(例えばCO
2)のブランケットを設けるものであり、その位置は調整可能でありかつ不活性ガスの濃度も調整可能である。残存酸素濃度を通常は200ppmの如く低く維持するが、一般に200ppmから1200ppmの範囲内にする。
【実施例】
【0221】
材料
以下の実施例で用いる材料は全部、特に明記しない限り、標準的供給源、例えばALDRICH CHEMICAL Co.(Belgium)およびACROS(Belgium)などから容易に入手可能であった。用いた水は脱イオン水であった。
【0222】
SR606Aは、Sartomer
TM SR606AとしてARKEMAから入手可能なネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレートである。
【0223】
ACMOは、RAHNから入手可能なアクリロイルモルホリンである。
【0224】
CEAは、ALDRICHのアクリル酸2−カルボキシエチルである。
【0225】
CN146は、Sartomer
TM CN146としてARKEMAから入手可能なポリエステルアクリレートオリゴマーである。
【0226】
CN823は、Sartomer
TM CN823としてARKEMAから入手可能なアクリル系オリゴマーである。
【0227】
INHIBは、下記の組成を有する重合禁止剤を形成する混合物である:
【0228】
【表7】
【0229】
Cupferron
TM ALは、WAKO CHEMICALS LTDのアルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンである。
【0230】
染料−1は、Macrolex
TM Blue 3RとしてLANXESSから入手可能な青色のアントラキノン染料である
クリスタルバイオレットは、ALDRICHのトリアリールメタン染料である。
【0231】
ITXは、Darocur
TM ITXとしてBASFから入手可能な2−および4−イソプロピルチオキサントンの異性体混合物である。
【0232】
EPDは、Genocure
TM EPDとしてRAHNから入手可能な4−ジメチルアミノ安息香酸エチルである。
【0233】
TPOは、Darocur
TM TPOとしてBASFから入手可能な光開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドである。
【0234】
IC907は、Irgacure
TM 907としてBASFから入手可能な光開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンである。
【0235】
IC819は、Irgacure
TM 819としてBASFから入手可能な光開始剤で
あるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
【0236】
VEEAまたはアクリル酸2−(2−ビニルオキシ−エトキシ)−エチルは、日本触媒から供給されたものであった。アクリル酸4−ヒドロキシブチルは日本化成から供給されたものであった。
【0237】
PETAは、SR295としてSARTOMERから入手可能なペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
【0238】
PEG200DAは、Sartomer
TM SR259としてSARTOMERから入手可能なポリエチレングリコール(MW200)ジアクリレート(n=4):
【0239】
【化14】
【0240】
である。
【0241】
HDDAは、Sartomer
TM SR238としてSARTOMERから入手可能な1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:
【0242】
【化15】
【0243】
である。
【0244】
ヒドロ−8は、PEG200DAと同様なしゅう酸エステル単量体:
【0245】
【化16】
【0246】
である。
【0247】
しゅう酸ビス−[2−(2−アクリロイルオキシ−エトキシ)−エチル]エステル(ヒドロ−8)の合成を下記の如く実施した。
【0248】
【化17】
【0249】
第一段階:アクリル酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルの合成
55.9g(0.3モル)のアクリル酸2−(2−ビニルオキシ−エトキシ)−エチルを100mlのアセトンに溶解させた。27g(1.5モル)の水および0.6g(6ミリモル)のメタンスルホン酸を加えた。その反応を室温で4時間継続した。その反応混合物を500mlの塩化メチレンで希釈した後、250mlの水を用いた抽出を実施した。その有機画分をMgSO
4で乾燥させた後、減圧下で蒸発させた。アクリル酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルの分析をTLC−クロマトグラフィーを用いて実施した(Partisil KC18F、Whatmanが供給、溶離剤:メタノール/0.5
N NaCl 80/20、R
f:0.83、アクリル酸(2−ビニルオキシ−エトキシ)−エチルは痕跡量のみ、R
f:0.66および下記の構造に従う化合物、R
f:0.9)。
【0250】
【化18】
【0251】
アクリル酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルをさらなる精製無しに用いた。
【0252】
第二段階:しゅう酸ビス−[2−(2−アクリロイルオキシ−エトキシ)−エチル]エステルの合成
30.4g(0.19モル)のアクリル酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチル、19.8g(0.196モル)のトリエチルアミンおよび1.3g(5.7ミリモル)のBHTを140mlの塩化メチレンに溶解させた。その溶液を−10℃に冷却した。12.1g(0.095モル)の塩化オクザリルを70mlの塩化メチレンに入れることで生じさせた溶液の滴下を温度を−10℃に維持しながら実施した。反応を0℃で1時間に続いて反応を室温で16時間継続した。その反応混合物を200gの氷に加えた後、その混合物に200mlの塩化メチレンを用いた抽出を受けさせた。その有機画分に200mlの1N 塩酸溶液、200mlの飽和NaHCO
3溶液そして200mlの食塩水を用いた抽出を受けさせた。有機画分をMgSO
4で乾燥させた後、減圧下で蒸発させた。粗生成物に調製用カラムクロマトグラフィーを用いた精製を受けさせたが、ここではProchrom LC80カラムを用い、それには
10μmが充填されておりそして塩化メチレン/酢酸エチル90/10を溶離剤として用いた。19.1gのしゅう酸ビス−[2−(2−アクリロイルオキシ−エトキシ)−エチル]エステルを単離した(収率:54%)。その化合物にTLC−クロマトグラフィー(TLC Silicagel 60 F
254、Merckが供給、溶離剤:塩化メチレン/酢酸エチル、83/17、R
f:0.42)およびLC−MSを用いた分析を以下に記述する方法に従って受けさせた(滞留時間:6.6分、純度96.2面積%)。
【0253】
ヒドロ−11はHDDAに類似したしゅう酸エステル単量体である:
【0254】
【化19】
【0255】
しゅう酸ビス−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステル(ヒドロ−11)の合成を下記の如く実施した。
【0256】
【化20】
【0257】
51.3g(0.3モル)のアクリル酸4−ヒドロキシ−ブチル、31.4g(0.31モル)のトリエチルアミンおよび2g(9ミリモル)のBHTを200mlの塩化メチレンに溶解させた。その反応混合物を−10℃に冷却した。19.0g(0.15モル)の塩化オクザリルを100mlの塩化メチレンに入れることで生じさせた溶液の滴下を温度を−10℃に維持しながら実施した。反応を0℃で1時間に続いて反応を室温で16時間継続した。その反応混合物を500gの氷の中に注ぎ込んだ後、その混合物を1時間撹拌した。その混合物に200mlの塩化メチレンを用いた抽出を2回受けさせた。有機画分を一緒にして300mlの1N 塩酸溶液、300mlの飽和NaHCO
3溶液そして200mlの食塩水(2回)を用いた抽出を実施した。有機画分をMgSO
4で乾燥させた後、減圧下で蒸発させた。粗生成物の精製を調製用カラムクロマトグラフィーを用いて実施したが、ここではProchrom LC80カラムを用い、それには
10μmが充填されておりそして塩化メチレン/酢酸エチル90/10を溶離剤として用いた。22gのしゅう酸ビス−(4−アクリロイルオキシ−ブチル)エステルを単離した(収率:43%)。その化合物にTLCクロマトグラフィー(TLC Silicagel 60 F
254、Merckが供給、溶離剤:塩化メチレン/酢酸エチル96/4、R
f:0.3)、GC(滞留時間:12.2分、純度:99.6面積%)およびGC−MSを用いた分析を受けさせたが、両方とも以下に記述する方法に従った。
【0258】
DPGDAは、Sartomer
TM SR508としてSARTOMERから入手可能なジプロピレングリコールジアクリレートである。
【0259】
MADAMEは、Norsocryl
TM MADAMEとしてARKEMA Franceから入手可能なメタアクリル酸N,N−ジメチル 2−アミノエチルである。
【0260】
ACMOは、RAHNから入手可能なアクリロイルモルホリンである。
【0261】
VEEAまたはアクリル酸2−(2−ビニルオキシ−エトキシ)−エチルは日本触媒から供給されたものであった。
【0262】
IDAは、Sartomer
TM SR395としてSARTOMERから入手可能なアクリル酸イソドデシルである。
【0263】
TMPTAは、Sartomer
TM SR350としてSARTOMERから入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレートである。
【0264】
NPGDAは、Sartomer
TM SR9003としてSARTOMERから入手可能なネオペンチルグリコール(2x プロポキシル化)ジアクリレートである。
【0265】
PETAは、Sartomer 295としてSartomerから入手可能なペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
【0266】
CEAは、ALDRICHのアクリル酸2−カルボキシエチルである。
【0267】
SUCは、ALDRICHのこはく酸モノ−2−(アクリルオキシ)エチルである。
【0268】
測定方法
1.GC分析
GC分析をAgilent 6890で実施したが、ここではDB1カラム(30x0.25 0.25)を用い、ヘリウムを担体ガスとして2ml/分の流量および50対1のスプリット比で用いた。40℃で開始して2分間置きそして温度を1分当たり15℃で200℃の温度にまで上昇させる温度プロファイルを用いた。各化合物を塩化メチレンに入れることで生じさせた1重量/重量%の溶液を1μl注入した。
【0269】
2.GC−MS分析
GC−MS分析をTrace Ultra−DSQで実施したが、ここではDB−xlbカラム(30x0.25 0.25)を用い、ヘリウムを担体ガスとして1.2ml/分の流量および50対1のスプリット比で用いた。80℃で開始しそして温度を1分当たり15℃で上昇させて325℃にする温度プロファイルを用いた。EI an PCI
(アンモニア)を質量スペクトルの記録で用いた。各化合物を塩化メチレンに入れることで生じさせた1重量/重量%の溶液を1μl注入した。
【0270】
3.LC−MS分析
LC−MS分析をBruker HG Ultraで実施したが、ここではAltima HP C18 AQカラム(150x3、5μm)を用い、それを0.35ml/分の流量において40℃で操作した。水を溶離剤Aとして用いかつアセトニトリルを溶離剤Bとして用いる勾配溶離を使用した。
表8に従う勾配を用いた。
【0271】
【表8】
【0272】
ESIイオン化をコンビブロン(combibron)検出器と組み合わせて用いた。20mlのアセトニトリルに各化合物を2mg入れることで生じさせた溶液を5μl注入した。
【0273】
4.フローインジェクション−MS
フローインジェクション分析をBruker HG Ultraで実施したが、ここではアセトニトリルが95%で水中2ミリモルの酢酸アンモニウム溶液が5%の混合物を溶離剤として0.1ml/分の流量において40℃の温度で用いた。ESIネガティブをイオン化として用いた。20mlのアセトニトリルに各化合物を2mg入れることで生じさせた溶液を2μl注入した。
【0274】
5.エッチ抵抗性(ER%)
エッチ抵抗性の評価をエッチング後に金属基質上に残存する硬化インクジェットインク層のパーセントを測定することで実施した。エッチ抵抗性が100%であることは、硬化インクジェットインク層全体がエッチング溶液に生き残ったことを意味する。エッチ抵抗性が0%であることは、エッチング後に金属基質上に硬化インクジェットインクが全く存在しないことを確認することができたことを意味する。中間的パーセント、例えば80%などは、エッチング後に金属基質上に硬化インクジェットインクが約80%存在することを確認することができたことを意味する。良好なエッチ抵抗性は値が少なくとも80%であることを意味する。優れたエッチ抵抗性は値が少なくとも90%、好適には100%であることを意味する。
【0275】
6.エッチ抵抗性(ER)
エッチ抵抗性の評価をエッチングそして濯ぎ後直ちに綿棒で層をこすることで実施した。評価を
表9に記述する判断基準に従って行った。
【0276】
【表9】
【0277】
7.除去性(SB)および薄片
紫外線硬化性インクジェットで印刷された層が金属表面から剥がれる時間、即ち剥離時間を測定した。評価を
表10に記述する判断基準に従って行った。
【0278】
【表10】
【0279】
紫外線硬化性インクジェットで印刷された層の剥離が始まった後に薄片の生成を観察した。評価を
表11に記述する判断基準に従って行った。
【0280】
【表11】
【0281】
8.除去性(SB%)
除去性の評価を除去後に金属表面から取り除かれた紫外線硬化インクジェットインク層のパーセントを測定することで実施した。除去性が100%であることは、硬化インクジェットインク層全体が除去されたことを意味する。除去性が0%であることは、硬化インクジェットインクを金属基質から全く除去できなかったことを意味する。中間的パーセント、例えば30%などは、除去によって金属板から取り除くことができた硬化インクジェットインクが約30%のみであることを意味する。良好な除去性は値が少なくとも80%であることを意味する。優れた除去性は値が少なくとも90%、好適には100%であることを意味する。値が30%以下であると除去性が非常に劣る。
【0282】
9.接着性(ADH)
接着性の試験ではクロスハッチカッターセット(cross hatch cutter set)であるElcometer 1542を用いた。付ける引っ掻き傷の間の距離を1mmにする。長さが5cmのTesatape
TM 4104 PVCテープ片をクロスカットインクジェットインクの上に押し付けた。前記テープを親指で4回押した後、素早く1回引っ張ることでそれを取り除いた。次に、接着性の評価を
表12に記述する評価値に従って行った。
【0283】
【表12】
【0284】
10.粘度
配合物が示す粘度の測定をCAMBRIDGE APPLIED SYSTEMSの“Robotic Viscometer Type VISCObot”を用いて45℃で実施した。
【0285】
工業用インクジェット印刷の場合には粘度を好適には45℃で20mPa.sにする。より好適には粘度を45℃で15mPa.s未満にする。
【0286】
11.硬化速度
金属表面に印刷して硬化させた後の紫外線硬化インクジェットインク層に指を触れる評価を受けさせた。評価を
表13に記述する判断基準に従って行った。
【0287】
【表13】