【文献】
山本 圭治郎,空気圧による柔らかいパワーアシスト,”ユーザー側とモノ作り側の架け橋のために”,日本,国立障害者リハビリテーションセンター,2013年 9月 4日,p.1-2,URL,http://www.rehab.go.jp/ri/event/assist/top.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリンダには、前記第1供給用ポートと連通している逃がし弁が形成され、前記第1供給用ポートから取り入れた過剰な作動流体が、前記逃がし弁を通じて、外部へ排出される、ことを特徴とする請求項1に記載の関節運動アシストシステム。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態を、
図1〜
図17を参照して説明する。なお、本実施形態においては、人体の右手に装着される関節運動アシスト装置、及び、当該関節運動アシスト装置を装着する人体とは異なる人体の右手に装着されるマスタ装置を有する関節運動アシストシステムを例示して説明する。また、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0037】
[構成]
図1には、一実施形態に係る関節運動アシストシステム100の構成が示されている。
図1に示されるように、関節運動アシストシステム100は、関節運動アシスト装置200と、マスタ装置500と、配管800とを備えている。また、関節運動アシストシステム100は、給排装置900と、配管PPとを備えている。ここで、関節運動アシスト装置200は、スレーブ装置に対応している。
【0038】
<関節運動アシスト装置200の構成>
上記の関節運動アシスト装置200の構成ついて、説明する。
【0039】
図2には、関節運動アシスト装置200の外観図が示されている。
図2は、人体HB1の第1対象物としての右手HDR1に装着された関節運動アシスト装置200を、手指の関節が伸展状態にあるときに手背(手の甲)側から眺めた外観図である。
図2に示されるように、関節運動アシスト装置200は、手部装着部210と、母指関節運動アシスト部230
1と、手指関節運動アシスト部230
2,230
3,230
4,230
5とを備えている。
【0040】
なお、以下の説明では、母指関節運動アシスト部230
1及び手指関節運動アシスト部230
2,230
3,230
4,230
5を総称して、「手指関節運動アシスト部230
j(j=1,…,5)」とも記す。また、以下の説明では、母指関節運動アシスト部230
1を除いた手指関節運動アシスト部230
2,230
3,230
4,230
5を総称する場合には、「手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)」とも記す。
【0041】
《手部装着部210》
上記の手部装着部210について、説明する。手部装着部210は、例えば、布製の部材であり、右手HDR1の手背及び手掌に装着される。手部装着部210には、母指関節運動アシスト部230
1の一方の部分が取り付けられる。
【0042】
また、手部装着部210には、手指関節運動アシスト部230
2,230
3,230
4,230
5の一方の部分が取り付けられる。そして、手部に手部装着部210が装着されている状態では、手指関節運動アシスト部230
j(j=1,…,5)は、手背の爪側に配置されるようになっている。
【0043】
《母指関節運動アシスト部230
1の構成》
上記の母指関節運動アシスト部230
1の構成について、説明する。
【0044】
母指関節運動アシスト部230
1は、母指の関節運動をアシストする。母指関節運動アシスト部230
1は、手部装着部210が手部に装着されている状態で、母指の指(末節部位、基節部位)及び中手部位上に装着される。
【0045】
母指関節運動アシスト部230
1は、
図2及び
図3(A),(B)により総合的に示されるように、ベローズ342
1,343
1と、伝達部材321
1,323
1,324
1とを備えている。また、母指関節運動アシスト部230
1は、母指装着部350
1を備えている。
【0046】
図3(A),(B)における座標系(X
1,Y
1,Z
1)は、母指が伸びている状態で、指先方向を+Y
1方向、各関節の屈曲側から伸展側へ向かう方向を+Z
1方向、Y
1方向及びZ
1方向に直交し、小指側へと向かう方向を+X
1方向とする座標系である。ここで、
図3(A)は、母指に装着された母指関節運動アシスト部230
1を、+Z
1方向側から視た図である。また、
図3(B)は、
図3(A)に示される母指関節運動アシスト部230
1を、−X
1方向側から視た図である。
【0047】
上記のベローズ342
1は、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、母指の第1関節の関節軸の周りに沿って、当該関節軸に対して略直交する方向側に配置される。ベローズ342
1の一方側(
図3における「−Y
1方向側」)端部は、伝達部材323
1の他方の端部側(
図3における「+Y
1方向側」)に形成された接続部に接続されるとともに、ベローズ342
1の他方側端部は、伝達部材321
1の一方の端部側に形成された接続部に接続される。こうして配置されたベローズ342
1は、第1関節の関節運動をアシストする力を発生する。
【0048】
上記のベローズ343
1は、ベローズ342
1と同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、母指の第2関節の関節軸の周りに沿って、当該関節軸に対して略直交する方向側に配置される。ベローズ343
1の一方側端部は、伝達部材324
1のベローズ343
1側の端部側に形成された接続部に接続されるとともに、ベローズ343
1の他方側端部は、伝達部材323
1の一方の端部側に形成された接続部に接続される。こうして配置されたベローズ343
1は、第2関節の関節運動をアシストする力を発生する。
【0049】
ここで、ベローズ342
1には、可撓性を有する樹脂製の配管821
1が取り付けられ、当該ベローズ342
1は、配管821
1を介してマスタ装置500と連通している。そして、ベローズ342
1内の空気圧が変化すると、当該ベローズ342
1が膨縮する。この結果、ベローズ342
1が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
【0050】
また、ベローズ343
1には、可撓性を有する樹脂製の配管825
1が取り付けられ、当該ベローズ343
1は、配管825
1を介してマスタ装置500と連通している。そして、ベローズ343
1内の空気圧が変化すると、当該ベローズ343
1が膨縮する。この結果、ベローズ343
1が上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
【0051】
上記の伝達部材321
1は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、一方の端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。伝達部材321
1の長板部の一方の端部には、ベローズ342
1を介して、伝達部材323
1が接続されている。そして、伝達部材321
1の一方の端部の接続部は、ベローズ342
1の他方側端部に接続されている。ここで、伝達部材321
1の長板部の一方の端部は、右手に関節運動アシスト装置200が装着されている時において、母指の第1関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に伝達部材323
1に接続されるようになっている。この伝達部材321
1の長板部は、母指装着部350
1を介して、母指の末節部位に装着される。
【0052】
上記の伝達部材323
1は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。伝達部材323
1の長板部の一方の端部には、ベローズ343
1を介して、伝達部材324
1が接続されている。そして、伝達部材323
1の一方の端部の接続部は、ベローズ343
1の他方側端部に接続されている。ここで、伝達部材323
1の長板部の一方の端部は、右手に関節運動アシスト装置200が装着されている時において、母指の第2関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に伝達部材324
1に接続されるようになっている。
【0053】
また、伝達部材323
1の長板部の他方の端部には、ベローズ342
1を介して、伝達部材321
1が接続されている。そして、伝達部材323
1の他方の端部側の接続部は、ベローズ342
1の一方側端部に接続されている。この伝達部材323
1の長板部は、母指装着部350
1を介して、母指の基節部位に装着される。
【0054】
上記の伝達部材324
1は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、他方の端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。伝達部材324
1の長板部の他方の端部には、ベローズ343
1を介して、伝達部材323
1が接続されている。そして、伝達部材324
1の他方の端部の接続部は、ベローズ343
1の一方側端部に接続されている。この伝達部材324
1の長板部は、母指装着部350
1を介して、母指の中手に装着される。
【0055】
上記の母指装着部350
1は、母指の指(末節部位、基節部位)及び中手部位上に装着される。母指装着部350
1は、装着部材と、指サックと、バンド部材とを備えている。
【0056】
上記の装着部材は、例えば、弾力性のある長形状の布製の部材であり、母指が延びる方向に沿って、母指の指及び中手の手背側に配置される。装着部材の+Z
1方向側には、伝達部材321
1,323
1,324
1の長板部が固定されている。また、装着部材における伝達部材324
1が固定されている部分の反対側(−Z
1方向側)には、手部装着部210が取り付けられている。
【0057】
上記の指サックは、例えば、皮製の部材であり、装着部材の指先側に固定される。そして、指サックは、母指関節運動アシスト部230
1を母指に装着する際に、母指の指先に固定される。上記のバンド部材は、例えば、長形状の布製の部材であり、基節部位と伝達部材323
1の長板部とを固定する。
【0058】
《手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)の構成》
上記の手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)の構成について、説明する。
【0059】
手指関節運動アシスト部230
2は、示指の関節運動をアシストする。また、手指関節運動アシスト部230
3は、中指の関節運動をアシストする。また、手指関節運動アシスト部230
4は、薬指の関節運動をアシストする。また、手指関節運動アシスト部230
5は、小指の関節運動をアシストする。手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)のそれぞれは、手部装着部210が手部に装着されている状態で、これらの手指の指(末節部位、中節部位、基節部位)及び中手部位上に装着される。
【0060】
図4(A),(B)には、手指関節運動アシスト部230
kの代表として、手指関節運動アシスト部230
2の構成図が示されている。
図4(A),(B)における座標系(X
2,Y
2,Z
2)は、示指が伸びている状態で、指先方向を+Y
2方向、各関節の屈曲側から伸展側へ向かう方向を+Z
2方向、Y
2方向及びZ
2方向に直交し、小指側へと向かう方向を+X
2方向とする座標系である。
【0061】
ここで、
図4(A)は、示指に装着された手指関節運動アシスト部230
2を、+Z
2方向側から視た図である。また、
図4(B)は、
図4(A)に示される手指関節運動アシスト部230
2を、−X
2方向側から視た図である。本実施形態では、手指関節運動アシスト部230
3,230
4,230
5についても、手指関節運動アシスト部230
2と同様に構成されている。
【0062】
手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)のそれぞれは、
図2及び
図4(A),(B)により総合的に示されるように、ベローズ341
k,342
k,343
kと、配管331
kと、伝達部材321
k,322
k,323
k,324
kとを備えている。また、手指関節運動アシスト部230
kのそれぞれは、手指装着部350
kを備えている。
【0063】
上記のベローズ341
kは、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、第1関節の関節軸の周りに沿って、当該関節軸に対して略直交する方向側に配置される。ベローズ341
kの一方側(
図4における「−Y
k方向側」)端部は、伝達部材322
kの他方の端部側(
図4における「+Y
k方向側」)に形成された接続部に接続されるとともに、ベローズ341
kの他方側端部は、伝達部材321
kの一方の端部側に形成された接続部に接続される。こうして配置されたベローズ341
kは、第1関節の関節運動をアシストする力を発生する。
【0064】
上記のベローズ342
kは、ベローズ341
kと同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、第2関節の関節軸の周りに沿って、当該関節軸に対して略直交する方向側に配置される。ベローズ342
kの一方側端部は、伝達部材323
kの他方の端部側に形成された接続部に接続されるとともに、ベローズ342
kの他方側端部は、伝達部材322
kの一方の端部側に形成された接続部に接続される。こうして配置されたベローズ342
kは、第2関節の関節運動をアシストする力を発生する。
【0065】
上記のベローズ343
kは、ベローズ341
k,342
kと同様に、等間隔の環状溝を有する伸縮自在な樹脂製の部材であり、第3関節の関節軸の周りに沿って、当該関節軸に対して略直交する方向側に配置される。ベローズ343
kの一方側端部は、伝達部材324
kのベローズ343
k側の端部側に形成された接続部に接続されるとともに、ベローズ343
kの他方側端部は、伝達部材323
kの一方の端部側に形成された接続部に接続される。こうして配置されたベローズ343
kは、第3関節の関節運動をアシストする力を発生する。
【0066】
ここで、ベローズ341
kの内部空間とベローズ342
kの内部空間は、可撓性を有する樹脂製の配管331
kを介して、連通している。また、ベローズ342
kには、可撓性を有する樹脂製の配管821
kが取り付けられ、当該ベローズ342
kは、配管821
kを介してマスタ装置500と連通している。そして、ベローズ341
k,342
k内の空気圧が変化すると、当該ベローズ341
k,342
kが膨縮する。この結果、ベローズ341
k,342
kが上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
【0067】
また、ベローズ343
kには、可撓性を有する樹脂製の配管825
kが取り付けられ、当該ベローズ343
kは、配管825
kを介してマスタ装置500と連通している。そして、ベローズ343
k内の空気圧が変化すると、当該ベローズ343
kが膨縮する。この結果、ベローズ343
kが上述した関節運動をアシストする力を発生させる。
【0068】
上記の伝達部材321
kは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、一方の端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。伝達部材321
kの長板部の一方の端部には、ベローズ341
kを介して、伝達部材322
kが接続されている。そして、伝達部材321
kの一方の端部側の接続部は、ベローズ341
kの他方側端部に接続されている。ここで、伝達部材321
kの長板部の一方の端部は、右手に関節運動アシスト装置200が装着されている時において、第1関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に伝達部材322
kに接続されるようになっている。この伝達部材321
kの長板部は、手指装着部350
kを介して、手指の末節部位に装着される。
【0069】
上記の伝達部材322
kは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、両方の端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。伝達部材322
kの長板部の一方の端部には、ベローズ342
kを介して、伝達部材323
kが接続されている。そして、伝達部材322
kの一方の端部側の接続部は、ベローズ342
kの他方側端部に接続されている。ここで、伝達部材322
kの長板部の一方の端部は、右手に関節運動アシスト装置200が装着されている時において、第2関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に伝達部材323
kに接続されるようになっている。
【0070】
また、伝達部材322
kの長板部の他方の端部には、ベローズ341
kを介して、伝達部材321
kが接続されている。そして、伝達部材322
kの他方の端部側の接続部は、ベローズ341
kの一方側端部に接続されている。この伝達部材322
kの長板部は、手指装着部350
kを介して、手指の中節部位に装着される。
【0071】
上記の伝達部材323
kは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、両方の端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。伝達部材323
kの長板部の一方の端部には、ベローズ343
kを介して、伝達部材324
kが接続されている。そして、伝達部材323
kの一方の端部側の接続部は、ベローズ343
kの他方側端部に接続されている。ここで、伝達部材323
kの長板部の一方の端部は、右手に関節運動アシスト装置200が装着されている時において、第3関節の関節軸を回動軸にして、回動可能に伝達部材324
kに接続されるようになっている。
【0072】
また、伝達部材323
kの長板部の他方の端部には、ベローズ342
kを介して、伝達部材322
kが接続されている。そして、伝達部材323
kの他方の端部側の接続部は、ベローズ342
kの一方側端部に接続されている。この伝達部材323
kの長板部は、手指装着部350
kを介して、手指の基節部位に装着される。
【0073】
上記の伝達部材324
kは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板部を有している。そして、当該長板部には、他方の端部から略直立して手の甲の方向に沿って延びる環状の接続部が形成されている。伝達部材324
kの長板部の他方の端部には、ベローズ343
kを介して、伝達部材323
kが接続されている。そして、伝達部材324
kの他方の端部の接続部は、ベローズ343
kの一方側端部に接続されている。この伝達部材324
kの長板部は、手指装着部350
kを介して、手指の中手部位上に装着される。
【0074】
上記の手指装着部350
k(k=2,…,5)は、手指の指(末節部位、中節部位、基節部位)及び中手部位上に装着される。手指装着部350
k(k=2,…,5)のそれぞれは、装着部材と、指サックと、2つのバンド部材とを備えている。
【0075】
上記の装着部材は、例えば、弾力性のある長形状の布製の部材であり、手指が延びる方向に沿って、手指の指及び中手の手背側に配置される。装着部材の+Z
k方向側には、伝達部材321
k,322
k,323
k,324
kの長板部が固定されている。また、装着部材における伝達部材324
kが固定されている部分の反対側(−Z
k方向側)には、手部装着部210が取り付けられている。
【0076】
上記の指サックは、例えば、皮製の部材であり、装着部材の指先側に固定される。そして、指サックは、手指関節運動アシスト部230
kを手指に装着する際に、手指の指先に固定される。上記の2つのバンド部材は、例えば、長形状の布製の部材である。そして、一のバンド部材は、中節部位と伝達部材322
kの長板部とを固定し、他のバンド部材は、基節部位と伝達部材323
kの長板部とを固定する。
【0077】
<マスタ装置500の構成>
上記のマスタ装置500の構成ついて、説明する。
【0078】
図5には、マスタ装置500の外観図が示されている。
図5は、人体HB1とは異なる人体HB2の第2対象物としての右手HDR2に装着されたマスタ装置500を、手指の関節が伸展状態にあるときに手背側から眺めた外観図である。本実施形態では、右手HDR2は、右手HDR1と合同対称性を有しているものとする。
図5に示されるように、マスタ装置500は、手部装着部510と、個別マスタ部530
j(j=1,…,5)とを備えている。
【0079】
《手部装着部510》
上記の手部装着部510について、説明する。手部装着部510は、例えば、布製の部材であり、右手HDR2の手背及び手掌に装着される。手部装着部510には、個別マスタ部530
j(j=1,…,5)が取り付けられる。そして、手部に手部装着部510が装着されている状態では、個別マスタ部530
j(j=1,…,5)は、手背側に配置されるようになっている。
【0080】
《個別マスタ部530
j(j=1,…,5)の構成》
上記の個別マスタ部530
j(j=1,…,5)の構成について、説明する。
【0081】
個別マスタ部530
1は、母指の指及び中手部位上に装着され、人体HB1の右手HDR1の母指の関節運動をアシストする手指関節運動アシスト部230
1を制御する。また、個別マスタ部530
2は、示指の指及び中手部位上に装着され、人体HB1の右手HDR1の示指の関節運動をアシストする手指関節運動アシスト部230
2を制御する。また、個別マスタ部530
3は、中指の指及び中手部位上に装着され、人体HB1の右手HDR1の中指の関節運動をアシストする手指関節運動アシスト部230
3を制御する。
【0082】
個別マスタ部530
4は、薬指の指及び中手部位上に装着され、人体HB1の右手HDR1の薬指の関節運動をアシストする手指関節運動アシスト部230
4を制御する。また、個別マスタ部530
5は、小指の指及び中手部位上に装着され、人体HB1の右手HDR1の小指の関節運動をアシストする手指関節運動アシスト部230
5を制御する。
【0083】
図6(A),(B)には、個別マスタ部530
jの代表として、個別マスタ部530
2の構成図が示されている。
図6(A),(B)における座標系(U
2,V
2,W
2)は、示指が伸びている状態で、指先方向を+V
2方向、各関節の屈曲側から伸展側へ向かう方向を+W
2方向、V
2方向及びW
2方向に直交し、小指側へと向かう方向を+U
2方向とする座標系である。
【0084】
ここで、
図6(A)は、示指に装着された個別マスタ部530
2を、+W
2方向側から視た図である。また、
図6(B)は、
図6(A)に示される個別マスタ部530
2を、−U
2方向側から視た図である。本実施形態では、個別マスタ部530
1,530
3,530
4,530
5についても、個別マスタ部530
2と同様に構成されている。
【0085】
個別マスタ部530
j(j=1,…,5)のそれぞれは、
図5及び
図6(A),(B)により総合的に示されるように、操作部ACを有する流体給排切替装置531
jと、紐状部材532
jとを備えている。
【0086】
(紐状部材532
j(j=1,…,5))
上記の紐状部材532
j(j=1,…,5)について、説明する。紐状部材532
jは、可撓性を有する非伸縮性の部材である。紐状部材532
jの一方の端部は、流体給排切替装置531
jの操作部ACの端部に接続されている。また、紐状部材532
jの他方の端部は、指サックに取り付けられ、当該指サックが手指の指先に固定されることで、当該指先に装着される。なお、紐状部材532
jの長さについては、後述する。
【0087】
(流体給排切替装置531
j(j=1,…,5)の構成)
上記の流体給排切替装置531
j(j=1,…,5)の構成について、説明する。
【0088】
流体給排切替装置531
j(j=1,…,5)のそれぞれは、
図6(A),(B)、
図7により総合的に示されるように、シリンダ611
jと、ピストン612
jとを備えている。また、流体給排切替装置531
jのそれぞれは、スプール613
jと、操作部ACとを備えている。ここで、
図7には、
図6(A),(B)に示される状態での流体給排切替装置531
jのUV断面図が示されている。また、本実施形態では、シリンダ611
j、ピストン612
j及びスプール613
jが、本体部に対応している。
【0089】
上記のシリンダ611
jは、例えば、円筒状の部材であり、シリンダ611
jの中心軸方向の両端部は閉塞され、+V方向側の一方の端部を操作部ACが貫通している。また、シリンダ611
jの内部の−V方向側には、
図8に示されるように、シリンダ室SRが形成されている。そして、シリンダ611
jの内部のシリンダ室SRが形成されていない+V方向側の部分(以下、「シリンダ室非形成部分」とも記す)には、スプール613
j及び操作部ACを挿入する挿入穴IHが形成されている。
【0090】
ここで、
図8は、流体給排切替装置531
jからスプール613
j、操作部AC及びピストン612
jを外したときのシリンダ611
jのUV断面図である。なお、シリンダ611
jの−V方向側の端部は、当該シリンダ611
jの蓋部以外の部分に対して着脱可能な蓋部となっている。そして、シリンダ611
j内部に、スプール613
j、操作部AC及びピストン612
jを嵌め込む際には、蓋部を外して、スプール613
j、操作部AC及びピストン612
jを挿入し、その後、当該蓋部をシリンダ611
jの蓋部以外の部分に取り付けるようになっている。
【0091】
また、シリンダ611
jのシリンダ室非形成部分には、給排装置900から空気を取り入れる第1供給用ポートPTFS
jが形成されている。ここで、第1供給用ポートPTFS
jは、配管PPS
jと接続されている。また、本実施形態では、第1供給用ポートPTFS
jは、シリンダ611
jの内部で分岐している。そして、シリンダ611
jの長さ方向Vの位置を
図7のように定義した場合に、第1供給用ポートPTFS
jは、位置S1及び位置S2において、上述した挿入穴IHと通じている。さらに、第1供給用ポートPTFS
jは、シリンダ611
jに形成された逃がし弁EVと連通している。この逃がし弁EVを通じて、第1供給用ポートPTFS
jから供給された過剰な空気が、流体給排切替装置531
jの外部に排出されるようになっている。
【0092】
また、シリンダ611
jのシリンダ室非形成部分には、給排装置900に空気を排出する第1排出用ポートPTFE
jが形成されている。ここで、第1排出用ポートPTFE
jは、配管PPE
jと接続されている。また、本実施形態では、第1排出用ポートPTFE
jは、シリンダ611
jの内部で分岐している。そして、第1排出用ポートPTFE
jは、位置E1及び位置E2において、上述した挿入穴IHと通じている。さらに、第1排出用ポートPTFE
jは、シリンダ室SRと連通している。
【0093】
また、シリンダ611
jのシリンダ室非形成部分には、ベローズ343
j内への空気の供給を行う第2供給用ポートPTSS1
jが形成されている。第2供給用ポートPTSS1
jは、配管835
jと接続されている。本実施形態では、第2供給用ポートPTSS1
jは、位置S1において、上述した挿入穴IHと通じている。
【0094】
また、シリンダ611
jのシリンダ室非形成部分には、ベローズ342
j内への空気の供給を行う第2供給用ポートPTSS2
jが形成されている。第2供給用ポートPTSS2
jは、配管831
jと接続されている。本実施形態では、第2供給用ポートPTSS2
jは、位置S2において、上述した挿入穴IHと通じている。
【0095】
さらに、シリンダ611
jのシリンダ室非形成部分には、ベローズ343
j内からの空気の排出を行う第2排出用ポートPTSE1
jが形成されている。第2排出用ポートPTSE1
jは、配管836
jと接続されている。本実施形態では、第2排出用ポートPTSE1
jは、位置E1で、上述した挿入穴IHと通じている。
【0096】
また、シリンダ611
jのシリンダ室非形成部分には、ベローズ342
j内からの空気の排出を行う第2排出用ポートPTSE2
jが形成されている。第2排出用ポートPTSE2
jは、配管832
jと接続されている。本実施形態では、第2排出用ポートPTSE2
jは、位置E2で、上述した挿入穴IHと通じている。
【0097】
上記のピストン612
jは、例えば、円柱形状の部材であり、ピストン612
jの外径は、シリンダ室SRの径よりも、わずかに小さくなっている。このように、本実施形態では、ピストン612
jの周面とシリンダ室SRの内周面との間には、間隙が形成されるようになっている。そして、ピストン612
jは、シリンダ室SRの内部でV方向の往復運動が可能となるように、シリンダ611
j内に嵌め込まれている。
【0098】
本実施形態では、上述したように、ピストン612
jの外径は、シリンダ室SRの径よりも、わずかに小さくしている。この結果、第1排出用ポートPTFE
jは、ピストン612
jにより仕切られる双方のシリンダ室と連通している。
【0099】
ここで、シリンダ室を区画するピストン612
jの+V方向側の一方の面には、スプール613
jが連結されているが、ピストン612
jの−V方向側の他方の面には、スプール613
jが連結されていない。このため、当該他方の面の面積は、当該一方の面の面積に比べて広くなっている。この結果、ピストン612
jの一方の面及び他方の面における受圧面積の違いから、操作部ACを操作していない通常時には、ピストン612
jは、
図7に示されるように、シリンダ室SR内で−V方向側に付勢されている。
【0100】
上記のスプール613
jは、
図7及び
図9に示されるように、V方向に延びるロッド状の例えば円柱形状の部材であり、操作部ACと一体成形されている。ここで、
図9は、シリンダ611
j内部から外したスプール613
j、操作部AC及びピストン612
jを示した図である。本実施形態では、
図7に示される状態で、シリンダ611
jから突出している長さ「VS」の部分(以下、「突出部分」とも記す)を、操作部ACと呼ぶことにする。
【0101】
スプール613
jにおける−V方向側の一方の端部は、ピストン612
jの一方の面に連結されている。また、スプール613
jには、ロッドの略中央に2つの環状溝GR1,GR2が形成されている。ここで、スプール613
jにおける環状溝GR1,GR2以外の部分の外径及び操作部ACの外径は、シリンダ611
jに形成された挿入穴IHの径と略等しくなっている。そして、スプール613
j及び操作部ACは、シリンダ611
jに形成された挿入穴IHに挿入されるようになっている。
【0102】
上記の操作部ACは、上述したように、スプール613
jと一体成形されている。この操作部ACの端部は、紐状部材532
jの一方の端部に接続されている。
【0103】
<配管800>
上記の配管800の構成ついて、説明する。
【0104】
配管800は、関節運動アシスト装置200及びマスタ装置500に取り付けられる。配管800は、
図10に示されるように、配管811
j(j=1,…,5)と、配管815
j(j=1,…,5)とを備えている。配管811
j及び配管815
jは、手指関節運動アシスト部230
jと個別マスタ部530
jとに接続される。
【0105】
上記の配管811
j(j=1,…,5)は、ベローズ342
jに一方の端部が取り付けられる配管821
j、個別マスタ部530
jの第2供給用ポートPTSS2
jに一方の端部が取り付けられる配管831
j、及び、個別マスタ部530
jの第2排出用ポートPTSE2
jに一方の端部が取り付けられる配管832
jから成る。そして、配管821
jの他方の端部は、配管831
jの他方の端部及び配管832
jの他方の端部と接続されている。
【0106】
上記の配管815
j(j=1,…,5)は、ベローズ343
jに一方の端部が取り付けられる配管825
j、個別マスタ部530
jの第2供給用ポートPTSS1
jに一方の端部が取り付けられる配管835
j、及び、個別マスタ部530
jの第2排出用ポートPTSE1
jに一方の端部が取り付けられる配管836
jから成る。そして、配管825
jの他方の端部は、配管835
jの他方の端部及び配管836
jの他方の端部と接続されている。
【0107】
<給排装置900の構成>
上記の給排装置900の構成について、説明する。
【0108】
給排装置900は、配管PPS
j(j=1,…,5)及び配管PPE
jを有する配管PPを介してマスタ装置500と連通している。給排装置900は、
図11に示されるように、加圧ポンプ911と、減圧ポンプ912とを備えている。また、給排装置900は、配管921,922を備えている。
【0109】
上記の加圧ポンプ911は、配管921を介して、流体給排切替装置531
j(j=1,…,5)の第1供給用ポートPTFS
jに取り付けられる配管PPS
jと接続している。加圧ポンプ911は、マスタ装置500への空気の強制的供給を行う際に利用される。
【0110】
上記の減圧ポンプ912は、配管922を介して、流体給排切替装置531
j(j=1,…,5)の第1排出用ポートPTFE
jに取り付けられる配管PPE
jと接続している。減圧ポンプ912は、マスタ装置500からの空気の強制的排出を行う際に、利用される。
【0111】
[動作]
以上のようにして構成された関節運動アシストシステム100の動作について、マスタ・スレーブ方式による手指の関節運動のアシスト動作を説明する。
【0112】
以下の動作の説明では、マスタ装置500の状態を説明する際に、個別マスタ部530
j(j=1,…,5)の代表として、個別マスタ部530
2の状態図を参照することがある。また、以下の説明では、関節運動アシスト装置200の状態を説明する際に、手指関節運動アシスト部230
j(j=1,…,5)の代表として、手指関節運動アシスト部230
2の状態図を参照することがある。
【0113】
また、前提として、給排装置900によるマスタ装置500への空気の供給、及び、マスタ装置500からの空気の排出が行われているものとする。
【0114】
<関節運動アシスト装置200の関節屈曲状態へのアシスト動作>
まず、マスタ装置500の装着者が、
図12に示されるように、マスタ装置500を装着した手指の全ての関節を屈曲状態にしたとする。こうした屈曲状態では、手指の関節構造から、手背側に沿った、流体給排切替装置531
jの装着位置から指先までの距離が最長になり、紐状部材532
jの一方の端部に接続された操作部ACが+V方向側に引っ張られる。ここで、
図13には、
図12に示される流体給排切替装置531
jのUV断面図が示されている。
【0115】
かかる状態のときには、スプール613
jの環状溝GR1,GR2の位置が、それぞれV=S1,S2となる。そして、このときには、第1供給用ポートPTFS
jと、第2供給用ポートPTSS1
j,PTSS2
jとが連通する。
【0116】
かかる連通状態では、給排装置900から取り入れられた空気が、第1供給用ポートPTFS
j、第2供給用ポートPTSS1
j及び配管835
j,825
jを介して、ベローズ343
j内に供給される。こうしてベローズ343
j内への空気の供給が行われると、手指関節運動アシスト部230
j(j=1,…,5)のベローズ343
jが膨張する。
【0117】
また、かかる連通状態では、給排装置900から送られた空気が、第1供給用ポートPTFS
j、第2供給用ポートPTSS2
j及び配管831
j,821
jを介して、ベローズ342
j内に供給される。こうしてベローズ342
j内への空気の供給が行われると、母指に装着された手指関節運動アシスト部230
1では、ベローズ342
1が膨張する。また、示指、中指、薬指及び小指(以下、「四指」とも記す)に装着された手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)では、ベローズ342
k,341
kが膨張する。
【0118】
この結果、手指関節運動アシスト部230
j(j=1,…,5)を装着した手指の関節は、
図14に示されるように、屈曲状態になる。
【0119】
<中間状態へのアシスト動作>
この後、マスタ装置500の装着者が、母指については、母指の第1関節を屈曲状態に維持するとともに、母指の第2関節を伸展状態にしたとする。また、マスタ装置500の装着者が、四指の第1関節及び第2関節を屈曲状態に維持するとともに、四指の第3関節を伸展状態にしたとする(以下、こうした状態を「中間状態」とも記す)。
図15には、マスタ装置500を装着する手部の手指が、中間状態となっているときの様子が示されている。
【0120】
こうして手指の関節を屈曲状態から中間状態にすると、第3関節(母指については、第2関節)が伸展した分だけ、関節構造から、手背側に沿った、流体給排切替装置531
jの装着位置から指先までの距離が、屈曲状態のときに比べて短くなる。この結果、
図15に示されるように、紐状部材532
jの一方の端部に接続された操作部ACが−V方向側に移動し、シリンダ611
jからの突出部分の長さが短くなる。ここで、
図16には、
図15に示される流体給排切替装置531
jのUV断面図が示されている。
【0121】
かかる状態のときには、スプール613
jの環状溝GR1,GR2の位置が、それぞれV=S2,E1となる。そして、このときには、第1供給用ポートPTFS
jと第2供給用ポートPTSS2
jとが連通し、第1排出用ポートPTFE
jと第2排出用ポートPTSE1
jとが連通する。
【0122】
かかる連通状態では、給排装置900から送られた空気が、第1供給用ポートPTFS
j、第2供給用ポートPTSS2
j及び配管831
j,821
jを介して、ベローズ342
j内に引き続き供給される。この結果、母指に装着された手指関節運動アシスト部230
1では、ベローズ342
1が膨張する。また、四指に装着された手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)では、ベローズ342
k,341
kが膨張する。
【0123】
また、かかる連通状態では、ベローズ343
j内の空気が、配管825
j,836
j、第2排出用ポートPTSE1
j及び第1排出用ポートPTFE
jを介して、給排装置900により排出される。こうしてベローズ343
j内から空気が排出されると、ベローズ343
jが収縮する。
【0124】
この結果、手指関節運動アシスト部230
1を装着した母指の関節は、第1関節が屈曲状態を維持し、第2関節が伸展した中間状態になる。また、手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)を装着した四指の関節は、
図17に示されるように、第1関節及び第2関節が屈曲状態を維持し、第3関節が伸展した中間状態になる。
【0125】
<関節運動アシスト装置200の関節伸展状態へのアシスト動作>
引き続き、マスタ装置500の装着者が、手指の全ての関節を、中間状態から伸展状態にしたとする。上述した
図6(A),(B)には、マスタ装置500を装着する手部の手指が、関節伸展状態となっているときの様子が示されている。
【0126】
こうして手指の関節を中間状態から伸展状態にすると、第1関節及び第2関節(母指については、第1関節)が伸展した分だけ、関節構造から、手背側に沿った、流体給排切替装置531
jの装着位置から指先までの距離が、更に短くなる。この結果、上述した
図6(A),(B)に示されるように、紐状部材532
jの一方の端部に接続された操作部ACが−V方向側に更に移動し、シリンダ611
jからの突出部分の長さが更に短くなる。ここで、上述した
図7には、
図6(A),(B)に示される流体給排切替装置531
jのUV断面図が示されている。
【0127】
かかる状態のときには、スプール613
jの環状溝GR1,GR2の位置が、それぞれV=E1,E2となる。そして、このときには、第1排出用ポートPTFE
jと、第2排出用ポートPTSE1
j,PTSE2
jとが連通する。
【0128】
かかる連通状態では、ベローズ343
j内の空気が、配管825
j,836
j、第2排出用ポートPTSE1
j及び第1排出用ポートPTFE
jを介して、給排装置900により排出される。こうしてベローズ343
j内から空気が排出されると、ベローズ343
jが収縮する。
【0129】
また、かかる連通状態では、ベローズ342
j内の空気が、配管821
j,832
j、第2排出用ポートPTSE2
j及び第1排出用ポートPTFE
jを介して、給排装置900により排出される。こうしてベローズ342
j内から空気が排出されると、母指に装着された手指関節運動アシスト部230
1では、ベローズ342
1が収縮する。また、四指に装着された手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)では、ベローズ342
k,341
kが収縮する。
【0130】
この結果、手指関節運動アシスト部230
j(j=1,…,5)を装着した手指の関節は、上述した
図3(A),(B)及び
図4(A),(B)に示されるように、伸展状態になる。
【0131】
本実施形態では、関節伸展状態では、シリンダ611
jからの突出部分の長さが「VS」となり(
図7参照)、中間状態では、シリンダ611
jからの突出部分の長さが「VM」となり(
図16参照)、かつ、関節屈曲状態では、シリンダ611
jからの突出部分の長さが「VL」(VS<VM<VL)となる(
図13参照)ように、紐状部材532
jの長さが設計されている。
【0132】
以後、マスタ装置500の装着者が、手指の関節を中間状態、屈曲状態、中間状態、伸展状態へと順次変化させると、上述したように、流体給排切替装置531
jの操作部ACがシリンダ611
jに対して移動する。そして、操作部ACの移動に応じて、関節運動アシスト装置200を装着した手指の関節についても、中間状態、屈曲状態、中間状態、伸展状態へと順次アシストされる。
【0133】
以上説明したように、本実施形態では、関節運動アシスト装置200の手指関節運動アシスト部230
j(j=1,…,5)を、人体HB1の右手HDR1の手指に装着する。また、マスタ装置500の個別マスタ部530
j(j=1,…,5)を、人体HB2の右手HDR2の手指に装着する。そして、マスタ装置500の装着者が、マスタ装置500を装着した手指の全ての関節を屈曲状態にすると、手指の関節構造から、手背側に沿った、流体給排切替装置531
jの装着位置から指先までの距離が最長となる。こうして当該距離が最長となると、紐状部材532
jの一方の端部に接続された操作部ACが+V方向側に引っ張られる。
【0134】
そして、このときには、マスタ装置500の第1供給用ポートPTFS
jと、第2供給用ポートPTSS1
j,PTSS2
jとが連通する。かかる連通状態では、給排装置900から取り入れられた空気が、第1供給用ポートPTFS
j、第2供給用ポートPTSS1
j及び配管835
j,825
jを介して、ベローズ343
j内に供給される。こうしてベローズ343
j内への空気の供給が行われると、手指関節運動アシスト部230
j(j=1,…,5)のベローズ343
jが膨張する。また、かかる連通状態では、給排装置900から送られた空気が、第1供給用ポートPTFS
j、第2供給用ポートPTSS2
j及び配管831
j,821
jを介して、ベローズ342
j内に供給される。こうしてベローズ342
j内への空気の供給が行われると、母指に装着された手指関節運動アシスト部230
1では、ベローズ342
1が膨張する。また、四指に装着された手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)では、ベローズ342
k,341
kが膨張する。この結果、手指関節運動アシスト部230
j(j=1,…,5)を装着した手指の関節は、屈曲状態になる。
【0135】
このため、電子制御を行うことなく、マスタ・スレーブ方式により、関節運動アシスト装置200を装着した手指を関節屈曲状態にすることができる。
【0136】
この後、マスタ装置500の装着者が、母指については、第1関節を屈曲状態に維持するとともに、第2関節を伸展状態にしたとする。また、マスタ装置500の装着者が、四指については、第1関節及び第2関節を屈曲状態に維持するとともに、第3関節を伸展状態にしたとする。こうした関節状態では、手指の関節構造から、手背側に沿った、流体給排切替装置531
jの装着位置から指先までの距離が、関節屈曲状態のときに比べて短くなる。こうして当該距離が短くなると、紐状部材532
jの一方の端部に接続された操作部ACが−V方向側に移動する。
【0137】
そして、このときには、マスタ装置500の第1供給用ポートPTFS
jと第2供給用ポートPTSS2
jとが連通し、第1排出用ポートPTFE
jと第2排出用ポートPTSE1
jとが連通する。かかる連通状態では、給排装置900から送られた空気が、第1供給用ポートPTFS
j、第2供給用ポートPTSS2
j及び配管831
j,821
jを介して、ベローズ342
j内に、引き続き供給される。この結果、母指に装着された手指関節運動アシスト部230
1では、ベローズ342
1が膨張する。また、四指に装着された手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)では、ベローズ342
k,341
kが膨張する。
【0138】
また、かかる連通状態では、ベローズ343
j内の空気が、配管825
j,836
j、第2排出用ポートPTSE1
j及び第1排出用ポートPTFE
jを介して、給排装置900により排出される。こうしてベローズ343
j内から空気が排出されると、ベローズ343
jが収縮する。この結果、手指関節運動アシスト部230
1を装着した母指の関節は、第1関節が屈曲状態を維持し、第2関節が伸展した中間状態になる。また、手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)を装着した四指の関節は、第1関節及び第2関節が屈曲状態を維持し、第3関節が伸展した中間状態になる。
【0139】
このため、電子制御を行うことなく、マスタ・スレーブ方式により、関節運動アシスト装置200を装着した手指を関節伸展状態と関節屈曲状態との中間状態にすることができる。
【0140】
引き続き、マスタ装置500の装着者が、手指の全ての関節を伸展状態にすると、手指の関節構造から、手背側に沿った、流体給排切替装置531
jの装着位置から指先までの距離が、更に短くなる。こうして当該距離が更に短くなると、紐状部材532
jの一方の端部に接続された操作部ACが−V方向側に更に移動する。
【0141】
そして、このときには、第1排出用ポートPTFE
jと、第2排出用ポートPTSE1
j,PTSE2
jとが連通する。かかる連通状態では、ベローズ343
j内の空気が、配管825
j,836
j、第2排出用ポートPTSE1
j及び第1排出用ポートPTFE
jを介して、給排装置900により排出される。こうしてベローズ343
j内から空気が排出されると、ベローズ343
jが収縮する。また、かかる連通状態では、ベローズ342
j内の空気が、配管821
j,832
j、第2排出用ポートPTSE2
j及び第1排出用ポートPTFE
jを介して、給排装置900により排出される。こうしてベローズ342
j内から空気が排出されると、母指に装着された手指関節運動アシスト部230
1では、ベローズ342
1が収縮する。また、四指に装着された手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)では、ベローズ342
k,341
kが収縮する。この結果、手指関節運動アシスト部230
j(j=1,…,5)を装着した手指の関節は、伸展状態になる。
【0142】
このため、電子制御を行うことなく、マスタ・スレーブ方式により、関節運動アシスト装置200を装着した手指を関節伸展状態にすることができる。
【0143】
したがって、本実施形態によれば、電子制御を行わずに、関節運動アシスト装置を遠隔動作させ、関節運動を適切にアシストすることができる。
【0144】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0145】
例えば、上記の実施形態では、母指、示指、中指、薬指及び小指のそれぞれに手指関節運動アシスト部を装着し、母指、示指、中指、薬指及び小指の関節運動をアシストするようにした。これに対して、任意の手指に関節運動アシスト部を装着し、当該任意の手指の関節運動をアシストするようにしてもよい。この場合には、当該任意の手指の数と同数の個別マスタ部を用意すればよい。
【0146】
また、上記の実施形態では、ベローズ342
jは、個別マスタ部の第2供給用ポートPTSS2
j及び第2排出用ポートPTSE2
jと連通し、ベローズ343
jは、個別マスタ部の第2供給用ポートPTSS1
j及び第2排出用ポートPTSE1
jと連通するようにした。これに対して、ベローズ342
jを、個別マスタ部の第2供給用ポートPTSS1
j及び第2排出用ポートPTSE1
jと連通させ、ベローズ343
jを、個別マスタ部の第2供給用ポートPTSS2
j及び第2排出用ポートPTSE2
jと連通させるようにしてもよい。
【0147】
この場合には、関節屈曲状態と関節伸展状態との中間状態として、手指関節運動アシスト部230
1を装着した母指については、第1関節が伸展し、第2関節が屈曲した中間状態をアシストすることができる。また、手指関節運動アシスト部230
k(k=2,…,5)を装着した四指については、第1関節及び第2関節が伸展し、第3関節が屈曲した中間状態をアシストすることができる。
【0148】
また、上記の実施形態では、ピストンに仕切られた双方のシリンダ室と給排装置の減圧ポンプに接続された第1排出用ポートとを連通させて、ピストンの一方の面(+V方向側の面)及び他方の面(−V方向側の面)における受圧面積の違いを利用し、操作部を操作していない通常時には、ピストンが、
図7に示されるように、シリンダ室内で−V方向側に付勢されるようにした。これに対して、シリンダ室と減圧ポンプに接続された第1排出用ポートとを連通させない構成を採用した場合には、押し出しバネ等の弾性部材を用意し、弾性部材の一方の端部をピストンの+V方向側の面に接続し、当該弾性部材の他方の端部をシリンダ室の+V方向側の面に接続し、弾性力により、ピストンをシリンダ室内で−V方向側に付勢するようにしてもよい。
【0149】
また、ピストンに仕切られた双方のシリンダ室と減圧ポンプに接続された第1排出用ポートとを連通させる構成を採用しつつ、押し出しバネ等の弾性部材を用意して、弾性部材の一方の端部をピストンの+V方向側の面に接続し、当該弾性部材の他方の端部をシリンダ室の+V方向側の面に接続するようにしてもよい。この場合には、ピストンを、上述した受圧面積の違い及び押し出しバネ等の弾性部材の弾性力の双方により、シリンダ室の−V方側に付勢させることができる。
【0150】
なお、ピストンをシリンダ室の−V方側に付勢させる場合に、引っ張りバネを用意し、当該引っ張りバネの一方の端部をピストンの−V方向側の面に接続し、当該引っ張りバネの他方の端部をシリンダ室の−V方向側の面に接続するようにしてもよい。
【0151】
また、上記の実施形態では、シリンダに形成された第1排出用ポートとシリンダ室とを連通させるようにした。これに対して、シリンダに形成された第1供給用ポートとシリンダ室とを連通させるようにしてもよい。このときには、ピストンの一方の面(+V方向側の面)及び他方の面(−V方向側の面)における受圧面積の違いから、操作部を操作していない通常時には、ピストンは、シリンダ室内で+V方向側に付勢されている。この結果、シリンダから突出している操作部を含んだ突出部分の長さが最大となるときが、操作部の定常位置になる。
【0152】
また、上記の実施形態では、紐状部材を非伸縮性の部材とした。これに対して、関節伸展状態において、シリンダからの突出部分の長さが「VS」となり(
図7参照)、中間状態において、シリンダからの突出部分の長さが「VM」となり(
図16参照)、かつ、関節屈曲状態において、シリンダからの突出部分の長さが「VL」(VS<VM<VL)となる(
図13参照)のであれば、紐状部材を非伸縮性の部材に限定する必要はない。
【0153】
また、上記の実施形態では、人体の右手の手指の運動をアシストする関節運動アシスト装置を有する関節運動アシストシステムについて説明したが、左手の手指の運動をアシストする関節運動アシスト装置を有する関節運動アシストシステムであってもよいことは勿論である。
【0154】
また、上記の実施形態では、関節運動アシスト装置を右手に装着する場合に、マスタ装置を、関節運動アシスト装置を装着する人体とは異なる人体の右手に装着するようにした。これに対して、マスタ装置を、当該異なる人体の左手(左右対称性)に装着するようにしてもよい。
【0155】
また、上記の実施形態では、マスタ装置を装着する手部は、関節運動アシスト装置を装着する手部と合同対称性を有することとしたが、マスタ装置を装着する手部は、関節運動アシスト装置を装着する手部と相似対称性及び左右対称性の少なくとも1つを有する場合であってもよい。
【0156】
また、人体の一方の手部が拘縮し、他方の手部が健常な場合には、関節運動アシスト装置を当該人体の拘縮している手部に装着し、マスタ装置を当該人体の健常な手部(左右対称性)に装着するようにしてもよい。
【0157】
また、上記の実施形態では、マスタ装置を手部に装着するようにした。これに対して、マスタ装置を手部に装着せずに、例えば、指先で操作部を引っ張るようにしてもよい。
【0158】
また、本実施形態においては、樹脂製のベローズを採用したが、伸縮自在であり、人体に装着される装置の重さ等の負担をかけることがない素材であれば、他の素材であってもよい。
【0159】
また、給排装置の構成としては、空気の吐出、及び、空気の吸引を行うことのできる手動式ポンプであってもよい。
【0160】
また、本発明の関節運動アシスト装置は、作動流体を空気としたが、他の気体や、水や油等の液体であってもよい。
【0161】
本発明の関節運動アシスト装置は、介護や福祉の分野で利用する場合には、リハビリテーション用として装着するだけでなく、力が弱っている者がパワーアシスト用の装置としても利用することができる。また、本発明の関節運動アシスト装置は、介護や福祉の分野以外で、物を掴む等のパワーアシスト装置としても利用することができる。
【0162】
また、上記の実施形態においては、人体の関節運動をアシストする関節運動アシストシステムに本発明を適用したが、関節機構を有する人体以外の内骨格形の哺乳類、内骨格形のロボット等の所定対象物の関節運動アシストシステムにも本発明を適用することができる。