(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被切断パイプの端縁部をその内径側から切断するようにしたパイプカッターであって、被切断パイプの径方向に突出する切断刃を備える切断部と、回転駆動機と係合して回転駆動機の動力を伝達する動力伝達部と、一端側に前記切断部を固定すると共に他端側に前記動力伝達部を固定し、前記動力伝達部を介して前記切断刃を回転させる回転軸と、前記切断部と前記動力伝達部との間に配置されて、被切断パイプの径方向における切断刃の突出長さを調整する切断刃突出長調整部とを備え、前記切断刃突出長調整部は、回転軸を挿通させた状態で回転軸に固定されると共に、一端側に回転軸の回転力を伝達するための回転力伝達部を備える固定切断刃突出長調整体と、回転軸に固定されることなく挿通させると共に、一端側に前記回転力伝達部をスライド可能に係合させるスライド係合部を備える非固定切断刃突出長調整体とからなり、前記非固定切断刃突出長調整体は、回転軸を挿通させるための回転軸挿通用孔を偏心させた位置に設けてあると共に、前記スライド係合部を非固定切断刃突出長調整体の周方向に有限な長さで設けてあり、これによって回転軸の正回転時には、スライド係合部をスライドする回転力伝達部を、スライド係合部の片側端部で受け止めて非固定切断刃突出長調整体と切断刃とを回転軸の回転に合わせて正回転させると共に、被切断パイプの径方向における切断刃の突出長さを固定し、回転軸の負回転時には、スライド係合部をスライドする回転力伝達部を、スライド係合部の反対側端部で受け止めて非固定切断刃突出長調整体と切断刃とを回転軸の回転に合わせて負回転させると共に、被切断パイプの径方向における切断刃の突出長さを正回転時とは異なる長さに固定することを特徴とするパイプカッター。
固定切断刃突出長調整体の回転力伝達部を凸部で構成してあると共に、非固定切断刃突出長調整体のスライド係合部を前記凸部と嵌合する凹部で構成してあることを特徴とする請求項1に記載のパイプカッター。
切断刃突出長調整部と回転軸とを内包するための筒状筐体と、前記筒状筐体を把持するための把持部とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のパイプカッター。
切断部の外面と、切断刃突出長調整部の外面とに、被切断パイプの径方向における切断刃の突出長さを規定するための最大突出長規定用印を設けてあることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のパイプカッター。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態に係るパイプカッターを説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【0013】
先ず
図1〜
図5を参照して、本発明の実施形態に係るパイプカッターを説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るパイプカッター1は、熱交換器等に配置される管板2の孔2aに固着されている複数のパイプ90を引き抜くための作業で使用されるものである。これらのパイプ90は、例えば復水器等の熱交換を行うための伝熱管として配置されるもので、鋼等の金属で形成されている。また、このような伝熱管として用いられるパイプ90は、
図1(b)に示すように、孔2aに挿入された後、パイプ90の端縁部を折り返すようにして固着されるものが一般的である。そしてパイプ90を交換する際には、本発明の実施形態に係るパイプカッター1をパイプ90の端縁部に挿入して、パイプ90の端縁部を切断し、折り返し部を除去した後、抜管機(図示しない)を用いてパイプ90を引き抜いて交換を行う。
【0015】
図2に示すように、本発明のパイプカッター1は、インパクトレンチ等の回転駆動機100の回転作動部101に係合(接続)されて使用される。このパイプカッター1は、切断部10と、動力伝達部20と、回転軸30と、切断刃突出長調整部40と、筒状筐体50と、把持部60と、後方軸受70と、調整体80とで構成される。
なお本実施形態においては、回転駆動機100として、インパクトレンチを用いる構成としてある。
【0016】
前記切断部10は、被切断パイプたるパイプ90を切断するための切断刃を備えるものである。本実施形態においては、この切断部10は、本体11と、切断刃12と、止めネジ13とで構成される。
【0017】
前記本体11は、切断部10の骨格を構成するもので、金属製の棒状の円柱状部材で構成される。また本体11は、前方側端面に、切断刃12を定位置に配置するための切断刃嵌合用溝11aと、切断刃12を止めネジ13で固定するためのネジ孔11bとを備える。また後方側には、内部に後述する回転軸30のネジ部30aと嵌め合わせるためのネジ孔11dを、外周に位置合わせ用印11cを備える。
なお、ここで「前方側」とは、パイプカッター1において、切断部10に近づく側を前方側とし、それとは反対側を後方側とするものである。
また本実施形態においては、切断刃嵌合用溝11を本体11の軸方向と直交する方向に設けて、切断刃12を本体11に取り付けた状態において、切断刃12が本体11の軸方向と直交する方向(径方向)に突出する構成としてある。
また前記位置合わせ用印11cは、切断刃突出長調整部40との間で、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さを規定するための印(最大突出長規定用印)である。本実施形態においては、位置合わせ用印11cとして、本体11の外面に半球状の凸状突起を設ける構成としてある。勿論、位置合わせ用印11cは、このような構成に限るものではなく、切断刃突出長調整部40との間で、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さを規定することができるものであれば、如何なる構成としてもよい。
なお、本体11を構成する金属としては、例えば鋼を用いることができる。また本体11の大きさは、
図5に示すように、外径がパイプ90の内径よりも小さいものであることが必要である。
【0018】
前記切断刃12は、パイプ90を切断するための刃である。本実施形態においては、細長い長方形状の鋼を用いて切断刃12を構成してある。また切断刃12には、止めネジ13を挿通させるための貫通孔12aを設けてある。止めネジ13を介して切断刃12を本体11に固定した状態において、切断刃12の回転中心が回転軸30の回転中心と一致するような構成としてある。
勿論、切断刃12は本実形態のものに限るものではなく、パイプ90の材質や大きさに合わせて、形状、大きさ、長さ、厚みなど、適宜変更可能である。但し、何れの場合においても、本体11に切断刃12を固定した状態において、切断刃12の回転中心が回転軸30の回転中心と一致するような構成であることが必要である。
【0019】
前記動力伝達部20は、回転駆動機100と係合して回転駆動機100の回転力を回転軸30に伝達するためのものである。本実施形態においては、動力伝達部20として、金属製の略円柱状部材を用いる構成としてある。
図2、
図3を参照して、この動力伝達部20は、本体21と、止めネジ22とで構成される。
【0020】
前記本体21は、動力伝達部20の骨格を構成するものである。本実施形態においては
図2(b)、
図3(b)に一部を示すように、前方側端面に調整体80を嵌合させるための嵌合用凹所21aを備えると共に、中央に回転軸30を挿通させるための挿通孔21bを備える金属製の本体21を用いる構成としてある。
また本体21には、挿通孔21bに挿通させた回転軸30を止めネジ22で固定するためのネジ孔21cを設けてある。
なお本体21を構成する金属としては、例えば鋼を用いることができる。
【0021】
前記回転軸30は、動力伝達部20を介して、回転駆動機100の回転力によって回転される軸である。本実施形態においては、回転軸30として金属製の細長い円柱状部材を用いる構成としてある。
また
図2(b)に示すように、回転軸30の前方側端部には、切断部10を固定するためのネジ部30aを設けてある。
また回転軸30の前方側の外周の所定位置には、切断刃突出長調整部40を回転軸30に固定する際に使用する止めネジを嵌合させるための嵌合用溝30bを設けてある。詳しくは図示していないが、本実施形態においては、嵌合用溝30bを矩形状の溝で形成する構成としてある。勿論、嵌合用溝30bの形状、大きさ、深さ、位置などは本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0022】
前記切断刃突出長調整部40は、切断部10と動力伝達部20との間に配置されて、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さを調整するためのものである。
図2、
図3に示すように、この切断刃突出長調整部40は、固定切断刃突出長調整体41と、非固定切断刃突出長調整体42とで構成される。
【0023】
前記固定切断刃突出長調整体41は、回転軸30を挿通させた状態で回転軸30に固定されて、回転軸30の回転力を非固定切断刃突出長調整体42に伝達するためのものである。
本実施形態においては、この固定切断刃突出長調整体41は、筒状本体41aと、回転力伝達部41bと、貫通孔41cと、ネジ孔41dと、止めネジ41eとで構成される。
【0024】
前記筒状本体41aは、固定切断刃突出長調整体41の骨格を形成するものである。本実施形態においては、筒状本体41aとして、金属製の円柱状部材を用いる構成としてある。なお金属としては、例えば鋼を用いることができる。
【0025】
前記回転力伝達部41bは、回転軸30の回転力を非固定切断刃突出長調整体42に伝達するためのものである。
本実施形態においては、
図2(b)、
図3に示すように、回転力伝達部41bとして、筒状本体41aの前方側端面に、金属製の円柱状の凸状突起(凸部)を設ける構成としてある。なお金属としては、例えば鋼を用いることができる。
勿論、回転力伝達部41bの形状、大きさなどは本実施形態の構成に限るものではなく、非固定切断刃突出長調整体42に回転軸30の回転力を伝達できるものであれば、適宜変更可能である。
【0026】
前記貫通孔41c、ネジ孔41d、止めネジ41eは、固定切断刃突出長調整体41を回転軸30の所定位置で固定するためのものである。本実施形態においては、
図2(b)、
図3(b)、
図3(c)に示すように、回転軸挿通用孔である貫通孔41cに回転軸30を挿通させた後、ネジ孔41dに止めネジ41eを螺合させることで、回転軸30の所定位置に固定切断刃突出長調整体41を固定する構成としてある。またこの際、回転軸30の嵌合用溝30bにも止めネジ41eを嵌合させる構成としてある。
【0027】
前記非固定切断刃突出長調整体42は、固定切断刃突出長調整体41の回転を介して、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さを調整するためのものである。またパイプカッター1の使用時における回転軸30の回転を安定させるための、いわゆる前方側軸受を構成するものである。
本実施形態においては、この非固定切断刃突出長調整体42は、筒状本体42aと、係止用片42bと、切断部支持体42cと、貫通孔42dと、スライド係合部42eと、位置合わせ用印42fとで構成される。
【0028】
前記筒状本体42aは、非固定切断刃突出長調整体42の骨格を形成すると共に、筒状筐体50の前方側端部に対する嵌合部を構成するものである。本実施形態おいては、
図2、
図3に示すように、筒状本体42aとして、金属製の円柱状部材を用いる構成としてある。なお、筒状本体42aの外径は、筒状筐体50の内径よりもやや短い長さとしてある。また筒状本体42aを形成する金属としては、例えば鋼を用いることができる。
また
図2〜
図4に示すように、筒状本体42aの前方側端面には係止用片42bを設けると共に、後方側端面B(
図4参照)には、スライド係合部42eを設けてある。このスライド係合部42eは、回転力伝達部41bをスライド可能に係合させるためのものである。本実施形態においては、スライド係合部42eとして、後方側端面Bにおいて、筒状本体42aを構成する円柱状部材の外周と同心円上となる位置に、略U字状に湾曲された凹部(凹状溝)を設ける構成としてある。つまり本実施形態においては、スライド係合部42eを、非固定切断刃突出長調整体42の周方向に有限な長さで設ける構成としてある。
【0029】
前記係止用片42bは、後方側端面Bが筒状本体42aに対して筒状筐体50を嵌合する際の停止用片となると共に、前方側端面がパイプカッター1をパイプ90に挿入した際の停止用片となるものである。
本実施形態においては、
図2〜
図4に示すように、係止用片42bとして、筒状本体42aよりも一回り大きな直径を備える金属製の円柱状部材を用いる構成としてある。なお、係止用片42bの大きさは、
図4に示すように、後方側端面の外径が筒状筐体50の内径以上であり、前方側端面の外径がパイプ90の内径以上であることが必要である。より好適には、係止用片42bの外径は、被切断パイプたるパイプ90の折り返し部分の外径よりもやや長い(5mm〜1cm程度長い)構成とすることが望ましい。このような構成とすることで、
図1に示すように、複数のパイプ90が狭小な間隔で配置されている状況下での使用であっても、被切断パイプだけに係止用片42bを当接させて作業を行うことができる。よって一段と作業性の良いパイプカッターとすることができる。
【0030】
前記切断部支持体42cは、切断部10と接して、切断部10を支持するためのものである。具体的には、パイプカッター1を構成した際に、切断部支持体42cの前方側端面が、本体11の後方側端面を支持する支持面となり、切断部10を支持するためのものである。
本実施形態においては、
図2〜
図4に示すように、切断部支持体42cとして、係止用片42bよりも小さい直径の円柱状部材を用いる構成としてある。なお切断部支持体42cの大きさは、
図5に示すように、外径がパイプ90の内径以下のであることが必要である。
【0031】
本実施形態においては、このように構成される筒状本体42aと、係止用片42bと、切断部支持体42cとを、同一金属を用いて一体成形する構成としてある。また
図2(b)、
図3(b)、
図3(c)に示すように、筒状本体42aと、係止用片42bと、切断部支持体42cとを貫くように、回転軸30を挿通させるための回転軸挿通用孔である貫通孔42dを設けてある。
なお本実施形態においては、
図2〜
図4に示すように、貫通孔42dを、非固定切断刃突出長調整体42の中心Cから偏心させた位置に設ける構成としてある。即ち、
図4(a)に示すように、回転駆動機100を正回転させて、スライド係合部42eの片側端部(右側端部)で回転力伝達部41bを受け止めて非固定切断刃突出長調整体42と切断刃12とを回転軸30の回転に合わせて正回転させた際には、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが最大の長さMとなる。一方、
図4(b)に示すように、回転駆動機100を負回転させて、スライド係合部42eの反対側端部(左側端部)で回転力伝達部41bを受け止めて非固定切断刃突出長調整体42と切断刃12とを回転軸30の回転に合わせて負回転させた際には、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが、
図4(c)に示すスライド係合部42eの可動範囲内において、最小の長さNとなるような位置に貫通孔42dを設けてある。なお
図4(c)においては、説明の便宜上、切断刃12の可動範囲を実線で示すものとする。
具体的には、貫通孔42dの中心Dと筒状本体42aの円周とを結ぶ直線の距離が最も短くなる位置に、切断刃12の一対の短辺の中央を結ぶ直線(
図4(a)に破線で示す)が重なった際に、切断刃12の突出長さが最大の長さMとなる構成としてある。そして切断刃12の構成(長さ)として、切断刃12の突出長さが最大の長さとなった際に、
図5に示すように、被切断パイプ90の内側から外側に切断刃12が突出するような構成となり、切断刃12で被切断パイプ90の切断が可能となる構成としてある。またパイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが最小の長さNとなった際には、切断刃12がパイプ90の内面と接することがない構成としてある。
つまり本実施形態のパイプカッター1においては、貫通孔42dを、非固定切断刃突出長調整体42の中心Cから偏心させた位置に設けると共に、スライド係合部42eを非固定切断刃突出長調整体42の周方向に有限な長さで設けることで、回転駆動機100を介して、回転軸30の回転方向を正回転と負回転とに切り替えるだけで、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さを容易に変更できる(調整できる)構成としてある。よって回転駆動機100を介して、回転軸30の回転方向を正回転とすれば、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが最大の長さMで固定され、パイプ90の全周において、パイプ90の切断を継続することができる。一方、回転駆動機100を介して、回転軸30の回転方向を負回転とすれば、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが最小の長さNで固定され、パイプ90の内面にパイプカッター1が引っ掛かることなく、被切断パイプ90からパイプカッター1を容易且つ確実に引き抜くことができる。
【0032】
なお
図2(b)、
図3(b)、
図3(c)に示すように、切断部支持体42cの前方側の外周面には、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さを規定するための位置合わせ用印42fを設けてある。なお本実施形態においては、位置合わせ用印42fとして、切断部支持体42cの前方側の外周面に半球状の凸部を、切断部支持体42cの周方向に等間隔で三つ配置する構成としてある。そして三つの位置合わせ用印42fのそれぞれと切断部10の位置合わせ用印11cとを合わせた際に、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが三種類の異なる長さに規定できる構成としてある。このように構成することで、突出長さが最大から最小の範囲内において、大きさが異なるパイプにも適用することができる。
勿論、位置合わせ用印42fの形状、大きさ、数、配置位置は、本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0033】
前記筒状筐体50は、切断刃突出長調整部40と回転軸30とを内包し、主として切断刃突出長調整部40と回転軸30とに傷が付くことを防止するためのものである。
本実施形態においては、筒状筐体50として、軸方向に貫通孔50aを備える金属製の円柱状の筒状部材を用いる構成としてある。なお金属としては、例えば鋼を用いる構成とすることができる。
勿論、筒状筐体50は、本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0034】
前記把持部60は、筒状筐体50を把持するためのものである。
本実施形態においては、この把持部60は、連結具61と、把持具62とで構成される。
【0035】
前記連結具61は、把持部60を筒状筐体50に連結させるためのものである。本実施形態おいては、
図2、
図3に示すように、連結具61として、コの字状に形成した平板状の金属部材を用いる構成としてある。また
図2(b)に示すように、連結具61には、把持具62を止めネジ63で固定するためのネジ孔61aを設けてある。
なお、詳しくは図示していないが、本実施形態においては、連結具61を筒状筐体50に溶接で固定する構成としてある。
【0036】
前記把持具62は、パイプカッター1の使用時に、パイプカッター1を手で把持するためのものである。本実施形態においては、
図2(b)に示すように、把持具62として、細長い円柱状の金属棒を用いる構成としてある。また、把持具62の一端には、止めネジ63を螺合させるためのネジ穴62aを設けてある。
【0037】
前記後方軸受70は、筒状筐体50の後方側端部に取り付けられて、パイプカッター1の使用時における回転軸30の回転を安定させるためのものである。
本実施形態においては、
図2(b)、
図3(b)に示すように、この後方軸受70は、筒状本体71と、係止用片72とで構成される。
【0038】
前記筒状本体71は、後方軸受70の骨格を形成すると共に、筒状筐体50の後方側端部に対する嵌合部を構成するものである。本実施形態においては、
図2(b)、
図3(b)に示すように、後方軸受70として、円柱状の金属製の筒状部材を用いる構成としてある。なお筒状筐体71の外径は、筒状筐体50の内径よりもやや短い長さに構成してある。
【0039】
前記係止用片72は、筒状本体71を筒状筐体50に嵌合させた際の停止用片を構成するものである。本実施形態においては、
図2(b)、
図3(b)に示すように、係止用片72として、筒状本体71よりも一回り大きい直径の金属製の円柱状部材を用いる構成としてある。また図示していないが、この係止用片72には、回転軸30を挿通させると共に、後方側にて調整体80を嵌合するための貫通孔が設けられている。
【0040】
本実施形態においては、このように構成される筒状本体71と、係止用片72とを同一金属を用いて一体成形する構成としてある。また筒状本体71と係止用片72とを貫くように、回転軸30を挿通させるための貫通孔73を設けてある。
【0041】
前記調整体80は、前方側で係止用片72に嵌合されると共に、後方側で動力伝達部20の嵌合用凹所21aに嵌合されて、非固定切断刃突出長調整体42と後方軸受70との間の隙間調整を行うためのものである。本実施形態においては、
図2(b)、
図3(b)に示すように、調整体80として、円柱状の金属製の筒状部材を用いる構成としてある。なお調整体80の外径は、係止用片72と嵌合用凹所21aとに嵌合可能な大きさに構成してある。また調整体80の軸方向には、回転軸30を挿通させるための貫通孔80aを設けてある。
【0042】
次に
図2、
図3を参照して、このような構成からなる本発明の実施形態に係るパイプカッター1の組立て方法を説明する。
【0043】
まず回転軸30の前方側端部に切断部10を固定する。具体的には、切断刃12を固定してある本体11のネジ孔11dに、回転軸30の前方側端部に設けてあるネジ部30aを螺合させて、回転軸30に切断部10を固定する。
次に非固定切断刃突出長調整体42を回転軸30に挿入させる。
その状態で、固定切断刃突出長調整体41を回転軸30に挿入させ、回転力伝達部41bをスライド係合部42eに係合させた状態で、止めネジ41eを介して固定切断刃突出長調整体41を回転軸30に固定する。この際、非固定切断刃突出長調整体42の切断部支持体42cが切断部10と接すると共に、止めネジ41eが回転軸30の嵌合用溝30cに嵌合するようにすることが必要である。また位置合わせ用印11c、42fを使用して、切断刃12のパイプ90の径方向における突出長さをパイプの大きさに対応した所望の長さに規定することが必要である。
次に把持部60を固定してある筒状筐体50を回転軸30に挿入させて、非固定切断刃突出長調整体42の筒状本体42aを筒状筐体50の前方側端部に嵌合させる。
そして後方軸受70を回転軸30に挿入させて、筒状筐体50の後方側端部に筒状本体71を嵌合させる。
次に調整体80を回転軸30に挿入させて、係止用片72に調整体80を嵌合させる。
その後、動力伝達部20の嵌合用凹所21aに調整体80の後方側端部を嵌合させる。そして動力伝達部20のネジ孔21cに止めネジ22を螺合させて回転軸30を動力伝達部20に固定する。
以上により、本発明の実施形態に係るパイプカッター1が形成される。
【0044】
図5を参照して、本発明の実施形態に係るパイプカッター1を用いてパイプ90(被切断パイプ)の端縁部を切断する工程を説明する。
まず把持具62を掴み、パイプカッター1をパイプ90の端縁部に近づけ、切断部10をパイプ90の端縁部の内部に挿入させる。この際、
図4(b)に示すように、切断刃12のパイプ90の径方向における突出長さが、最小の突出長さNとなる位置で、切断部10をパイプ90の内部に挿入させることが必要である。切断刃12のパイプ90の径方向における突出長さが、パイプ90よりも大きい(突出している)状態で切断刃12をパイプ90の内部に入れようと思っても、パイプ90の内側に切断刃12を入れることができないからである。
次に把持部60を掴みながら、パイプ90が係止用片42bに当接するまでパイプカッター1をパイプ90に差し入れる。
そしてパイプ90が係止用片42bに当接したところで、回転駆動機100を正回転させる。これによって、回転力伝達部41bとスライド係合部42eとの係合によって、
図4(a)に示すように、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが最大の長さMで固定された状態で切断刃12が回転し、パイプ90の全周において、パイプ90が切断刃12によって切り込まれ、切断刃12がパイプ90を一周することで、パイプ90が切断刃12によって切断される。
その後、回転駆動機100を負回転させる。これによって回転力伝達部41bとスライド係合部42eとの係合により、
図4(b)に示すように、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが最小の長さNで固定された状態となる。この状態となった後、把持部60を掴みながら、切断部10をパイプ90から引き抜く。
以上により、本発明の実施形態に係るパイプカッター1を用いたパイプ90の切断が完了する。
【0045】
このような構成からなる本発明の実施形態に係るパイプカッター1は、以下の効果を奏する。
【0046】
パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さを調整する切断刃突出長調整部40を備え、非固定切断刃突出長調整体42の構成として、回転軸30を挿通させるための貫通孔42d(回転軸挿通用孔)を非固定切断刃突出長調整体42の中心Cから偏心させた位置に設けてあると共に、スライド係合部42eを、非固定切断刃突出長調整体42の周方向に有限な長さで設けてある構成とすることで、回転駆動機100の回転方向を変えるだけで、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さを容易に変更することができる。具体的には、パイプ90を切断する際には、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さがパイプ90を切断できる長さとなるように回転軸30を正回転させることで、パイプ90の切断作業を容易且つ継続的に行うことができる。一方、パイプ90に対してパイプカッター1を抜き差しする際には、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さがパイプ90の内径よりも小さくなる(パイプ90の内面と接しない長さとなる)ように、回転軸30を負回転させることで、パイプ90に対するパイプカッター1を容易に抜き差しすることができる。従って回転駆動機100を介して回転軸30の回転方向の選択を行うだけで、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さの調整や、パイプ90の切断、非切断の選択を行うことができる。よって極めて作業性の良いパイプカッター1とすることができる。
【0047】
また回転力伝達部41bを円柱状の凸状突起(凸部)で形成すると共に、スライド係合部42eを凸状突起(凸部)を嵌合可能な凹部(凹状溝)で形成する構成とすることで、簡易な構成で確実に係合可能な回転力伝達部41とスライド係合部42eとを形成することができる。よって一段と作業性が良く、省コスト化が可能なパイプカッター1とすることができる。
【0048】
また筒状筐体50と把持部60とを備える構成とすることで、筒状筐体50によって、切断刃突出長調整部40と回転軸30とを効果的に保護できる。よって損傷し難く、耐久性を備えたパイプカッター1とすることができる。また把持部60を把持しながら作業を行うことが可能となり、一段と操作性や持ち運びに便利なパイプカッター1とすることができる。
【0049】
また切断部10(本体11)の外面と、切断刃突出長調整部40(切断部支持体42c)の外面とに、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さを規定するための最大突出長規定用印である位置合わせ用印11c、42fを設ける構成とすることで、パイプ90の径方向における切断刃12の突出長さを目視で確認しながら容易に調整することができる。よって一段と作業性の良いパイプカッター1とすることができる。
【0050】
次に
図6を参照して、本発明の実施形態に係るパイプカッター1の変形例を説明する。
本変形例1は、既述した本発明の実施形態に係るパイプカッター1に対して、把持部の構成を変形させたものである。その他の構成は、既述した本発明の実施形態に係るパイプカッター1と同様であることから、同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号を付し、以下詳細な説明は省略するものとする。
【0051】
具体的には、本変形例1においては把持部60を、連結具61と、把持具62と、止めネジ63と、スライド筒64と、スライド筒固定用ネジ65とで構成してある。なお、以下においては、スライド筒64とスライド筒固定用ネジ65のみを詳細に説明するものとする。
【0052】
前記スライド筒64は、筒状筐体50の外周にスライド自在に挿入されて、筒状筐体50上をスライドさせることで、把持部60の位置を所望の位置に変更可能とするためのものである。
本実施形態においては、スライド筒64として金属製の円柱状の筒状部材を用いる構成としてある。また、このスライド筒64には、スライド筒固定用ネジ65を介して、スライド筒64を筒状筐体50の任意の位置に固定するための貫通孔(図示しない)が設けられている。更に本変形例においては、溶接を用いてスライド筒64に連結具61を固定してある。
このような構成とすることで、スライド筒64を筒状筐体50上でスライドさせるだけで、把持部60を所望の位置に変更することができる。よって一段と作業性の良いパイプカッターとすることができる。
【0053】
なお、本発明の実施形態係るパイプカッター1においては、回転力伝達部41bを凸部で形成し、スライド係合部42eを凹部で形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、回転力伝達部をスライド係合部にスライド可能に係合させることができるものであれば、如何なる構成であってもよい。例えば回転力伝達部41bを凹部で形成し、スライド係合部42eを凸部で形成する構成としてもよい。
【0054】
また本発明の実施形態に係るパイプカッター1においては、回転軸30が正回転する際にパイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが最大となり、回転軸30が負回転する際にパイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが最小となる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、回転軸30が正回転する際にパイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが最小となり、回転軸30が負回転する際にパイプ90の径方向における切断刃12の突出長さが最大となる構成としてもよい。
【0055】
また切断部10、切断刃突出長調整部40、筒状筐体50の大きさも、被切断対象となるパイプ90の大きさに合わせて適宜変更可能である。
【解決手段】切断部10と、動力伝達部20と、回転軸30と、切断刃突出長調整部40とを備え、切断刃突出長調整部40は、固定切断刃突出長調整体41と、非固定切断刃突出長調整体42とからなり、非固定切断刃突出長調整体42は、回転軸30を挿通させるための回転軸挿通用孔42dを偏心させた位置に設けてあると共に、スライド係合部42eを非固定切断刃突出長調整体42の周方向に有限な長さで設けてあるパイプカッター1である。