(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る描画装置1の構成を示す図である。描画装置1は、感光材料が表面に付与された半導体基板やガラス基板等の基板9の表面に光ビームを照射してパターンを描画する直接描画装置である。描画装置1は、ステージ21と、移動機構22と、光照射装置31と、空間光変調器32と、投影光学系33と、制御部11とを備える。ステージ21は基板9を保持し、移動機構22は、ステージ21を基板9の主面に沿って移動する。移動機構22は、基板9を、主面に垂直な軸を中心として回動してもよい。
【0017】
光照射装置31は、ミラー39を介して空間光変調器32にライン状の光を照射する。光照射装置31の詳細については後述する。空間光変調器32は、例えば回折格子型かつ反射型であり、格子の深さを変更することができる回折格子である。空間光変調器32は、半導体装置製造技術を利用して製造される。本実施の形態に用いられる回折格子型の光変調器は、例えば、GLV(グレーティング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サニーベール、カリフォルニア)の登録商標)である。空間光変調器32は一列に配列された複数の格子要素を有し、各格子要素は1次回折光が出射される状態と、0次回折光(0次光)が出射される状態との間で遷移する。このようにして、空間光変調器32から空間変調された光が出射される。
【0018】
投影光学系33は、遮光板331と、レンズ332と、レンズ333と、絞り板334と、フォーカシングレンズ335とを備える。遮光板331は、ゴースト光および高次回折光の一部を遮蔽し、空間光変調器32からの光を通過させる。レンズ332,333はズーム部を構成する。絞り板334は、(±1)次回折光(および高次回折光)を遮蔽し、0次回折光を通過させる。絞り板334を通過した光は、フォーカシングレンズ335により基板9の主面上に導かれる。このようにして、空間光変調器32により空間変調された光が、投影光学系33により基板9上に導かれる。
【0019】
制御部11は、光照射装置31、空間光変調器32および移動機構22に接続され、これらの構成を制御する。描画装置1では、移動機構22がステージ21を移動することにより、空間光変調器32からの光の基板9上における照射位置が移動する。また、制御部11が、移動機構22による当該照射位置の移動に同期して、空間光変調器32を制御する。これにより、基板9上の感光材料に所望のパターンが描画される。
【0020】
図2および
図3は、光照射装置31の構成を示す図である。
図2および
図3では、後述の照射光学系5の光軸J1に平行な方向をZ方向として示し、Z方向に垂直、かつ、互いに直交する方向をX方向およびY方向として示している(以下同様)。
図2は、Y方向に沿って見た光照射装置31の構成を示し、
図3は、X方向に沿って見た光照射装置31の構成を示す。
【0021】
図2および
図3に示す光照射装置31は、光源ユニット40と、照射光学系5とを備える。光源ユニット40は、複数の光源部4を有し、各光源部4は、1つの光源41と、1つのコリメータレンズ42とを有する。複数の光源部4の光源41は、ZX平面に平行な面(以下、「光源配列面」という。)上において、およそX方向に配列される。各光源41から出射されるレーザ光は、コリメータレンズ42によりコリメートされて照射光学系5に入射する。光源ユニット40では、光源部4から出射されるレーザ光の出射方向を調整する機構(図示省略)が設けられる。当該機構を調整することにより、複数の光源部4からのレーザ光が照射される照射光学系5上の分割レンズ部62のX方向および照射面320のY方向の位置を一致させることが可能となる。このように、光源ユニット40では、光源配列面上に配列された複数の光源部4により、光源配列面に沿う互いに異なる方向から照射光学系5上の同じ位置(後述の分割レンズ部62)に向けてレーザ光が出射される。なお、光源ユニット40では、複数の光源部4が図示省略の支持部材に取り付けられるため、複数の光源41の冷却等を効率よく行うことができる。
【0022】
照射光学系5は、複数の光源部4によるレーザ光の照射位置に配置される。照射光学系5は、当該レーザ光を光軸J1に沿って照射面(
図2および
図3中にて符号320を付す破線にて示す。)である空間光変調器32の表面、すなわち、複数の格子要素の表面へと導く。既述のように、光照射装置31からの光は、ミラー39を介して空間光変調器32に照射されるため、実際には、光照射装置31はミラー39を構成要素として含むが、
図2および
図3では、図示の便宜上、ミラー39を省略している(以下同様)。
【0023】
照射光学系5は、光路長差生成部61と、分割レンズ部62と、集光レンズ部63とを備える。照射光学系5では、光源ユニット40から照射面320に向かって、分割レンズ部62、光路長差生成部61、集光レンズ部63の順に、これらの構成が光軸J1に沿って配置される。複数の光源部4からのコリメートされたレーザ光は、分割レンズ部62に入射する。
【0024】
図4は、分割レンズ部62および光路長差生成部61の一部を拡大して示す図である。分割レンズ部62は、照射光学系5の光軸J1に垂直、かつ、光源配列面に沿う方向(ここでは、X方向)に一定のピッチにて密に配列された複数のレンズ620(以下、「要素レンズ620」という。)を備える。各要素レンズ620は、Y方向に長いブロック状であり、(−Z)側(光源ユニット40側)に位置する側面である第1レンズ面621と、(+Z)側(光路長差生成部61側)に位置する側面である第2レンズ面622とを有する。Y方向に沿って見た場合に、第1レンズ面621は、(−Z)側に突出する凸状であり、第2レンズ面622は、(+Z)側に突出する凸状である。X方向に沿って見た場合に、各要素レンズ620の形状は矩形である(
図3参照)。このように、要素レンズ620はX方向のみにパワーを有するシリンドリカルレンズであり、分割レンズ部62は、いわゆるシリンドリカルレンズアレイ(または、シリンドリカルフライアイレンズ)である。
【0025】
第1レンズ面621および第2レンズ面622は、光軸J1に垂直な面に対して対称形状である。第1レンズ面621は、第2レンズ面622の焦点に配置され、第2レンズ面622は、第1レンズ面621の焦点に配置される。すなわち、第1レンズ面621および第2レンズ面622の焦点距離は同じである。第1レンズ面621および第2レンズ面622の焦点距離をf
h、要素レンズ620の屈折率をn
hとして、要素レンズ620のZ方向の長さL
hは、(f
h・n
h)として表される。要素レンズ620に入射する平行光は第2レンズ面622上にて集光する。なお、集光による第2レンズ面622の損傷や劣化を避ける必要がある場合には、要素レンズ620のZ方向の長さL
hが、(f
h・n
h)から僅かにずれた値であってもよい。X方向に積層された複数の要素レンズ620は、一繋がりの部材として形成されてもよく、個別に形成された複数の要素レンズ620が互いに接合されてもよい。
【0026】
Y方向に沿って見た場合に、分割レンズ部62へと入射する光は複数の要素レンズ620にてX方向に関して分割される。このとき、各要素レンズ620の第1レンズ面621には各光源部4からの平行光が入射し、第2レンズ面622の近傍に複数の光源41の像が形成される。これらの像は、要素レンズ620の配列方向に並ぶ。なお、
図4では、1つの要素レンズ620に入射する光線のみを図示している。各光源部4から出射し複数の要素レンズ620にて分割された光(複数の光束)は、主光線が光軸J1(Z方向)に平行となるように第2レンズ面622から出射される。各要素レンズ620から出射された光束は拡がりつつ、光路長差生成部61に入射する。
【0027】
光路長差生成部61は、光軸J1に垂直、かつ、光源配列面に沿う方向(ここでは、X方向)に一定のピッチにて密に配列された複数の透光部610を備える。
図2の例では、光路長差生成部61における透光部610の個数は、分割レンズ部62における要素レンズ620の個数よりも1つだけ少ない。また、透光部610の配列ピッチは、要素レンズ620の配列ピッチと等しい。各透光部610は、(理想的には)X方向、Y方向およびZ方向に垂直な面を有するブロック状である。X方向に一列に並ぶ複数の透光部610では、X方向およびY方向の長さは同じであり、Z方向、すなわち、光軸J1に沿う方向の長さは互いに相違する。このように、複数の透光部610は互いに異なる光路長を有する。
図2の光路長差生成部61では、複数の透光部610のうち(+X)側に位置する透光部610ほどZ方向の長さが小さい。複数の透光部610の光軸J1方向の長さは、必ずしもX方向に沿って順次長くなる(または、短くなる)必要はなく、任意の凹凸形状であってよい。本実施の形態では、光路長差生成部61における複数の透光部610は同じ材料にて、一繋がりの部材として形成される。光路長差生成部61では、個別に形成された複数の透光部610が互いに接合されてもよい。
【0028】
分割レンズ部62と光路長差生成部61とはZ方向に互いに近接して配置され、X方向に関して、最も(+X)側の要素レンズ620を除く複数の要素レンズ620と複数の透光部610とがそれぞれ同じ位置に配置される。したがって、これらの要素レンズ620を通過した複数の光束が、複数の透光部610にそれぞれ入射する。詳細には、
図4に示すように、これらの要素レンズ620のそれぞれの第2レンズ面622から出射される光束が、X方向に同じ位置に配置される透光部610の(−Z)側の面である入射面611に入射する。当該光束は、当該透光部610を透過して(+Z)側の面である出射面612から出射される。なお、最も(+X)側の要素レンズ620を通過した光束は、いずれの透光部610も通過しない。
【0029】
実際には、分割レンズ部62および光路長差生成部61が後述する条件を満たすことにより、X方向に関して、各透光部610の出射面612から出射される光束の幅が当該透光部610の幅、すなわち、透光部610の配列ピッチよりも小さくなる。よって、当該光束が当該透光部610のエッジ(すなわち、X方向の端であり、主として入射面611および出射面612におけるエッジである。)に
掛かることが防止または抑制される。なお、光路長差生成部61では、分割レンズ部62における要素レンズ620の個数と同じ個数の透光部610が設けられてもよい。この場合、複数(全て)の要素レンズ620を通過した光が、複数の透光部610にそれぞれ入射する。
【0030】
図2および
図3に示すように、各透光部610を通過した光束は、集光レンズ部63へと向かう。集光レンズ部63は、2つのシリンドリカルレンズ632a,632bを有する。シリンドリカルレンズ632aは、X方向のみにパワーを有し、その焦点距離f
Cだけ複数の要素レンズ620の第2レンズ面622から(+Z)側に離れた位置に配置される。換言すると、各要素レンズ620の第2レンズ面622は、シリンドリカルレンズ632aの前側焦点位置に配置される。また、光軸J1上に配置される照射面320は、シリンドリカルレンズ632aの焦点距離f
Cだけ、シリンドリカルレンズ632aから(+Z)側に離れた位置に配置される。すなわち、照射面320は、シリンドリカルレンズ632aの後側焦点位置に配置される。シリンドリカルレンズ632bは、シリンドリカルレンズ632aと照射面320との間に配置され、Y方向のみにパワーを有する。シリンドリカルレンズ632bは、その焦点距離f
Lだけ照射面320から(−Z)側に離れた位置に配置される。
【0031】
図2に示すようにY方向に沿って見た場合に、複数の要素レンズ620から出射された複数の光束は、シリンドリカルレンズ632aにより平行光とされ、照射面320において重畳される。すなわち、複数の要素レンズ620からの光(すなわち、複数の透光部610を通過した複数の光束)の照射領域50が全体的に重ねられる。
図2および
図3では、照射領域50を太い実線にて示しており、照射領域50は、X方向に関して一定の幅を有する。既述のように、複数の要素レンズ620から出射される複数の光束は、互いに異なる透光部610を通過しているため、分割レンズ部62と照射面320との間において複数の光束に光路長差が生じる。したがって、複数の要素レンズ620にて分割された光の干渉により、照射面320において干渉縞が生じることが抑制(または防止)される。すなわち、
図5の上段に示すように、照射面320上においてX方向における光の強度分布が均一となる。複数の透光部610のうちの2つの透光部610の各組合せでは、当該2つの透光部610を通過する光束の光路長の差が、光源部4から出射されるレーザ光の可干渉距離以上であることが好ましい。
【0032】
図3に示すようにX方向に沿って見た場合に、光源ユニット40から分割レンズ部62へと入射する光は、平行光のままで分割レンズ部62、光路長差生成部61およびシリンドリカルレンズ632aを通過し、シリンドリカルレンズ632bへと導かれる。そして、シリンドリカルレンズ632bから出射される光は、照射面320上において集光する。したがって、照射面320において、各要素レンズ620からの光の照射領域50は、X方向に伸びるライン状となる。これにより、複数の要素レンズ620を通過した光の集合であって、照射面320上における断面(すなわち、光軸J1に垂直な光束断面である。以下同様。)がX方向に伸びるライン状となるライン照明光が得られる。
図5の下段では、Y方向におけるライン照明光の強度分布を示している。光照射装置31では、2つのシリンドリカルレンズ632a,632bの機能が、1つの球面レンズにて実現されてよく、また、球面レンズおよびシリンドリカルレンズが組み合わされてもよい。
【0033】
以上に説明したように、
図2の光照射装置31では、複数の光源部4から分割レンズ部62に向けてレーザ光が出射される。これにより、1つの光源部4のみが用いられる光照射装置に比べて、高強度のライン照明光を得ることができる。また、複数の光源部4からのレーザ光の位相は互いに相違するため、複数の透光部610により、複数の要素レンズ620を通過する複数の光束に光路長差を付与することと相俟って、照射面320におけるライン照明光の強度分布の均一性をさらに向上することができる。なお、光照射装置31の設計によっては、照射面320をシリンドリカルレンズ632aの後側焦点位置から僅かにずらす(デフォーカスさせる)ことにより、照射面320における干渉縞の明部の幅を広げて、ライン照明光におけるコントラストを低下させてもよい。
【0034】
ここで、照射面320において干渉縞が生じることをより確実に防止する条件について、
図4を参照して説明する。光路長差生成部61の屈折率をn
s、X方向において互いに隣接する2つの透光部610のZ方向の長さの差をt
soとすると、当該2つの透光部610における光路長差Δz
sは、数1にて表される。ただし、数1では、空気中の屈折率を1としている。
【0035】
(数1)
Δz
s=(n
s−1)・t
so
【0036】
光照射装置31では、光路長差Δz
sが、光源部4から出射されるレーザ光の可干渉距離L
c以上であることにより、すなわち、数2を満たすことにより、複数の要素レンズ620にて分割された光の干渉により、照射面320において干渉縞が生じることがより確実に防止される。
【0037】
(数2)
L
c≦(n
s−1)・t
so
【0038】
なお、2つの透光部610の各組合せを通過する光の光路長の差が大きいほど可干渉性は低下するため、当該光路長の差が、光源部4から出射されるレーザ光の可干渉距離未満であっても、比較的長い距離(例えば、可干渉距離の1/2以上)であれば、干渉縞の影響はある程度低減される。したがって、ライン照明光の強度分布に求められる均一性(コントラスト値)に従って、2つの透光部610の各組合せにおける光路長差が適宜設定されてよい。
【0039】
ところで、分割レンズ部62の各要素レンズ620を通過した光が光路長差生成部61における透光部610のエッジ(透光部610間の境界等)に掛かると、当該光が散乱して照射面320上における光の強度分布の均一性が低下する。そこで、各要素レンズ620から出射される光束が透光部610のエッジに掛かかることを防止する条件について、
図4を参照して説明する。
【0040】
既述のように、光照射装置31では、光路長差生成部61における透光部610の個数が、分割レンズ部62における要素レンズ620の個数よりも1つだけ少ない(
図2参照)。したがって、光路長差生成部61における透光部610の個数をN
sとして、または、分割レンズ部62における要素レンズ620の個数をN
hとして、複数の透光部610のうちZ方向の長さが最も大きい透光部610の当該長さt
sは、数3にて表される。
【0041】
(数3)
t
s=N
s・t
so=(N
h−1)・t
so
【0042】
一方、複数の光源部4のうち分割レンズ部62へのレーザ光の入射角(Y方向に沿って見た場合にZ方向に対してなす角度)が最大となる光源部4から各要素レンズ620に入射する光は、当該要素レンズ620の出射面である第2レンズ面622上において、当該要素レンズ620の光軸J0(
図4中にて一点鎖線にて示す。)からX方向にずれた位置に集光する。具体的には、当該光の入射角(最大入射角)をθ
i、第1レンズ面621および第2レンズ面622の焦点距離をf
hとして、第2レンズ面622上における当該光の集光点と光軸J0との間のX方向の距離は、(f
h・tanθ
i)となる。
図2の光照射装置31では、X方向に垂直かつ照射光学系5の光軸J1を含む面に対して対称となるように複数の光源部4が配置されるため、要素レンズ620の光軸J0の(+X)側および(−X)側の双方に光軸J0から同じ距離だけ離れた集光点が形成される。したがって、全ての光源部4から各要素レンズ620に入射する光の第2レンズ面622上におけるX方向の幅w
hは、数4にて表される。
【0044】
また、上記集光点を通過する光の発散角(半角)θ
dは、光源部4からの光の入射角に依存せず、要素レンズ620(および透光部610)の配列ピッチをpとして、数5にて表される。
【0045】
(数5)
θ
d=tan
−1(p/2f
h)
【0046】
光路長差生成部61の内部における上記光の発散角(半角)θ'
dは、数6にて表される。
【0047】
(数6)
θ'
d=sin
−1(sinθ
d/n
s)
【0048】
したがって、分割レンズ部62の第2レンズ面622と光路長差生成部61の入射面611との間の間隙のZ方向における幅をd
sとして、Z方向の長さが最も大きい透光部610の出射面612上における光束のX方向の幅w
sは、数7にて表される。
【0049】
(数7)
w
s=w
h+2(d
s・tanθ
d+t
s・tanθ'
d)
【0050】
実際には、透光部610に対して角部を削る、いわゆる面取り加工が施される場合があり、このような場合には、透光部610の出射面612において、エッジおよびその近傍には非有効領域が存在することとなる。非有効領域のX方向の幅は、例えば0よりも大きく、100μm以下である。当該非有効領域のX方向の所定の幅をp
oとして、透光部610の出射面612上における有効領域のX方向の幅p'は、数8にて表される。
【0052】
したがって、分割レンズ部62の各要素レンズ620を通過した光束が、透光部610の出射面612の有効領域のみを通過して、光束がエッジ近傍にて散乱することを防止するための条件は、数9にて表される。
【0054】
数9を満たす光照射装置31では、透光部610に入射する光が当該透光部610のエッジに掛かることを防止することができ、光照射装置31により照射面320上に照射される光の強度分布の均一性を、より確実に確保することができる。また、透光部610のエッジにおける光の散乱による光量の損失も防止することができる。既述のように、非有効領域のX方向の幅p
oは0よりも大きいため、数9を満たす光照射装置31では、複数の透光部610の配列方向に関して、複数の透光部610のそれぞれの出射面612から出射される光の幅が、複数の透光部610のピッチよりも小さいといえる。
【0055】
なお、数7および数9から明らかなように、透光部610の最大長さt
sが小さいほど、数9に示す条件を満たすことが容易となる。既述のように、光路長差生成部61では、分割レンズ部62における要素レンズ620の個数と同じ個数の透光部610を設けることも可能である。しかしながら、透光部610の最大長さt
sは透光部610の個数に依存するため、数9に示す条件を容易に満たすという観点では、透光部610の個数は、要素レンズ620の個数よりも1つだけ少ないことが好ましい。
【0056】
図6および
図7は、光照射装置31の他の例を示す図である。
図6は、Y方向に沿って見た光照射装置31の構成を示し、
図7は、X方向に沿って見た光照射装置31の構成を示す。
【0057】
図6の光照射装置31では、光源ユニット40の各光源部4は、光源41およびコリメータレンズ42に加えて、プリズム43と、シリンドリカルレンズ44と、シリンドリカルレンズ45とを有する。複数の光源部4の光源41は、ZX平面に平行な光源配列面上においてX方向に配列される。各光源41から出射されるレーザ光は、コリメータレンズ42によりコリメートされるとともに、プリズム43により偏向され、照射光学系5の分割レンズ部62へと向かう。光源ユニット40では、複数の光源部4により、光源配列面に沿う互いに異なる方向から照射光学系5の同じ位置(分割レンズ部62)に向けてレーザ光が出射されるように、複数の光源41のX方向の位置に応じてプリズム43の頂角の角度が変更されている。なお、X方向の中央の光源部4では、プリズム43は省かれる。
【0058】
図6および
図7に示すように、シリンドリカルレンズ44,45は、Y方向のみにパワーを有する。シリンドリカルレンズ44,45は、プリズム43と分割レンズ部62との間に設けられる。シリンドリカルレンズ44は、各光源部4に対して設けられ、シリンドリカルレンズ45は、複数の光源部4において共有される。シリンドリカルレンズ44とシリンドリカルレンズ45との間には、空間フィルタ46が設けられる。空間フィルタ46はスリット板であり、X方向に長いスリット461が形成される。
図7に示すようにX方向に沿って見た場合に、シリンドリカルレンズ44を通過したレーザ光は、空間フィルタ46のスリット461の近傍にて集光し、スリット461を通過した光がシリンドリカルレンズ45に入射する。シリンドリカルレンズ45を通過した光は、分割レンズ部62の(−Z)側の面に入射する。
【0059】
図6および
図7に示す分割レンズ部62では、各要素レンズ620aの第1レンズ面621および第2レンズ面622が共に球面の一部である点で、
図2および
図3に示す分割レンズ部62と相違する。分割レンズ部62においても、要素レンズ620aの第1レンズ面621は、第2レンズ面622の焦点に配置され、第2レンズ面622は、第1レンズ面621の焦点に配置される。すなわち、第1レンズ面621および第2レンズ面622の焦点距離は同じである。光路長差生成部61の構造および配置は、
図2の光路長差生成部61と同じである。
【0060】
図6に示すようにY方向に沿って見た場合に、分割レンズ部62へと入射する光は複数の要素レンズ620aにてX方向に関して分割される。最も(+X)側の要素レンズ620aを除く複数の要素レンズ620aを通過した複数の光束は、光路長差生成部61の複数の透光部610にそれぞれ入射する。複数の透光部610を透過した光、および、最も(+X)側の要素レンズ620aを通過した光は、集光レンズ部63に入射する。集光レンズ部63は、コンデンサレンズ631を有する。コンデンサレンズ631は、その焦点距離f
Cだけ複数の要素レンズ620aの第2レンズ面622(
図7参照)から光軸J1に沿って離れた位置に配置される。換言すると、各要素レンズ620aの第2レンズ面622は、コンデンサレンズ631の前側焦点面上に配置される。また、光軸J1上に配置される照射面320は、コンデンサレンズ631の焦点距離f
Cだけ、コンデンサレンズ631から光軸J1に沿って離れた位置に配置される。すなわち、照射面320は、コンデンサレンズ631の後側焦点面と一致する。複数の要素レンズ620aから出射された複数の光束は、コンデンサレンズ631により平行光とされ、コンデンサレンズ631の後側焦点面において重畳される。すなわち、複数の要素レンズ620aからの光(複数の光束)の照射領域50が全体的に重ねられる。
【0061】
図7に示すようにX方向に沿って見た場合に、光源ユニット40のシリンドリカルレンズ45から出射される光は、複数の要素レンズ620aの第1レンズ面621上において集光し、第2レンズ面622から光軸J1に平行な平行光として出射される。複数の要素レンズ620aからの光は、コンデンサレンズ631により、コンデンサレンズ631の後側焦点面(照射面320)上において集光する。これにより、照射面320上における断面がX方向に伸びるライン状となるライン照明光が得られる。
【0062】
以上に説明したように、
図6の光照射装置31においても、複数の光源部4から分割レンズ部62に向けてレーザ光が出射されることにより、高強度のライン照明光を得ることができる。また、複数の光源部4を用いることにより、複数の透光部610により、複数の要素レンズ620aを通過する複数の光束に光路長差を付与することと相俟って、照射面320におけるライン照明光の強度分布の均一性を向上することができる。さらに、
図6の光照射装置31においても、数9の条件を満たすことにより、複数の透光部610の配列方向に関して、複数の透光部610のそれぞれの出射面612から出射される光の幅が、複数の透光部610のピッチよりも小さくなる。これにより、透光部610に入射する光が当該透光部610のエッジに掛かることを防止することができ、光照射装置31により照射面320上に照射される光の強度分布の均一性を、より確実に確保することができる。
【0063】
図8.Aは、照射面320上におけるY方向の光の強度分布を示す図である。空間フィルタ46を省いた比較例の光源ユニットを想定した場合、光源の種類もしくは状態によっては、照射面上におけるY方向の光の強度分布において、ライン照明光として必要な光の強度ピークに隣接して、サイドローブ等の不要な光の強度ピークが発生することがある。
図8.Aでは、不要な光の強度ピークを破線にて示している。これに対し、
図3の光源ユニット40では、空間フィルタ46が設けられることにより、不要な光の強度ピークを除外する(すなわち、照射面320に照射される光を成形する)ことが可能となり、好ましいライン照明光を得ることが実現される。
【0064】
図6の光源ユニット40では、複数の光源部4が図示省略の支持部材に取り付けられるため、複数の光源41の冷却等を効率よく行うことができる。また、プリズム43を用いることにより、全ての光源部4において、光源41およびコリメータレンズ42の光軸がZ方向に平行となるように、光源41およびコリメータレンズ42を配置することが可能となる。その結果、複数の光源部4において、光源41およびコリメータレンズ42の光軸がZ方向に対して様々な角度にて傾斜するように、光源41およびコリメータレンズ42が配置される
図2の光源ユニット40に比べて、支持部材の作製を容易に行うことができる。なお、光のコリメートは、X方向には必須ではなく、光源部4からの光がX方向に僅かに発散または収束しつつ分割レンズ部62に入射してもよい。
図8.Bでは、
図6のシリンドリカルレンズ44を球面レンズ44aに変更した光照射装置31を示している。
図8.Bに示す光照射装置31をX方向に沿って見た様子は、
図7と同様である。
【0065】
ところで、シリンドリカルレンズである要素レンズ620を用いる
図3の分割レンズ部62では、分割レンズ部62の作製における精度によっては、X方向に沿って見た場合における第1レンズ面621と第2レンズ面622との平行度(ウエッジ成分)のばらつきが、複数の要素レンズ620において大きくなることがある。この場合、複数の要素レンズ620を通過した複数の光束が光軸J1に対して互いに異なる方向に傾斜して集光レンズ部63に入射し、照射面320上において照射領域50が形成される位置がY方向にずれることがある。これに対し、
図7の分割レンズ部62では、高精度な成形が容易な球面レンズを要素レンズ620aとして用いることにより、複数の要素レンズ620aを通過した光束により、照射面320上に照射領域50が形成される位置をY方向におよそ一致させることができる。空間フィルタ46、プリズム43、および、要素レンズ620aのそれぞれを用いた上記手法は、個別に他の光照射装置31(および後述の光照射装置31a)において採用されてよい。
【0066】
図9および
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る光照射装置31aの構成を示す図である。
図9は、Y方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示し、
図10は、X方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示す。
【0067】
図9および
図10に示す光照射装置31aは、光源ユニット40と、照射光学系5aとを備える。光源ユニット40は、
図2の光源ユニット40と同様の構造を有する。したがって、光源ユニット40では、複数の光源部4により、光源配列面に沿う互いに異なる方向から照射光学系5a上の同じ位置(後述の分割レンズ部62)に向けてレーザ光が出射される。
【0068】
照射光学系5aは、光路長差生成部61と、分割レンズ部62と、集光レンズ部63と、中間変倍部64aとを備える。照射光学系5aでは、光源ユニット40から照射面320に向かって、分割レンズ部62、中間変倍部64a、光路長差生成部61、集光レンズ部63の順に、これらの構成が光軸J1に沿って配置される。複数の光源部4からのコリメートされたレーザ光は、分割レンズ部62に入射する。
図11に示すように、分割レンズ部62では、複数の要素レンズ620が、照射光学系5aの光軸J1に垂直、かつ、光源配列面に沿うX方向に配列される。
【0069】
Y方向に沿って見た場合に、分割レンズ部62へと入射する光は複数の要素レンズ620にてX方向に関して分割される。このとき、各要素レンズ620の第1レンズ面621には各光源部4からの平行光が入射し、第2レンズ面622の近傍に複数の光源41の像が形成される。これらの像は、要素レンズ620の配列方向に並ぶ。なお、
図11では、1つの要素レンズ620に入射する光線のみを図示している。
【0070】
複数の要素レンズ620にて分割された光(複数の光束)は、主光線が光軸J1に平行となるように第2レンズ面622から出射される。各要素レンズ620から出射された光束は拡がりつつ、
図9に示す中間変倍部64aのレンズ643に入射し、レンズ643,644を介して光路長差生成部61に入射する。光路長差生成部61では、複数の透光部610が、照射光学系5aの光軸J1に垂直、かつ、光源配列面に沿うX方向に配列される。透光部610の配列ピッチは、要素レンズ620の配列ピッチよりも大きい。
【0071】
中間変倍部64aは、アフォーカル光学系、具体的には、両側テレセントリック光学系を構成し、主光線が光軸J1に平行な状態で入射する光を、主光線が光軸J1に平行な状態で光路長差生成部61に入射させる。このとき、中間変倍部64aは、複数の要素レンズ620の出射面である第2レンズ面622の像(詳細には、第2レンズ面622における複数の光源41の像)を、光路長差生成部61の内部または近傍に拡大して形成する。
【0072】
詳細には、中間変倍部64aによる拡大倍率は、光路長差生成部61における透光部610の配列ピッチを、分割レンズ部62における要素レンズ620の配列ピッチにて割った値と等しい。したがって、複数の要素レンズ620を通過した光(複数の光束)が、拡大光学系を構成する中間変倍部64aを介して複数の透光部610にそれぞれ入射する。このとき、複数の要素レンズ620の第2レンズ面622の像が、複数の透光部610の内部または近傍にそれぞれ形成される。また、各要素レンズ620から出射される光束の透光部610における拡がり角が、当該要素レンズ620の第2レンズ面622近傍における拡がり角よりも、拡大倍率に従って小さくなる。その結果、光束が当該透光部610のエッジ(例えば、隣接する透光部610との境界)に掛かりにくくなる。各透光部610を通過した光束は、集光レンズ部63へと向かう。複数の透光部610から出射された複数の光束は、集光レンズ部63のコンデンサレンズ631により平行光とされ、照射面320において重畳される。すなわち、複数の透光部610からの光(複数の光束)の照射領域50が全体的に重ねられる。
【0073】
図10に示すようにX方向に沿って見た場合に、光源ユニット40から分割レンズ部62および中間変倍部64aを介して光路長差生成部61へと入射する光は、平行光のままで複数の透光部610を通過してコンデンサレンズ631へと導かれる。そして、コンデンサレンズ631から出射される光は照射面320上において集光する。したがって、照射面320において、各要素レンズ620(透光部610)からの光の照射領域50は、配列方向に伸びるライン状となる。すなわち、光照射装置31aにより照射面320上に照射される光の断面は、X方向に伸びるライン状となり、ライン照明光が得られる。
【0074】
光照射装置31aでは、コンデンサレンズ631は球面レンズであるが、例えば、Y方向のみにパワーを有するシリンドリカルレンズを集光レンズ部63に追加することにより、照射面320においてY方向に所望の幅となるライン照明光が得られてもよい。なお、光源41がハイパワーの半導体レーザである場合に、光源41から出射されるレーザ光が一方向にマルチモードとなるときには、シングルモードとなる方向を、分割レンズ部62における要素レンズ620の配列方向に垂直な方向(Y方向)に合わせることが好ましい。これにより、照射面320においてライン照明光のY方向の幅が広がることが防止される。
【0075】
ところで、
図2および
図6に示す光照射装置31では、光路長差生成部61における透光部610の配列ピッチを、分割レンズ部62における要素レンズ620の配列ピッチと等しくする必要がある。小型の分割レンズ部はフォトリソグラフィを利用して容易に高精度に作製することが可能であるが、光軸方向における複数の透光部の長さが互いに異なる光路長差生成部については、フォトリソグラフィを利用することが困難である。したがって、機械加工等の煩雑な作業により光路長差生成部を作製する必要が生じる。
【0076】
これに対し、
図9の光照射装置31aでは、分割レンズ部62と光路長差生成部61との間に、拡大光学系を構成する中間変倍部64aが配置される。これにより、透光部610の配列方向(
図9では、X方向)に関して、光路長差生成部61を分割レンズ部62に比べて大きくすることができ、光路長差生成部61を容易に作製することができる。なお、
図2および
図6に示す光照射装置31では、中間変倍部64aを省略して構成を簡素化することができるため、光照射装置31の小型化等を容易に図ることができる。
【0077】
光照射装置31aでは、複数の光源部4から分割レンズ部62に向けてレーザ光が出射される。これにより、1つの光源部4のみが用いられる光照射装置に比べて、高強度のライン照明光を得ることができる。また、複数の光源部4からのレーザ光の位相は互いに相違するため、複数の透光部610により、複数の要素レンズ620を通過する複数の光束に光路長差を付与することと相俟って、照射面320におけるライン照明光の強度分布の均一性をさらに向上することができる。
【0078】
また、光照射装置31aでは、中間変倍部64aにより、複数の透光部610の内部または近傍に複数の要素レンズ620の出射面の像が形成されるとともに、当該像の拡大に伴って、各要素レンズ620から出射される光束の透光部610における拡がり角が、当該要素レンズ620における拡がり角よりも小さくなる。その結果、当該光束が透光部610のエッジに掛かることを容易に抑制することができ、光照射装置31aにより照射面320上に照射される光の強度分布の均一性を、より確実に確保することができる。
【0079】
図12および
図13は、光照射装置31aの他の例を示す図である。
図12は、Y方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示し、
図13は、X方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示す。
図12および
図13に示す光照射装置31aでは、
図9および
図10の光照射装置31aと比較して、光路長差生成部61と集光レンズ部63との間にレンズ53,54が追加される点で相違する。他の構成は、
図9および
図10の光照射装置31aと同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0080】
レンズ53,54は、縮小光学系(例えば、両側テレセントリック光学系)を構成し、光路長差生成部61の内部または近傍における複数の要素レンズ620(
図11参照)の第2レンズ面622の像(詳細には、第2レンズ面622における複数の光源41の像)を縮小リレーする。レンズ54から出射される光は、集光レンズ部63のコンデンサレンズ631に入射し、照射面320上にライン状の照射領域50が形成される。
【0081】
既述のように、各要素レンズ620から出射される光束の透光部610における拡がり角が比較的小さいことにより、光照射装置31aでは、光束が透光部610のエッジに掛かることが容易に抑制される。この場合に、照射面320上においてX方向にある程度の長さとなるライン照明光を得るには、
図9の光照射装置31aでは、焦点距離が長いコンデンサレンズ631を設ける必要があり、Z方向における照射光学系5aの全長が長くなる。これに対し、
図12の光照射装置31aでは、光路長差生成部61と集光レンズ部63との間に、縮小光学系を構成するレンズ53,54が設けられることにより、照射光学系5aの全長を比較的短くすることができ、光照射装置31aの小型化を図ることができる。
【0082】
図14および
図15は、光照射装置31aの他の例を示す図である。
図14は、Y方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示し、
図15は、X方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示す。
図14および
図15に示す光照射装置31aでは、
図9および
図10の光照射装置31aと比較して、偏光ビームスプリッタ55、1/4波長板56および反射部65が追加される点で相違する。他の構成は、
図9および
図10の光照射装置31aと同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0083】
図14の光照射装置31aでは、(−Z)側から(+Z)方向に向かって、反射部65、光路長差生成部61、1/4波長板56、中間変倍部64aのレンズ644,643、偏光ビームスプリッタ55、集光レンズ部63の順にて、これらの構成が並ぶ。また、光源ユニット40は、偏光ビームスプリッタ55の(+X)側に配置され、光源ユニット40と偏光ビームスプリッタ55との間に分割レンズ部62が配置される。光源ユニット40において、およそZ方向に並ぶ複数の光源部4から、光源配列面に平行かつ互いに異なる方向に沿って分割レンズ部62に向けてレーザ光が出射される。
【0084】
分割レンズ部62では、光源ユニット40と偏光ビームスプリッタ55との間における光軸に垂直、かつ、光源配列面に沿うZ方向に複数の要素レンズ620(
図11参照)が配列され、分割レンズ部62に入射する光がZ方向に分割される。分割レンズ部62を通過した光は、その主光線がX方向に平行な状態で偏光ビームスプリッタ55に入射する。偏光ビームスプリッタ55は、p偏光成分とs偏光成分とを分離するものである。光源ユニット40から分割レンズ部62を介して偏光ビームスプリッタ55に入射する光のほとんどはs偏光成分であり、当該光は偏光ビームスプリッタ55にて反射して中間変倍部64aのレンズ643へと向かう。このとき、複数の要素レンズ620から出射される複数の光束の配列方向が、X方向に変換される。換言すると、偏光ビームスプリッタ55から中間変倍部64aへと向かう光の主光線はZ方向と平行となる。
【0085】
中間変倍部64aでは、両側テレセントリック光学系が構成されており、主光線が光軸J1(Z方向)に平行な状態で入射する光を、主光線が光軸J1に平行な状態で光路長差生成部61に入射させる。実際には、複数の要素レンズ620を通過した光(複数の光束)が、偏光ビームスプリッタ55、中間変倍部64aおよび1/4波長板56を介して、X方向に並ぶ複数の透光部610にそれぞれ入射し、複数の要素レンズ620の第2レンズ面622の像(光源41の像)が、光路長差生成部61における複数の透光部610の内部または近傍にそれぞれ拡大して形成される。このように、分割レンズ部62の要素レンズ620の配列方向と、光路長差生成部61の透光部610の配列方向とが、偏光ビームスプリッタ55を介して対応する。
【0086】
反射部65は、光路長差生成部61の(−Z)側の面にコーティングにより形成された反射膜651aを有する。各透光部610の(+Z)側の面である入射面611(
図4参照)に入射した光束は、(−Z)側の面である出射面612上の反射膜651aにて反射して、当該入射面611から出射される。すなわち、各透光部610の入射面611に入射した光束は、透光部610の内部をZ方向に往復して当該入射面611から(+Z)方向に出射される。出射面612上の反射膜651aは、実質的に、複数の透光部610の複数の出射面612から出射される光を折り返して(すなわち、進行方向を180度回転して)当該複数の出射面612にそれぞれ入射させるものである。なお、要素レンズ620の第2レンズ面622の像は透光部610の出射面612近傍(反射膜651a近傍)に形成されることが好ましい。
【0087】
光路長差生成部61から(+Z)方向に出射される光は、1/4波長板56を介して中間変倍部64aに入射する。中間変倍部64aでは、光路長差生成部61の内部または近傍における複数の要素レンズ620の出射面の像が縮小リレーされる。レンズ643から出射される光は、偏光ビームスプリッタ55に入射する。中間変倍部64aから偏光ビームスプリッタ55に入射する光は、偏光ビームスプリッタ55と反射部65との間の往復にて1/4波長板56を2回通過することによりp偏光成分となっており、当該光は偏光ビームスプリッタ55を透過し、コンデンサレンズ631に入射する。そして、コンデンサレンズ631により、複数の要素レンズ620からの光の照射領域50が照射面320上にて重ねられる。
【0088】
以上に説明したように、
図14の光照射装置31aでは、偏光ビームスプリッタ55と反射部65との間の光の往復における往路において、複数の要素レンズ620の出射面を拡大した像が、中間変倍部64aにより複数の透光部610の内部または近傍に形成される。これにより、透光部610の配列方向に関して、光路長差生成部61を分割レンズ部62に比べて大きくすることができ、光路長差生成部61を容易に作製することができる。また、
図12におけるレンズ53,54の機能が、上記光の往復における復路において中間変倍部64aにより実現されることにより、上記レンズ53,54を省いて、光照射装置31aのZ方向の全長を短くすることができる。さらに、各透光部610を通過する光束が当該透光部610を往復することにより、光路長差生成部61の光軸J1方向の長さを短くする(例えば、
図9や
図12の光路長差生成部61の長さの半分にする)ことができる。
【0089】
なお、
図14の光照射装置31aでは、偏光ビームスプリッタ55および1/4波長板56を用いることにより、光量の損失を比較的少なくすることが可能であるが、光照射装置31の設計によっては、ハーフミラー等他のビームスプリッタが用いられてもよい。また、1/4波長板56は、偏光ビームスプリッタ55と反射部65との間における任意の位置に配置可能である。偏光ビームスプリッタ55および1/4波長板56を用いる他の光照射装置において同様である。さらに、
図14の光照射装置31aにおいて、反射膜651aに代えてミラーが設けられてよい。さらに、上述のような透光型の素子でなく、
図16に示すように、階段状に配置したミラー(反射面)613を有する光路長差生成部が用いられてもよい。
【0090】
図17および
図18は、光照射装置31aの他の例を示す図である。
図17は、Y方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示し、
図18は、X方向に沿って見た光照射装置31aの構成を示す。
図17および
図18に示す光照射装置31aでは、
図14および
図15の光照射装置31aにおける反射膜651aに代えてレンズ657および直角プリズム658が設けられる。他の構成は、
図14および
図15の光照射装置31aと同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0091】
反射部65のレンズ657は、光路長差生成部61において要素レンズ620(
図11参照)の出射面の像が形成される位置から、レンズ657の焦点距離だけ(−Z)側に離れた位置に配置される。したがって、各透光部610の(−Z)側の面である出射面612からレンズ657に向けて出射される光束は、レンズ657により平行光として(−Z)側に出射される。直角プリズム658は、レンズ657からレンズ657の焦点距離だけ(−Z)側に離れた位置に配置される。
図17に示すようにY方向に沿って見た場合に、直角プリズム658に入射する各光線は、90度をなす2つの面658a,658bの一方にて反射して他方の面に向かい、当該他方の面にてさらに反射して、直角プリズム658への入射時の経路と平行にレンズ657へと向かう。(−Z)側からレンズ657に入射する光は、収束しつつ光路長差生成部61に入射する。実際には、各透光部610の(−Z)側の出射面612から出射される光束は、反射部65にて折り返され、同じ経路を戻って当該出射面612に入射する。また、当該透光部610の内部または近傍に当該光束の集光点が形成される。
【0092】
光路長差生成部61から(+Z)方向に出射される光は、1/4波長板56および中間変倍部64aを介して偏光ビームスプリッタ55に入射する。当該光は偏光ビームスプリッタ55を透過し、コンデンサレンズ631に入射する。そして、コンデンサレンズ631により、複数の要素レンズ620からの光の照射領域50が照射面320上にて重ねられる。
【0093】
ここで、
図18に示すようにX方向に沿って見た場合における、透光部610の入射面611および出射面612の平行度が透光部610毎にばらついているものとする。この場合、各透光部610の(+Z)側の入射面611に、光軸J1に平行な平行光として入射する光束は、当該透光部610の出射面612から光軸J1に対して傾斜した出射方向に平行光として出射される。当該光束はレンズ657の作用により直角プリズム658上の光軸J1からずれた位置に集光する。直角プリズム658にて反射した光束は、レンズ657により上記出射方向に平行な平行光とされて当該透光部610の出射面612に入射する。したがって、透光部610を透過した光束は、透光部610の平行度に依存することなく、(+Z)側から当該透光部610への入射時の経路に平行に入射面611から(+Z)方向に出射される。そして、複数の透光部610からの光の照射領域50が照射面320上においてY方向の(ほぼ)同じ位置に形成される。
【0094】
以上のように、
図17および
図18に示す光照射装置31aでは、反射部65が、各透光部610の出射面612から出射される光を、当該光の出射方向に平行に当該出射面612に入射させる。これにより、複数の透光部610における平行度(ウエッジ成分)がばらつく場合であっても、複数の透光部610から(+Z)方向に出射される複数の光束の光軸J1に対する傾き(X方向に沿って見た場合の傾き)を、(+Z)側から光路長差生成部61への入射時における傾き(理想的には、光軸J1に平行)に一致させることができる。その結果、複数の透光部610を通過した複数の光束の照射面320上における集光位置(X方向に沿って見た場合の集光位置)のY方向のずれを抑制または低減し、照射面320上におけるライン照明光のY方向の幅の太りを抑制することができる。なお、反射部65では、直角プリズム658に代えて、互いになす角度が90度の2枚の平面ミラー等が用いられてよい。
【0095】
上記描画装置1および光照射装置31,31aでは様々な変形が可能である。
【0096】
分割レンズ部62では、必ずしも複数の要素レンズ620,620aが配列方向に一定のピッチにて配列される必要はなく、例えば、複数の要素レンズ620,620aの配列方向の幅が互いに異なっていてもよい。この場合、配列方向に関して、光路長差生成部61における各透光部610の幅と、当該透光部610に対応する分割レンズ部62の要素レンズ620,620aの幅との比が、全ての透光部610において一定となるように、複数の透光部610の配列方向の幅も変更される。
【0097】
中間変倍部64aは、必ずしも両側テレセントリック光学系である必要はなく、複数の要素レンズ620,620aを通過した光が複数の透光部610にそれぞれ入射する拡大光学系を構成すればよい。
【0098】
上記光照射装置31,31aにおけるレーザ光の経路において、光路長差生成部61よりも照射面320側に配置される集光レンズ部63は、照射面320上にて複数の透光部610からの光の照射領域50を重ねることが可能であるならば、様々な構成にて実現されてよい。
【0099】
描画装置1において、光照射装置31,31aの照射面320に配置される空間光変調器32は、回折格子型の光変調器以外であってよく、例えば、微小なミラーの集合を用いた空間光変調器が用いられてよい。この場合に、Y方向の幅が比較的広い照射領域が、光照射装置31,31aにより照射面320上に形成されてもよい。
【0100】
基板9上の光の照射位置を移動する移動機構は、ステージ21を移動する移動機構22以外であってもよく、例えば、光照射装置31,31a、空間光変調器32および投影光学系33を含むヘッドを基板9に対して移動する移動機構であってよい。
【0101】
描画装置1にて描画が行われる対象物は、半導体基板やガラス基板以外の基板であってよく、また、基板以外であってもよい。光照射装置31,31aは、描画装置1以外に用いられてもよい。
【0102】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。