【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、第一接着剤層と第二接着剤層を特定の態様で設けたことにより、洗濯及び滅菌処理耐久性に優れた血液、ウイルスバリア性積層布帛が得られるとの知見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0033】
(実施例1)
表地、裏地、透湿性を有する微多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム、及び接着剤として以下のものを準備した。
【0034】
〔表地及び裏地〕
ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸56dtex24fを用いて、32Gトリコットハーフを編成し、公知の方法で精練(精練剤;日華化学株式会社製「サンモールFL」1g/L、80℃で20分)、染色(分散染料;ダイスタージャパン株式会社製「Dianix Blue UN−SE」0.5%omf、130℃で30分)を行い、表地及び裏地を準備した。表地と裏地は同一である。
【0035】
〔透湿性を有する微多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム〕
厚み20μmのポリテトラフルオロエチレンフィルム(日本ドナルドソン株式会社製、商品名「Tetratex」(登録商標))を準備した。
【0036】
ポリテトラフルオロエチレンフィルムの片面に、下記の如くグラビアロールにて、透湿性を有しないポリカーボネート系ポリウレタン接着剤(DIC株式会社製、湿気硬化タイプの無溶剤型接着剤、商品名「タイフォースNH−100X」(登録商標))を120℃で溶融したものを塗布し、第一接着剤層を設けた。
【0037】
すなわち、グラビアロールは格子柄の凹部(深度0.2mm)を持ち、格子柄を構成している線数は17本/インチで、各線幅は0.37mmのものであって、格子柄の占有面積(凹部の占有面積)は42%のものである。このグラビアロールの凹部に120℃で溶融させた接着剤(粘度2500mPa・s)を充填し、ポリテトラフルオロエチレンフィルムの片面に格子柄で接着剤を塗布し、第一接着剤層を設けた。接着剤の塗布量は約15g/m
2であり、接着剤層の厚みは約30μmで塗布面積(全接着面に対する占有面積)は約50%であった。接着剤を塗布した後、自然冷却し、圧力300kPaで前記表地を積層し、40℃で2日間エージングし、表地とポリテトラフルオロエチレンフィルムを備えてなる積層布帛を得た。
【0038】
続いて、前記積層布帛のポリテトラフルオロエチレンフィルム面に、下記処方1に示す組成の透湿性を有しないポリカーボネート系ポリウレタン接着剤(固形分55質量%、粘度3000mPa・s/25℃)をコンマコータにて塗布量50g/m
2で全面状に塗布し、120℃で3分間乾燥して、厚み約30μmの第二接着剤層を形成した。次いで、圧力300kPaで裏地を積層し、4日間エージングした。
【0039】
<処方1>
レザミンUD−8373 100質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分70質量%のポリカーボネート系ポリウレタン接着剤)
レザミンUD架橋剤 12質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分75質量%のイソシアネート系架橋剤)
レザミンUD−103NT 1質量部
(大日精化工業株式会社製、反応促進剤)
メチルエチルケトン 30質量部
【0040】
次に、下記処方2に示すフッ素系撥水剤エマルジョンを調製し、パディング法にてピックアップ率40%の割合で撥水剤付与し、120℃で2分間乾燥した後、170℃で1分間ファイナルセットし、洗濯耐久性に優れた血液・ウイルスバリア性積層布帛とした
【0041】
<処方2>
アサヒガードAG−E082 50質量部
(旭硝子株式会社製、フッ素系撥水剤エマルジョン)
メイカネートWEB 10質量部
(明成化学工業株式会社製、ブロックドイソシアネート架橋剤)
イソプロピルアルコール 10質量部
【0042】
(実施例2)
実施例1における処方1に代えて、下記処方3に示す組成のポリカーボネート系ポリウレタン接着剤(固形分53質量%、粘度2500mPa・s/25℃)を使用して第二接着剤層を全面状に形成する以外は、実施例1と全く同一の方法により血液・ウイルスバリア性積層布帛を得た。
【0043】
<処方3>
レザミンUD−8373 70質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分70質量%のポリカーボネート系ポリウレタン接着剤)
ハイムレンY−119E 30質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分60質量%のポリエーテル系透湿性ポリウレタン接着剤)
レザミンUD架橋剤 11質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分75質量%のイソシアネート系架橋剤)
レザミンUD−103NT 1質量部
(大日精化工業株式会社製、反応促進剤)
メチルエチルケトン 15質量部
トルエン 15質量部
【0044】
(実施例3)
第二接着剤層を以下のようにして形成する以外は、実施例1と全く同一の方法により血液・ウイルスバリア性積層布帛を得た。すなわち、ハンドスクリーンプリントによる2段階の塗布によってあわせ柄とすることで、全面柄の第二接着剤層を形成した。
【0045】
具体的には、1段階目のハンドスクリーンプリントは、100メッシュスクリーンを使用して、ポリウレタン系透湿性接着剤(DIC株式会社製、湿気硬化タイプの無溶剤型接着剤、商品名「タイフォースWT−004」(登録商標))を120℃で溶融したもの(粘度3000mPa・s)を、約30μmの厚さで一辺5mmの正方形の市松模様にプリントした。続いて、2段階目は、前記1段階目の非塗布面に、100メッシュスクリーンを使用して、ポリカーボネート系ポリウレタン接着剤(DIC株式会社製、湿気硬化タイプの無溶剤型接着剤、商品名「タイフォースNH−100X」(登録商標))を110℃で溶融したもの(粘度3000mPa・s)を、約30μmの厚さで一辺5mmの正方形の市松模様にプリントし、あわせ柄で全面状となる第二接着剤層とした。
【0046】
(比較例1)
実施例1において、第一接着剤層形成後、第二接着剤層として、もう一方のポリテトラフルオロエチレンフィルム面に当該第一接着剤層と同様の接着剤層を形成すること以外は、実施例1と全く同一の方法により積層布帛を得た。
【0047】
(比較例2)
実施例1における処方1に代えて、下記処方4に示す組成のポリウレタン樹脂溶液(固形分52質量%、粘度2800mPa・s)を使用して第二接着剤層を全面状に形成する以外は、実施例1と全く同一の方法により積層布帛を得た。
【0048】
<処方4>
ハイムレンY−119E 100質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分60質量%のポリエーテル系透湿性ポリウレタン接着剤)
レザミンNE架橋剤 11質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分75質量%のイソシアネート系架橋剤)
レザミンHI−215 1質量部
(大日精化工業株式会社製、反応促進剤)
トルエン 20質量部
【0049】
(比較例3、4)
実施例3において、第二接着剤層形成の際、1段階目のポリウレタン系透湿性接着剤による市松模様の形成を省くこと(比較例3)、又は2段階目のポリカーボネート系ポリウレタン接着剤による市松模様の形成を省くこと(比較例4)以外は、各々実施例3と全く同一の方法により積層布帛を得た。
【0050】
実施例1〜3及び比較例1〜4の積層布帛の評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
上記の結果から、本発明の積層布帛は、適度な透湿性能を有すると共に、工業洗濯とウイルスバリア性の耐性に非常に優れていることが確認できた。これに対し、比較例に係る積層布帛は、ウイルスバリア性の耐性が不十分であり、特に比較例2、4に係る布帛は、耐剥離性も不十分であった。
【0053】
なお、工業洗濯及び滅菌処理は下記の簡便方法を採用し、耐水圧、透湿度、血液バリア性及びウイルスバリア性等は、下記方法にて評価した。
【0054】
〔工業洗濯〕
工業洗濯機(スガ試験機株式会社製、LM−W型)を用いて、標準的な1回分の洗濯時間「73℃×20分間」から、下記条件を1サイクル(10回分)とした。
浴比;1:40(1.5kg:60L)
洗剤;ピュア−石鹸(株式会社不動化学製)1g/L、苛性ソーダ0.08g/Lを添加しPH値を10に調整したものを用いた。
工程;洗い(73℃×200分間)→湯洗(40℃×30分間)→オーバーフローすすぎ(常温×15分間)→脱水→タンブル乾燥(60℃×20分間)
【0055】
〔滅菌処理(オートクレーブ処理)〕
株式会社平山製作所製、高圧蒸気滅菌器「HV50型」を用いて、標準的な1回分の滅菌時間 「135℃×8分間」から、「135℃×80分間」を1サイクル(10回分)とした。
【0056】
(1)耐水圧
JIS L1092(高水圧法)に基づいて測定した。なお、表裏が編地のために、耐水圧測定時には過剰な膨れが生じ、測定に支障を来たすことが多々あるので、それを防止する目的で、経緯共にナイロン6マルチフィラメント糸78dtex24fを用いた平織物の210本タフタ(経密度120本/吋、緯密度90本/吋)を積層布帛上に重ねて測定した。
【0057】
(2)透湿度
JIS L1099B?1法(酢酸カリウム法)に基づいて測定した。
【0058】
(3)剥離強度
JIS L1089に準じて経方向の剥離強度を測定した。なお、剥離強度測定の際には、表地と裏地をチャックで把持し、表地及び裏地間の剥離強度を測定したものである。
【0059】
(4)人工血液バリア性
ASTM F 1670−08B法に基づいて評価した。
【0060】
(5)ウイルスバリア性
ASTM F 1671−07B法に基づいて評価した。
【0061】
(6)耐性
前記工業洗濯とオートクレーブの連続処理を5サイクル行った試料を対象に、目視による試料の剥離状況を観察し、耐水圧を測定し、さらに人工血液バリア性及びウイルスバリア性も評価した。