特許第6383206号(P6383206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6383206-粉末成形体の製造用型 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383206
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】粉末成形体の製造用型
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/02 20060101AFI20180820BHJP
   B30B 11/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B30B11/02 F
   B30B11/00 T
   B30B11/00 R
   B30B11/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-155668(P2014-155668)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-32821(P2016-32821A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】300091670
【氏名又は名称】株式会社アドテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(73)【特許権者】
【識別番号】514194509
【氏名又は名称】株式会社テクノセラム
(72)【発明者】
【氏名】清 水 一 昭
(72)【発明者】
【氏名】竹 田 幸 一 郎
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−305593(JP,A)
【文献】 実開昭56−003238(JP,U)
【文献】 特開平09−122994(JP,A)
【文献】 実開昭59−068700(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第00575921(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/02
B30B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成形粉末が充填される弾性を有する筒状のバッグと、
該バッグ内に収納される孔形成用のピンと、
該バッグの上端側に設けられ、前記ピンの上端を固定し、粉体充填可能な、上パンチと、
該バッグの下端側に設けられ、前記ピンを固定する貫通孔を備えたピンホルダと、
前記ピンホルダの貫通孔に貫入し、前記ピンを貫通孔から前記バッグ内に押し出して、ピンの固定を開放する、下パンチと、
を備えたことを特徴とする粉末成形体用型。
【請求項2】
前記バッグが取り外し、取付け可能であることを特徴とする請求項1記載の粉末成形体用型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉末成形体の製造用型に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末成形体の製造方法として、コールド アイソスタッティック プレス粉末成形(以下:CIP)法と呼ばれる方法がある。
このCIP法では、粉末材料をゴムなどの軟質な変形抵抗の少ない成形バッグ内に密封し、製品に貫通孔を形成する必要がある場合には、ピンを挿入した後、液圧を加えることにより成形体表面に一様に液圧を掛けて圧縮成形する。
このCIP法において、貫通孔を成形体に形成する場合、孔形成用のピンが粉末体内の圧力の伝播を阻害し、均一な製品が得られない問題があった。
そのため、文献1に示すようにピンを弾性体で固定することにより圧力伝播の阻害を軽減する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-114139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したピンを弾性体で固定する構成の場合、ピンの数に限界があり、多数のピンを用いて、多数の貫通孔を形成するのは難しい問題があった。
本発明はこのような従来技術の欠点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の粉末成形体用型は、被成形粉末が充填される弾性を有する筒状のバッグと、該バッグ内に収納される孔形成用のピンと、該バッグの上端側に設けられ、前記ピンの上端を固定し、粉体充填可能な、上パンチと、該バッグの下端側に設けられ、前記ピンを固定する貫通孔を備えたピンホルダと、前記ピンホルダの貫通孔に貫入し、前記ピンを貫通孔から前記バッグ内に押し出して、ピンの固定を開放する、下パンチと、を備えたことを特徴とする。
前記バッグが取り外し、取付け可能である、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粉末成形体用型によれば、粉体充填後に上パンチを取り外すことによりバッグ内でピンが固定されない状態になるため、バッグ内での圧力伝播が円滑に行われる。そのため、均一な粉体成形が可能になり、多数の孔を持つL/Dの大きい高密度で高品質な成形体を提供可能になる。
また、多貫通部品の製作に多く用いられる押し出し成形に比較して、多品種少量製品への対応が可能になる。更にバッグを取り外して粉末充填を行うことにより、粉末の漏れなどが少なく、原料の節約が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の粉末成形体用型の一実施形態をCIP粉末成形機に装着した状態を示す概略図。
図2】本発明の一実施形態における、型から取り出した状態のバッグを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、CIP粉末成形機99の成形機バッグ98の中に型1が装着された状態を示している。従来技術では型1の型バッグ10の中に被成形粉末を直接充填していたが、本発明においては、型1の型バッグ10の中に更にバッグ2を設けて、バッグ2に被成形粉末を充填する構成になっている。
なおバッグ2はゴムなどの弾性を有する素材から構成されている。成形機バッグ98、型バッグ10も同様である。
【0009】
バッグ2は、型1の型バッグ10の下蓋11を取り外して、型バッグ10の下側から取り外し可能になっている。また、同様に型バッグ10の下側から取付け、下蓋11を装着してCIP粉末成形機99による成形が行えるように構成されている。
【0010】
図2に型バッグ10から取り外した状態のバッグ2を示す。
バッグ2は筒状をしており、その上端側に上パンチ3が装着されている。また、下端側に下パンチ4が装着されている。バッグ2の内部には孔形成用の必要数のピン9が収納されている。
【0011】
上パンチ3には、ピン固定穴30と粉末充填穴31が形成されており、ピン固定穴30によりピン9の上端を固定係止したまま、粉末充填穴31から粉体をバッグ2内に充填できるようになっている。
【0012】
下パンチ4は、ピンホルダ40とピン押しパンチ45とから構成されている。ピンホルダ40はバッグ2の下端に装着された蓋形状になっており、縦方向にピン9の数に相当する貫通孔41が形成されている。この貫通孔41にピン9の下端側を挿通してピン9を固定するようになっている。
【0013】
ピン押しパンチ45にはピン押し棒46が装着されている。ピン押し棒46は貫通孔41に対応する位置に設けられており、貫通孔41に貫入して、貫通孔41内のピン9を押し出すように構成されている。ピン押しパンチ45はピンホルダ40と密着して全体としてバッグ2の下側の蓋を形成するように構成されている。
【0014】
以上の構成において、最初にバッグ2を型1から取り外しておき、下パンチ4のピンホルダ40の貫通孔41にピン9を装着し、次に上パンチ3を装着してピン固定穴30にピン9の上端を固定する。
【0015】
そしてピン9の上端をピン固定穴30に固定した状態で、粉末充填穴31から被成形粉末をバッグ2内に充填する。
充填後、上パンチ3を取り外し、バング蓋5を装着する。
そして、ピン押しパンチ45を押し上げて、ピンホルダ40に密着させる。これにより、ピン押し棒46が貫通孔41に貫入し、ピン9の下端は貫通孔41から押し出され、ピン9はバッグ2内で充填された粉末中に、フリーな状態で保持される。
【0016】
ここで、ピン9が貫通孔41から完全に押し出されることが必要であり、ピン9の下端がピンホルダ40上面より0.1〜0.3mm上側にある事が望ましい。
なおピン押しパンチ45はこの実施形態では一体型になっているが、個々のピン9を押し上げるように分割された構造でも良い。
【0017】
粉体を充填したら、バッグ2を型1の型バッグ10の中に装着し下蓋11を装着して、CIP粉末成形機99による粉体成形を行う。ピン9はバッグ2の内部でフリーな状態になっているため、ピン9があっても、良好な成形が行える。
成形後に成形体からピン9を抜くと、成形体に多数の穴が開いた成形体が得られる。
【0018】
なお、ピン9の材質は、成形圧力と粉末の高密度化による粉末の変形に、十分に耐えることのできる硬度の高い金属、超鋼、セラミックで、表面が十分に磨かれていることが望ましい。
【符号の説明】
【0019】
1:型、2:バッグ、3:上パンチ、4:下パンチ、5:バング蓋、9:ピン、10:型バッグ、11:下蓋、30:ピン固定穴、31:粉末充填穴、40:ピンホルダ、41:貫通孔、45:ピン押しパンチ、46:ピン押し棒、98:成形機バッグ、99:CIP粉末成形機。
図1
図2