特許第6383219号(P6383219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383219電子写真用トナー、現像剤、トナーカートリッジ及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383219
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】電子写真用トナー、現像剤、トナーカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/09 20060101AFI20180820BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20180820BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   G03G9/09
   G03G9/087
   G03G9/087 331
   G03G9/08 391
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-168771(P2014-168771)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-45323(P2016-45323A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】占部 隆
【審査官】 小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−072944(JP,A)
【文献】 特開2013−068817(JP,A)
【文献】 特開2013−117697(JP,A)
【文献】 特開2013−190552(JP,A)
【文献】 特開2013−113995(JP,A)
【文献】 特開2012−032765(JP,A)
【文献】 特開2008−241845(JP,A)
【文献】 特開2005−043851(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0143151(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0244163(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0137030(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0318682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/09
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状の光輝性顔料と、前記光輝性顔料を被覆する被覆部とを有するトナー粒子を含む、電子写真用トナーであり、
前記被覆部が、バインダー樹脂を含み、
前記光輝性顔料が、金属酸化物で被覆された雲母であり、
前記金属酸化物が、酸化チタンと、酸化鉄と、酸化スズとを含み、
エネルギー分散型X線分光法により測定される前記光輝性顔料の露出面積が、前記トナー粒子の表面積に対し、20%以下である電子写真用トナー。
【請求項2】
前記バインダー樹脂の抵抗率が、1.0×1010(Ω・cm)以上である、請求項1記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電子写真用トナーを含む現像剤。
【請求項4】
請求項1又は2記載の電子写真用トナーが収容されたトナーカートリッジ。
【請求項5】
請求項1又は2記載の電子写真用トナーが収容された画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子写真用トナー、現像剤、トナーカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の印刷物に対する要求が多様化している。その中、従来のYMCKのトナー以外に、より高付加価値を与える高機能なトナーが求められている。例えば、金属光沢又はパール光沢を発現する光輝性顔料を着色剤として含有するトナーが挙げられる。
光輝性顔料は、一様に粒径が大きく、その粒径は約1〜500μmである。加えて、光輝性顔料は、光が複雑に反射する平板な反射面を有する。光輝性顔料においては、粒径が大きいほど、前記の反射面が多くなり、金属光沢又はパール光沢が強く得られる。一方、光輝性顔料の粒径が小さい場合には、金属光沢又はパール光沢が得られにくい。
光輝性顔料を用いた場合、前記の反射面に入射した光の複雑な反射光を視覚で認識することで、鮮やかな光沢感が得られる。このため、光輝性顔料の反射面を、画像面と平行に配向させる必要がある。
例えばパール光沢を発現する光輝性顔料としては、ベース部が金属酸化物(酸化チタン又は酸化鉄など)で被覆されたものが挙げられる。ベース部には、化学的に安定性が高く、耐熱性の良好な雲母などが用いられている。ベース部の表面がベース部とは屈折率の異なる金属酸化物で被覆されることによって、パール光沢が発現される。
【0003】
しかし、光輝性顔料を含有するトナーを用いた現像剤は、充分な帯電量が得られない、又は、環境の影響を受けやすい。このため、現像特性又は転写特性が悪くなる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−256613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、帯電特性(帯電量及びその安定化)を高め、良好な画像を得ることができる電子写真用トナー、現像剤、トナーカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電子写真用トナーは、薄片状の光輝性顔料がバインダー樹脂で被覆されたトナー粒子を持つ。前記トナー粒子の表面積に対する前記光輝性顔料の露出面積は、20%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の画像形成装置を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の電子写真用トナーについて詳細に説明する。
実施形態の電子写真用トナー(以下単に「トナー」ともいう。)は、薄片状の光輝性顔料がバインダー樹脂で被覆されたトナー粒子を含む。
【0009】
以下、トナー粒子の構成について説明する。
トナー粒子は、薄片状の光輝性顔料がバインダー樹脂で被覆されたものである。
【0010】
光輝性顔料には、薄片状の粒子群が用いられる。光輝性顔料の粒子が薄片状であることで、光輝性顔料は、金属光沢又はパール光沢を発現しやすくなる。
光輝性顔料のアスペクト比(粒子の長辺と厚さとの比率)は、3以上が好ましく、10〜200がより好ましい。光輝性顔料のアスペクト比が、前記の好ましい下限値以上であれば、光輝性顔料は、金属光沢又はパール光沢をより発現しやすくなる。一方、前記の好ましい上限値以下であれば、光輝性顔料全体がバインダー樹脂で充分に被覆されやすくなる。
光輝性顔料の体積平均粒径は、5μm以上が好ましく、8〜20μmがより好ましい。光輝性顔料の体積平均粒径が、前記の好ましい下限値以上であれば、顔料の光輝性がより高められる。
本明細書において、粒子群の体積平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いることにより測定が可能である。
【0011】
光輝性顔料としては、光輝性を有する顔料であれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、黄銅、青銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛などの金属粉末;金属酸化物で被覆された薄片状無機結晶基質;単結晶板状酸化チタン;塩基性炭酸塩;酸オキシ塩化ビスマス;天然グアニン;薄片状ガラス粉;金属蒸着された薄片状ガラス粉等が挙げられる。
前記の薄片状無機結晶基質としては、例えば雲母、硫酸バリウム、層状ケイ酸塩、層状アルミニウムのケイ酸塩等が挙げられる。前記の薄片状無機結晶基質における金属酸化物としては、例えば酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
これらの中でも、光輝性顔料としては、顔料の光輝性がより高いことから、金属酸化物で被覆された薄片状無機結晶基質、金属粉末が好ましく、金属酸化物で被覆された薄片状無機結晶基質がより好ましい。
【0012】
光輝性顔料には、例えば金属酸化物で被覆された雲母顔料として、エカルト社(ECKART)製のROTOSAFE 700シリーズ、ROTOFLEX XAシリーズ、LITHOFLEX XAシリーズ、STAPA 3000シリーズ、STAPA 2000シリーズ、LITHOFLEX ST01510、STANDART4000シリーズ、STANDART 3000シリーズ;メルク社(MERCK)製のMERCK IRIODIN 100シリーズ、IRIODIN 200シリーズ、IRIODIN 300シリーズ、IRIODIN 500シリーズ;XIRALLICシリーズ、COLORSTREAMシリーズ、MIRAVALシリーズ等が用いられる。
また、光輝性顔料には、例えばアルミフレークを用いた顔料として、シルバーライン社(SILBERLINE)製のDF−1667、DF−2750、DF−3500、DF−3622、DF−554、DF−L−520AR;LED−1708AR、LED−2314AR;SILBERCOTE PC 0452Z、SILBERCOTE PC 1291X、SILBERCOTE PC 3331X、SILBERCOTE PC 4352Z、SILBERCOTE PC 4852X、SILBERCOTE PC 6222X、SILBERCOTE PC 6352Z、SILBERCOTE PC 6802X、SILBERCOTE PC 8152Z、SILBERCOTE PC 8153X、SILBERCOTE PC 8602X;SILVET/SILVEX 890シリーズ、SILVET/SILVEX950シリーズ等が用いられる。
また、光輝性顔料の配合には、例えば、アルミニウム粉末を含有する原料(東洋アルミニウム株式会社製のアルペースト1200M等)が用いられる。
【0013】
光輝性顔料は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。
トナー粒子中の光輝性顔料の含有量は、トナー粒子の総量に対して5〜40質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。
光輝性顔料の含有量が、前記の好ましい下限値未満では、金属光沢又はパール光沢が得られにくい。一方、前記の好ましい上限値を超えると、定着性又は画像の堅牢性が悪化しやすい。
【0014】
トナー粒子に用いられるバインダー樹脂は、例えば抵抗率(電気抵抗率)1.0×1010(Ω・cm)以上のものが好ましく、抵抗率1.0×1010〜1.0×1012(Ω・cm)のものがより好ましい。バインダー樹脂の抵抗率が、前記の好ましい下限値以上であれば、環境に因らず、充分な帯電量を有する現像剤を調製しやすい。一方、前記の好ましい上限値以下であれば、定着性が高められる。
本明細書において、抵抗率(電気抵抗率)は、LCRメータ(例えば、安藤電気製のAG−4311等)により測定が可能である。
【0015】
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3000〜1000000が好ましく、5000〜600000がより好ましい。
バインダー樹脂のMwが前記の好ましい下限値未満では、トナーの耐熱保存性が低下しやすい。バインダー樹脂のMwが大きくなるのに伴い、定着温度が高くなる。このため、バインダー樹脂のMwが前記の好ましい上限値を超えることは、定着処理が高い温度条件になる等の点から好ましくない。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の値を示すものとする。
【0016】
バインダー樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、低温定着性に優れていることから、ポリエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル樹脂の中でも、ガラス転移温度が45〜70℃のものが好ましく、50〜65℃のものがより好ましい。樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定により測定が可能である。
ポリエステル樹脂の中でも、酸価が5〜30のものが好ましく、5〜20のものがより好ましい。
前記ポリエステル樹脂には、例えば、2価以上のアルコール成分と2価以上のカルボン酸成分との縮合重合物を用いることができる(特開平7−175260号公報を参照)。
【0017】
2価のアルコール成分としては、例えばポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
これらの中でも、2価のアルコール成分としては、ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2又は3)オキシド付加物(平均付加モル数1〜10)、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAが好ましい。
【0018】
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、3価以上のアルコール成分としては、ソルビトール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパンが好ましい。
2価以上のアルコール成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。
【0019】
2価以上のカルボン酸成分としては、例えばカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等が挙げられる。
2価のカルボン酸成分としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、N−ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、N−ドデシルコハク酸等のアルキルコハク酸、又はこれらの酸無水物、もしくはアルキルエステル等が挙げられる。これらの中でも、2価のカルボン酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、アルケニルコハク酸(好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基を有するコハク酸)が好ましい。
【0020】
3価以上のカルボン酸成分としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、又はこれらの酸無水物、もしくはアルキルエステル等が挙げられる。これらの中でも、3価以上のカルボン酸成分としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、又はその酸無水物、もしくはアルキル(好ましくは炭素数1〜12のアルキル)エステルが好ましい。
2価以上のカルボン酸成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。
【0021】
ポリエステル樹脂には、結晶性ポリエステルを用いてもよい。結晶性ポリエステルとしては、例えばジオールとジカルボン酸との縮合重合物が挙げられる。
ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、T−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
上記の2価以上のアルコール成分と2価以上のカルボン酸成分との縮合重合の際には、反応を促進させるため、エステル化触媒が用いられる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫等が挙げられる。
【0023】
バインダー樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。
トナー粒子中のバインダー樹脂の含有量は、トナー粒子の総量に対して50〜95質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、65〜90質量%がさらに好ましい。
バインダー樹脂の含有量が、前記の好ましい下限値未満では、定着性、画像の堅牢性が確保されにくい。一方、前記の好ましい上限値を超えると、定着性、光輝性が確保されにくく、また、トナー飛散が生じやすくなる。
【0024】
トナー粒子は、薄片状の光輝性顔料及びバインダー樹脂以外に、必要に応じて、その他の成分(任意成分)を含有してもよい。前記の任意成分としては、例えば、光輝性顔料以外の着色剤、ワックス、帯電制御剤、界面活性剤、塩基性化合物、凝集剤等が挙げられる。
【0025】
トナー粒子は、画像の色合いを調整するため、光輝性顔料以外の着色剤を含有してもよい。
光輝性顔料以外の着色剤としては、例えばカーボンブラック、有機又は無機の顔染料等が挙げられる。
カーボンブラックとしては、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
顔染料としては、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料が挙げられ、例えばファーストイエローG、ベンジジンイエロー、インドファストオレンジ、イルガジンレッド、ナフトールアゾ、カーミンFB、パーマネントボルドーFRR、ピグメントオレンジR、リソールレッド2G、レーキレッドC、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーンB、フタロシアニングリーン、キナクリドン等を用いることができる。
光輝性顔料以外の着色剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。
【0026】
好ましいイエロー顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、81、83、93、95、97、98、109、117、120、137、138、139、147、151、154、167、173、180、181、183、185;C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。イエロー顔料は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
好ましいマゼンタ顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、150、163、184、185、202、206、207、209、238;C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。マゼンタ顔料は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
好ましいシアン顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17;C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45等が挙げられる。シアン顔料は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
トナー粒子は、定着性等の向上を図る観点から、ワックスを含有することが好ましい。
ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又はこれらのブロック共重合体;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、ライスワックス等の植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタム等の鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステルの一部又は全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、又は更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類等の飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、又は更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール等の飽和アルコール;ソルビトール等の多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N、N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N、N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類;M−キシレンビスステアリン酸アミド、N、N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩(一般に金属石けんと言われているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンもしくはアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル化物、植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
上記の中でも、ワックスとしては、定着性がより高められることから、脂肪族炭化水素系ワックスが好ましい。
【0028】
ワックスは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。
トナー粒子中のワックスの含有量は、トナー粒子の総量に対して2〜20質量%が好ましく、4〜12質量%がより好ましい。
ワックスの含有量が、前記の好ましい下限値未満では、オフセット性が不足し、定着性が確保されにくくなる。一方、前記の好ましい上限値を超えると、フィルミングが発生しやすくなる。
【0029】
トナー粒子は、摩擦帯電電荷量を制御するため、帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては、例えば含金属アゾ化合物、含金属サリチル酸誘導体化合物が挙げられる。
含金属アゾ化合物に含まれる好ましい金属としては、例えば金属元素が鉄、コバルトもしくはクロムの錯体、又は錯塩、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
含金属サリチル酸誘導体化合物に含まれる好ましい金属としては、例えば金属元素がジルコニウム、亜鉛、クロムもしくはボロンの錯体、又は錯塩、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
トナー粒子は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、主に、トナー粒子を製造する際、分散剤として作用する。界面活性剤としては、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、石鹸、カルボン酸塩等のアニオン性界面活性剤;アミン塩、4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物系、又は多価アルコール系等のノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
トナー粒子は、塩基性化合物を含有してもよい。塩基性化合物は、主に、トナーを製造する際、分散助剤として作用する。塩基性化合物としては、アミン化合物等が挙げられる。アミン化合物としては、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン,イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン等が挙げられる。
【0031】
トナー粒子は、凝集剤を含有してもよい。凝集剤は、主に、トナー粒子を製造する際、光輝性顔料とバインダー樹脂との凝集、又は、光輝性顔料とバインダー樹脂とワックスとの凝集を促進するために任意に用いられる。凝集剤としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム等の金属塩;、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等の非金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;ポリメタアクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、アクリルアミドアクリル酸ソーダ共重合体等の高分子凝集剤;ポリアミン、ポリジアリルアンモニウムハライド、ポリジアリルジアルキルアンモニウムハライド、メラニンホルムアルデヒド縮合物、ジシアンジアミド等の凝結剤;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のアルコール類;アセトニトリル、1,4−ジオキサン等の有機溶剤;塩酸、硝酸等の無機酸;蟻酸、酢酸等の有機酸などが挙げられる。これらの中でも、凝集の促進効果が高いことから、非金属塩が好ましく、硫酸アンモニウムがより好ましい。
【0032】
実施形態の電子写真用トナーは、トナー粒子に加えて、外添剤を含んでもよい。
外添剤には、トナーへの流動性の付与、又は帯電性の調整等のために、無機微粒子を用いることができる。前記無機微粒子を構成する無機物としては、例えばシリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化錫等が挙げられる。前記無機微粒子は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。
外添剤としては、環境安定性向上の観点から、疎水化剤によって前記無機微粒子が表面処理されたものを用いることが好ましい。また、外添剤には、クリーニング性向上のために、粒径が1μm以下の樹脂微粒子を用いることができる。前記樹脂微粒子を構成する樹脂としては、例えばスチレンアクリル酸共重合体、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等が挙げられる。
電子写真用トナーにおける外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.01〜10質量部程度が好ましい。
【0033】
以下、実施形態の電子写真用トナーの特性について説明する。
実施形態のトナーにおけるトナー粒子は、上述の薄片状の光輝性顔料がバインダー樹脂で被覆されたものである。加えて、トナー粒子の表面積に対する前記光輝性顔料の露出面積が、20%以下であり、好ましくは10%以下、より好ましくは0〜5%である。前記光輝性顔料の露出面積が前記の上限値以下であれば、帯電特性(帯電量及びその安定化)が高められ、良好な画像を得ることができる。
【0034】
トナー粒子の表面積に対する光輝性顔料の露出面積は、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)によって、トナー粒子表面の元素分析を行うことで確認できる。
例えば、光輝性顔料が金属粉末であれば、その金属元素を検出対象として、EDX分析が行われる。また、光輝性顔料が金属酸化物で被覆された薄片状無機結晶基質であれば、金属酸化物の金属元素を検出対象として、EDX分析が行われる。
【0035】
実施形態のトナーが外添剤を含む場合、トナー粒子表面に付着している外添剤を除去してEDX分析を行う。この場合においても、実施形態のトナーでは、外添剤が除去されたトナーの表面積に対する、検出対象の金属が検出される範囲の面積が20%以下である。
【0036】
トナー粒子表面に付着している外添剤は、例えば以下のようにして除去できる。
まず、トナーと界面活性剤とを混合してトナー分散液を調製する(分散工程)。次いで、トナー分散液に対して超音波処理を施す(衝撃工程)。次いで、超音波処理後のトナー分散液に対して、遠心分離の操作を行う。この後、デカンテーション等の固液分離操作を行う(分離工程)。次いで、得られた固形物を洗浄し(洗浄工程)、その後、乾燥する(乾燥工程)。
【0037】
実施形態のトナーの抵抗率(電気抵抗率)は、好ましくは1.0×1010(Ω・cm)以上であり、より好ましくは3.0×1010〜1.0×1012(Ω・cm)程度である。トナーの抵抗率が、前記の好ましい下限値以上であれば、現像特性又は転写特性がより向上する。また、環境の影響を受けにくく、帯電量の安定化が図られやすい。
実施形態のトナーの帯電量は、好ましくは10〜40(C/kg)程度であり、より好ましくは15〜35(C/kg)程度である。トナーの帯電量が、前記の好ましい下限値以上であれば、良好な画像が得られやすくなる。一方、前記の好ましい上限値以下であれば、トナーの飛散が生じにくくなる。
実施形態のトナーの体積平均粒径は、好ましくは5〜30μm程度であり、より好ましくは8〜25μm程度である。トナーの体積平均粒径が、前記の好ましい下限値以上であれば、光輝性がより高められる。一方、前記の好ましい上限値以下であれば、現像、転写の制御が容易となる。
【0038】
以上説明した実施形態の電子写真用トナーは、トナー粒子の表面積に対する光輝性顔料の露出面積が20%以下である。このように、前記トナーは、光輝性顔料の露出が少なく、バインダー樹脂で充分に被覆されていることで、充分な帯電量を有する。加えて、前記トナーにおいては、環境の影響を受けにくく、帯電量の安定化が図られる。このため、前記トナーによれば、良好な画像を得ることができる。
【0039】
以下、実施形態の電子写真用トナーの製造方法について説明する。
実施形態の電子写真用トナーの製造方法は、特に制限はないが、光輝性の発現しやすさの点から、光輝性顔料が破砕されにくいケミカル製法が粉砕製法に比べて好ましい。
ケミカル製法の中でも、低温定着が可能なポリエステル樹脂を使用できるケミカル製法が特に好ましい。かかるトナーの製造方法としては、例えば、凝集工程、融着工程、洗浄工程、乾燥工程及び外添工程を有する製造方法が挙げられる。
【0040】
前記凝集工程では、例えば、水系溶媒中で、光輝性顔料の粒子群と、バインダー樹脂の樹脂分散液と、を混合する。これにより、光輝性顔料粒子と樹脂微粒子とがヘテロ凝集して、光輝性顔料粒子表面が樹脂微粒子で被覆された凝集体が得られる。なお、本明細書において、ヘテロ凝集とは、光輝性顔料粒子の表面に樹脂微粒子が付着することを意味する。
光輝性顔料粒子と樹脂微粒子との配合比率は、樹脂微粒子/光輝性顔料粒子で表される質量比で、1以上が好ましく、2〜20がより好ましい。かかる質量比が、前記の好ましい下限値以上であると、光輝性顔料粒子の表面全体が樹脂微粒子で充分に被覆されやすくなる。すなわち、トナー粒子の表面積に対する光輝性顔料の露出面積を20%以下に容易に制御できる。一方、前記の好ましい上限値以下であると、定着性、光輝性が確保されやすくなる。
光輝性顔料の粒子群と樹脂分散液とを混合する際、ワックス、凝集剤、帯電制御剤等を添加してもよい。
光輝性顔料の粒子群と樹脂分散液とを混合した後、得られる混合液と、バインダー樹脂の樹脂分散液と、を混合してもよい。これにより、光輝性顔料粒子の表面が樹脂微粒子で充分に被覆される。
【0041】
前記融着工程では、上述の凝集工程で得られた凝集体を加熱処理する。これにより、凝集体を構成する光輝性顔料粒子と樹脂微粒子とが融着して融着粒子が得られる。融着工程の操作は、上述の凝集工程の操作と同時に行われてもよい。
凝集体の加熱温度は、光輝性顔料及びバインダー樹脂の種類、融解温度等を勘案して決定される。かかる凝集体の加熱温度を調節することにより、トナー粒子の表面積に対する光輝性顔料の露出面積を20%以下に容易に制御できる。凝集体の加熱時間は、2〜10時間程度が好ましい。
【0042】
前記洗浄工程は、公知の洗浄方法により適宜行われる。例えば、前記洗浄工程は、水による洗浄とろ過とを繰り返すことにより行われる。前記洗浄工程は、ろ液の導電率が例えば50μS/cm以下になるまで繰り返されることが好ましい。
前記乾燥工程は、上述の洗浄工程後の融着粒子を乾燥させる工程である。乾燥工程は、公知の乾燥方法により適宜行われる。
前記外添工程では、上述の乾燥工程後の融着粒子群と外添剤とが混合され、目的とするトナーが得られる。
【0043】
外添工程の後、篩い分け処理を行ってもよい。これにより、粗粒子又は異物などが除去される。篩い分け処理に用い得る装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業株式会社製)、ジャイロシフター(株式会社徳寿工作所製)、バイブラソニックシステム(株式会社ダルトン製)、ソニクリーン(新東工業株式会社製)、ターボスクリーナー(ターボ工業株式会社製)、ミクロシフター(槙野産業株式会社製)、円形振動篩い等が挙げられる。
【0044】
トナーを製造する際に用い得る混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(株式会社カワタ製)、リボコーン(株式会社大川原製作所製)、ナウターミキサー(ホソカワミクロン株式会社製)、タービュライザー(ホソカワミクロン株式会社製)、サイクロミックス(ホソカワミクロン株式会社製)、スパイラルピンミキサー(太平洋機工株式会社製)、レーディゲミキサー(株式会社マツボー製)等が挙げられる。
【0045】
以下、実施形態の現像剤を説明する。
実施形態の現像剤は、上述の実施形態の電子写真用トナーを含む。
前記現像剤は、非磁性の一成分系現像剤、又は二成分系現像剤に好適に用いられる。実施形態の電子写真用トナーが二成分系現像剤に用いられる場合、使用できるキャリアは、特に制限されず、当業者が適宜選択することができる。
【0046】
前記の現像剤は、スチレン/アクリル共重合体、ポリアクリル酸重合体、メラミン重合体等の樹脂微粒子群を含有してもよい。現像剤が含有してもよい樹脂微粒子群としては、綜研化学株式会社製の樹脂微粒子であるMP−300(平均粒径0.10μM)、MP−1451(平均粒径0.15μM)、MP−2200(平均粒径0.35μM)、MP−1000(平均粒径0.40μM)、MP−2701(平均粒径0.40μM)、MP−5000(平均粒径0.40μM)、MP−5500(平均粒径0.40μM)、MP−4009(平均粒径0.60μM);日本ペイント株式会社製の樹脂微粒子であるP2000(平均粒径0.48μM);株式会社日本触媒製の樹脂微粒子であるエポスターS(平均粒径0.20μM)、エポスターFS(平均粒径0.20μM)、エポスターS6(平均粒径0.40μM)等が挙げられる。これらの中でも、前記樹脂微粒子群としては、トナーとキャリアとの粒径、帯電特性及び機械的強度の点から、MP−2200、MP−1000が特に好ましい。前記樹脂微粒子群は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。現像剤中の樹脂微粒子群の含有量は、トナー100質量部に対して0.01〜0.36質量部程度である。
【0047】
実施形態の現像剤は、例えば、MFP(Multi Function Peripheral)等の画像形成装置に収容されて、電子写真方式の記録媒体への画像形成に使用できる。実施形態の現像剤によれば、光輝性が高く、良好な画像を安定に得ることができる。
【0048】
以下、実施形態のトナーカートリッジを説明する。
実施形態のトナーカートリッジは、上述の実施形態の電子写真用トナーが容器に収容されてなる。前記容器には、公知のものが使用可能である。
実施形態のトナーカートリッジを画像形成装置に用いることにより、光輝性が高く、良好な画像を安定に得ることができる。
【0049】
以下、実施形態の画像形成装置を、図面を参照して説明する。
実施形態の画像形成装置は、上述の実施形態の電子写真用トナーが装置本体に収容されてなる。前記装置本体には、一般的な電子写真装置が使用可能である。
【0050】
図1は、第1の実施形態の画像形成装置の概略構造を示す図である。
画像形成装置20は、中間転写ベルト7と、中間転写ベルト7上に順に設けられた第1の画像形成ユニット17Aと、第2の画像形成ユニット17Bと、その下流に設けられた定着装置21とを備えた装置本体を有する。中間転写ベルト7の移動方向に沿って、すなわち、画像形成プロセスの進行方向に沿って、第1の画像形成ユニット17Aは、第2の画像形成ユニット17Bの下流に設けられている。定着装置21は、第1の画像形成ユニット17Aの下流に設けられている。
第1の画像形成ユニット17Aは、感光体ドラム1aと、感光体ドラム1a上に順に設けられた、クリーニング装置16a、帯電装置2a、露光装置3a、第1の現像器4a、及び中間転写ベルト7を介して感光体ドラム1aと対面するように設けられた一次転写ローラ8aとを有する。
第2の画像形成ユニット17Bは、感光体ドラム1bと、感光体ドラム1b上に順に設けられた、クリーニング装置16b、帯電装置2b、露光装置3b、第2の現像器4b、及び中間転写ベルト7を介して感光体ドラム1bと対面するように設けられた一次転写ローラ8bとを有する。
第1の現像器4a内、及び第2の現像器4b内には、上述の実施形態の電子写真用トナーを含有する現像剤が収容されている。このトナーは、図示しないトナーカートリッジから供給される形態としてもよい。
一次転写ローラ8aには、一次転写電源14aが接続されている。一次転写ローラ8bには、一次転写電源14bが接続されている。
第1の画像形成ユニット17Aの下流には、二次転写ローラ9とバックアップローラ10とが中間転写ベルト7を介して対向するように配置されている。二次転写ローラ9には、二次転写電源15が接続されている。
定着装置21は、互いに対向するように配置されたヒートローラ11とプレスローラ12とを有する。
【0051】
画像形成装置20を用いて、例えば以下のようにして画像形成を行うことができる。
まず、帯電装置2bにより、感光体ドラム1bを一様に帯電させる。次に、露光装置3bにより、露光を行い、静電潜像を形成する。次に、現像器4bから供給されるトナーにて現像を行い、第2のトナー像を得る。
続いて、帯電装置2aにより、感光体ドラム1aを一様に帯電させる。次に、露光装置3aにより、第1の画像情報(第2のトナー像)に基づいて露光を行い、静電潜像を形成する。次に、現像器4aから供給されるトナーにて現像を行い、第1のトナー像を得る。
第2のトナー像、第1のトナー像をこの順に、一次転写ローラ8a、8bを用いて中間転写ベルト7上に転写する。
中間転写ベルト7上に第2のトナー像、第1のトナー像の順に積層された像を二次転写ローラ9とバックアップローラ10とを介して、図示しない記録媒体上に二次転写する。これにより、記録媒体上に第1のトナー像、第2のトナー像の順に積層された画像が形成される。
現像器4a及び現像器4b内のトナーに用いられる光輝性顔料の種類は、任意に選択される。図1に示される画像形成装置20は、2つの現像器を有しているが、用いるトナーの種類により3つ以上の現像器を有してもよい。
【0052】
図1の画像形成装置20は、トナー像を定着させる形態であるが、実施形態の画像形成装置は、この形態に限定されず、インクジェット式の形態であってもよい。
実施形態の画像形成装置によれば、光輝性が高く、良好な画像を安定に形成することができる。
【0053】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、光輝性顔料の露出面積が20%以下であるトナー粒子を持つことにより、充分な帯電量を有し、環境の影響を受けにくい。このため、実施形態のトナーを用いた場合、現像特性及び転写特性が高められ、良好な画像が得られる。
【実施例】
【0054】
以下の実施例は、本実施形態の実施形態の一例を説明したものである。しかし、本実施形態は、本実施例に限定して解釈されない。
【0055】
(実施例1)
以下、樹脂分散液の調製について説明する。
バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂(花王株式会社製、ガラス転移温度62℃、酸価20、樹脂抵抗率3.2×1010(Ω・cm))を用いた。
前記バインダー樹脂20質量部と、分散剤としてアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックスG−65)1.5質量部と、アミン化合物(和光純薬工業株式会社製、ジメチルアミノエタノール)0.5質量部と、イオン交換水78質量部と、をクレアミックス(エム・テクニック株式会社製、CLM−2.2S)に投入した。
次いで、加熱して温度が90℃に到達した後、クレアミックスの回転数を18000rpmに設定して30分間撹拌した。この後、冷却して樹脂分散液を得た。
得られた樹脂分散液に分散している樹脂微粒子の体積平均粒径を、SALD7000(株式会社島津製作所製)にて測定した。この結果、樹脂微粒子の体積平均粒径は135nmであった。
【0056】
以下、ワックス分散液の調製について説明する。
ワックスとして、パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製、HNP−9)を用いた。
前記ワックス20質量部と、分散剤としてアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックスG−65)1.0質量部と、イオン交換水79質量部と、を混合し、加熱しながらホモジナイザー(IKA社製)にて10分間処理してワックス分散液を得た。
得られたワックス分散液に分散しているワックス微粒子の体積平均粒径は354nmであった。
【0057】
以下、トナーの製造について説明する。
凝集工程:
光輝性顔料として、金属酸化物(酸化チタン、酸化鉄及び酸化スズ)で被覆された薄片状雲母(メルク社製、IRIODIN323;アスペクト比65、体積平均粒径9μm)を用いた。
前記光輝性顔料(金属酸化物で被覆された薄片状雲母)15質量部と、上記樹脂分散液200質量部と、上記ワックス分散液20質量部と、イオン交換水250質量部と、を1000mLセパラブルフラスコに投入し、これらの混合液を得た。
前記混合液の温度を30℃に保ちながら、フルゾーン翼にて30分間撹拌した。その際の回転数を200rpmに設定した。
この後、10質量%硫酸アンモニウム水溶液300質量部を、120分間かけて滴下した。前記の硫酸アンモニウム水溶液の滴下が終了した後、60分間撹拌した。
融着工程:
次いで、60℃まで3時間かけて昇温し、更に、70℃まで2時間かけて昇温して1時間保持した。この後、室温まで冷却して、体積平均粒径18μmの鱗片状の融着粒子群を得た。
洗浄工程:
得られた鱗片状の融着粒子群を、ブフナー漏斗にて、洗浄ろ液の導電率が3μS/cm以下になるまで水で洗浄した。
乾燥工程:
この後、乾燥してトナー粒子を得た。トナー粒子の組成比は、光輝性顔料25.4質量%、バインダー樹脂67.8質量%、ワックス6.8質量%であった。
外添工程:
得られたトナー粒子と、前記トナー粒子100質量部に対してシリカ(日本アエロジル株式会社製、RX200)1質量部と、を混合してトナーを得た。
【0058】
(実施例2〜6、比較例1)
表1に示すように抵抗率の異なるバインダー樹脂(ポリエステル樹脂)を用いて、実施例1における樹脂分散液の調製方法と同様にして、各例で用いる樹脂分散液を調製した。
そして、樹脂分散液を変更した以外は、実施例1におけるトナーの製造と同様にして、各例のトナーをそれぞれ得た。
【0059】
以下、トナー粒子の表面積に対する光輝性顔料の露出面積について説明する。
上記の乾燥工程後のトナー粒子について、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用い、トナー粒子表面の元素マッピングを行った。そして、トナー粒子表面においてチタンと鉄とスズとが検出される範囲の全面積を測定した。この測定結果より、トナー粒子の表面積に対する光輝性顔料の露出面積を求めた。
【0060】
以下、トナーの帯電特性(帯電量及びその安定化)の評価について説明する。
低温低湿(温度10℃、相対湿度20%)の環境下、各例のトナーと、ストレートシリコーンで被覆されたフェライト系キャリアと、を混合して現像剤をそれぞれ調製した。調製された現像剤におけるトナーの帯電量を、吸引式ブローオフ法により測定した。
次いで、この現像剤を、高温高湿(温度30℃、相対湿度85%)の雰囲気に48時間静置した。その後、現像剤におけるトナーの帯電量を、吸引式ブローオフ法により測定した。
前記の低温低湿での帯電量(Q)と、高温高湿での帯電量(Q)と、の差(Q−Q)が20(C/kg)未満であれば、環境の影響を受けにくく、良好な画像を得ることができる。前記の差(Q−Q)が18(C/kg)以下であれば、環境の影響をより受けにくく、さらに良好な画像を得ることができる。
【0061】
表1に、各例のトナーにおけるバインダー樹脂の抵抗率、トナー粒子の組成、トナー粒子の表面積に対する光輝性顔料の露出面積、及びトナーの帯電量をそれぞれ示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示す結果から、実施例1〜6のトナーは、比較例1のトナーに比べて、環境による帯電量の変化が小さいことが確認できる。このことより、実施形態のトナーによれば、帯電量の安定化が図れ、良好な画像を得られることが分かる。
【0064】
(実施例7)
実施例1における凝集工程、融着工程、洗浄工程及び乾燥工程と同様にしてトナー粒子を得た。
外添工程:
得られたトナー粒子と、前記トナー粒子100質量部に対してシリカ(日本アエロジル株式会社製、RX200)1質量部と、酸化チタン(日本アエロジル株式会社製、NKT90)0.5質量部と、を混合してトナーを得た。
【0065】
得られたトナーについて、EDXを用い、トナー粒子表面の元素マッピングを行った。そして、トナー粒子表面においてチタンと鉄とスズとが検出される範囲の全面積を測定したところ、トナー粒子の表面積に対して98%であった。この結果より、外添された酸化チタンがトナー粒子の表面全体に露出していること、が確認された。
また、前記トナーについて、上記の帯電特性(帯電量及びその安定化)の評価と同様にして帯電量を測定した。この結果、低温低湿での帯電量(Q)は19(C/kg)、高温高湿での帯電量(Q)は12(C/kg)、両者の差(Q−Q)は7(C/kg)であった。
【0066】
次に、下記の工程(分散工程、衝撃工程、分離工程、洗浄工程、乾燥工程)の操作をさらに行い、トナー粒子表面に付着している外添剤を除去した。
【0067】
分散工程:
100mLビーカーに、トナー5.5質量部と、イオン交換水28.4質量部と、界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックスG−65)6.4質量部と、を加えた。次いで、マグネチックスターラーを用い、トナーの分離が認められなくなるまで撹拌を行い、分散液を得た。
【0068】
衝撃工程:
超音波洗浄機(ASONE US−1R)を用いて、前記分散工程で得られた分散液に音波を10分間与え続けた。
【0069】
分離工程:
下記手順1)〜4)の操作を行った。
手順1)前記衝撃工程後の分散液35mLを、遠心管に注ぎ込み、全体が45mLになるようにイオン交換水を加えて撹拌する。
手順2)前記遠心管に対し、遠心分離器(HSIANGTAI CN−2060)を用いて、1000 rpmで15分間の遠心分離を行う。
手順3)手順2)の後、遠心管の上澄み液をデカンテーションで除き、全体が45mLになるようにイオン交換水を加えて撹拌する。
手順4)前記の手順2)、手順3)、手順2)をこの順にさらに行い、最後の手順2)の後、遠心管の上澄み液をデカンテーションで除去し、固形物を得る。
【0070】
洗浄工程:
前記分離工程で得られた固形物と、イオン交換水100 mLと、を混合した後、濾過を行った。濾紙には、ADVANTEC GC90を用いた。
【0071】
乾燥工程:
前記洗浄工程での濾過によって分離した固形物を8時間真空乾燥し、外添剤が除去されたトナー(以下「外添剤除去トナー」という。)を得た。
【0072】
得られた外添剤除去トナーについて、EDXを用い、外添剤除去トナー粒子表面の元素マッピングを行った。そして、外添剤除去トナー粒子表面においてチタンと鉄とスズとが検出される範囲の全面積を測定した。この測定結果より、外添剤除去トナー粒子の表面積に対する、チタンと鉄とスズとが検出される範囲の全面積の割合を求めたところ、13.4%であった。
【0073】
(実施例8)
アルミニウム粉末が溶剤(分散媒)に分散したアルペースト1200M(東洋アルミニウム株式会社製)を用い、以下のようにしてトナーを製造した。
まず、アルペースト1200Mから、ブフナー漏斗にて分散媒を分離除去した。次いで、残渣の固形物を、固形物重量の300倍のイオン交換水にて水洗した。この後、乾燥して薄片状のアルミニウムフレーク(アスペクト比120、体積平均粒径10μm)を得た。
前記の薄片状のアルミニウムフレークを光輝性顔料として用いた以外は、実施例1における凝集工程、融着工程、洗浄工程及び乾燥工程と同様にしてトナー粒子を得た。
外添工程:
得られたトナー粒子と、前記トナー粒子100質量部に対してシリカ(日本アエロジル株式会社製、RX200)1質量部と、を混合してトナーを得た。
【0074】
得られたトナーについて、EDXを用い、トナー粒子表面の元素マッピングを行った。そして、トナー粒子表面においてAlが検出される範囲の面積を測定し、トナー粒子の表面積に対する光輝性顔料の露出面積を求めたところ、6.6%であった。
また、前記トナーについて、上記の帯電特性(帯電量及びその安定化)の評価と同様にして帯電量を測定した。この結果、低温低湿での帯電量(Q)は27(C/kg)、高温高湿での帯電量(Q)は17(C/kg)、両者の差(Q−Q)は10(C/kg)であった。
この結果から、実施例8のトナーによれば、帯電特性(帯電量及びその安定化)が高く、良好な画像を得られることが分かる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
1a…感光体ドラム、2a…帯電装置、3a…露光装置、4a…第1の現像器、7…中間転写ベルト、8a…一次転写ローラ、9…二次転写ローラ、10…バックアップローラ、11…ヒートローラ、12…プレスローラ、14a…一次転写電源、15…二次転写電源、16a…クリーニング装置、17A…第1の画像形成ユニット、20…画像形成装置、21…定着装置。
図1