特許第6383224号(P6383224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383224
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】半導体増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/60 20060101AFI20180820BHJP
   H03F 1/02 20060101ALI20180820BHJP
   H03F 3/213 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H03F3/60
   H03F1/02
   H03F3/213
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-182365(P2014-182365)
(22)【出願日】2014年9月8日
(65)【公開番号】特開2016-58821(P2016-58821A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年9月2日
【審判番号】不服2017-5153(P2017-5153/J1)
【審判請求日】2017年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】高木 一考
【合議体】
【審判長】 大塚 良平
【審判官】 中野 浩昌
【審判官】 吉田 隆之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−187774(JP,A)
【文献】 特開平7−38350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電極と出力電極とを有する半導体増幅素子と、
外部負荷が接続される出力端子と、
出力整合回路であって、ボンディングワイヤと、第1特性インピーダンスおよび第1電気長を有する第1伝送線路と、第2特性インピーダンスおよび第2電気長を有する第2伝送線路と、を有し、前記ボンディングワイヤは前記出力電極に接続された一方の端部と前記第1伝送線路の一方の端部に接続された他方の端部とを有し、前記第1伝送線路の他方の端部は前記第2伝送線路の一方の端部に接続され、前記第2伝送線路の他方の端部が前記出力端子に接続された、出力整合回路と、
出力バイアス回路であって、第3特性インピーダンスを有しかつ所定帯域内の中心周波数で電気長が概ね90°である第3伝送線路と、接地キャパシタと、電源端子と、を含み、前記第3伝送線路は前記第2伝送線路において前記一方の端部から前記他方の端部に向かって電気長が前記中心周波数で概ね45°である位置に接続された一方の端部と前記接地キャパシタに接続された他方の端部とを有し、前記電源端子は前記第3伝送線路の前記他方の端部に接続された、出力バイアス回路と、
を備え、
前記第1電気長は、前記所定帯域の上限周波数において90°以下であり、
前記第2特性インピーダンスは、前記第1特性インピーダンスよりも大きく、
前記出力バイアス回路において前記第3伝送線路と前記第2伝送線路との接続位置からみた2倍波の負荷インピーダンスはほぼ短絡が保たれ、
前記第1伝送線路と前記第2伝送線路との接続位置からみた2倍波の負荷インピーダンスはほぼ開放に変換され、
前記半導体増幅素子の前記出力電極からみた2倍波の負荷インピーダンスは誘導性を保ちつつほぼ開放とされる、半導体増幅器。
【請求項2】
前記第3特性インピーダンスは、前記第2特性インピーダンスよりも大きい請求項1記載の半導体増幅器。
【請求項3】
前記半導体増幅素子は、窒化物系半導体、またはAlGa1−xAs(0≦x≦1)系半導体からなる電界効果トランジスタである請求項1または2に記載の半導体増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
HEMT(High Electron Mobility Transistor)などの半導体増幅素子を用いると、マイクロ波半導体増幅器が可能となる。
【0003】
また、高効率動作を実現するには、高調波を制御することが要求される。具体的には、半導体素子の端部において2倍波の負荷インピーダンスをほぼ開放とすることが好ましい。
【0004】
HEMTなどの半導体増幅素子は、電極に直流電力を供給する必要がある。このため、半導体増幅器を収納するパッケージ内には、入力整合回路および出力整合回路のほかに、バイアス回路が設けられる。
【0005】
このバイアス回路は、基本波において整合回路に影響を与えないことが好ましいため、整合回路との接続点において開放に近いインピーダンスをもつように構成する。具体的には、バイアス回路を基本波の中心周波数において電気長が90°となる線路とその先端に接続される接地キャパシタで構成することで実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−207060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基本波の中心周波数において電気長が概ね90°となる線路とその先端に接続される接地キャパシタで構成されたバイアス回路は、2倍波においては短絡に近いインピーダンスとなる。短絡に近いインピーダンスが接続されることで半導体増幅素子の端部での2倍波負荷インピーダンスに大きな影響を与える。バイアス回路が接続されても、半導体素子の端部において2倍波の負荷インピーダンスをほぼ開放とすることで、マイクロ波帯において、高効率動作が容易な半導体増幅器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の半導体増幅器は、半導体増幅素子と、外部負荷が接続される出力端子と、出力整合回路と、出力バイアス回路と、を有する。前記半導体増幅素子は、入力電極と出力電極とを有する。前記出力整合回路は、ボンディングワイヤと、第1特性インピーダンスおよび第1電気長を有する第1伝送線路と、第2特性インピーダンスおよび第2電気長を有する第2伝送線路と、を有する。前記ボンディングワイヤは、前記出力電極に接続された一方の端部と前記第1伝送線路の一方の端部に接続された他方の端部とを有する。前記第1伝送線路の他方の端部は、前記第2伝送線路の一方の端部に接続される。前記第2伝送線路の他方の端部は、前記出力端子に接続される。前記出力バイアス回路は、第3特性インピーダンスを有しかつ所定帯域内の中心周波数で電気長が概ね90°である第3伝送線路と、接地キャパシタと、電源端子と、を含む。前記第3伝送線路は、前記第2伝送線路において、前記一方の端部から前記他方の端部に向かって電気長が前記中心周波数で概ね45°である位置に接続された一方の端部と前記接地キャパシタに接続された他方の端部とを有する。前記電源端子は、前記第3伝送線路の前記他方の端部に接続される。前記第1電気長は、前記所定帯域の上限周波数において90°以下である。前記第2特性インピーダンスは、前記第1特性インピーダンスよりも大きい。前記出力バイアス回路において前記第3伝送線路と前記第2伝送線路との接続位置からみた2倍波の負荷インピーダンスはほぼ短絡が保たれる。前記第1伝送線路と前記第2伝送線路との接続位置からみた2倍波の負荷インピーダンスはほぼ開放に変換される。前記半導体増幅素子の前記出力電極からみた2倍波の負荷インピーダンスは誘導性を保ちつつほぼ開放とされる

【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態にかかる半導体増幅器の回路図である。
図2】半導体増幅器の帯域を説明するグラフ図である。
図3】第1の実施形態にかかる半導体増幅器の模式平面図である。
図4】基準面Q0からみた出力バイアス回路単独の負荷インピーダンスを示すスミス図である。
図5】出力バイアス回路が第2伝送線路に接続された位置である基準面Q1からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。
図6】第1伝送線路と第2伝送線路との接続位置である基準面Q2からみた負荷インピーダンスを示す図である。
図7】ボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置である基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。
図8】半導体素子とボンディングワイヤとの接続位置であるである基準面Q4からみた負荷インピーダンスのスミス図である。
図9図9(a)は第1比較例の半導体増幅器の回路図、図9(b)は出力バイアス回路が接続された位置Nからみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図9(c)はボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図9(d)は半導体素子とボンディングワイヤとの接続位置である基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
図10図10(a)は第2比較例の半導体増幅器の回路図、図10(b)は出力バイアス回路が接続された位置Sからみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図10(c)は第1伝送線路と第2伝送線路との接続位置からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図10(d)はボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図10(e)は半導体素子とボンディングワイヤとの接続位置である基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
図11図11(a)は第3比較例の半導体増幅器の回路図、図11(b)は出力バイアス回路が接続された位置Tからみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図11(c)はボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図11(d)は半導体素子とボンディングワイヤとの接続位置である基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
図12図12(a)および(b)は、半導体増幅素子とボンディングワイヤとの接続位置からみた負荷インピーダンスの第3伝送線路の特性インピーダンスに対する依存性を説明するスミス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1は、第1の実施形態にかかる半導体増幅器の回路図である。
半導体増幅器5は、半導体増幅素子14と、入力整合回路12と、出力整合回路20と、出力バイアス回路34と、を有する。
【0011】
半導体増幅素子14は、HEMTやFET(Field Effect Transistor)などからなり、入力電極(たとえばゲート電極)、出力電極(たとえばドレイン電極)、接地電極(たとえばソース電極)などを有する。また、半導体増幅素子14は、窒化物系半導体または、AlGa1−xAs(0≦x≦1)系半導体を含むことができる。
【0012】
出力整合回路20は、ボンディングワイヤ15と、第1特性インピーダンスZC1および第1電気長EL1を有する第1伝送線路16と、第2特性インピーダンスZC2および第2電気長(EL2a+EL2b)を有する第2伝送線路21と、を有する。ボンディングワイヤ15は、半導体増幅素子14の端部(出力電極)に接続された一方の端部15aと第1伝送線路16の一方の端部16aに接続された他方の端部16bとを有する。第1伝送線路16の他方の端部16bは、第2伝送線路21の一方の端部21aに接続される。また、第2伝送線路21の他方の端部21bは、半導体増幅器5の出力端子18に接続される。
【0013】
第1電気長EL1は、上限周波数fにおいて90°以下であるものとする。また、第2特性インピーダンスZC2は、第1特性インピーダンスZC1よりも高く、外部負荷50の抵抗値ZLよりも低いものとする。なお、半導体増幅素子14の出力電極14bからボンディングワイヤ15で接続される位置を基準面Q3とするので、第1電気長EL1は、第1伝送線路16の物理的な長さよりも僅かに短い。
【0014】
出力バイアス回路34は、中心周波数fでの電気長EL3が概ね90°である第3伝送線路30と、接地キャパシタ32と、電源端子39と、を含む。第3伝送線路30は、第2伝送線路21において一方の端部21aから他方の端部21bに向かって中心周波数fでの電気長EL2aが概ね45°となる位置に接続された一方の端部30aと、高周波信号を接地する接地キャパシタ32に接続された他方の端部30bと、を有する。
【0015】
なお、本明細書において、概ね90°の電気長とは、81°以上かつ99°以下の角度に相当するものとする。また、概ね45°の電気長とは、40.5°以上かつ49.5°以下とする。
【0016】
電源端子39は、他方の端部30bに接続される。半導体増幅素子14がHEMTである場合、ドレイン電極には直流電圧VDが供給される。
【0017】
図2は、半導体増幅器の帯域を説明するグラフ図である。
半導体増幅器は、要求に対応した所定帯域を有する。帯域は、たとえば、電力付加効率がそのピーク値よりも所定量低下する下限周波数fと上限周波数fとの間として定義することができる。中心周波数fは、略中心の周波数となる。基本波や高調波の負荷インピーダンスが所望の値から外れていく周波数では電力付加効率が低下する。
【0018】
図3は、第1の実施形態にかかる半導体増幅器の模式平面図である。
半導体増幅器5は、入力端子10と、入力整合回路12と、出力端子18と、をさらに有することができる。半導体増幅器5は、たとえば、破線に表すパッケージ内に搭載される。接地面は、たとえば、パッケージの底面側に設けることができる。
【0019】
図4は、基準面Q0からみた出力バイアス回路34単独の負荷インピーダンスを示すスミス図である。
基本波(ここでは2.7〜3.3GHzで設計)では開放に近いインピーダンス、2倍波では短絡に近いインピーダンスとなっていることがわかる。
以下の図5図8は、第1の実施形態をにおいて、それぞれの基準面からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。なお、第1伝送線路16は第1電気長EL1=90°(@f)として説明するが、第1電気長EL1≦90°(@f)であればよい。また、f=2.7GHz、f=3GHz、f=3.3GHzとする。また、それぞれのスミス図は、基本波のインピーダンスと比較しやすいように基本波のインピーダンスに近い特性インピーダンスZoで正規化されている。
【0020】
図5は、出力バイアス回路が第2伝送線路に接続された位置である基準面Q1からみた基本波および2倍波の負荷インピーダンスを示すスミス図である。
バイアス回路34が2倍波では短絡に近いインピーダンスをもつ影響により、下限周波数fの2倍の周波数2f(=5.4GHz)におけるインピーダンスm4から上限周波数fの2倍の周波数2f(=6.6GHzにおけるインピーダンスm6までの負荷インピーダンスは、短絡インピーダンス(ゼロ)付近となっている。
【0021】
図6は、第1伝送線路と第2伝送線路との接続位置である基準面Q2からみた基本波および2倍波の負荷インピーダンスのスミス図である。
第2伝送線路21の第2電気長EL2aは45°(@f)である。2倍波において、第2伝送線路21は、4分の1波長インピーダンス変換器として作用する。このため周波数2f(=5.4GHz)〜2f(=6.6GHz)の間で、2倍波インピーダンスは、開放インピーダンスの近傍に集まる。
【0022】
なお、第3伝送線路30の特性インピーダンスZC3を第2伝送線路21の特性インピーダンスZC2よりも高くすると、基準面Q2からみた出力バイアス回路34の基本波インピーダンスを高くできるので好ましい。
【0023】
図7は、ボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置である基準面Q3からみた基本波および2倍波の負荷インピーダンスを示すスミス図である。
第1電気長EL1≦90°(@f)とすることで、2倍波の負荷インピーダンスは、誘導性かつ開放インピーダンス近傍とすることができる。このため、2倍波インピーダンスは、2f〜2fの範囲で開放インピーダンス近傍にすることができる。
【0024】
図8は、ボンディングワイヤの一方の端部である基準面Q4からみた基本波および2倍波の負荷インピーダンスのスミス図である。
ボンディングワイヤ15の一方の端部15aは、半導体増幅素子14の出力電極(たとえばHEMTのドレイン電極)14bに接続される。基準面Q3における負荷インピーダンスにボンディングワイヤ15による誘導性リアクタンスが加算されるので、2倍波の負荷インピーダンスは開放インピーダンスの近傍にさらに集まる。この結果、高効率動作が容易となる。
【0025】
図9(a)は、第1比較例の半導体増幅器の回路図、図9(b)は位置Nからみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図9(c)は基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図9(d)は基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
【0026】
図9(a)に表すように、出力バイアス回路134を構成する第3伝送線路130の一方の端部130aは、第1伝送線路116の他方の端部116bと、第2伝送線路121の一方の端部121aと、の接続位置Nに接続される。
【0027】
図9(b)に表すように、出力バイアス回路134が接続された位置Nからみた2倍波の負荷インピーダンス(@2f)は、短絡近傍になる。
【0028】
図9(c)は、ボンディングワイヤ115と第1伝送線路116との接続位置である基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。第1伝送線路116の端部116b(接続位置Nと同じ)において2倍波の負荷インピーダンスの軌跡が広がっているので、基準面Q3からみた2倍波の負荷インピーダンスは大きく変化しかつ帯域内のほとんどの周波数で開放インピーダンスから乖離する。
【0029】
図9(d)に表すように、基準面Q3における負荷インピーダンスにボンディングワイヤ15による誘導性リアクタンスが加算されても、2倍波の負荷インピーダンスはまとまらず、基準面Q4からみた2倍波インピーダンス(m4〜m6)は、大きく変化しかつ帯域内のほとんどの周波数で開放インピーダンスから乖離する。
【0030】
基本波インピーダンス(m1〜m3)の変化は小さく、帯域内で半導体増幅素子114の容量性出力インピーダンスと整合が取れている。しかし、2倍波の負荷インピーダンスを開放インピーダンス付近に集めることができず電力付加効率が低下する。
【0031】
図10(a)は第2比較例の半導体増幅器の回路図、図10(b)は基準面Q1からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図10(c)は基準面Q2からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図10(d)は基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図10(e)は基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
図10(a)に表すように、出力バイアス回路134を構成する第3伝送線路130の一方の端部130aは、第2伝送線路121の他方の端部121bと出力端子118との接続位置Sに接続される。
【0032】
図10(b)は、出力バイアス回路134が接続された位置Sである基準面Q1からみた基本波および2倍波の負荷インピーダンス(@2f)である。2倍波の負荷インピーダンスは、短絡近傍になる。
【0033】
図10(c)は、第1伝送線路と第2伝送線路との接続位置である基準面Q2からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。また、図10(d)はボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置である基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。第1伝送線路116の端部116b(接続位置Nと同じ)において、2倍波の負荷インピーダンスの軌跡が広がっているので、基準面Q3からみた2倍波の負荷インピーダンスは大きく変化しかつ帯域内のほとんどの周波数で開放インピーダンスから乖離する。
【0034】
図10(e)に表すように、基準面Q3における負荷インピーダンスにボンディングワイヤ15による誘導性リアクタンスが加算されても、2倍波の負荷インピーダンスはまとまらず、基準面Q4からみた2倍波インピーダンス(m4〜m6)は、大きく変化しかつ帯域内のほとんどの周波数で開放インピーダンスから乖離する。
【0035】
基本波インピーダンス(m1〜m3)の変化は小さく、帯域内で半導体増幅素子114の容量性出力インピーダンスと整合が取れている。しかし、2倍波の負荷インピーダンスを開放インピーダンス付近に集めることができず、電力付加効率が低下する。
【0036】
図11(a)は第3比較例の半導体増幅器の回路図、図11(b)は基準面Q2からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図11(c)は基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図11(d)は基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
図11(a)に表すように、出力バイアス回路134を構成する第3伝送線路130の一方の端部130aは、第1伝送線路116の一方の端部116aから他方の端部116bに向かって49.5°(@f)離間した位置Tに接続される。
【0037】
図11(b)は、出力バイアス回路134が接続された位置Tからみた基本波および2倍波の負荷インピーダンス(@2f)を示すスミス図である。2倍波の負荷インピーダンスは、短絡インピーダンス近傍になる。
【0038】
図11(c)は、ボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置である基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。基準面Q2での2倍波の負荷インピーダンスの軌跡が広がっていたので、基準面Q3からみた2倍波の負荷インピーダンスは開放付近に近づくが、まとまらず、帯域内の多くの周波数で容量性のインピーダンスをもつ。
図11(d)は、半導体増幅素114子とボンディングワイヤ115との接続位置である基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。2倍波の負荷インピーダンスは、帯域内のほとんどの周波数で、開放インピーダンスから乖離する。
【0039】
基本波インピーダンス(m1〜m3)の変化は小さく、帯域内で半導体増幅素子114の容量性出力インピーダンスと整合が取れている。しかし、2倍波の負荷インピーダンスを開放インピーダンス付近に集めることができず、電力付加効率が低下する。
【0040】
このように、第1伝送線路116内で出力バイアス回路134の位置Tを変化させても2倍波の負荷インピーダンスを開放インピーダンス近傍に集めることは、困難である。
【0041】
伝送線路の特性インピーダンスは、主として、基本波インピーダンスを整合するように決定される。外部負荷50のインピーダンスZが50Ω、半導体増幅素子14の出力インピーダンスが、容量性かつその抵抗成分が数Ω以下と低い場合、ZC1<ZC2<50Ωのように設定すると、基本波整合が容易になる。
【0042】
バイアス回路の接続点からみた負荷インピーダンスは、接続点と出力端子間の整合回路とバイアス回路との並列回路となる。バイアス回路内のインピーダンスが短絡となる周波数においては2倍波の周波数では接続点と出力端子間の整合回路のインピーダンスに依らず短絡となるが、それ以外の周波数では接続点と出力端子間の整合回路の影響を受けて、負荷インピーダンスの軌跡に広がりが生じる。接続点と出力端子間の整合回路の特性インピーダンスが高い方が、その影響が小さくなる。すなわち、出力端子に最も近い伝送線路において、その一方の端部からの電気長が概ね45°となる位置と接地との間に出力バイアス回路34を設けることが好ましい。
【0043】
図12(a)は第3伝送線路の特性インピーダンスが第2伝送線路の特性インピーダンスの3倍程度のときの半導体素子とボンディングワイヤとの接続位置である基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、図12(b)は第3伝送線路の特性インピーダンスが第2伝送線路の特性インピーダンス程度のときの基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
第3伝送線路30の第3特性インピーダンスZC3は、半導体増幅素子14に電流を供給可能かつ細い線路幅を加工可能な範囲内で高くすることが好ましい。
【0044】
本実施形態によれば、基本波整合を保ちつつ、2倍波の負荷インピーダンスを開放インピーダンス近傍とする出力バイス回路および出力整合回路を有する半導体増幅器が提供される。バイアス回路が接続されても、半導体増幅素子の端部において2倍波の負荷インピーダンスをほぼ開放とすることで、半導体増幅器の高効率動作が容易となる。このような半導体増幅器は、レーダー装置やマイクロ波通信機器に広く用いることができる。
【0045】
本発明の2段のインピーダンス変換からなる整合回路について実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。2段以外のインピーダンス変換からなる整合回路についても実施可能である。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
5 半導体増幅器、15、15a、15b ボンディングワイヤ、16、16a、16b 第1伝送線路、18 出力端子、20 出力整合回路、21、21a、21b 第2伝送線路、30 第3伝送線路、32 接地キャパシタ、34 出力バイアス回路、50 外部負荷、ZC1、ZC2、ZC3 (伝送線路の)特性インピーダンス、EL1、EL2、EL3 (伝送線路の)電気長、f 下限周波数、f 中心周波数、f 上限周波数、Q1、Q2、Q3、Q4 基準面、m1、m2、m3 基本波インピーダンス、m4、m5、m6 2倍波インピーダンス









図1
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図12