(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態にかかる半導体増幅器の回路図である。
【
図2】半導体増幅器の帯域を説明するグラフ図である。
【
図3】第1の実施形態にかかる半導体増幅器の模式平面図である。
【
図4】基準面Q0からみた出力バイアス回路単独の負荷インピーダンスを示すスミス図である。
【
図5】出力バイアス回路が第2伝送線路に接続された位置である基準面Q1からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。
【
図6】第1伝送線路と第2伝送線路との接続位置である基準面Q2からみた負荷インピーダンスを示す図である。
【
図7】ボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置である基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。
【
図8】半導体素子とボンディングワイヤとの接続位置であるである基準面Q4からみた負荷インピーダンスのスミス図である。
【
図9】
図9(a)は第1比較例の半導体増幅器の回路図、
図9(b)は出力バイアス回路が接続された位置Nからみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図9(c)はボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図9(d)は半導体素子とボンディングワイヤとの接続位置である基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
【
図10】
図10(a)は第2比較例の半導体増幅器の回路図、
図10(b)は出力バイアス回路が接続された位置Sからみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図10(c)は第1伝送線路と第2伝送線路との接続位置からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図10(d)はボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図10(e)は半導体素子とボンディングワイヤとの接続位置である基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
【
図11】
図11(a)は第3比較例の半導体増幅器の回路図、
図11(b)は出力バイアス回路が接続された位置Tからみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図11(c)はボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図11(d)は半導体素子とボンディングワイヤとの接続位置である基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
【
図12】
図12(a)および(b)は、半導体増幅素子とボンディングワイヤとの接続位置からみた負荷インピーダンスの第3伝送線路の特性インピーダンスに対する依存性を説明するスミス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1は、第1の実施形態にかかる半導体増幅器の回路図である。
半導体増幅器5は、半導体増幅素子14と、入力整合回路12と、出力整合回路20と、出力バイアス回路34と、を有する。
【0011】
半導体増幅素子14は、HEMTやFET(Field Effect Transistor)などからなり、入力電極(たとえばゲート電極)、出力電極(たとえばドレイン電極)、接地電極(たとえばソース電極)などを有する。また、半導体増幅素子14は、窒化物系半導体または、Al
xGa
1−xAs(0≦x≦1)系半導体を含むことができる。
【0012】
出力整合回路20は、ボンディングワイヤ15と、第1特性インピーダンスZ
C1および第1電気長EL1を有する第1伝送線路16と、第2特性インピーダンスZ
C2および第2電気長(EL2a+EL2b)を有する第2伝送線路21と、を有する。ボンディングワイヤ15は、半導体増幅素子14の端部(出力電極)に接続された一方の端部15aと第1伝送線路16の一方の端部16aに接続された他方の端部16bとを有する。第1伝送線路16の他方の端部16bは、第2伝送線路21の一方の端部21aに接続される。また、第2伝送線路21の他方の端部21bは、半導体増幅器5の出力端子18に接続される。
【0013】
第1電気長EL1は、上限周波数f
Hにおいて90°以下であるものとする。また、第2特性インピーダンスZ
C2は、第1特性インピーダンスZ
C1よりも高く、外部負荷50の抵抗値ZLよりも低いものとする。なお、半導体増幅素子14の出力電極14bからボンディングワイヤ15で接続される位置を基準面Q3とするので、第1電気長EL1は、第1伝送線路16の物理的な長さよりも僅かに短い。
【0014】
出力バイアス回路34は、中心周波数f
Cでの電気長EL3が概ね90°である第3伝送線路30と、接地キャパシタ32と、電源端子39と、を含む。第3伝送線路30は、第2伝送線路21において一方の端部21aから他方の端部21bに向かって中心周波数f
Cでの電気長EL2aが概ね45°となる位置に接続された一方の端部30aと、高周波信号を接地する接地キャパシタ32に接続された他方の端部30bと、を有する。
【0015】
なお、本明細書において、概ね90°の電気長とは、81°以上かつ99°以下の角度に相当するものとする。また、概ね45°の電気長とは、40.5°以上かつ49.5°以下とする。
【0016】
電源端子39は、他方の端部30bに接続される。半導体増幅素子14がHEMTである場合、ドレイン電極には直流電圧VDが供給される。
【0017】
図2は、半導体増幅器の帯域を説明するグラフ図である。
半導体増幅器は、要求に対応した所定帯域を有する。帯域は、たとえば、電力付加効率がそのピーク値よりも所定量低下する下限周波数f
Lと上限周波数f
Hとの間として定義することができる。中心周波数f
Cは、略中心の周波数となる。基本波や高調波の負荷インピーダンスが所望の値から外れていく周波数では電力付加効率が低下する。
【0018】
図3は、第1の実施形態にかかる半導体増幅器の模式平面図である。
半導体増幅器5は、入力端子10と、入力整合回路12と、出力端子18と、をさらに有することができる。半導体増幅器5は、たとえば、破線に表すパッケージ内に搭載される。接地面は、たとえば、パッケージの底面側に設けることができる。
【0019】
図4は、基準面Q0からみた出力バイアス回路34単独の負荷インピーダンスを示すスミス図である。
基本波(ここでは2.7〜3.3GHzで設計)では開放に近いインピーダンス、2倍波では短絡に近いインピーダンスとなっていることがわかる。
以下の
図5〜
図8は、第1の実施形態をにおいて、それぞれの基準面からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。なお、第1伝送線路16は第1電気長EL1=90°(@f
H)として説明するが、第1電気長EL1≦90°(@f
H)であればよい。また、f
L=2.7GHz、f
C=3GHz、f
H=3.3GHzとする。また、それぞれのスミス図は、基本波のインピーダンスと比較しやすいように基本波のインピーダンスに近い特性インピーダンスZoで正規化されている。
【0020】
図5は、出力バイアス回路が第2伝送線路に接続された位置である基準面Q1からみた基本波および2倍波の負荷インピーダンスを示すスミス図である。
バイアス回路34が2倍波では短絡に近いインピーダンスをもつ影響により、下限周波数f
Lの2倍の周波数2f
L(=5.4GHz)におけるインピーダンスm4から上限周波数f
Hの2倍の周波数2f
H(=6.6GHzにおけるインピーダンスm6までの負荷インピーダンスは、短絡インピーダンス(ゼロ)付近となっている。
【0021】
図6は、第1伝送線路と第2伝送線路との接続位置である基準面Q2からみた基本波および2倍波の負荷インピーダンスのスミス図である。
第2伝送線路21の第2電気長EL2aは45°(@f
C)である。2倍波において、第2伝送線路21は、4分の1波長インピーダンス変換器として作用する。このため周波数2f
L(=5.4GHz)〜2f
H(=6.6GHz)の間で、2倍波インピーダンスは、開放インピーダンスの近傍に集まる。
【0022】
なお、第3伝送線路30の特性インピーダンスZ
C3を第2伝送線路21の特性インピーダンスZ
C2よりも高くすると、基準面Q2からみた出力バイアス回路34の基本波インピーダンスを高くできるので好ましい。
【0023】
図7は、ボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置である基準面Q3からみた基本波および2倍波の負荷インピーダンスを示すスミス図である。
第1電気長EL1≦90°(@f
H)とすることで、2倍波の負荷インピーダンスは、誘導性かつ開放インピーダンス近傍とすることができる。このため、2倍波インピーダンスは、2f
L〜2f
Hの範囲で開放インピーダンス近傍にすることができる。
【0024】
図8は、ボンディングワイヤの一方の端部である基準面Q4からみた基本波および2倍波の負荷インピーダンスのスミス図である。
ボンディングワイヤ15の一方の端部15aは、半導体増幅素子14の出力電極(たとえばHEMTのドレイン電極)14bに接続される。基準面Q3における負荷インピーダンスにボンディングワイヤ15による誘導性リアクタンスが加算されるので、2倍波の負荷インピーダンスは開放インピーダンスの近傍にさらに集まる。この結果、高効率動作が容易となる。
【0025】
図9(a)は、第1比較例の半導体増幅器の回路図、
図9(b)は位置Nからみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図9(c)は基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図9(d)は基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
【0026】
図9(a)に表すように、出力バイアス回路134を構成する第3伝送線路130の一方の端部130aは、第1伝送線路116の他方の端部116bと、第2伝送線路121の一方の端部121aと、の接続位置Nに接続される。
【0027】
図9(b)に表すように、出力バイアス回路134が接続された位置Nからみた2倍波の負荷インピーダンス(@2f
C)は、短絡近傍になる。
【0028】
図9(c)は、ボンディングワイヤ115と第1伝送線路116との接続位置である基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。第1伝送線路116の端部116b(接続位置Nと同じ)において2倍波の負荷インピーダンスの軌跡が広がっているので、基準面Q3からみた2倍波の負荷インピーダンスは大きく変化しかつ帯域内のほとんどの周波数で開放インピーダンスから乖離する。
【0029】
図9(d)に表すように、基準面Q3における負荷インピーダンスにボンディングワイヤ15による誘導性リアクタンスが加算されても、2倍波の負荷インピーダンスはまとまらず、基準面Q4からみた2倍波インピーダンス(m4〜m6)は、大きく変化しかつ帯域内のほとんどの周波数で開放インピーダンスから乖離する。
【0030】
基本波インピーダンス(m1〜m3)の変化は小さく、帯域内で半導体増幅素子114の容量性出力インピーダンスと整合が取れている。しかし、2倍波の負荷インピーダンスを開放インピーダンス付近に集めることができず電力付加効率が低下する。
【0031】
図10(a)は第2比較例の半導体増幅器の回路図、
図10(b)は基準面Q1からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図10(c)は基準面Q2からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図10(d)は基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図10(e)は基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
図10(a)に表すように、出力バイアス回路134を構成する第3伝送線路130の一方の端部130aは、第2伝送線路121の他方の端部121bと出力端子118との接続位置Sに接続される。
【0032】
図10(b)は、出力バイアス回路134が接続された位置Sである基準面Q1からみた基本波および2倍波の負荷インピーダンス(@2f
C)である。2倍波の負荷インピーダンスは、短絡近傍になる。
【0033】
図10(c)は、第1伝送線路と第2伝送線路との接続位置である基準面Q2からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。また、
図10(d)はボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置である基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。第1伝送線路116の端部116b(接続位置Nと同じ)において、2倍波の負荷インピーダンスの軌跡が広がっているので、基準面Q3からみた2倍波の負荷インピーダンスは大きく変化しかつ帯域内のほとんどの周波数で開放インピーダンスから乖離する。
【0034】
図10(e)に表すように、基準面Q3における負荷インピーダンスにボンディングワイヤ15による誘導性リアクタンスが加算されても、2倍波の負荷インピーダンスはまとまらず、基準面Q4からみた2倍波インピーダンス(m4〜m6)は、大きく変化しかつ帯域内のほとんどの周波数で開放インピーダンスから乖離する。
【0035】
基本波インピーダンス(m1〜m3)の変化は小さく、帯域内で半導体増幅素子114の容量性出力インピーダンスと整合が取れている。しかし、2倍波の負荷インピーダンスを開放インピーダンス付近に集めることができず、電力付加効率が低下する。
【0036】
図11(a)は第3比較例の半導体増幅器の回路図、
図11(b)は基準面Q2からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図11(c)は基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図11(d)は基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
図11(a)に表すように、出力バイアス回路134を構成する第3伝送線路130の一方の端部130aは、第1伝送線路116の一方の端部116aから他方の端部116bに向かって49.5°(@f
H)離間した位置Tに接続される。
【0037】
図11(b)は、出力バイアス回路134が接続された位置Tからみた基本波および2倍波の負荷インピーダンス(@2f
C)を示すスミス図である。2倍波の負荷インピーダンスは、短絡インピーダンス近傍になる。
【0038】
図11(c)は、ボンディングワイヤと第1伝送線路との接続位置である基準面Q3からみた負荷インピーダンスを示すスミス図である。基準面Q2での2倍波の負荷インピーダンスの軌跡が広がっていたので、基準面Q3からみた2倍波の負荷インピーダンスは開放付近に近づくが、まとまらず、帯域内の多くの周波数で容量性のインピーダンスをもつ。
図11(d)は、半導体増幅素114子とボンディングワイヤ115との接続位置である基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。2倍波の負荷インピーダンスは、帯域内のほとんどの周波数で、開放インピーダンスから乖離する。
【0039】
基本波インピーダンス(m1〜m3)の変化は小さく、帯域内で半導体増幅素子114の容量性出力インピーダンスと整合が取れている。しかし、2倍波の負荷インピーダンスを開放インピーダンス付近に集めることができず、電力付加効率が低下する。
【0040】
このように、第1伝送線路116内で出力バイアス回路134の位置Tを変化させても2倍波の負荷インピーダンスを開放インピーダンス近傍に集めることは、困難である。
【0041】
伝送線路の特性インピーダンスは、主として、基本波インピーダンスを整合するように決定される。外部負荷50のインピーダンスZ
Lが50Ω、半導体増幅素子14の出力インピーダンスが、容量性かつその抵抗成分が数Ω以下と低い場合、Z
C1<Z
C2<50Ωのように設定すると、基本波整合が容易になる。
【0042】
バイアス回路の接続点からみた負荷インピーダンスは、接続点と出力端子間の整合回路とバイアス回路との並列回路となる。バイアス回路内のインピーダンスが短絡となる周波数においては2倍波の周波数では接続点と出力端子間の整合回路のインピーダンスに依らず短絡となるが、それ以外の周波数では接続点と出力端子間の整合回路の影響を受けて、負荷インピーダンスの軌跡に広がりが生じる。接続点と出力端子間の整合回路の特性インピーダンスが高い方が、その影響が小さくなる。すなわち、出力端子に最も近い伝送線路において、その一方の端部からの電気長が概ね45°となる位置と接地との間に出力バイアス回路34を設けることが好ましい。
【0043】
図12(a)は第3伝送線路の特性インピーダンスが第2伝送線路の特性インピーダンスの3倍程度のときの半導体素子とボンディングワイヤとの接続位置である基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、
図12(b)は第3伝送線路の特性インピーダンスが第2伝送線路の特性インピーダンス程度のときの基準面Q4からみた負荷インピーダンスを示すスミス図、である。
第3伝送線路30の第3特性インピーダンスZ
C3は、半導体増幅素子14に電流を供給可能かつ細い線路幅を加工可能な範囲内で高くすることが好ましい。
【0044】
本実施形態によれば、基本波整合を保ちつつ、2倍波の負荷インピーダンスを開放インピーダンス近傍とする出力バイス回路および出力整合回路を有する半導体増幅器が提供される。バイアス回路が接続されても、半導体増幅素子の端部において2倍波の負荷インピーダンスをほぼ開放とすることで、半導体増幅器の高効率動作が容易となる。このような半導体増幅器は、レーダー装置やマイクロ波通信機器に広く用いることができる。
【0045】
本発明の2段のインピーダンス変換からなる整合回路について実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。2段以外のインピーダンス変換からなる整合回路についても実施可能である。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。