特許第6383227号(P6383227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383227
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/06 20060101AFI20180820BHJP
   F02D 41/32 20060101ALI20180820BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   F02D41/06 330A
   F02D41/32 C
   F02D45/00 312B
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-189784(P2014-189784)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-61222(P2016-61222A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】貝塚 孝夫
【審査官】 田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−203298(JP,A)
【文献】 特開2001−32739(JP,A)
【文献】 特開2007−32503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D13/00 − 28/00
F02D29/00 − 29/06
F02D41/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室又は吸気ポートに燃料を噴射するインジェクタの燃料噴射量を制御するとともに、前記エンジンの始動時には空燃比がリッチとなるように前記燃料噴射量を設定する噴射量制御手段と、
前記エンジンの実回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記エンジンの始動後、前記実回転速度が所定の目標回転速度よりも高い際に、前記実回転速度と前記目標回転速度との差分に応じてリーン化作動量を算出するリーン化作動量算出手段と
を備えるエンジン制御装置であって、
前記噴射量制御手段は、前記リーン化作動量が所定の最大作動量未満である場合には前記燃料噴射量から前記リーン化作動量を減少させ、前記リーン化作動量が前記最大作動量以上である場合には前記燃料噴射量から前記最大作動量を減少させるとともに、前記実回転速度と前記目標回転速度との差分が予め設定された閾値以下となった際に前記最大作動量を増加させること
を特徴とするエンジン制御装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料噴射量等を制御するエンジン制御装置に関し、特に始動直後のリッチ状態からリーン化する際の回転挙動を安定化したものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されるガソリンエンジン等の予混合火花点火式の内燃機関においては、始動直後には、燃料性状やエンジン自体の性能にばらつきが存在しても、混合気に確実に着火し、始動性を確保可能なよう、空燃比を理論空燃比に対して過剰にリッチ化し、始動(完爆)後に徐々にリーン化する始動後リーン化制御を行っている。
既存の始動後リーン化制御においては、エンジン始動後のエンジン実回転数が目標回転数よりも高い状態のときに、実回転数と目標回転数との偏差に応じて、始動時燃料増量を逐次減量する積分制御を行っている。
しかし、この場合、エンジン実回転数が目標回転数を大きくオーバーシュートするような回転挙動を示した場合、実回転数と目標回転数との偏差が極端に大きくなって燃料噴射量が過剰に減量され、目標回転数に回転を保持するトルクを発生させることができなくなり、大きな回転変動によるフィーリングの悪化や、エンジンの失火、ストールが生じてしまう。
【0003】
このような始動後リーン化制御に関する従来技術として、例えば、特許文献1には、エンジンの実回転数と目標回転数との偏差に応じて始動時増量を減少し、リッチ空燃比による排気ガスエミッションの抑制や回転安定性の向上を図ることが記載されている。
また、特許文献1には、始動後の経過時間に応じて、回転数の差分に減衰係数を乗算させることによって、燃料減少量を変化させることが記載されている。
特許文献2には、運転性や排気エミッションの悪化を抑制するために、エンジン始動後に燃料噴射量を減量補正する際の減少量を、所定値に制限することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2008−169775号公報
【特許文献2】特開2010−203298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術においては、実回転数と目標回転数との差分の比例制御によって燃料減少量を設定しているため、偏差に対するリーン化の効果を高めようとするほど偏差の変動に対して過敏に補正をしてしまうため、大きな回転変動によるフィーリングの悪化、エンジンの失火、ストールなどが懸念される。
また、特許文献2に記載された技術においては、燃料減少量を所定値で制限(ガード)することによって、ある程度回転挙動の安定化を図ることは可能であると認められるが、この制限値が一定値であるため、エンジン実回転数が大きくオーバーシュートする始動直後においても回転挙動を安定化させるため制限値を小さく設定すると、実回転数の目標回転数への収束(始動後リーン化制御の完了)までに時間を要するという問題があった。
上述した問題点に鑑み、本発明の課題は、始動直後のリッチ状態からリーン化する際の回転挙動を安定化したエンジン制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、エンジンの燃焼室又は吸気ポートに燃料を噴射するインジェクタの燃料噴射量を制御するとともに、前記エンジンの始動時には空燃比がリッチとなるように前記燃料噴射量を設定する噴射量制御手段と、前記エンジンの実回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記エンジンの始動後、前記実回転速度が所定の目標回転速度よりも高い際に、前記実回転速度と前記目標回転速度との差分に応じてリーン化作動量を算出するリーン化作動量算出手段とを備えるエンジン制御装置であって、前記噴射量制御手段は、前記リーン化作動量が所定の最大作動量未満である場合には前記燃料噴射量から前記リーン化作動量を減少させ、前記リーン化作動量が前記最大作動量以上である場合には前記燃料噴射量から前記最大作動量を減少させるとともに、前記実回転速度と前記目標回転速度との差分が予め設定された閾値以下となった際に前記最大作動量を増加させることを特徴とするエンジン制御装置である。
これによれば、リーン化作動量を制限する最大作動量を、エンジン始動からの経過時間に応じて増加させることによって、始動直後には最大作動量を比較的小さくし、過剰に燃料噴射量を減少させて回転挙動が不安定となることを防止できる。
また、エンジン実回転数が目標回転数に近づいた後は、最大作動量を始動直後に対して比較的大きくし、目標回転数の維持に必要のない始動時増量を早期に減少させ、空燃比のリッチ化により発生する排気ガスエミッションの低減や、回転挙動の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、始動直後のリッチ状態からリーン化する際の回転挙動を安定化したエンジン制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を適用したエンジン制御装置の参考例を有するエンジンの構成を示す模式図である。
図2参考例のエンジン制御装置における始動後リーン化制御を示すフローチャートである。
図3参考例のエンジン制御装置における始動後リーン化制御時におけるエンジン回転数及びリーン化作動量の推移の一例を示すグラフである。
図4】本発明を適用したエンジン制御装置の実施例における始動後リーン化制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、始動直後のリッチ状態からリーン化する際の回転挙動を安定化したエンジン制御装置を提供する課題を、実回転数と目標回転数との差分に基づいてリーン化作動量を算出するとともに、その最大作動量(ガード値)を、エンジン始動からの経過時間に応じて増加させることによって解決した。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明を適用したエンジン制御装置の参考例について説明する。
参考例のエンジン制御装置は、例えば乗用車等の自動車に走行用動力源として搭載される4ストロークのガソリン直噴エンジンに設けられるものである。
図1は、参考例のエンジン制御装置を有するエンジンの構成を示す模式図である。
エンジン1は、シリンダ10、ピストン20、シリンダヘッド30、吸気装置40、排気装置50、燃料供給装置60、EGR装置70、エンジン制御ユニット100等を有して構成されている。
【0012】
シリンダ10は、ピストン20が挿入されるスリーブを備えている。
シリンダ10は、図示しないクランクケースと一体に形成されたシリンダブロックに形成されている。
クランクケースは、エンジン1の出力軸である図示しないクランクシャフトを、回転可能に支持し、収容するものである。
シリンダ10には、シリンダヘッド30及びスリーブの周囲に形成されたウォータージャケット内に通流される冷却水の水温を検出する水温センサ11が設けられている。
水温センサ11の出力は、エンジン制御ユニット100に伝達される。
【0013】
ピストン20は、シリンダ10のスリーブ内部に挿入され、往復運動する部材である。
ピストン20は、コンロッド21を介して図示しないクランクシャフトに接続されている。
ピストン20の冠面22は、シリンダヘッド30と協働してエンジン1の燃焼室を構成する。
【0014】
シリンダヘッド30は、シリンダ10のクランクシャフト側とは反対側の端部に設けられている。
シリンダヘッド30は、燃焼室31、吸気ポート32、排気ポート33、吸気バルブ34、排気バルブ35、点火栓36等を備えている。
燃焼室31は、ピストン20の冠面22と対向して形成された凹部であって、例えばペントルーフ型に形成されている。
吸気ポート32は、燃焼室31に燃焼用空気(新気)を導入する流路である。
排気ポート33は、燃焼室31から既燃ガス(排ガス)を排出する流路である。
吸気ポート32及び排気ポート33は、例えば、1気筒あたり2本ずつが形成されている。
吸気バルブ34、排気バルブ35は、吸気ポート32、排気ポート33を、所定のバルブタイミングでそれぞれ開閉するものである。
吸気バルブ34、排気バルブ35は、カムシャフト、ロッカアーム等の動弁駆動系によって駆動される。
点火栓36は、エンジン制御ユニット100が生成する点火信号に応じて、所定の点火時期にスパーク(火花)を発生し、混合気に点火するものである。
点火栓36は、燃焼室31の実質的に中心部(シリンダ10の中心軸近傍)に配置されている。
【0015】
吸気装置40は、エンジン1に燃焼用空気を導入するものである。
吸気装置40は、インテークダクト41、エアクリーナ42、スロットル43、インテークマニホールド44等を有して構成されている。
インテークダクト41は、大気中から空気を導入してエンジン1へ供給する管路である。
エアクリーナ42は、インテークダクト41の入口近傍に設けられ、空気中のダスト等を濾過して浄化するものである。
エアクリーナ42の出口には、インテークダクト41内を通過する空気量(エンジン1の吸入空気量)を計測する図示しないエアフローメータが設けられている。
スロットル43は、インテークダクト41におけるエアクリーナ42の下流側に設けられ、吸気空気量を絞ることによってエンジン1の出力調整を行うものである。
スロットル43は、バタフライバルブ等の弁体、弁体を駆動する電動アクチュエータ(スロットルアクチュエータ)、及び、スロットル開度を検出するスロットルセンサ等を備えて構成されている。
スロットルアクチュエータは、エンジン制御ユニット100からの制御信号に応じて駆動される。
インテークマニホールド44は、スロットル43の下流側に設けられ、容器状に形成されたサージタンク、及び、各気筒の吸気ポート32に接続され新気を導入する分岐管を有して構成されている。
【0016】
排気装置50は、エンジン1から排ガスを排出するものである。
排気装置50は、エキゾーストパイプ51、触媒コンバータ52、空燃比センサ53等を有して構成されている。
エキゾーストパイプ51は、排気ポート33から出た排ガスを排出する管路である。
触媒コンバータ52は、エキゾーストパイプ51の中間部に設けられている。
触媒コンバータ52は、ハニカム状のアルミナ担体にプラチナ、ロジウム等の貴金属を担持させて構成され、HC、NOx、CO等を浄化する三元触媒を備えている。
空燃比(A/F)センサ53は、エンジン1の現在の空燃比を排ガスの性状に基づいて検出するリニア出力のラムダセンサである。
空燃比センサ53は、エキゾーストパイプ51の触媒コンバータ52よりも上流側の領域に設けられている。
【0017】
燃料供給装置60は、燃料タンク61、フィードポンプ62、燃料搬送管63、高圧ポンプ64、燃料配管65、デリバリーパイプ66、インジェクタ67等を備えて構成されている。
燃料タンク61は、燃料(ガソリン)を貯留する容器であって、例えば車体後部の床下に搭載されている。
フィードポンプ(低圧ポンプ)62は、燃料タンク61内の燃料を、燃料搬送管63を介して高圧ポンプ64に圧送するものである。
高圧ポンプ64は、フィードポンプ62から供給された燃料を高圧に昇圧し、燃料配管65を経由して蓄圧室を兼ねたデリバリーパイプ66に供給するものである。
高圧ポンプ64は、シリンダヘッド30に設けられ吸気バルブ34を駆動するカム軸64aによって駆動される。
【0018】
インジェクタ67は、例えばソレノイドやピエゾ素子を有するアクチュエータによって駆動されるニードルバルブを備え、デリバリーパイプ66内に蓄圧された高圧燃料を、エンジン制御ユニット100が生成する噴射信号(開弁信号)に応じて、所定の時期に所定の噴射量だけ噴射するものである。
インジェクタ67のノズルは、図1に示すように、燃焼室31の側方(シリンダボア側)における吸気バルブ34側から筒内に挿入されている。
【0019】
EGR装置70は、エキゾーストパイプ51内を流れる排ガスの一部を抽出してインテークマニホールド44内に導入(還流)させるものである。
EGR装置70は、EGR管路71、EGRバルブ72等を有して構成されている。
EGR管路71は、エキゾーストパイプ51からインテークマニホールド44へ排ガスを搬送する管路である。
EGR管路71の一方の端部は、エキゾーストパイプ51における触媒コンバータ52の上流側の領域に接続されている。
EGR管路71の他方の端部は、インテークマニホールド44のサージタンク部に接続されている。
EGRバルブ72は、EGR管路71の中間部に設けられ、EGR管路71内を通過する排ガスの流量を制御するものである。
EGRバルブ72は、エンジン制御ユニット100からの制御信号に応じて開閉制御される。
【0020】
エンジン制御ユニット100は、エンジン1及びその補機類を統括的に制御するものである。
エンジン制御ユニット100は、参考例のエンジン制御装置における噴射量制御手段、回転速度検出手段、リーン化作動量算出手段として機能する。
エンジン制御ユニット100は、CPU等の情報処理装置、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス及びこれらを接続するバス等を有して構成されている。
エンジン制御ユニット100は、エアフローメータによって検出されるエンジン1の吸入空気量、スロットルセンサによって検出されるスロットルバルブの開度、図示しないクランク角センサによって検出されるクランクシャフトの回転速度等に基づいて、各気筒のインジェクタ67のサイクル毎の燃料噴射量及び噴射回数を設定するとともに、各回の燃料噴射の噴射時期(噴射開始時期及び噴射終了時期)を設定し、インジェクタ67に対して噴射信号(開弁信号)を与える。
【0021】
また、エンジン制御ユニット100は、エンジン1の始動直後には、燃料性状やエンジン自体の性能のばらつきがあった場合にも確実に着火させ始動性を確保するため、空燃比を理論空燃比に対してリッチとし、始動後に燃料噴射量を逐次減量してリーン化する始動後リーン化制御を行う。
図2は、参考例のエンジン制御装置における始動後リーン化制御を示すフローチャートである。
図3は、参考例のエンジン制御装置における始動後リーン化制御時におけるエンジン回転数及びリーン化作動量の推移の一例を示すグラフである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0022】
<ステップS01:クランキング・始動時噴射量噴射>
ECU100は、エンジン1を始動するため、図示しないスタータモータに通電してエンジンのクランクシャフトの回転駆動(クランキング)を行うとともに、インジェクタ67から予め設定された始動時噴射量の燃料を噴射させる。
始動時噴射量は、燃料の性状やエンジン1自体の性能にばらつきがあった場合でも確実に着火させ始動を容易にするため、理論空燃比に対して十分に燃料リッチとなるように始動時増量するよう設定されている。
さらに、ECU100は、点火栓36において所定の点火タイミングでのスパーク発生を開始させる。
その後、ステップS02に進む。
【0023】
<ステップS02:完爆判定>
ECU100は、エンジン1の燃焼室内において燃料が安定して燃焼し、エンジン始動が完了したか(完爆したか)否かを判別する。
具体的には、エンジン1のクランクシャフト回転数(実回転速度)が予め設定された始動判定閾値を上回った場合には、完爆判定を成立させる。
完爆判定が成立した場合にはクランキングを終了してステップS03に進み、不成立の場合にはステップS01に戻って以降の処理を繰り返す。
【0024】
<ステップS03:最大作動量a設定>
ECU100は、始動後リーン化制御における燃料噴射量の減少量であるリーン化作動量の制限値(ガード値)である最大作動量として、予め設定された最大作動量aを設定する。
最大作動量aは、エンジン始動直後に実回転数が目標回転数に対してオーバーシュートした状態であっても、燃料噴射量の減少量が過剰となって回転挙動を不安定としないよう考慮して設定される。
その後、ステップS04に進む。
【0025】
<ステップS04:エンジン回転数Ne取得>
ECU100は、図示しないクランク角センサの出力に基づいて、クランクシャフトの実際の回転数(エンジン実回転数)Neを取得する。
その後、ステップS05に進む。
【0026】
<ステップS05:エンジン回転数Neを目標回転数と比較>
ECU100は、ステップS04において取得したエンジン回転数Ne(実回転数)を、予め設定された所定値である目標回転数と比較する。
実回転数が目標回転数を上回っている場合は、始動後リーン化制御が必要であるとしてステップS06に進み、その他の場合は、始動化リーン制御が完了したものとして一連の処理を終了する。
【0027】
<ステップS06:リーン化作動量算出>
ECU100は、実回転数と目標回転数との差分に基づいて、燃料噴射量の目標減少量であるリーン化作動量を算出する。
リーン化作動量は、例えば、実回転数から目標回転数を減じた差分に、所定の係数を乗じて算出してもよい。また、差分に応じてマップ値が読みだされるマップを用いて設定してもよい。
ここで、リーン化作動量は、偏差の増加に応じて増加するように設定される。
その後、ステップS07に進む。
【0028】
<ステップS07:リーン化作動量を最大作動量と比較>
ECU100は、ステップS06において算出したリーン化作動量を、現在設定されている最大作動量と比較する。
リーン化作動量が最大作動量以上である場合は、ステップS08に進み、リーン化作動量が最大作動量未満である場合は、ステップS09に進む。
【0029】
<ステップS08:最大作動量でリーン化実行>
ECU100は、インジェクタ67から噴射される1サイクルあたりの燃料噴射量を、現在設定されている最大作動量だけ減少させ、空燃比のリーン化を実行する。
その後、ステップS10に進む。
【0030】
<ステップS09:リーン化作動量でリーン化実行>
ECU100は、インジェクタ67から噴射される1サイクルあたりの燃料噴射量を、ステップS06において算出されたリーン化作動量だけ減少させ、空燃比のリーン化を実行する。
その後、ステップS10に進む。
【0031】
<ステップS10:始動後経過時間判断>
ECU100は、ステップS02において完爆判定が成立してからの経過時間(始動後経過時間)を、予め設定された閾値tと比較する。
ここで、閾値tは、例えば、始動直後のエンジン回転数のオーバーシュートが落ち着き、エンジン実回転数が目標回転数近傍に収束する時間に設定することができる。
一例として、閾値tは、例えば2乃至3秒程度に設定することができる。
経過時間が閾値t以上である場合は、ステップS11に進み、その他の場合はステップS04に戻って以降の処理を繰り返す。
【0032】
<ステップS11:最大作動量bに変更>
ECU100は、ステップS03において設定した最大作動量aを、最大作動量b(>最大作動量a)に変更する。
最大作動量bは、例えば、最大作動量aに対して約2倍程度に設定することができる。
その後、ステップS04に戻って以降の処理を繰り返す。
【0033】
以上説明した参考例においては、図3に示すように、エンジン始動後の経過時間が所定の閾値tに到達するまでは最大作動量を比較的小さな最大作動量aに設定し、燃料噴射量の過剰減量によって回転挙動が不安定となることを防止できる。
一方、閾値tの経過後は、最大作動量を最大作動量aに対して大きい最大作動量bとすることによって、実回転数が目標回転数に収束して始動後リーン化制御を終了するまでの時間を短縮し、早期に空燃比フィードバック制御へ移行することができる。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明を適用したエンジン制御装置の実施例について説明する。
実施例において、上述した参考例と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図4は、実施例のエンジン制御装置における始動後リーン化制御を示すフローチャートである。
実施例においては、ステップS10において、参考例のようにエンジンの始動後経過時間を閾値tと比較するのではなく、エンジン1の実回転数と目標回転数との差分ΔNを、予め設定された閾値と比較している。
そして、差分ΔNが閾値以下となった場合にステップS11に進んで最大作動量aから最大作動量bに変更するようにしている。
以上説明した実施例においても、上述した参考例の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0035】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)エンジン及びエンジン制御装置の構成は上述した実施例に限定されず、適宜変更することができる。
(2)実施例では、最大作動量(制限値・ガード値)を例えば2段階にステップ状に変化させているが、これに限らず、3段階以上に変化させたり、あるいは、徐変させるようにしてもよい。
(3)実施例では、エンジンは例えばガソリン直噴エンジンであったが、本発明はこれに限らず、例えばポート噴射のエンジン、直噴とポート噴射とを併用するエンジンや、ガソリン以外の燃料を用いるエンジンにも適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 エンジン
10 シリンダ 11 水温センサ
20 ピストン 21 コンロッド
22 冠面 30 シリンダヘッド
31 燃焼室 32 吸気ポート
33 排気ポート 34 吸気バルブ
35 排気バルブ 36 点火栓
40 吸気装置 41 インテークダクト
42 エアクリーナ 43 スロットル
44 インテークマニホールド 50 排気装置
51 エキゾーストマニホールド 52 触媒コンバータ
53 空燃比センサ
60 燃料供給装置 61 燃料タンク
62 フィードポンプ 63 燃料搬送管
64 高圧ポンプ 64a カム軸
65 燃料配管 66 デリバリーパイプ
67 インジェクタ 70 EGR装置
71 EGR管路 72 EGRバルブ
100 エンジン制御ユニット(ECU)
図1
図2
図3
図4