(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記薬液塗工工程に用いる前記液保持性シートは、前記薬液を塗工する面側を構成する親水性繊維を含有する層と、該薬液を塗工する面と反対側の他面側を構成する液不透過性フィルム層とが重なってラミネートされたシートである請求項1に記載の温熱具の製造方法。
前記発熱組成物塗工工程において、前記薬剤保持シートの一面における前記薬液の未塗工部分に対する前記発熱組成物の塗工は、その塗工位置が、該薬剤保持シートの一面における前記薬液の塗工部分に対する該発熱組成物の塗工の塗工位置よりも該薬剤保持シートに近い請求項1又は2に記載の温熱具の製造方法。
前記薬液塗工工程において、前記薬液の塗工部分を、該薬液の未塗工部分よりも、前記液保持性シートの一面側から突出するように塗工する請求項1〜3の何れか1項に記載の温熱具の製造方法。
前記薬液塗工工程において、前記薬液の塗工部分及び未塗工部分を、帯状の前記薬剤保持シートの幅方向に交互に形成するとともに、該薬剤保持シートの搬送方向に帯状に形成する請求項1〜4の何れか1項に記載の温熱具の製造方法。
前記発熱組成物塗工工程と同時に又はその後に、前記発熱組成物に電解質を散布して前記発熱層を得る電解質散布工程を備える請求項1〜5の何れか1項に記載の温熱具の製造方法。
前記帯状の積層構造体前駆体における前記発熱組成物の塗工面上に、吸水性ポリマーの粒子を含む層を配する吸収層配置工程を備える請求項1〜6の何れか1項に記載の温熱具の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の温熱具の製造方法は、被酸化性金属を含む発熱組成物を含有する発熱層と、液保持性シートに親油性の薬剤を保持する薬剤保持シートとの積層構造体を備えた温熱具の製造方法である。
図1には、本実施態様の温熱具の製造方法で製造される温熱具1が示されている。温熱具1の備える積層構造体は、例えば、発熱体2である。発熱具1は、発熱体2の全体を通気性の被覆シート6で被覆して構成されている。発熱体2は、発熱組成物3Aから形成される層3(以下「発熱層3」とも言う。)を挟むように、薬剤保持シート4と、基材シート5とを配置した積層構造体となっている。
【0012】
発熱体2における発熱層3は、発熱体における中間層でもあり、被酸化性金属を含む。本実施形態の発熱層3は、さらに電解質及び水を含んでいる含水層である。発熱層3は、被酸化性金属の酸化反応を利用して熱を生じさせるものである。発熱層3は、
図1に示すように、後述する薬剤保持シート4上に重ねて配されており、薬液7の塗工部分7a上及び薬液7の未塗工部分7b上に重ねて配されている。
【0013】
薬剤保持シート4は、
図1に示すように、温熱具1においては、薬液7を塗工する面側を構成する親水性繊維を含有する層4aと、薬液7を塗工する面と反対側の他面側を構成する液不透過性フィルム層4bとが重なってラミネートされた液保持性シート4Bに、薬液7を保持したシートである。薬剤保持シート4の層4aには、薬液7を塗工した塗工部分7aと、薬液7を塗工していない未塗工部分7bとが形成されている。
【0014】
基材シート5は、温熱具1においては、吸水性ポリマーの粒子が含まれたシートであり、吸水性ポリマーの粒子、熱融着性繊維及び親水性繊維が均一に混合された状態の1枚のシート形状のものである。基材シート5は、
図1に示すように、薬剤保持シート4上に重ねて配された発熱層3上に重ねて配されている。
【0015】
発熱具1は、以上のように形成された薬剤保持シート4と基材シート5とで発熱層3を挟持してなる発熱体2(積層構造体)の上面を被覆シート6で被覆し、発熱体2の下面を被覆シート6で被覆して構成されている。
【0016】
次に、本発明の発熱具の製造方法を、前述した温熱具1の製造方法を例にとり
図2〜
図4を参照して説明する。
図2には、本実施態様の製造方法の実施に用いる一実施形態の製造装置100の全体構成が示されている。
図2に示す本実施形態の製造装置100は、上流側から下流側に向かって、シートに、薬剤を溶解剤で溶解した薬液7を塗工する薬液塗工部10、発熱組成物3Aを塗工する発熱組成物塗工部20、電解質3Bを散布する電解質散布部30、前記シートに別のシートを重ね合わせる重ね合わせ部40、各発熱体に裁断する裁断部50、各発熱体の間隔を調整するリピッチ部60、各発熱体を排出する排出部70及び発熱体に被覆シートを被覆する被覆部80を備えている。
以下の説明では、ローラを周方向に回転させることによりシートを搬送する方向(シートの長手方向)をY方向、搬送する方向と直交するローラ回転軸方向及び搬送されるシートの幅方向をX方向、搬送されるシートの厚み方向をZ方向として説明する。
【0017】
薬液塗工部10は、
図2に示すように、親油性の薬剤及び該薬剤の溶解剤を含む薬液7を帯状の液保持性シート4Bの一面に接触した状態で塗工する薬液塗工手段11を備えている。本実施態様においては、先ず、液保持性シートの原反ロール4Aから液保持性シート4Bを繰り出し、Y方向に搬送する。そしてY方向に搬送されている帯状の液保持性シート4Bの一面に、薬液塗工手段11を用いて、薬液7の塗工部分7aと薬液7の未塗工部分7bとを有するように部分的に薬液7を塗工して帯状の薬剤保持シート4を形成する(薬液塗工工程)。具体的には、薬液塗工手段11は、薬液7を貯留する貯槽(不図示)と、液保持性シート4Bに実際に薬液7を塗工するダイコーター12と、貯槽(不図示)に貯留されている薬液7をダイコーター12に送る送液手段としてのポンプ(不図示)とを備えている。ダイコーター12は、製造装置100においては、その吐出口13が、
図3に示すように、シートの幅方向(X方向)に2箇所に分離して形成されている。2箇所の吐出口13,13の合計幅は、液保持性シート4Bの幅方向(X方向)の全幅よりも狭く形成されている。尚、製造装置100においては、薬液塗工手段11に、ダイコーター12を用いているが、ダイコーター12に替えて、ローラ塗布、スクリーン印刷、ローラグラビア、ナイフコーティング、カーテンコーター等を用いてもよい。
【0018】
本実施態様の薬液塗工工程においては、液保持性シート4Bの原反ロール4Aから繰り出されてY方向に搬送されている帯状の液保持性シート4Bの一面に、薬液塗工手段11を用いて、薬液7の塗工部分7aを、薬液7の未塗工部分7bよりも、液保持性シート4Bの一面側から突出するように塗工して薬剤保持シート4を連続的に形成する。詳述すると、
図3に示すように、親水性繊維を含有する層4aと液不透過性フィルム層4bとが重なってラミネートされた帯状の液保持性シート4Bの親水性繊維を含有する層4a側に、2箇所の吐出口13を有するダイコーター12を用いて、薬液7をY方向に沿って連続的に帯状に塗工し、液保持性シート4Bの一面側から突出するように2条の薬液7の塗工部分7a,7aを形成する。このようにして、2条の薬液7の塗工部分7a,7aが形成された帯状の薬剤保持シート4を連続的に作成する。尚、突出するように塗工された塗工部分7aは、経時と共に親水性繊維を含有する層4aに吸収される。そして、薬液7の塗工部分7aを形成すると同時に、上述したように、ダイコーター12の2箇所の吐出口13,13の合計幅がシートの全幅よりも狭く形成されているので、Y方向に搬送されている帯状の液保持性シート4Bの搬送方向(Y方向)に沿う両側部と、2条の薬液7の塗工部分7a,7aの間の部分とが薬液7の未塗工部分7bとなり、Y方向に沿って連続的に帯状に延びる3条の薬液7の未塗工部分7b,7b,7bを形成する。このように、本実施態様の薬液塗工工程においては、薬液7の塗工部分7a及び未塗工部分7bを、帯状の薬剤保持シート4の幅方向(X方向)に交互に形成するとともに、薬剤保持シート4の搬送方向(Y方向)に帯状に形成する。
【0019】
液保持性シート4Bに薬液7を塗工した薬剤保持シート4は、100質量部の液保持性シート4Bに対して、薬液7が10〜1000質量部、特に500〜800質量部含有されて構成されていることが好ましい。
【0020】
薬液7は、親油性の薬剤及び該薬剤の溶解剤を含んでいる。親油性の薬剤としては、各種香料原料等が挙げられ、例えばメントール、イソプレゴール、メンチルアセテート、シネオール、ボルネオール、チモール及びこれらの誘導体が挙げられる。また、乳酸メンチル、3−1−メトキシプロパンジオール、N−エチル−3−p−メンタンカルボキシアミドや、ハッカ油、ペパーミント油等のメントールを含有した精油等も使用できる。薬剤としてメントールを用いた場合、温熱具1は、発熱体2による温熱付与機能に加えて、薬液7を塗工した薬剤保持シート4による香気放出、麻酔効果(鎮痛)機能を有するので好ましい。
【0021】
薬液7における薬剤の含有率は、薬剤の種類によって適宜設定される。例えば薬剤としてメントールを用いた場合、薬液7におけるメントールの含有率は、好ましくは0.5〜70質量%、更に好ましくは2.5〜40質量%である。
【0022】
また、薬液7で用いる薬剤の溶解剤としては、親油性の薬剤が分散又は溶解可能な溶剤を用いることができ、薬剤の種類に応じて、親油性の溶剤の中から適宜選択される。例えば、薬剤としてメントールを用いた場合、溶解剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エステル油、ヒマシ油、アルコール等を用いることができ、これらの2種以上を混合して用いても良い。薬液における溶解剤の含有率は、好ましくは30〜99.5質量%、更に好ましくは60〜97.5質量%である。
【0023】
薬液7には、親油性の薬剤及びその溶解剤に加えて、他の成分を含有させることができる。但し、薬液7には、被酸化性金属等の発熱性物質は含有されない。他の成分としては、例えば、界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤としては、公知のものを特に制限無く用いることができ、例えば、2−オクチルドデカノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
なお、薬液7としては、塗工時の温度付近において粘度が5〜100mPa・s、特に10〜50mPa・sであることが塗工のし易さや薬液の拡がり性の観点から好ましい。たとえば、薬剤としてメントールを使用する場合には、薬液7として50℃・50RHの条件下での粘度が上述の範囲であることが好ましい。なお、本粘度の測定は、B型粘度計の4号ローターを用い、ローター回転速度を60rpmで行う。
【0024】
次に、製造装置100においては、
図2に示すように、薬液塗工部10の下流に発熱組成物塗工部20が設置されている。本実施形態のように、薬液塗工部10の直ぐ下流側に発熱組成物塗工部20を設置すると、薬剤保持シート4の幅方向に間欠的に塗工した薬液7が、幅方向に拡がることを抑えることができるので好ましい。発熱組成物塗工部20は、
図2に示すように、スラリー状の発熱組成物3Aを塗工する発熱組成物塗工手段21を備えている。本実施態様においては、薬液塗工工程の後、発熱組成物塗工手段21を用いて、薬液7を部分的に塗工した薬剤保持シート4の一面側に、薬液7の塗工部分7a及び未塗工部分7bと重なるように、発熱組成物3Aを塗工して帯状の積層構造体前駆体を得る(発熱組成物塗工工程)。具体的には、発熱組成物塗工手段21は、発熱組成物3Aを貯留する貯槽(不図示)と、薬剤保持シート4の一面上に実際に発熱組成物3Aを塗布するダイコーター22と、貯槽(不図示)に貯留されている発熱組成物3Aをダイコーター22に送る送液手段としてのポンプ(不図示)とを備えている。ダイコーター22は、製造装置100においては、その吐出口23が、
図3に示すように、3条の薬液7の未塗工部分7b,7b,7bの内の幅方向(X方向)中央に位置する未塗工部分7bに対応する第1吐出口24と、第1吐出口24のX方向の両端に位置する一対の第2吐出口25,25との3つに区分されている。第1吐出口24の幅(X方向の長さ)は、前記中央に位置する帯状に延びる未塗工部分7bの幅(X方向の長さ)と略一致しており、各第2吐出口25の幅(X方向の長さ)は、帯状に延びる薬液7の塗工部分7aの幅(X方向の長さ)よりも広く形成されている。このように3つに区分された吐出口23の幅は、薬剤保持シート4の幅方向(X方向)の全幅と略一致して形成されている。また、第1吐出口24は、
図4に示すように、各第2吐出口25に比べて、発熱組成物3Aを塗工する薬剤保持シート4寄りに隆起している。第1吐出口24と各第2吐出口25との段差Tは、好ましくは0.1mm以上3mm以下であり、更に好ましくは0.5mm以上1.5mm以下である。尚、製造装置100においては、発熱組成物塗工手段21に、ダイコーター22を用いているが、ダイコーター22に替えて、ローラ塗布、スクリーン印刷、ローラグラビア、ナイフコーティング、カーテンコーター等を用いてもよい。
【0025】
発熱組成物塗工部20において塗工される発熱組成物3Aは、電解質を含まず、かつ被酸化性金属、反応促進剤及び水を含むものである。ここでいう電解質は、被酸化性金属に形成された酸化物を溶解させる目的で散布される電解質を意味し、すべての電解質を一切含まないという意味ではない。後述する電解質散布部30で散布する電解質3Bを実質的に含まないということであり、水として水道水を用いた場合に該水道水中に含まれる塩素成分などは、ここでいう電解質ではない。つまり、発熱体に、一定の継続した発熱状態を付与できない電解質は、ここでいう電解質ではない。
【0026】
発熱組成物3Aの調製は、例えば被酸化性金属と反応促進剤とを混合した後、更に水を加えつつ、均一になるまで混合して行うことができる。発熱組成物3Aの調製中に、被酸化性金属の表面が、例えば反応促進剤等によって傷つき該被酸化性金属の酸化が一時的に生じたとしても、発熱組成物3A中には電解質が含まれていないので、酸化によって形成された酸化被膜の溶解が生じず、それ以上の酸化が妨げられる。したがって、被酸化性金属は電解質と接するまでは実質的な酸化が進行しない。それゆえ、発熱組成物3Aの保管中の酸化反応の進行を抑えることができ、発熱ロスを低減できる。また、発熱組成物3Aに電解質が含まれていないことによって、塗工前や塗工中の発熱組成物3Aの成分は良好な分散性を維持する。また、発熱組成物3Aに電解質が含まれていないことによって、調整装置からダイコーター22に繋ぐ配管などの設備の腐食を抑制することができる。以上のことから、発熱組成物塗工部20において、被酸化性金属を空気と遮断するための特別の手当は必要ない。
【0027】
発熱組成物3Aは、被酸化性金属100質量部に対して、水を25質量部以上85質量部以下、特に35質量部以上75質量部以下含むことが好ましい。更に発熱組成物3A中に含まれている水の割合は、発熱組成物3Aの全体の質量に対して18質量%以上48質量%以下、特に23質量%以上43質量%以下であることが好ましい。
発熱組成物3Aの粘度は23℃・50RHにおいて、500〜30000mPa・s、特に1000〜15000mPa・s、とりわけ1000〜10000mPa・sであることが好ましい。粘度の測定は、B型粘度計の4号ローターを用いた。測定は、ローターを6rpmで回転させて行う。
【0028】
本実施態様の発熱組成物塗工工程においては、第1吐出口24及び一対の第2吐出口25,25に区分された口23を有するダイコーター22を用いて発熱組成物3Aを塗工する。そして、ダイコーター22は、第1吐出口24が、各第2吐出口25に比べて、発熱組成物3Aを塗工する薬剤保持シート4寄りに隆起している。その為、発熱組成物塗工工程において、薬剤保持シート4の一面における薬液7の未塗工部分7bに対する発熱組成物3Aの塗工は、その塗工位置が、薬剤保持シート4の一面における薬液7の塗工部分7aに対する発熱組成物3Aの塗工の塗工位置よりも薬剤保持シート4に近い位置で行われている。
【0029】
次に、製造装置100においては、
図2に示すように、発熱組成物塗工部20の下流に電解質散布部30が設置されている。電解質散布部30は、電解質3Bの散布装置31を備えている。本実施態様においては、発熱組成物塗工工程の後に、散布装置31を用いて、発熱組成物3Aに電解質3Bを散布して発熱層3を得る(電解質散布工程)。具体的に、散布装置31としては、例えばスクリューフィーダ、電磁フィーダ、オーガ式フィーダ等を用いることができる。本実施態様の電解質散布工程においては、搬送されている帯状の薬剤保持シート4の一面に形成された塗工層(発熱組成物)に向けて、散布装置31により電解質3Bを固体状態でY方向に沿って連続的に散布して帯状の積層構造体前駆体2Aを形成する。散布された電解質3Bは、直ちに又は所定の時間にわたって徐々に塗工層中に溶解し発熱層3を形成する。電解質3Bの散布に際しては、例えば香り成分のカプセルなどの他の固体成分(ただし被酸化性金属の粒子は除く)が共存してもよいが、好ましくは電解質3Bのみを単独で散布する。共存させる場合、他の固体成分は、先に述べた粘性物中に配合されることが好ましい。電解質3Bを単独で散布することで、それ以外の固体成分の発熱層3における分散性が向上するという有利な効果が奏される。特に、電解質3Bを固体状態で散布することで、発熱組成物3Aの水分量を少なくすることができ、基材シートに吸水させる水分量も少なくすることができるため、基材シートの坪量を減少させることができるという有利な効果が奏される。
【0030】
固体状態で散布される電解質3Bは、その形態に特に制限はない。例えば個々の粒子が目視可能な程度の大きさを有する粒状体でもよく。肉眼では目視不可能な程度の大きさを有する小粒子でもよい。発熱組成物3Aの塗工によって形成された塗工層への円滑な溶解の点からは、電解質3Bを小粒子の集合体としての粉体(粉末)の状態で散布することが好ましい。このように製造装置100を用いる本実施態様においては、電解質散布工程は、発熱組成物3Aを塗工した後に、少なくとも電解質を含む粉体を散布する。例えば平均粒子径が50以上1000μm以下、特に100以上800μm以下である粉体の状態で、電解質を散布することが好ましい。平均粒子径は、例えばJIS Z8801の標準ふるいを用いたふるい分け方法によって測定できる。
【0031】
電解質は、発熱体の使用時までに発熱層3に対して均一に存していればよく、電解質の電解質散布工程において電解質を塗工層に対し均一に散布しなくてもよい。
【0032】
なお、本実施態様においては、塗工層(発熱組成物)に電解質3Bが散布されることで発熱層3が形成され、被酸化性金属の酸化が開始するところ、この酸化を抑制するために、これ以降の製造ラインを非酸化性雰囲気に保つことが好ましい。
【0033】
次に、製造装置100においては、
図2に示すように、電解質散布部30の下流に重ね合わせ部40が設置されている。本実施態様においては、重ね合わせ部40にて、帯状の積層構造体前駆体2Aにおける発熱組成物3Aの塗工面上に、吸水性ポリマーの粒子を含む層を配する(吸収層配置工程)。具体的には、重ね合わせ部40は、ローラ41を備えている。ローラ41は、製造装置100においては、その幅(X方向の長さ)が、帯状の積層構造体前駆体2Aの全幅(X方向の全長)に亘って配されている。ローラ41は、搬送されている連続する帯状の積層構造体前駆体2Aに接することにより連れ回るようになっていてもよく、ローラの回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって、シートの搬送方向に対して正方向に或いは逆方向に回転するようになっていてもよい。ローラ41は、ローラの回転軸にZ方向に往復移動が可能な機構を有していてもよい。ローラ41は、その表面が弾性部材から形成されていてもよく、スポンジ等の多孔質で柔軟な材質から形成されていてもよい。
【0034】
本実施態様の吸収層配置工程においては、帯状の薬剤保持シート4の一面に添加されて形成された発熱層3を挟むように、ローラ41を介して、帯状の積層構造体前駆体2Aに帯状の基材シート5を重ね合わせる。言い換えれば、発熱層3の全体を被覆するように、別に搬送されている基材シート5を、ローラ41を介して発熱層3の上に重ねる。以上の工程によって、発熱層3が薬剤保持シート4と基材シート5とによって挟持された積層構造を有し、かつ連続長尺物からなる帯状の発熱体前駆体2Bが形成される。尚、Z方向に往復移動が可能な機構をローラ41が有していれば、ローラ41によって、発熱層3への基材シート5の押圧の程度、或いは、薬液含有シート4への発熱層3の押圧の程度を調整することができ、それらの密着状態を調整することができる。
【0035】
次に、製造装置100においては、
図2に示すように、重ね合わせ部40の下流に裁断部50が設置されている。裁断部50は、製造装置100においては、周面にカッター刃51を有するロータリーダイカッター52とアンビルローラ53とを備えている。本実施態様においては、発熱組成物塗工工程の後、ロータリーダイカッター52とアンビルローラ53とを用いて、帯状の積層構造体前駆体(発熱体前駆体2B)を所定長さに切断して枚葉の積層構造体前駆体(発熱体前駆体2B)を得る(切断工程)。具体的には、ロータリーダイカッター52のカッター刃51は、連続長尺状の帯状の発熱体前駆体2Bの全幅(X方向の長さ)よりも幅広に形成されている。本実施態様の切断工程においては、ロータリーダイカッター52とアンビルローラ53との間に、帯状の発熱体前駆体2Bを搬送して、カッター刃51で裁断し、毎葉の発熱体2を連続的に製造する。
【0036】
帯状の発熱体前駆体2Bの裁断は、各発熱体2の幅方向に延びるように行われればよく、例えば各発熱体2の幅方向にわたって直線的に行うことができる。あるいは、裁断線が曲線を描くように裁断を行うことができる。いずれの場合であっても、裁断によってトリムが発生しないような裁断パターンを採用することが好ましい。
【0037】
次に、製造装置100においては、
図2に示すように、裁断部50の下流にリピッチ部60が設置されている。リピッチ部60は、製造装置100においては、搬送ベルト61を備えている。搬送ベルト61は、その搬送速度が、裁断部50に設置されたアンビルローラ53の周速よりも高くなっている。
【0038】
本実施態様においては、毎葉の発熱体2を連続的に、速度の高い搬送ベルト61上に載置し、搬送方向(Y方向)において前後に隣り合う発熱体2間の距離を広げ、所定の距離を置いて発熱体2を再配置する。
【0039】
次に、製造装置100においては、
図2に示すように、リピッチ部60の下流に排出部70が設置されている。排出部70は、製造装置100においては、フライトコンベアを備えている。フライトコンベアは、回転軸が互いに平行になるように配置されている複数のローラ71と、各ローラ71間に架け渡された無端ベルト72とを有している。無端ベルト72は、
図2中、矢印方向(反時計方向)に周回するようになされている。無端ベルト72の周回軌道は、その一部に、被搬送物の支持面が鉛直方向(Z方向)下方を向く部位72aを有している。フライトコンベアは、無端ベルト72の内部における、前記下方を向く部位72aの位置に、サクションボックス73を有している。また、無端ベルト72には、サクションボックス73を起動することで、周回軌道の外部から内部へ向けて空気を吸引するための透孔(不図示)が複数設けられている。また、製造装置100においては、フライトコンベアよりも上流のいずれかの位置に欠陥検出用のセンサ(図示せず)が配置されている。そして該センサによって発熱体2の欠陥を検出することができるようになっている。
【0040】
本実施態様においては、毎葉の発熱体2を、フライトコンベアに搬送して、下方を向く部位72aに搬送する。下方を向く部位72aにおいては、無端ベルトに設けられた透孔から吸引することで毎葉の発熱体2をつり下げられた状態で支持し、無端ベルト72が周回することで毎葉の発熱体2を搬送する。そして、つり下げられた状態で発熱体2を搬送している際に、欠陥検出用のセンサで検出された欠陥品が下方を向く部位72aの排出ポイントに到達したら、当該排出ポイントにおけるサクションボックス73による空気の吸引を吹き出しに切り替え、欠陥品を落下させ、製造ラインから排出する。
【0041】
次に、製造装置100においては、
図2に示すように、排出部70の下流に被覆部80が設置されている。被覆部80は、製造装置100においては、無端ベルト81を備えている。
【0042】
本実施態様においては、排出部70を通過してきた発熱体2を、連続長尺物からなる一方の被覆シート6を搬送する無端ベルト81に受け渡す。この受け渡しは、排出部70から被覆部80への発熱体2の受け渡しの際に、無端ベルト72の透孔(不図示)を通じて行っていた吸引を停止することで行う。
【0043】
本実施態様においては、無端ベルト81により搬送されている連続長尺物からなる一方の被覆シート6上に、発熱体2を、搬送方向(Y方向)に間欠的に配置する。そして、発熱体2の全体を被覆するように、連続長尺物からなる他方の被覆シート6を重ね合わせる。以上の工程によって、発熱体2が一方の被覆シート6と他方の被覆シート6とによって挟持された構造を有し、かつ連続長尺物からなる温熱具1が形成される。その後、本実施態様においては、連続長尺物からなる温熱具1を、無端ベルト81によって封止部(不図示)に導入する。封止部(不図示)は、周面にシール凸部を有する第1のローラ(不図示)と、同じく周面にシール凸部を有する第2のローラ(不図示)とを備えている。封止部(不図示)においては、各温熱具1の前後左右から延出している両方の被覆シート6,6の延出部を、ヒートシールによって接合し、各発熱体2を取り囲むように接合する。このようにして、発熱体2の両面が被覆シート6によって被覆されてなる連続長尺状の温熱具1を製造する。この連続長尺状の温熱具1を、Y方向に隣り合う発熱体2同士の間毎に、幅方向(X方向)にわたって裁断し、温熱具1を連続的に製造する。
【0044】
製造される温熱具1の各部の形成材料について説明する。
発熱層3に含まれる被酸化性金属としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。被酸化性金属の粒子の粒径は、例えば0.1μm以上300μm以下程度とすることができる。発熱層3は、被酸化性金属に加えて反応促進剤、電解質3B及び水を含んでいる。反応促進剤としては、水分保持剤として作用するほかに、被酸化性金属への酸素保持/供給剤としての機能も有しているものを用いることが好ましい。反応促進剤としては、例えば活性炭(やし殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、シリカ等が挙げられる。電解質3Bとしては、被酸化性金属の粒子の表面に形成された酸化物の溶解が可能なものが用いられる。その例としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物又は水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点からアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の塩化物が好ましく用いられ、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄が好ましく用いられる。
【0045】
発熱体2における被酸化性金属の量は、坪量で表して好ましくは100g/m
2以上、より好ましくは200g/m
2以上であり、また、好ましくは3000g/m
2以下、より好ましくは1500g/m
2以下であることが、十分な発熱量を確保する観点から望ましい。発熱体2における反応促進剤の量は、好ましくは4g/m
2以上、より好ましくは8g/m
2以上であり、また、好ましくは300g/m
2以下、より好ましくは150g/m
2以下、特に好ましくは100g/m
2以下であることが、長時間にわたり安定な発熱を維持する観点から望ましい。同様の理由によって、発熱体2における電解質3Bの量は、好ましくは4g/m
2以上、より好ましくは5g/m
2以上であり、また、好ましくは80g/m
2以下、より好ましくは40g/m
2以下、特に好ましくは30g/m
2以下である。
【0046】
液保持性シート4Bとしては、親水性繊維を含有する層4aと液不透過性フィルム層4bとが重なってラミネートされたシートが用いられている。層4aを構成する親水性繊維としては、セルロース繊維を用いることが好ましい。セルロース繊維としては化学繊維(合成繊維)及び天然繊維を用いることができる。セルロースの化学繊維としては、例えばレーヨン及びアセテートを用いることができる。一方、天然のセルロース繊維としては、各種の植物繊維、例えば木材パルプ、非木材パルプ、木綿、麻、麦藁、ヘンプ、ジュート、カポック、やし、いぐさ等が挙げられる。これらのセルロース繊維のうち、太い繊維を容易に入手できる等の観点から、木材パルプを用いることが好ましい。液保持性シート4Bは、その坪量が、好ましくは10g/m
2以上200g/m
2以下であり、より好ましくは35g/m
2以上150g/m
2以下である。
【0047】
親水性繊維は、その繊維長が0.5以上6mm以下、特に0.8以上4mm以下であることが、湿式法又は乾式法での液保持性シート4Bの製造が容易である点から好ましい。液保持性シート4Bに占める親水性繊維の割合は、20質量%以上99.9質量%以下、特に50質量%以上99.5質量%以下であることが好ましい。
【0048】
液不透過性フィルム層4bを構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等の樹脂が挙げられる。ラミネートされた液保持性シート4Bは、公知のラミネート加工により製造することができる。
【0049】
基材シート5としては、吸水性ポリマーの粒子が含まれているシートが用いられている。基材シート5に吸水性ポリマーの粒子が存在する場合、例えば、(イ)吸水性ポリマーの粒子、熱融着性繊維及び親水性繊維が均一に混合した状態の1枚のシートを用いることができる。また(ロ)吸水性ポリマーの粒子が、該基材シートの厚み方向略中央域に主として存在しており、かつ該基材シートの表面には該粒子が実質的に存在していない構造を有するワンプライのものを用いることができる。更に(ハ)熱融着性繊維又は親水性繊維を含む同一の又は異なる繊維シート間に、吸水性ポリマーの粒子が配置された2枚の繊維シートの重ね合わせ体を用いることもできる。これら種々の形態をとり得る基材シート5のうち、発熱体2の発熱層3の含水率のコントロールを容易に行い得る観点から、基材シート5としては、(ロ)の形態のものを用いることが好ましい。基材シート5は、その坪量が、好ましくは10g/m
2以上200g/m
2以下であり、より好ましくは35g/m
2以上150g/m
2以下である。
【0050】
吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収・保持できかつゲル化し得るヒドロゲル材料を用いることが好ましい。粒子の形状は、球状、塊状、ブドウ房状、繊維状等であり得る。粒子の粒径は、1μm以上1000μm以下、特に10μm以上500μm以下であることが好ましい。吸水性ポリマーの具体例としては、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体などが挙げられる。吸水性ポリマーの粒子は、基材シート1A,1Bに含まれる繊維材料に接合されていることが好ましい。接合には、例えば吸水性ポリマーの粒子を湿潤させることで生ずる粘性を利用することができる。また、繊維材料からなるウェブに対し、重合性モノマー及び/又は該モノマーの重合進行物を含有する液状体を付着させ、重合させて形成した吸水性ポリマーの粒子を用いたものでもよい。この吸水性ポリマーの粒子は、繊維材料に接合された状態になっている。
【0051】
基材シート5に占める吸水性ポリマーの割合は、10質量%以上80質量%以下、特に20質量%以上70質量%以下であることが、発熱層3の含水率のコントロールの観点から好ましい。なお、この割合は、発熱組成物3Aの層が形成される前の乾燥状態にある基材シート5について測定された値である。
【0052】
被覆シート6は、シート同士を融着させる観点から、熱融着性繊維を含んで形成されていることが好ましい。熱融着性繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン−ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン−ポリエステル複合繊維、低融点ポリエステル−ポリエステル複合繊維、繊維表面が親水性であるポリビニルアルコール−ポリプロピレン複合繊維、並びにポリビニルアルコール−ポリエステル複合繊維等が挙げられる。複合繊維を用いる場合には、芯鞘型複合繊維及びサイド・バイ・サイド型複合繊維の何れをも用いることができる。これらの熱融着性繊維は、各々単独で用いることもでき、又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0053】
熱融着性繊維は、一般にその繊維長が30mm〜70mmであることが好ましく、その維径が1.0dtex〜50dtexであることが好ましい。被覆シート6に占める熱融着性繊維の割合は、0.1質量%以上10質量%以下、特に0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。被覆シート6は、その坪量が、好ましくは10g/m
2以上200g/m
2以下であり、より好ましくは35g/m
2以上150g/m
2以下である。
【0054】
2枚の被覆シート6,6の内の一方の被覆シート6は、通気性を有している。通気性を有している被覆シート6における通気度(JIS P8117 B型、以下、通気度というときにはこの方法の測定値を言う)は、好ましくは1秒/(100ml・6.42cm
2)以上、より好ましくは10秒/(100ml・6.42cm
2)以上であり、また、好ましくは50000秒/(100ml・6.42cm
2)以下、より好ましくは40000秒/(100ml・6.42cm
2)以下である。他方の被覆シートも通気性を有している場合には、その通気度は前記通気度よりも低いことが好ましい。例えばその通気度は、前記通気度よりも低いことを条件として、好ましくは200秒/(100ml・6.42cm
2)以上、より好ましくは300秒/(100ml・6.42cm
2)以上であり、また、好ましくは150000秒/(100ml・6.42cm
2)以下、より好ましくは100000秒/(100ml・6.42cm
2)以下である。
【0055】
以上説明したように、製造装置100を用いて発熱体2を備える温熱具1を製造する本実施態様の製造方法によれば、薬液塗工工程にて、液保持性シート4Bの一面に、薬液7の塗工部分7aと未塗工部分7bとを有するように部分的に薬液7を塗工し、その後、発熱組成物塗工工程にて、薬液7の塗工部分7a及び未塗工部分7bと重なるように、塗工された薬液7上に発熱組成物3Aを塗工している。その為、未塗工部分7bと発熱組成物3Aとが表面張力により接合され易く、層間剥離が生じ難くなっている。このように、層間剥離が生じ難ければ、例えば、毎葉の発熱体2を、フライトコンベアに搬送して、下方を向く部位72aに搬送し、該部位72aにて毎葉の発熱体2を、つり下げた状態でスムーズに搬送することができ、温熱具1の生産性が向上する。本実施態様の製造方法によれば、発熱体2の温熱特性が良好で、層間剥離が生じ難く、温熱付与と温熱付与以外の機能とを併せ持つ温熱具1を効率的に連続して製造することができる。また、薬液塗工工程にて、通気性を有する被覆シート6とは別の液保持性シート4Bの一面に薬液7を塗工しているので、被覆シート6の通気性が妨げられることが防止され、発熱体2の温熱特性を良好にすることが可能である。
【0056】
また、液保持性シート4Bとして、薬液7を塗工する面側を構成する親水性繊維を含有する層4aと、薬液7を塗工する面と反対側の他面側を構成する液不透過性フィルム層4bとが重なってラミネートされたシートを用いているので、薬液7が液不透過性フィルム層4b側から裏抜けし難く、温熱付与と温熱付与以外の機能とを併せ持つ温熱具1を効率的に連続して製造することができる。
【0057】
また、本実施態様の製造方法によれば、発熱組成物塗工工程において、薬剤保持シート4の一面における薬液7の未塗工部分7bに対する発熱組成物3Aの塗工は、その塗工位置が、薬剤保持シート4の一面における薬液7の塗工部分7aに対する発熱組成物3Aの塗工の塗工位置よりも薬剤保持シート4に近い位置で行われている。その為、未塗工部分7bと発熱組成物3Aとが表面張力により接合され易く、層間剥離が更に生じ難くなっている。また、発熱組成物塗工工程において、薬液7が塗工された薬剤保持シート4と塗工ノズルとのクリアランスの領域範囲を広く選択可能になるという長所がある。
また、Z方向に往復移動が可能な機構を有するローラ41を用いていれば、ローラ41によって、発熱組成物3Aの未塗工部分7bへの押圧の程度を調整することができ、それらの密着状態を調整でき、層間剥離を更に生じ難くすることができる。
【0058】
また、本実施態様の製造方法によれば、薬液塗工工程にて、薬液7の塗工部分7a及び未塗工部分7bを、帯状の薬剤保持シート4の幅方向(X方向)に交互に形成しているので、未塗工部分7bと発熱組成物3Aとが表面張力により接合され易く、層間剥離が更に生じ難くなっている。
【0059】
以上、本発明をその好ましい実施態様に基づき説明したが、本発明は前記実施態様に制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0060】
例えば上記実施態様においては、発熱体2を備える温熱具1を製造しているが、本発明の積層構造体を備える温熱具の製造方法は、発熱層3及び薬液7を含有したシートのみからなる積層構造体を備える温熱具の製造方法に利用できる。
【0061】
また、上記実施態様においては、発熱組成物塗工工程の後に電解質散布工程を備えているが、発熱組成物塗工工程にて発熱組成物3Aを塗工すると同時に電解質3Bを散布してもよい。
【0062】
また、上記実施態様の発熱組成物塗工工程において、薬液7の未塗工部分7bに対する発熱組成物3Aの塗工は、その塗工位置が、薬液7の塗工部分7aに対する発熱組成物3Aの塗工の塗工位置よりも薬剤保持シート4に近い位置で行われているが、同じ塗工位置から塗工していてもよい。
【0063】
また、上記実施態様の薬液塗工工程において、薬液7の塗工部分7a及び未塗工部分7bを、帯状の薬剤保持シート4の幅方向(X方向)に交互に形成しているが、薬剤保持シート4の搬送方向(Y方向)に交互に形成してもよい。
【0064】
また、上記実施態様において、液保持性シート4Bとしてラミネートシートが用いられているが、ラミネートシートでなくてもよい。また、基材シート5として吸水性ポリマーの粒子が含まれたシートが用いられているが、吸水性ポリマーの粒子が含まれていないシートであってもよい。また、基材シート5は、シート形状のもの以外に、吸水性ポリマーの粒子が含まれたウェブ形状のものであってもよい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0066】
(1)薬液の調製
親油性の薬剤としてメントールを用い、薬剤の溶解剤としてポリエチレングリコールを用いた薬液を調製した。薬液におけるメントールの含有率は30質量%であり、薬液における溶解剤の含有率は70質量%であった。薬液の粘度は20mPa・sであった。粘度の測定は、B型粘度計の4号ローターを使用し、回転数60rpmにて50℃50%RHの環境で行った。
【0067】
(2)塗料の調製
塗料として、被酸化性金属(鉄粉平均粒径50μm)100質量部、反応促進剤(活性炭)8質量部、増粘剤(グアーガム)0.25質量部、水62質量部が配合されているものを用いた。得られた塗料の粘度は6,500mPa・sであった。粘度の測定は、B型粘度計の4号ローターを使用し、23℃50%RHの環境で行った。
【0068】
(3)液保持性シートの準備
親水性繊維としてパルプを用いた親水性の層と、ポリエチレン樹脂を用いた液不透過性フィルム層とをラミネート加工したシートを準備した。準備したシートの坪量は、100g/m
2であり、該シートに占める親水性繊維の割合は80質量%であった。なお、親水性の層と液不透過性フィルム層とは同形同大のものを使用した。
【0069】
(4)基材シートの準備
基材シートとして吸水性ポリマーとパルプを含有する吸水性シート(以下、ポリマーシートという)を準備した。準備したポリマーシートは、特開平8−246395号公報の実施例4に記載の方法に準じて作成した。このポリマーシートは、ポリアクリル酸ナトリウム系の吸水性ポリマーの粒子が、該ポリマーシートの厚み方向略中央域に主として存在しており、かつ該ポリマーシートの表面には該粒子が実質的に存在していない構造を有する1枚(ワンプライ)のものである。吸水性ポリマーは、平均粒径340μmのものを使用し、粒子の坪量は、50g/m
2であった。したがって、ポリマーシート全体の坪量は100g/m
2であった。
【0070】
(5)被覆シートの準備
被覆シートとしては、興人製のコウジンTSF(透気度:JIS P8117,20000秒/100cc、坪量:45g/m
2)を用いた。
【0071】
〔実施例1〕
図2に示す装置を用いて
図1に示す発熱具を作製した。具体的には、(3)で準備した液保持性シートに、(1)で調製した薬液を塗工し、幅方向(X方向)に離間した2条の薬液塗工部分を搬送方向(Y方向)に沿って形成した薬剤保持シートを得た。なお、液保持性シートの幅は、100mmとし、薬液塗工部X方向の塗工幅は、25mmとし、中央の薬液未塗工部分は、25mm、両端の未塗工部は、それぞれ12.5mmとした。薬液は、100質量部の液保持性シートに対して60質量部含有させた。次いで、薬液塗工部分と薬液非塗工部分とに重ねるように、(2)で調製した塗料を塗工坪量2000g/m
2で塗工し、次いで電解質(塩化ナトリウム)の粉末(平均粒径425μm)を散布した。散布坪量は40g/m
2とした。散布は、塗料の塗工面の全域にわたり均一に行った。引き続き、形成された発熱層上に(4)で準備した基材シートを配して積層構造体である帯状の発熱体を製造した。その後、製造された帯状の発熱体を裁断し、毎葉の発熱体とし、(5)で準備した被覆シートで覆って、実施例1の温熱具を製造した。
【0072】
〔実施例2〕
(1)で調製した薬液を、(3)で準備した液保持性シートに搬送方向(Y方向)に間欠的に塗工し、搬送方向(Y方向)に薬液塗工部分と薬液非塗工部分とが交互に形成された薬剤保持シートを得る以外は、実施例1と同様にして、実施例2の温熱具を製造した。
【0073】
〔比較例1〕
(1)で調製した薬液を、(3)で準備した液保持性シートの一面全体に塗工して薬剤保持シートを形成した。それ以降は、実施例1と同様にして、比較例1の温熱具を製造した。
【0074】
〔比較例2〕
(3)で準備した液保持性シートに、(2)で調製した塗料を塗工坪量2000g/m
2で塗工して薬剤保持シートを形成し、次いで電解質(塩化ナトリウム)の粉末(平均粒径425μm)を散布して発熱層を形成した。その後、液保持性シートの一面に形成された発熱層に、(1)で調製した薬液を一面全体に滴下した。それ以降は、実施例1と同様にして、比較例1の温熱具を製造した。
【0075】
〔比較例3〕
(1)で調製した薬液と(2)で調製した塗料とを混合し、該混合液を(3)で準備した液保持性シートに塗工して薬剤保持シートを形成し、次いで電解質(塩化ナトリウム)の粉末(平均粒径425μm)を散布した。それ以降は、実施例1と同様にして、比較例1の温熱具を製造した。
【0076】
〔加工性の評価〕
実施例及び比較例で得られた発熱具について、製造過程における加工性について、以下の基準で評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
A:搬送中に層間剥離が発生せず、搬送に問題なく、良好である。
B:搬送中に層間剥離が発生し、不良品となった。
【0077】
〔温熱性の評価〕
実施例及び比較例で得られた温熱具について、アルミニウムを蒸着したフィルムからなる包装材に密封収容し、23度50%RHの環境で24時間静置した後、以下の方法で温度特性を測定した。温度測定は、JIS S4100 使い捨てカイロ温度特性測定用温熱装置に準拠した試験法で行った。実施例及び比較例で得られた温熱具を、坪量100g/m
2のニードルパンチ不織布製の袋に挿入し、これを40℃の恒温槽の上に置き温度特性を評価した。この袋は、ニードルパンチ不織布の三方をシールすることで袋状に形成したものである。温度計は温熱具と恒温槽表面との間に配置した。この測定により、最高温度が54℃以下であること、1〜5時間の平均温度が42〜52℃であること、38℃以上の持続時間が5時間以上あることを満足した場合を「A」、いずれかを満足していない場合を「B」とした。その結果を以下の表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示す結果から明らかなとおり、実施例1〜2の温熱具は、比較例1〜4の温熱具に比べて、層間剥離が生じ難く、加工性が良好であった。また、実施例1〜2の温熱具は、比較例1〜3の温熱具に比べて、温熱性が良好であった。従って、実施例1〜2の温熱具は、温熱付与と温熱付与以外の機能とを良好に発揮することができる。また、比較例1〜3の温熱具は、製造中に、層間剥離が発生し、まともに製造することができなかった。
【0080】
なお、上述の実施例では、
図4に示すダイコーター(段差部分が非段差部分より0.7mm高いもの)を使用し、非塗工物である薬液塗工後の液体保持性シート4とダイコーターのクリアランスを1.7mmとして行った。本ダイコーターを用いた場合は、クリアランスを1.25mm〜1.45mmの範囲で発熱体組成物の塗布ムラがなく、かつ、薬液の液だれを生じずに塗工を行えることを確認した。これは、段差のないダイコーターを用いた場合のクリアランス範囲(1.8mm〜1.9mm)よりも広い。しかも、段差部分のないダイコーターよりも塗膜ムラを抑えることができ、良好な塗工状態を得ることができた。