特許第6383238号(P6383238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6383238-吸気バルブ支持構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383238
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】吸気バルブ支持構造
(51)【国際特許分類】
   F01L 3/08 20060101AFI20180820BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20180820BHJP
   F02F 1/42 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   F01L3/08 H
   F02F1/24 F
   F02F1/42 D
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-209598(P2014-209598)
(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公開番号】特開2016-79832(P2016-79832A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 永哉
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−028610(JP,U)
【文献】 特開2005−240666(JP,A)
【文献】 実開平02−122155(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 3/08
F02F 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドの上部を貫通して吸気ポートまで到るバルブガイドにより吸気バルブのステム部を摺動自在に支えるようにした吸気バルブ支持構造であって、前記吸気バルブ直上で吸気ポートの天井面から突き出しているバルブガイド下端周囲の少なくとも一部に、該バルブガイドから離間した位置で下向きにエッジ形状を成すよう水切り部を形成し、前記吸気ポートの天井面から流下する液状物が前記バルブガイド下端に伝わないように構成したことを特徴とする吸気バルブ支持構造。
【請求項2】
排気系から排気ガスの一部を抜き出して吸気系へ再循環するEGR装置を備えたエンジンに適用したことを特徴とする請求項に記載の吸気バルブ支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気バルブ支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は車両に搭載されるエンジンの一例を示すもので、図中1はシリンダブロック、2は燃焼室、3はピストン、4は吸気バルブ、5は吸気ポートを夫々示し、プッシュロッド6に突き上げられて傾動するロッカーアーム7により前記吸気バルブ4が吸気行程で押し下げられる結果、前記吸気バルブ4が開作動されて燃焼室2と吸気ポート5とが連通し、該吸気ポート5からの吸気8がピストン3の下降により燃焼室2内に取り込まれるようになっている。
【0003】
ここで、前記吸気バルブ4は、その弁軸となっているステム部11がスリーブ状のバルブガイド10により摺動自在に支えられるようになっており、このバルブガイド10は、シリンダヘッド9の上部を貫通して吸気ポート5まで到り、その下端が前記吸気ポート5の天井面から僅かに突き出した状態となっている。
【0004】
尚、ここに例示しているような吸気バルブ支持構造に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−11229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両に搭載されるエンジンにあっては、排気系から排気ガスの一部を抜き出して吸気系へと再循環し、その吸気系に戻された排気ガスでエンジン内での燃料の燃焼を抑制させて燃焼温度を下げることによりNOxの発生を低減するようにした、いわゆるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置を備えたものがあり、図3に拡大して示す如く、吸気8に混合される排気ガス中に含まれている燃料や油などが吸気ポート5の壁面に付着して液状物12として流れ落ち、バルブガイド10の下端におけるステム部11との段差部分に溜まり、ここで硬化することでステム部11の摺動を阻害して吸気バルブ4の作動不良を招く虞れがあった(図3中の黒塗り部分xを参照)。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、吸気バルブのステム部の摺動を良好に維持して前記吸気バルブの作動不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリンダヘッドの上部を貫通して吸気ポートまで到るバルブガイドにより吸気バルブのステム部を摺動自在に支えるようにした吸気バルブ支持構造であって、前記吸気バルブ直上で吸気ポートの天井面から突き出しているバルブガイド下端周囲の少なくとも一部に、該バルブガイドから離間した位置で下向きにエッジ形状を成すよう水切り部を形成し、前記吸気ポートの天井面から流下する液状物が前記バルブガイド下端に伝わないように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
而して、このようにバルブガイド下端周囲の必要な範囲に水切り部を形成しておけば、燃料や油などが吸気ポートの壁面に付着して液状物として流れ落ちても、該液状物が水切り部で滴下してバルブガイド下端まで伝わなくなり、該バルブガイド下端におけるステム部との段差部分で燃料や油などの成分が硬化する現象が未然に回避されてステム部の摺動が良好に維持されることになる。
【0010】
また、本発明においては、排気系から排気ガスの一部を抜き出して吸気系へ再循環するEGR装置を備えたエンジンに適用することが好ましく、このようにすれば、排気系から吸気系に再循環された排気ガス中に含まれる燃料や油などが吸気ポートの壁面に付着して液状物として流れ落ちることを要因とする吸気バルブの作動不良への有効な対策となる。
【発明の効果】
【0012】
上記した本発明の吸気バルブ支持構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0013】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、吸気ポートの壁面に付着して流れ落ちた燃料や油などの液状物をバルブガイド下端まで伝わないようにすることができるので、該バルブガイド下端におけるステム部との段差部分で燃料や油などの成分が硬化する現象を未然に回避することができ、吸気バルブのステム部の摺動を良好に維持して前記吸気バルブの作動不良を防止することができる。
【0014】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、排気系から排気ガスの一部を抜き出して吸気系へ再循環するEGR装置を備えたエンジンに関し、吸気バルブに作動不良が生じる虞れを懸念することなく排気ガスの再循環を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
図2】車両に搭載されるエンジンの一例を示す断面図である。
図3図2の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図2及び図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0019】
本形態例においては、EGR装置により排気系から吸気系に再循環された排気ガス中に含まれる燃料や油などが吸気ポート5の壁面に付着して液状物12として流れ落ちることを要因とする吸気バルブ4の作動不良への対策として、該吸気バルブ4直上で吸気ポート5の天井面から突き出しているバルブガイド10下端周囲の少なくとも一部に、該バルブガイド10から離間した位置で下向きにエッジ形状を成すよう水切り部13を形成し、前記吸気ポート5の天井面から流下する液状物12が前記バルブガイド10下端に伝わないように構成している。
【0020】
より具体的には、バルブガイド10下端周囲における吸気ポート5の天井面が連続的に上向きに拡張する形状を成している範囲に水切り部13を形成するようにしており、例えば、図中の右側のバルブガイド10下端周囲については、その図中右側の約半周分の範囲について水切り部13を形成する一方、図中の左側のバルブガイド10下端周囲については、その全周に亘って水切り部13を形成するようにしている。
【0021】
而して、このようにバルブガイド10下端周囲の必要な範囲に水切り部13を形成しておけば、排気系から吸気系に再循環された排気ガス中に含まれる燃料や油などが吸気ポート5の壁面に付着して液状物12として流れ落ちても、該液状物12が水切り部13で滴下してバルブガイド10下端まで伝わなくなり、該バルブガイド10下端におけるステム部11との段差部分で燃料や油などの成分が硬化する現象が未然に回避されてステム部11の摺動が良好に維持されることになる。
【0022】
また、特に本形態例においては、バルブガイド10下端周囲における吸気ポート5の天井面が連続的に上向きに拡張する形状を成している範囲に水切り部13を形成しているので、前記バルブガイド10下端周囲における必要最小限の範囲に水切り部13を形成するだけで済む。
【0023】
従って、上記形態例によれば、吸気ポート5の壁面に付着して流れ落ちた燃料や油などの液状物12をバルブガイド10下端まで伝わないようにすることができるので、該バルブガイド10下端におけるステム部11との段差部分で燃料や油などの成分が硬化する現象を未然に回避することができ、吸気バルブ4のステム部11の摺動を良好に維持して前記吸気バルブ4の作動不良を防止することができ、排気系から排気ガスの一部を抜き出して吸気系へ再循環するEGR装置を備えたエンジンに関し、吸気バルブ4に作動不良が生じる虞れを懸念することなく排気ガスの再循環を実施することができる。
【0024】
また、バルブガイド10下端周囲における必要最小限の範囲に水切り部13を形成するだけで燃料や油などの液状物12を確実にバルブガイド10下端に伝わないようにすることができ、既存の吸気ポート5に対し僅かな形状変更を施すだけで実施することができる。
【0025】
尚、本発明の吸気バルブ支持構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
4 吸気バルブ
5 吸気ポート
8 吸気
9 シリンダヘッド
10 バルブガイド
11 ステム部
12 液状物
13 水切り部
図1
図2
図3