特許第6383246号(P6383246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383246可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造並びに取付方法、及びこれを備えた物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383246
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造並びに取付方法、及びこれを備えた物品
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/32 20060101AFI20180820BHJP
   A41D 27/20 20060101ALI20180820BHJP
   A41D 3/04 20060101ALI20180820BHJP
   A45C 13/10 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A44B19/32
   A41D27/20 H
   A41D3/04
   A45C13/10
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-216504(P2014-216504)
(22)【出願日】2014年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-83037(P2016-83037A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070507
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】小林 達哉
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/091585(WO,A1)
【文献】 実開昭63−189010(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3168713(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0040837(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/00−19/64
B65D 33/25
A41D 3/04
A45C 13/10
A41D 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長穴状の開口部を有する可撓性シートとスライドファスナーとを備え、
前記スライドファスナーはファスナー開閉部を有するファスナーテープと該ファスナー開閉部に沿って往復動可能なスライダーを有し、
当該可撓性シートの底面側に前記スライドファスナーを取着して、前記スライドファスナーにおけるスライダー及びファスナー開閉部が、前記可撓性シートの開口部から露呈させる構成とした、可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造において、
前記開口部の一端部の可撓性シートから連続する余剰片を当該可撓性シートの下面側へ曲げ返した状態で保持されており、
前記余剰片は、当該可撓性シートとスライドファスナーとの間に配置され、
更に重合された余剰片及び可撓性シートによって前記開口部から連続し且つ当該可撓性シートが上方へ膨らんでなる保形部を有し、前記スライドファスナーのスライダーの少なくとも一部を収納可能な収納空間を有することを特徴とする可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造。
【請求項2】
前記可撓性シートは積層構造を有し、少なくとも防水性及び通気性を兼備する層を含むことを特徴とする請求項1記載のスライドファスナーの取付構造。
【請求項3】
前記可撓性シートが衣服生地であり、請求項1又は2に記載の可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造を備えたことを特徴とする衣服。
【請求項4】
前記可撓性シートが袋物の構成生地であり、請求項1又は2に記載の可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造を備えたことを特徴とする袋物。
【請求項5】
可撓性シートに対して長穴状の開口を形成し、該開口の一端の左右から切込を当該開口の長手方向へ形成し、切込間に形成された余剰片を、当該切込の端部相互を結ぶラインから当該可撓性シートの下面側へ曲げ返した状態で保持し、
可撓性シートにおける開口上端位置に対して、熱プレス加工を行うことによって、前記開口から連続し且つ可撓性シートが上方へ膨らんでなる保形部を形成し、
前記可撓性シートの開口部の下方から、当該スライドファスナーのスライドファスナーテープと当該可撓性シートとを重合し、スライドファスナーの閉状態において、スライダーの少なくとも一部が保形部内に配置されるように前記ファスナーテープと可撓性シートとを固着することを特徴とする可撓性シートに対するスライドファスナーの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてスポーツウェア等の衣類やリュックサック等の袋物等に用いられるスライドファスナーの取付構造、並びに取付方法、及び当該スライドファスナーの取付構造を備えた衣類、袋物等の物品に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、スライドファスナーは、シート状部材の開口等に設けられ、左右の務歯列を前記スライダーの往復動により係脱させることで前記開口の開閉を行うものである。スポーツウェア等の衣類のポケット等や、リュックサック等の袋物等の開口の開閉手段等に多用される。
【0003】
ところが、上記スライドファスナーは、袋物等の開口を全閉状態とした場合に、スライダーとこれに近接する前記袋物の開口の端部との間に、若干の隙間が生じることが多い。このため、野外では降雨等によって前記隙間から雨水等が浸入し、袋物等の内部に水濡れが生ずることがある。
【0004】
このような雨水等の浸入を防止するための構造を備えたスライドファスナーの取付構造として、前記スライダーとこれに近接する前記袋物の開口の端部との間隙を被覆する構造を備えたものが開発されている。
【0005】
具体的には、例えば、径片によって開かれる接合部閉鎖端の開口を密封し得るものであって、開口に弾性材料に支持されるカバーを設け、接合部に沿って径片の走行し得る通路を自由ならしめ、接合部の両側における弾性材料と密封係合をなし得るように通路に対する密封装置を備えたものが公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、防水性テープの一側縁を全長に亘り折曲し、そのテープ折曲部の中間部に設けた凹溝内に務歯を列ねて包持し、凹溝の外周に務歯クランプ阻止を挟持した左右一対のファスナーストリンガーを、互いに間隔をあけて面上端部に亘って連結した上止部で一体に形成し、これにスライダーが挿通してあって、前記左右の面テープ折曲部における上止部近傍において、スライダーの楔部の両側に対応する部分及び該部分により上部の左右間隔が、スライダー楔部の幅と略相応していること、並びに、テープ折曲部の基部における左右間隔が、スライダー楔部の幅よりも狭く形成したことを特徴とする機密防水型スライドファスナーが公知である(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
更に、自動車用シートのシート表皮に取り付けられるスライドファスナーの閉鎖端を仕舞い込み処理するに、スライドファスナーの閉鎖端寄りに、両布テープの端末部を含むスライダー、引き手を開放口より内部に入れ込める収納部を片方の布テープに縫い付けて設けたことを特徴とする自動車用シートにおけるスライドファスナーの閉鎖端処理構造(例えば、特許文献3参照。)や、物品の形態に美的創作性を有するものとしてのスライドファスナーのカバー部材(例えば、特許文献4及び特許文献5)が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭35−9296号公報
【特許文献2】登録実用新案第3186101号公報
【特許文献3】特許第5477641号公報
【特許文献4】登録意匠第1210147号
【特許文献5】登録意匠第1210148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらのいずれの構成においても、前記間隙を被覆する部分の構成は、合成樹脂若しくは生地等の部材を縫着若しくは溶着等して構成されるものである。このため、ベースとなる生地に対して異なる部材を別途用意する必要があり、このことが原価コストの上昇を招来していた。また、これらは異なる部材を縫着若しくは溶着等によって取り付ける手間が生じる点で、製造工程における手間も生じていた。
【0010】
更に、上記のような各特許文献に係るカバーを設けたスライドファスナーは、例えばスポーツウェア等の衣類等に用いる場合に、着用に際してカバーが肌に接触することで、違和感や不快な刺激を生じやすい欠点がある点で問題であった。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、野外での降雨等によって前記隙間から雨水等が浸入することを防止できることを前提として、ベースとなる生地に対して異なる部材を別途用意する必要がなく、原価コストを抑制できる優れたスライドファスナーの取付構造、及びこれを備えた物品の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【0012】
また本発明は、上記発明が解決しようとする課題に加え、スポーツウェア等の衣類等に用いる場合には、着用に際して違和感等を生じ難いスライドファスナーの取付構造、及びこれを備えた物品の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、長穴状の開口を有する可撓性シートとスライドファスナーとを備え、前記スライドファスナーはファスナー開閉部を有するファスナーテープと該ファスナー開閉部に沿って往復動可能なスライダーを有し、当該可撓性シートの底面側に前記スライドファスナーを取着して、前記スライドファスナーにおけるスライダー及びファスナー開閉部が、前記可撓性シートの開口から露呈させる構成とした、可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造において、前記開口の一端部の可撓性シートから連続する余剰片を当該可撓性シートの下面側へ曲げ返した状態で保持されており、前記余剰片は、当該可撓性シートとスライドファスナーとの間に配置され、更に重合された余剰片及び可撓性シートによって前記開口から連続した開口を有し且つ当該可撓性シートが上方へ膨らんでなる保形部を有し、前記スライドファスナーのスライダーの少なくとも一部を収納可能な収納空間を有することを特徴とする可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造を、課題を解決するための手段とする。
【0014】
また本発明は、上記発明の構成を前提として、前記可撓性シートは積層構造を有し、少なくとも防水性及び通気性を兼備する層を含むことを特徴とする、可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造を、課題を解決するための手段とする。
【0015】
また本発明は、上記何れかの発明の構成を前提として、前記可撓性シートが衣服生地である、可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造を備えた衣服、並びに、前記可撓性シートが袋物の構成生地である、可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造を備えたことを特徴とする袋物を、課題を解決するための手段とする。
【0016】
また本発明は、可撓性シートに対して長穴状の開口を形成し、該開口の一端の左右から切込を当該開口の長手方向へ形成し、切込間に形成された余剰片を、当該切込の端部相互を結ぶラインから当該可撓性シートの下面側へ曲げ返した状態で保持し、スライドファスナーにおけるファスナーテープの上面に熱融着材を配置し、前記スライドファスナーのスライダーを熱プレス加工に干渉しない位置として、前記可撓性シートの開口の下方から、当該スライドファスナーのスライドファスナーテープと当該可撓性シートとを重合し、可撓性シートにおける開口上端位置に対して、熱プレス加工を行うことによって、前記開口部から連続し且つ可撓性シートが上方へ膨らんでなる保形部を形成するとともに、前記ファスナーテープと可撓性シートとを固着することを特徴とする可撓性シートに対するスライドファスナーの取付方法を、上記課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、可撓性シートに形成した長穴状の開口の一端部から連続する余剰片を当該可撓性シートの下面側へ曲げ返した状態で保持し、前記余剰片は、当該可撓性シートとスライドファスナーとの間に配置され、更に重合された余剰片及び可撓性シートによって前記開口から連続し且つ当該可撓性シートが上方へ膨らんでなる保形部を有し、前記スライドファスナーのスライダーの少なくとも一部を収納可能な収納空間を有することとしたから、スライダーとこれに近接する前記袋物の開口の端部との間にできる若干の隙間から雨水等が浸入することを保形部によって防止できることは勿論、当該保形部は、可撓性シートが余剰片の曲げ返し部分によって厚みが増加され、この状態で固化形成されるため、当該保形部の形状が安定し、ベースとなるシートに対して異なる部材を別途用意する必要がなくなり、コストの低減を図ることができる。
【0018】
また、請求項2に係る発明によれば、上記請求項1に係る発明の構成を前提として前記可撓性シートは積層構造を有し、少なくとも防水性及び通気性を兼備する層を含むこととしたから、上記請求項1に係る発明の作用効果を奏する上に、当該防水性及び通気性を兼備する層との組み合わせによってより高度の防水性能を得ることができる。
【0019】
また請求項3に係る発明によれば、上記請求項1又は2に記載の発明の構成を前提として、前記可撓性シートを衣服生地とすることから、上記請求項1又は2に係る発明の作用効果を奏する上に、当該保形部が異なる部材を取付けることがないため、着用に際して異物が肌に接触することによる違和感や不快な刺激を生じるということがなく、また保形部の形成の際に保形部の周縁に縫い目を形成することもないため、衣服生地の滑らかさを損なうことがなく、心地良い着用感に資することができる。
【0020】
また請求項4に係る発明によれば、上記請求項1又は2に記載の発明の構成を前提として、前記可撓性シートを袋物としたから、上記請求項1又は2に係る発明の作用効果を奏する上に、当該保形部が異なる部材を取り付けることがなく、更に、保形部の形成の際に保形部の周縁に縫い目を形成することもないため、外観デザインをよりシンプルなものとすることができる利点を有する。
【0021】
また請求項5に係る発明によれば、可撓性シートに対して長穴状の開口を形成し、該開口の一端の左右から切込を当該開口の長手方向へ形成し、切込間に形成された余剰片を、当該切込の端部相互を結ぶラインから当該可撓性シートの下面側へ曲げ返した状態で保持し、可撓性シートにおける開口上端位置に対して、熱プレス加工を行うことによって、前記開口から連続し且つ可撓性シートが上方へ膨らんでなる保形部を形成し、前記可撓性シートの開口の下方から、当該スライドファスナーのスライドファスナーテープと当該可撓性シートとを重合し、スライドファスナーの閉状態において、スライダーの少なくとも一部が保形部内に配置されるように前記ファスナーテープと可撓性シートとを固着することとしたから、独立した他の部材を用いることなく、可撓性シートによって保形部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例に用いる(a)可撓性シートを示す斜視図、(b)当該可撓性シートに開口、二本の溝部及び余剰片を設けた状態を示す斜視図である。
図2】同実施例に用いる(a)可撓性シートの余剰片を下方に曲げ返した状態を示す斜視図、(b)及びそのA−A断面図である。
図3】(a)金型(上型、下型)で可撓性シートに保形部を成形する前の状態を示す縦断面図、(b)金型(上型、下型)で可撓性シートに保形部を成形した状態を示す縦断面図、及びその一部拡大図である。
図4】本発明の実施例に用いる可撓製シート及びスライドファスナーテープの取付前の状態を示す斜視図である。
図5】(a)本発明の実施例に係る可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造を示す斜視図、(b)同取付構造の一部縦断面図である。
図6】(a)本発明の実施例に係る可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造を保形部として備えた衣服を示す説明図,(b)本発明の実施例に係る可撓性シートに対するスライドファスナーの取付構造を保形部として備えた袋物を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施例に係る可撓性シートに対するスライドファスナーの取付方法、及び当該取付方法によって形成される取付構造を示す。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例に係る可撓性シート2に対するスライドファスナー1の取付構造における当該可撓性シート2は、図1に示すように、撥水機能を有する表面生地20と、防水透湿性を有する裏面生地21とを溶着により重合したものとしている。
【0025】
また、本実施例におけるスライドファスナー1は、合成樹脂製の務歯列10aの係脱によって左右に係合分離可能なスライドファスナーテープ10と、該スライドファスナーテープ10の前記務歯列10a上を往復動可能なスライダー11とを備えたスライドファスナー1である。
前記スライダー11はスライダー本体11a及びこれに取着される摘み部11bを有する。
【0026】
図1(b)に示すように、前記当該可撓性シート2には、長穴状の開口22をレーザー加工によって切断形成するとともに、当該開口22の一端側左右から、当該開口22の外方へ、相互に開口幅を保って平行に切込23を形成している。本実施例においては、開口幅は約13mm程度で、切込長さは約15mm程度としている。当該二本の切込23によって、開口の当該一端には長さ約15mm、幅約13mm程度となる余剰片25が形成される。
【0027】
図2(a)(b)に示すように、前記当該可撓性シート2における余剰片25の基端、即ち、切込23の先端部相互を結ぶ仮想線24を折り曲げ位置として、当該余剰片25を下方へ折り曲げた状態とする。
【0028】
そして図3(a)(b)に示すように、当該余剰片25の折り曲げ状態を保持して裏返して、保形部26を形成するための金型によって熱プレス加工を行う。
【0029】
下型P2には保形部26を形成するための金型凹部P20、上型P1には前記金型凹部P20に対応する金型凸部P10を備えている。上型P1及び下型P2間に余剰片25の折り曲げ状態が保持された可撓性シート2を配置し、加熱された上型P1及び下型P2で可撓性シート2を挟持押圧する。
【0030】
当該可撓性シート2は金型凹部P20及び金型凸部P10の熱プレスによって可撓性シート2が前記金型内において伸張状態で固化され、保形部26を構成する。
【0031】
次に、図4に示すように、開口の下側からスライドファスナー1のスライダー11の往復動が確保でき、且つスライドファスナー1の閉状態において前記保形部26内にスライダー11が位置するように配置して、裏面生地21に対して熱接着テープ3を用いてスライドファスナー1を取付ける。
【0032】
以上の取付方法によって、図5(a)(b)に示す可撓性シート2に対するスライドファスナー1の取付構造を実現できる。尚、図5(b)には熱接着テープ3を記載しているが、当該熱接着テープは事実上、スライドファスナーテープ10及び可撓性シート2間で溶融、含浸した状態となる。
【0033】
上記余剰片25が曲げ返されて当該箇所における可撓性シート2の厚みが増加した状態で、保形部26が固化されて形成されるため、他の部品を設けることなく、可撓性シート2のみで実用に耐えることができ、且つ安価に形成できる当該保形部26とすることができる。
【0034】
当該取付構造は、例えば、図6(a)(b)に示すように衣服Wや袋物C等に使用することができる。保形部26を上方に配置することで、当該保形部26が雨天時等のカバーとなり、スライドファスナー1のスライダー11を格納するとともに当該スライダー11上方に形成される僅かな間隙に対する雨水の浸入を防止できる。
【0035】
また上記したように、独立した他の部品を取付けることもなく、可撓性シート2のみからなる保形部26の形成によって縫い目の形成さえも要しないから、衣服W等へ用いた場合には、着用時の違和感も大幅に低減できる。
【0036】
尚、本発明は上記実施例に限るものではない。例えば、可撓性シート2は単層のものであってもよいし、他の種々の公知の機能性材料を任意の数だけ積層したものとすることもできる。本実施例では上記したように、通気性及び防水性を有するものとしたが、機能性材料は例えば、保温性能、冷感性能、通水性能、帯電防止性能等、目的に応じた種々の機能性材料を用いることもできる。
【0037】
また、保形部26へのスライダー11の格納は、スライダー本体11aの一部であっても全部であってもよいし、スライダー本体11aに取付けられる摘み部11bまで格納するものであってもよいし、当該摘み部11bのみを外部へ表出するものであってもよい。摘み部11bのみを外部へ表出させる場合においては、よりスライダー11上の隙間を深く隠すことができることに加えて、摘み部11bを指で簡単に摘むことができるため、操作性にも優れる利点がある。
【符号の説明】
【0038】
1 スライドファスナー
10 スライドファスナーテープ
10a 務歯列
11 スライダー
11a スライダー本体
11b 摘み部
2 可撓性シート
20 表面生地
21 裏面生地
22 開口
23 切込
24 仮想線
25 余剰片
26 保形部
3 熱接着テープ
C 袋物
P1 上型
P10 金型凸部
P2 下型
P20 金型凹部
W 衣服

図1
図2
図3
図4
図5
図6