特許第6383257号(P6383257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6383257-自動車用窓ガラス支持部材の取付構造 図000002
  • 特許6383257-自動車用窓ガラス支持部材の取付構造 図000003
  • 特許6383257-自動車用窓ガラス支持部材の取付構造 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383257
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】自動車用窓ガラス支持部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/17 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   B60J1/17 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-226604(P2014-226604)
(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2016-88354(P2016-88354A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 基裕
(72)【発明者】
【氏名】平井 干城
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−263164(JP,A)
【文献】 特開平09−123763(JP,A)
【文献】 特開平10−181352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ドアに昇降可能に取り付けられた窓ガラスの支持部材取付構造であって、
前記窓ガラスを内部に収納可能なドア本体部と、
前記窓ガラスを昇降可能に支持するとともに、前記ドア本体部内部に連結するための連結部を有する樹脂製ガイド部材と、
を備え、
前記ドア本体部は、前記樹脂製ガイド部材の連結部を固定するための固定部と、この固定部にネジを挿通して前記樹脂製ガイド部材の連結部にねじ込み固定するときに、前記樹脂製ガイド部材のたわみを規制するように前記樹脂製ガイド部材を挟んで前記固定部と対向配置された当て面と、を有する、
自動車用窓ガラス支持部材の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用窓ガラス支持部材の取付構造において、
前記ドア本体部は補強部材を有し、前記当て面は前記補強部材に形成されている、
自動車用窓ガラス支持部材の取付構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動車用窓ガラス支持部材の取付構造において、
前記樹脂製ガイド部材は、前記窓ガラスを摺接支持するガラスランが嵌め込まれており、
前記ドア本体部には、内部に延在する前記樹脂製ガイド部材の前記窓ガラスおよび前記ガラスランと反対側への変位を規制する規制部が設けられている、
自動車用窓ガラス支持部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用窓ガラス支持部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディビジョンバー等のガイド部材は、窓ガラスを自動車用ドア本体に収納するため、その本体内部に延在して窓ガラスを案内するように取り付けられている。このため、自動車用ドアの製造時において、ガイド部材をドア本体部内部にネジで固定する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ディビジョンバーに相当する部分をガラス繊維の含まれたポリカーボーネートで構成して高剛性として撓み難くし、ディビジョンバーに嵌め込まれているガラスランの脱落を抑制する樹脂製ガイド部材について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5162171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、樹脂製ガイド部材を自動車用ドア本体内部にネジで固定しようとすると、ネジをねじ込む際に樹脂製ガイド部材が長尺であるため撓んで逃げてしまい取付作業に手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、樹脂製ガイド部材のドア本体への取り付け作業をスムーズに行うことのできる自動車用窓ガラス支持部材の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動車用窓ガラス支持部材の取付構造は、自動車用ドアに昇降可能に取り付けられた窓ガラスの支持部材取付構造であって、窓ガラスを内部に収納可能なドア本体部と、窓ガラスを昇降可能に支持するとともに、ドア本体部内部に連結するための連結部を有する樹脂製ガイド部材と、を備え、ドア本体部は、樹脂製ガイド部材の連結部を固定するための固定部と、この固定部にネジを挿通して樹脂製ガイド部材の連結部にねじ込み固定するときに、樹脂製ガイド部材のたわみを規制するように樹脂製ガイド部材を挟んで固定部と対向配置された当て面と、を有するものである。
【0008】
本発明に係る自動車用窓ガラス支持部材の取付構造において、ドア本体部は補強部材を有し、当て面は補強部材に形成されていてもよい。
【0009】
また、本発明に係る自動車用窓ガラス支持部材の取付構造において、樹脂製ガイド部材は、窓ガラスを摺接支持するガラスランが嵌め込まれており、ドア本体部には、内部に延在する樹脂製ガイド部材の窓ガラスおよびガラスランと反対側への変位を規制する規制部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る自動車用窓ガラス支持部材の取付構造によれば、ネジをドア本体部の固定部に挿通して樹脂製ガイド部材の連結部を固定する際に、樹脂製ガイド部材を挟んで固定部と対向配置された当て面によって樹脂製ガイド部材のたわみが規制される。これにより、ネジを樹脂製ガイド部材の連結部にねじ込み易くすることができる。この結果、樹脂製ガイド部材のドア本体部への取り付け作業をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態である自動車用窓ガラス支持部材の取付構造を含むリアドアの外観を示す図である。
図2】本発明の実施の形態である自動車用窓ガラス支持部材の取付構造の外観を示す図である。
図3】本発明の実施の形態を構成するディビジョンバーの図2におけるA-A断面図である。
図4】本発明の実施の形態である自動車用窓ガラス支持部材の取付構造の図2におけるB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0013】
図1は、本実施形態に係る自動車用窓ガラス支持部材の取付構造20を含むリアドア10の外観を示す図である。図1において、矢印「X」は自動車の前後方向を示し、矢印「Y」は上下方向を示している。
【0014】
自動車のリアドア10は、窓開口部10b、窓ガラス12、窓ガラス昇降部14、ルーフ側に上辺フレーム16、センターピラー(不図示)側に縦フレーム18、およびリア側に自動車用窓ガラス支持部材の取付構造(以下、適宜に「支持部材取付構造」と称する)20を備えている。支持部材取付構造20は、ドア本体部22およびディビジョンバー30を有している。
【0015】
ドア本体部22は、窓ガラス12を内部に収納可能に形成されており、この窓ガラス12を昇降させる窓ガラス昇降部14を内蔵している。なお、本実施形態では、支持部材取付構造20を適用する例としてディビジョンバー30を例に挙げて説明しているが、例えば、センターピラー側の縦フレーム18に適用してもよい。
【0016】
ディビジョンバー30は、窓開口部10bのリア側端部を形成しており、上下方向Yに沿って延設されている。ディビジョンバー30は、その上部が窓開口部10bの縦枠を形成するとともに下部がドア本体部22内に延在している。
【0017】
また、ディビジョンバー30は、後述するようにガラスラン40が内側に嵌め込まれている。このガラスラン40は、センターピラー側の縦フレーム18に取り付けられたガラスラン(不図示)とともに、窓ガラス12の前後方向Xにおける両端縁部を摺接可能に支持している。
【0018】
窓ガラス昇降部14は、窓ガラス12の下端部に取り付けられたブラケット(不図示)を介して窓ガラス12を昇降させる、例えば、Xアーム式ウインドレギュレータである。
【0019】
図2は、支持部材取付構造20の外観を示す図である。図3は、図2におけるディビジョンバー30のA-A断面の拡大図である。図4は、図2における支持部材取付構造20のB-B断面の拡大図である。図3および図4において矢印「Z」は自動車の幅方向を示している。
【0020】
上述したディビジョンバー30は、図2に示すように、上下方向Yに沿って延設された長尺部材であり、上部には略三角形状のスクエアウィンドウ30aが一体に形成されている。また、ディビジョンバー30は、上部連結部32a、中間連結部32b、および下部連結部32cを有している。ディビジョンバー30の下部連結部32cには、螺旋状のネジ溝を有するネジ孔32d(図4参照)が形成されている。
【0021】
また、ディビジョンバー30は、図3および図4に示すように、その断面が略U字状を呈している。このディビジョンバー30は、例えば、ポリカーボーネート等で形成された樹脂製ガイド部材である。ディビジョンバー30の材質については、ポリカーボーネートに限られるものではなく、例えば、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ABS等の樹脂から適宜選択すればよい。
【0022】
一方、ドア本体部22は、図4に示すように、車内側ドアパネル48および補強部材50をさらに有している。この車内側ドアパネル48は、ドア本体部22における窓開口部10bの下側部分を覆うように形成されている。
【0023】
ドア本体部22の車内側ドアパネル48には、ディビジョンバー30を固定するために固定部48aが形成されている。この固定部48aは、ドア本体部22の内側へ円錐台形状に突き出して形成されている。車内側ドアパネル48の固定部48aの中心部には貫通孔48bが形成されている。そして、この貫通孔48bにネジ48cが挿通されている。
【0024】
一方、ドア本体部22の補強部材50は、ディビジョンバー30よりも車外側に配置されており、ドア本体部22を斜めに横断するように配置されている。この補強部材50は、ドアの剛性を上げるための構造部材であり、例えば、炭素繊維強化プラスチックによって形成されている。なお、本実施形態では、補強部材50を炭素繊維強化プラスチックにより形成する例を挙げているが、例えば、鉄板等の金属製部材やその他の樹脂製部材等によって形成するようにしてもよい。
【0025】
ドア本体部22の補強部材50は、ディビジョンバー30と交差する部分にドア本体部22の内側へ台形状に突き出す突出部52が形成されている。この突出部52には、ディビジョンバー30と対向する端面に幅方向Zから見て四角形状を成すスペーサ54が取り付けられている。このスペーサ54とディビジョンバー30との隙間55は、ネジ48cがディビジョンバー30の下部連結部32cにねじ込まれる際に、ディビジョンバー30をスペーサ54側に変位させることのできる最大長さよりも短くなるように設定されている。スペーサ54は、ディビジョンバー30を挟んで車内側ドアパネル48の固定部48aと対向配置されている。なお、スペーサ54は、補強部材50と一体に形成してもよい。
【0026】
また、ドア本体部22のスペーサ54は、ディビジョンバー30と対向する当て面54aを有している。この当て面54aは、ディビジョンバー30が車外側に撓んだときに当接するように設けられている。これにより、ディビジョンバー30が車外側へ撓んで変位することを規制することができる。
【0027】
補強部材50は、スペーサ54に隣接する規制部56および補強支持部56aをさらに有している。この規制部56は、補強部材50における突出部52のリア側部分に立設されている。補強部材50の規制部56は、スペーサ54と略直交すように隣接配置された前後方向Xから見て四角形状の部材である。また、補強部材50の規制部56は、ディビジョンバー30を挟んで窓ガラス12と対向するように配置されており、ディビジョンバー30のリア側への撓みやねじれによる変位を規制する。これにより、窓ガラス12の昇降時に、窓ガラス12がガラスラン40を介してディビジョンバー30に当接することにより、ディビジョンバー30が窓ガラス12の反対側(すなわち、リア側)に撓んだりねじれたりして変位することを規制することができる。この結果、ディビジョンバー30に嵌め込まれているガラスラン40の脱落やずれを防止することができる。
【0028】
特に、本実施形態のように窓ガラス昇降部14にXアーム式ウインドレギュレータを用いる場合には、昇降動作時におけるディビジョンバー30に対する窓ガラス12の当接力が大きくなり易くディビジョンバー30がリア側に撓み易い。そのため、本実施形態のように、補強部材50に規制部56を設けてディビジョンバー30が撓み難くすることが好適である。
【0029】
なお、本実施形態では、補強部材50のスペーサ54に隣接する位置に規制部56を設ける例を挙げているが、例えば、このスペーサ54とは異なる補強部材50上の部分または他の部材に規制部56を設けるようにしてもよい。
【0030】
また、補強部材50の補強支持部56aは、規制部56を補強支持するための部材である。この補強支持部56aは、補強部材50の規制部56と補強部材50の車内側側面とを連結するように形成されてもよい。これにより、窓ガラス12の昇降時に、ディビジョンバー30が補強部材50の規制部56に当接して、より確実にディビジョンバー30の撓みやねじれを規制することができる。なお、本実施形態では、補強部材50の規制部56に補強支持部56aを設ける例を挙げて説明しているが、補強部材50の規制部56だけでディビジョンバー30の撓みやねじれを充分に規制できる場合には補強支持部56aを設けないものとしてもよい。
【0031】
続いて、支持部材取付構造20を用いたドア本体部22に対するディビジョンバー30の取り付け方法について具体的に説明する。
【0032】
最初に、ディビジョンバー30の下側部分を窓開口部10b側からドア本体部22の内部へ挿入しつつ、ディビジョンバー30の上部連結部32aをルーフ側の上辺フレーム16の所定の位置に差し込んで固定する。
【0033】
次に、ディビジョンバー30の中間連結部32bを車内側ドアパネル48の窓開口部10bの近傍に設けられた貫通孔(不図示)からネジ(不図示)をねじ込んで固定する。ディビジョンバー30の中間連結部32bは、窓開口部10bの近傍であるため、作業者は中間連結部32bの近傍部分を保持しながら取り付けることができる。
【0034】
最後に、ディビジョンバー30の下部連結部32cを車内側ドアパネル48における固定部48aの貫通孔48bを通じて下部連結部32cのネジ孔32dにネジ48cをねじ込んで固定する。この際、ネジ48cに当接されてディビジョンバー30が撓んでも、スペーサ54の当て面54aによってディビジョンバー30の車外側へのたわみによる変位が規制される。
【0035】
このため、ディビジョンバー30の中間連結部32bのように作業者が連結部の近傍部分を保持することができない下部連結部32cでも、ネジ48cをねじ込めない位置までディビジョンバー30が撓むことがない。これにより、ディビジョンバー30における下部連結部32cの近傍部分を作業者が保持できなくても、ネジ48cのねじ込み作業に手間がかかるということがない。そのため、ディビジョンバー30の下部連結部32cにネジ48cを容易にねじ込むことができ、ディビジョンバー30のドア本体部22への取り付け作業をスムーズに行うことができる。
【0036】
このように補強部材50にスペーサ54を設けることによって、既存の構造部材を利用してディビジョンバー30をドア本体部22に固定することができる。これにより、製造コストの増大を防止することもできる。
【0037】
また、上述したように補強部材50に規制部56を設けることによって、窓ガラス12の昇降動作時において、窓ガラス12に当接されてディビジョンバー30およびこれに嵌め込まれているガラスラン40がリア側に撓んだりねじれたりすることも規制できる。このため、ディビジョンバー30からガラスラン40がずれたり脱落することを防止できる。
【0038】
なお、上記実施形態では、ディビジョンバー30における下部連結部32cのドア本体部22に対する取り付けにだけ自動車用窓ガラス支持部材の取付構造20を適用する例を挙げて説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ディビジョンバー30の中間連結部32bをドア本体部22に取り付ける際にディビジョンバー30が撓んで逃げてしまうような場合には、自動車用窓ガラス支持部材の取付構造20を用いてドア本体部22に取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 リアドア、12 窓ガラス、14 窓ガラス昇降部、20 支持部材取付構造(自動車用窓ガラス支持部材の取付構造)、22 ドア本体部、30 ディビジョンバー、32c 下部連結部、32d ネジ孔、40 ガラスラン、48 車内側ドアパネル、48a 固定部、48b 貫通孔、48c ネジ、50 補強部材、52 突出部、54 スペーサ、54a 当て面、56 規制部、56a 補強支持部。
図1
図2
図3
図4