【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による観測井戸を内蔵した地下水浄化壁の造成方法は、地盤内にケーシングを挿入し、ケーシング内を中空にして地下水浄化材投入用の投入孔を形成する第1のステップ、地下水を採取可能な観測井戸をケーシング内に建て込む第2のステップ、中空の缶本体と、缶本体に対して開閉自在に装着された下蓋と、から構成され、缶本体に第1の吊ワイヤが取り付けられ、下蓋に第2の吊ワイヤが取り付けられている投入缶に地下水浄化材を詰め、第1の吊ワイヤと第2の吊ワイヤを重機の有する別途の吊フックにそれぞれ掛け、第2の吊ワイヤのみで投入缶を吊った状態で該投入缶を観測井戸に干渉しないようにして投入孔に吊り下し、第1の吊ワイヤにも投入缶を吊らせた状態とした後に第2の吊ワイヤによる投入缶の吊り状態を解除して下蓋を開き、地下水浄化材を投入孔に落とし込み、第1の吊ワイヤにて投入缶を投入孔の上方に吊り上げ、第1の吊ワイヤによる吊り状態を解除して第2の吊ワイヤのみで投入缶を吊った状態として投入缶に地下水浄化材を詰める第3のステップ、第3のステップを繰り返して投入孔に地下水浄化材を充填し、ケーシングを引き抜いて地下水浄化壁を造成する第4のステップからなるものである。
【0012】
本発明の観測井戸を内蔵した地下水浄化壁の造成方法は、ケーシングを使用して地下水浄化材投入用の投入孔を形成し、ここに地下水浄化材を投入して地下水浄化壁を造成することにより、形状寸法精度の高い地下水浄化壁の造成を可能としている。また、地下水浄化材を投入孔の上方から落下させる特許文献2に開示の方法とは異なり、投入孔の下方位置まで地下水浄化材を運んで地下水浄化材を投入することにより、地下水浄化材がたとえば比重の異なる複数の材料の混合材からなる場合でも、材料分離を起こすことなく、したがって複数の材料が十分に混合された地下水浄化材にて品質に優れた地下水浄化壁を造成することを可能としている。さらに、地盤内に挿入されたケーシング内に観測井戸を建て込み、この観測井戸の周囲に地下水浄化壁を造成したことにより、地下水浄化壁造成後の当該地下水浄化壁の性能評価や、経時的に消耗する地下水浄化壁の消耗度の検証およびこの検証結果に基づくリニューアル時期の予測などをおこなうことを可能とするものである。
【0013】
観測井戸はたとえば多数の孔が開設された鋼管から形成することができる。孔開きの観測井戸を適用することで当該観測井戸内に地下水を採取可能となり、採取された地下水を分析することにより、地下水浄化壁の性能検証をおこなうことができる。
【0014】
また、地下水浄化材の消耗度検証用の試験体、および/または、地下水の取水管、および/または、地下水の流向および流速検出用の流向流速計を、前記観測井戸を建て込む前に該観測井戸内に予め配設しておく、もしくは該観測井戸を建て込んだ後に該観測井戸内に配設してもよい。
【0015】
地下水浄化材の消耗度検証用の試験体を観測井戸内に配設しておくことにより、経時的に消耗する地下水浄化壁を形成する地下水浄化材の消耗度を検証することができ、検証結果に基づいて地下水浄化壁のリニューアル時期等の予測をおこなうことが可能になる。
【0016】
また、地下水の取水管や、地下水の流向および流速検出用の流向流速計を観測井戸内に配設しておくことにより、現地地下水の水質を検証でき、地下水の流向をリアルタイムに検出することができ、地下水浄化壁による浄化効果の確認に繋がる。
【0017】
また、投入孔の下方位置まで地下水浄化材を運んで地下水浄化材を投入することを実現する手段として、任意素材の投入缶を使用し、投入缶に地下水浄化材を詰めて吊ワイヤを介して重機にて吊持させ、投入孔の下方の所定位置まで吊ワイヤで降下させる。なお、ケーシング内への投入缶の投入に先行して観測井戸が既に建て込まれていることから、この観測井戸と干渉しないようにして投入缶の降下が実行される。たとえば、円筒状の観測井戸をケーシングの中央位置もしくは端部の偏心位置に配設しておき、一方で、投入缶の内部には観測井戸が貫通するガイド管を配設しておくことで、観測井戸と投入缶の干渉を回避することができる。
【0018】
ここで、投入缶の素材や形状、内空寸法は任意であり、使用するケーシングの内径に収まる寸法のものが適用できる。たとえば、形状の一例として、筒状の缶本体の下方に円盤状の下蓋が開閉自在に装着され、さらにその中央位置もしくは端部の偏心位置に観測井戸が貫通する貫通孔を備えた形態、角柱状で中空の缶本体に当該缶本体の断面に相補的形状の角形の下蓋が開閉自在に装着され、さらにその中央位置もしくは端部の偏心位置に観測井戸が貫通する貫通孔を備えた形態などを挙げることができる。また、投入缶の内空寸法は、一度に運ぶべき地下水浄化材の量や、投入缶の形成素材(鋼製、アルミ製といった金属製、FRP等を含む樹脂製、セラミックス製など)、使用重機の規模、投入孔の深さ等との関係から、一度に運ぶことのできる地下水浄化材の重量に応じて設定できる。さらに、缶本体の下方に開閉自在に装着される下蓋は、一枚の下蓋が一か所の蝶番構造を介して缶本体に装着されている形態や、下蓋を構成する二枚の分割蓋のそれぞれが中央の蝶番構造を介して缶本体に装着され、双方の分割蓋が中央の蝶番構造を介して羽根のように開閉する形態などを挙げることができる。
【0019】
本発明の造成方法では、投入缶の缶本体と下蓋の双方に個別の吊ワイヤを取り付けておき、双方の吊ワイヤをたとえば一台の重機の親フック(親ワイヤフック)と子フック(子ワイヤフック)にそれぞれ吊らせたり、二台の重機のそれぞれの吊フックに双方の吊ワイヤを吊らせ、投入缶の位置に応じて投入缶を吊る吊ワイヤを好適に調整することにより(すなわち投入缶の荷重を負担する吊ワイヤを選定する)、投入孔への投入缶の吊り下しと、投入缶を吊った状態での下蓋の開閉、さらには投入缶を吊った状態での地下水浄化材の投入缶への提供を実現することができる。
【0020】
具体的には、缶本体に第1の吊ワイヤを取り付け、下蓋に第2の吊ワイヤを取り付けておき、第1の吊ワイヤと第2の吊ワイヤを重機の有する別途の吊フック(ワイヤフック)にそれぞれ掛けておく。
【0021】
投入缶の吊り下しの際には、第2の吊ワイヤのみで投入缶を吊った状態で、観測井戸と干渉しないようにして投入缶を投入孔の下方に吊り下す。
【0022】
次に、投入孔の下方の所定位置で投入缶を停止させ、投入缶の荷重負担を第2の吊ワイヤから第1の吊ワイヤへ移行させるべく、第1の吊ワイヤでも投入缶を吊った状態とする。この状態で第2の吊ワイヤによる投入缶の吊り状態を解除することにより、下蓋が自動的に開いて地下水浄化材が投入孔に落とし込まれる。この地下水浄化材の落とし込みの位置は、投入孔のたとえば下端から1〜数m(たとえば投入缶の長さ程度)の位置に調整される。
【0023】
下蓋の自動開放によって地下水浄化材が落とし込まれたら、第1の吊ワイヤにて投入缶を吊った状態のまま投入孔の上方に空の投入缶を吊り上げる。次に、第1の吊ワイヤによる吊り状態を解除して第2の吊ワイヤのみで投入缶を吊った状態とすることで下蓋を再度閉じ、投入缶に地下水浄化材を詰める(以上、第3のステップ)。
【0024】
一つの投入孔に対して第3のステップを複数回繰り返すことにより、観測井戸が建て込まれている投入孔が地下水浄化材で満たされて観測井戸を内蔵した地下水浄化壁が造成される(第4のステップ)。
【0025】
なお、ここで造成される地下水浄化壁は、ケーシングの長さおよび径によって形状および寸法が規定される地下水浄化杭である。
【0026】
そこで、地盤内に平面状の地下水浄化壁を造成する場合は、観測井戸を内蔵した地下水浄化壁の側方に、観測井戸をケーシング内に建て込まない方法で地下水浄化壁を造成していく。すなわち、上記する造成方法の第2のステップを不要とし、観測井戸が建て込まれていないケーシング内に上記する造成方法の第3のステップを繰り返して地下水浄化壁用の地下水浄化杭を造成し、地下水浄化杭を順次並設して地盤内に面的に広がる地下水浄化壁を造成する方法が適用できる。このように、地盤内に面的に広がる地下水浄化壁を造成する場合、観測井戸を内蔵した地下水浄化杭を造成し、その左右に観測井戸を内蔵していない地下水浄化杭を併設して地下水浄化壁を造成することができる。また、面的に広がる地下水浄化壁の平面寸法が広範囲に及ぶ場合には、所定の間隔で観測井戸を内蔵した複数の地下水浄化杭が配設された地下水浄化壁としてもよい。
【0027】
また、第1のステップにおいては、投入缶の開口にホッパーを載置し、ホッパーを介して投入缶に地下水浄化材を詰めてもよい。さらに、第3のステップにおける再度の地下水浄化材の投入缶への提供作業においても、吊られた状態の投入缶にホッパーを載置し、ホッパーを介して投入缶に地下水浄化材を詰めることもできる。
【0028】
なお、本発明の造成方法で使用される地下水浄化材が、既述するように比重の異なる複数の材料の混合材からなる場合は、材料分離することなく投入孔に落とし込めることから、本発明の造成方法にとって好適な材料と言える。ここで、混合材の構成素材としては、活性炭や鉄粉、地下水の流動を確保するための砕石などを挙げることができる。勿論、活性炭や鉄粉のみの単一素材の地下水浄化材を使用して地下水浄化壁を造成してもよいことは勿論のことである。
【0029】
また、本発明は前記造成方法で適用される投入缶にも及ぶものであり、この投入缶は、ケーシング内にある観測井戸と干渉しないように該ケーシング内において昇降自在で、比重の異なる複数の材料の混合材からなる地下水浄化材をケーシング内に設置する投入缶であって、前記投入缶は、上方が開放された中空の缶本体と、該缶本体に対して開閉自在に装着された下蓋を備え、前記缶本体には吊ワイヤの取付部が設けられ、前記下蓋には該下蓋を開閉するための別途の吊ワイヤの取付部が設けられ、観測井戸が貫通する中空のガイド管を前記缶本体の内部の中央位置もしくは端部の偏心位置に備えているものである。
【0030】
本発明の投入缶を適用して前記造成方法を実施することにより、ケーシング内に先行して配設されている観測井戸と干渉することなく、投入孔の下方位置まで比重の異なる複数の材料の混合材からなる地下水浄化材を運んで地下水浄化材を投入することが可能となり、材料分離を起こすことなく、したがって複数の材料が十分に混合された地下水浄化材にて品質に優れた地下水浄化壁を造成することが可能になる。