特許第6383301号(P6383301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383301電力貯蔵装置の制御装置、風力発電システムおよび電力貯蔵装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383301
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】電力貯蔵装置の制御装置、風力発電システムおよび電力貯蔵装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20180820BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20180820BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H02J3/38 160
   H02J3/32
   H02J7/34 D
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-24455(P2015-24455)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-149839(P2016-149839A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】木内 麻紗子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 麻美
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏雅
【審査官】 原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−140281(JP,A)
【文献】 特開2004−274981(JP,A)
【文献】 特開2014−128184(JP,A)
【文献】 特開2014−036538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00−80/80
H02J 3/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風速の予測によって前記風速を取得する風速取得装置と、
電力系統に接続される風力発電装置の発電出力を検出する発電出力検出部と、
前記発電出力における少なくとも一部の電力を貯蔵し、貯蔵された電力の少なくとも一部を前記電力系統に供給する電力貯蔵装置に対して、残存容量の検出を実行する容量検出部と、
前記電力の貯蔵および供給を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記風速と、前記発電出力と、前記残存容量とに基づいて、前記発電出力と前記電力貯蔵装置が貯蔵または供給する電力とを合成した合成出力の変動を抑制するように前記電力の貯蔵および供給を制御
前記制御部は、
前記風速に基づいて前記電力貯蔵装置の目標容量を算出する第1目標容量算出部と、
前記風速に基づいて風速変動量を算出し、前記風速変動量に基づいて前記発電出力の増減を予測する第1発電出力予測部と、
前記目標容量と前記残存容量との大小関係と、予測された前記発電出力の増減とに基づいて、前記合成出力の変動を抑制可能な電力を決定する充放電指令部と、を備える、
電力貯蔵装置の制御装置。
【請求項2】
前記合成出力を検出する合成出力検出部を更に備え、
前記制御部は、更に、検出された前記合成出力に基づいて前記電力の貯蔵および供給を制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は更に、前記発電出力の現在の大きさを判定する発電出力判定部備え、
前記充放電指令部は、前記目標容量と前記残存容量との大小関係と、予測された前記発電出力の増減と、判定された前記発電出力の大きさとに基づいて、前記合成出力の変動を抑制可能な電力を決定する、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記充放電指令部は、
前記残存容量が前記目標容量以上で、前記発電出力の増加が予測され、前記発電出力が大きいと判定された場合、
前記残存容量が前記目標容量以上で、前記発電出力の減少が予測され、前記発電出力が大きいと判定された場合、
前記残存容量が前記目標容量未満で、前記発電出力の増加が予測され、前記発電出力が大きいと判定された場合、または、
前記残存容量が前記目標容量未満で、前記発電出力の減少が予測された場合に、前記合成出力の変動を抑制可能な電力として、前記電力貯蔵装置が貯蔵すべき電力を決定する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記充放電指令部は、
前記残存容量が前記目標容量以上で、前記発電出力の増加が予測され、前記発電出力が小さいと判定された場合、
前記残存容量が前記目標容量以上で、前記発電出力の減少が予測され、前記発電出力が小さいと判定された場合、または、
前記残存容量が前記目標容量未満で、前記発電出力の増加が予測され、前記発電出力が小さいと判定された場合に、前記合成出力の変動を抑制可能な電力として、前記電力貯蔵装置が供給すべき電力を決定する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記風速に基づいて風速変動量を算出し、前記風速変動量に基づいて前記電力貯蔵装置の目標容量を算出する第2目標容量算出部と、
前記風速に基づいて前記発電出力の増減を予測する第2発電出力予測部と、
前記発電出力の現在の大きさを判定する発電出力判定部と、
前記合成出力の変動を抑制可能な電力を決定し、決定された電力の貯蔵または供給を前記電力貯蔵装置に指令する充放電指令部と、を備え、
前記充放電指令部は、前記目標容量と前記残存容量との大小関係と、予測された前記発電出力の増減と、判定された前記発電出力の大きさとに基づいて、前記合成出力の変動を抑制可能な電力を決定する、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項7】
前記風速取得装置は、数理モデルおよび統計モデルの少なくとも一方に基づいて前記風速を予測する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記風速取得装置は、前記風速を実測する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
電力系統に接続される風力発電装置と、
前記風力発電装置の発電出力における少なくとも一部の電力を貯蔵し、貯蔵された電力の少なくとも一部を前記電力系統に供給する電力貯蔵装置と、
前記電力貯蔵装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
風速の予測によって前記風速を取得する風速取得装置と、
前記発電出力を検出する発電出力検出部と、
前記電力貯蔵装置の残存容量を検出する容量検出部と、
前記電力の貯蔵および供給を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記風速と、前記発電出力と、前記残存容量とに基づいて、前記発電出力と前記電力貯蔵装置が貯蔵または供給する電力とを合成した合成出力の変動を抑制するように前記電力の貯蔵および供給を制御
前記制御部は、
前記風速に基づいて前記電力貯蔵装置の目標容量を算出する第1目標容量算出部と、
前記風速に基づいて風速変動量を算出し、前記風速変動量に基づいて前記発電出力の増減を予測する第1発電出力予測部と、
前記目標容量と前記残存容量との大小関係と、予測された前記発電出力の増減とに基づいて、前記合成出力の変動を抑制可能な電力を決定する充放電指令部と、を備える、
風力発電システム。
【請求項10】
風速の予測によって前記風速を取得し、
電力系統に接続される風力発電装置の発電出力を検出し、
前記発電出力における少なくとも一部の電力を貯蔵し、貯蔵された電力の少なくとも一部を前記電力系統に供給する電力貯蔵装置に対して、残存容量の検出を実行し、
前記風速と、前記発電出力と、前記残存容量とに基づいて、前記発電出力と前記電力貯蔵装置が貯蔵または供給する電力とを合成した合成出力の変動を抑制するように前記電力の貯蔵および供給を制御する、
ことを含み、
前記電力の貯蔵および供給の制御は、
前記風速に基づいて前記電力貯蔵装置の目標容量を算出し、
前記風速に基づいて風速変動量を算出し、前記風速変動量に基づいて前記発電出力の増減を予測し、
前記目標容量と前記残存容量との大小関係と、予測された前記発電出力の増減とに基づいて、前記合成出力の変動を抑制可能な電力を決定する、
ことを含む、
電力貯蔵装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、電力貯蔵装置の制御装置、風力発電システムおよび電力貯蔵装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、再生可能エネルギーの1つとして、風力エネルギーが積極的に導入されている。風力エネルギーは、風速の変動にともなって変動する不安定なエネルギーである。このため、風力エネルギーをその変動を考慮せずに電力系統に連系させた場合、電力の安定供給を妨げるおそれがある。電力系統に供給される電力の変動を抑制するために、風力エネルギーの系統連系について、風力エネルギーの変動幅等の規定が設けられている。
【0003】
電力系統に供給される電力の変動を抑制する技術として、風力発電装置に電力貯蔵装置を併設する技術が知られている。電力貯蔵装置は、風力発電装置の発電電力の変動を吸収するために、風力発電装置の発電電力を貯蔵(すなわち、充電)したり、貯蔵された電力を電力系統に供給(すなわち、放電)したりする。
【0004】
しかし、従来の技術では、電力貯蔵装置の長期間における容量の変化を十分に考慮して、電力貯蔵装置に電力を過不足なく貯蔵または供給させることができなかった。このため、例えば、電力貯蔵装置が電力を供給している途中で、電力貯蔵装置の容量が不足することにより、電力系統に供給される電力の変動を抑制することが困難になるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−87239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、電力系統に供給される電力の変動を抑制することができる電力貯蔵装置の制御装置、風力発電システムおよび電力貯蔵装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態による電力貯蔵装置の制御装置は、風速取得装置と、発電出力検出部と、容量検出部と、制御部とを備える。風速取得装置は、風速を取得する。発電出力検出部は、電力系統に接続される風力発電装置の発電出力を検出する。容量検出部は、発電出力における少なくとも一部の電力を貯蔵し、貯蔵された電力の少なくとも一部を電力系統に供給する電力貯蔵装置に対して、残存容量の検出を実行する。制御部は、風速と、発電出力と、残存容量とに基づいて、発電出力と電力貯蔵装置が貯蔵または供給する電力とを合成した合成出力の変動を抑制するように電力の貯蔵および供給を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力系統に供給される電力の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態を示す風力発電システム1のブロック図である。
図2図1の風力発電システム1における電力貯蔵装置12の制御装置13のブロック図である。
図3】第1の実施形態を示す電力貯蔵装置の制御方法のフローチャートである。
図4図2の制御装置13における第1目標容量算出部1351の動作例を示す図である。
図5図2の制御装置13における第1発電出力予測部1352の動作例を示す図である。
図6図2の制御装置13における発電出力判定部1353の動作例を示す図である。
図7図3の充放電指令値の決定工程の詳細を示すフローチャートである。
図8図2の制御装置13における充放電指令部1354の動作例を示す図である。
図9】第2の実施形態を示す風力発電システム1のブロック図である。
図10図9の風力発電システム1における制御装置13のブロック図である。
図11】第3の実施形態を示す制御装置13のブロック図である。
図12図11の制御装置13における第2目標容量算出部1355の動作例を示す図である。
図13図11の制御装置13における第2発電出力予測部1356の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態を示す風力発電システム1のブロック図である。図2は、図1の風力発電システム1における電力貯蔵装置12の制御装置13のブロック図である。なお、図1において、実線部は、電力が通る電力ラインを示し、破線部は、信号が通る信号ラインを示す。図2において、破線部は、信号ラインを示す。
【0012】
図1に示すように、風力発電システム1は、風力発電装置11と、電力貯蔵装置12と、制御装置13と、電力変換器14とを備える。
【0013】
風力発電装置11は、電力系統2に接続される。風力発電装置11は、風力を利用した発電方式によって電力を発生させる。風力発電装置11は、電力系統2に連系して、風力発電装置11が発生させた電力すなわち発電出力(以下、風力発電出力ともいう)を、電力系統2に供給(送電)する。風力発電装置11は、例えば、発電機が内蔵された風車を1台以上備えている。風力発電装置11は、集合型風力発電所(ウィンドファーム)に備えられていてもよい。
【0014】
電力貯蔵装置12は、電力変換器14を介して風力発電装置11および電力系統2に接続される。電力貯蔵装置12は、風力発電出力における少なくとも一部の電力を貯蔵する。また、電力貯蔵装置12は、貯蔵された電力の少なくとも一部を電力系統2に供給する。電力変換器14は、風力発電出力を電力変換したうえで電力貯蔵装置12に貯蔵する。また、電力変換器14は、電力貯蔵装置12に貯蔵された電力を電力変換したうえで電力系統2に供給する。
【0015】
電力貯蔵装置12は、後述する充放電指令信号に基づいて、風力発電出力と電力貯蔵装置12が貯蔵または供給する電力(以下、充放電出力ともいう)とを合成した合成出力の変動を抑制するように充放電を実行する。ここで、合成出力は、電力貯蔵装置12が充電を実行する場合には、風力発電出力から充電出力(貯蔵する電力)を減じた値である。一方、合成出力は、電力貯蔵装置12が放電を実行する場合には、風力発電出力に放電出力(供給する電力)を加えた値である。合成出力の変動は、風力発電装置11と電力系統2との連系条件が定義する変動幅に収められればよい。
【0016】
電力貯蔵装置12は、単一または複数の蓄電池(セル)を備える。蓄電池は、充放電可能な二次電池であればよく、具体的な態様は特に限定されない。
【0017】
制御装置13は、電力貯蔵装置12に充放電指令信号を出力することで、電力貯蔵装置12による電力の貯蔵および供給を制御(以下、充放電制御ともいう)する。充放電指令信号は、後述する充放電指令値を示す信号である。制御装置13は、所定の制御周期おきに新たな充放電指令信号を出力してよい。
【0018】
制御装置13は、風速取得装置としての風速予測装置131と、発電出力検出部132と、容量検出部133と、合成出力検出部134と、制御部135とを備える。
【0019】
風速予測装置131は、現在の風速を、予測(計算)によって取得する。風速予測装置131は、予測された風速を示す風速信号を制御部135に出力する。風速予測装置131は、例えば、数理モデルおよび統計モデルの少なくとも1つに基づいて風速を予測する。風速予測装置131は、例えば、カルマンフィルタや風況モデル等に基づいて風速を予測してもよい。風速予測装置131が風速を予測する手法は、以上に限定されない。風速予測装置131で予測された風速は、後述するように、電力貯蔵装置12の残存容量の長期的な変動を考慮した充放電制御に用いることができる。
【0020】
発電出力検出部132は、風力発電出力を検出する。発電出力検出部132は、検出された風力発電出力を示す風力発電出力信号を制御部135に出力する。
【0021】
容量検出部133は、電力貯蔵装置12の残存容量を単位時間おきに検出する。容量検出部133は、検出された残存容量を示す容量信号を制御部135に出力する。残存容量は、例えば、SOC(State Of Charge)等であってもよい。単位時間は、制御装置13の制御周期と同一であってもよいが、これに限定されない。容量検出部133で検出された残存容量は、後述するように、残存容量の長期的な変動を考慮した充放電制御に用いることができる。
【0022】
合成出力検出部134は、合成出力を検出する。合成出力検出部134は、検出された合成出力を示す合成出力信号を制御部135に出力する。
【0023】
制御部135は、風速信号が示す風速と、風力発電出力信号が示す風力発電出力と、容量信号が示す残存容量と、合成出力信号が示す合成出力とに基づいて、合成出力の変動を抑制するように充放電制御を実行する。
【0024】
図2に示すように、制御部135は、第1目標容量算出部1351と、第1発電出力予測部1352と、発電出力判定部1353と、充放電指令部1354とを備える。
【0025】
第1目標容量算出部1351は、風速予測装置131からの風速信号を入力とし、風速信号が示す風速に基づいて、電力貯蔵装置12の目標容量を単位時間おきに算出する。ここで、電力貯蔵装置12の目標容量とは、目標とする電力貯蔵装置12の残存容量をいう。第1目標容量算出部1351は、算出された目標容量を示す目標容量信号を充放電指令部1354に出力する。第1目標容量算出部1351で算出された目標容量は、後述するように、残存容量の長期的な変動を考慮した充放電制御に用いることができる。
【0026】
第1発電出力予測部1352は、風速予測装置131からの風速信号を入力とし、風速信号が示す風速に基づいて、風速変動量を単位時間おきに算出する。風速変動量は、設定された時間(以下、基準時間ともいう)当たりの風速の変化(時間変化)を示すパラメータであってよい。風速変動量は、例えば、風速の増加方向への変動量を正の値とし、風速の減少方向への変動量を負の値とする。例えば、風速変動量は、風速の傾き、すなわち、風速の時間微分であってよい。風速変動量の基準時間を可変とすることで、風力発電出力の増減の予測方法を簡便に修正(変更)することもできる。
【0027】
第1発電出力予測部1352は、算出された風速変動量に基づいて、風力発電出力の増減を予測する。第1発電出力予測部1352は、予測された風力発電出力の増減を示す増減予測信号を充放電指令部1354に出力する。第1発電出力予測部1352で予測された風力発電出力の増減は、後述するように、残存容量の長期的な変動を考慮した充放電制御に用いることができる。
【0028】
なお、第1発電出力予測部1352で予測された風力発電出力の増減は、風速変動量(風速)に基づいて予測された増減であり、後述する発電出力判定部1353で判定される風力発電出力の大きさを考慮していない。発電出力判定部1353で判定される風力発電出力の大きさを併せて考慮すれば、後述する充放電指令値の決定の際に予測(想定)すべき風力発電出力の増減が、第1発電出力予測部1352の予測した増減と相反する場合がある。詳細は後述する。
【0029】
発電出力判定部1353は、発電出力検出部132からの風力発電出力信号を入力とし、風力発電出力信号が示す風力発電出力の現在の大きさを判定する。発電出力判定部1353は、判定された風力発電出力の大きさを示す発電出力判定信号を充放電指令部1354に出力する。発電出力判定部1353で判定された風力発電出力の大きさは、後述するように、残存容量の長期的な変動を考慮した充放電制御に用いることができる。
【0030】
充放電指令部1354は、合成出力の変動を抑制可能な電力として、電力貯蔵装置12が貯蔵または供給すべき電力を決定する。具体的には、充放電指令部1354は、電力貯蔵装置12が貯蔵または供給すべき電力を示す充放電指令値を決定する。
【0031】
充放電指令部1354は、決定された電力の貯蔵または供給を電力貯蔵装置12に指令することで、充放電制御を実行する。具体的には、充放電指令部1354は、充放電指令値を充放電指令信号として電力貯蔵装置12に出力することで、充放電指令値に応じた充放電を指令する。
【0032】
充放電指令部1354は、目標容量信号と、容量信号と、増減予測信号と、発電出力判定信号と、合成出力信号とを入力とする。そして、充放電指令部1354は、目標容量信号が示す目標容量と、容量信号が示す残存容量と、増減予測信号が示す風力発電出力の増減と、発電出力判定信号が示す風力発電出力の大きさと、合成出力信号が示す合成出力とに基づいて、充放電指令値を決定する。充放電指令部1354は、目標容量と残存容量との大小関係を充放電指令値の決定に用いてもよい。
【0033】
もし、風速を予測(取得)せずに、風力発電出力や残存容量のみに基づいて充放電指令値を決定する場合、残存容量の長期的な変動を考慮した充放電制御が困難となる。例えば、今後の風速の低下による風力発電出力の減少を予測できないため、今後、合成出力の低下を抑制する放電の必要が生じ、残存容量が減少することを考慮できない。このため、いざ放電が必要になった時点で放電を行っても、残存容量が不足していることで、合成出力の変動(低下)を抑制できないおそれがある。
【0034】
また、もし、残存容量を検出せずに充放電指令値を決定する場合、風速を取得しない場合と同様に、電力貯蔵装置12の今後の容量不足を回避した充放電制御が困難となる。このため、残存容量を検出しない場合にも、合成出力の変動を抑制できないおそれがある。
【0035】
これに対して、本実施形態においては、風速と残存容量との双方を考慮した充放電指令値を決定することで、合成出力の変動を確実に抑制できる。また、目標容量に基づいて充放電指令値を決定することで、偏った充放電による電力貯蔵装置12の容量不足を更に簡便かつ確実に回避することができる。また、予測された風力発電出力の増減(風速変動量)に基づいて充放電指令値を決定することで、風力発電出力の増加が予測される場合に充電量を増加させるといった効率的な充放電を行うことも可能となる。
【0036】
次に、以上のように構成された風力発電システム1の動作例について図3図7を参照して説明する。
【0037】
図3は、第1の実施形態を示す電力貯蔵装置12の制御方法のフローチャートである。図3は、制御装置13の1回の制御周期当たりのフローチャートであってもよい。この場合、制御装置13は、図3のフローチャートを繰り返し実行すればよい。
【0038】
図4は、図2の制御装置13における第1目標容量算出部1351の動作例を示す図である。図4は、横軸を時間(分)、縦軸を風速とし、風速が属する縦軸上の領域と目標容量との対応関係を示している。
【0039】
図5は、図2の制御装置13における第1発電出力予測部1352の動作例を示す図である。図5は、横軸を時間(分)、縦軸を風速の傾き(風速変動量)とし、風速の傾きが属する縦軸上の領域と予測される風力発電出力の増減との対応関係を示している。
【0040】
図6は、図2の制御装置13における発電出力判定部1353の動作例を示す図である。図6は、横軸を時間(分)、縦軸を出力(風力発電出力)とし、出力が属する領域と出力の大きさの状態との対応関係を示している。
【0041】
図7は、図3の充放電指令値の決定工程の詳細を示すフローチャートである。
【0042】
図3に示すように、先ず、風速予測装置131は、風速を予測することで風速を取得し(ステップS1_1)、風速信号を第1目標容量算出部1351および第1発電出力予測部1352に出力する。
【0043】
また、発電出力検出部132は、風力発電出力を検出し(ステップS1_2)、風力発電出力信号を発電出力判定部1353に出力する。
【0044】
また、容量検出部133は、残存容量を検出し(ステップS1_3)、容量信号を制御部135の充放電指令部1354に出力する。
【0045】
また、合成出力検出部134は、合成出力を検出し(ステップS1_4)、合成出力信号を充放電指令部1354に出力する。
【0046】
次いで、第1目標容量算出部1351は、風速予測装置131から入力された風速信号が示す風速に基づいて目標容量を算出し(ステップS2_1)、目標容量信号を充放電指令部1354に出力する。
【0047】
例えば、第1目標容量算出部1351は、図4の横軸における単位時間(例えば、1sec或いはデータ収集の周期等であってもよい)毎の算出時点において、縦軸の風速が、高容量領域および低容量領域のいずれに属するかを判定する。ここで、高容量領域は、第1風速閾値a1以上の風速が属する領域であって、目標容量を高い値に設定すべき領域である。低容量領域は、第1風速閾値a1より低い第2風速閾値a2未満の風速が属する領域であって、目標容量を低い値に設定すべき領域である。第1目標容量算出部1351は、風速が高容量領域に属する場合には、目標容量として、高容量領域に対応する第1目標容量を算出(設定)する。一方、第1目標容量算出部1351は、風速が低容量領域に属する場合には、目標容量として、低容量領域に対応する第2目標容量を算出する。なお、第1目標容量算出部1351は、風速が高容量領域および低容量領域のいずれにも属しない場合には、電池の劣化を抑制し、充電および放電のどちらにも対応可能であるSOC50%を目標容量としてよい。また、第1目標容量算出部1351は、図4の風速波形の短周期成分を一次遅れや移動平均によって緩和することで、滑らかな風速波形(図6参照)を取得してもよい。そして、第1目標容量算出部1351は、取得された滑らかな風速波形を用いて目標容量を算出してもよい。
【0048】
目標容量の算出は、例えば、目標容量を示すフラグの設定等によって行ってもよいが、これに限定されない。また、第1風速閾値a1および第2風速閾値a2の具体的な態様は特に限定されず、例えば、実験やシミュレーション等に基づいて好適な値を設定してもよい。
【0049】
第1目標容量算出部1351によれば、風速が大きければ、風力発電出力の増加を見込んで目標容量を高めに設定できる。逆に、風速が小さければ、風力発電出力の減少を見込んで目標容量を低めに設定できる。したがって、目標容量を風速に適合した値に設定できる。また、風速の閾値に基づいて目標容量を簡便に算出できる。目標容量を簡便かつ適切に算出できることで、目標容量に基づいた充放電指令値の決定を簡便かつ適切に行うことができる。
【0050】
図3に示すように、第1発電出力予測部1352は、風速予測装置131から入力された風速信号が示す風速に基づいて風力発電出力の増減を予測し(ステップS2_2)、増減予測信号を充放電指令部1354に出力する。
【0051】
例えば、第1発電出力予測部1352は、図5の横軸における単位時間(例えば1sec或いはデータ収集の周期等であってもよい)毎の予測時点において、縦軸の風速の傾きが、出力増加領域および出力減少領域のいずれに属するかを判定する。ここで、出力増加領域は、第1傾き閾値b1以上の風速の傾きが属する領域であって、風力発電出力が増加すると予測すべき領域である。出力減少領域は、第1傾き閾値b1より低い第2傾き閾値b2未満の風速の傾きが属する領域であって、風力発電出力が減少すると予測すべき領域である。第1発電出力予測部1352は、風速の傾きが出力増加領域に属する場合には、風力発電出力の増加を予測する。一方、第1発電出力予測部1352は、風速の傾きが出力減少領域に属する場合には、風力発電出力の減少を予測する。なお、第1発電出力予測部1352は、風速の傾きが出力増加領域および出力減少領域のいずれにも属しない場合には、現在の風力発電出力の維持を予測してよい。また、第1発電出力予測部1352は、図5の風速の傾きの波形の短周期成分を一次遅れや移動平均によって緩和することで、滑らかな風速の傾きの波形を取得してもよい。そして、第1発電出力予測部1352は、取得された滑らかな風速の傾きの波形を用いて風力発電出力の増減を予測してもよい。
【0052】
風力発電出力の増減の予測は、増減の予測結果を示すフラグの設定等によって行ってもよいが、これに限定されない。また、第1傾き閾値b1および第2傾き閾値b2の具体的な態様は特に限定されず、例えば、実験やシミュレーション等に基づいて好適な値を設定してもよい。
【0053】
第1発電出力予測部1352によれば、風速の傾きが大きければ、風力発電出力の増加を予測し、逆に、風速の傾きが小さければ、風力発電出力の減少を予測できる。したがって、風力発電出力の増減を精度良く予測できる。また、風速の傾きの閾値に基づいて、風力発電出力の増減を簡便に予測できる。風力発電出力の増減を簡便かつ高精度に予測できることで、予測された風力発電出力の増減に基づいた充放電指令値の決定を簡便かつ高精度に行うことができる。
【0054】
図3に示すように、発電出力判定部1353は、発電出力検出部132から入力された風力発電出力信号が示す風力発電出力に基づいて風力発電出力の大きさを判定し(ステップS2_3)、発電出力判定信号を充放電指令部1354に出力する。
【0055】
例えば、発電出力判定部1353は、発電出力検出部132から入力された風力発電出力の短周期変動成分を緩和することで、図6に示すような滑らかな波形の風力発電出力に変換する。発電出力判定部1353は、風力発電出力の一次遅れや移動平均を求めることで短周期変動成分を緩和してもよい。そして、発電出力判定部1353は、変換された波形の風力発電出力を用いて、風力発電出力の大きさを判定する。例えば、発電出力判定部1353は、図6の横軸における判定周期(例えば、1sec或いはデータ収集の周期等であってもよい)毎に、縦軸の風力発電出力が、高出力継続領域および低出力継続領域のいずれに属するかを判定する。
【0056】
ここで、高出力継続領域は、第1出力閾値c1以上の風力発電出力が閾値時間Tth以上継続している領域であって、風力発電出力が大きいと判定すべき領域である。低出力継続領域は、第1出力閾値c1より低い第2出力閾値c2未満の風力発電出力が閾値時間Tth以上継続している領域であって、風力発電出力が小さいと判定すべき領域である。発電出力判定部1353は、風力発電出力が高出力継続領域に属する場合には、風力発電出力が大きいと判定する。一方、発電出力判定部1353は、風力発電出力が低出力継続領域に属する場合には、風力発電出力が小さいと判定する。なお、発電出力判定部1353は、風力発電出力が高出力継続領域および低出力継続領域のいずれにも属しない場合には、風力発電出力の大きさが普通であると判定してよい。
【0057】
風力発電出力の大きさの判定は、判定結果を示すフラグの設定等によって行ってもよいが、これに限定されない。また、第1出力閾値c1、第2出力閾値c2および閾値時間Tthの具体的な態様は特に限定されず、例えば、実験やシミュレーション等に基づいて好適な値を設定してもよい。
【0058】
発電出力判定部1353によれば、風力発電出力の閾値に基づいて、風力発電出力の大小を簡便かつ正確に判定できる。風力発電出力の大小を簡便かつ正確に判定できることで、風力発電出力の大きさの判定結果に基づいた充放電指令値の決定を簡便かつ正確に行うことができる。
【0059】
また、風力発電出力が高い状態が継続している場合には、たとえ、風速変動量に基づいて風力発電出力の増加が予測された場合であっても、長期的に見れば、予測された増加の更にその後の急落を予測(想定)すべきである。発電出力判定部1353の判定結果を考慮することで、第1発電出力予測部1352の予測結果をのみを考慮する場合に比較して、長期的な観点からより的確な風力発電出力の増減を想定して、より的確な充放電指令値を決定することが可能となる。
【0060】
次いで、図3に示すように、充放電指令部1354は、充放電指令値を決定し(ステップS3)、決定された充放電指令値を示す充放電指令信号を電力貯蔵装置12に出力する。充放電指令値の決定は、第1目標容量算出部1351から入力された目標容量と、第1発電出力予測部1352から入力された風力発電出力の増減の予測結果と、発電出力判定部1353から入力された風力発電出力の大きさの判定結果と、合成出力検出部134から入力された合成出力とに基づく。
【0061】
次に、充放電指令部1354が決定する充放電指令値について、図7を用いて更に詳細に説明する。図7に示すように、充放電指令部1354は、以下の(1)〜(4)の場合に、貯蔵すべき電力を示す充放電指令値を決定する。
【0062】
(1)残存容量が目標容量以上(ステップS31:Yes)で、第1発電出力予測部1352において風力発電出力の増加が予測され(ステップS32_1:増加)、発電出力判定部1353において風力発電出力が大きいと判定された(ステップS33_1:大)場合。
(1)の場合、たとえ、風速変動量に基づいて風力発電出力の増加が予測されていても、風力発電出力が高い状態が継続していることを考慮して、風力発電出力が増加後に急落することを想定すべきである。このため、(1)の場合には、残存容量が十分であっても、風力発電出力の急落に備えて電力系統2に供給可能な電力を備蓄しておくために、貯蔵すべき電力を示す充放電指令値を決定する(ステップS34_1)。このように充電側の充放電指令値を決定することで、風力発電出力が急落しても合成出力の変動を確実に抑制できる。
【0063】
(2)残存容量が目標容量以上(ステップS31:Yes)で、発電出力の減少が予測され(ステップS32_1:減少)、発電出力が大きいと判定された(ステップS33_2:大)場合。
(2)の場合、(1)の場合と同様の理由によって、貯蔵すべき電力を示す充放電指令値を決定する(ステップS34_2)。
【0064】
(3)残存容量が目標容量未満(ステップS31:No)で、発電出力の増加が予測され(ステップS32_2:増加)、発電出力が大きいと判定された(ステップS33_3:大)場合。
(3)の場合、残存容量が乏しく、更に、(1)の場合と同様に風力発電出力の急落を想定すべきであるため、貯蔵すべき電力を示す充放電指令値を決定する(ステップS34_3)。残存容量が乏しい状態で風力発電出力が急落した場合、合成出力の変動を抑制するように電力系統2に給電することは、残存容量が十分であるとき以上に困難である。ステップS34_3のように充電側の充放電指令値を決定することで、電力系統2に供給すべき電力を予め確保することができる。これにより、風力発電出力の急落にともなう合成出力の変動を確実に抑制できる。
【0065】
(4)残存容量が目標容量未満(ステップS31:No)で、発電出力の減少が予測された(ステップS32_2:減少)場合。
(4)の場合、風力発電出力の減少に備えて電力系統2に供給可能な電力を備蓄しておくために、貯蔵すべき電力を示す充放電指令値を決定する(ステップS34_4)。このように充電側の充放電指令値を決定することで、風力発電出力が減少しても合成出力の変動を確実に抑制できる。
【0066】
また、図7に示すように、充放電指令部1354は、以下の(5)〜(7)の場合に、供給すべき電力を示す充放電指令値を決定する。
【0067】
(5)残存容量が目標容量以上(ステップS31:Yes)で、発電出力の増加が予測され(ステップS32_1:増加)、発電出力が小さいと判定された(ステップS33_1:小)場合。
(5)の場合、残存容量を目標容量に近付けることを優先し、供給すべき電力を示す充放電指令値を決定する(ステップS34_5)。
【0068】
(6)残存容量が目標容量以上(ステップS31:Yes)で、発電出力の減少が予測され(ステップS32_1:減少)、発電出力が小さいと判定された(ステップS33_2:小)場合。
(6)の場合、(5)の場合と同様の理由により、供給すべき電力を示す充放電指令値を決定する(ステップS34_6)。
【0069】
(7)残存容量が目標容量未満(ステップS31:No)で、発電出力の増加が予測され(ステップS32_2:増加)、発電出力が小さいと判定された(ステップS33_3:小)場合。
(7)の場合、風力発電出力が低い状態が継続していることを考慮して、今後の風力発電出力の急増を想定すべきである。このため、(7)の場合には、供給すべき電力を示す充放電指令値を決定する(ステップS34_7)。なお、(7)の場合には、今後の風力発電出力の急増にともなって合成出力の変動を抑制する充電が必要となることを想定して、今後の充電のための電力貯蔵装置12の空き容量を確保するために、放電側の充放電指令値を決定してもよい。
【0070】
なお、制御装置13の1回の制御周期当たりの充電側および放電側の充放電指令値は、一定であっても可変であってもよい。また、充放電指令部1354は、充放電指令値として、合成出力検出部134で検出された合成出力を考慮した値を決定してもよい。例えば、図8に示すように、電力系統2への連系条件が、任意時間B[sec]における合成出力の変動幅をA[kW]以内に収めることであるとする。この場合、充放電指令部1354は、合成出力検出部134で検出された合成出力に基づいて、現在の時刻tまでの過去の任意時間B[sec]分の合成出力の変動幅を算出してよい。なお、現在の時刻tにおいて、風力発電装置11は系統連系しているものとする。充放電指令部1354は、過去の任意時間B[sec]分の合成出力の変動幅に、充放電指令部1354が算出した充放電指令値(充放電出力)を加算することで、時刻t+1における合成出力の予定値を算出してよい。そして、充放電指令部1354は、図8の波形WF1に示すように、合成出力の予定値がA[kW]を超える場合には、図8の波形WF2に示すように、合成出力の予定値がA[kW]以下になるように、充放電指令値を補正してよい。これにより、現在の時刻tの後の時刻t+1においても引き続き合成出力の変動幅を任意時間B[sec]あたりA[kW]以内に収めることができるので、系統連系を継続することができる。
【0071】
本実施形態によれば、風速と残存容量との双方を考慮した充放電指令値を決定することで、合成出力の変動を簡便かつ確実に抑制することができる。
【0072】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の説明にあたり、第1の実施形態と同様の構成部については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0073】
図9は、第2の実施形態を示す風力発電システム1のブロック図である。図10は、図9の風力発電システム1における制御装置13のブロック図である。
【0074】
図9図10に示すように本実施形態の風力発電システム1は、第1の実施形態における風速予測装置131の代わりに、風速検出装置136を備えている。風速検出装置136は、風速を実測し、実測された風速を示す風速信号を制御部135(第1目標容量算出部1351、第1発電出力予測部1352)に出力する。
【0075】
第1目標容量算出部1351は、風速の実測値に基づいて目標容量を算出することができる。また、第1発電出力予測部1352は、風速の実測値に基づいて風力発電出力の増減を予測できる。このため、充放電指令部1354は、風速の実測値に基づいて充放電指令値を決定できる。なお、第1目標容量算出部1351は、風速波形の短周期成分を一次遅れや移動平均によって緩和することで滑らかな風速波形を取得し、当該滑らかな風速波形を用いて目標容量を算出してもよい。また、第1発電出力予測部1352は、風速の傾きの波形の短周期成分を一次遅れや移動平均によって緩和することで滑らかな風速の傾きの波形を取得し、当該滑らかな風速の傾きの波形を用いて風力発電出力の増減を予測してもよい。
【0076】
第2の実施形態によれば、実際の風速を考慮することで、合成出力の変動を抑制する充放電制御を第1の実施形態よりも高精度に行うことができる。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の説明にあたり、第1の実施形態と同様の構成部については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0078】
図11は、第3の実施形態を示す制御装置13のブロック図である。図12は、図11の制御装置13における第2目標容量算出部1345の動作例を示す図である。図13は、図11の制御装置13における第2発電出力予測部1342の動作例を示す図である。
【0079】
図11に示すように、本実施形態の風力発電システム1の制御装置13は、第1目標容量算出部1351(図2参照)の代わりに第2目標容量算出部1355を備える。また、本実施形態の制御装置13は、第1発電出力予測部1352(図2)の代わりに第2発電出力予測部1356を備える。
【0080】
第2目標容量算出部1355は、図12の横軸における単位時間毎の算出時点において、縦軸の風速の傾きが、高容量領域および低容量領域のいずれに属するかを判定する。第2目標容量算出部1355は、風速の傾きが高容量領域に属する場合には、目標容量として第1目標容量を算出する。一方、第2目標容量算出部1355は、風速の傾きが低容量領域に属する場合には、目標容量として第2目標容量を算出する。なお、第2目標容量算出部1355は、図12の風速の傾きの波形の短周期成分を一次遅れや移動平均によって緩和することで、滑らかな風速の傾きの波形を取得してもよい。そして、第2目標容量算出部1355は、取得された滑らかな風速の傾きの波形を用いて目標容量を算出してもよい。
【0081】
第2発電出力予測部1356は、図13の横軸における単位時間毎の予測時点において、縦軸の風速が、出力増加領域および出力減少領域のいずれに属するかを判定する。第2発電出力予測部1356は、風速が出力増加領域に属する場合には、風力発電出力の増加を予測する。一方、第2発電出力予測部1356は、風速が出力減少領域に属する場合には、風力発電出力の減少を予測する。なお、第2発電出力予測部1356は、図13の風速波形の短周期成分を一次遅れや移動平均によって緩和することで、滑らかな風速波形を取得してもよい。そして、第2発電出力予測部1356は、取得された滑らかな風速波形を用いて風力発電出力の増減を予測してもよい。
【0082】
第2目標容量算出部1355によれば、目標容量を風速の傾きに適合した値に設定できる。また、風速の傾きの閾値に基づいて目標容量を簡便に算出できる。また、第2発電出力予測部1356によれば、風力発電出力の増減を簡便に予測できる。
【0083】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、充放電指令値を簡便かつ適切に決定し、決定された充放電指令値に基づいて、合成出力の変動を確実に抑制できる。
【0084】
なお、上述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。例えば、第2の実施形態で説明した風速検出装置136と、第3の実施形態で説明した第2目標容量算出部1355および第2発電出力予測部1356とを備えた風力発電システム1を構成することもできる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
1 風力発電システム
12 電力貯蔵装置
13 制御装置
131 風速予測装置
132 発電出力検出部
133 容量検出部
134 合成出力検出部
135 制御部
2 電力系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13