特許第6383310号(P6383310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6383310-燃焼制御装置および燃焼システム 図000002
  • 特許6383310-燃焼制御装置および燃焼システム 図000003
  • 特許6383310-燃焼制御装置および燃焼システム 図000004
  • 特許6383310-燃焼制御装置および燃焼システム 図000005
  • 特許6383310-燃焼制御装置および燃焼システム 図000006
  • 特許6383310-燃焼制御装置および燃焼システム 図000007
  • 特許6383310-燃焼制御装置および燃焼システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383310
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】燃焼制御装置および燃焼システム
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   F23N5/24 113
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-54420(P2015-54420)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-173222(P2016-173222A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−286128(JP,A)
【文献】 特開2014−239571(JP,A)
【文献】 特開平11−262076(JP,A)
【文献】 米国特許第04295129(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の状態に応じて2つの接点間の短絡および開放の何れかの状態をとる異常検出素子の一方の前記接点に2値の出力信号を供給する出力回路と、
前記出力信号が供給される前記異常検出素子の他方の前記接点から出力された信号を入力とし、入力された信号の論理レベルに応じた2値の入力信号を生成する入力回路と、
前記出力信号が第1論理レベルとなる第1期間内に前記入力信号のサンプリングを行うとともに、前記出力信号が第2論理レベルとなる第2期間内に前記入力信号のサンプリングを行うサンプリング部と、
前記サンプリング部による前記第1期間のサンプリング結果に基づいて前記異常検出素子による監視対象の状態を判定する異常検出素子状態判定部と、
前記サンプリング部による前記第2期間のサンプリング結果に基づいて前記出力回路および前記入力回路の故障の有無を判定する回路故障判定部と、
を有し、
前記異常検出素子状態判定部は、
連続するN(Nは2以上の整数)回分の前記第1期間のサンプリング値を参照することにより、前記入力回路に入力された信号の前記第1期間における論理レベルがN回連続して前記第1論理レベルであることを検出した場合に、前記異常検出素子による監視対象が正常であると判定し、前記入力回路に入力された信号の前記第1期間における論理レベルがN回連続して前記第2論理レベルであることを検出した場合に、前記異常検出素子による監視対象が異常であると判定する
ことを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼制御装置において、
前記回路故障判定部は、
連続するM(Mは2以上の整数)回分の前記第2期間のサンプリング値を参照することにより、前記入力回路に入力された信号の前記第2期間における論理レベルがM回連続して前記第2論理レベルであることを検出した場合に、前記出力回路および前記入力回路の少なくとも一方が故障していると判定する
ことを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃焼制御装置において、
M≧Nである
ことを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の燃焼制御装置において、
前記サンプリング部は、前記出力信号が前記第2論理レベルから前記第1論理レベルに切り替わってから第1時間が経過した後に、前記第1期間におけるサンプリングを行う
ことを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項5】
請求項に記載の燃焼制御装置において、
前記サンプリング部は、前記出力信号が前記第1論理レベルから前記第2論理レベルに切り替わってから第2時間が経過した後に、前記第2期間におけるサンプリングを行う
ことを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃焼制御装置において、
前記第1時間は、前記第2時間以下である
ことを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の燃焼制御装置において、
前記サンプリング部、前記異常検出素子状態判定部、および前記回路判定部からなる機能ブロックを複数組有し、
夫々の前記機能ブロックは、異なる複数のプログラム処理装置によって別個に構成されている
ことを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至の何れか一項に記載の燃焼制御装置において、
前記異常検出素子状態判定部および前記回路故障判定部の判定結果に基づいて、バーナの運転を制御する制御部を更に有する
ことを特徴とする燃焼制御装置。
【請求項9】
請求項に記載の燃焼制御装置と、
燃焼室内に設けられ、前記燃焼制御装置によって制御される前記バーナと、
を備える燃焼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼制御装置および燃焼システムに関し、特に、燃焼の安全制御を高精度に行うことができる燃焼制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃焼炉の運転制御系では、燃焼制御装置によって、燃焼炉に設けられたバーナの火炎や、炉内温度、燃焼用空気の圧力、バーナに供給される燃料の圧力等を監視しながら燃焼制御を行うことにより、燃焼の安全性を確保している。具体的には、燃焼制御装置が、燃焼炉の安全運転に関わるガス圧力や空気圧力等の状態を異常検出素子の状態に反映させ、その異常検出素子の状態が正常を示す場合のみ、燃焼炉の運転を許可するように制御している(例えば特許文献1参照。)。
ここで、上記異常検出素子とは、監視対象の状態に応じて2つの接点間の短絡および開放の何れかの状態をとる構造を有するものであり、例えば、インターロックやリミットと一般に呼ばれているものである。上記インターロックとしては、例えば、燃焼用空気の供給の有無を監視するエアー圧力下限インターロックや、燃料の供給状態を監視するガス圧力上限インターロックおよびガス圧力下限インターロック等が知られている。
【0003】
一般的なインターロックは、2つの接点間に設けられたスイッチを含み、センサの出力によって上記スイッチのオン・オフが切り替わる構造を有している。このようなインターロックは、監視対象が正常である場合には、スイッチがオンすることにより2つの接点間が短絡し、監視対象が異常である場合には、スイッチがオフすることにより2つの接点間が開放するように制御される。
【0004】
従来の燃焼制御装置では、例えば非特許文献1に開示されているように、上記構造を有するインターロックの一方の接点にパルス信号を入力し、上記インターロックの他方の接点から上記パルス信号が出力されるか否かによって、そのインターロックの開放および短絡を判定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−286128号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「燃焼安全制御技術を用いたコントローラの開発」、熊澤雄一、azbil Technical Review 、2011年1月発行号、アズビル株式会社。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、燃焼システムでは、燃焼炉の運転制御系において異常が発生した場合には速やかに燃焼動作を停止させて安全を確保する必要がある一方、燃焼炉の運転制御系が正常である場合には安定した燃焼動作を実現する必要がある。そのため、安全制御のためのインターロック等に関する異常検出には、迅速性と高い精度が求められる。例えば、インターロックによる監視対象(ガス圧や空気圧等)の異常のように、燃焼炉の爆発等の重大な事故に直接結びつく異常に対しては検出の迅速性が求められる一方、インターロックの周辺回路の故障等に対しては、誤検出による燃焼動作の停止を防止するために高い検出精度が求められる。
【0008】
しかしながら、上述した従来のインターロックの判定手法は、単に、インターロックを介して燃焼制御装置に入力されるパルス信号の有無によってインターロックの入力判定を行うものであり、インターロックの異常の有無と回路故障の有無とを区別して判定することができないため、監視対象の判定の迅速性に関しては十分かもしれないが、判定の精度に関しては十分であるとは言い難い。
例えば、プラント等における鉄鋼炉のような大型の燃焼炉を備えた燃焼システムでは、夫々のインターロックと燃焼制御装置とを接続する配線が数百メートルにも及ぶ場合があり、上記配線の寄生インピーダンス成分の増大により、配線に近接した動力源やインバータ等からの強いノイズの影響を受け易い。また、上記配線は、複数本束ねられて敷設される場合が多いため、一つの配線にパルス信号が伝搬すると、そのパルス信号が他の配線に誘導し、それがノイズ成分となるおそれがある。このようなノイズが上記配線に伝搬した場合に、従来のインターロックの判定手法では、十分な判定精度が得られるとは言い難い。
【0009】
本発明の目的は、燃焼制御において、インターロック等の異常検出素子の判定精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る燃焼制御装置(1、10)は、監視対象の状態に応じて2つの接点間の短絡および開放の何れかの状態をとる異常検出素子(6〜9)の一方の接点に2値の出力信号(VOUT)を供給する出力回路(102)と、出力信号が供給される異常検出素子の他方の接点から出力された信号を入力とし、入力された信号の論理レベルに応じた2値の入力信号(DIN_1〜DIN_n)を生成する入力回路(103_1〜103_n)と、出力信号が第1論理レベル(H)となる第1期間(T1)内に入力信号のサンプリングを行うとともに、出力信号が第2論理レベル(L)となる第2期間(T2)内に入力信号のサンプリングを行うサンプリング部(105)と、サンプリング部による第1期間のサンプリング結果に基づいて前記異常検出素子による監視対象の状態を判定する異常検出素子状態判定部(1061)と、サンプリング部による第2期間のサンプリング結果に基づいて出力回路および入力回路の故障の有無を判定する回路故障判定部(1062)とを備え、異常検出素子状態判定部は、連続するN(Nは2以上の整数)回分の第1期間のサンプリング値を参照することにより、入力回路に入力された信号(VIN_1〜VIN_n)の第1期間における論理レベルがN回連続して第1論理レベルであることを検出した場合に、異常検出素子による監視対象が正常であると判定し、入力回路に入力された信号の第1期間における論理レベルがN回連続して第2論理レベルであることを検出した場合に、異常検出素子による監視対象が異常であると判定することを特徴とする。
【0012】
上記燃焼制御装置において、回路故障判定部は、連続するM(Mは2以上の整数)回分の第2期間のサンプリング値を参照することにより、入力回路に入力された信号の第2期間における論理レベルがM回連続して第2論理レベルであることを検出した場合に、出力回路および入力回路の少なくとも一方が故障していると判定するようにしてもよい。
【0013】
上記燃焼制御装置において、M≧Nとしてもよい。なお、MとNは任意である。
【0014】
上記燃焼制御装置において、サンプリング部は、出力信号が第2論理レベルから第1論理レベルに切り替わってから第1時間(Td1)が経過した後に、第1期間におけるサンプリングを行うようにしてもよい。
【0015】
上記燃焼制御装置において、サンプリング部は、出力信号が第1論理レベルから第2論理レベルに切り替わってから第2時間(Td2)が経過した後に、第2期間におけるサンプリングを行うようにしてもよい。
【0016】
上記燃焼制御装置において、第1時間は、第2時間以下としてもよい。なお、第1時間と第2時間は任意である。
【0017】
上記燃焼制御装置において、サンプリング部、異常検出素子状態判定部、および回路判定部からなる機能ブロック(110)を複数組有し、夫々の機能ブロックは、異なる複数のプログラム処理装置(101a,101b)によって別個に構成されるようにしてもよい。
【0018】
上記燃焼制御装置において、異常検出素子状態判定部および回路故障判定部の判定結果に基づいて、バーナ(43)の運転を制御する制御部(11)を更に有してもよい。
【0019】
本発明に係る燃焼システム(500)は、上記燃焼制御装置(1)と、燃焼室(40)内に設けられ、上記燃焼制御装置によって制御される上記バーナとを備えることを特徴とする。
【0020】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって表している。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したことにより、本発明によれば、燃焼制御において、インターロック等の異常検出素子の判定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施の形態に係る燃焼制御装置を備えた燃焼システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る燃焼制御装置における安全制御装置の構成を示す図である。
図3図3は、実施の形態に係る燃焼制御装置によるインターロックに関する判定処理を説明するためのタイミングチャートである。
図4図4は、実施の形態に係る燃焼制御装置によるインターロックに関する判定処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態に係る燃焼制御装置によるインターロック入力判定処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、実施の形態に係る燃焼制御装置による回路故障判定処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、実施の形態に係る燃焼制御装置における安全制御装置を複数のマイクロコントローラで実現した場合の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0024】
〈燃焼システムの構成〉
図1は、本実施の形態に係る燃焼制御装置を備えた燃焼システムの構成を示す図である。
同図に示される燃焼システム500は、バーナによって燃焼室内を燃焼させるシステムである。燃焼システム500としては、脱臭炉および加熱炉等の小型の工業用燃焼炉や、プラント等における鉄鋼炉等の大型の工業用燃焼炉を例示することができる。
具体的に、燃焼システム500は、燃焼装置4と、燃料流路2と、空気流路3と、コントローラ5と、異常検出素子としての過昇温リミット6およびインターロック7〜9と、燃焼制御装置1とを備えている。
【0025】
燃焼装置4は、温度センサ41、42、主バーナ43、パイロットバーナ44、火炎検出器45、および点火装置(イグナイタ)46を含む。主バーナ43は、燃焼室40内に配置され、燃焼室40内を加熱する。パイロットバーナ44は、主バーナ43を点火するためのバーナである。点火装置(IG)46は、バーナを点火するための装置であり、例えば点火トランスおよび電極棒を含み、上記点火トランスによって高電圧のスパークを発生させることにより、上記電極棒を介してパイロットバーナ44を点火する。火炎検出器45は、主バーナ43による火炎の有無を検出する装置である。温度センサ41は、燃焼室40内の温度を検出するセンサであり、当該センサによる温度計測値は燃焼室40内の温度制御に利用される。温度センサ42は、燃焼室40内の温度を検出するセンサであり、当該センサによる温度計測値は燃焼室40内の異常高温状態の検出に利用される。
【0026】
燃料流路2は、燃焼装置4に燃料を供給するための流路である。燃料流路2は、外部から燃料が供給される主流路2aと、主流路2aから分岐した第1の流路2bおよび第2の流路2cとから構成されている。第1の流路2bは主バーナ43に接続され、第2の流路2cはパイロットバーナ44に接続されている。これにより、主流路2aに供給された燃料は、主バーナ43およびパイロットバーナ44に送出されることとなる。また、第1の流路2bには安全遮断弁21,22が設けられ、第2の流路2cには安全遮断弁23,24が設けられている。安全遮断弁21〜24は、例えばバーナコントローラ11によって弁の開閉が制御される。
【0027】
空気流路3は、一端がブロア31、他端が第1の流路2bに接続されており、ブロア31から吐出された空気(エアー)を第1の流路2bを介して燃料(ガス)とともに主バーナ43に供給する。
【0028】
コントローラ5は、温度指示調節計(TIC:Temperature indicating controller)であり、燃焼室内40の温度が目標温度になるように、温度センサ41の温度計測値に基づいて燃焼制御装置1に対する制御信号を生成する。
【0029】
過昇温リミット6は、燃焼室内40の異常高温を検出するための過熱防止器である。過昇温リミット6は、2つの接点と、当該接点間に配置されたスイッチ60と、温度センサ42による温度計測値が予め設定された設定温度を超えているか否かを判定し、判定結果に応じてスイッチ60のオン・オフを制御するスイッチ駆動部61と、から構成されている。例えば、スイッチ駆動部61は、温度センサ42による温度計測値が設定温度を超えた場合にスイッチ60をオンし、温度センサ42による温度計測値が設定温度を超えない場合にスイッチ60をオフする。
【0030】
インターロック(エアー圧力スイッチ)7は、空気流路3に設けられ、空気流路3に供給されるエアーの圧力が設定された設定圧力値を超えているか否かを検出するエアー圧力下限インターロックである。具体的に、インターロック7は、2つの接点と、当該接点間に配置されたスイッチ70と、センサによって検出された空気流路3内のエアー圧力が予め設定された設定圧力値を超えているか否かを判定し、判定結果に応じてスイッチ70のオン・オフを制御するスイッチ駆動部71と、から構成されている。例えば、スイッチ駆動部71は、空気流路3内のエアー圧力が設定圧力値を超えた場合にスイッチ70をオンし、空気流路3内のエアー圧力が設定圧力値を超えない場合にスイッチ70をオフする。
【0031】
インターロック(ガス圧力スイッチ)8は、主流路2aに設けられ、主流路2aに供給される燃料(ガス)の圧力が予め設定された下限圧力値を超えているか否かを検出するガス圧力下限インターロックである。具体的に、インターロック8は、2つの接点と、当該接点間に配置されたスイッチ80と、センサによって検出された主流路2a内のガス圧力が下限圧力値を超えているか否かを判定し、判定結果に応じてスイッチ80のオン・オフを制御するスイッチ駆動部81と、から構成されている。例えば、スイッチ駆動部81は、主流路2a内のガス圧力が下限圧力値を超えた場合にスイッチ80をオンし、主流路2a内のガス圧力が下限圧力値を超えない場合にスイッチ80をオフする。
【0032】
インターロック(ガス圧力スイッチ)9は、第1の流路2bに設けられ、主バーナ43に供給される燃料(ガス)の圧力が予め設定された上限圧力値を超えているか否かを検出するガス圧力上限インターロックである。具体的に、インターロック9は、2つの接点と、当該接点間に配置されたスイッチ90と、センサによって検出された第1の流路2b内のガス圧力が上限圧力値を超えているか否かを判定し、判定結果に応じてスイッチ90のオン・オフを制御するスイッチ駆動部91と、から構成されている。例えば、スイッチ駆動部91は、第1の流路2b内のガス圧力が上限圧力値を超えない場合にスイッチ90をオンし、第1の流路2b内のガス圧力が上限圧力値を超えた場合にスイッチ90をオフする。
【0033】
なお、以下の説明では、監視対象の状態に応じて2つの接点間の短絡および開放が制御される構造を有する異常検出素子としてのインターロック7〜9および過昇温リミット6を総称して「リミット・インターロック」と表記する場合がある。
【0034】
〈燃焼制御装置の構成〉
燃焼制御装置1は、燃焼室40内のバーナによる燃焼を安全に制御するための装置である。図1に示されるように、燃焼制御装置1は、バーナコントローラ11と安全制御装置10とから構成されている。
【0035】
バーナコントローラ11は、バーナ(主バーナ43およびパイロットバーナ44)の運転を制御することにより、燃焼室40内の燃焼を制御する装置である。具体的に、バーナコントローラ11は、後述する安全制御装置10からの指示(通知信号14)や、コントローラ5からの制御信号および火炎検出器45からの火炎検出信号に基づいて、安全遮断弁21〜24の開閉と点火装置46の起動を制御することにより、設定された点火シーケンスに従った主バーナ43の点火を行う。
【0036】
なお、図1には、燃焼システム500が一つの主バーナ44を備えている場合が例示されているが、燃焼システムが複数の主バーナを備えている場合には、対応する主バーナを制御するバーナコントローラを主バーナ毎に複数設け、それらのバーナコントローラを単一の安全制御装置10によって制御するようにしてもよい。
【0037】
安全制御装置10は、燃焼システム500の安全運転、すなわち燃焼システム500の爆発等を防止するために、各リミット・インターロックの状態を監視し、バーナの運転の許可・不許可を判定する装置である。具体的には、安全制御装置10は、インターロック7〜9および過昇温リミット6における接点の状態(開放または短絡)に応じて、バーナの運転の許可・不許可を示す通知信号14を生成してバーナコントローラ11に与えることにより、バーナの運転の許可および不許可(各バーナへの燃料の供給および停止等)を指示する。
【0038】
安全制御装置10としては、工業用燃焼炉の安全通則(例えば、JIS B 8415等)に基づいて製造されたリミット・インターロックを監視するためのリミット・インターロックモジュールや、上記安全通則に対応した専用のソフトウェアを設定したプログラマブルロジックコントローラ(所謂安全PLC)等を例示することができる。
【0039】
安全制御装置10は、各リミット・インターロックの一方の接点にパルス信号を印加するとともに、各リミット・インターロックの他方の接点から出力される信号の論理レベルを判定することにより、各リミット・インターロックの状態を判定する。
具体的に、安全制御装置10は、パルス信号が第1論理レベルである期間における、各リミット・インターロックからの入力信号の論理レベルに基づいて各リミット・インターロックの状態を判定するインターロック入力判定処理を行う。また、安全制御装置10は、パルス信号が第2論理レベルである期間における各リミット・インターロックからの入力信号の論理レベルに基づいて、後述する出力回路102および入力回路103の故障を判定する回路故障判定処理を行う。
以下、安全制御装置10の構成とその動作について詳細に説明する。
なお、本願明細書では、一例として、第1論理レベルを“ハイ(H)レベル”とし、第2論理レベルを“ロー(L)レベル”として説明する。
【0040】
〈安全制御装置の構成〉
図2は、実施の形態に係る燃焼制御装置1における安全制御装置10の構成を示す図である。
図2に示されるように、安全制御装置10は、複数の外部端子と、マイクロコントローラ(MCU)101と、出力回路102と、n(nは1以上の整数)個の入力回路103_1〜103_nとから構成されている。なお、図2では、上記複数の外部端子として、リミット・インターロックの状態監視に関係する端子COM、IN_1〜IN_nのみを図示している。
【0041】
端子COMは、後述する出力信号VOUTを出力するための外部端子であり、各リミット・インターロックを構成するスイッチの一端(一方の接点)に共通に接続される。例えば図2に示されるように、端子COMは、配線12によって、インターロック7におけるスイッチ70の一方の接点a、インターロック8におけるスイッチ80の一方の接点a、…、およびインターロック9におけるスイッチ90の一方の接点aに、夫々接続される。なお、図示はしないが、過昇温リミット6におけるスイッチ60の一方の接点にも、端子COMが接続されている。
【0042】
端子IN_1〜IN_nは、リミット・インターロック毎に対応して設けられ、対応するリミット・インターロックからの信号を入力するための外部端子である。例えば、図2に示されるように、端子IN_1は、配線13_1によってインターロック7におけるスイッチ70の他方の接点bに接続され、端子IN_2は、配線13_2によってインターロック8におけるスイッチ80の他方の接点bに接続され、…、端子IN_nは、配線13_nによってインターロック9におけるスイッチ90の他方の接点bに接続されている。なお、図示はしないが、過昇温リミット6におけるスイッチ60の他方の接点も、対応する入力端子に接続されている。
【0043】
出力回路102は、各リミット・インターロックに供給するための2値の出力信号VOUTを生成する回路である。具体的には、出力回路102は、後述するパルス生成部104によって生成された基準パルス信号PSに同期した2値の出力信号VOUTを生成し、端子COMに出力する。
【0044】
具体的に、出力回路102は、例えば図2に示すように、バッファ回路BF、フォトカプラPC1、抵抗R1、およびPNP型のトランジスタQ1から構成されている。出力回路102は、外部端子COMとMCU101との間を電気的に絶縁するとともに、MCU101から出力された例えば0−3.3V(または5.0V)のパルス信号を、例えば0V−24Vの2値の出力信号VOUTに変換して端子COMに出力する。例えば、MCU101から出力された基準パルス信号PSがH(例えば3.3V)である場合に、トランジスタQ1をオンさせて+24Vの出力信号VOUTを出力し、MCU101から出力された基準パルス信号PSがL(例えば0V)である場合に、トランジスタQ1をオフさせる。この場合、接続先のリミット・インターロックの接点が短絡していれば、後述する入力回路103のプルダウン抵抗R3、R4によって出力信号VOUTは0Vとなる。一方、接続先のリミット・インターロックの接点が開放していれば、端子COMがハイインピーダンスとなる。
【0045】
入力回路103_1〜103_nは、リミット・インターロック毎に対応して設けられている。入力回路103_1〜103_n(総称する場合には、「入力回路103」と表記する。)は、対応する各リミット・インターロックから対応する端子IN_1〜IN_n(総称する場合には、「端子IN」と表記する。)に出力された信号VIN_1〜VIN_n(総称する場合は、「信号VIN」と表記する。)を入力とし、入力された信号VINの論理レベルに応じた2値の入力信号DIN_1〜DIN_n(総称する場合には、「入力信号DIN」と表記する。)を生成する。例えば、図2には、インターロック7におけるスイッチ70の他方の接点bから出力された信号VIN_1が端子IN_1を介して入力される入力回路103_1と、インターロック8におけるスイッチ80の他方の接点bから出力された信号VIN_2が端子IN_2を介して入力される入力回路103_2と、インターロック9におけるスイッチ90の他方の接点bから出力された信号VIN_nが端子IN_nを介して入力される入力回路103_nと、が図示されている。なお、図示はしないが、過昇温リミット6のスイッチ60の他方の接点から出力された信号も、対応する入力回路に入力される。
【0046】
具体的に、入力回路103は、例えば図2に示すように、抵抗R2〜R4およびフォトカプラPC2から構成されている。入力回路103は、対応する端子INとMCU101との間を電気的に絶縁するとともに、対応する端子INに入力された例えば0V−24Vの2値の信号を、例えば0−3.3V(または5.0V)の入力信号DINに変換してMCU101に入力する。ここで、抵抗R3、R4の抵抗値は、各リミット・インターロックの接点が短絡した状態においてHレベル(例えば24V)の出力信号VOUTが出力されたときに、フォトカプラPC2の一次側のフォトダイオードがオンするように、調整されている。
【0047】
MCU101は、例えば、CPUなどのプロセッサと、各種のメモリと、その他の周辺回路とから構成されている。MCU101は、上記プロセッサが上記メモリに記憶されたプログラムに従ってデータ処理を実行することにより、パルス生成部104、サンプリング部105、判定部106、および通知部107として機能する。
【0048】
パルス生成部104は、インターロック7〜9および過昇温リミット6の状態の監視に利用する基準パルス信号PSを生成する機能部である。具体的に、パルス生成部104は、例えば、水晶発振器等のクロックジェネレータによって生成された基準クロック信号を分周することによって所定の周期およびデューティ比の基準パルス信号PSを生成する機能部である。基準パルス信号PSは、例えば、MCU101の電源電圧(例えば3.3Vまたは5.0V)に基づいて生成された0V−3.3V(5.0V)の2値信号である。
【0049】
サンプリング部105は、入力回路103_1〜103_nによって生成された入力信号DIN_1〜DIN_nを夫々サンプリングする機能部である。サンプリング部105は、パルス生成部104によって生成された基準クロック信号に同期してサンプリング処理を行う。具体的には、サンプリング部105は、出力信号VOUT(上記基準パルス信号PS)が第1論理レベル(Hレベル)である期間T1において入力信号DINのサンプリングを行うとともに、出力信号VOUT(上記基準パルス信号PS)が第2論理レベル(Lレベル)である期間T2において入力信号DINのサンプリングを行う。なお、各入力信号DIN_1〜DIN_nに対するサンプリングは、サンプリング部105が時分割に行ってもよいし、複数の入力信号を同時にサンプリングしてもよい。
【0050】
判定部106は、サンプリング部105による期間T1のサンプリング結果に基づいて各リミット・インターロックの異常の有無を判定する異常検出素子状態判定部として、インターロック入力判定部1061を含む。更に、判定部106は、サンプリング部105による期間T2のサンプリング結果に基づいて出力回路102および入力回路103の故障の有無を判定する回路故障判定部1062を含む。
【0051】
通知部107は、判定部106による判定結果に基づいて、上述したバーナの運転の許可および不許可を示す通知信号14を生成する。
例えば、インターロック入力判定部1061によってリミット・インターロックが“正常”と判定された場合には、バーナの運転の“許可”を示す通知信号14を生成する。また、回路故障判定部1062によって“回路故障無し”と判定された場合には、バーナの運転の“許可”を示す通知信号14を生成する。一方、インターロック入力判定部1061によってリミット・インターロックが“異常”と判定された場合には、バーナの運転の“不許可”を示す通知信号14を生成する。また、回路故障判定部1062によって“回路故障有り”と判定された場合には、バーナの運転の“不許可”を示す通知信号14を生成する。
【0052】
〈安全制御装置の動作〉
次に、燃焼制御装置1によるインターロックに関連する判定処理(インターロック入力判定処理および回路故障判定処理)について具体的に説明する。
なお、本実施の形態に係る燃焼制御装置1では、各リミット・インターロックに対して同様の判定処理が行われるため、以下の説明では、インターロック7に関連する判定処理について代表的に説明し、その他のリミット・インターロックに関連する判定処理については、説明を省略する。
【0053】
図3は、実施の形態に係る燃焼制御装置によるインターロックに関する判定処理を説明するためのタイミングチャートである。図3の最上段には端子COMの電圧(出力信号VOUT)が示され、同図の上から2段目にはインターロック7における接点の状態(短絡または開放)が示され、同図の上から3段目には端子IN_1の電圧(入力回路103_1に入力される信号VIN_1)が示され、同図の最下段には入力回路103_1よって生成された入力信号DINが示されている。
【0054】
なお、同図の上から2段目の波形は、ハイレベルである場合に、スイッチ70がオンし、インターロック7の接点a,bが短絡していることを表し、同図に示される波形がローレベルである場合に、スイッチ70がオフし、インターロック7の接点a,bが開放していることを表している。
【0055】
図3に示されるように、パルス生成部104が一定の周期TCの基準パルス信号PSを生成すると、その基準パルス信号PSに同期した出力信号VOUTが端子COMから出力される。ここでは、上記基準パルス信号PSと出力信号VOUTの論理レベルは一致しているものとする。
出力信号VOUTが端子COMから出力されているとき、インターロック7のスイッチ70がオン(接点が短絡)していれば、出力信号VOUTがスイッチ70を経由して入力回路103_1に入力される。この場合、例えば図3の時刻t0からt1までの期間に示されるように、出力信号VOUTに同期した信号VIN_1が端子IN_1に入力され、入力回路103_1により、出力信号VOUTと反対の論理の入力信号DIN_1が生成される。
【0056】
一方、出力信号VOUTが端子COMから出力されているとき、インターロック7の接点が開放(スイッチ70がオフ)していれば、入力回路103_1には出力信号VOUTが入力されない。このとき、端子IN_1は抵抗R3、R4によってグラウンド電圧(0V)にプルダウンされているので、端子IN_1の電圧(信号VIN_1)は“0V”となり、入力信号DIN_1は“H”レベルとなる。例えば、図3の時刻t1からt2までの期間に示されるように、インターロック7の接点が開放している場合には、出力信号VOUTの論理レベルによらず、入力信号DIN_1は“H”レベルとなる。
【0057】
また、インターロック7の接点が短絡している状態において、例えば出力回路102のトランジスタQ1が天絡故障した場合や、入力回路103_1のフォトカプラPC2の二次側フォトトランジスタが地絡故障した場合には、入力信号DIN_1が“Lレベル”に固定される。例えば、図3には、時刻t3において入力回路103_1のフォトカプラPC2の二次側フォトトランジスタが地絡故障し、時刻t3以降の入力信号DIN_1がLレベルに固定されている場合が示されている。
【0058】
次に、サンプリング部105によるサンプリング処理について説明する。
サンプリング部105は、出力電圧VOUT(基準クロック信号)が“Hレベル”である期間T1に、入力信号DIN_1をサンプリングする。例えば、図3に示すように、一回目の期間T1におけるサンプリングタイミングSI1で入力信号DIN_1をサンプリングし(サンプリング値:L)、二回目の期間T1におけるサンプリングタイミングSI2で入力信号DIN_1をサンプリングし(サンプリング値:L)、…というように、夫々の期間T1においておける入力信号DIN_1をサンプリングする。
【0059】
また、サンプリング部105は、出力電圧VOUT(基準クロック信号)が“Lレベル”である期間T2に、入力信号DIN_1をサンプリングする。例えば、図3に示すように、一回目の期間T2におけるサンプリングタイミングSC1で入力信号DIN_1をサンプリングし(サンプリング値:H)、二回目の期間T2におけるサンプリングタイミングSC2で入力信号DIN_1をサンプリングし(サンプリング値:H)、…というように、夫々の期間T2において入力信号DIN_1をサンプリングする。
【0060】
上述したサンプリング部105によるサンプリングは、出力電圧VOUT(基準クロック信号)の論理レベルが切り替わってから、所定時間経過後に行うことが望ましい。例えば、図3に示すように、期間T1でのサンプリングは、出力電圧VOUT(基準クロック信号)が“Lレベル”から“Hレベル”に切り替わってから所定の時間td1経過した後の期間Ts1に行うことが望ましい。また、期間T2でのサンプリングは、出力電圧VOUT(基準クロック信号)が“Hレベル”から“Lレベル”に切り替わってから所定の時間td2経過した後の期間Ts2に行うことが望ましい。例えば、出力電圧VOUTまたは基準クロック信号を送らせて出力する遅延回路(CR回路や多段ロジック回路等)を設けておき、サンプリング部105が、その遅延回路から出力された信号を起動信号としてサンプリング処理を開始すればよい。または、出力電圧VOUTまたは基準クロック信号の論理が切り替わりをトリガとして計時を行い、所定時間まで計時したら信号を出力するタイマを設けておき、サンプリング部105が、そのタイマから出力された信号を起動信号としてサンプリング処理を開始すればよい。
【0061】
これによれば、前述したように、安全制御装置1と各リミット・インターロックとを接続する配線12、13が長く、寄生のインピーダンス成分が大きい場合であっても、入力信号DINの電圧が安定した後でサンプリングを行うことができるので、インターロックに関する判定における精度の低下が抑えられる。
【0062】
また、出力信号VOUTの論理レベルが切り替わってからサンプリングを開始するまでの待機時間Td1、Td2については、配線12、13の寄生のインピーダンス成分等による信号が安定するまでの遷移時間を考慮して適宜設定すればよい。例えば、Td1<Td2とすることにより、インターロックによる監視対象の異常の有無を速やか検出しつつ、恒久的な故障である回路故障については、配線を伝搬する信号がより安定してからサンプリングを行うことで、より高精度な判定が可能となる。
【0063】
なお、期間T1および期間T2における一つの入力信号DINに対するサンプリングは、期間T1、T2内に1回だけ行ってもよいし、期間T1、T2内に複数回行ってもよい。
【0064】
次に、インターロック入力判定部1061によるインターロック入力判定処理について説明する。
インターロック入力判定部1061は、サンプリング部105による期間T1における入力信号DINのサンプリング値がN(Nは2以上の整数)回連続して一致した場合に、その一致した論理レベルに応じて、リミット・インターロックの監視対象が“正常”であるか“異常”であるかを判定する。
【0065】
より具体的には、インターロック入力判定部1061が、期間T1における入力信号DINのサンプリング値が連続して互いに一致する回数をカウントし、そのカウントした一致回数がN回となったら、そのときの一致したサンプリング値を入力信号DINの論理レベルの確定値とする。例えば、図3において、連続するN回のサンプリングタイミングSI1〜SINにおける入力信号DIN_1のサンプリング値が互いに“Lレベル”で一致した場合には、入力信号DIN_1の論理レベルを“L”と確定し、連続するN回のサンプリングタイミングSI1〜SINにおける入力信号DIN_1のサンプリング値が互いに“Hレベル”で一致した場合には、入力信号DIN_1の論理レベルを“H”と確定する。そして、インターロック入力判定部1061は、その確定値が“Hレベル”である場合には、当該入力信号DINに対応するリミット・インターロックの両接点が“開放”、すなわち当該入力信号DINに対応するリミット・インターロックの監視対象が“異常”であると判定する。一方、その確定値が“Lレベル”である場合には、インターロック入力判定部1061は、当該入力信号DINに対応するリミット・インターロックの両接点が“短絡”、すなわち当該入力信号DINに対応するリミット・インターロックの監視対象が“正常”であると判定する。
【0066】
次に、回路故障判定部1062による回路故障判定処理について説明する。
回路故障判定部1062は、期間T2における入力信号DINのサンプリング値がM(Mは2以上の整数)回連続して“Lレベル”となった場合に、入力回路103および出力回路102の少なくとも一方が“故障”していると判定する。より具体的には、回路故障判定部1062は、期間T2における入力信号DINのサンプリング値が連続して“Lレベル”となる回数をカウントし、その回数が“M”となったら、入力回路103および出力回路102の少なくとも一方が“故障”していると判定する。
【0067】
例えば、図3のように、時刻t3において入力回路103_1のフォトカプラPC2の二次側の地絡故障が発生した場合、信号VIN_1に依らず、それ以降の入力信号DIN_1は“Lレベル”に固定される。この場合に、回路故障判定部1062は、時刻t3以降における期間T2での入力信号DINのサンプリング値が連続して“Lレベル”となった回数が“M”となったときに、入力回路103および出力回路102の少なくとも一方が“故障”していると判定する。
【0068】
なお、インターロック入力判定処理に用いるサンプリング値の一致回数Nと、回路故障判定処理に用いるサンプリング値の一致回数Mとは、燃焼制御装置1を適用する燃焼システムの種類や要求される安全レベル等に応じて調整することが可能である。例えば、N<Mとすることで、インターロックによる監視対象の異常の有無を速やか検出しつつ、恒久的な故障である回路故障については、ノイズ等による誤検出によって燃焼動作が頻繁に停止しないようにすることが可能となる。
【0069】
次に、燃焼制御装置によるインターロックに関する判定処理の流れについて説明する。
図4は、実施の形態に係る燃焼制御装置によるインターロックに関する判定処理の流れを示すフローチャートである。
上述したように、燃焼制御装置1によるインターロックに関する判定処理には、期間T1のサンプリング値に基づく判定処理(インターロック入力判定処理)と、期間T2のサンプリング値に基づく判定処理(回路故障判定処理)とが含まれる。
図4に示されるように、燃焼制御装置1によるインターロックに関する判定処理が開始されると、先ず、パルス生成部104が基準パルス信号PSを生成し、出力回路102がその基準パルス信号PSに同期した出力信号VOUTを生成する(S1)。ここで、インターロックに関する判定処理が実行されるタイミングは、リミット・インターロック毎に設定されている。例えば、一部のリミット・インターロックの判定処理は、燃焼システム500が起動されてから常時行われ、その他のリミット・インターロックの判定処理は、燃焼システム500が起動後、予め設定されたタイミングにおいて行われる。
【0070】
次に、サンプリング部105が入力信号DIN_1〜DIN_nのサンプリングを開始する(S2)。サンプリング部105によるサンプリングが開始されると、インターロック入力判定部1061によって、期間T1のサンプリング値に基づく判定処理、すなわちインターロック入力判定処理が開始される(S3)。また、回路故障判定部1062によって、期間T2のサンプリング値に基づく判定処理、すなわち回路故障判定処理が開始される(S4)。ステップS3、S4の各判定処理が実行されると、バーナコントローラ11に対して、バーナの運転の許可または不許可を示す通知信号14が出力される。
【0071】
なお、ステップS4の期間T2のサンプリング値に基づく判定処理は、図4に示すようにステップS3の期間T1のサンプリング値に基づく判定処理の後に実行されてもよいし、サンプリング部105によるサンプリング開始後に、ステップS3の期間T1のサンプリング値に基づく判定処理と並行して実行されてもよい。
【0072】
以下、ステップS3のインターロック入力判定処理およびステップS4の回路故障判定処理の夫々の流れについて詳細に説明する。
初めに、ステップS3のインターロック入力判定処理の流れについて説明する。
図5は、実施の形態に係る燃焼制御装置によるインターロック入力判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0073】
図5に示すように、ステップS2においてサンプリングが開始されると、インターロック入力判定部1061が、期間T1におけるサンプリング値が連続して一致する回数をカウントする(S31)。上記カウントの開始後、インターロック入力判定部1061が、サンプリング部105による期間T1でのサンプリング値がN回連続して一致したか否かを判定する(S32)。ここで、N回連続して一致していない場合には、インターロック入力判定部1061は、サンプリング部105による期間T1でのサンプリング値の一致回数を引き続きカウントする。なお、ノイズ等によりN回の連続した一致が起こらない場合には、一定時間経過後に、確定値を“H(開放)”とするように制御してもよい。
【0074】
一方、ステップS32において、サンプリング部105による期間T1でのサンプリング値がN回連続して一致した場合には、インターロック入力判定部1061は、そのサンプリング値が“L”であるか否かを判定する(S33)。
【0075】
ステップS33において、N回連続して一致した期間T1でのサンプリング値が“H”である場合には、インターロック入力判定部1061は、サンプリングした入力信号DINに対応するリミット・インターロックの接点が“開放”していると判定し、当該リミット・インターロックの監視対象が“異常”であると判定する(S36)。これにより、通知部107は、インターロック入力判定部1061の判定結果に基づいて、バーナの運転の“不許可”を示す通知信号14をバーナコントローラ11に対して出力する(S37)。
【0076】
一方、ステップS33において、N回連続して一致した期間T1でのサンプリング値が“L”である場合には、インターロック入力判定部1061は、サンプリングした入力信号DINに対応するリミット・インターロックの接点が“短絡”していると判定し、当該リミット・インターロックの監視対象が“正常”であると判定する(S34)。これにより、通知部107は、インターロック入力判定部1061の判定結果に基づいて、バーナの運転の“許可”を示す通知信号14をバーナコントローラ11に対して出力する(S35)。
【0077】
次に、ステップS4の回路故障判定処理の流れについて詳細に説明する。
図6は、実施の形態に係る燃焼制御装置による回路故障判定処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS2によって、サンプリング部105によるサンプリングが開始されると、回路故障判定部1062が、期間T2におけるサンプリング値が連続して“L”となる回数をカウントする(S41)。このとき、回路故障判定部1062は、期間T2におけるサンプリング値が“H”となった場合には、カウント値をリセットしてからカウント動作を再開する。
【0078】
上記カウントの開始後、回路故障判定部1062は、期間T2におけるサンプリング値が連続して“L”となる回数がM回を超えているか否かを判定する(S42)。
【0079】
ステップS42において、期間T2におけるサンプリング値が連続して“L”となる回数がM回を超えている場合には、回路故障判定部1062は、“回路故障有り”と判定する(S43)。これにより、通知部107は、回路故障判定部1062の判定結果に基づいて、バーナの運転の“不許可”を示す通知信号14をバーナコントローラ11に対して出力する(S44)。
【0080】
一方、ステップS42において、期間T2におけるサンプリング値が連続して“L”となる回数がM回を超えていない場合には、回路故障判定部1062は、“回路故障無し”と判定する(S45)。この場合には、再びステップS41に戻り、サンプリング期間T2におけるサンプリング値が“L”となる回数のカウント動作が継続される。
【0081】
〈燃焼制御装置による効果〉
以上、本発明に係る燃焼制御装置によれば、各リミット・インターロックに供給する出力信号VOUT(パルス)のハイレベル期間にインターロック入力判定を行い、出力信号VOUTのローレベル期間に回路故障判定を行うので、インターロックによる監視対象の異常とインターロックの周辺回路の異常とを区別して判定することができ、インターロックに関する判定精度を高めることができる。
【0082】
また、本実施の形態に係る燃焼制御装置によれば、各リミット・インターロックに入力する出力信号VOUTのハイレベル期間またはローレベル期間における入力信号DINのサンプリング値が複数回連続して一致した場合に、そのサンプリング値を入力信号DINの確定値とし、その確定値に基づいてインターロック入力判定と回路故障判定とが行われる。これにより、例えば、配線12、13を伝搬する信号にノイズが重畳した場合であっても、ノイズによる誤判定が起こり難くなり、インターロックに関する判定精度の低下を抑えることができる。
【0083】
また、サンプリング部105によるサンプリングは、出力電圧VOUT(基準クロック信号)の論理レベルが切り替わってから所定時間Td1(Td2)が経過した後に行われるので、前述したように、安全制御装置1と各リミット・インターロックとを接続する配線12、13の寄生のインピーダンス成分が大きく、配線12,13を伝搬する信号が安定するまでに時間を要する場合であっても、入力信号DINの電圧が安定した後にサンプリングを行うことができるので、インターロックに関する判定精度の低下を抑えることができる。
【0084】
また、本実施の形態に係る燃焼制御装置によれば、前述したように、回路故障判定の基準となるサンプリング値の一致回数Mを、インターロック入力判定の基準となるサンプリング値の一致回数Nよりも大きい値に設定して、回路故障判定の検出感度をインターロック入力判定の検出感度よりも下げることにより、インターロックによる監視対象の異常を速やかに検出して迅速な爆発防止を行う一方、恒久的な回路故障についてはノイズの影響による誤検出で頻繁に燃焼動作が停止しないように制御することができる。すなわち、インターロックによる異常検出の迅速性を担保しつつ、恒久的な異常に関する回路故障検出の高精度化を図ることができ、燃焼制御の安全性の向上と安定動作の向上が期待できる。
【0085】
更に、サンプリングを開始するまでの待機時間をTd1<Td2とすることにより、上記と同様に、インターロックによる異常検出の迅速性の確保と、回路故障検出の更なる高精度化が期待できる。
【0086】
以上のことから、本実施の形態に係る燃焼制御装置は、安全制御装置1と各リミット・インターロックとを接続する配線12、13が長く、配線の寄生のインピーダンス成分が大きくなるような大型の燃焼炉に適用して特に有効である。
【0087】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0088】
例えば、上記の実施の形態では、燃焼制御装置1を一つのマイクロコントローラで実現する場合を例示したが、複数のマイクロコントローラによって実現することも可能である。
図7は、実施の形態に係る燃焼制御装置における安全制御装置を複数のマイクロコントローラで実現した場合の構成例を示す図である。
同図に示されるように、メインのマイクロコントローラ(MCU_M)101aとサブのマイクロコントローラ(MCU_S)101bとを設け、夫々のマイクロコントローラ101a,101bにサンプリング部105、判定部106、および通知部107を設けることにより、リミット・インターロックの入力判定および回路故障判定のための機能ブロックを冗長化構成とする。
【0089】
これによれば、一方のマイクロコントローラに不具合が発生した場合であっても、他方のマイクロコントローラによってインターロックの入力判定処理および回路故障判定処理を実行することができるので、燃焼システム500の安全性と燃焼動作の安定性を更に向上させることができる。
【0090】
なお、この場合、パルス生成部104は、マイクロコントローラ101aおよびマイクロコントローラ101bの何れか一方にのみ設ければよい。例えば、図7には、メインのマイクロコントローラ101aにパルス生成部104を設けた場合が示されている。この場合、メインのマイクロコントローラ101aからサブのマイクロコントローラ101bに対して基準パルス信号PSが供給され、サブのマイクロコントローラ101bは、その基準パルス信号PSのタイミングに基づいてサンプリングを行う。
【0091】
また、図7では、マイクロコントローラを2つ設ける場合を例示したが、これに限られず、3つ以上のマイクロコントローラを設け、夫々にマイクロコントローラに対して、リミット・インターロックの入力判定および回路故障判定を行う機能ブロックを設けるようにしてもよい。
【0092】
また、上記実施の形態では、燃焼制御装置1と接続される異常検出素子(リミット・インターロック)の一例として、エアー圧力下限インターロック、ガス圧力上限・下限インターロック、および過昇温リミットを例示したが、これら以外の異常検出素子についても同様に、本願発明に係る燃焼制御装置1によるノイズ判定処理を適用することができることは言うまでもない。
【0093】
また、図2において、出力回路102および入力回路103がフォトカプラを用いた回路構成を有する場合を例示したが、出力回路102および入力回路103の回路構成はこれに限定されるものではない。例えば、外部端子COM、IN_1〜IN_nとMCU101との間を電気的に絶縁する必要がない場合には、出力回路102を、フォトカプラPC1を介さずにバッファ回路BFの出力信号に基づいてトランジスタQ1を駆動する回路構成としてもよい。また、入力回路103を、フォトカプラPC2の代わりにグラウンドノードと抵抗R2の一端との間にトランジスタを設け、そのトランジスタの制御電極(ベース電極)に抵抗R3および抵抗R4の接続ノードを接続する回路構成としてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…燃焼制御装置、2…燃料流路、3…空気流路、4…燃焼装置、5…コントローラ、6…過昇温リミット、7,8,9…インターロック、10…安全制御装置、11…バーナコントローラ、14…通知信号、40…燃焼室、41,42…温度センサ、43…主バーナ、44…パイロットバーナ、45…火炎検出器、46…点火装置(イグナイタ)、60,70,80,90…スイッチ、61,71,81,91…スイッチ駆動部、31…ブロア、2a…主流路、2b…第1の流路、2c…第2の流路、21,22,23,24…安全遮断弁、COM,IN_1,IN_n…端子、12,13,13_1,13_n…配線、101,101a,101b…マイクロコントローラ、102…出力回路、103,103_1,103_n…入力回路、104…パルス生成部、105…サンプリング部、106…判定部、1061…インターロック入力判定部、1062…回路故障判定部、107…通知部、110…機能ブロック、PS…基準パルス信号、500…燃焼システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7