(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インサートが配置されたキャビティに向けてゲートから溶融樹脂を射出成形することで形成された製造用中間体における樹脂製の第1所定部分を前記製造用中間体における前記第1所定部分以外の部分から除去することで、成形品を製造するための切削装置であって、
ホルダと、
前記ホルダに保持され所定の回転軸線回りを回転しながら前記第1所定部分の少なくとも一部を旋削するための樹脂用切削刃と、
前記ホルダに保持され前記回転軸線回りを回転しながら前記第1所定部分に隣接する前記インサートの第2所定部分を旋削するためのインサート用切削刃と、
を備えていることを特徴とする、切削装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述した、インサートを有する射出成形品においては、ゲート部(樹脂)とインサート(たとえば、鋼材)は接している。このため、ゲート部をゲート部以外の部分から完全に分離するためには、切削刃は、ゲート部を貫通するようにゲート部を切削し、且つ、インサート表面も若干ではあるが切削する必要がある。この場合、鋼製のゲート部の切削に樹脂切削用チップを用いると、樹脂用切削チップは、鋼材用切削チップより強度が低いので、金属製のインサート表面を切り込むときに樹脂用切削刃の先端が破損しやすい。
【0010】
そこで、ゲート部の切断には、鋼材切削用チップを使用することが考えられる。鋼材切削用チップとして、樹脂用切削チップより刃先の幅(刃物角)が小さく強度の高いチップが使用される。鋼材切削用チップは、樹脂製のゲート部と鋼製のインサートの両方を切削できるけれども、チップの刃先の幅が小さいために、チップ側面が長くなる。すなわち、チップ側面とゲート部(樹脂)との接触部分が大きくなる。このため、鋼材切削用チップにおいては、刃側面の摩耗や、樹脂との摩擦による発熱が起こりやすく、チップ寿命が短くなるという課題がある。
【0011】
特許文献1〜3には、複数の刃または切削チップを搭載し、回転しながら被切削物のバリ取りや面取りを行なう装置について記載されている。しかしながら、インサートが埋設された樹脂成形品の切削についての特段の考慮がされているとはいえない。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、樹脂製の不要部を切削加工を用いて除去する際にインサートの一部も切削する切削装置において、切削刃の寿命をより長くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる切削装置は、インサートが配置されたキャビティに向けてゲートから溶融樹脂を射出成形することで形成された製造用中間体における樹脂製の第1所定部分を前記製造用中間体における前記第1所定部分以外の部分から除去することで、成形品を製造するための切削装置であって、ホルダと、前記ホルダに保持され所定の回転軸線回りを回転しながら前記第1所定部分の少なくとも一部を旋削するための樹脂用切削刃と、前記ホルダに保持され前記回転軸線回りを回転しながら前記第1所定部分に隣接する前記インサートの第2所定部分を旋削するためのインサート用切削刃と、を備えている。
【0014】
この構成によると、樹脂用切削刃が樹脂製の第1所定部分を切削する。そして、インサート用切削刃は、第1所定部分に隣接する第2所定部分を切削する。このような構成により、樹脂用切削刃は、樹脂を切削すればよく、インサートを切削しなくてもよい。したがって、樹脂用切削刃の破損を抑制できるので、樹脂用切削刃の寿命をより長くできる。また、インサート用切削刃の移動経路に存在する、樹脂製の第1所定部分の大部分または全部は、樹脂用切削刃で切削される。これにより、インサート用切削刃は、樹脂製の第1所定部分を切削する量、および、第1所定部分に接触する量を格段に少なくできるので、当該インサート用切削刃の摩耗を抑制できる。さらに、インサート用切削刃は、第1所定部分(樹脂)と摩擦摺動することを抑制されるので、発熱し難くなり、当該インサート用切削刃の劣化を抑制できる。すなわち、インサート用切削刃の寿命をより長くできる。
【0015】
以上の次第で、樹脂製の不要部を切削加工を用いて除去する際にインサートの一部も切削する切削装置において、切削刃の寿命をより長くすることができる。
【0016】
(2)好ましくは、前記インサート用切削刃の強度は、前記樹脂用切削刃の強度よりも高く設定されている。
【0017】
この構成によると、樹脂製の第1所定部分の強度よりもインサートの第2所定部分の強度が大きい場合において、インサート用切削刃の摩耗を、より抑制できる。よって、インサート用切削刃の寿命をより長くできる。
【0018】
(3)好ましくは、前記ホルダから前記製造用中間体に向けての前記インサート用切削刃の突出量は、前記ホルダから前記製造用中間体に向けての前記樹脂用切削刃の突出量よりも大きく設定されている。
【0019】
この構成によると、樹脂用切削刃は、樹脂製の第1所定部分の奥側に位置しているインサートに接触することを、より確実に抑制される。よって、樹脂用切削刃がインサートとの接触によって摩耗することを、より確実に抑制できる。
【0020】
(4)好ましくは、前記回転軸線の径方向に関して、前記インサート用切削刃の刃先の幅は、前記樹脂用切削刃の刃先の幅よりも小さく設定されている。
【0021】
この構成によると、樹脂用切削刃が第1所定部分を切削することで、回転軸線の径方向における幅の広い空間が形成される。そして、インサート用切削刃は、この幅の広い空間を通過することで、樹脂部との接触による摩耗および発熱を抑制された状態で、インサートの第2所定部分を切削することができる。これにより、インサート用切削刃の寿命を、より長くできる。
【0022】
(5)好ましくは、前記回転軸線の周方向に沿って見た場合における、前記インサート用切削刃の刃先の曲率半径は、前記樹脂用切削刃の刃先の曲率半径よりも小さく設定されている。
【0023】
この構成によると、インサート用切削刃の刃先を、より鋭利な形状にすることができる。これにより、インサート用切削刃で切削されたインサートの表面に大きな段差が生じることを抑制でき、且つ、インサートの表面にバリが生じることを抑制できる。したがって、成形品を、より綺麗な状態に仕上げることができる。
【0024】
(6)好ましくは、前記樹脂用切削刃および前記インサート用切削刃は、それぞれ、複数設けられ、且つ、前記回転軸線の回りに交互に配置されている。
【0025】
この構成によると、各樹脂用切削刃、および、各インサート用切削刃に作用する負荷を、より均等にできる。よって、各樹脂用切削刃、および、各インサート用切削刃全体としての寿命を、より長くできる。
【0026】
(7)好ましくは、前記切削装置は、前記製造用中間体の樹脂部における第1所定部分以外の部分と前記第1
所定部分とが前記回転軸線の径方向に沿って並ぶように配置された構成を有する前記製造用中間体の、前記第1所定部分以外の部分と前記第1所定部分との境界部を切削可能に構成されており、前記樹脂用切削刃は、第1樹脂用切削刃と、第2樹脂用切削刃とを含み、前記第1樹脂用切削刃は、前記樹脂部のうち前記第1所定部分以外の部分側を向く片刃として形成されており、前記第2樹脂用切削刃は、前記第1所定部分側を向く片刃として形成されている。
【0027】
この構成によると、樹脂部である第1所定部分の切削作業を、第1所定部分側と、第1所定部分以外の部分側とに分けて行うことができる。より具体的には、第1樹脂用切削刃、および、第2樹脂用切削刃は、何れも、一対の側面のうちの一方が樹脂に接触し、他方は樹脂に実質的には接触しないこととなる。このため、1つの樹脂用切削刃で第1所定部分を切削する場合と比べて、各樹脂用切削刃と樹脂部との接触量を半分にすることができる。これにより、各樹脂用切削刃と樹脂部との摺動による発熱を格段に小さくできるので、各樹脂用切削刃の寿命を、より長くできる。
【0028】
(8)より好ましくは、前記回転軸線の径方向に関して、前記第1樹脂用切削刃の刃先の幅は、前記第2樹脂用切削刃の刃先の幅よりも小さく設定されている。
【0029】
この構成によると、第1樹脂用切削刃の刃先を、より鋭利な形状にすることができる。これにより、第1樹脂用切削刃で切削された、製造用中間体における第1
所定部分以外の部分の表面に大きな段差が生じることを抑制でき、且つ、当該表面にバリが生じることを抑制できる。したがって、成形品を、より綺麗な状態に仕上げることができる。
【0030】
(9)好ましくは、前記回転軸線の径方向に関して、前記第2樹脂用切削刃の刃先の位置は、前記第1樹脂用切削刃の刃先の位置に対して前記第1所定部分側に設定されている。
【0031】
この構成によると、第1樹脂用切削刃で切削された、製造用中間体における第1
所定部分以外の部分の表面に大きな段差が生じることを抑制でき、且つ、当該表面にバリが生じることを抑制できる。したがって、成形品を、より綺麗な状態に仕上げることができる。
【0032】
(10)好ましくは、前記回転軸線の周方向に沿って見た場合における、前記第1樹脂用切削刃の刃先の曲率半径は、前記第2樹脂用切削刃の刃先の曲率半径よりも小さく設定されている。
【0033】
この構成によると、第1樹脂用切削刃の刃先を、より鋭利な形状にすることができる。これにより、第1樹脂用切削刃で切削された、製造用中間体における第1
所定部分以外の部分の表面に大きな段差が生じることを抑制でき、且つ、当該表面にバリが生じることを抑制できる。したがって、成形品を、より綺麗な状態に仕上げることができる。
【0034】
(11)好ましくは、前記ホルダから前記製造用中間体に向けての前記第1樹脂用切削刃の突出量は、前記ホルダから前記製造用中間体に向けての前記第2樹脂用切削刃の突出量よりも大きく設定されている。
【0035】
この構成によると、第1樹脂用切削刃は、第1所定部分の周辺のバリを、よりきれいに取り除くことができる。
【0036】
(12)好ましくは、前記切削装置は、前記樹脂用切削刃が前記第1所定部分を旋削した際に当該第1所定部分を前記ホルダ側と反対側に向かって付勢可能な付勢機構を更に備えている。
【0037】
この構成によると、旋削された第1所定部分が付勢機構によってホルダ側と反対側に付勢される。このため、旋削後、ホルダが製造用中間体から離間する際に、製造用中間体から旋削により分離された第1所定部分が、ホルダに保持された樹脂用切削刃に付着したままとなる状態が発生することが、容易に防止される。そして、分離後の第1所定部分がホルダ側の樹脂用切削刃へ付着することが防止されるため、切削装置によって次の製造用中間体の切削が行われる際に、前回の切削時に発生した第1所定部分が次の製造用中間体の切削作業の妨げとなることがない。これにより、複数の製造用中間体を順番に連続的に切削する際の円滑な処理を実現することができる。
【0038】
(13)好ましくは、前記付勢機構は、前記樹脂用切削刃が前記第1所定部分を旋削した際に当該第1所定部分に当接可能な付勢板と、前記付勢板を前記ホルダに対して保持するとともに、前記樹脂用切削刃が前記第1所定部分を旋削した際に前記付勢板を前記ホルダ側と反対側に向かって付勢可能な付勢バネと、を含んでいる。
【0039】
この構成によると、製造用中間体から分離された第1所定部分がホルダ側の樹脂用切削刃へ付着してしまうことを防止する付勢機構を、付勢板と付勢バネとを用いた簡素な構造で容易に実現することができる。
【0040】
(14)好ましくは、前記付勢機構は、前記樹脂用切削刃が前記第1所定部分を旋削した際に当該第1所定部分に当接可能な付勢板と、前記樹脂用切削刃が前記第1所定部分を旋削した際に前記付勢板を前記ホルダ側と反対側に向かって付勢可能な付勢シリンダ機構と、を含んでいる。
【0041】
この構成によると、製造用中間体から分離された第1所定部分がホルダ側の樹脂用切削刃へ付着してしまうことを防止する付勢機構を、付勢板と付勢シリンダ機構とを用いた簡素な構造で容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によると、樹脂製の不要部を切削加工を用いて除去する際にインサートの一部も切削する切削装置において、切削刃の寿命をより長くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、樹脂成形品の製造用中間体のうち不要な樹脂部分を切削加工を用いて除去可能な切削装置として、広く適用することができる。また、本実施形態では、芯金がインサートである成形品を例にとって説明する。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態にかかる成形品101の製造用中間体100、および、成形品101の模式的な断面図である。
図2は、本発明の一実施形態にかかる切削装置1の主要部の側面図であり、一部を断面で示している。
図3は、切削装置1の切削ユニット5の底面図である。
【0046】
図4は、切削ユニット5などの一部を断面で示す側面図であり、(a)、(b)は、それぞれ、切削ユニット5の回転位置が異なった状態を示している。
図5は、切削ユニット5の樹脂用切削チップ20、および、インサート用切削チップ30の主要部の拡大図である。
図6は、製造用中間体100に切削処理を行っているときの切削装置1を示す、主要部の側面図であり、一部を断面で示している。
【0047】
図1を参照して、成形品101は、製造用中間体100に切削加工が施されて製造用中間体100から後述するゲート部106が除去されることで、完成する。なお、製造用中間体100は、(1)インサート形成工程、(2)インサート洗浄工程、(3)インサート予熱工程、(4)射出成形工程を経て完成したものである。
【0048】
(1)のインサート形成工程は、金属素材にたとえば鍛造、切削などの加工が施されることで、インサート103を形成する工程である。(2)のインサート洗浄工程は、アルコールなどの洗浄液でインサート103を洗浄し、脱脂する工程である。(3)のインサート予熱工程は、射出成形工程の前工程であり、インサート103を所定の温度に加熱する工程である。
【0049】
(4)の射出成形工程は、金型(図示せず)のキャビティ内にインサート103をセットし、金型のゲート200からキャビティに向けて溶融樹脂を射出する工程である。これらの工程を経ることで、製造用中間体100が完成する。前述したように、成形品101は、製造用中間体100に切削加工が施されて製造用中間体100からゲート部106が除去されることにより、完成する。
【0050】
成形品101は、インサート103と、樹脂部104とを有している。
【0051】
インサート103は、鋼材などの金属製の一体成形品であり、たとえば、円環状に形成されている。
【0052】
インサート103は、内周部103aと、中間部103bと、外周部103cと、一側面103dと、他側面103eと、を有している。
【0053】
内周部103aは、円筒状に形成された部分である。内周部103aの一端部は、中間部103bに連続している。中間部103bは、円板状に形成された、板状の部分である。中間部103bは、外周部103cに連続している。外周部103cは、環状の鍔状に形成されている。成形品101においては、これら中間部103bおよび外周部103cにかけて、樹脂部104が形成されている。
【0054】
樹脂部104は、合成樹脂製の部分である。この合成樹脂として、熱可塑性樹脂(たとえば、66ナイロンなど)を例示することができる。樹脂部104は、円環状に形成されており、インサート103の外周部103cを埋設するように配置され、且つ、中間部103bの一側面(一側面103d)のうちの外周側部分を埋めるように配置されている。樹脂部104は、インサート103が配置されたキャビティ内に溶融樹脂が射出されることで、形成される。
【0055】
樹脂部104の内周部は、インサート103の一側面103dに接触している。また、樹脂部104の外周部は、インサート103の外周部103cを成形品101の軸方向に挟んでいる。さらに、インサート103の外周部103cの外周面は、ローレット加工などによって、樹脂部104との結合力が高められている。インサート103の一側面103dは、平滑な面に形成されており、樹脂部104との結合力は弱い。このため、比較的小さな引っ張り力が樹脂部104と一側面103dとの間に作用することで、これら樹脂部104と一側面103dの互いの接触部間の結合が解除される。
【0056】
ここで、製造用中間体100と成形品101との違いは、ゲート部106の有無である。ゲート部106は、本発明の「第1所定部分」の一例である。製造用中間体100は、成形品101の構成に加えて、ゲート部106を有している。ゲート部106は、上記の金型のキャビティのうち、ゲート200の周辺の空間に樹脂が射出されることで形成された部分である。
【0057】
ゲート部106は、インサート103の一側面103dにおける内周側部分を覆うように配置された、傘状の部分である。なお、製造用中間体100のうち、ゲート部106以外の部分が、中間体本体105である。中間体本体105は、本発明の「製造用中間体における第1所定部分以外の部分」の一例である。ゲート部106が切削装置1によって中間体本体105から除去されることで、成形品101が完成する。次に、切削装置1について説明する。
【0058】
図2〜
図6を参照して、切削装置1は、製造用中間体100におけるゲート部106を中間体本体105から除去することで、成形品101を製造する。
【0059】
切削装置1は、フレーム2と、搬送装置3と、ワークホルダ4と、切削ユニット5と、昇降装置6と、電動モータ7と、ゲート部引き抜き装置8と、を有している。
【0060】
フレーム2は、鋼材などを用いて形成された骨格部分であり、搬送装置3などを支持している。
【0061】
搬送装置3は、製造用中間体100(成形品101)を保持するワークホルダ4を搬送するために設けられている。搬送装置3は、レール3aと、ベース3bと、を有している。レール3aは、ワークホルダ4の搬送方向X1に沿って延びており、フレーム2に固定されている。ベース3bは、レール3a上を、所定の搬送方向X1に沿って変位するように構成されている。ベース3bは、図示しない電動モータ、エアシリンダ、または、作業員などから与えられる力を受けて、搬送方向X1に変位する。
【0062】
搬送装置3は、ワークホルダ4に保持された製造用中間体100を切削ユニット5へ搬送する。そして、搬送装置3は、切削ユニット5での切削加工によってゲート部106が中間体本体105から分離された製造用中間体100を、切削ユニット5から搬送方向X1に沿って変位させて、ゲート部引き抜き装置8へ搬送する。
【0063】
ゲート部引き抜き装置8は、可動アーム8aを有している。可動アーム8aは、切削ユニット5から搬送された製造用中間体100に対して変位可能に構成されている。また、ゲート部引き抜き装置8は、吸引ノズルなどの保持部8bを有している。保持部8bがゲート部106を中間体本体105から引き上げることで、中間体本体105からゲート部106が引き上げられる。これにより、成形品101が完成する。製造用中間体100への切削ユニット5での切削加工、および、ゲート部引き抜き装置8におけるゲート部106の引き抜き作業は、製造用中間体100がワークホルダ4に保持された状態で行われる。
【0064】
ワークホルダ4は、略円筒状に形成されており、ベース3bとは搬送方向X1に一体移動可能に連結されており、ベース3bから上方に延びている。ワークホルダ4は、ベース3bに保持された複数の分割体4aを有している。各分割体4aは、インサート103の内周部103aを協働して保持するための保持部4bを有している。各分割体4aの保持部4bは、全体として、インサート103の内周部を取り囲む窪み状に形成されている。
【0065】
各分割体4aは、互いに近づく方向、および、互いに遠ざかる方向に変位可能に構成されている。各分割体4aが互いに一定以上の距離で離隔している場合、保持部4bによるインサート103の把持が解除される。一方、各分割体4aが互いに所定の距離で近接している場合、保持部4bによるインサート103の把持が達成される。
【0066】
製造用中間体100は、切削ユニット5による、切削量の比較的小さな切削加工によって、ゲート部106の外周部106a、および、インサート103のうちゲート部106に隣接する部分としての隣接部103fを切削することで、中間体本体105からゲート部106を分離可能にする。なお、隣接部103fは、本実施形態では、インサート103のうち、ゲート部106の外周部106aとインサート103の軸方向に並んでいる部分をいう。
【0067】
切削ユニット5は、搬送装置3の上方に配置されている。切削ユニット5は、上下に延びる所定の回転軸線S1回りを回転するように構成されている。
【0068】
切削ユニット5は、ホルダ10と、切削刃ユニット11と、付勢機構12と、を有している。
【0069】
ホルダ10は、切削刃ユニット11を保持するために設けられている。ホルダ10は、たとえば、金属製の円板状部材である。ホルダ10の上部は、電動モータ7の出力軸に、図示しない伝達機構を介して動力伝達可能に連結されている。これにより、電動モータ7の出力によって、ホルダ10が回転軸線S1回りに回転可能である。
【0070】
また、ホルダ10は、昇降装置6に連結されている。昇降装置6は、たとえば、シリンダ装置であり、ホルダ10を上下方向に変位可能な構成を有している。ホルダ10は、切削刃ユニット11とは回転軸線S1回りに一体回転可能に、且つ鉛直方向に一体移動可能に結合されている。
【0071】
ホルダ10は、ホルダ本体10aと、複数の爪部10bと、を有している。
【0072】
ホルダ本体10aは、ホルダ本体10aは、ホルダ10の上部を構成しており、ホルダ10のうち電動モータ7からの出力が入力される部分である。ホルダ本体10aの外周部からは、複数の爪部10bが下方に向けて突出している。
【0073】
複数の爪部10bは、切削刃ユニット11を固定するために設けられている。各爪部10bは、ホルダ本体10aの外周部から下方に向けて延びている。複数の爪部10bは、回転軸線S1の回りに等間隔(等ピッチ)に配置されている。各爪部10bは、ブロック状に形成されている。複数の爪部10bから、切削刃ユニット11が下方に延びている。
【0074】
切削刃ユニット11は、製造用中間体100のゲート部106の外周部106aを、当該外周部106aの厚み方向(切削装置1の上下方向)の全域に亘って切削し、且つ、インサート103の一側面103d(隣接部103f)を僅かに切削する。これにより、ゲート部106と中間体本体105とが分離可能となる。
【0075】
切削刃ユニット11は、複数の樹脂用切削チップ20と、複数のインサート用切削チップ30と、を有している。
【0076】
本実施形態では、樹脂用切削チップ20は、3つ設けられており、インサート用切削チップ30も、3つ設けられている。樹脂用切削チップ20と、インサート用切削チップ30は、回転軸線S1の周方向C1に沿って交互に配置されている。そして、樹脂用切削チップ20と、インサート用切削チップ30は、周方向C1に沿って等ピッチで配置されている。この場合のピッチとは、周方向C1に沿う樹脂用切削チップ20およびインサート用切削チップ30のそれぞれの中心間の間隔をいう。
【0077】
樹脂用切削チップ20は、ホルダ10に保持され回転軸線S1の回りを回転しながら製造用中間体100のゲート部106の外周部106aを切削するために設けられている。樹脂用切削チップ20は、本実施形態では、周方向C1に120°の間隔で配置されている。樹脂用切削チップ20は、鋼製の切削用チップを用いて形成されている。
【0078】
樹脂用切削チップ20は、対応する爪部10bにねじなどの固定部材を用いて形成されている。これにより、樹脂用切削チップ20は、ホルダ10の外周部に配置されている。樹脂用切削チップ20は、回転軸線S1の径方向R1に見たときに、所定の厚みを有する板状に形成されている。また、樹脂用切削チップ20は、周方向C1に見たときに、菱形に形成されている。樹脂用切削チップ20の下部は、樹脂用切削刃20aを有している。樹脂用切削刃20aの下端に刃先20bが位置している。樹脂用切削チップ20は、両刃であり、径方向R1における内側面および外側面のそれぞれに、刃面が形成されている。
【0079】
インサート用切削チップ30は、ホルダ10に保持され回転軸線S1の回りを回転しながら、ゲート部106に隣接するインサート103の隣接部103fを旋削するために設けられている。隣接部103fは、本発明の「第2所定部分」の一例である。すなわち、インサート用切削チップ30は、インサート103のうち、ゲート部106と接触する部分を切削するように構成されている。
【0080】
隣接部103fは、インサート103の一側面103dのうち、ゲート部106の外周部106aと隣接している部分である。隣接部103fの深さ範囲は、インサート103の一側面103dから、たとえば、数十μm程度である。このように、インサート用切削チップ30がインサート103の隣接部103fを切削することで、ゲート部106と中間体本体105とのより確実な分離を実現できる。
【0081】
インサート用切削チップ30は、本実施形態では、周方向C1に120°の間隔で配置されている。インサート用切削チップ30は、鋼製の切削用チップを用いて形成されている。インサート用切削チップ30は、対応する爪部10bにねじなどの固定部材を用いて形成されている。これにより、インサート用切削チップ30は、ホルダ10の外周部に配置されている。
【0082】
インサート用切削チップ30は、回転軸線S1の径方向R1に見たときに、所定の厚みを有する板状に形成されている。また、インサート用切削チップ30は、周方向C1に見たときに、菱形に形成されている。インサート用切削チップ30の下部は、インサート用切削刃30aを有している。インサート用切削刃30aの下端に刃先30bが位置している。インサート用切削チップ30は、両刃であり、径方向R1における内側面および外側面のそれぞれに、刃面が形成されている。径方向R1に関して、インサート用切削チップ30の中心位置と、樹脂用切削チップ20の中心位置とは、揃えられている。
【0083】
インサート用切削チップ30は、金属製のインサート103を切削する。一方、樹脂用切削チップ20は、金属の強度よりも低い強度を有する合成樹脂製の樹脂部104を切削する。このため、本実施形態では、インサート用切削チップ30の強度は、樹脂用切削チップ20の強度よりも高く設定されている。
【0084】
樹脂用切削チップ20は、製造用中間体100のうち、切削ユニット5側を向くゲート部106を切削する。一方、インサート用切削チップ30は、ゲート部106の奥側に位置している隣接部103fを切削する。このため、ホルダ10から製造用中間体100に向けてのインサート用切削チップ30の突出量P30は、ホルダ10から製造用中間体100に向けての樹脂用切削チップ20の突出量P20よりも大きく設定されている(P30>P20)。
【0085】
これらの突出量P20,P30の差(P30−P20)は、たとえば、刃先20bの曲率半径に相当する、約0.2mm程度に設定されている。このような構成により、樹脂用切削チップ20は、ゲート部106の外周部106aに接触するけれども、インサート103には接触しない。また、インサート用切削チップ30は、インサート103の隣接部103fに接触する。
【0086】
また、インサート用切削チップ30は、金属製のインサート103を切削するためのものであり、樹脂部104を切削するためのものではない。このため、インサート用切削チップ30は、可能な限り、樹脂部104との接触を回避されることが好ましい。そこで、本実施形態では、径方向R1に関して、インサート用切削チップ30の刃先30bの幅は、樹脂用切削チップ20の刃先20bの幅よりも小さく設定されている。
【0087】
より具体的には、周方向C1に沿って見た場合における、インサート用切削チップ30の刃先30bの曲率半径r30は、樹脂用切削チップ20の刃先20bの曲率半径r20よりも小さく設定されている(r30<r20)。本実施形態では、曲率半径r30は、約0.2mmであり、曲率半径r20は、約0.4mmである。これにより、インサート用切削チップ30の刃先30bは、樹脂用切削チップ20の刃先20bよりも先鋭である。
【0088】
また、周方向C1から見て、インサート用切削チップ30の刃先30bにおける角度(刃物角θ30)は、樹脂用切削チップ20の刃先20bにおける角度(刃物角θ20)よりも小さく設定されている(θ30<θ20)。この場合の刃物角θ30とは、インサート用切削チップ30の刃先30bにおける、径方向R1に並ぶ内側面と外側面とがなす角度をいう。また、刃物角θ20とは、樹脂用切削チップ20の刃先20bにおける、径方向R1に並ぶ内側面と外側面とがなす角度をいう。
【0089】
本実施形態では、刃物角θ30は、約35°に設定されている。また、刃物角θ20は、約55°に設定されている。このように、本実施形態では、刃物角θ30は、90°の1/2よりも小さく設定されており、刃物角θ20は、90°の1/2よりも大きく設定されている。
【0090】
図2に示す付勢機構12は、樹脂用切削刃20aがゲート部(第1所定部分)106を旋削した際にゲート部106をホルダ10側と反対側に向かって付勢可能な機構として設けられている。
図7は、切削ユニット5に設けられる付勢機構12を説明するための図であって、切削ユニット5などの一部を断面で示す図である。
図8及び
図9は、付勢機構12の作動を説明するための図であって、切削ユニット5などの一部を断面で示す図である。
【0091】
付勢機構12は、ホルダ10に取り付けられている。また、付勢機構12は、ホルダ本体10aの下面側に配置されている。即ち、付勢機構12は、ホルダ10において、製造用中間体100に対向する側に配置されている。そして、付勢機構12は、ホルダ本体10aの外周部に配置された複数の爪部10bに対して、ホルダ本体10aの径方向内側に配置されている。
【0092】
また、
図7乃至
図9に示すように、付勢機構12は、付勢板40と、複数の付勢バネ50と、を含んで構成されている。
【0093】
付勢板40は、樹脂用切削刃20aがゲート部106を旋削した際にゲート部106に当接可能な円盤状の部材として設けられている。より具体的には、付勢板40は、樹脂用切削刃20aがゲート部106を旋削した状態において、付勢板40の下面がゲート部106の上面に当接可能に、構成されている。また、付勢板40は、複数の付勢バネ50を介して、ホルダ本体10aに対して保持されている。
【0094】
複数の付勢バネ50は、付勢板40をホルダ10に対して保持している。そして、複数の付勢バネ50のそれぞれは、樹脂用切削刃20aがゲート部106を旋削した際に付勢板40をホルダ10側と反対側に向かって(即ち、付勢板40を製造用中間体100側に向かって)付勢可能なコイルバネとして設けられている。
【0095】
図7は、切削刃ユニット11がゲート部106の外周部106aを切削する前の状態を示している。
図8は、切削刃ユニット11がゲート部106の外周部106aを切削した状態(即ち、樹脂用切削刃20aがゲート部106を旋削した状態)を示している。
図9は、切削刃ユニット11によるゲート部106の外周部106aの切削が完了し、ホルダ10及び切削刃ユニット11が昇降装置6による駆動によって上方に移動し、切削刃ユニット11が製造用中間体100から離間した状態を示している。
【0096】
図7に示す状態においては、付勢板40は、付勢バネ50によってホルダ10に吊下げられた状態で保持されており、ゲート部106に当接していない。また、この状態においては、付勢バネ50は、その自重と付勢板40の重量とに応じて延びた状態となっている。次いで、ホルダ10及び切削刃ユニット11は、下方に移動するように昇降装置6によって駆動される。ホルダ10及び切削刃ユニット11が所定の位置まで下方に移動すると、伝動モータ7によって、切削ユニット5が回転駆動される。これにより、切削刃ユニット11によるゲート部106の外周部106aの切削が行われる。
【0097】
ホルダ10及び切削刃ユニット11が所定の位置まで下方に移動してから、切削刃ユニット11によるゲート部106の外周部106aの切削が行われている途中までにおける、いずれかのタイミングにおいて、付勢板40の下面がゲート部106の上面に当接する。付勢板40がゲート部106に当接すると、ゲート部106側から作用する反力によって、付勢バネ50は圧縮される。そして、切削刃ユニット11がゲート部106の外周部106aを切削した状態においては、
図8に示すように、付勢板40は、圧縮された状態の付勢バネ50のバネ力によって、ゲート部106に対して押し付けられている。
【0098】
切削刃ユニット11によるゲート部106の外周部106aの切削が完了し、ホルダ10及び切削刃ユニット11が昇降装置6による駆動によって上方に移動し始める際には、圧縮された状態の付勢バネ50が付勢板40を付勢した状態が維持される。これにより、付勢板40がゲート部106の上面に対して押し付けられた状態で、樹脂用切削刃20aが、ゲート部106から離間する。樹脂用切削刃20aがゲート部106から離間した状態で、ホルダ10及び切削刃ユニット11が更に上方に移動すると、付勢バネ50が圧縮された状態が解除される。そして、樹脂用切削刃20aがゲート部106から離間した後に、付勢板40がゲート部106の上面から離間する。即ち、ゲート部106の切削後、ホルダ10が上昇する際に、圧縮状態の付勢バネ50によるバネ力によって、付勢板40が、ゲート部106をホルダ10側から下方に押し下げるようにして、ホルダ10側からゲート部106を除去することになる。これにより、
図9に示す状態となる。
【0099】
上記のように、本実施形態によると、切削刃ユニット11が製造用中間体100から離間した状態においては、ホルダ10側の樹脂用切削刃20aにゲート部106が付着した状態が発生することがない。そして、ゲート部106は、ワークホルダ4に保持された中間体本体105上に配置されたまま中間体本体105側に残されることになる。
【0100】
以上が、切削装置1の概略構成である。この切削装置1による製造用中間体100の切削作業においては、
図2および
図6によく示されているように、前述したように、切削刃ユニット11は、昇降装置6によって製造用中間体100に向かって降下される。そして、この状態で、電動モータ7によって、切削ユニット5が回転される。これにより、樹脂用切削チップ20は、製造用中間体100のゲート部106の外周部106aを切削する。また、インサート用切削チップ30は、樹脂用切削チップ20で切削されることで形成された、外周部106aの周辺の空間を通りつつ、回転軸線S1の回りを回転し、インサート103の隣接部103fを切削する。
【0101】
以上説明したように、本実施形態に係る切削装置1によると、樹脂用切削刃20aが製造用中間体100の樹脂製のゲート部106を切削する。そして、インサート用切削刃30aは、ゲート部106に隣接する隣接部103fを切削する。このような構成により、樹脂用切削刃20aは、樹脂部104を切削すればよく、金属製のインサート103を切削しなくてもよい。したがって、樹脂用切削刃20aの破損を抑制できるので、樹脂用切削刃20aの寿命をより長くできる。また、インサート用切削刃30aの移動経路に存在する、樹脂製のゲート部106の大部分は、樹脂用切削刃20aで切削される。これにより、インサート用切削刃30aは、樹脂製のゲート部106を切削する量、および、ゲート部106に接触する量を格段に少なくできるので、当該インサート用切削刃30aの摩耗を抑制できる。さらに、インサート用切削刃30aは、ゲート部106(樹脂)と摩擦摺動することを抑制されるので、発熱し難くなり、当該インサート用切削刃30aの劣化を抑制できる。すなわち、インサート用切削刃30aの寿命をより長くできる。
【0102】
以上の次第で、樹脂製の不要部としてのゲート部106を切削加工を用いて除去する際にインサート103の一部も切削する切削装置1において、切削刃20b,30bの寿命をより長くすることができる。
【0103】
また、切削装置1によると、インサート用切削刃30aの強度は、樹脂用切削刃20aの強度よりも高く設定されている。この構成によると、樹脂製のゲート部106の強度よりもインサート103の隣接部103fの強度が大きい製造用中間体100の切削において、インサート用切削刃30aの摩耗を、より抑制できる。よって、インサート用切削刃30aの寿命をより長くできる。
【0104】
また、切削装置1によると、ホルダ10から前記製造用中間体100に向けてのインサート用切削刃30aの突出量P30は、ホルダ10から製造用中間体100に向けての樹脂用切削刃20aの突出量P20よりも大きく設定されている。この構成によると、樹脂用切削刃20aは、樹脂製のゲート部106の奥側に位置しているインサート103に接触することを、より確実に抑制される。よって、樹脂用切削刃20aがインサート103との接触によって摩耗することを、より確実に抑制できる。
【0105】
また、切削装置1によると、回転軸線S1の径方向R1に関して、インサート用切削刃30aの刃先30bの幅は、樹脂用切削刃20aの刃先20bの幅よりも小さく設定されている。この構成によると、樹脂用切削刃20aがゲート部106を切削することで、回転軸線S1の径方向R1における幅の広い空間が形成される。そして、インサート用切削刃30aは、この幅の広い空間を通過することで、ゲート部106(樹脂部104)との接触による摩耗および発熱を抑制された状態で、インサートの隣接部103fを切削することができる。これにより、インサート用切削刃30aの寿命を、より長くできる。
【0106】
また、切削装置1によると、回転軸線S1の周方向C1に沿って見た場合における、インサート用切削刃30aの刃先30bの曲率半径r30は、樹脂用切削刃20aの刃先20bの曲率半径r20よりも小さく設定されている。この構成によると、インサート用切削刃30aの刃先30bを、より鋭利な形状にすることができる。これにより、インサート用切削刃30aで切削されたインサート103の一側面103dに大きな段差が生じることを抑制でき、且つ、インサート103の一側面103dにバリが生じることを抑制できる。したがって、成形品101を、より綺麗な状態に仕上げることができる。
【0107】
また、切削装置1によると、樹脂用切削刃20aおよびインサート用切削刃30aは、それぞれ、複数設けられ、且つ、回転軸線S1の回りに交互に配置されている。この構成によると、各樹脂用切削刃20a、および、各インサート用切削刃30aに作用する負荷を、より均等にできる。よって、各樹脂用切削刃20a、および、各インサート用切削刃30a全体としての寿命を、より長くできる。
【0108】
また、切削装置1によると、旋削されたゲート部106が付勢機構12によってホルダ10側と反対側に付勢される。このため、旋削後、ホルダ10が製造用中間体100から離間する際に、製造用中間体100から旋削により分離されたゲート部106が、ホルダ10に保持された樹脂用切削刃20aに付着したままとなる状態が発生することが、容易に防止される。そして、分離後のゲート部106がホルダ10側の樹脂用切削刃20へ付着することが防止されるため、切削装置1によって次の製造用中間体100の切削が行われる際に、前回の切削時に発生したゲート部106が次の製造用中間体100の切削作業の妨げとなることがない。これにより、複数の製造用中間体100を順番に連続的に切削する際の円滑な処理を実現することができる。
【0109】
また、切削装置1によると、製造用中間体100から分離されたゲート部106がホルダ10側の樹脂用切削刃20aへ付着してしまうことを防止する付勢機構12を、付勢板40と付勢バネ50とを用いた簡素な構造で容易に実現することができる。
【0110】
[第2実施形態]
図10は、本発明の第2実施形態に係る切削装置1Aの切削ユニット5Aの底面図である。
図11は、切削ユニット5Aの樹脂用切削チップ21,22の樹脂用切削刃21a,22a、および、インサート用切削チップ30のインサート用切削刃30aの拡大図である。
図12は、切削装置1Aを用いた製造用中間体100の切削作業を説明するための模式的な側面図であり、(a)、(b)、(c)は、それぞれ、切削ユニット5Aの回転位置が異なった状態を示している。
【0111】
なお、以下では、第1実施形態の構成と異なる構成を主に説明し、第1実施形態の構成と同様の構成には、図に同様の符号を付して説明を省略する。
【0112】
図10〜
図12を参照して、製造用中間体100は、第1実施形態で説明した構成を有している。これにより、製造用中間体100の樹脂部104において、ゲート部106以外の部分とゲート部106とは、径方向R1に沿って並ぶように配置された構成を有している。切削ユニット5Aは、樹脂部104におけるゲート部106以外の部分とゲート部106との境界部を切削するように構成されている。
【0113】
切削ユニット5Aは、ホルダ10と、切削刃ユニット11Aと、を有している。
【0114】
切削刃ユニット11Aは、複数の第1樹脂用切削チップ21と、複数の第2樹脂用切削チップ22と、複数のインサート用切削チップ30と、を有している。
【0115】
本実施形態では、第1樹脂用切削チップ21、第2樹脂用切削チップ22、および、インサート用切削チップ30は、それぞれ、2つ設けられている。すなわち、切削刃ユニット11Aは、6つの切削チップを有している。第1樹脂用切削チップ21と、第2樹脂用切削チップ22と、インサート用切削チップ30は、回転軸線S1の周方向C1に沿って順に配置されている。そして、第1樹脂用切削チップ21と、第2樹脂用切削チップ22と、インサート用切削チップ30は、回転軸線S1の周方向C1に沿って等ピッチで配置されている。
【0116】
第1樹脂用切削チップ21、および、第2樹脂用切削チップ22は、それぞれ、以下に説明する構成以外の構成については、第1実施形態の樹脂用切削チップ20と同様の構成を有している。
【0117】
第2樹脂用切削チップ22の構成と第1樹脂用切削チップ21との構成の違いは、主に、第1樹脂用切削刃21aの形状と第2樹脂用切削刃22aの形状との違いにある。
【0118】
第1樹脂用切削チップ21の下部は、第1樹脂用切削刃21aを有している。第1樹脂用切削刃21aの下端に刃先21bが位置している。また、第2樹脂用切削チップ22の下部は、第2樹脂用切削刃22aを有している。第2樹脂用切削刃22aの下端に刃先22bが位置している。
【0119】
第2樹脂用切削刃22aの中心位置は、第1樹脂用切削刃21aの中心位置よりも径方向R1の内方に位置している。換言すれば、径方向R1に関して、第2樹脂用切削刃22aの刃先22bの位置は、第1樹脂用切削刃21aの刃先21bの位置に対して、ゲート部106側に設定されている。本実施形態では、径方向R1の内方から外方に向かって、第2樹脂用切削刃22a、インサート用切削刃30a、および、第1樹脂用切削刃21aの順に配置されている。径方向R1における、第1樹脂用切削刃21aの中心位置と、第2樹脂用切削刃22aの中心位置との距離は、インサート用切削刃30aの曲率半径r30程度に設定されている。
【0120】
第1樹脂用切削刃21aは、樹脂部104のうちゲート部106以外の部分側(径方向R1の外方)を向く片刃として形成されており、ゲート部106の外周部106aのうち、ゲート部106以外側の部分を切削する。すなわち、径方向R1における第1樹脂用切削刃21aの外側面21c(一側面)に刃面が形成されている。一方、第2樹脂用切削刃22aは、樹脂部104のうちゲート部106側を向く片刃に形成されており、ゲート部106の外周部106aのうち、ゲート部106側の部分を切削する。すなわち、径方向R1における第2樹脂用切削刃22aの内側面22c(他側面)に刃面が形成されている。
【0121】
なお、樹脂用切削刃21a,22aが片刃であるという意味は、各樹脂用切削刃21a,22aの径方向R1における一対の側面のうちの一方のみが樹脂部104と加圧状態で接触していることを意味し、樹脂用切削刃21a,22a自体は両刃であってもよい。
【0122】
ホルダ10から製造用中間体100に向けての第1樹脂用切削刃21aの突出量P21は、ホルダ10から製造用中間体100に向けての第2樹脂用切削刃22aの突出量P22よりも大きく設定されている(P21>P22)。これらの突出量P21,P22の差(P21−P22)は、たとえば、インサート用切削刃30aの曲率半径r30(たとえば、約0.2mm程度)に設定されている。このような構成により、第1樹脂用切削チップ21の切削深さは、第2樹脂用切削刃22aの切削深さよりも大きい。
【0123】
また、径方向R1に関して、第1樹脂用切削刃21aの刃先21bの幅は、第2樹脂用切削刃22aの刃先22bの幅よりも小さく設定されている。
【0124】
より具体的には、周方向C1に沿って見た場合における、第1樹脂用切削刃21aの刃先21bの曲率半径r21は、第2樹脂用切削刃22aの刃先22bの曲率半径r22よりも小さく設定されている(r21<r22)。本実施形態では、曲率半径r21は、約0.02mmであり、曲率半径r22は、約0.2mmである。これにより、第1樹脂用切削刃21aの刃先21bは、第2樹脂用切削刃22aの刃先22bよりも先鋭である。
【0125】
以上説明したように、本実施形態に係る切削装置1Aによると、樹脂部であるゲート部106の切削作業を、ゲート部106側と、ゲート部106以外の部分側とに分けて行うことができる。より具体的には、第1樹脂用切削刃21a、および、第2樹脂用切削刃22aは、何れも、一対の側面のうちの一方(内側面21c、外側面22c)が樹脂部104に接触し、他方は樹脂部104に実質的には接触しないこととなる。このため、1つの樹脂用切削刃でゲート部106を切削する場合と比べて、各樹脂用切削刃21a,22aと樹脂部104との接触量を半分にすることができる。これにより、各樹脂用切削刃21a,22aと樹脂部104との摺動による発熱を格段に小さくできるので、各樹脂用切削刃21a,22aの寿命を、より長くできる。
【0126】
また、切削装置1Aによると、径方向R1に関して、第1樹脂用切削刃21aの刃先21bの幅は、第2樹脂用切削刃22aの刃先22bの幅よりも小さく設定されている。この構成によると、第1樹脂用切削刃21aの刃先21bを、より鋭利な形状にすることができる。これにより、第1樹脂用切削刃21aで切削された、製造用中間体100におけるゲート部106以外の部分の表面に大きな段差が生じることを抑制でき、且つ、当該表面にバリが生じることを抑制できる。したがって、成形品101を、より綺麗な状態に仕上げることができる。
【0127】
また、切削装置1Aによると、径方向R1に関して、第2樹脂用切削刃22aの刃先22bの位置は、第1樹脂用切削刃21aの刃先21bの位置に対してゲート部106側に設定されている。この構成によると、第1樹脂用切削刃21aで切削された、製造用中間体100におけるゲート部106以外の部分の表面に大きな段差が生じることを抑制でき、且つ、当該表面にバリが生じることを抑制できる。したがって、成形品101を、より綺麗な状態に仕上げることができる。
【0128】
また、切削装置1Aによると、周方向C1に沿って見た場合における、第1樹脂用切削刃21aの刃先21bの曲率半径r21は、第2樹脂用切削刃22aの刃先22bの曲率半径r22よりも小さく設定されている。この構成によると、第1樹脂用切削刃21aの刃先21bを、より鋭利な形状にすることができる。これにより、第1樹脂用切削刃21aで切削された、製造用中間体100におけるゲート部106以外の部分の表面に大きな段差が生じることを抑制でき、且つ、当該表面にバリが生じることを抑制できる。したがって、成形品101を、より綺麗な状態に仕上げることができる。
【0129】
また、切削装置1Aによると、ホルダ10から製造用中間体100に向けての第1樹脂用切削刃21aの突出量P21は、ホルダ10から製造用中間体100に向けての第2樹脂用切削刃22aの突出量P22よりも大きく設定されている。この構成によると、第1樹脂用切削刃21aは、ゲート部106の周辺のバリを、よりきれいに取り除くことができる。
【0130】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られず、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。
【0131】
(1)たとえば、上述の実施形態では、金属製のインサート103が用いられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。インサート103の強度が樹脂部104の強度よりも大きければよく、インサート103の材質は限定されない。
【0132】
(2)また、上述の実施形態では、ゲート部106の一部としての外周106aが切削される形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。ゲート部106の全部が切削によって中間体本体105から除去されてもよい。
【0133】
(3)なお、本発明の切削装置は、ホルダと、樹脂用切削刃と、インサート用切削刃と、を有していればよく、他の構成の有無については、限定されない。
【0134】
(4)上述の第1実施形態では、付勢機構の形態として、付勢板と付勢バネとを備える形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、
図13乃至
図15に示す変形例を実施してもよい。
【0135】
図13は、変形例に係る切削装置1Bの切削ユニット5Bに設けられる付勢機構12Aを説明するための図であって、切削ユニット5Bなどの一部を断面で示す図である。
図14及び
図15は、変形例に係る付勢機構12Aの作動を説明するための図であって、切削ユニット5Bなどの一部を断面で示す図である。
【0136】
なお、以下では、第1実施形態の構成と異なる構成を主に説明し、第1実施形態の構成と同様の構成については、図面において第1実施形態と同様の符号を付すことで、又は第1実施形態の説明と同様の符号を引用することで、説明を省略する。
【0137】
図13乃至
図16に示す付勢機構12Aは、樹脂用切削刃20aがゲート部(第1所定部分)106を旋削した際にゲート部106をホルダ10側と反対側に向かって付勢可能な機構として設けられている。付勢機構12Aは、ホルダ10に取り付けられている。そして、付勢機構12Aは、付勢板41と、付勢シリンダ機構51と、を含んで構成されている。
【0138】
付勢板41は、樹脂用切削刃20aがゲート部106を旋削した際にゲート部106に当接可能な円盤状の部材として設けられている。付勢板41は、ホルダ本体10aの下面側に配置されている。即ち、付勢板41は、ホルダ10において、製造用中間体100に対向する側に配置されている。また、付勢板41は、ホルダ本体10aの外周部に配置された複数の爪部10bに対して、ホルダ本体10aの径方向内側に配置されている。そして、付勢板40は、樹脂用切削刃20aがゲート部106を旋削した状態において、付勢板40の下面がゲート部106の上面に当接可能に、構成されている。また、付勢板41は、ホルダ本体10aの下面側において、付勢シリンダ機構51によって保持されている。
【0139】
付勢シリンダ機構51は、例えば、エアシリンダ機構、或いは、油圧シリンダ機構として設けられている。そして、付勢シリンダ機構51は、筒状のシリンダ本体(図示省略)と、シリンダ本体に対して伸張及び縮退自在に支持されたロッド52と、を含んで構成されている。また、付勢シリンダ機構51は、樹脂用切削刃20aがゲート部106を旋削した際に付勢板41をホルダ10側と反対側に向かって付勢可能なシリンダ機構として構成されている。より具体的には、ロッド52は、図示が省略されたシリンダ本体からその下方に向かって(即ち、製造用中間体100側に向かって)伸張可能に設けられている。そして、付勢シリンダ機構51は、樹脂用切削刃20aがゲート部106を旋削した際に、ロッド52がシリンダ本体から伸張した状態となることで、ロッド52に取り付けられた付勢板41をホルダ10側と反対側に向かって付勢するように、構成されている。
【0140】
なお、付勢シリンダ機構51のシリンダ本体は、ホルダ10に保持されている。そして、付勢シリンダ機構51のロッド52は、例えば、ホルダ本体10aに対して、その径方向における中心部分を貫通した状態で配置されている。ロッド52における先端側の端部(シリンダ本体から伸張する先端側の端部であってシリンダ本体と反対側の端部)には、付勢板41が取り付けられている。シリンダ本体に対してロッド52が伸張及び縮退することで、付勢板41が、ホルダ10に対して上下方向に沿って相対変位することになる。
【0141】
図13は、切削刃ユニット11がゲート部106の外周部106aを切削する前の状態を示している。
図14は、切削刃ユニット11がゲート部106の外周部106aを切削した状態(即ち、樹脂用切削刃20aがゲート部106を旋削した状態)を示している。
図15は、切削刃ユニット11によるゲート部106の外周部106aの切削が完了し、ホルダ10及び切削刃ユニット11が昇降装置6による駆動によって上方に移動し、切削刃ユニット11が製造用中間体100から離間した状態を示している。
【0142】
図13に示す状態においては、シリンダ機構51は、ロッド52がシリンダ本体に縮退した状態となっている。この状態においては、付勢板41は、ホルダ本体10aの下面側の近傍に位置している。そして、付勢板41の下面は、樹脂用切削刃20aの刃先20bの位置に対して、十分に上方に位置している。このため、ロッド52がシリンダ本体に縮退した状態では、付勢板41は、ホルダ11が下降して樹脂用切削刃20aの刃先20bがゲート部106に当接した状態においても、ゲート部106に当接しないように配置される。
【0143】
図13に示す状態から、ホルダ10及び切削刃ユニット11は、下方に移動するように昇降装置6によって駆動される。ホルダ10及び切削刃ユニット11が所定の位置まで下方に移動すると、伝動モータ7によって、切削ユニット5が回転駆動される。これにより、切削刃ユニット11によるゲート部106の外周部106aの切削が行われる。
【0144】
切削刃ユニット11によるゲート部106の外周部106aの切削が完了すると、シリンダ機構51が作動し、シリンダ本体に対してロッド52が伸張する。そして、
図14に示すように、付勢板41の下面がゲート部106の上面に当接する。これにより、切削刃ユニット11がゲート部106の外周部106aを切削した状態においては、付勢板41は、ロッド52による押圧力、即ち、シリンダ機構51による付勢力によって、ゲート部106に対して押し付けられる。
【0145】
切削刃ユニット11によるゲート部106の外周部106aの切削が完了し、シリンダ本体からロッド52が伸張して付勢板41がゲート部106に当接すると、次いで、昇降装置6による駆動によってホルダ10及び切削刃ユニット11が上方に移動する。そして、ホルダ10及び切削刃ユニット11が上方に移動し始める際には、伸張したロッド52が付勢板41を付勢した状態が維持される。これにより、付勢板41がゲート部106の上面に対して押し付けられた状態で、樹脂用切削刃20aが、ゲート部106から離間する。樹脂用切削刃20aがゲート部106から離間した状態で、ホルダ10及び切削刃ユニット11が更に上方に移動すると、次いで、付勢板41もゲート部106から離間する。即ち、樹脂用切削刃20aがゲート部106から離間した後に、付勢板41がゲート部106の上面から離間する。このように、本変形例によると、ゲート部106の切削後、ホルダ10が上昇する際に、シリンダ機構51の付勢力によって、付勢板41が、ゲート部106をホルダ10側から下方に押し下げるようにして、ホルダ10側からゲート部106を除去することになる。これにより、
図15に示す状態となる。
【0146】
上記のように、本変形例によると、切削刃ユニット11が製造用中間体100から離間した状態においては、ゲート部106がホルダ10側の樹脂用切削刃20aに付着した状態が発生することがない。そして、ゲート部106は、ワークホルダ4に保持された中間体本体105上に配置されたまま中間体本体105側に残されることになる。
【0147】
以上説明したように、切削装置1Bによると、旋削されたゲート部106が付勢機構12Aによってホルダ10側と反対側に付勢される。このため、旋削後、ホルダ10が製造用中間体100から離間する際に、製造用中間体100から旋削により分離されたゲート部106が、ホルダ10に保持された樹脂用切削刃20aに付着したままとなる状態が発生することが、容易に防止される。そして、分離後のゲート部106がホルダ10側の樹脂用切削刃20へ付着することが防止されるため、切削装置1Bによって次の製造用中間体100の切削が行われる際に、前回の切削時に発生したゲート部106が次の製造用中間体100の切削作業の妨げとなることがない。これにより、複数の製造用中間体100を順番に連続的に切削する際の円滑な処理を実現することができる。
【0148】
また、切削装置1Bによると、製造用中間体100から分離されたゲート部106がホルダ10側の樹脂用切削刃20aへ付着してしまうことを防止する付勢機構12Aを、付勢板41と付勢シリンダ機構51とを用いた簡素な構造で容易に実現することができる。
【実施例】
【0149】
実施例1として、第1実施形態の切削ユニット5と同じ構成の切削ユニットを用意した。また、実施例2として、第2実施形態の切削ユニット5Aと同じ構成の切削ユニットを用意した。また、比較例として、所定の切削ユニットを用意した。比較例は、ホルダに、4つのインサート用切削刃が装着され、これらのインサート用切削刃がホルダの周方向に等ピッチで配置された構成を有している。
【0150】
上記実施例1、実施例2、および、比較例のそれぞれを用いて、製造用中間体100と同様の構成の製造用中間体を切削して成形品を作製した。このとき、実施例1、実施例2、および、比較例のそれぞれについて、切削刃に破損が生じるまでの製造用中間体の切削個数を調べた。
【0151】
結果を表1に示す
【表1】
【0152】
このように、切削刃に破損が生じるまでの製造用中間体の切削個数は、比較例においては僅か200個であったのに対して、実施例1では2200個、実施例2に至っては、3000個となった。すなわち、実施例1は、比較例と比べて、耐久性が11倍も高く、実施例2に至っては、比較例と比べて、耐久性が15倍も高かった。以上より、実施例1、および、実施例2について、切削刃の破損までの寿命が極めて高いことが実証された。