特許第6383325号(P6383325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6383325-半導体装置 図000002
  • 特許6383325-半導体装置 図000003
  • 特許6383325-半導体装置 図000004
  • 特許6383325-半導体装置 図000005
  • 特許6383325-半導体装置 図000006
  • 特許6383325-半導体装置 図000007
  • 特許6383325-半導体装置 図000008
  • 特許6383325-半導体装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383325
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8234 20060101AFI20180820BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20180820BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180820BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20180820BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20180820BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20180820BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H01L27/088 F
   H01L29/78 301D
   H01L27/04 H
   H01L27/06 311C
   H01L27/06 311A
   H01L27/088 D
   H01L27/088 B
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-112158(P2015-112158)
(22)【出願日】2015年6月2日
(65)【公開番号】特開2016-27622(P2016-27622A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2017年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-132627(P2014-132627)
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小松 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 啓太
(72)【発明者】
【氏名】猪原 正弘
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−064830(JP,A)
【文献】 特開平11−307763(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0120190(US,A1)
【文献】 特開2015−038966(JP,A)
【文献】 特開2014−041961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8234
H01L 21/336
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた第1トランジスタと、
前記基板上に設けられた第2トランジスタと、
を備え、
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは、それぞれ、
第1導電形のウェルと、
前記ウェル上に設けられ、第1方向に延びる帯状領域と、
前記ウェル上に設けられ、前記帯状領域から離隔し、前記第1方向に延びる第2導電形のドレイン領域と、
前記ウェルにおける前記帯状領域と前記ドレイン領域との間の領域の直上域に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられ、前記第1方向に延びるゲート電極と、
を有し、
前記帯状領域は、
実効的な不純物濃度が前記ウェルの実効的な不純物濃度よりも高い第1導電形のバックゲート領域と、
実効的な不純物濃度が前記ウェルの実効的な不純物濃度よりも高い第2導電形のソース領域と、
を有し、
前記帯状領域において、前記バックゲート領域及び前記ソース領域は前記第1方向に沿って交互に配列されており、
前記第1方向と直交する第2方向において、前記バックゲート領域の最大長さは前記ソース領域の最大長さよりも長く、
前記第1トランジスタの前記帯状領域における前記第1方向に沿った前記バックゲート領域の長さに対する前記ソース領域の長さの比の値は、前記第2トランジスタの前記帯状領域における前記比の値よりも大きい半導体装置。
【請求項2】
前記基板上に設けられ、前記第2トランジスタの前記ソース領域に直接接続されたパッドをさらに備えた請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1トランジスタの前記ウェルと、前記第2トランジスタの前記ウェルとは、相互に離隔している請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは、それぞれ、
前記ドレイン領域と前記ソース領域との間に設けられ、前記ドレイン領域に接し、前記ソース領域には接していない素子分離絶縁膜と、
前記素子分離絶縁膜の直下域に設けられ、前記ドレイン領域に接続され、実効的な不純物濃度が前記ドレイン領域の実効的な不純物濃度よりも低い第2導電形のドリフト領域と、
をさらに有した請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1トランジスタの前記比の値は、1以上9以下である請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2トランジスタの前記比の値は、0.1以上1未満である請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2トランジスタの前記ソース領域は前記第2トランジスタの前記ゲート電極に接続されている請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2トランジスタの前記ソース領域は前記第2トランジスタの前記ゲート電極に短絡されている請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2トランジスタは、前記ソース領域と前記ゲート電極との間に接続された抵抗をさらに有した請求項7記載の半導体装置。
【請求項10】
前記抵抗の抵抗値は、100Ω以上1MΩ以下である請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2トランジスタの前記ソース領域及び前記バックゲート領域には第1の電源電位が印加され、
前記第2トランジスタの前記ドレイン領域には第2の電源電位が印加される請求項7〜10のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2トランジスタの前記ソース領域及び前記ドレイン領域はp形であり、
前記第1の電源電位は前記第2の電源電位よりも高い請求項11記載の半導体装置。
【請求項13】
基板と、
前記基板上に設けられた第1導電形のウェルと、
前記ウェル上に設けられ、第1方向に延びる複数本の帯状領域と、
前記ウェル上に設けられ、前記帯状領域の間に配置され、前記帯状領域から離隔し、前記第1方向に延びる第2導電形のドレイン領域と、
前記ウェルにおける前記帯状領域と前記ドレイン領域との間の領域の直上域に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられ、前記第1方向に延びるゲート電極と、
を備え、
各前記帯状領域は、
実効的な不純物濃度が前記ウェルの実効的な不純物濃度よりも高い第1導電形のバックゲート領域と、
実効的な不純物濃度が前記ウェルの実効的な不純物濃度よりも高い第2導電形のソース領域と、
を有し、
前記各帯状領域において、前記バックゲート領域及び前記ソース領域は前記第1方向に沿って交互に配列されており、
第1の前記帯状領域における前記第1方向に沿った前記バックゲート領域の長さに対する前記ソース領域の長さの比の値は、第2の前記帯状領域における前記比の値よりも大きい半導体装置。
【請求項14】
前記ドレイン領域と前記ソース領域との間に設けられ、前記ドレイン領域に接し、前記ソース領域には接していない素子分離絶縁膜と、
前記素子分離絶縁膜の直下域に設けられ、前記ドレイン領域に接続され、実効的な不純物濃度が前記ドレイン領域の実効的な不純物濃度よりも低い第2導電形のドリフト領域と、
をさらに備えた請求項13記載の半導体装置。
【請求項15】
基板と、
前記基板上に設けられた第1トランジスタと、
前記基板上に設けられた第2トランジスタと、
を備え、
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは、それぞれ、
第1導電形のウェルと、
前記ウェル上に設けられ、上方から見た形状が第1方向に延びる基部及び前記基部から前記第1方向と直交する第2方向に延出した複数の櫛歯を含む櫛状であり、実効的な不純物濃度が前記ウェルの実効的な不純物濃度よりも高い第1導電形のバックゲート領域と、
前記櫛歯間に島状に配置され、実効的な不純物濃度が前記ウェルの実効的な不純物濃度よりも高い第2導電形のソース領域と、
前記ウェル上に設けられ、前記バックゲート領域の前記基部から見て前記櫛歯側に配置され、前記バックゲート領域及び前記ソース領域から離隔し、前記第1方向に延びる第2導電形のドレイン領域と、
前記ウェルにおける前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の領域の直上域に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられ、前記第1方向に延びるゲート電極と、
を有し、
前記バックゲート領域の前記櫛歯及び前記ソース領域は前記第1方向に沿って交互に配列されて帯状領域を形成しており、
前記第1トランジスタの前記帯状領域における前記第1方向に沿った前記バックゲート領域の前記櫛歯の長さに対する前記ソース領域の長さの比の値は、前記第2トランジスタの前記帯状領域における前記比の値よりも大きい半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ回路が作り込まれた半導体装置においては、シリコン基板上に多数のトランジスタが形成されている。同一のアナログ回路内であっても、配置される回路上の位置や個々の回路の動作条件によって、トランジスタに要求される特性は異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−307763号公報
【特許文献2】特開2011−91231号公報
【特許文献3】特開2011−71171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、低オン抵抗を維持しつつ、耐ESD(Electrostatic Discharge:静電気放電)性能が向上した半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、基板と、前記基板上に設けられた第1トランジスタと、前記基板上に設けられた第2トランジスタと、を備える。前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは、それぞれ、第1導電形のウェルと、前記ウェル上に設けられ、第1方向に延びる帯状領域と、前記ウェル上に設けられ、前記帯状領域から離隔し、前記第1方向に延びる第2導電形のドレイン領域と、前記ウェルにおける前記帯状領域と前記ドレイン領域との間の領域の直上域に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられ、前記第1方向に延びるゲート電極と、を有する。前記帯状領域は、実効的な不純物濃度が前記ウェルの実効的な不純物濃度よりも高い第1導電形のバックゲート領域と、実効的な不純物濃度が前記ウェルの実効的な不純物濃度よりも高い第2導電形のソース領域と、を有する。前記帯状領域において、前記バックゲート領域及び前記ソース領域は前記第1方向に沿って交互に配列されている。前記第1方向と直交する第2方向において、前記バックゲート領域の最大長さは前記ソース領域の最大長さよりも長い。前記第1トランジスタの前記帯状領域における前記第1方向に沿った前記バックゲート領域の長さに対する前記ソース領域の長さの比の値は、前記第2トランジスタの前記帯状領域における前記比の値よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置を例示する上面図である。
図2】(a)は低オン抵抗型トランジスタを例示する上面図であり、(b)は(a)のA−A’線による断面図であり、(c)は(a)のB−B’線による断面図である。
図3】(a)は高耐ESD型トランジスタを例示する上面図であり、(b)は(a)のA−A’線による断面図であり、(c)は(a)のB−B’線による断面図である。
図4】(a)は第2の実施形態に係る半導体装置を例示する上面図であり、(b)は(a)に示すC−C’線による断面図である。
図5】(a)は第3の実施形態に係る半導体装置を示す回路図であり、(b)は第3の実施形態に係る半導体装置を示す模式的断面図である。
図6】(a)は第4の実施形態に係る半導体装置を示す回路図であり、(b)は第4の実施形態に係る半導体装置を示す模式的断面図である。
図7】第4の実施形態に係る半導体装置の動作を示す断面図である。
図8】横軸にソース−ドレイン間電圧をとり、縦軸にソース−ドレイン間電流をとって、第3の実施形態及び第4の実施形態における高耐ESD型トランジスタのI−V特性を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置を例示する上面図である。
図2(a)は低オン抵抗型トランジスタを例示する上面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A’線による断面図であり、図2(c)は図2(a)のB−B’線による断面図である。
図3(a)は高耐ESD(Electrostatic Discharge:静電気放電)型トランジスタを例示する上面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A’線による断面図であり、図3(c)は図3(a)のB−B’線による断面図である。
【0008】
本明細書において、「n形」とは、導電形がn形であって実効的な不純物濃度が「n形」よりも高いことを示す。同様に、「p形」とは、導電形がp形であって実効的な不純物濃度が「p形」よりも高いことを示す。「実効的な不純物濃度」とは、半導体材料の導電に寄与する不純物の濃度をいい、半導体材料にドナーとなる不純物とアクセプタとなる不純物の双方が含有されている場合には、ドナーとアクセプタの相殺分を除いた分の濃度をいう。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1においては、p形のシリコン基板10上に、低オン抵抗型トランジスタTrA及び高耐ESD型トランジスタTrBが設けられている。低オン抵抗型トランジスタTrA及び高耐ESD型トランジスタTrBは相互に離隔した位置に配置されており、電気的に相互に分離されている。高耐ESD型トランジスタTrBの近傍にはパッドDが設けられており、高耐ESD型トランジスタTrBのソースに接続されている。例えば、低オン抵抗型トランジスタTrAは半導体装置1を構成するチップの中央部に配置されており、高耐ESD型トランジスタTrBはチップの周辺部に配置されている。
【0010】
半導体装置1においては、シリコン基板10上に、低オン抵抗型トランジスタTrA、高耐ESD型トランジスタTrB及びパッドDを含む回路が形成されている。後述するように、低オン抵抗型トランジスタTrA及び高耐ESD型トランジスタTrBは、DMOS(Double-Diffused Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:二重拡散MOSFET)である。また、半導体装置1は例えばアナログ回路であり、例えば電源回路又はオーディオ回路である。
【0011】
以下、低オン抵抗型トランジスタTrAの構成について説明する。
図2(a)〜(c)に示すように、低オン抵抗型トランジスタTrAにおいては、シリコン基板10上に、ディープnウェル11が設けられている。ディープnウェル11の上層部分には、n形ウェル12及びp形ドリフト領域13が相互に離隔して設けられている。なお、n形ウェル12及びp形ドリフト領域13は相互に接していてもよい。n形ウェル12及びp形ドリフト領域13は、それぞれ、低オン抵抗型トランジスタTrAのゲート幅方向Wに延びている。
【0012】
n形ウェル12の上層部分には、n形バックゲート領域14が設けられている。上方から見て、n形バックゲート領域14の形状は、p形ドリフト領域13側に櫛歯がついたゲート幅方向Wに延びる櫛状であり、n形バックゲート領域14の櫛歯間の領域に、p形ソース領域15が島状に設けられている。p形ソース領域15はn形バックゲート領域14に接している。これにより、n形バックゲート領域14の櫛歯部分とp形ソース領域15とは、一列に交互に配列されて、ゲート幅方向Wに延びる帯状領域18を構成している。帯状領域18において、ゲート幅方向Wにおける各n形バックゲート領域14の長さLbgに対する各p形ソース領域15の長さLの比の値(L/Lbg)は、例えば1以上9以下の値をとり、例えば2程度である。
【0013】
一方、p形ドリフト領域13から見て、n形ウェル12から遠い側には、ゲート幅方向Wに延びるp形ウェル16が設けられている。p形ウェル16はp形ドリフト領域13に接している。p形ウェル16上には、ゲート幅方向Wに延びるp形ドレイン領域17が設けられている。
【0014】
また、n形ウェル12の上層部分におけるn形バックゲート領域14よりもp形ドリフト領域13から離れた領域、この領域に続くディープnウェル11の上層部分、p形ドリフト領域13におけるn形ウェル12に対向した端部を除く部分の上層部分には、STI(Shallow Trench Isolation:素子分離絶縁膜)19が設けられている。すなわち、STI19は、p形ドレイン領域17と帯状領域18との間に設けられ、p形ドレイン領域17に接し、帯状領域18には接していない。上方から見て、STI19によって覆われていない領域であって、p形ドレイン領域17を除く領域を、アクティブエリアという。
【0015】
n形ウェル12及びp形ドリフト領域13における相互に対向した部分上には、ゲート絶縁膜21が設けられており、その上には、ゲート幅方向Wに延びるゲート電極22が設けられている。なお、図2(a)においては、ゲート絶縁膜21は図示が省略されている。n形バックゲート領域14上にはバックゲートコンタクト24が設けられ、n形バックゲート領域14に接続されている。p形ソース領域15上にはソースコンタクト25が設けられ、p形ソース領域15に接続されている。p形ドレイン領域17上にはドレインコンタクト27が設けられ、p形ドレイン領域17に接続されている。
【0016】
次に、高耐ESD型トランジスタTrBの構成について説明する。
図3(a)〜(c)に示すように、高耐ESD型トランジスタTrBの構成は、低オン抵抗型トランジスタTrAの構成と比較して、ゲート幅方向Wにおけるn形バックゲート領域14の櫛歯部分の長さLbgに対するp形ソース領域15の長さLの比の値(L/Lbg)が小さい点が異なっている。高耐ESD型トランジスタTrBにおける比の値(L/Lbg)は、例えば0.1以上1未満の値をとり、例えば0.2程度である。
【0017】
すなわち、低オン抵抗型トランジスタTrAは相対的にp形ソース領域15の面積が大きいのに対して、高耐ESD型トランジスタTrBは相対的にn形バックゲート領域14の面積が大きい。換言すれば、低オン抵抗型トランジスタTrAにおけるn形バックゲート領域14の面積に対するp形ソース領域15の面積の比の値は、高耐ESD型トランジスタTrBにおける面積比の値よりも大きい。また、高耐ESD型トランジスタTrBのディープnウェル11は、低オン抵抗型トランジスタTrAのディープnウェル11とは分離されている。更に、高耐ESD型トランジスタTrBのソースコンタクト25は、パッドD(図1参照)に直接、すなわち、トランジスタ等の能動素子を介さずに接続されている。
【0018】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態に係る半導体装置1において、低オン抵抗型トランジスタTrAにおいては、ゲート幅方向Wにおける比の値(L/Lbg)が相対的に大きく、p形ソース領域15の面積が相対的に大きい。これにより、オン抵抗を低減することができる。低オン抵抗型トランジスタTrAは、耐ESD性能よりも低いオン抵抗が重視される用途、例えば、高速でスイッチングするスイッチング素子に好適に用いることができる。
【0019】
一方、高耐ESD型トランジスタTrBにおいては、比の値(L/Lbg)が相対的に小さく、n形バックゲート領域14の面積が相対的に大きい。これにより、耐ESD性能を高めることができる。高耐ESD型トランジスタTrBは、オン抵抗よりも耐ESD性能が重視される用途、例えば、外部からパッドDを介してダイレクトに電流が入力されるゲート回路に好適に用いることができる。
【0020】
このように、本実施形態によれば、同一基板上においてオン抵抗が低い低オン抵抗型トランジスタTrAと耐ESD性能が高い高耐ESD型トランジスタTrBとを作り分けることができ、回路上の位置及び個々の回路の動作条件によって要求される特性に応じて、より好適なトランジスタを用いることができる。この結果、性能が高い半導体装置1を得ることができる。また、低オン抵抗型トランジスタTrAと高耐ESD型トランジスタTrBとを、n形バックゲート領域14とp形ソース領域15のレイアウトを変更するだけで作り分けることができ、他の部分のレイアウトを変更する必要がない。このため、半導体装置1は設計が容易である。
【0021】
なお、高耐ESD型トランジスタTrBにおいても、比の値(L/Lbg)を低オン抵抗型トランジスタTrAと同じ値に保ったまま、n形バックゲート領域14の奥行きを深くして、耐ESD性能を向上させることも考えられる。しかしながら、この場合は、高耐ESD型トランジスタTrBの面積が増加し、半導体装置1の小型化が阻害される。これに対して、本実施形態によれば、比の値(L/Lbg)を相対的に小さくすることにより、高耐ESD型トランジスタTrBの面積を増加させることなく、耐ESD性能を向上させることができる。この結果、半導体装置1の小型化が容易になる。
【0022】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図4(a)は本実施形態に係る半導体装置を例示する上面図であり、図4(b)は図4(a)に示すC−C’線による断面図である。
【0023】
図4(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る半導体装置2においては、低オン抵抗型トランジスタTrAと高耐ESD型トランジスタTrBとが、p形ドレイン領域17を共有し、ゲート長方向に沿って配列されている。すなわち、半導体装置2においては、シリコン基板10上にディープnウェル11が設けられ、その上に、ゲート幅方向Wに延びる帯状のp形ドレイン領域17と、ゲート幅方向Wに沿ってn形バックゲート領域14とp形ソース領域15とが交互に配列された帯状領域28a及び28bとが、交互に配列されている。そして、ある1本のp形ドレイン領域17を挟む2本の帯状領域28a及び28bにおいて、比の値(L/Lbg)が相互に異なっている。
【0024】
具体的には、帯状領域28aにおける比の値(L/Lbg)は相対的に大きく、帯状領域28bにおける比の値(L/Lbg)は相対的に小さい。これにより、帯状領域28aを含む低オン抵抗型トランジスタTrAと、帯状領域28bを含む高耐ESD型トランジスタTrBとが、p形ドレイン領域17を共有して配置される。この結果、半導体装置2においては、帯状領域28aを共有する2つの低オン抵抗型トランジスタTrAと、帯状領域28bを共有する2つの高耐ESD型トランジスタTrBとが、1本のp形ドレイン領域17を共有してその両側に配置される。
【0025】
本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。すなわち、p形ドレイン領域17の両側には、STI19が設けられている。また、p形ドレイン領域17とディープnウェル11との間には、p形ウェル16が設けられている。更に、STI19とディープnウェル11との間には、p形ドリフト領域13が設けられている。p形ドリフト領域13はp形ウェル16に接している。一方、帯状領域28a及び28bの下面及び側面を覆うように、n形ウェル12が設けられている。n形ウェル12はp形ドリフト領域13には接しておらず、n形ウェル12とp形ドリフト領域13との間には、ディープnウェル11の一部が介在している。n形ウェル12とp形ドリフト領域13の対向部分の直上域にはゲート絶縁膜21及びゲート電極22が設けられている。そして、これらの各要素は、ゲート幅方向Wに延びている。
【0026】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、1つのトランジスタ領域内に、低オン抵抗型トランジスタTrA及び高耐ESD型トランジスタTrBを混載させることができる。この結果、例えば、トランジスタ領域の端部においてESDによる損傷が発生しやすい場合に、トランジスタ領域の端部に高耐ESD型トランジスタTrBを配置し、中央部に低オン抵抗型トランジスタTrAを配置することにより、ESDによる損傷を回避しつつ、トランジスタ領域全体を低いオン抵抗で動作させることができる。本実施形態における上記以外の効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0027】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図5(a)は本実施形態に係る半導体装置を示す回路図であり、(b)は本実施形態に係る半導体装置を示す模式的断面図である。
【0028】
図5(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る半導体装置3においては、内部回路50、ESD保護素子51、パッドD及びパッドGが設けられている。パッドDは正の電源電位が印加されるパッドであり、パッドGは接地電位が印加されるパッドである。内部回路50及びESD保護素子51は、パッドDとパッドGとの間に並列に接続されている。なお、図5(b)において、ディープnウェル11、n形ウェル12、p形ドリフト領域13、STI19などはシリコン基板10内に包含されており、簡略化している。図6(b)も同様である。
【0029】
内部回路50は、半導体装置3の本来の機能を果たす回路であり、例えば電源回路又はオーディオ回路である。内部回路50には、低オン抵抗型トランジスタTrAが含まれている。低オン抵抗型トランジスタTrAのn形バックゲート領域14及びp形ソース領域15は、直接的又は間接的に、パッドDに接続されている。なお、「直接的に接続されている」とは、トランジスタ等の能動素子を介さずに接続されていることをいい、「間接的に接続されている」とは、少なくとも1つの能動素子を介して接続されていることをいう。
【0030】
ESD保護素子51は、内部回路50をESDから保護するための素子である。ESD保護素子51には、高耐ESD型トランジスタTrBが含まれている。高耐ESD型トランジスタTrBのp形ソース領域15とゲート電極22は、例えばシリコン基板10上に設けられた金属配線によって相互に短絡されている。p形ソース領域15とゲート電極22との間の抵抗値は、例えば20Ω以下であり、例えば1Ω程度である。高耐ESD型トランジスタTrBのp形ドレイン領域17は例えば直接的にパッドGに接続されており、n形バックゲート領域14及びp形ソース領域15、並びに、ゲート電極22は例えば直接的にパッドDに接続されている。
【0031】
本実施形態における低オン抵抗型トランジスタTrA及び高耐ESD型トランジスタTrBの構成は、高耐ESD型トランジスタTrBのソース−ゲート間が短絡されていることを除き、前述の第1の実施形態と同様である。低オン抵抗型トランジスタTrA及び高耐ESD型トランジスタTrBは同一のシリコン基板10に形成されている。
【0032】
次に、本実施形態に係る半導体装置の動作について説明する。
先ず、通常の動作について説明する。
図5(a)及び(b)に示すように、高耐ESD型トランジスタTrBにおいては、p形ソース領域15にはパッドDを介して正の電源電位が印加され、p形ドレイン領域17にはパッドGを介して接地電位が印加される。このため、ディープnウェル11とp形ドリフト領域13との界面を起点として空乏層が拡がっている。また、ゲート電極22にはパッドDを介して正の電源電位が印加されるため、ディープnウェル11及びn形ウェル12に反転層は形成されていない。このため、高耐ESD型トランジスタTrBはオフ状態にある。
【0033】
次に、半導体装置3にESDが印加された場合の動作について説明する。
パッドDに正のESDが印加されると、ディープnウェル11とp形ドリフト領域13との界面がブレークダウンし、ESD電流を流す。これにより、内部回路50をESDから保護する。なお、パッドGに正のESDが印加されたときは、ディープnウェル11とp形ドリフト領域13との界面が順方向接合となるため、ブレークダウンすることなく、ESD電流が流れる。
【0034】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、電源電位と接地電位との間に、内部回路50とESD保護素子51を並列に接続することにより、ESD保護素子51により内部回路50をESDから保護することができる。また、ESD保護素子51に高耐ESD型トランジスタTrBを設け、そのソースとゲートを短絡させることにより、ゲート電極22に常に正の電源電位が印加され、高耐ESD型トランジスタTrBを確実にオフ状態にすることができる。この結果、高耐ESD型トランジスタTrBを介したリーク電流を抑制することができる。
本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0035】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図6(a)は本実施形態に係る半導体装置を示す回路図であり、(b)は本実施形態に係る半導体装置を示す模式的断面図である。
【0036】
図6(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る半導体装置4においては、前述の第3の実施形態に係る半導体装置3(図5(a)及び(b)参照)と比較して、高耐ESD型トランジスタTrBのp形ソース領域15とゲート電極22との間に、抵抗Rが接続されている点が異なっている。パッドDはp形ソース領域15に接続されているため、抵抗RはパッドDとゲート電極22との間に介在する。抵抗Rは、例えば、ポリシリコンによって形成された抵抗体であり、シリコン基板10上に設けられている。抵抗Rの抵抗値は、例えば、100Ω以上1MΩ以下である。半導体装置4における上記以外の構成は、第3の実施形態に係る半導体装置3の構成と同様である。
【0037】
次に、本実施形態に係る半導体装置の動作について説明する。
図7は、本実施形態に係る半導体装置の動作を示す断面図である。
図8は、横軸にソース−ドレイン間電圧をとり、縦軸にソース−ドレイン間電流をとって、第3の実施形態及び第4の実施形態における高耐ESD型トランジスタのI−V特性を示すグラフ図である。
【0038】
ESDが印加されていないときの半導体装置4の動作は、半導体装置3の動作と同様である。すなわち、ゲート電極22に電源電位が印加され続けるため、半導体装置4はオフ状態を維持する。
【0039】
一方、図6(b)及び図7に示すように、パッドDにパルス状の正のESDが印加されると、このESDがn形バックゲート領域14及びp形ソース領域15に流入し、ディープnウェル11及びn形ウェル12の電位が上昇する。しかしながら、パッドDとゲート電極22との間には抵抗Rが接続されているため、ゲート電極22の電位はあまり上昇しない。これにより、ゲート電極22の電位が、図7に示すボディ(Body)領域の電位に対して相対的に低下し、ボディ領域におけるゲート絶縁膜21に接した部分に正孔が誘起され、反転層が形成される。
【0040】
この結果、図8に示すように、高耐ESD型トランジスタTrBの状態がオフ状態からオン状態に移行し始め、電流が流れ始める。そして、高耐ESD型トランジスタTrBは、印加されるESD電圧が高くなるほど、多くの電流を流すようになる。その後、ESD電流が流れきってしまうと、ESD電圧が低下するため、高耐ESD型トランジスタTrBはオフ状態に戻る。
【0041】
次に、本実施形態の効果について説明する。
上述の如く、本実施形態に係る半導体装置4においては、ESDが印加されたときに、ボディ領域に対するゲート電位を相対的に低下させることにより、積極的にMOS動作を生じさせ、チャネルを導通させることができる。これにより、ESD保護素子51にESD電流を確実に流して内部回路50を確実に保護すると共に、ESD電流を徐々に且つ均一に流すことにより、ESD電流が集中することを抑制し、ESD保護素子51が破壊されることを防止できる。
本実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第3の実施形態と同様である。
【0042】
なお、前述の各実施形態においては、比の値(L/Lbg)を2水準とする例を示したが、3水準以上としてもよい。すなわち、第1の実施形態においては、オン抵抗と耐ESD特性のバランスを調整した3種類以上のDMOSを設けてもよい。また、第2の実施形態においては、1つのトランジスタ領域内でオン抵抗と耐ESD特性のバランスを3段階以上で傾斜させてもよい。
【0043】
また、前述の各実施形態においては、低オン抵抗型トランジスタTrA及び高耐ESD型トランジスタTrBがDMOSである例を示したが、これには限定されず、LDMOS(Laterally Diffused MOS:横方向拡散MOS)、DEMOS(Drain Extended MOS:ドレイン拡張型MOS)、EDMOS(Extended Drain MOS:直交ゲートドレイン拡張MOSFET)又は高耐圧MOSFETであってもよい。
【0044】
更に、前述の各実施形態においては、低オン抵抗型トランジスタTrA及び高耐ESD型トランジスタTrBがpチャネル形トランジスタである例を示したが、nチャネル形トランジスタであってもよい。
【0045】
以上説明した実施形態によれば、低オン抵抗を維持しつつ、耐ESD性能が向上した半導体装置を実現することができる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
1、2、3、4:半導体装置、10:シリコン基板、11:ディープnウェル、12:n形ウェル、13:p形ドリフト領域、14:n形バックゲート領域、15:p形ソース領域、16:p形ウェル、17:p形ドレイン領域、18:帯状領域、19:STI、21:ゲート絶縁膜、22:ゲート電極、24:バックゲートコンタクト、25:ソースコンタクト、27:ドレインコンタクト、28a、28b:帯状領域、50:内部回路、51:ESD保護素子、D、G:パッド、TrA:低オン抵抗型トランジスタ、TrB:高耐ESD型トランジスタ、Lbg:n形バックゲート領域14の長さ、Ls:p形ソース領域15の長さ、R:抵抗、W:ゲート幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8