特許第6383345号(P6383345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383345ワイヤハーネス用プロテクタ、及び、ワイヤハーネスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383345
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス用プロテクタ、及び、ワイヤハーネスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20180820BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20180820BHJP
   H01B 7/24 20060101ALI20180820BHJP
   H01B 13/012 20060101ALI20180820BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   H02G3/04 018
   H02G3/04 087
   H01B7/00 301
   H01B7/24
   H01B13/012 Z
   B60R16/02 623U
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-236837(P2015-236837)
(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公開番号】特開2017-103959(P2017-103959A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山尾 宜道
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】義村 克也
(72)【発明者】
【氏名】小川 真由
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−090505(JP,A)
【文献】 特開2008−092638(JP,A)
【文献】 特開2003−333723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/00−3/04
H01B 7/00−7/02
H01B 7/38−7/40
H01B 7/18−7/28
H01B 13/010−13/016
H01B 13/34
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを構成する電線が通過可能な複数の経路を画成する本体部と、前記電線を保持する電線保持部と、前記本体部及び前記電線保持部を覆うカバー部と、を備えたワイヤハーネス用プロテクタであって、
前記本体部は、
前記複数の経路として隔壁に隔てられた第1経路及び第2経路を含むと共に、前記第1経路を挟んで前記隔壁と向かい合う第1側壁、及び、前記第2経路を挟んで前記隔壁と向かい合う第2側壁、を有し、
前記電線保持部は、
前記第1経路に係る前記カバー部によって覆われる側を通って前記第1側壁から前記隔壁に向けて延びるように配置可能な保持片、前記第2経路に係る前記カバー部によって覆われる側の反対側を通って前記隔壁から前記第2側壁に向けて延びるように配置可能な係合片、及び、前記保持片と前記係合片とを繋ぐ中間片、を有すると共に、前記本体部に固定可能である、
ワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネス用プロテクタにおいて、
前記隔壁が、
前記第1経路と前記第2経路とが連通した連通部を有し、
前記中間片が、
前記連通部を塞ぐように配置可能である、
ワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤハーネス用プロテクタであって、
前記本体部が、
前記第1経路と前記第2経路とが合流する第3経路を有し、
前記隔壁が、
前記第1経路と前記第2経路の合流位置から離れた位置に前記連通部を有する、
ワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のワイヤハーネス用プロテクタにおいて、
前記電線保持部が、
前記保持片が前記第1側壁にヒンジ部を介して回転可能に接続され、且つ、前記係合片が前記第2側壁に係合可能な係合部を有する、ように構成され、
前記本体部が、
前記係合部に対応する被係合部を有する、ように構成された、
ワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項5】
複数の電線と、前記複数の電線を内部に収容するプロテクタと、を備えたワイヤハーネスの製造方法であって、
前記プロテクタは、
前記電線が通過可能な複数の経路を画成する本体部と、前記電線を保持する電線保持部と、前記本体部及び前記電線保持部を覆うカバー部と、を有し、
前記本体部は、前記複数の経路として隔壁に隔てられた第1経路及び第2経路を含むと共に、前記第1経路を挟んで前記隔壁と向かい合う第1側壁、及び、前記第2経路を挟んで前記隔壁と向かい合う第2側壁、を有
前記電線保持部は、前記第1経路に係る前記カバー部によって覆われる側を通って前記第1側壁から前記隔壁に向けて延びるように配置可能な保持片、前記第2経路に係る前記カバー部によって覆われる側の反対側を通って前記隔壁から前記第2側壁に向けて延びるように配置可能な係合片、及び、前記保持片と前記係合片とを繋ぐ中間片、を有すると共に、前記本体部に固定可能である、
と共に、
前記第1経路に前記複数の電線の一部である第1電線群を収容する第1工程と、
前記保持片によって前記第1電線群を前記第1経路内に保持すると共に、前記係合片によって前記電線保持部を前記本体部に固定する第2工程と、
前記第2経路に前記複数の電線の他の一部である第2電線群を前記係合片の前記カバー部によって覆われる側を通過するように収容する第3工程と、
前記本体部及び前記電線保持部を覆うように前記カバー部を前記本体部に固定することにより、前記第2電線群を前記第2経路内に保持する第4工程と、を含む、
ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
前記第3工程が、
前記第2電線群に配索用部品を取り付ける工程と、前記配索用部品の少なくとも一部が前記プロテクタの内部に位置するように前記第2電線群を前記第2経路に配置する工程と、を含む、
ワイヤハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス用プロテクタ、及び、ワイヤハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイヤハーネスを構成する電線を収容可能な経路(空洞・空間)を内部に画成するワイヤハーネス用プロテクタが提案されている。ワイヤハーネス用プロテクタは、一般に、その内部に収容した電線を保護すると共に、ワイヤハーネスを自動車の車体等に配索する際の固定具として用いられる。以下、便宜上、ワイヤハーネス用プロテクタを単に「プロテクタ」と称呼する。
【0003】
例えば、従来のプロテクタの一つ(以下「従来プロテクタ」という。)は、底壁と両側壁とを有する桶状のプロテクタ本体と、プロテクタ本体の上端側の開口部を覆うカバーと、を備える。従来プロテクタは、プロテクタ本体の底壁と両側壁が画成する経路内に電線を収容した後、プロテクタ本体にカバーを取り付けて固定することにより、電線を収容するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−295728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイヤハーネスは、プロテクタへの電線の収容を含む一連の製造工程を経て製造される。より具体的には、ワイヤハーネスは、一般に、専用の作業台(いわゆる治具板等)上にて、複数の電線、及び、それら電線に取り付ける各種の配索用部材(例えば、プロテクタ、グロメット及びクランプ等)を組み付けることにより、製造される。但し、ワイヤハーネスを構成する電線および配索用部材は多種多様であるため、一般に、ワイヤハーネスは、複数の作業台上での複数の製造工程を経て製造される。
【0006】
これら製造過程において、ある作業台から他の作業台にプロテクタを取り付けた電線(製造途中のワイヤハーネス)を移動させる場合、電線からプロテクタが離脱することを防ぐため、一般に、その移動の前に従来プロテクタのようにプロテクタ本体にカバーが取り付けられる。換言すると、プロテクタ本体へのカバーの取り付け(プロテクタへの電線の収容)は、一般に、個々の作業台において完結するようになっていた。
【0007】
そのため、ワイヤハーネスの構造の複雑化などに起因して作業台間の移動回数が増えると、ワイヤハーネスに取り付けられるプロテクタの数も増大するようになっていた。しかしながら、ワイヤハーネスを製造する際の作業性、製造後のワイヤハーネスを車両等に取り付ける際の配索性、及び、ワイヤハーネスの製造コスト等の観点において、プロテクタの数は出来る限り少ないことが望ましい。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスに要するプロテクタの数を低減可能なワイヤハーネス用プロテクタ、及び、そのようなプロテクタを用いたワイヤハーネスの製造方法、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネス用プロテクタは、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1)
ワイヤハーネスを構成する電線が通過可能な複数の経路を画成する本体部と、前記電線を保持する電線保持部と、前記本体部及び前記電線保持部を覆うカバー部と、を備えたワイヤハーネス用プロテクタであって、
前記本体部は、
前記複数の経路として隔壁に隔てられた第1経路及び第2経路を含むと共に、前記第1経路を挟んで前記隔壁と向かい合う第1側壁、及び、前記第2経路を挟んで前記隔壁と向かい合う第2側壁、を有し、
前記電線保持部は、
前記第1経路に係る前記カバー部によって覆われる側を通って前記第1側壁から前記隔壁に向けて延びるように配置可能な保持片、前記第2経路に係る前記カバー部によって覆われる側の反対側を通って前記隔壁から前記第2側壁に向けて延びるように配置可能な係合片、及び、前記保持片と前記係合片とを繋ぐ中間片、を有すると共に、前記本体部に固定可能である、
ワイヤハーネス用プロテクタであること。
(2)
上記(1)に記載のワイヤハーネス用プロテクタにおいて、
前記隔壁が、
前記第1経路と前記第2経路とが連通した連通部を有し、
前記中間片が、
前記連通部を塞ぐように配置可能である、
ワイヤハーネス用プロテクタであること。
(3)
上記(2)に記載のワイヤハーネス用プロテクタであって、
前記本体部が、
前記第1経路と前記第2経路とが合流する第3経路を有し、
前記隔壁が、
前記第1経路と前記第2経路の合流位置から離れた位置に前記連通部を有する、
ワイヤハーネス用プロテクタであること。
(4)
上記(1)〜上記(3)の何れか一つに記載のワイヤハーネス用プロテクタにおいて、
前記電線保持部が、
前記保持片が前記第1側壁にヒンジ部を介して回転可能に接続され、且つ、前記係合片が前記第2側壁に係合可能な係合部を有する、ように構成され、
前記本体部が、
前記係合部に対応する被係合部を有する、ように構成された、
ワイヤハーネス用プロテクタであること。
【0010】
上記(1)の構成のワイヤハーネス用プロテクタによれば、プロテクタの第1経路にワイヤハーネスを形成する複数の電線の一部(第1電線群)を収容した後、プロテクタに電線保持部を固定すれば、第1経路の上側(カバーに近い側)を通る電線保持部の保持片によって第1経路に収容された第1電線群を保持できる。そのため、従来プロテクタとは異なり、本体部にカバー部を取り付けることなく、第1経路に収容された電線群を保持できる。更に、このとき、電線保持部の係合片は第2経路の下側(カバーから離れている側)を通るように配置されるため、第2経路は、電線を収容可能な状態に維持される。換言すると、第1経路が電線(第1電線群)を収容して保持し且つ第2経路が電線を収容可能な状態を維持したまま、カバー部を本体部に取り付けることなく(即ち、プロテクタへの電線の収容を完結することなく)、ある作業台から他の作業台へ製造途中のワイヤハーネスを移動させられる。
【0011】
更に、例えば、移動先の他の作業台において、第2経路に複数の電線の他の一部(第2電線群)を係合片の上側を通過するように収容した後、本体部にカバー部を取り付けて固定すれば、カバー部によって第2経路に収容された第2電線群を保持できる。
【0012】
このように、本構成のワイヤハーネス用プロテクタによれば、作業台ごとにプロテクタの取り付けを完結しなくてもよい。したがって、本構成のワイヤハーネス用プロテクタは、従来プロテクタのように作業台ごとにプロテクタの取り付けを完結する場合に比べ、ワイヤハーネスに要するプロテクタの数を低減できる。
【0013】
なお、第1経路に収容される電線を保持するための電線保持部と、第2経路に収容される電線を保持するための電線保持部と、を互いに独立した別部材とした場合、作業台ごとにプロテクタの取り付けを完結しなくてもよいものの、各々の電線保持部に本体部への固定用の係合部を設け、本体部にはそれら係合部に対応する被係合部を設けることになる。よって、本構成のワイヤハーネス用プロテクタに比べ、電線保持部を複数の別部材とした分だけ係合部および被係合部の数が増大する。このように増大した係合部および被係合部は、電線を保持するための経路の容積を減少させ、経路に収容可能な電線の数および種類などを低減させる要因となる。したがって、本構成のワイヤハーネス用プロテクタは、経路ごとに複数の電線保持部を設ける場合に比べ、プロテクタ内の経路の容積を最大限に活用できるという利点を有する。
【0014】
上記(2)の構成のワイヤハーネス用プロテクタによれば、隔壁に形成された切欠き部(連通部)を塞ぐように電線保持部の一部(中間片)が配置され、その中間片が隔壁の一部を担うことになる。そのため、隔壁に連通部が存在せず中間片の全体が経路内(第1経路内または第2経路内)に配置される場合に比べ、中間片が経路内に突出する突出量が小さくなる分、経路の容積を増大させられる。その結果、経路内に収容可能な電線の数および種類などを増大できる。よって、本構成のワイヤハーネス用プロテクタによれば、プロテクタ内の経路の容積を最大限に活用できる。
【0015】
上記(3)の構成のワイヤハーネス用プロテクタによれば、プロテクタに収容される電線の中に第1経路から合流位置を経由して第2経路に向かう電線(即ち、第3経路に向かわない電線)が存在する場合であっても、その電線は、合流位置に隣接する隔壁に接触するため、連通部には侵入しない。そのため、その電線が電線保持部(中間片等)と本体部との間に挟まれることがない。よって、合流位置に隣接する位置に連通部が存在する(換言すると、合流位置に隣接する位置に電線保持部の中間片が存在する)場合に比べ、その電線の損傷等を防止できる。
【0016】
上記(4)の構成のワイヤハーネス用プロテクタによれば、ヒンジ部を中心に電線保持部を回転させることにより、容易に電線保持部を本体部に固定できる。そのため、本体部と電線保持部とが分離した別部材である場合に比べ、第1経路に電線を収容する工程の作業性を高められる。
【0017】
更に、前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスの製造方法は、下記(5)及び(6)を特徴としている。
(5)
複数の電線と、前記複数の電線を内部に収容するプロテクタと、を備えたワイヤハーネスの製造方法であって、
前記プロテクタは、
前記電線が通過可能な複数の経路を画成する本体部と、前記電線を保持する電線保持部と、前記本体部及び前記電線保持部を覆うカバー部と、を有し、
前記本体部は、前記複数の経路として隔壁に隔てられた第1経路及び第2経路を含むと共に、前記第1経路を挟んで前記隔壁と向かい合う第1側壁、及び、前記第2経路を挟んで前記隔壁と向かい合う第2側壁、を有
前記電線保持部は、前記第1経路に係る前記カバー部によって覆われる側を通って前記第1側壁から前記隔壁に向けて延びるように配置可能な保持片、前記第2経路に係る前記カバー部によって覆われる側の反対側を通って前記隔壁から前記第2側壁に向けて延びるように配置可能な係合片、及び、前記保持片と前記係合片とを繋ぐ中間片、を有すると共に、前記本体部に固定可能である、
と共に、
前記第1経路に前記複数の電線の一部である第1電線群を収容する第1工程と、
前記保持片によって前記第1電線群を前記第1経路内に保持すると共に、前記係合片によって前記電線保持部を前記本体部に固定する第2工程と、
前記第2経路に前記複数の電線の他の一部である第2電線群を前記係合片の前記カバー部によって覆われる側を通過するように収容する第3工程と、
前記本体部及び前記電線保持部を覆うように前記カバー部を前記本体部に固定することにより、前記第2電線群を前記第2経路内に保持する第4工程と、を含む、
ワイヤハーネスの製造方法であること。
(6)
上記(5)に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
前記第3工程が、
前記第2電線群に配索用部品を取り付ける工程と、前記配索用部品の少なくとも一部が前記プロテクタの内部に位置するように前記第2電線群を前記第2経路に配置する工程と、を含む、
ワイヤハーネスの製造方法であること。
【0018】
上記(5)の構成のワイヤハーネスの製造方法によれば、プロテクタの第1経路にワイヤハーネスを形成する複数の電線の一部(第1電線群)を収容した後、プロテクタに電線保持部を固定することにより、第1経路の上側(カバーに近い側)を通る電線保持部の保持片によって第1経路に収容された第1電線群を保持できる。そのため、従来プロテクタとは異なり、本体部にカバー部を取り付けることなく、第1経路に収容された電線群を保持できる。更に、このとき、電線保持部の係合片は第2経路の下側(カバーから離れている側)を通るように配置されるため、第2経路は、電線を収容可能な状態に維持される。換言すると、第1経路が電線(第1電線群)を収容して保持し且つ第2経路が電線を収容可能な状態を維持したまま、カバー部を本体部に取り付けることなく(即ち、プロテクタへの電線の収容を完結することなく)、ある作業台から他の作業台へ製造途中のワイヤハーネスを移動させられる。
【0019】
更に、例えば、移動先の他の作業台において、第2経路に複数の電線の他の一部(第2電線群)を係合片の上側を通過するように収容した後、本体部にカバー部を取り付けて固定することにより、カバー部によって第2経路に収容された第2電線群を保持できる。
【0020】
このように、本構成のワイヤハーネスの製造方法によれば、作業台ごとにプロテクタの取り付けを完結しなくてもよい。したがって、本構成のワイヤハーネスの製造方法は、従来プロテクタを用いて作業台ごとにプロテクタの取り付けを完結する場合に比べ、ワイヤハーネスに要するプロテクタの数を低減できる。
【0021】
上記(6)の構成のワイヤハーネスの製造方法によれば、配索用部品(例えば、グロメット及びクランプ等、並びに、それらを電線に固定するために電線に巻きつけたテープ等)の少なくとも一部がプロテクタの内部に位置することになる。そのため、配索用部品の全体がプロテクタの外に露出している場合に比べ、配索用部品の損傷を軽減できる。更に、ワイヤハーネスを車両等に配索する際、プロテクタと共に配索用部品を車両等に固定できる。加えて、配索用部品とプロテクタとを一体的に取り扱うことにより、ワイヤハーネスを製造する作業性を高められる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ワイヤハーネスに要するプロテクタの数を低減可能なワイヤハーネス用プロテクタ、及び、そのようなプロテクタを用いたワイヤハーネスの製造方法、を提供できる。
【0023】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本実施形態に係るワイヤハーネス用プロテクタにおいて、電線保持部が退避位置に配置された場合の斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係るワイヤハーネス用プロテクタにおいて、電線保持部が装着位置に配置された場合の斜視図である。
図3図3は、図2におけるA−A断面図である。
図4図4は、プロテクタの本体部に電線が収容されたワイヤハーネスの平面図である。
図5図5は、ワイヤハーネスの製造方法を説明するための概略図であって、プロテクタに電線群が収容される前の時点における、電線群の経路の軸方向と直交する方向の断面図である。
図6図6は、ワイヤハーネスの製造方法を説明するための概略図であって、プロテクタの本体部に第1電線が収容された時点における、電線群の経路の軸方向と直交する方向の断面図である。
図7図7は、ワイヤハーネスの製造方法を説明するための概略図であって、プロテクタの本体部に電線保持部が固定された時点における、電線群の経路の軸方向と直交する方向の断面図である。
図8図8は、ワイヤハーネスの製造方法を説明するための概略図であって、プロテクタの本体部に第1電線及び第2電線が収容された時点における、電線群の経路の軸方向と直交する方向の断面図である。
図9図9は、ワイヤハーネスの製造方法を説明するための概略図であって、プロテクタの本体部にカバー部が装着された時点における、電線群の経路の軸方向と直交する方向の断面図である。
図10図10は、変形例1に係るプロテクタの電線群の経路の軸方向と直交する方向の断面図である。
図11図11は、変形例2に係るプロテクタの電線群の経路の軸方向と直交する方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るワイヤハーネス用プロテクタ、及び、ワイヤハーネスの製造方法の実施の形態について説明する。
【0026】
<実施形態>
図1図3に示すように、本実施形態に係るワイヤハーネス用プロテクタ(以下「プロテクタ10」という。)は、本体部11と、電線保持部12と、カバー部13と、を備えている。これらの本体部11、電線保持部12及びカバー部13は、合成樹脂から形成されている。プロテクタ10は、複数の電線を束ねた電線群に組み付けられてワイヤハーネスを構成する。プロテクタ10は、例えば、車両の所定箇所に固定される。これにより、ワイヤハーネスが車体に配索されることになる。
【0027】
本体部11は、ワイヤハーネスを構成する電線が通過可能な複数の経路を画成している。本体部11は、底板部20、第1側壁21、第2側壁22及び隔壁23を有している。底板部20は、長尺の板状に形成されており、第1側壁21及び第2側壁22は、底板部20の側縁から上方へ立設されている。隔壁23は、底板部20の幅方向の略中央部に立設されており、第1側壁21及び第2側壁22と並列に配置されている。隔壁23は、底板部20の長手方向に沿って、本体部11の一端11a側から他端11bへ向かう途中まで延在されている。
【0028】
本体部11は、電線を通す複数の経路として、第1経路31、第2経路32及び第3経路33を有している(各経路に電線が収容された様子については、図4を参照。)。第1経路31及び第2経路32は、互いに隣接しており、第3経路33は、第1経路31及び第2経路32に対して本体部11の長手方向に連なるように、第1経路31と第2経路32とが合流する位置に設けられている。
【0029】
第1経路31と第2経路32とは、本体部11の幅方向の略中央位置に形成された隔壁23に隔てられている。これにより、第1側壁21は、第1経路31を挟んで隔壁23と向かい合う位置に配置され、第2側壁22は、第2経路32を挟んで隔壁23と向かい合う位置に配置されている。更に、隔壁23は、連通部24を有している。連通部24は、隔壁23の壁部が切り欠かれた(壁部が存在しない)部分であり、第1経路31と第2経路32がその連通部24を通じて互いに連通している部分である。連通部24は、第3経路33側の端部近傍で、第1経路31と第2経路32の合流位置Gから離れた位置に形成されている。
【0030】
電線保持部12は、電線を保持するための部材であり、保持片41、係合片42及び中間片43を有している。電線保持部12は、本体部11に一体的に(後述するヒンジ部44を介して)設けられており、電線を保持した状態にて本体部11に固定可能とされている。電線保持部12は、その保持片41の端部が、本体部11の第1側壁21における上縁部に、ヒンジ部44を介して回動可能に接続されている。電線保持部12は、ヒンジ部44による第1側壁21との接続側から順に、保持片41、中間片43及び係合片42を有している。換言すると、電線保持部12は、保持片41と係合片42とが中間片43で繋がれるように構成されている。
【0031】
図2に示すように、電線保持部12は、ヒンジ部44を中心に回動することにより、本体部11内に収容されるようになっている。別の言い方をすると、電線保持部12は、本体部11の外側の退避位置(図1に示す位置)から、本体部11内に収容された装着位置(図2及び図3に示す位置)へ、ヒンジ部44を中心に回動することによって移動可能となっている。
【0032】
保持片41は、装着位置(図2及び図3に示す位置)において、第1側壁21の上端から隔壁23の上端に向けて延びるように配置されることになる。これにより、第1側壁21と隔壁23との間に形成された第1経路31は、その上側が電線保持部12の保持片41によって覆われる。
【0033】
一方、係合片42は、装着位置(図2及び図3に示す位置)において、隔壁23の下端から第2側壁22の下端に向けて延びるように配置されることになる。これにより、係合片42は、第2側壁22と隔壁23との間に形成された第2経路32の下側を通される。
【0034】
更に、中間片43は、装着位置(図2及び図3に示す位置)において、隔壁23の連通部24を塞ぐように配置されることになる。
【0035】
再び図1を参照すると、係合片42は、係合片42における中間片43と反対側の端部に、係合部45を有している。係合部45は、装着位置(図2及び図3に示す位置)において、係合片42から第2側壁22の内面に沿って上端側へ延びることになる(図3も参照。)。更に、係合部45は、折り返し部46を有している。折り返し部46は、装着位置(図2及び図3に示す位置)において、第2側壁22の上端で第2側壁22の外面側へ折り返されるように延びることになる。折り返し部46には、係合爪47が形成されている。
【0036】
更に、本体部11は、第3経路33側に、電線保持部12とは異なる電線保持部51を備えている。電線保持部51は、本体部11に一体的に(後述するヒンジ部52を介して)設けられており、装着位置(図2に示す位置)において第3経路33の上側を覆うように、第1側壁21の上端から第2側壁22の上端に架け渡された状態で本体部11に固定可能とされている。電線保持部51は、一端が、本体部11の第1側壁21における上縁部に、ヒンジ部52を介して回動可能に接続されている。
【0037】
図2に示すように、電線保持部51は、ヒンジ部52を中心に回動することにより、本体部11内に収容されるようになっている。別の言い方をすると、電線保持部51は、本体部11の外側の退避位置(図1に示す位置)から、本体部11内に収容された装着位置(図2に示す位置)へ、ヒンジ部52を中心に回動することによって移動可能となっている。電線保持部51は、ヒンジ部52を有する一端とは逆側の他端側に係合部53を有している。係合部53は、装着位置(図2に示す位置)において、第2側壁22の外面側へ折り返されるように延びる折り返し部54を有しており、この折り返し部54には、係合爪55が形成されている。
【0038】
再び図1を参照すると、本体部11を構成する第1側壁21は、その上端に、電線保持部12の係合部45が嵌合される係合凹部25、及び、電線保持部51が嵌合される係合凹部27を有している。更に、本体部11は、第1側壁21の外面側に電線保持部12の係合部45に対応する被係合部26を有し(図3も参照。)、第1側壁21の外面に電線保持部51の係合部53に対応する被係合部28を有している。被係合部26,28は、それぞれ両端が第1側壁21の外面に固定され、第1側壁21の外面に対して隙間をあけて配置されている。被係合部26には、第1側壁21の外面との隙間に電線保持部12の係合部45が挿し込まれることにより、係合爪47が係合される。更に、被係合部28には、第1側壁21の外面との隙間に電線保持部51の係合部53が挿し込まれることにより、係合爪55が係合される。
【0039】
カバー部13は、本体部11の上部に装着され、本体部11、電線保持部12及び電線保持部51を覆う部材である。カバー部13は、上板部60、第1側壁61及び第2側壁62を有している。上板部60は、長尺の板状に形成されており、第1側壁61及び第2側壁62は、上板部60の側縁から下方へ延びている。カバー部13は、第1側壁61と第2側壁62の内面側の間隔が、本体部11の幅寸法よりも僅かに大きいように形成されている。これにより、本体部11の上部にカバー部13を被せることにより、本体部11の上部がカバー部13の第1側壁61と第2側壁62との間に入り込む。これにより、本体部11の上部にカバー部13が装着され、本体部11の第1経路31、第2経路32及び第3経路33の上方側がカバー部13によって塞がれる(後述するワイヤハーネスの製造方法も参照。)。
【0040】
次に、プロテクタ10と、複数の電線1と、を備えたワイヤハーネスWHについて説明する。図4は、複数の電線1を収容したプロテクタ10を上方から見た模式図であり、便宜上、カバー部13の図示を省略している。
【0041】
図4に示すように、ワイヤハーネスWHは、プロテクタ10と、プロテクタ10に保持された電線1を、を有している。プロテクタ10に保持された複数の電線1は、第1電線群71と、第2電線群72と、第3電線群73とを有している。第3電線群73は、第1電線群71と第2電線群72とが合流した電線群である。換言すると、第1電線群71と第2電線群72とは、第3電線群73から分岐されている。電線1のうちの少なくとも1本の電線1aは、第1経路31から合流位置Gを経由して第2経路32に向かうように(即ち、第3経路33に向かわないように)第1電線群71と第2電線群72とにわたって配線されている。
【0042】
更に、第2電線群72は、配索用部品75を備えている。本例では、配索用部品75として、車体のパネル等に嵌め込まれるグロメット76と、このグロメット76を第2電線群72に固定するテープ77と、が第2電線群72に設けられている。グロメット76は、グロメット76の一部と第2電線群72とにわたってテープ77を巻き付けることにより、第2電線群72に固定されている。
【0043】
プロテクタ10には、本体部11の第1経路31に電線1の一部である第1電線群71が収容され、本体部11の第2経路32に電線1の他の一部である第2電線群72が収容されている。更に、プロテクタ10には、本体部11の第3経路33に、電線1の第3電線群73が収容されている。加えて、第1電線群71と第2電線群72とにわたって配線されている一部の電線1aは、第1経路31から合流位置Gを経由して第2経路32に向かうように本体部11に収容されている。
【0044】
このように、プロテクタ10の本体部11に収容された電線1は、第1電線群71が、電線保持部12の保持片41によって保持され、第3電線群73が、電線保持部51によって保持されている。更に、プロテクタ10の本体部11にカバー部13を装着することにより、本体部11に収容された第1電線群71、第2電線群72及び第3電線群73が保持されている。加えて、第2電線群72に取り付けられた配索用部品75は、その一部であるテープ77の巻き付け部分がプロテクタ10の内部に位置するように配置されている。
【0045】
次に、上記構造のワイヤハーネスWHを製造する製造方法について説明する。
【0046】
図5に示すように、プロテクタ10の本体部11を治具板上の所定位置に配置させ、電線保持部12(及び図示しない電線保持部51)を退避位置に配置させておく。
【0047】
次いで、図6に示すように、本体部11の第1経路31に、第1電線群71を収容する(第1工程)。なお、このとき、本体部11の第3経路33(図示省略)に、第3電線群73を収容する。
【0048】
次いで、図7に示すように、電線保持部12を本体部11の内側へ向かって(図7の矢印B方向に)回動させて本体部11内の装着位置へ移動させ、係合部45の係合爪47を被係合部26に係合させて電線保持部12を本体部11に固定する。これにより、電線保持部12の保持片41によって第1経路31の上側を覆い、第1経路31に収容された第1電線群71を本体部11に保持させる(第2工程)。
【0049】
更に、電線保持部51(図示省略)を回動させて装着位置へ移動させ、係合部53の係合爪55を被係合部28に係合させて電線保持部51を本体部11に固定する。これにより、電線保持部51で第3経路33の上側を覆い、第3経路33に収容された第3電線群73を本体部11に保持させる。
【0050】
次いで、プロテクタ10の本体部11を治具板から取り外し、次工程が行われる他の作業台へ本体部11を配置させる。そして、他の作業台(本例においては、グロメット76を取り付けるためのグロメット取付機が設けられた作業台)において、第2電線群72に対して配索用部品75(グロメット76及びテープ77)を装着する。具体的には、第2電線群72にグロメット76を通して所定位置に配置させ、グロメット76の一部と第2電線群72とにわたってテープ77を巻き付ける。これにより、配索用部品75(グロメット76及びテープ77)を第2電線群72の所定位置に固定する。
【0051】
次いで、図8に示すように、本体部11の第2経路32に、配索用部品75が取付けられた第2電線群72を収容する(第3工程)。ここで、配索用部品75を装着した第2電線群72を本体部11の第2経路32へ収容させる際には、配索用部品75の一部であるテープ77の巻き付け部分を第2経路32内に配置させる(図4も参照。)。
【0052】
その後、図9に示すように、本体部11の上方から本体部11へ向かって(図9の矢印C方向に)カバー部13を移動させ、本体部11の上部にカバー部13を被せ、本体部11及び電線保持部12(及び図示しない電線保持部51)を覆うように、カバー部13を本体部11に固定する。これにより、本体部11の上部にカバー部13を装着し、本体部11の第1経路31、第2経路32及び第3経路33の上方側をカバー部13によって塞ぐ(第4工程)。
【0053】
上記工程により、第1電線群71、第2電線群72及び第3電線群73を有する電線1にプロテクタ10が装着されたワイヤハーネスWHを製造することができる。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態に係るプロテクタ10によれば、プロテクタ10の第1経路31内にワイヤハーネスWHを形成する複数の電線1の一部(第1電線群71)を収容した後、プロテクタ10の本体部11に電線保持部12を固定すれば、第1経路31の上側を通る電線保持部12の保持片41によって第1経路31に収容された第1電線群71を保持できる。そのため、従来プロテクタとは異なり、本体部11にカバー部13を取り付けることなく、第1経路31に収容された第1電線群71を保持できる。更に、このとき、電線保持部12の係合片42は第2経路32の下側を通るように配置されるため、第2経路32は、電線(第2電線群72)を収容可能な状態に維持される。換言すると、第1経路31が電線(第1電線群71)を収容して保持し且つ第2経路32が電線(第2電線群72)を収容可能な状態を維持したまま、カバー部13を本体部11に固定することなく(即ち、プロテクタ10への電線1の収容を完結することなく)、ある作業台から他の作業台へ、製造途中のワイヤハーネスWHを移動させることができる。
【0055】
更に、その後、移動先の他の作業台(グロメット取付機が設けられた作業台)において、第2経路32に複数の電線1の他の一部(第2電線群72)を係合片42の上側を通過するように収容した後、本体部11にカバー部13を取り付けて固定することにより、カバー部13によって第2経路32に収容された第2電線群72を保持できる。
【0056】
このように、本実施形態のプロテクタ10によれば、作業台ごとにプロテクタ10の取り付けを完結しなくてもよい。したがって、プロテクタ10は、従来プロテクタのように作業台ごとにプロテクタの取り付けを完結する場合に比べ、ワイヤハーネスWHに要するプロテクタ10の数を低減できる。
【0057】
更に、本実施形態に係るプロテクタ10によれば、隔壁23に形成された切欠き部(連通部24)を塞ぐように電線保持部の一部(中間片43)が配置され、その中間片43が隔壁23の一部を担うことになる。そのため、隔壁23に連通部24が存在せず中間片43の全体が経路内(第1経路31内または第2経路32内)に配置される場合に比べ、中間片43が経路31,32内に突出する突出量が小さくなる分、経路31,32の容積を増大させられる。よって、プロテクタ10によれば、プロテクタ10内の経路の容積を最大限に活用できる。
【0058】
更に、本実施形態に係るプロテクタ10によれば、プロテクタ10に収容される電線1の中に第1経路31から合流位置Gを経由して第2経路32に向かう電線1aが存在する場合であっても、その電線1aは、合流位置Gに隣接する隔壁23に接触するため、連通部24には入らない。そのため、その電線1aが電線保持部12(中間片43等)と本体部11との間に挟まれることがない。よって、合流位置Gに隣接する位置に連通部24が存在する(換言すると、合流位置Gに隣接する位置に電線保持部12の中間片43が存在する)場合に比べ、電線1aの損傷等を防止できる。
【0059】
しかも、本実施形態に係るプロテクタ10によれば、ヒンジ部44を中心に電線保持部12を回転させることにより、容易に電線保持部12を本体部11に固定できる。そのため、本体部11と電線保持部12とが分離した別部材である場合に比べ、第1経路31に電線1を収容する工程の作業性を高められる。
【0060】
更に、本実施形態に係るワイヤハーネスWHの製造方法によれば、プロテクタ10の第1経路31内にワイヤハーネスWHを形成する複数の電線1の一部(第1電線群71)を収容した後、プロテクタ10に電線保持部12を固定することにより、第1経路31の上側を通る電線保持部12の保持片41によって第1経路31に収容された第1電線群71を保持できる。そのため、従来プロテクタとは異なり、本体部11にカバー部13を取り付けることなく、第1経路31に収容された第1電線群71を保持できる。更に、このとき、電線保持部12の係合片42は第2経路32の下側を通るように配置されるため、第2経路32は、電線(第2電線群72)を収容可能な状態に維持される。換言すると、第1経路31が電線(第1電線群71)を収容して保持し且つ第2経路32が電線(第2電線群72)を収容可能な状態を維持したまま、カバー部13を本体部11に取り付けることなく(即ち、プロテクタ10への電線1の収容を完結することなく)、ある作業台から他の作業台へ、製造途中のワイヤハーネスWHを移動させることができる。
【0061】
更に、その後、移動先の他の作業台(グロメット取付機が設けられた作業台)において、第2経路32に複数の電線1の他の一部(第2電線群72)を係合片42の上側を通過するように収容した後、本体部11にカバー部13を取り付けて固定することにより、カバー部13によって第2経路32に収容された第2電線群72を保持できる。
【0062】
このように、本実施形態に係るワイヤハーネスWHの製造方法によれば、作業台ごとにプロテクタ10の取り付けを完結しなくてもよい。したがって、従来プロテクタを用いて作業台ごとにプロテクタの取り付けを完結する場合に比べ、ワイヤハーネスWHに要するプロテクタ10の数を低減した状態で、ワイヤハーネスWHを製造できる。
【0063】
更に、本実施形態に係るワイヤハーネスWHの製造方法によれば、グロメット76とテープ77とからなる配索用部品75の少なくとも一部であるテープ77がプロテクタ10の内部に位置することになる。そのため、配索用部品75の全体がプロテクタ10の外に露出している場合に比べ、配索用部品75の損傷を軽減できる。更に、ワイヤハーネスWHを車両等に配索する際、プロテクタ10と共に配索用部品75を車両等に固定できる。加えて、配索用部品75とプロテクタ10とを一体的に取り扱うことによりワイヤハーネスWHを製造する作業性を高められる。なお、配索用部品75としては、グロメット76やテープ77に限らず、電線1に固定されるクランプ等であっても良い。
【0064】
次に、プロテクタ10の変形例について説明する。
なお、上記実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
<変形例1>
図10に示すように、変形例1に係るプロテクタ10Aは、3つの経路81〜83が並列に配置された本体部11Aを有している。更に、このプロテクタ10Aは、中央部分が下方へ突出されて凹状に形成された電線保持部12Aを有している。
【0066】
変形例1に係るプロテクタ10Aでは、本体部11Aにおける両側の経路81,83に電線群を収容した後、本体部11Aに電線保持部12Aを固定することにより、経路81,83に収容された電線群を本体部11Aに保持できる。そのため、本体部11Aにカバー部13を固定することなく、経路81,83に収容された電線群を保持した状態とし、ある作業台から他の作業台へ、製造途中のワイヤハーネスWHを移動させることができる。更に、経路81,83に電線群を保持させた後、経路82に電線群を収容して本体部11Aにカバー部13を装着することで、経路82に収容された電線群を保持できる。
【0067】
<変形例2>
図11に示すように、変形例2に係るプロテクタ10Bは、3つの経路91〜93が並列に配置された本体部11Bを有している。更に、このプロテクタ10Bは、ヒンジ部44と反対側が下方へ突出されて凹状に形成された電線保持部12Bを有している。
【0068】
変形例2に係るプロテクタ10Bでは、本体部11Bにおけるヒンジ部44側の経路91及び中央の経路92に電線群を収容した後、本体部11Bに電線保持部12Bを固定することにより、経路91,92に収容された電線群を本体部11Bに保持できる。そのため、本体部11Bにカバー部13を固定することなく、経路91,92に収容された電線群を保持した状態とし、ある作業台から他の作業台へ、製造途中のワイヤハーネスWHを移動させることができる。更に、経路91,92に電線群を保持させた後、経路93に電線群を収容して本体部11Bにカバー部13を装着することで、経路93に収容された電線群を保持できる。
【0069】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0070】
例えば、上述した各実施形態では、プロテクタ10は、それぞれ別体の本体部11とカバー部13とを有している。しかし、プロテクタ10は、本体部11とカバー部13とをヒンジ等によって連結した一体構造を有するように構成されてもよい。更に、上述した実施形態では、本体部11と電線保持部12とはヒンジ部44によって連結されている。しかし、電線保持部12は、本体部11と分離した別部材として構成されてもよい。その場合、電線保持部12の保持片41と本体部11の第1側壁21とを係合するための係合部および被係合部を、保持片41及び第1側壁21に設ければよい。
【0071】
ここで、上述した本発明に係るワイヤハーネス用プロテクタ及びワイヤハーネスの製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(6)に簡潔に纏めて列記する。
(1)(主に、図1〜4を参照。)
ワイヤハーネス(WH)を構成する電線(1)が通過可能な複数の経路を画成する本体部(11)と、前記電線を保持する電線保持部(12)と、前記本体部(11)及び前記電線保持部(12)を覆うカバー部(13)と、を備えたワイヤハーネス用プロテクタ(10)であって、
前記本体部(11)は、
前記複数の経路として隔壁(23)に隔てられた第1経路(31)及び第2経路(32)を含むと共に、前記第1経路(31)を挟んで前記隔壁(23)と向かい合う第1側壁(21)、及び、前記第2経路(32)を挟んで前記隔壁(23)と向かい合う第2側壁(22)、を有し、
前記電線保持部(12)は、
前記第1経路(31)の上側を通って前記第1側壁(21)から前記隔壁(23)に向けて延びるように配置可能な保持片(41)、前記第2経路(32)の下側を通って前記隔壁(23)から前記第2側壁(22)に向けて延びるように配置可能な係合片(42)、及び、前記保持片(41)と前記係合片(42)とを繋ぐ中間片(43)、を有すると共に、前記本体部(11)に固定可能である、
ワイヤハーネス用プロテクタであること。
(2)(主に、図1〜4を参照。)
上記(1)に記載のワイヤハーネス用プロテクタにおいて、
前記隔壁(23)が、
前記第1経路(31)と前記第2経路(32)とが連通した連通部(24)を有し、
前記中間片(43)が、
前記連通部(24)を塞ぐように配置可能である、
ワイヤハーネス用プロテクタであること。
(3)(主に、図1〜4を参照。)
上記(2)に記載のワイヤハーネス用プロテクタであって、
前記本体部(11)が、
前記第1経路(31)と前記第2経路(32)とが合流する第3経路(33)を有し、 前記隔壁(23)が、
前記第1経路(31)と前記第2経路(32)の合流位置(G)から離れた位置に前記連通部(24)を有する、
ワイヤハーネス用プロテクタであること。
(4)(主に、図1〜4を参照。)
上記(1)〜上記(3)の何れか一つに記載のワイヤハーネス用プロテクタにおいて、 前記電線保持部(12)が、
前記保持片(41)が前記第1側壁(21)にヒンジ部(44)を介して回転可能に接続され、且つ、前記係合片(42)が前記第2側壁(22)に係合可能な係合部(45)を有する、ように構成され、
前記本体部(11)が、
前記係合部(45)に対応する被係合部(26)を有する、ように構成された、
ワイヤハーネス用プロテクタであること。
(5)(主に、図5〜9を参照。)
複数の電線(1)と、複数の経路を内部に画成するプロテクタ(10)と、を備えたワイヤハーネス(WH)の製造方法であって、
前記プロテクタ(10)は、
前記複数の経路として隔壁(23)に隔てられた第1経路(31)及び第2経路(32)を含むと共に、前記第1経路(31)を挟んで前記隔壁(23)と向かい合う第1側壁(21)、及び、前記第2経路(32)を挟んで前記隔壁(23)と向かい合う第2側壁(22)、を有する本体部(11)と、
前記第1経路(31)の上側を通って前記第1側壁(21)から前記隔壁(23)に向けて延びるように配置可能な保持片(41)、前記第2経路(32)の下側を通って前記隔壁(23)から前記第2側壁(22)に向けて延びるように配置可能な係合片(42)、及び、前記保持片(41)と前記係合片(42)とを繋ぐ中間片(43)、を有すると共に、前記本体部(11)に固定可能な電線保持部(12)と、
前記本体部(11)及び前記電線保持部(12)を覆うカバー部(13)と、を有する、
と共に、
前記第1経路(31)に前記複数の電線(1)の一部である第1電線群(71)を収容する第1工程と、
前記保持片(41)によって前記第1電線群(71)を前記第1経路(31)内に保持すると共に、前記係合片(42)によって前記電線保持部(12)を前記本体部(11)に固定する第2工程と、
前記第2経路(32)に前記複数の電線(1)の他の一部である第2電線群(72)を前記係合片(42)の上側を通過するように収容する第3工程と、
前記本体部(11)及び前記電線保持部(12)を覆うように前記カバー部(13)を前記本体部(11)に固定することにより、前記第2電線群(72)を前記第2経路(32)内に保持する第4工程と、を含む、
ワイヤハーネスの製造方法であること。
(6)(主に、図5〜9を参照。)
上記(5)に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
前記第3工程が、
前記第2電線群(72)に配索用部品(75)を取り付ける工程と、前記配索用部品(75)の少なくとも一部が前記プロテクタ(10)の内部に位置するように前記第2電線群(72)を前記第2経路(32)に配置する工程と、を含む、
ワイヤハーネスの製造方法であること。
【0072】
更に、上述した本発明に係る実施形態の他の特徴(ワイヤハーネスの特徴)を、それぞれ以下[7]〜[9]に簡潔に纏めて列記する。
[7](主に、図1〜4を参照。)
複数の電線(1)と、複数の経路を内部に画成するプロテクタ(10)と、を備えたワイヤハーネス(WH)であって、
前記プロテクタ(10)は、
前記複数の経路として隔壁(23)に隔てられた第1経路(31)及び第2経路(32)を含むと共に、前記第1経路(31)を挟んで前記隔壁(23)と向かい合う第1側壁(21)、及び、前記第2経路(32)を挟んで前記隔壁(23)と向かい合う第2側壁(22)、を有する本体部(11)と、
前記第1経路(31)の上側を通って前記第1側壁(21)から前記隔壁(23)に向けて延びるように配置された保持片(41)、前記第2経路(32)の下側を通って前記隔壁(23)から前記第2側壁(22)に向けて延びるように配置された係合片(42)、及び、前記保持片(41)と前記係合片(42)とを繋ぐ中間片(43)、を有すると共に、前記本体部(11)に固定された電線保持部(12)と、
前記本体部(11)及び前記電線保持部(12)を覆うカバー部(13)と、を有し、
前記複数の電線(1)は、
前記第1経路(31)に該複数の電線(1)の一部である第1電線群(71)が収容され、前記第2経路(32)に該複数の電線(1)の他の一部である第2電線群(72)が収容された状態にて、前記プロテクタ(10)に保持された、
ワイヤハーネス。
[8](主に、図1〜4を参照。)
[7]に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記プロテクタ(10)が、
前記本体部(11)が、前記第1経路(31)と前記第2経路(32)とが合流する第3経路(33)を有し、
前記隔壁(23)が、前記第1経路(31)と前記第2経路(32)とが連通した連通部(24)であって、前記第1経路(31)と前記第2経路(32)の合流位置(G)から離れた位置に形成された連通部(24)を有し、
前記中間片(43)が、前記連通部(24)を塞ぐように配置される、ように構成され、
前記複数の電線(1)が、
前記第1電線群(71)と前記第2電線群(72)とが合流した第3電線群(73)が前記第3経路(33)に収容され、且つ、前記第1経路(31)から前記合流位置(G)を経由して前記第2経路(32)に向かう少なくとも1本の電線(1A)が存在する状態にて、前記プロテクタ(10)に収容された、
ワイヤハーネス。
[9](主に、図1〜4を参照。)
[7]又は[8]に記載のワイヤハーネスであって、
前記第2電線群(72)に取り付けられた配索用部品(75)を備え、
前記配索用部品(75)が、
前記プロテクタ(10)の内部に該配索用部品(75)の少なくとも一部が位置するように配置された、
ワイヤハーネス。
【符号の説明】
【0073】
1: 電線
10:ワイヤハーネス用プロテクタ(プロテクタ)
11:本体部
12:電線保持部
13:カバー部
21:第1側壁
22:第2側壁
23:隔壁
24:連通部
31:第1経路
32:第2経路
33:第3経路
41:保持片
42:係合片
43:中間片
44:ヒンジ部
71:第1電線群
72:第2電線群
73:第3電線群
75:配索用部品
WH:ワイヤハーネス
G: 合流位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11