特許第6383362号(P6383362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アヴェント インコーポレイテッドの特許一覧

特許6383362可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ
<>
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000002
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000003
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000004
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000005
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000006
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000007
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000008
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000009
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000010
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000011
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000012
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000013
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000014
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000015
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000016
  • 特許6383362-可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383362
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】可逆的に変形可能なローブ部を備えた医療用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/02 20060101AFI20180820BHJP
   A61M 25/02 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61M39/02 110
   A61M25/02 500
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-544570(P2015-544570)
(86)(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公表番号】特表2015-535477(P2015-535477A)
(43)【公表日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】IB2013060138
(87)【国際公開番号】WO2014083471
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】13/690,870
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス、ネイサン・シー
(72)【発明者】
【氏名】マクマイケル、ドナルド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ロテッラ、ジョン・エー
(72)【発明者】
【氏名】テシェイラ、スコット・エム
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0029483(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0185441(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0101910(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/02
A61M 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周側面及び該周側面に画定された周方向に延在する周凹部を有する円形ハブを備えたカテーテル器具のベース部に医療用流体供給チューブを結合させるためのコネクタであって、
上面及び下面を有するキャップを含み、該キャップが、中央領域及び周囲領域を含み、かつ前記キャップを完全に貫通し、前記周囲領域の周縁を貫通し、該周縁から前記中央領域に向かって径方向に延在する少なくとも2つのスロットを画定し、該スロットによって少なくとも1つのローブ部が画定されており、
前記少なくとも2つのスロットは、前記少なくとも1つローブ部の両側部の各々に沿って、前記キャップに画定された径方向に延在する空間であり、
前記少なくとも1つのローブ部が、
前記キャップの周囲領域を超えて径方向外向きに延出する持ち上げ用タブと、
前記周凹部に係脱可能に係合するように構成された内向きに突出する係合部と、
少なくとも1つの弾性領域とを含み、
当該コネクタが、前記円形ハブの全周を自由に回転することができるように構成されており、
少なくとも1つの持ち上げ用タブに力を加え、前記弾性領域の変形により前記ローブ部及び該ローブ部のそれぞれの係合部を半径方向に可逆的に変位させて、前記ローブ部に隣接する前記キャップの前記周囲領域を前記円形ハブに対して変位させることなく前記ローブのそれぞれの前記係合部を前記周凹部から離脱させることによって、当該コネクタを前記円形ハブから取り外すことができるように構成したことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
当該コネクタを前記円形ハブ上に置き、かつ前記キャップの前記上面を押して前記周凹部に前記係合部が係合するまで前記キャップの前記下面を前記円形ハブに向けて変位させることによって、当該コネクタが前記円形ハブに結合されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのローブ部が、前記円形ハブの前記周側面に画定された前記周凹部と前記係合部との係合が目視できるように、前記係合部の上方に位置するポートを有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのローブ部が、該ローブ部のそれぞれの持ち上げ用タブに2〜14ニュートンの力が加えられたときに、可逆的に変形しかつ空間的に変位させられるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
当該コネクタのピッチング動を制限するための変位制限部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
各係合部が、
前記円形ハブの前記周側面に画定された前記周凹部に係脱可能に係合するように構成された上面と、
面取りされた下面とを有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項7】
当該コネクタを貫通する流体通路を形成する導管をさらに含み、
前記導管が、前記カテーテル器具のカテーテルによって画定されるルーメンへ液体を供給するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記キャップが、該キャップの前記周囲領域から前記中央領域に向かって延在する2つのスロットを含み、該2つのスロットによって2つのローブ部が画定されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記キャップが、該キャップの前記周囲領域から前記中央領域に向かって延在する3つのスロットを含み、該3つのスロットによって3つのローブ部が画定されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記カテーテル器具が、経腸栄養器具であり、
前記医療用流体供給チューブが、経腸栄養チューブであり、
前記コネクタが、該コネクタを貫通する流体通路を形成しかつ前記経腸栄養器具のルーメンへ栄養溶液を供給するように構成された導管をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記導管が、前記経腸栄養器具のルーメンへ前記栄養溶液を供給するために前記円形ハブに画定されたオリフィスに係合するように構成されたノズルをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載のコネクタ。
【請求項12】
経腸栄養アセンブリであって、
請求項1に記載のコネクタを備えた経腸栄養延長セットと、
前記カテーテル器具である経腸栄養器具であって、前記経腸栄養器具は、ベース部、カテーテル、該カテーテル及び前記ベース部を貫通して配置された少なくとも1つのルーメン、並びに前記ベース部に設けられかつ、半径、上面、周側面及び該周側面に画定された周方向に延在する周凹部を有する少なくとも1つの円形ハブを備えた、該経腸栄養器具とを含み、
前記コネクタが、前記経腸栄養器具の前記ルーメンと流体連通可能であることを特徴とする経腸栄養アセンブリ。
【請求項13】
経腸栄養延長セットであって、
経腸栄養チューブと、
前記経腸栄養チューブに流体連通している請求項1に記載のコネクタとを含むことを特徴とする経腸栄養延長セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給チューブから留置カテーテルへ流体を流入させる改良コネクタに関する。より詳細には、本発明は、経腸栄養器具に結合する特別なコネクタを備えた経腸栄養延長セットに関する。
【背景技術】
【0002】
所望の医療目的を達成するために体腔へのカテーテル挿管が必要になる状況は数多く存在する。1つの比較的よく起こる状況は、胃や腸への栄養溶液や栄養剤の直接投与である。胃壁または腸壁にストーマ(瘻孔)が造設され、該ストーマを通してカテーテルが留置される。この外科的開口部及び該開口部を形成する手技は、一般的に「胃瘻」及び「胃瘻造設術」と呼ばれている。カテーテルを通して栄養溶液を注入し、それによって胃や腸に栄養物を直接投与することができる(経腸栄養法として知られている)。様々な経腸栄養器具が長年にわたって開発されてきたが、その中には、患者の皮膚の上に置かれる体外露出部分が「薄型(ロープロファイル)」であるものも、従来型の、すなわち非薄型構造を有するものと同様に含まれる。これらの経腸栄養器具は、「経皮通管(transconduit)カテーテル」、「経皮通管チューブ」、「胃瘻カテーテル」、「経皮胃瘻カテーテル」、「PEGカテーテル」、または「経腸栄養カテーテル」としても知られている。2000年2月1日に発行された米国特許第6,019,746号明細書(特許文献1)には、1つの器具の例が示されている。
【0003】
経腸栄養器具は、体外から胃または腸の中へ栄養溶液を送り込むための、ストーマを貫通する通路として機能する。経腸栄養中において、経腸栄養器具はチューブに接続されていなければならず、該チューブは、栄養溶液をリザーバからチューブを介して経腸栄養器具へ、そして経腸栄養器具を経て胃または腸の中へ運ぶための圧力を発生させる加圧源(例えばポンプ)に接続されている。経腸栄養は、数時間掛かる場合があり、患者が夜間睡眠中に行うことができる。チューブと経腸栄養器具との間の接続を強固にかつ漏れないように維持することが重要である。また、このような接続が、患者の動きによって生じる捩り力、トルク及び引張力に耐えることも非常に望ましい。
【0004】
しかし、薄型及び非薄型の経腸栄養器具に共通する問題は、チューブのロッキングアダプタと経腸栄養器具のベース部またはヘッド部との接続及び取り外しが困難である点である。多くの先行技術の経腸栄養器具は、薄型ベース部と、該ベース部から延出している留置カテーテルとを有する。このような経腸栄養器具/アセンブリのカテーテルの遠位端には、多くの場合、胃内腔などの体腔においてカテーテルを適所に保持するべく膨張可能なバルーンが設けられている。
【0005】
経腸栄養器具は、ベース部に形成された栄養補給通路開口部を塞ぐためにプラグを用いることが多い。このプラグは、テザー部によって経腸栄養器具に取り付けられている。このような従来の経腸栄養器具は、経腸栄養延長セットを接続する前に、栄養補給通路開口部へのアクセスを可能にするべくベース部からプラグを取り外すステップが必要である。
【0006】
他の従来の経腸栄養器具は、留置カテーテルへの栄養補給通路開口部にロッキングカバー部材を有するベース部または「ヘッド部」を備えて設計されている。ロッキングカバー部材は、チューブの端部に接続可能なコネクタとしてのアダプタを受容するように構成されている。概して言えば、これらのロッキングカバー部材は、キー溝、溝及び停止部材を有しており、かつ、スロットを設けることによって、バヨネット式フィッティングのメス部分と同様の構造を提供している。ロッキングカバー部材に嵌合するアダプタは、ディスペンシング突起及び該突起に結合されたキー部分を有する。アダプタをロッキングカバー部材に差し込み、所定の位置でロックするまで回す。これらの従来の機構の例示的な図は、上記で引用した特許文献1に見られる。
【0007】
インターロッキングアダプタを有するチューブをロッキングカバー部材(特許文献1に記載のものなど)に接続すること、交換すること及び/または取り外すことは、驚くほど困難であり得る。経腸栄養器具のベース部に対する視界が制限されている場合、例えば、患者が肥満である場合や、暗い場所などでは、ベース部にインターロッキングアダプタを整合させたり出し入れしたりする操作は感触のみに頼るしかない。患者の運動能力が低下している場合には、ロッキングカバー部材にインターロックアダプタを嵌合する際に、アダプタを配置することも、差し込むことも、回すことも難しいであろう。さらに、アダプタが経腸栄養器具に正しく接続された確信が持てない状態では、胃内容物及び/または栄養溶液が患者の皮膚表面や衣服などへ漏れ出す恐れがある。さらに、アダプタがベース部内にきつく嵌まっている場合には、取り外すことが困難であろうから、大きな引張力、互いに接続された経腸栄養延長セット及びベース部の変位、さらにはベース部の無用な変位が要求される。これらは全て、漏れを生じさせるかまたは敏感なストーマ部位を刺激する可能性がある。
【0008】
従来のインターロッキングアダプタには、所定位置に嵌め込まれた後にベース部内で部分的に回動できるように構成されているものもある。すなわち、インターロッキングアダプタをロッキングカバー部材内に差し込み、アダプタのキー部分が「ディテント」を通過するようにアダプタを回した後に、インターロッキングアダプタは、キー部分が停止部材に接触する位置とキー部分がディテントに接触する位置との間で回動可能である。残念ながら、このように可動域が制限されていることにより、インターロッキングアダプタが経腸栄養カテーテルにトルクを伝達させる。この力の伝達によって、カテーテルは捻れるかまたは引っ張られかねないが、それによって漏れが生じたり敏感なストーマ部位を刺激したりする可能性がある。意図せずして十分な力が加えられた場合には、患者または医療提供者がロッキングアダプタを取り外しているときのように、インターロッキングアダプタのキー部分はディテントを通過するように押し進められる。ディテントを通過した後のキー部分は、スロットキー溝と容易に整合し得るので、それによって経腸栄養延長セットは意図せず完全に取り外された状態になる。
【0009】
これらの従来のコネクタには明らかな欠点があり、それらは依然として解消されていない。
【0010】
薄型のヘッド部またはベース部を有する経腸栄養器具の需要は、腹壁から患者の胃へ挿入される経皮挿入カテーテル(すなわちカテーテルチューブ)にクランプされる薄型のベース部またはヘッド部コンポーネントを提供するコンバージョンキットをも生み出した。そのような薄型のコンバージョンキットは、米国特許第5,549,657号明細書(特許文献2)に記載されている。特許文献2によれば、ベース部またはヘッド部コンポーネントは、逆流防止弁アセンブリと、2つの部分からなるクランプとを有する。ベース部またはヘッド部コンポーネントは、カテーテルの端部にクランプされた後、カテーテルのためのベース部またはヘッド部として機能する。逆流防止弁アセンブリは、円形台座を含む。該台座の下に形成された凹部は、円形台座にパチンと嵌まるスナップフィット式チューブコネクタの互いに対向配置されたリップ部を受容するように構成されている。そのような薄型のコンバージョンキットの一例として、C.R.バード社(C.R. Bard, Inc.)の子会社であるバードノルディック社(Bard Nordic)(Helsingborg, Sweden)から市販されているガードラージニー(Gauderer Genie)(登録商標)PEGシステムキットが挙げられる。
【0011】
患者が経腸栄養投与の準備ができたら、スナップ式チューブコネクタを逆流防止弁アセンブリに押し付けることによりチューブコネクタのリップ部を円形台座の上から円形台座の下に形成された凹部へ嵌め込むことによって、スナップ式チューブコネクタを逆流防止弁アセンブリにスナップフィットさせる。栄養補給が完了したら、1組の互いに対向配置された補強イヤー部を引き出すかまたは引っ張ることによってスナップ式チューブコネクタを取り外す。チューブコネクタの取り付け及び取り外しは、1組の互いに対向配置されたスロットにより容易に行うことができる。該スロットは、互いに対向配置されたイヤー部の一方または両方に力が加えられたときに、スナップ式コネクタの中央部分のみの軸線方向及び半径方向の歪み及びたわみを増大させる。
【0012】
そのような薄型の経腸栄養ヘッド部またはベース部にスナップ式コネクタを接続すること、交換すること及び/または取り外すことは、少なくとも従来のインターロッキングアダプタと同じ理由により、驚くほど困難な作業であり得る。さらに、スナップ式コネクタをヘッド部に押し付けるため及びヘッド部から取り去るための力を印加することで、経腸栄養器具に直接的に力が伝わり、それによって不快感が生じたり敏感なストーマ部位が刺激されたりする可能性がある。ヘッド部は薄型でかつ大きさが比較的小さいために(例えば、通常は直径約13〜25mm)、スナップ式コネクタの互いに対向配置されたイヤー部は、ヘッド部の端部を越えて延出し、患者の皮膚に隣接または接触し得るので、イヤー部を指で挟んだり掴んだりすることが困難になる。
【0013】
したがって、円形ハブを有するカテーテル器具のヘッド部に医療用流体供給チューブを結合させるためのコネクタが必要とされている。例えば、経腸栄養延長セットコネクタであって、ユーザまたは医療提供者が経腸栄養器具のベース部に経腸栄養延長セットを円滑に接続すること及び取り外すことを可能にするものが必要とされている。そのようなシステムを用いることで、ユーザまたは医療提供者は、望ましくはベース部を見る必要なしに、使用済みのコネクタの取り外し及び新たなコネクタの接続を円滑にかつ確実に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,019,746号明細書
【特許文献2】米国特許第5,549,657号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記した困難及び問題を踏まえて、本発明は、カテーテル器具(例えば経腸栄養器具)のベース部が円形ハブを備え、該円形ハブが半径、上面、周側面及び該周側面に画定された周凹部を有している場合に、カテーテル器具のベース部に医療用流体供給チューブ(「チューブ」)を結合させるためのコネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のコネクタは、上面及び下面を有しかつ中央領域及び周囲領域を含むキャップから構成されている。キャップは、キャップの周囲領域から中央領域に向かって延在する少なくとも2つのスロットを画定し、これらのスロットによって、弾性材料製であるかまたは少なくとも弾性部分を有する少なくとも1つのローブ部(lobe)が画定されている。該少なくとも1つのローブ部は、キャップの周囲領域及び下面の一部にそれぞれ一致する周囲領域及び下面と、該周囲領域に設けられかつ上面から外向きに突出する持ち上げ用タブと、下面から内向きに突出する係合部とを含む。係合部は、円形ハブの周側面に画定された周凹部に係脱可能に係合するように構成されている。円形ハブへのコネクタの結合は、コネクタを円形ハブの上に置き、円形ハブの周側面に画定された周凹部に係合部が係合するまでコネクタを下向きに(すなわち経腸栄養器具に向けて)押すことによって行う。円形ハブからのコネクタの取り外しは、持ち上げ用タブを持ち上げる(またはいくつかの実施形態では圧迫(squeezing)する)ことによりローブ部の周囲領域をキャップの中央領域及び円形ハブから十分に離れる方向に引き伸ばし、それによってローブ部のそれぞれの係合部を周凹部から離脱させることによって行う。本発明の一態様では、各係合部は、円形ハブの周側面に画定された周凹部に係脱可能に係合するように構成された上面と、下面とを有し得る。下面は面取りされている。
【0017】
コネクタは、経腸栄養器具のベース部上の円形ハブに回転可能に結合される。すなわち、経腸栄養器具のベース部に結合されたときに、コネクタは、意図的にではなく経腸栄養カテーテル器具から外れたり経腸栄養器具が捻られたりすることなしに、円形ハブの周りをいずれかの回転方向に完全に回転することができる。コネクタは、チューブを捩ることや経腸栄養器具に力を伝えることを回避するために、捩り力、トルクまたは他の力を受けて容易に変位し得るように、比較的小さい回転抵抗を与えることが望ましい。
【0018】
導管は、コネクタを貫通する流体通路を形成することができ、かつ経腸栄養器具のルーメンへ栄養溶液を供給するように構成することができる。流体通路は、互いに対向する持ち上げ用タブ間に空間的に配置することができる。流体通路は、経腸栄養器具のルーメンに対して概ね垂直な1つの部分を有するように、90度曲げ部(ベンド)を画定し得る。あるいは、流体通路を経腸栄養器具のルーメンと同じ向きになるように構成してもよい。そのような構成は、栄養溶液のボーラス投与に望ましい。コネクタの近位端における導管は、経腸栄養器具の留置カテーテルを介して栄養溶液を供給するべくハブに画定された通路開口部に係合するように構成されたノズルの形態をとり得る。あるいは、導管は、経腸栄養器具の留置カテーテルへ栄養溶液を供給するべく、ハブの表面から突出しているノズルに係合するように構成することもできる。
【0019】
コネクタは、コネクタのピッチング動及び/またはローリング動(すなわち、コネクタの周囲部分が上方または下方へ移動し得るように、及びコネクタの互いに対向する周囲部分が互いに反対方向に変位し得るように、ハブに画定された通路開口部に平行な、及びハブの上面またはベース部の上面に垂直な軸線の周りの運動または振動)を制限するための変位制限部をさらに含むことができる。これらの変位制限部は、ハブの上面または経腸栄養器具のベース部の上面に接触するように構成することができる。
【0020】
本発明の一態様では、キャップは、キャップの周囲領域から中央領域に向かって延在する2つのスロットを有することができ、これらのスロットによって、弾性的であるかまたは弾性部分を有する2つのローブ部が画定される。キャップは、キャップの周囲領域から中央領域に向かって延在する3つのスロットを有することができ、これらのスロットによって3つのローブ部が画定されており、それらは互いに隣接するかまたは向かい側に位置しており、そのうちの1つのローブ部において少なくとも1つの弾性部分を有する。この他にもスロット及びローブ部の組合せが考えられる。
【0021】
本発明の別の態様では、各ローブ部は、円形ハブの周側面に画定された周凹部と係合部との係合が目視できるように、係合部の上方に位置するポートを有することもできる。本発明の別の態様では、各ローブ部のそれぞれの持ち上げ用タブに約2〜14ニュートンの力が加えられたときに各ローブ部を可逆的に変位させることができる。
【0022】
本発明はまた、経腸栄養アセンブリを含む。経腸栄養アセンブリは、(i)経腸栄養器具であって、ベース部と、該ベース部を貫通して配置されたルーメンを持つ少なくとも1つの留置カテーテルまたはチューブとを含み、ベース部が、半径、上面、周側面及び該周側面に画定された周凹部を有する少なくとも1つの円形ハブを有する経腸栄養器具及び、(ii)経腸栄養延長セットであって、経腸栄養器具のベース部に経腸栄養延長セットを回転可能に結合させるための既に概略的に説明したようなコネクタを備え、該コネクタによって経腸栄養延長セットと経腸栄養器具のルーメンとの間の流体連通を可能にしている経腸栄養延長セットから構成されている。
【0023】
本発明は、経腸栄養延長セットをさらに含む。経腸栄養延長セットは、医療用流体供給チューブ及び該チューブに流体連通されているコネクタを含み、円形ハブを有する経腸栄養器具と併用されるように構成されているコネクタは、既に概略的に説明したようなコネクタである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】円形ハブを有する経腸栄養器具に経腸栄養延長セットを結合させるための例示的なコネクタを示す斜視図である。この例示的なコネクタは、1つのローブ部を有している。
図1B】円形ハブを有する経腸栄養器具に経腸栄養延長セットを結合させるための別の例示的なコネクタを示す斜視図である。この例示的なコネクタは、2つの互いに対向配置されたローブ部を有している。
図1C】円形ハブを有する経腸栄養器具に経腸栄養延長セットを結合させるためのさらに別の例示的なコネクタを示す斜視図である。この例示的なコネクタも2つの隣接するローブ部を有し、かつ非変形部分を有している。
図1D】円形ハブを有する経腸栄養器具に経腸栄養延長セットを結合させるための別の例示的なコネクタを示す斜視図である。この例示的なコネクタは、3つのローブ部を有している。
図2】円形ハブを有する経腸栄養器具の上方に位置する図1Aの例示的なコネクタを示す斜視図である。
図3】経腸栄養器具のベース部上の円形ハブに結合された図1Bの例示的なコネクタを示す斜視図である。
図4A】円形ハブを有する経腸栄養器具に経腸栄養延長セットを結合させる前の、例示的なコネクタの詳細を示す斜視図である。
図4B】円形ハブを有する経腸栄養器具に経腸栄養延長セットを結合させた状態の、例示的なコネクタの詳細を示す斜視図である。
図5A図3の経腸栄養器具のベース部上の円形ハブに結合された例示的なコネクタの詳細を示す5−5線断面図である。
図5B】別の例示的なコネクタの詳細を示す断面図である。
図5C】別の例示的なコネクタの詳細を示す斜視図である。
図6】導管を含む例示的なコネクタの詳細を示す斜視図である。
図7図6の導管を含む例示的なコネクタの詳細を示す7−7線断面図である。
図8】例示的なコネクタの一部の詳細を示す垂直断面図である。
図9図1Aの例示的なコネクタの下面図である。
図10】例示的なコネクタを示す側面斜視図であり、ここでは、流体通路を形成する導管の近位端及び遠位端がともに、経腸栄養器具のルーメンと軸線方向に整合されており、かつ経腸栄養器具のベース部に係合されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、1若しくは複数の実施形態について詳細に言及する。実施形態の例を図面に示す。当然のことながら、1つの実施形態の一部として図示または記載されている特徴部を別の実施形態とともに使用することにより、さらに別の実施形態を作り出すことができる。特許請求の範囲は、本発明の範囲及び趣旨の範囲内にあるものとしてこれら及び他の変更形態及び変形形態を含むものとする。
【0026】
ここで図面を見てみると、図1Aないし図1Dは、円形ハブを有するカテーテル器具(例えば経腸栄養器具)のベース部に医療用流体供給チューブ(すなわち、チューブ)を結合させるための例示的なコネクタを示す斜視図である。本明細書においては、「流体」なる語は、液体、気体及び両者の組合せを含む。液体の例には、チューブを介して患者に供給することができる栄養液が含まれる。気体の一例は、患者の胃または腸から放出されたガスであり得る。コネクタ10(「経腸栄養延長セットコネクタ」または「経腸栄養チューブコネクタ」または「チューブコネクタ」と呼ばれることもある)は、キャップ12を有する。
【0027】
キャップ12は、上面14、下面16、中央領域18及び周囲領域20を有する。キャップはまた、キャップ12の周囲領域20から中央領域18に向かって延在する少なくとも2つのスロット22を画定する。スロット22によって、少なくとも1つのローブ部26が画定されている。ローブ部26は、ローブ部またはローブ部の領域を構成する弾性材料の屈曲によって可逆的に変位させられるように構成されている。本明細書においては、「弾性(的)」なる語は、材料が曲がったり、伸びたり、圧縮されたりした後で、跳ね返ったり元の形状に戻ったりすることができる能力を指す。本発明に関しては、キャップの少なくとも1つまたは複数の弾性的なローブ部は、可逆的に変位させることができる弾性材料製である。適切な材料には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、高密度及び低密度ポリエチレン、ポリウレタン並びにシリコーンであって、硬くもなく「脆弱」でもないものが含まれる。これらの材料の混合物を用いることもできる。これらの材料は、容易に変位可能でかつ元の形状または状態に戻ることになるリビングヒンジまたはフラップを形成することが望ましい。
【0028】
図1Aは、2つのローブ部26を画定する2つのスロット22を示しており、キャップのその他の部分24は、ローブ部ではないが、ローブ部26と同様に円滑にまたは容易に可逆的に変位させることができる。2つのローブ部26はともに、全体が弾性材料で作られたものであってよい。図1Bは、2つのローブ部26を画定する2つのスロット22を有する例示的なコネクタを示す斜視図である。すなわち、2つのローブ部26は、実質的にキャップ12全体を形成することができ、円滑にまたは容易に可逆的に変位させることができる。他の適切な実施形態では、ローブ部は、1つの領域において弾性的であるが別の領域では非弾性的であってよく、例えば、周囲領域20の近傍では弾性的であり、中央領域18に向かって弾性が低くなるかまたは非弾性的になるようにしてもよい。図1Cは、2つのローブ部26を画定する3つのスロット22を有する例示的なコネクタを示す斜視図である。すなわち、2つのローブ部26は、キャップ12全体の大部分を占め、円滑にまたは容易に可逆的に変位させられ、キャップの残りの部分24はより小さな部分を占め、ローブ部26と同じように円滑にまたは容易に可逆的に変位することはない。図1Dは、3つのローブ部26を画定する3つのスロット22を有する例示的なコネクタを示す斜視図である。すなわち、3つのローブ部26は、実質的にキャップ12全体を形成しており、円滑にまたは容易に可逆的に変位させられる。例えば、キャップ全体及びローブ部は弾性材料製である。キャップ12及びスロット22をフレキシブルな薄膜で覆うかまたはスロット22を弾性的な発泡材料で満たすこともできると考えられる。しかし、スロットは、キャップ12を完全に貫通する隙間または取り囲まれていない開口であり、3つのローブ部26を、互いから独立して可逆的に変位させることができるように構造的に分離するために存在することが望ましい。
【0029】
各ローブ部26は、周囲領域20から(キャップ12から)外向きに延出または突出している持ち上げ用タブ28(突出部、舌部などと呼ばれることもある)を含む。各ローブ部26はまた、周囲領域20において(キャップ12から)内向きに延出または突出している係合部30を含む。
【0030】
本発明のコネクタは、チューブ34から経腸栄養器具36のルーメンへ栄養溶液を移動させるための流体通路を形成する導管32を含むこともできる。
【0031】
図1Aの例示的なコネクタ10を経腸栄養器具36の上方に配置した状態を図2に示す。経腸栄養器具36はベース部38を備え、ベース部38は円形ハブ40を有する。円形ハブは、半径「R」、上面42、周側面44、及び周側面44に画定された周方向に延在する凹部(周凹部)46を有する。換言すれば、円形ハブ40においては、概ね垂直な周側面44を越えて概ね水平な上面42を延出させることによって、リム、カラー、リブまたはフランジ構造体48が形成されており、それによって、コネクタ10の係合部30に係合する大きさを持つ周凹部46を画定している。半径「R」は、ハブ40の中心から、周凹部46を画定するリム、カラー、リブまたはフランジ構造体48を形成する上面42の部分の最外縁部「E」までの距離である。円形ハブ40には、ハブの中心において、通路開口部またはオリフィス「O」も含まれている。円形ハブ40にコネクタ10が係合されていないときには、バルブ「V」を用いてオリフィス「O」を密閉することが望ましい。
【0032】
概して言えば、係合部30は、円形ハブ40の周側面44に画定された周凹部46に係脱可能に係合するように構成されている。円形ハブ40へのコネクタ10の結合は、コネクタ10を円形ハブ40上に置き、円形ハブの周側面に画定された周凹部に係合部が係合するまでハブにコネクタを押し付けることによって行われる。係合部30は、図1Aのコネクタの下面図である図9において、より詳しく見ることができる。この特定のコネクタでは、2つの係合部30のうちの一方がローブ部26に配置され、もう一方がキャップ12の非変形部分24に配置されている。ローブ部26及び/またはキャップ12の非変形部分24に2つ以上の係合部を配置してもよいと考えられる。図1A及び図9に示したコネクタの場合、円形ハブの周側面に画定された周凹部に2つの係合部がともに係合するまでコネクタを押し下げると、弾性領域が屈曲または変形することによってローブ部26が変位する。これによって、キャップ12の非変形部分24に設けられた係合部30がリム、カラー、リブまたはフランジ構造体48を形成する上面42の最外縁部「E」を通過する際に、キャップを水平方向に僅かに移動または変位させることができ、円形ハブ40上にコネクタ10を固定することができる。当然のことながら、持ち上げ用タブ28を圧迫するかまたは持ち上げてローブ部26の弾性領域を変形させることでローブ部26に設けられた係合部30がリム、カラー、リブまたはフランジ構造体48を形成する上面42の最外縁部「E」をうまく通過するようにし、その後、コネクタ10を円形ハブ40上にしっかりと置き、持ち上げ用タブ28に対する圧迫力または持ち上げ力を除くことで係合部30を周凹部46に係合させ、それによってコネクタ10を円形ハブ40に結合させることもできる。係合部30は、周凹部46を画定するリム、カラー、リブまたはフランジ構造体48を形成する概ね垂直な周側面44の上側に延在する概ね水平な上面42の下側(図示せず)に係脱可能に係合するように構成されている。
【0033】
図1Bないし図1Dに示したコネクタに関しては、係合部30をローブ部26のみに配置することができる。しかし、係合部のうちのいくつかをローブ部ではないキャップの非変形部分24(非変形部分が存在し得る場合)に配置することもできると考えられる。但し、その場合には、キャップの非変形部分に係合部を配置することが円形ハブにコネクタを結合させることを妨げないことを条件とする。係合部をキャップの非変形部分に配置する場合には、コネクタ10を円形ハブ40上に置き、円形ハブの周側面に画定された周凹部に係合部が係合するまでコネクタを押し下げることによってコネクタを円形ハブ40に結合させることができるように、係合部をローブ部と反対側のキャップ部分に配置すべきである。コネクタに加えられる下向きの圧力または力によって係合部30は滑らかに動いて円形ハブ40のリム、カラー、リブまたはフランジ構造体48を形成する上面42の縁部「E」を通り過ぎることができるが、そのような下向きの圧力または力がコネクタに加えられると、キャップ12のローブ部26は容易に曲がる。経腸栄養器具36のベース部38上の円形ハブ40にコネクタを結合させるべく、係合部30は、円形ハブ40の周側面44に画定された周凹部46に係合する。係合部30は、周凹部46を画定するリム、カラー、リブまたはフランジ構造体48を形成する概ね垂直な周側面44の上側に延在する概ね水平な上面42の下側(図示せず)に係脱可能に係合するように構成されている。
【0034】
図1A及び図9に示したコネクタをハブから取り外すには、持ち上げ用タブ28を持ち上げることでローブ部26及びその係合部30を半径方向に(例えば、半径方向外向きに)可逆的に変位させて周凹部46から離脱させる。円形ハブ40に係合させたコネクタ10を離脱させるためには、キャップの非変形部分24に設けられた係合部30がリム、カラー、リブまたはフランジ構造体48を形成する上面42の最外縁部「E」を通過する際に、キャップの僅かな水平方向の移動または変位が必要とされ得る。図1Bないし図1Dに示したコネクタに関しては、持ち上げ用タブ28を持ち上ることでそれぞれの係合部30を半径方向外向きに可逆的に変位させて周凹部46から離脱させ、それによってコネクタを円形ハブ40から取り外すことができる。すなわち、係合部30は、ローブ部にのみ配置されていることが望ましいであろう。持ち上げ用タブ28が持ち上げられるかまたは上向きに付勢された場合、ローブ部26は、自身の弾性領域の変形により可逆的に変位させられ、それぞれの係合部30が半径方向外向きに円形ハブ40から遠ざかる方向に変位し、それによって、円形ハブ40の周側面44に画定された周凹部46から離脱される。図1Bないし図1Dに示したコネクタが、キャップの非変形部分24に配置された1つ以上の係合部をも有する場合には、円形ハブ40に係合させたコネクタ10を離脱させるために、キャップの非変形部分24に設けられた係合部30がリム、カラー、リブまたはフランジ構造体48を形成する上面42の最外縁部「E」を通過する際に、キャップの僅かな水平方向の移動または変位が必要とされ得る。本発明の一態様では、ローブ部のそれぞれの持ち上げ用タブに約2〜14ニュートンの力が加えられることによって可逆的に変位し得るように、各ローブ部は、弾性材料からなる少なくとも1つの領域を含むようにしてもよい。例示的な材料には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、高密度及び低密度ポリエチレン、ポリウレタン並びにシリコーンであって、硬くもなく「脆弱」でもないもの、及びそれらの組合せ/混合物が含まれる。ローブ部は、キャップの他の部分よりも薄い領域を有し得ると考えられる。また、ローブ部は、可逆的に変形可能であるように、その弾性特性を高めるためまたは弾力の大きさ及び/または存在場所を制御するために、漸変する厚さまたは様々なレベルの厚さを有し得ると考えられる。本発明の特徴は、ローブ部が弾性的であることと、キャップに係合及び離脱させるためにローブ部を可逆的に変形可能であるようにしたことである。(例えばストーマ部位の)刺激を与え得る力を患者に伝達することを回避するため及び不必要に高いレベルの力を必要とせずに確実な接続/取り外しを可能にするために、(キャップ全体が弾性を有することを必要とするのではなく)キャップのローブ部の弾性を調整することにより、コネクタ及び円形ハブの係合及び離脱に必要な力をより慎重に制御することができると考えられる。
【0035】
本発明のコネクタは、経腸栄養器具のベース部上の円形ハブに回転可能に結合されることが望ましい。すなわち、コネクタは、経腸栄養器具から外れることなく、または経腸栄養器具を捻ることなく、円形ハブの周りをいずれかの回転方向に完全に回転することができる。コネクタは、抵抗が比較的小さい状態で円形ハブの周りを自由に回転することができるように、回転可能に結合されることが望ましい。図2には、円形ハブ40の周側面44に画定された周凹部46と係合部30との係合が目視できるようにするための、係合部の上方に位置するポートも示されている。
【0036】
ここで図3を参照すると、図1Bのコネクタ10を経腸栄養器具36に結合した状態を示す斜視図が示されている。図3には、任意的なポート50が示されており、ポート50を通して、円形ハブ40の周側面44に画定された周凹部46と係合部30との係合が目視できる。より具体的には、ポート50を通して、リム、カラー、リブまたはフランジ構造体48の最外縁部が見える。これは、ローブ部26に形成されたポート50を明らかにするキャップ12の上面斜視図である図4A及び図4Bにおいてより詳細に示されている。図4A及び図4Bは、キャップ12の上面斜視図であり、ローブ部26に設けられたポート50を明確にしている。図4Aを参照すると、経腸栄養器具にコネクタ10を結合させる前では、ポート50を通して係合部30の一部を見ることができる。図4Bに示したように、経腸栄養器具にコネクタ10を結合させた後では、ポート50を通してリム、カラー、リブまたはフランジ構造体48の最外縁部が見える。それが見えるということにより、コネクタ10と経腸栄養器具36とが係合していることが分かる。
【0037】
ここで図5Aを参照すると、経腸栄養器具36に結合された図3のコネクタ10の詳細を示す5−5線垂直断面図が示されている。この図では、キャップ12は円形ハブ40に接触している。コネクタ10の導管32を貫通して流体通路70が画定され得る。図5Aに見られるように、任意的なポート50を通して、円形ハブ40の周側面44に画定された周凹部46と係合部30との係合が目視できる。より具体的には、ポート50を通して、リム、カラー、リブまたはフランジ構造体48の最外縁部が見える。それに加えて、コネクタ10は、コネクタのピッチング動を制限するための変位制限部80をさらに含むことができる。より具体的には、図5Aの断面図は、1対の変位制限部80であって、キャップ12の一部に対して一体化されているかまたは結合されており、かつハブ40の上面に接触するように構成されているものを示している。変位制限部80が経腸栄養器具36のベース部38の上面82に接触し得るように、キャップ12及び変位制限部80を構成することができると考えられる。その代わりに及び/またはそれに加えて、変位制限部80は、導管32の一部を構成し得るか、より望ましくは非変形部分24の一部を構成し得る。
【0038】
持ち上げ用タブ28は、ユーザが視覚的及び/または触覚的な識別マーク、例えば、バンド、凹凸、突起、ポッチ、ランダムなざらざらした質感、対比色などによって持ち上げ用タブ28を識別するのを助けるための形状(topography)を有し得る。その代わりに及び/またはそれに加えて、コネクタ10のキャップ12は、図1A図1B図1C図1D並びに図2図3及び図6に示されているようなマーク「I」を含み得る。これらのマーク「I」を用いて、取り外しボタンの位置及び/または持ち上げ用タブを押すか、圧迫するかまたは摘まむ方向についての触覚的または視覚的なキューをユーザに提供することができる。
【0039】
図5Bは、例示的なコネクタの詳細を示す垂直断面図である。図5Bは、持ち上げ用タブ28の別の構成を示しており、ここでは、持ち上げ用タブは、コネクタ10のキャップ12の互いに対向する部分に設けられている。この構成では、持ち上げ用タブ28は、係合部30の方向に対して概ね垂直に配置されている。これにより、持ち上げ用タブ28を圧迫すると、ローブ部26の変形及び変位によって回転運動に変換され、それによって係合部30を半径方向外向きに変位させて、円形ハブ40に形成された周凹部46から離脱させる。図5Cは、さらに別の例示的なコネクタの斜視図であり、ここでは、持ち上げ用タブ28が、係合部30の方向に対して概ね垂直に配置されていることを明確にしている。これにより、持ち上げ用タブ28を圧迫すると、ローブ部26の変形及び変位によって回転運動に変換され、それによって係合部30を半径方向外向きに変位させて、円形ハブ40に形成された周凹部46から離脱させる。
【0040】
ここで図6及び図7を参照すると、図6は、コネクタを貫通する流体通路70を画定する導管32を含むコネクタ10の斜視図を示しており、図7は、図6のコネクタを貫通する流体通路70を画定する導管32を含むコネクタ10の7−7線断面図を示している。導管32は、チューブ34から経腸栄養器具36のルーメンへ栄養溶液を供給するように構成されている。流体通路を形成する導管32の近位端72を経腸栄養器具のルーメンと軸線方向に整合させ、その後、90度曲げ部を設けることで、導管32の遠位端74が近位端72に対して概ね垂直に延在するようにし得る。この構成は、ほとんどの栄養補給用途に有用である。あるいは、流体通路を形成する導管32の近位端72を経腸栄養器具のルーメンと軸線方向に整合させ、その後、導管32の遠位端74が近位端に対して軸線方向に整合された状態で延在し続けるようにしてもよい。そのような構成は図10の側面斜視図に示されている。図10は、経腸栄養器具36のベース部38に結合された経腸栄養延長セットのコネクタ10を示している。そのような構成は、栄養溶液のボーラス投与に望ましい。
【0041】
導管32は、図1A図1B図1C図1D図2図5図6及び図7に概略的に示されているようなノズルの形態をとり得る。ノズルは、器具の留置カテーテルによって画定されるルーメンへ栄養溶液を供給するためにハブ40に画定されたオリフィス「O」に係合するように、コネクタの持ち上げ用タブ28の下面によって画定された平面を越えて延出するように構成されている。あるいは、導管32を、栄養溶液を供給するためにハブの上面から突出するノズル(図示せず)に係合させるように構成してもよい。
【0042】
概して言えば、コネクタ10は、円形ハブ40に結合させるために該円形ハブの真上に配置される。コネクタは、円形ハブまで押し下げられると、次に挙げる円形ハブの領域、すなわち上面42、縁部E、フランジ構造体48及び周凹部46に接触して、円形ハブ40に結合される。コネクタに下向きの力が加えられ、係合部30が(図2及び図5に示されているような)円形ハブ40のリムまたはフランジ構造体48の上縁部「E」を摺動通過するときに、キャップ12のローブ部26は容易に曲がる。係合部30は、円形ハブ40の周側面44に画定された周凹部46に係合する。係合部30は、周凹部46を画定するリム、カラー、リブまたはフランジ構造体48を形成する概ね垂直な周側面44の上側に延在する概ね水平な上面42の下側(図示せず)に係脱可能に係合するように構成されている。
【0043】
コネクタ10を円形ハブ40に結合させるために必要な下向きの力は、通常約10ニュートン未満であり、望ましくは約0.1〜8ニュートンである。このような低レベルの力は、非常に重要である。その理由は、下向きの力は、敏感なストーマ部位に存在する経腸栄養器具に直接的に伝達されるからである。この構成は、スナップ式コネクタを所定の位置に結合させるために必要な、より高いレベルの力を回避する。そのような「高い力」によるカップリングコネクタとは異なり、本発明は、敏感なストーマ部位への刺激を回避する。コネクタ係合に用いられる低レベルの力は、運動障害患者、視覚障害患者、またはその他の面で経腸栄養器具を見ることや経腸栄養器具に手を伸ばすことが困難である患者(例えば、肥満患者、運動能力が低下した患者など)の助けとなる。
【0044】
複数のローブ部26及び少なくともこれらのローブ部に配置された係合部30(及び非変形部分に配置され得る係合部)は、ハブの周側面44に画定された周凹部46に係合部30が摺動嵌合したときに、明確な触覚的な合図も出される。コネクタをハブに押し付けると、ローブ部26はハブの上面42に接触して徐々に摺動し、縁部「E」によって画定される範囲に向かって及びその近傍で半径方向に曲がる(逸れる)ので、ローブ部26は抵抗が増してゆく感覚を伝えることができる。そのような抵抗は、係合部が周凹部に入って触覚的な合図が出されたらすぐに無くなる。この行為はまた、係合部が周凹部に正しく配置されたことをユーザに知らせるために、「パチンという音」や「カチッという音」として特徴付けられ得る聴覚的な合図を生じさせ得る。これらの触覚的及び聴覚的な合図は、適切かつ確実な接続がなされたことをユーザ及び医療提供者に伝えるのに役立つ。
【0045】
本発明によれば、持ち上げ用タブ28を持ち上げ、ローブ部26のそれぞれの係合部30を半径方向外向きに可逆的に変位させて周凹部46から離脱させることによって、コネクタ10は円形ハブ40から取り外される。持ち上げ用タブ28が持ち上げられるかまたは上向きに付勢された場合、ローブ部26は、それぞれの係合部30を、縁部「E」に位置するかまたは縁部「E」を通過するように、半径方向外向きにかつ円形ハブ40から離れる方向に空間的に変位させる。係合部30の変位は、ローブ部26の弾性領域の屈曲または変形によって生じる。例えば、各ローブ部は、該ローブ部のそれぞれの持ち上げ用タブに約2〜14ニュートンの力が加えられたときに空間的形状が変化するがそれが可逆的であるような材料で製造することができる。
【0046】
ここで図8を参照すると、ローブ部26の例示的な詳細を明らかにする図である垂直断面図が示されている。各持ち上げ用タブ28は、指接触領域104を形成するかまたは含むような外面、外表面または外向きの面102を備えた第1の部分100を有する。さらに、各持ち上げ用タブ28は、係合部30を形成するかまたは含むような内面、内表面または内向きの面108を備えた第2の部分106を有する。係合部30は、円形ハブの周側面に画定された周凹部に係脱可能に係合するように構成されている。各係合部30は、上面110を有し得ることが望ましい。上面110は、周凹部46を画定するリム、リブまたはフランジ構造体48の下側(図示せず)に隣接するように構成されている。各係合部は、下面112をも有し得る。下面112の一部は、面取り部114を有することが望ましい。面取り部114は、コネクタ10が下向きに円形ハブ40に押し付けられたときにより容易な取り付けを可能にするのに十分な角度を与えるように調整することができる。面取り部114の存在は、不快感を生じさせかつ敏感なストーマ部位を刺激する力が加わることを回避する助けとなる。持ち上げ用タブ28の第2の部分106は、係合部30に隣接する任意的なボス116をさらに含むことができる。ボス116の目的は、コネクタ10がベース部38に結合されるときにローブ部26を僅かに変位させることである。この変位は、ローブ部26に張力または負荷を与え、それが係合部30に伝達されてコネクタ10が円形ハブに固定されるので、コネクタ10は、揺動したりガタガタ音を立てたりせず、なおかつ比較的低いレベルの力を受けて回転することができる。
【0047】
上記したように、コネクタにはキャップ12が含まれる。キャップ12は、二枚貝形状またはボウル(椀)形状を有し得る。複数のローブ部26(及び任意的な非変形または非弾性の部分またはローブ部24)が単一的または一体的であるように、キャップ12を単一要素として形成することもできる。本発明の一態様では、持ち上げ用タブ28及び係合部30をローブ部に結合させることができ、より望ましくは、複数のローブ部26を備えた一体部品またはより望ましくはローブ部26及び非変形ローブ部24を備えた一体部品(すなわちキャップ12)として形成することもできる。あるいは、キャップ12の様々な構造部材は全て、別々に形成して後から接着、融合、オーバーモールド成形などを含む技術(単独または組合せ)によって結合させることもできる。
【0048】
ここで図9を参照すると、図1Aの例示的なコネクタ10の、キャップ12の下面16を示す下面図が示されている。この図では、複数の任意的な動作スタビライザ80がキャップ12の周囲領域20に沿って配置されている。図9に見られるように、ローブ部26に1つの係合部30が配置されており、ローブ部26のちょうど反対側のキャップ12の非変形部分24にも1つの係合部30が配置されている。図9には、ポート50は示されていない。
【0049】
本発明によれば、コネクタ10は、円形ハブ40に「回転可能に結合」されている。すなわち、コネクタは、経腸栄養器具のベース部に結合された場合に、円形ハブの全周を自由に回転する。コネクタは、キー溝、溝、スロットなどの機構、または同様のものに衝当する位置または場所を通過すればコネクタが意図的ではなく離脱されることになるであろうし、停止部材、ディテントなどの機構、または同様のものに衝当すればハブを中心とする全周回転が阻止または防止され、それによって経腸栄養器具が捻られることになるであろうが、本発明のコネクタは、前者及び/または後者のようになることなく、ハブの全周を自由に回転するように構成されている。経腸栄養器具が捻じれたり回動したりしないように、コネクタは、抵抗がほとんどまたは全く生じないようにしながら、ハブの全周を複数回回転するように構成されていることが望ましい。
【0050】
本発明には、経腸栄養アセンブリも含まれる。経腸栄養アセンブリは、(i)経腸栄養器具であって、ベース部と、該ベース部を貫通して配置されたルーメンを持つカテーテルとを含み、ベース部が、半径、上面、周側面及び該周側面に画定された周凹部を有する円形ハブを有するもの及び(ii)経腸栄養器具のベース部に回転可能に結合させるためのコネクタを備えた経腸栄養延長セットから構成されている。コネクタについては、既に概略的に説明したとおりである。
【0051】
本発明にはさらに、経腸栄養延長セットも含まれる。経腸栄養延長セットは、医療用流体供給チューブと、円形ハブを有する経腸栄養器具と併用するためのコネクタとを含む。コネクタについては、既に概略的に説明したとおりである。
【0052】
本発明について特定の好適実施形態に関連して説明してきたが、本発明に包含される主題は、そのような特定の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。それとは逆に、本発明の主題は、発明の趣旨及び特許請求の範囲に含まれ得る全ての代替形態、変更形態及び等価形態を含むことを意図している。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10