特許第6383372号(P6383372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383372
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/23 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   F16L37/23
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-9970(P2016-9970)
(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公開番号】特開2017-129229(P2017-129229A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】松本 恭輔
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−083986(JP,U)
【文献】 特開2014−169718(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0261818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する雄型管継手部材に取り外し可能に連結される雌型管継手部材であって、
雄型管継手部材が挿入される前端開口から後方に延在する流体通路を有する筒状の継手本体と、
該継手本体に該継手本体の径方向で変位可能に保持され、該継手本体の内周面から内側に突出して該流体通路内に挿入された雄型管継手部材を係止する施錠位置と、該施錠位置よりも外側に位置し該雄型管継手部材への係止を解除する施錠解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
該継手本体の外周面上に配置され、該施錠子に径方向外側から係合して該施錠子を該施錠位置に保持する中間保持位置と、該中間保持位置よりも前方に位置し該施錠子が該施錠解除位置となることを許容する前方解放位置と、該中間保持位置よりも後方に位置し該施錠子が該施錠解除位置となることを許容する後方解放位置との間で、該継手本体の長手軸線の方向で変位可能とされたスリーブと、
該継手本体と該スリーブとの間に配置され、該スリーブを該中間保持位置に向かって付勢するスプリングと、
を備え
該スリーブが、該中間保持位置において、該後方解放位置への変位が許容される後退許容位置と、該前方解放位置への変位は許容されるが該後方解放位置への変位は阻止される後退阻止位置との間で、該継手本体の周方向で回動可能とされ、
該継手本体と該スリーブとのうちの一方が、他方に向かって突出する係止突起を有し、該他方が該係止突起を受け入れる突起受部を有し、
該突起受部が、該スリーブが該中間保持位置において該後退許容位置と該後退阻止位置との間で回動したときに該係止突起が通る周方向中間通路と、該スリーブが該後退許容位置において該中間保持位置から該後方解放位置に変位したときに該係止突起が通るように該周方向中間通路から前方に延在する長手方向前方通路と、該スリーブが該後退阻止位置において該中間保持位置から該前方解放位置に変位したときに該係止突起が通るように該周方向中間通路から後方に延在する長手方向後方通路と、を有しており、
該スリーブが該後退阻止位置において該中間保持位置から該後方解放位置に向かって動かされたときには、該係止突起が該他方に該長手軸線の方向で当接して該スリーブが該後方解放位置にまで変位することが阻止され、該スリーブが該後退許容位置において該前方解放位置に向かって動かされたときには、該係止突起が該周方向中間通路において該他方に該長手軸線の方向で当接して該スリーブが該前方解放位置にまで変位することが阻止されるようにされた、雌型管継手部材。
【請求項2】
該スプリングの一端が該継手本体に該周方向で固定されるように保持され、該スプリングの他端が該スリーブに該周方向で固定されるように保持されており、該スプリングが該スリーブを該後退阻止位置と該後退許容位置との間の前進後退阻止位置に向かって付勢するようにされており、
該スリーブが該前進後退阻止位置において該前方解放位置及び該後方解放位置に向かって動かされたときには、該係止突起が該周方向中間通路において該他方に該長手軸線の方向で当接して該スリーブが該前方解放位置及び該後方解放位置にまで変位することが阻止されるようにされた、請求項に記載の雌型管継手部材。
【請求項3】
該継手本体の外周面が、前方に面する第1支持面と、該第1支持面よりも前方の位置において後方に面する第2支持面とを有し、
該スリーブの内周面が、前方に面する第3支持面と、該第3支持面よりも前方の位置において後方に面する第4支持面とを有し、
該スプリングが、該第1支持面と該第2支持面との間であり且つ該第3支持面と第4支持面との間である位置に設定され、
該スリーブが該中間保持位置から前方に変位したときには、該スプリングは該第2支持面と該第3支持面との間で圧縮されて該スリーブを該継手本体に対して後方に付勢し、該スリーブが該中間保持位置から後方に変位したときには、該スプリングは該第1支持面と該第4支持面との間で圧縮されて該スリーブを該継手本体に対して前方に付勢するようにされた、請求項1又は2に記載の雌型管継手部材。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の雌型管継手部材と、
該雌型管継手部材の該流体通路内に挿入されて該雌型管継手部材に取り外し可能に連結される雄型管継手部材と、
を備える管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関し、より詳細には、雄型管継手部材と雌型管継手部材との着脱を迅速且つ簡易に行うことが可能な管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配管同士の着脱を迅速に行うようにすることを可能とする、雄型管継手部材と雌型管継手部材とからなる管継手が知られている。このような管継手の雌型管継手部材は、例えば特許文献1に開示されているように、通常、流体通路を有する筒状の継手本体と、継手本体に径方向で変位可能に保持された施錠子と、継手本体の外周面上で前後方向に摺動可能に配置されたスリーブと、スリーブを継手本体に対して前方に付勢するスプリングとを備える。スリーブが前方位置にあるときには施錠子はスリーブによって継手本体の内周面から突出した位置に保持され、スリーブが後方位置にあるときには施錠子は径方向外側に自由に変位可能な状態となる。雌型管継手部材を雄型管継手部材に連結する際には、スリーブをスプリングの付勢力に抗して後方位置に変位させてそれを保持した状態で、雌型管継手部材の流体通路内に雄型管継手部材が挿入されるようにする。また、雌型管継手部材を雄型管継手部材から分離する際には、スリーブをスプリングの付勢力に抗して後方位置に変位させてそれを保持した状態で、雌型管継手部材を雄型管継手部材から引き離すようにする。
【0003】
なお、特許文献1に開示の管継手においては、スリーブが後方位置に変位することを阻止するようにしたロック機構が設けられている。具体的には、継手本体に突起部を設け、スリーブに突起部を受け入れる大きさの切欠き部を設けて、スリーブの周方向位置が切欠き部と突起部とが整列する位置となっているときにだけスリーブを後方に引くことができるようになっている。連結後にスリーブを回転させて切欠き部が突起部からずれた位置となるようにすることで、連結状態においてスリーブが誤って後方に引かれて雌型管継手部材と雄型管継手部材との連結が不意に解除されることがなくなるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−169718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような従来の管継手における雌型管継手部材と雄型管継手部材とを互いに連結する際には、スリーブを後方に引いている状態で雌型管継手部材を雄型管継手部材に向けて移動させなければならない。スリーブを引く方向と雌型管継手部材を移動させる方向とが逆であるため、このような操作を行うには、スリーブを継手本体に対して後方位置に保持するように把持しつつ継手本体も把持した状態で、雌型管継手部材を雄型管継手部材に向けて移動させて連結するようにしなければならないが、このような操作は片手ではやりづらく、また両手で行うと雄型管継手部材を保持することができなくなり、連結操作を迅速且つ簡易に行うことができなくなる虞がある。
【0006】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、より迅速且つ容易に連結および離脱の操作をすることが可能となる雌型管継手部材、及び該雌型管継手部材とそれに連結される雄型管継手部材とからなる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
対応する雄型管継手部材に取り外し可能に連結される雌型管継手部材であって、
雄型管継手部材が挿入される前端開口から後方に延在する流体通路を有する筒状の継手本体と、
該継手本体に該継手本体の径方向で変位可能に保持され、該継手本体の内周面から内側に突出して該流体通路内に挿入された雄型管継手部材を係止する施錠位置と、該施錠位置よりも外側に位置し該雄型管継手部材への係止を解除する施錠解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
該継手本体の外周面上に配置され、該施錠子に径方向外側から係合して該施錠子を該施錠位置に保持する中間保持位置と、該中間保持位置よりも前方に位置し該施錠子が該施錠解除位置となることを許容する前方解放位置と、該中間保持位置よりも後方に位置し該施錠子が該施錠解除位置となることを許容する後方解放位置との間で、該継手本体の長手軸線の方向で変位可能とされたスリーブと、
該継手本体と該スリーブとの間に配置され、該スリーブを該中間保持位置に向かって付勢するスプリングと、
を備える雌型管継手部材を提供する。
【0008】
当該雌型管継手部材においては、スプリングによって中間保持位置に向かって付勢されているスリーブを中間保持位置から前方に変位させて前方解放位置とすることにより施錠子が施錠解除位置へと変位可能となって雄型管継手部材との連結が可能となる。したがって、スリーブを把持して雌型管継手部材を雄型管継手部材に押しつけるようにするだけで、雄型管継手部材に当接した継手本体に対してスリーブは相対的に前方に変位して前方解放位置となり、雌型管継手部材は雄型管継手部材に連結されるようになる。これにより従来の管継手にみられた上述のような連結操作のやりにくさは解消され、より迅速且つ容易に連結操作を行うことが可能となる。また、連結された状態においてスリーブを後方に引くとスリーブは継手本体に対して後方に変位して施錠子が施錠解除位置へ変位可能な後方解放位置となるため、スリーブを後方に引くだけで雌型管継手部材は雄型管継手部材から離脱できる。よって、上述のように接続時の操作性を向上させながら、離脱時の操作性は従来の管継手と同等となる。
【0009】
好ましくは、該スリーブが、該中間保持位置において、該後方解放位置への変位が許容される後退許容位置と、該前方解放位置への変位は許容されるが該後方解放位置への変位は阻止される後退阻止位置との間で、該継手本体の周方向で回動可能とすることができる。
【0010】
スリーブを後退阻止位置とすることでスリーブが後方解放位置に変位しないようになるため、連結状態においてスリーブを後退阻止位置とすることで誤ってスリーブが後方に引かれて連結が解除されてしまうことが防止される。また、スリーブを後退阻止位置とした状態で当該雌型管継手部材を雄型管継手部材に連結するようにすれば、連結が完了した時点でスリーブを後方に引いて連結を解除することができない状態となるため、従来の管継手においては必要であった連結後にスリーブをロックするための操作が必要なくなる。これにより、スリーブをロック状態とすることを忘れてスリーブを後方に引くことが可能な状態のままにされる可能性が低減される。
【0011】
具体的には、
該継手本体と該スリーブとのうちの一方が、他方に向かって突出する係止突起を有し、該他方が該係止突起を受け入れる突起受部を有しており、
該スリーブが該後退許容位置において該中間保持位置から該後方解放位置に向かって動かされたときには該係止突起が該突起受部を通り該スリーブは該後退解放位置にまで変位され、該スリーブが該後退阻止位置において該中間保持位置から該後方解放位置に向かって動かされたときには、該係止突起が該他方に該長手軸線の方向で当接して該スリーブが該後方解放位置にまで変位することが阻止されるようにすることができる。
【0012】
具体的には、
該突起受部が、該スリーブが該中間保持位置において該後退許容位置と該後退阻止位置との間で回動したときに該係止突起が通る周方向中間通路と、該スリーブが該後退許容位置において該中間保持位置から該後方解放位置に変位したときに該係止突起が通るように該周方向中間通路から前方に延在する長手方向前方通路と、該スリーブが該後退阻止位置において該中間保持位置から該前方解放位置に変位したときに該係止突起が通るように該周方向中間通路から後方に延在する長手方向後方通路と、を有し、
該スリーブが該後退許容位置において該前方解放位置に向かって動かされたときには、該係止突起が該周方向中間通路において該他方に該長手軸線の方向で当接して該スリーブが該前方解放位置にまで変位することが阻止されるようにすることができる。
【0013】
このような構成により、スリーブは、後退許容位置にあるときには長手軸線の方向では中間保持位置と後方解放位置との間でのみ変位可能となり、後退阻止位置にあるときには長手軸線の方向では中間保持位置と前方解放位置との間でのみ変位可能となる。当該雌型管継手部材を雄型管継手部材に連結する際にはスリーブを後退阻止位置とすることが必要となるため、スリーブを後退許容位置としたまま連結をして連結後にスリーブが後方解放位置に変位可能な状態のままとされることをより確実に防止することが可能となる。
【0014】
好ましくは、
該スプリングの一端が該継手本体に該周方向で固定されるように保持され、該スプリングの他端が該スリーブに該周方向で固定されるように保持されており、該スプリングが該スリーブを該後退阻止位置と該後退許容位置との間の前進後退阻止位置に向かって付勢するようにされており、
該スリーブが該前進後退阻止位置において該前方解放位置及び該後方解放位置に向かって動かされたときには、該係止突起が該周方向中間通路において該他方に該長手軸線の方向で当接して該スリーブが該前方解放位置及び該後方解放位置にまで変位することが阻止されるようにすることができる。
【0015】
具体的には、
該継手本体の外周面が、前方に面する第1支持面と、該第1支持面よりも前方の位置において後方に面する第2支持面とを有し、
該スリーブの内周面が、前方に面する第3支持面と、該第3支持面よりも前方の位置において後方に面する第4支持面とを有し、
該スプリングが、該第1支持面と該第2支持面との間であり且つ該第3支持面と第4支持面との間である位置に設定され、
該スリーブが該中間保持位置から前方に変位したときには、該スプリングは該第2支持面と該第3支持面との間で圧縮されて該スリーブを該継手本体に対して後方に付勢し、該スリーブが該中間位置から後方に変位したときには、該スプリングは該第1支持面と該第4支持面との間で圧縮されて該スリーブを該継手本体に対して前方に付勢するようにすることができる。
【0016】
また本発明は、
上記のいずれかの雌型管継手部材と、
該雌型管継手部材の該流体通路内に挿入されて該雌型管継手部材に取り外し可能に連結される雄型管継手部材と、
を備える管継手を提供する。
【0017】
以下、本発明に係る雌型管継手部材及び管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】本発明の第1の実施形態に係る管継手の連結前の状態における外観図である。
図1B図1Aの管継手の連結途中の状態における外観図であり、雌型管継手部材のスリーブが前方解放位置にあるときの図である。
図1C図1Aの管継手の連結状態における外観図であり、雌型管継手部材のスリーブが中間保持位置かつ後退阻止位置にあるときの図である。
図1D図1Aの管継手の連結状態における外観図であり、雌型管継手部材のスリーブが中間保持位置かつ後退許容位置にあるときの図である。
図1E図1Aの管継手の離脱途中の状態における外観図であり、雌型管継手部材のスリーブが後方解放位置にあるときの図である。
図2A図1のIIa−IIa線における断面図である。
図2B図1のIIb−IIb線における断面図である。
図2C図1のIIc−IIc線における断面図である。
図2D図1のIId−IId線における断面図である。
図2E図1のIIe−IIe線における断面図である。
図3A】本発明の第2の実施形態に係る管継手の連結状態における断面図であり、雌型管継手部材のスリーブが中間保持位置かつ後退阻止位置にあるときの図である。
図3B図3Aの管継手の連結途中の状態における断面図であり、雌型管継手部材のスリーブが前方解放位置かつ後退阻止位置にあるときの図である。
図3C図3Aの管継手の離脱途中の状態における断面図であり、雌型管継手部材のスリーブが後方解放位置かつ後退許容位置にあるときの図である。
図4A図3AのIVa−IVa線における断面図である。
図4B図3CのIVc−IVc線における断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る雌型管継手部材の外観図である。
図6図5の雌型管継手部材のVI−VI線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態に係る管継手100は、図1A−E及び図2A−Eに示すように、互いに取り外し可能に連結される雌型管継手部材110と雄型管継手部材170とからなる。
【0020】
雌型管継手部材110は、図2Aに示すように、前端開口112から後端開口114にまで長手軸線Lの方向に延在する流体通路116を有する筒状の継手本体118と、継手本体118に形成された施錠子保持孔120内に保持された施錠子122と、継手本体118の外周面124上に配置された筒状のスリーブ126と、継手本体118とスリーブ126との間に配置されたスプリング128と、を備える。施錠子122は、施錠子保持孔120内において、継手本体118の内周面130から内側に突出した施錠位置(図2A、2C、2D)と、施錠位置よりも外側に位置して継手本体118の内周面130から突出していない施錠解除位置(図2B、2E)との間で、継手本体118の径方向で変位可能となっている。
【0021】
スリーブ126の内周面132には、内側に突出した施錠子支持突部134と、施錠子支持突部134の前方に位置する前方施錠子受入部136と、施錠子支持突部134の後方に位置する後方施錠子受入部138とが形成されている。スリーブ126は、施錠子支持突部134が施錠子122に径方向外側から係合して施錠子122を施錠位置に保持する中間保持位置(図1A、1C、1D、図2A、2C、2D)と、中間保持位置よりも前方に位置し施錠子122を後方施錠子受入部138に受け入れて施錠子122が施錠解除位置となることを許容する前方解放位置(図1B図2B)と、中間保持位置よりも後方に位置し施錠子122を前方施錠子受入部136に受け入れて施錠子122が施錠解除位置となることを許容する後方解放位置(図1E図2E)との間で長手軸線Lの方向に変位可能に取り付けられている。
【0022】
継手本体118の外周面124には、図2A−Eに示すように、スリーブ126に向かって径方向外側に突出するピン(係止突起)140が設けられている。また、スリーブ126には、図1A−Eに示すように、ピン140を受け入れる大きさとされた切欠き部(突起受部)142が設けられている。スリーブ126は、切欠き部142がピン140と周方向で整合していない後退阻止位置(図1A−C)と、切欠き部142がピン140と周方向で整合している後退許容位置(図1D−E)との間で周方向に回動可能となっている。スリーブ126の周方向位置が後退阻止位置となっているときには、スリーブ126を中間保持位置から後方解放位置に向かって動かそうとすると、ピン140がスリーブ126の後端面144に長手軸線Lの方向で当接するため、スリーブ126が後方解放位置にまで変位することが阻止される。一方でスリーブ126の周方向位置が後退許容位置にあるときには、スリーブ126を中間保持位置から後方解放位置に向かって動かすと、ピン140はスリーブ126の切欠き部142に受け入れられて切欠き部142内を通り、スリーブ126は後方解放位置にまで変位する。このような構成により、後述するように、連結状態においてスリーブ126が誤って後方に引かれて連結が解除されてしまうことを防止するようにできる。
【0023】
継手本体118の外周面124には、段差部146により構成された前方に面する第1支持面148と、ストップリング150により構成された後方に面する第2支持面152とが設けられている。また、スリーブ126の内周面132には、ストップリング154により構成された前方に面する第3支持面156と、段差部158により構成された後方に面する第4支持面160とが設けられている。スプリング128は、継手本体118の第1支持面148と第2支持面152との間であり且つスリーブ126の第3支持面156と第4支持面160との間である位置に配置されている。スプリング128の前後にはリング状のスプリング支持部材162、162が配置されており、スプリング128はこれらスプリング支持部材162、162を介して第1乃至第4支持面148、152、156、160とそれぞれ係合する。このような構成により、スリーブ126が中間保持位置から前方に変位したときには、スプリング128は継手本体118の第2支持面152とスリーブ126の第3支持面156との間で圧縮されてスリーブ126を中間保持位置に向かって後方に付勢し、スリーブ126が中間保持位置から後方に変位したときには、スプリング128は継手本体118の第1支持面148とスリーブ126の第4支持面160との間で圧縮されてスリーブ126を中間保持位置に向かって前方に付勢する。すなわち、スリーブ126はスプリング128によって常に中間保持位置に向かって長手軸線Lの方向で付勢されるようになっている。
【0024】
雄型管継手部材170は、長手軸線Lの方向に延在する流体通路172と、その外周面174に設けられた環状の施錠子係合溝176とを有する。
【0025】
雌型管継手部材110を雄型管継手部材170に連結する際には、雌型管継手部材110のスリーブ126を把持して、雄型管継手部材170が雌型管継手部材110の前端開口112から流体通路116内に挿入されるように、雌型管継手部材110を雄型管継手部材170に対して近づけるようにする。このとき、スリーブ126はスプリング128により中間保持位置に維持され、また施錠子122はスリーブ126によって施錠位置に保持された状態となっている(図1A図2A)。なお、スリーブ126は、図1Aに示すように、その周方向での位置が後退阻止位置となっていることが好ましい。雄型管継手部材170が挿入されていくと雄型管継手部材170の前端部178と施錠子122とが当接して雄型管継手部材170の雌型管継手部材110内へのそれ以上の挿入が一時的に阻止される。スリーブ126をさらに雄型管継手部材170の側に向かって前方に押し込むと、スリーブ126は継手本体118に対して前方に変位していき、前方解放位置にまで変位すると、施錠子122は後方施錠子受入部138に受け入れられて施錠解除位置となる。そうすると雄型管継手部材170と施錠子122との長手軸線Lの方向での係合が解除されて雄型管継手部材170は雌型管継手部材110の流体通路116内にさらに挿入される(図1B図2B)。雄型管継手部材170の施錠子係合溝176が施錠子122と長手軸線Lの方向で整合する位置にまで雄型管継手部材170が挿入されると、施錠子122は施錠子係合溝176により施錠位置に変位可能な状態となる。この状態でスリーブ126から手を離すと、スリーブ126はスプリング128の付勢力によって後方に変位して中間保持位置にまで戻る(図1C図2C)。施錠子122は雄型管継手部材170の施錠子係合溝176に係合した状態でスリーブ126により施錠位置に保持され、これにより当該管継手100は、雌型管継手部材110と雄型管継手部材170との連結が完了した状態となる。なお、雌型管継手部材110の継手本体118の内周面130にはOリング180が配置されており、連結状態においてはこのOリング180により継手本体118の内周面130と雄型管継手部材170の外周面174とが密封係合される。
【0026】
雌型管継手部材110を雄型管継手部材170から離脱するときには、まず、スリーブ126の周方向位置が後退許容位置(図1D図2D)となるようにスリーブ126を回動させる。スリーブ126が後退許容位置にある状態でスリーブ126を把持して後方に引くと、雌型管継手部材110の継手本体118は施錠子122を介して雄型管継手部材170に連結されているため、スリーブ126は継手本体118に対して後方に変位する。スリーブ126が後方解放位置にまで変位すると、施錠子122が前方施錠子受入部136に受け入れられて施錠解除位置にまで変位可能な状態となり、雄型管継手部材170の施錠子係合溝176と施錠子122との係合が解除されて、雌型管継手部材110が雄型管継手部材170から離脱される(図1E図2E)。
【0027】
連結を開始する際にスリーブ126を図1Aに示すような後退阻止位置としておけば、連結が完了した時点において図1Cに示すようにスリーブ126を後方に変位させることができない状態となる。したがって、連結後にスリーブ126をロックする操作を行うことなく、スリーブ126の後退が阻止される状態となり、スリーブ126が誤って引かれることにより連結が不意に解除されてしまうことが防止される。
【0028】
本発明の第2の実施形態における管継手200の雌型管継手部材210は、図3A−C及び図4A−Bに示すように、係止突起としてのピン240がスリーブ226側に配置され、突起受部としての面取り部242が継手本体218の外周面224に形成されている点で第1の実施形態における雌型管継手部材110と異なる。当該雌型管継手部材210においては、ピン240は継手本体218に向かって突出するようにスリーブ226に配置されている。また、面取り部242は継手本体218の外周面224上に点対称となる位置に2つ設けられている。図3A、3B、及び図4Aに示すように、スリーブ226が、スリーブ226のピン240と継手本体218の面取り部242との位置が周方向で整合していない後退阻止位置にあるときには、スリーブ226を後方に動かそうとするとピン240が継手本体218のピン係止面244に長手軸線Lの方向で当接して、図3Cに示すような後方解放位置にまで変位できない。一方で図3Bに示す前方解放位置には変位させることができる。スリーブ226を、図4Bに示すように、スリーブ226のピン240が継手本体218の面取り部242と周方向で整合した後退許容位置にまで回動させた状態でスリーブ226を後方に向かって引くと、ピン240は継手本体218に接触することなく面取り部242を通り、スリーブ226は図3Cに示す後方解放位置にまで変位する(図3C図4Bでは継手本体218が回転したように示されている)。当該管継手200における雌型管継手部材210と雄型管継手部材270との連結および離脱の際の操作は、第1の実施形態に係る管継手100と同様である。
【0029】
本発明の第3の実施形態における雌型管継手部材310は、図5及び図6に示すように、スリーブ326に突起受部としてのピン受入通路342が形成されている点において、第1の実施形態における雌型管継手部材110と異なる。当該雌型管継手部材310におけるピン受入通路342は、図5に示すように、スリーブ326が中間保持位置にあるときに継手本体318に設けられたピン340を受け入れる位置に形成された周方向に延びる周方向中間通路342aと、周方向中間通路342aの図で見て下端の位置から前方に延在する長手方向前方通路342bと、周方向中間通路342aの図で見て上端の位置から後方に延在する長手方向後方通路342cと、からなっている。スリーブ326は、長手方向後方通路342cがピン340と長手軸線Lの方向で整合する後退阻止位置と、長手方向前方通路342bがピン340と長手軸線Lの方向で整合する後退許容位置との間で周方向に回動可能となっている。スリーブ326が後退阻止位置にあるときには、スリーブ326を前方に動かすとピン340は長手方向後方通路342cを通りスリーブ326は前方解放位置にまで変位するが、後方に動かそうとするとピン340が周方向中間通路342aにおいてスリーブ326と長手軸線Lの方向で当接してスリーブ326が後方解放位置にまで変位することが阻止される。一方で、スリーブ326が後退許容位置にあるときには、スリーブ326を後方に動かすとピン340は長手方向前方通路342bを通りスリーブ326は後方解放位置にまで変位するが、前方に動かそうとするとピン340が周方向中間通路342aにおいてスリーブ326と長手軸線Lの方向で当接してスリーブ326が前方解放位置にまで変位することが阻止される。第1及び第2の実施形態における雌型管継手部材110、210においては、スリーブ126、226の周方向位置を後退阻止位置としなくても、スリーブ126、226は前方解放位置にまで変位可能であり、したがって、スリーブ126、226を把持して雌型管継手部材110、210を雄型管継手部材170、270に押し込むことにより連結することが可能となっている。それに対して当該雌型管継手部材310においては、スリーブ326を後退阻止位置としないとスリーブ326は前方解放位置に変位できずそのような連結ができないため、連結する際には必然的にスリーブ326は後退阻止位置となっており、よって連結完了時点ではスリーブ326の後退が阻止された状態に必ずなっている。
【0030】
雌型管継手部材310は、スプリング328とそれを保持する部分の構成においても第1及び第2の実施形態における雌型管継手部材110、210と異なる。当該雌型管継手部材310における継手本体318の外周面324とスリーブ326の内周面332には、それぞれ長手軸線Lの方向に延びるスプリング保持長穴382、384が設けられている。スプリング328の後端328aは、径方向内側に曲げられて、継手本体318のスプリング保持長穴382によって継手本体318に対して周方向で固定された状態で保持されている。同様に、スプリング328の前端328bは、径方向外側に曲げられて、スリーブ326のスプリング保持長穴384によってスリーブ326に対して周方向で固定された状態で保持されている。このスプリング328によって、スリーブ326は、後退阻止位置と後退許容位置との間の前進後退阻止位置(図5)に向かって周方向に付勢される。したがって、スリーブ326は、周方向での外力が作用していない状態では前進後退阻止位置に保持される。周方向位置を後退許容位置としスリーブ326を後方に変位させた際には、スプリング328の後端328a及び前端328bはそれぞれ対応するスプリング保持長穴382、384に対して長手軸線Lの方向においても変位しないが、周方向位置を後退阻止位置としスリーブ326を前方に変位させた際には、スプリング328の後端328aは継手本体318のスプリング保持長穴382内を相対的に前方に変位し、スプリング328の前端328bはスリーブ326のスプリング保持長穴384内を相対的に後方に変位する。なお、スプリング328の後端328aをスリーブ326の側に保持し、前端328bを継手本体318の側に保持するように構成してもよい。スリーブ326が前進後退阻止位置にあるときには、スリーブ326を前方解放位置及び後方解放位置に向かって動かそうとしても、ピン340が周方向中間通路342aにおいてスリーブ326に長手軸線Lの方向で当接するため、スリーブ326は前方解放位置にも後方解放位置にも変位しない。第1及び第2の実施形態においては、連結状態においてスリーブ126、226が後退阻止位置となっていたとしてもスリーブ126、226を前方に押して前方解放位置とすることは可能であるため、雌型管継手部材110、210と雄型管継手部材170、270との連結解除が完全に防止されるわけではないが、当該雌型管継手部材310のようにスリーブ326に前進後退阻止位置を設定することによりスリーブ326の前方への変位も阻止されるため、より確実に誤った離脱を防止することが可能となる。
【0031】
本発明に係る雌型管継手部材110、210、310においては、上述のように、スリーブ126、226、326が施錠子122、222、322を施錠位置に保持する中間保持位置と、中間保持位置から前方に位置し施錠子122、222、322が施錠解除位置に変位可能となる前方解放位置と、中間保持位置から後方に位置し施錠子122、222、322が施錠解除位置に変位可能となる後方解放位置との間で変位可能となっている。このような構成により、スリーブ126、226、326を把持して雌型管継手部材110、210、310を雄型管継手部材170、270に押しつけるようにするだけで、雌型管継手部材110、210、310を雄型管継手部材170、270に連結することができるようになる。これにより、従来の管継手にみられた上述のような連結操作のやりにくさは解消され、より迅速且つ容易に連結操作を行うことが可能となる。
【0032】
また、上記実施形態のようにスリーブ126、226、326を後退許容位置と後退阻止位置との間で周方向に回動可能な構成とし、上記実施形態におけるピン140、240、340のような係止突起や切欠き部142、面取り部242、ピン受入通路342のような突起受部を設けるようにすれば、スリーブ126、226、326を後退阻止位置にして連結操作を行うことで連結が完了した時点でスリーブ126、226、326を後方に引くことができない状態となるため、連結後にロック操作を忘れてスリーブ126、226、326を後方に引いて連結を解除可能な状態のままとしてしまう事態が低減される。
【0033】
なお、上記実施形態においては、係止突起として別体の柱状のピン140、240、340を使用しているが、球状部材を圧入するようにしてもよいし、継手本体118、218、318又はスリーブ126、226、326に一体の部材として直接形成してもよい。施錠子122、222、322は球状である必要は必ずしも無く、他の形状としてもよい。スリーブ126、226、326を中間保持位置に付勢するスプリング128、228、328は、スリーブを前方に付勢するスプリングと後方に付勢するスプリングとの2つにより構成するようにしてもよい。各実施形態における構成を任意に組み合わせることも当然に可能であり、例えば、第2の実施形態における突起受部としての面取り部242を第3の実施形態におけるピン受入通路342のような構成としてもよいし、第1及び第2の実施形態におけるスプリング128、228を第3の実施形態におけるスプリング328のように、スリーブを周方向でも所定の位置に向かって付勢するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
管継手100;雌型管継手部材110;前端開口112;後端開口114;流体通路116;継手本体118;施錠子保持孔120;施錠子122;(継手本体118の)外周面124;スリーブ126;スプリング128;(継手本体118の)内周面130;(スリーブ126の)内周面132;施錠子支持突部134;前方施錠子受入部136;後方施錠子受入部138;ピン(係止突起)140;切欠き部(突起受部)142;後端面144;(継手本体118の)段差部146;第1支持面148;ストップリング150;第2支持面152;ストップリング154;第3支持面156;段差部158;第4支持面160;スプリング支持部材162;雄型管継手部材170;流体通路172;外周面174;施錠子係合溝176;前端部178;Oリング180;
管継手200;雌型管継手部材210;継手本体218;施錠子222;外周面224;スリーブ226;スプリング228;ピン240;面取り部242;ピン係止面244;雄型管継手部材270;
雌型管継手部材310;継手本体318;施錠子322;(継手本体318の)外周面324:スリーブ326;スプリング328;前端328a;後端328b;(スリーブ326の)内周面332;ピン340;ピン受入通路342;周方向中間通路342a;長手方向前方通路342b;長手方向後方通路342c;スプリング保持長穴382、384;
長手軸線L;
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6