特許第6383385号(P6383385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383385金属部材の接合方法および金属製の複合部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383385
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】金属部材の接合方法および金属製の複合部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/00 20060101AFI20180820BHJP
   H01M 2/30 20060101ALN20180820BHJP
【FI】
   B21D39/00 A
   !H01M2/30 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-130421(P2016-130421)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-1209(P2018-1209A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2017年9月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩二
(72)【発明者】
【氏名】六渡 秀鷹
(72)【発明者】
【氏名】福居 幸祐
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−285775(JP,A)
【文献】 特開2004−204916(JP,A)
【文献】 実開昭60−181220(JP,U)
【文献】 特開2013−075297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/00
H01M 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突部を有する金属製の接合部材の当該突部を、穴部を有しかつ金属製で柱状を成す被接合部材の当該穴部に嵌合させ、被接合部材を圧縮することにより、柱状の当該被接合部材を所定厚みの平板状に成形しつつ、前記圧縮力を利用して被接合部材を前記接合部材との嵌合強度を高める方向に変形させ、これにより部材同士を密着させて接合することを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項2】
穴部が袋穴であり、被接合部材を所定厚みの平板状に成形する際の圧縮により接合部材を外方にアンダーカットが生じるように扁平に変形させつつ、袋穴の内面の余肉をアンダーカット部に回り込ませて密着させることを特徴とする請求項1に記載の金属部材の接合方法。
【請求項3】
前記穴部が袋穴であり、被接合部材を所定厚みの平板状に成形する際の圧縮により袋穴を穴径が狭まる方向に変形させて、袋穴の内面を突部の外面に密着させることを特徴とする請求項1に記載の金属部材の接合方法。
【請求項4】
穴部が貫通孔であり、被接合部材を所定厚みの平板状に成形する際の圧縮により貫通孔を穴径が狭まる方向に変形させて、貫通孔の内面を突部の外面に密着させることを特徴とする請求項1に記載の金属部材の接合方法。
【請求項5】
穴部が貫通孔であり、被接合部材を所定壁厚みの柱状に成形する際の圧縮により貫通孔を孔径が狭まる方向に変形させて、貫通孔の内面を突部の外面に密着させることを特徴とする請求項1に記載の金属部材の接合方法。
【請求項6】
突部が柱状であり、被接合部材を接合部材に嵌合させ、押し型内で外周囲を規制して被接合部材を予備成形した後、圧縮により平板状に成形することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の金属部材の接合方法。
【請求項7】
突部を有する金属製の接合部材の当該突部を、穴部を有しかつ金属製で柱状を成す被接合部材の当該穴部に嵌合させ、被接合部材を圧縮することにより、柱状の当該被接合部材を所定厚みの平板状に成形しつつ、前記圧縮力を利用して被接合部材を前記接合部材との嵌合強度を高める方向に変形させ、これにより部材同士を密着させて接合することを特徴とする金属製の複合部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接合部材を圧縮することにより、当該被接合部材を所定厚みに成形しつつ接合部材と被接合部材とを接合する金属部材の接合方法および金属製の複合部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用リチウム電池にあっては、電極端子に溶接等によりリード線等を取付けることから、電極端子には導電率の高い銅部材と耐食性の高いアルミ部材とを接合してなる複合部品が使用されている。通常、この種の複合部品の製造にあっては、当該複合部品の用途に適する金属材料でなる被接合部材、例えば図17(a)に示す袋穴105aを持つアルミ部材でなる平板部材105と、図17(b)に示す銅部材でなる棒状の接合部材104とをあらかじめ所定の形状に成形しておき、その後に両部材を接合する方法が用いられている。
【0003】
具体的には、図17(c)に示すように接合部材104を受け型106内に位置決めした状態で、その突部104cに平板部材105の袋穴105a(図17(a)参照)が嵌合するように平板部材105がプレス機により押し込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−75297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の金属部材の接合方法によれは、図17(a)に示すように予め所定厚みの平板部材105を成形しておかなければならず、加えて、これら部材を接合する接合工程が必要で、複合部品の製造コストが高くなるという問題が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するために発明されたもので、突部を有する金属製の接合部材の当該突部を、穴部を有しかつ金属製で柱状を成す被接合部材の当該穴部に嵌合させ、被接合部材を圧縮することにより、柱状の当該被接合部材を所定厚みの平板状に成形しつつ、前記圧縮力を利用して被接合部材を前記接合部材との嵌合強度を高める方向に変形させ、これにより部材同士を密着させて接合することを特徴としている。この構成により、被接合部材を圧縮して所定の厚みを備える平板状または棒状もしくは角柱状に成形することができる。また、これと同時に被接合部材の余肉を接合部材と被接合部材との間の間隙に回り込ませることができ、接合部材と被接合部材とが隙間なく密着して接合する複合部品を製造することができる。さらに、被接合部材は接合部材と被接合部材との接合と同時に成形されるので、被接合部材をあらかじめ成形しておく工程が不要となり、複合部品の製造コストを低減することができる。
【0007】
本発明に係る被接合部材の穴部は、袋穴であり、被接合部材を所定厚みの平板状に成形する際の圧縮により接合部材を外方にアンダーカット部が生じるように扁平に変形させつつ、袋穴の内面の余肉をアンダーカット部に回り込ませて密着させる構成であってもよい。この場合には、接合部材と被接合部材とが非貫通接合状態で、すなわち接合個所の気密性を保持して接合される複合部品を製造することができる。また、接合部材のアンダーカット部は被接合部材の余肉が回り込む溝を形成することとなり、溝加工等の余分な加工を施すことなく両部材同士を抜脱不能に接合することができ、複合部品の製造コストを低減することができる。さらに、前記アンダーカット部の背面により被接合部材の余肉がかしめられる状態となり、接合部材と被接合部材との密着性が向上し、大きな軸線方向の強度を得ることができる。
【0008】
本発明に係る被接合部材の穴部を袋穴とし、所定厚みの平板状に成形される際の圧縮により袋穴を穴径が狭まる方向に変形して、袋穴の内面を突部の外面に密着させる構成であることが望ましい。この場合には、被接合部材は平板状に成形される際に、接合部材の突部の形状によって接合部材に対して抜脱可能にも、抜脱不能にも接合できる。
【0009】
本発明は、被接合部材と接合部材とを接合部材の突部が露出するように接合させるために、前記穴部を貫通孔とし、被接合部材を所定厚みの平板状に成形する際の圧縮により貫通孔を穴径が狭まる方向に変形させて、貫通孔の内面を突部の外面に密着させる構成であることが望ましい。
【0010】
また、本発明は被接合部材と接合部材とを接合部材の突部が露出するように接合させると同時に、円柱状または角柱状の成形ができるようにするために、前記穴部を貫通孔とし、所定壁厚みの柱状に成形する際の圧縮により貫通孔を孔径が狭まる方向に変形させて、貫通孔の内面を突部の外面に密着させる構成であることが望ましい。
【0011】
本発明に係る接合部材は、突部が柱状であり、被接合部材を接合部材に嵌合させ、被接合部材は押し型内で外周囲を規制されて予備成形された後、圧縮により平板状に成形されることが望ましい。この場合、被接合部材の延性の良好でないときでも、被接合部材を所定厚みの平板状に成形することができる。
【0012】
本発明のもう一つは、金属製の複合部材の製造方法である。この製造方法は、突部を有する金属製の接合部材の当該突部を、穴部を有しかつ金属製で柱状を成す被接合部材の当該穴部に嵌合させ、被接合部材を圧縮することにより、柱状の当該被接合部材を所定厚みの平板状に成形しつつ、前記圧縮力を利用して被接合部材を前記接合部材との嵌合強度を高める方向に変形させ、これにより部材同士を密着させて接合することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
以上説明した本発明によれば、被接合部材を圧縮することにより、当該被接合部材を所定厚みに成形しつつ接合部材と被接合部材とを接合する金属部材の接合方法および金属製の複合部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合方法の被接合部材成形工程図を示す要部断面図。
図2】本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合方法により製造される複合部品の用途の一例であるリチウム電池の概略説明図。
図3】本発明の第1の実施形態に係る被接合部材(a)、接合部材(b)それぞれの正面図。
図4】本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合方法を説明する接合部材と被接合部材との嵌合工程(a)および被接合部材の予備成形工程(b)を示す要部断面図。
図5】本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合構造の要部断面図。
図6】本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合構造の効果を説明する接合構造(a)、従来の接合構造(b)それぞれの切断面の拡大対比写真。
図7】本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合構造の効果を説明する接合構造(a)、従来の接合構造(b)それぞれの抜き強度の対比特性図。
図8】本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合構造の第1変形例を示す要部断面図。
図9】本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合構造の第2変形例(a)および第3変形例(b)を示す要部断面図。
図10】本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合構造の第4変形例(a)および第5変形例(b)を示す要部断面図。
図11】本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合構造の第6変形例(a)を説明する金属部材の接合方法の工程図。
図12】本発明の第2の実施形態に係る金属部材の接合方法を説明する接合部材と被接合部材との嵌合工程(a)および被接合部材の予備成形工程(b)並びに被接合部材の成形工程(c)を示す要部断面図。
図13】本発明の第2の実施形態に係る金属部材の接合方法の第1変形例を示す要部切欠き工程図。
図14図13のA−A線要部拡大図。
図15】本発明の第2の実施形態に係る接合部材の第2変形例を示す説明図。
図16】本発明の第3の実施形態に係る接合部材の接合方法を説明する工程図。
図17】従来の金属部材の接合方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る金属部材の接合方法(以下、第1接合方法という)を図面に基づき説明する。図2に示すように、1は第1接合方法(製造方法)により製造される複合部材たる複合部品を外部電極として使用する用途の一例を示すリチウム電池である。このリチウム電池1は複数枚の電池パック1aを収納する電池缶1bを有し、この電池缶1bの上面には正極側外部電極端子(図示せず)と負極側外部電極端子(以下、負側外部端子という)3とが取付けられている。前記電池パック1aは上端に正、負の各電極端子1a1,1a2を有し、隣接する二つの電池パック1a,1aの一方の負電極端子1a2と他方の電池パック1aの正電極端子1a1間にはバスバー1cが接続され、複数の電池パック1a,1aが直列に接続されている。また、最後列の電池パック1aの負電極端子1a2にもバスバー1cが連接されており、このバスバー1cの端部には前述の負側外部端子3が接続されている。
【0016】
前記負側外部端子3は、図5に示すように銅部材でなる接合部材4と、この接合部材4よりも柔らかいアルミ部材でなる被接合部材5とからなっている。前記接合部材4は、被接合部材5に対して貫通していてもよいが、本実施形態では非貫通の部材について説明する。この接合部材4は、棒状の軸部4aと、外周が非円形状の一例である歯形状である段部4bと、これに連続しかつこれから突出する突部4c(図3(b)参照)とを有している。また、前記被接合部材5は前記接合部材4の段部4bおよび突部4cを覆う所定厚さの平板状をなす平板部5bを有するが、図3(a)および(図3(b)に示すように当該成形が行われる前には前述の接合部材4の段部4bおよび突部4cが嵌合可能な袋穴でなる穴部5aを有している。前記負側外部端子3は、図4(a)および図4(b)並びに図5に示すように被接合部材5の穴部5aに接合部材4の段部4bおよび突部4cを嵌合させ、この状態で被接合部材5を接合部材4の突部4cが露出しないように圧縮しながら接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その突端を外方に扁平させて接合部材4にアンダーカット部4ccを形成しつつそのアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませて、両部材同士を抜脱不能に密着させて接合する接合構造Sを有している。また、前記接合構造Sは言い換えれば、図1に示すように前記圧縮の際に一部が変形せずに残る突部4cを有しており、この突部4cに対して当該圧縮により変形する被接合部材5の穴部5a(図3(a)参照)の内面に形成される前記突部4cへの密着面Cを有している。これにより、前記突部4cを一部変形させたり、当該突部4cにあらかじめ突起(図示せず)を設けたりするだけで、抜け止め効果が得られて大きな軸線方向の強度が得られる。
【0017】
上記構造により、接合部材4のアンダーカット部4ccが被接合部材5の余肉の回り込む溝を形成することとなり、また突部4cの全体の塑性変形によっても、段部4bの歯形状の空隙に回り込む余肉を覆うこととなり、被接合部材5の抜け止め効果がもたらされる。また、接合部材4のアンダーカット部4ccの背面により被接合部材5の余肉がかしめられる状態となり、これら部材の密着性が向上して大きな軸線方向の強度、すなわち抜き強度が得られる。また、被接合部材5の余肉が段部4bの歯形状の空隙に回り込むことにより大きな回転方向の強度が得られるばかりか、接合個所が穴部5a内にあって非貫通状態であるので、気密性の高い接合構造が得られる。これにより、当該負側外部端子3は液体が充満されるリチウム電池1の電池缶1bのような密閉される内部に通じる個所で使用されても、液体が漏洩することはない。同時に、リード線等を溶着するスペースを十分に確保でき、しかもその耐食性も確保できる平板部5bを得ることができる。その他、被接合部材5が接合部材4よりも柔らかい部材であることから、前述の密着性をさらに向上させることができる。なお、接合部材4および被接合部材5は同一材質であっても前記密着性向上の程度は異なるが、同様の効果が得られる。
【0018】
前記負側外部端子3は、図1図3および図4に示す第1接合方法(製造方法)により製造されている。すなわち、この第1接合方法は接合部材4の製造工程(図示せず)と、被接合部材5の製造工程(図示せず)とを有している。また、この第1接合方法は接合部材4を被接合部材5の穴部5aに嵌合させる嵌合工程と、被接合部材5の予備成形工程と、被接合部材5の成形工程とを有している。前記嵌合工程は、図4(a)に示すように接合部材4の軸部4aを受け型6内でノックアウトピン7により位置決めし、その上方から接合部材4の段部4bおよび突部4cに対して被接合部材5を前進させて、これらを嵌合させるように構成されている。この場合、被接合部材5の前進方向は、上方からに限定されるものではなく、接合部材4と被接合部材5を横方向に配置することにより水平方向からとすることもできる。
【0019】
前記被接合部材5の予備成形工程は、図4(b)に示すように接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合する被接合部材5を圧縮して予備成形部5cを成形する予備成形押し型(図示せず)を有している。この予備成形押し型は、仕上げ成形前の予備形状部に対応する成形穴(図示せず)を有し、受け型6に対して前進して被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cを成形する。この時、接合部材4の段部4bおよび突部4cと被接合部材5の穴部5aの内壁との間隙に被接合部材5の余肉が回り込み、接合部材4の軸部4aを受け型6で保持した状態でこれら部材が仮接合される。これにより、被接合部材5は延性の良好な材質でないときでも、成形工程において所定厚みの平板状に成形される。この予備成形工程は、第1接合方法にあっては必須の工程ではなく、被接合部材5が延性の良好な柔らかい金属部材でなるときには、被接合部材5を嵌合工程から直接成形工程で成形してもよい。
【0020】
前記成形工程は、図1に示すように被接合部材5の予備成形部5cから所定厚さの平板部5bを成形するための成形押し型(図示せず)を有している。この成形押し型は、前記予備成形部5cに対して上方から前進して予備成形部5cを所定の厚さまたは所定厚さと所定形状とを備える平板部5bに成形する。この時、成形押し型の下死点は平板部5bの厚さ、被接合部材5の延性、接合部材4の突部4cと被接合部材5の穴部5aとの嵌合深さ、接合部材4の硬度等から接合部材4の突部4cが露出しないように考慮されている。
【0021】
上記第1接合方法(製造方法)において、図4(a)に示すように受け型6内で接合部材4の軸部4aがノックアウトピン7により位置決めされ、同時にその段部4bが受け型6の上面で保持される。その後、被接合部材5をその穴部5aが接合部材4の段部4bおよび突部4cに嵌合するように前進させた後に、図4(b)に示すように予備成形押し型が受け型6に対して前進し、被接合部材5の上部を圧縮して予備成形部5cが成形される。この時、予備成形押し型が接合部材4よりも柔らかい被接合部材5を介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をわずかに外方に扁平させてアンダーカット部4ccを形成し始める。
【0022】
前記予備成形押し型を後退させた後に、図1に示すように成形押し型が受け型6に対して所定下死点まで前進する。この成形押し型の前進にともなって、成形押し型が前記予備成形部5cを圧縮して予備成形部5cから接合部材4の突部4cが露出しないように所定厚さの平板部5bが成形される。この時、予備成形部5cを圧縮する圧縮力を利用して被接合部材5を前記接合部材4との嵌合強度を高める方向に変形させる。すなわち、前記被接合部材5の加工硬化を利用して突部4cの突端を外方に扁平させて接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccが形成され、同時にそのアンダーカット部4ccに予備成形部5cの余肉が回り込む。これにより、両部材同士を抜脱不能に接合する接合構造Sが得られる。しかも、前記平板部5bを成形する際の圧縮により穴部5aを穴径が狭まる方向に変形して、穴部5aの内面を接合部材4の突部4cの外面に密着するので、これら部材は非貫通接合状態で、すなわち接合個所の気密性を保持して接合される。前述の被接合部材5は、平板状に成形される際に、接合部材4の突部4cの形状によって、接合部材4に対して抜脱不能にも、抜脱可能にも接合可能であるが、突部4cにアンダーカット部4ccが形成されることにより、本実施形態では接合部材4に対して抜脱不能に接合される。
【0023】
また、被接合部材5が平板状に成形される際には、外周が歯形状となっている段部4bの間隙に被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下に大円柱段部4b1が形成されるので、十分な回転方向の強度が得られる。また、前記平板部5bの成形時に、前記成形押し型が予備成形部5cを介して接合部材4の突部4cを塑性変形させ、その上端外周をさらに外方に扁平させる。この間、接合部材4の扁平部分がその背部で予備成形部5cの余肉をかしめるとともに、この余肉を接合部材4の段部4bと予備成形部5cとの間隙に回り込ませることができる。これは、図6(a)に示すように実際の接合部材4と被接合部材5との接合個所の拡大断面写真からも明確となっている。すなわち、図6(b)に示す従来方法に係る接合個所の拡大断面写真では、当該接合個所の所どころに間隙(境界部分の黒色部)が認められ、余肉の回りが十分でないことが窺がえる。これに対して、第1接合方法(製造方法)に係る接合個所には隙間が認められず、余肉は十分に回り込んで接合部材4と被接合部材5との間で高い密着性が得られていることが窺がえる。特に、図6(a)の被接合部材5にはA1070のアルミ部材を、また接合部材4には銅部材を使用し、被接合部材5を接合部材4よりも柔らかい材料とすることにより、前述の密着性が顕著に現れる。
【0024】
また、図1に示すように前記接合部材4の扁平部分の背部は予備成形部5cの余肉を接合部材4の段部4bおよび受け型6の上面との間でかしめることとなって当該余肉をさらに加工硬化させながら、接合部材4の段部4cおよび突部4cと予備成形部5cとの間隙側に押し込む。これにより、接合部材4にあらかじめ当該余肉が回り込むための溝加工等の抜け止め加工を施す必要がなく、接合部材4は単純な構造でよいばかりか、前記余肉の加工硬化と相俟って接合部材の軸線方向の強度、すなわち抜き方向の強度を高めることができる。これは、図7(a)に示すように第1接合方法に係る抜き強度が2.5N以上であるのに対して、図7(b)に示すように従来方法に係る抜き強度が2.0N以下であることから明確となっている。なお、上記説明は、第1接合方法において、接合部材4に従来技術の溝部104aを予め成形しておくことを積極的に排除するものではない。
【0025】
さらに、前記成形押し型は所定下死点まで前進して被接合部材5の予備成形部5cから所定厚さの平板部5bを成形するが、その際に被接合部材5の延性、接合部材4の突部4cと被接合部材5の穴部5aとの嵌合深さ等から接合部材4の突部4cが露出しないように考慮されている。これにより、接合部材4の突部4cが露出することなく、接合部材4と被接合部材5とは非貫通接合状態、すなわち接合個所の気密性を保持して接合され、気密性の高い負側外部端子3を製造することができる。また、接合部材が単純な構成となるばかりか、被接合部材5をあらかじめ成形しておく工程が不要となるので、安価な負側外部端子3を製造することができる。
【0026】
図8は、本発明の第1接合方法(製造方法)の第1変形例に係る接合構造S1である。この接合構造S1は、前記成形押し型により圧縮されて所定厚さの平板部5bを有する被接合部材5と接合部材4とによりなっているが、前記成形押し型の下死点が接合部材4を露出させず、またその突部4cを塑性変形させない位置に設定される。そのため、接合部材4の軸部4a、段部4bおよび突部4cは塑性変形せず、接合部材4は予備成形工程時と同一の形状を保持する。これにより、予備成形部5cから所定厚みを持つ平板部5bが成形される時には、被接合部材5の余肉が接合部材4の段部4bおよび突部4cとの間隙に回り込み、接合部材4と被接合部材5とが高い密着性を持って接合されてなる負側外部端子3を得ることができる。また、この時には、接合部材4の突部4cの形状によって、すなわちあらかじめねじ山(図示せず)のような突起が形成されない時には、外力を加えることにより両部材は抜脱可能にできる。さらに、前記接合部材4と被接合部材5との接合時には外周が歯形状となっている段部4bの間隙に、被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下に大円柱段部4b1が形成されるので、回転方向の強度が大きくなっている。
【0027】
前記接合構造S1は、言い換えれば、前記圧縮の際に全部が変形せずに残る接合部材4の突部4cを有し、この突部4cに対して当該圧縮により変形する被接合部材5の穴部5a(図3(a)参照)の内面に形成される前記突部4cへの密着面Cを有している。これにより、当該接合構造S1は前記突部4cに例えばねじ山のような突起(図示せず)を設けておくことにより、大きな軸線方向の強度が得られる。
【0028】
図9(a)および図9(b)は、それぞれ本発明の第1接合方法(製造方法)の第2変形例、第3変形例に係る接合構造S2、S3である。前記接合構造S2は図9(a)に示すように接合部材4として段部4bと突部4cとを有する部材を使用している。この接合構造S2は、接合部材4の段部4bを受け型(図示せず)内に保持した状態で被接合部材を成形して得られる構造である。この接合構造S2は前述の第1変形例と同様に接合部材4の突部4cが露出しないように被接合部材5を圧縮して所定厚みの平板部5bを成形しつつ、被接合部材5を圧縮する圧縮力を利用して被接合部材5を前記接合部材4との嵌合強度を高める方向に変形させる構造でなっている。すなわち、前記被接合部材5の加工硬化を利用して突部4cの突端を外方に扁平させて接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccが成形され、このアンダーカット部4ccに予備成形部5cの余肉が回り込む構造、言い換えれば第1接合方法と同様の密着面Cを有する構造となっている。また、前記平板部5bの首下には前述の第1変形例と同様に大円柱段部4b1が成形される。これにより、接合構造S2も首下に大円柱段部4b1を有していることから、回転方向の強度が大きい負側外部端子3を得ることができる。
【0029】
また、前記接合構造S3は図9(b)に示すように接合部材4として段部4bと突部4cとの間に小円柱段部4b2を有する部材を使用している。この接合構造S3は、前述の第2変形例と同様に接合部材4の突部4cが露出しないように被接合部材5を圧縮して所定厚みの平板部5bを成形しつつ、被接合部材5を圧縮する圧縮力を利用して被接合部材5を前記接合部材4との嵌合強度を高める方向に変形させる構造でなっている。すなわち、前記被接合部材5の加工硬化を利用して突部4cの突端を外方に扁平させて接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccが成形され、このアンダーカット部4ccが段部4bとの間および小円柱段部4b2との間に被接合部材5の余肉が回り込む構造、言い換えれば第1接合方法と同様の密着面Cを有する構造となっている。また、前記平板部5bの首下には前述の第2変形例と同様に大円柱段部4b1が成形される。これにより、接合構造S3も回転方向の強度が大きい負側外部端子3を得ることができる。
【0030】
図10(a)および図10(b)は、それぞれ本発明の第1接合方法(製造方法)の第4変形例、第5変形例に係る接合構造S4、S5である。この接合構造S4は図10(a)に示すように、所定厚さの平板部5bを有する被接合部材5と接合部材4とによりなっているが、前記成形押し型の下死点が接合部材4の突部4cを塑性変形させない位置に設定される。また、前記接合部材4の突部4cの高さと成形前の被接合部材5の穴部(図示せず)の深さとは、所定の厚さを備える平板部5bが成形される時、接合部材4の突部4cが平板部5bから露出するように設定されている。そのため、接合部材4の軸部4a、段部4bおよび突部4cは塑性変形せず、接合部材4は予備成形工程時と同一の形状を保持し、所定厚みを持つ平板部5bが成形される時には、被接合部材5の余肉が接合部材4の段部4bおよび突部4cとの間隙に回り込み、接合部材4と被接合部材5とが高い密着性を持って接合されてなる負側外部端子3、言い換えれば第1接合方法の第1変形例と接合部材4が露出している点を除いて同様の密着面Cを持つ負側外部端子3が得られる。また、この時には、接合部材4の突部4cの形状によって、すなわちあらかじめねじ山(図示せず)のような突起が形成されない時には、外力を加えることにより両部材は抜脱可能にできる。さらに、前述の各変形例と同様に前記被接合部材5が所定厚さの平板部5bを持つように成形される時、外周が歯形状となっている段部4bの間隙に、被接合部材5の余肉が回り込んで、平板部5bの首下に大円柱段部4b1が形成され、回転方向の強度が大きくなっている。
【0031】
前記接合構造S5は、図10(b)に示すように接合部材4として段部4bと突部4cとの間に小円柱段部4b2を有する部材を使用している。この接合構造S5は、接合部材4の段部4bを受け型(図示せず)内に保持した状態で成形押し型(図示せず)により被接合部材5を成形して得られる構造である。この時、前述の第1接合方法の場合と同様に前記成形押し型の下死点は、平板部5bの厚さ、被接合部材5の延性、接合部材4の突部4cの高さ、成形前の被接合部材5の穴部の深さ、接合部材4の硬度等から接合部材4の突部4cが露出するように考慮されて設定されている。これにより、成形押し型が接合部材4の突部4cを露出させた状態で被接合部材5を圧縮して所定厚みの平板部5bを成形しつつ、被接合部材5を圧縮する圧縮力を利用して被接合部材5を前記接合部材4との嵌合強度を高める方向に変形させる構造が得られる。すなわち、前記被接合部材5の加工硬化を利用して突部4cの突端を外方に扁平させて接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccが成形され、このアンダーカット部4ccに予備成形部5cの余肉が回り込む構造、言い換えれば第1接合方法と接合部材4が露出している点を除いて同様の密着面Cを有する構造が得られる。また、前記平板部5bの首下には前述の第4変形例と同様に大円柱段部4b1が成形される。これにより、接合構造S5も回転方向の強度が大きい負側外部端子3を得ることができる。
【0032】
図11(a)および図11(b)は、本発明の第1接合方法(製造方法)の第6変形例に係る金属部材の接合方法(製造方法)を示すもので、この接合方法は接合部材4として軸部4aとこれより膨径でかつその上面に非円形穴4c2を有する接合突部4c1とからなる部材を使用する。この接合方法(製造方法)は、この接合部材4を被接合部材5の穴部5aに嵌合させる嵌合工程と、被接合部材5の成形工程とからなっている。前記嵌合工程では、図11(a)に示すように接合部材4の接合突部4c1を受け型6の上面に当接させながら、その軸部4aが受け型6とノックアウトピン7により位置決めされる。この状態で、被接合部材5が受け型6内の接合部材4に対して上方から前進する。これにより、被接合部材5はその一部が接合部材4に嵌合することにより接合部材4に保持される。
【0033】
前記成形工程では、成形押し型(図示せず)が配置されており、図11(b)に示すようにこの成形押し型が受け型6内で位置決めされた接合部材4とこれに嵌合する被接合部材5との上方からこれら部材に対して所定下死点まで前進する。この成形押し型の下死点は前述した第1接合方法に係る下死点と同様に被接合部材5が圧縮されて所定厚さの平板部5bが成形され、かつ接合突部4c1が露出しないように考慮されて設定される。これにより、この成形工程では成形押し型が所定下死点まで前進する際には、接合部材4の接合突部4c1が露出しないように被接合部材5を圧縮して所定厚みの平板状の平板部5bを成形しつつ、被接合部材5を圧縮する圧縮力を利用して被接合部材5を前記接合部材4との嵌合強度を高める方向に変形させる構造が得られる。すなわち、前記被接合部材5の加工硬化を利用して接合突部4c1の突端を外方に扁平させて接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccを成形し、このアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませる構造、言い換えれば第1接合方法と同様の密着面Cを有する構造が得られる。この時、被接合部材5を介して接合突部4c1を塑性変形させるが、接合突部4c1は非円形穴4c2を有しているため、その全周にわたって外方に扁平してアンダーカット部4ccが容易に形成できる。これにより、軸方向、すなわち抜き方向の強度を向上させることができる。
(第2の実施形態)
【0034】
本発明の第2の実施形態に係る金属部材の接合方法(以下、第2接合方法という)を図面に基づき説明する(第1接合方法と同一部品、同一機能部品には同一の部品番号を付す)。図12(a)、図12(b)および図12(c)において、第2接合方法(製造方法)は接合部材4と被接合部材5の嵌合工程、被接合部材5の予備成形工程、被接合部材5の成形工程からなっている。前記嵌合工程は、図12(a)に示すように第1接合方法と同様の構成で、受け型6内に接合部材4の段部4bを保持する点および接合部材4の突部4cの形状の点で相違するのみであるので、この相違点について詳述する。前記突部4cは、受け型6の上面よりも上方に突出しており、その外周にはねじ山4eが形成されている。このねじ山4eには、その軸線に沿う方向に延びる縦溝4fが形成されている。なお、前記ねじ山4eに縦溝4fを設けなくてもよく、その場合には回転方向の強度が幾分低下するが、軸方向の強度、すなわち抜き強度に低下はない。
【0035】
前記予備成形工程では、被接合部材5の上部を圧縮する予備成形押し型(図示せず)が配置されている。この予備成形押し型は被接合部材5に対して前進し、図12(b)に示すように接合部材4の突部4cを塑性変形させない範囲で、被接合部材5の上部を圧縮して予備成形押し型に形成される予備形状に対応する予備成形部5cを成形する。この時、前記接合部材4の突部4cと被接合部材5との間隙および隣接する二つのねじ山4e,4e間並びに縦溝4f内に被接合部材5の余肉が回り込む。
【0036】
前記成形工程では、成形押し型(図示せず)が配置されており、図12(c)に示すようにこの成形押し型が所定下死点まで前進して、前述の予備成形部5cを圧縮して所定厚さの平板部5bを成形する。この時、被接合部材5を所定厚みの平板状に成形する際の圧縮により穴部5aを穴径が狭まる方向に変形して、穴部5aの内面が突部の外面に密着する前記突部4cへの密着面Cが形成される。同時に、前記成形押し型が接合部材4の突部4cの突端を塑性変形させて外方に扁平させて、接合部材4に十分な大きさのアンダーカット部4ccを成形し、このアンダーカット部4ccに被接合部材5の余肉を回り込ませることができる。これにより、任意の長さの首下段部4b3を持つ負側外部端子3を製造することができるばかりか、ねじ山4eが持つ抜け止め効果により抜き方向の軸方向強度はもとより、縦溝4fに回り込む余肉により回転方向の強度を向上させることができる。
なお、前記成形押し型の下死点を調整して、接合部材4の突部4cが塑性変形しないように構成されてもよい。
【0037】
図13(a)、図13(b)および図13(c)は、本発明の第2接合方法の第1変形例に係る金属部材の接合方法(製造方法)を示すもので、被接合部材を穴部のないストレート軸とし、接合部材を被接合部材の余肉が回り込む穴部を有する構成としている。この接合方法(製造方法)は、前述の第1接合方法(製造方法)の第6変形例に係る接合部材4を受け型6内に収納してこれと被接合部材5とを嵌合させる嵌合工程と、被接合部材5の予備成形工程と、被接合部材5の成形工程とからなっている。前記嵌合工程は、図13(a)に示すように接合突部4c1を有する接合部材4の軸部4aを受け型6内でノックアウトピン7により位置決めし、その上方からストレート軸でなる被接合部材5を受け型6内に押し込み、両部材を受け型6内で当接させて保持する構成である。前記接合部材4の接合突起4c1は、その上面側に接合部材4の軸線方向に延びる有底の非円形穴4c2を有しており、この非円形穴4c2には次工程で被接合部材5の余肉が回り込み、所定の摩擦抵抗を得ることができる。また、前記被接合部材5は前記接合突部4c1よりも小径の棒状部材で形成されており、受け型6内に容易に挿入可能な構成となっている。
【0038】
前記予備成形工程は、予備成形押し型(図示せず)を有し、この予備成形押し型が図13(b)に示すように被接合部材5の上部を圧縮して、予備成形押し型の成形穴に対応する形状の予備成形部5cを成形する。同時に、この予備成形押し型が被接合部材5の前進端を接合部材4の非円形穴4c2に押し込む。これにより、当該非円形穴4c2に被接合部材5の余肉が押し込まれて接合強度を保持するための摩擦抵抗が確保される。
【0039】
前記成形工程は、成形押し型(図示せず)を有し、この成形押し型が図13(c)に示すように受け型6内に接合部材4の段部4bを保持する状態で所定下死点まで前進して、予備成形部5cを圧縮し、所定厚さの平板部5bを成形する。これとともに、被接合部材5の下部を膨径させて接合突部4c1に連なる任意の長さの首下段部4b3を持つ接合構造S11が得られる。この時、接合部材4と被接合部材5との接合強度は両部材の摩擦抵抗のみとなり、十分とは言えないが、図14に示す接合突部4c1の非円形穴4c2に被接合部材5の余肉が押し込まれることとなるので、回転方向の強度が向上し、その特徴を生かした用途に十分に利用可能となっている。また、前記接合構造S11は言い換えれば、前記圧縮の際に全部が変形せずに残る接合突部4c1を有し、この接合突部4c1に設けられた穴部4c2の内面に対して当該圧縮により変形する被接合部材5が密着する接合突部4c1への密着面Cを有している。これにより、当該接合構造S11は前記接合突部4c1の穴部4c2の形状を複雑な非円形状にしておくことにより、摩擦抵抗が大きくなって大きな軸線方向の強度とともに回転方向の強度が得られる。
【0040】
なお、前記接合部材4の接合突部4c1を角柱状としてもよく、この場合受け型(図示せず)に当該角柱状に対応する凹部(図示せず)を設けて、平板部5bの首下に所定長さにわたって角柱状に成形される。また、図15に示すように前記接合部材4の接合突部4c1に形成される有底の非円形穴4c2に代え、貫通穴4c3を形成してもよい。この場合、この貫通穴が非円形状であれば、回転方向の強度を向上させることができる。
(第3の実施形態)
【0041】
本発明の第3の実施形態に係る金属部材の非貫通接合方法(以下、第3接合方法という)を図面に基づき説明する(第1接合方法と同一部品、同一機能部品には同一の部品番号を付す)。図16(a)、図16(b)および図16(c)において、第3接合方法は接合部材4と被接合部材5との嵌合工程、被接合部材5の予備成形工程、被接合部材5の成形工程からなっている。前記嵌合工程および予備成形工程は、第2接合方法と同様の構成で、接合部材4の形状は同一で、被接合部材5の形状はその長さを除いて同一であるので、説明を省略する。
【0042】
前記成形工程は、図16(c)に示すように予備成形工程で成形される予備成形部5cをその軸線と交差する方向(図中、一点鎖線矢印参照)から圧縮する対をなす半割成形押し型6a,6bを有している。この両半割成形押し型6a,6bはお互い当接する位置に達する時には、両半割成型押し型6a,6b間には水平断面円形をなす凹部6cが形成され、この凹部6cにより予備成形部5cは接合突部4c1と同径の軸部に成形される。これにより、当該被接合部材5を所定厚みに成形しつつ、前記圧縮力を利用して被接合部材5を前記接合部材4との嵌合強度を高める方向に変形させ、これにより部材同士を接合することができる。言い換えれば、被接合部材5を圧縮して所定軸径、すなわち半径方向に所定厚さを備える棒状であって第2接合方法とは接合部材4の突部4cの全部が変形せずに残っている点を除いて同様の密着面Cを有する負側外部端子3を製造することができる。なお、前記接合部材4として、突部4cが軸部4aから直接突き出る部材を使用すれば、同一径の軸部でなる負側外部端子(図示せず)を製造することができる。また、対をなす半割成形押し型6a,6bにより形成される凹部6cの横断面形状は図示しないが、矩形であってもよく、この場合には接合部材4の軸線と交差する方向に所定厚さの角柱状をなす負側外部端子(図示せず)を製造することができる。
【0043】
以上のとおり、本発明は突部4cを有する金属製の接合部材4の当該突部4cを、穴部5aを有しかつ金属製で柱状を成す被接合部材5の当該穴部5aに嵌合させ、被接合部材5を圧縮することにより、柱状の当該被接合部材5を所定厚みの平板状に成形しつつ、前記圧縮力を利用して被接合部材5を前記接合部材4との嵌合強度を高める方向に変形させ、これにより部材同士を密着させて接合することを特徴としている。この構成により、被接合部材5を圧縮して所定の厚みを備える平板状または棒状もしくは角柱状に成形することができる。また、これと同時に被接合部材5の余肉を接合部材4と被接合部材5との間の間隙に回り込ませることができ、接合部材4と被接合部材5とが隙間なく密着して接合する複合部品を製造することができる。さらに、被接合部材5は接合部材4と被接合部材5との接合と同時に成形されるので、被接合部材5をあらかじめ成形しておく工程が不要となり、複合部品の製造コストを低減することができる。
【0044】
本発明に係る被接合部材5の穴部5aは、袋穴であり、被接合部材5を所定厚みの平板状に成形する際の圧縮により接合部材4を外方にアンダーカット部4ccが生じるように扁平に変形させつつ、袋穴5aの内面の余肉をアンダーカット部4ccに回り込ませて密着させる構成であってもよい。この場合には、接合部材4と被接合部材5とが非貫通接合状態で、すなわち接合個所の気密性を保持して接合される複合部品を製造することができる。また、接合部材4のアンダーカット部4ccは被接合部材5の余肉が回り込む溝を形成することとなり、溝加工等の余分な加工を施すことなく両部材同士を抜脱不能に接合することができ、複合部品の製造コストをさらに低減することができる。さらに、前記アンダーカット部4ccの背面により被接合部材5の余肉がかしめられる状態となり、接合部材4と被接合部材5との密着性が向上し、大きな軸線方向の強度を得ることができる。
【0045】
本発明に係る被接合部材5の穴部5aを袋穴とし、被接合部材5を所定厚みの平板状に成形する際の圧縮により袋穴を穴径が狭まる方向に変形して、袋穴の内面を突部の外面に密着させる構成であることが望ましい。この場合には、被接合部材5は平板状に成形される際に、接合部材4の突部4cの形状によって接合部材4に対して抜脱可能にも、抜脱不能にも接合できる。
【0046】
本発明は、被接合部材5と接合部材4とを接合部材44cの突部が露出するように接合させるために、前記穴部5aを貫通孔とし、被接合部材5を所定厚みの平板状に成形する際の圧縮により貫通孔を穴径が狭まる方向に変形させて、貫通孔の内面を突部の外面に密着させる構成であることが望ましい。
【0047】
また、本発明は被接合部材5と接合部材4とを接合部材4の突部4cが露出するように接合させると同時に、円柱状または角柱状の成形ができるようにするために、前記穴部5aを貫通孔とし、所定壁厚みの柱状に成形する際の圧縮により貫通孔を孔径が狭まる方向に変形させて、貫通孔の内面を突部の外面に密着させる構成であることが望ましい。
【0048】
本発明に係る接合部材4は、突部4cが柱状であり、被接合部材を接合部材に嵌合させ、押し型内で外周囲を規制して被接合部材を予備成形した後、圧縮により平板状に成形されることが望ましい。この場合、被接合部材5の延性の良好でないときでも、被接合部材5を所定厚みの平板状に成形することができる。
【0049】
本発明のもう一つは、前述の第1接合方法により製造される接合構造である。この接合構造は、突部4cを有する金属製の接合部材4と、柱状を成し、かつ前記接合部材4の突部4cが挿入可能な穴部5aを有しかつこの穴部5aに前記接合部材4の突部4cが嵌合する状態で圧縮されることにより柱状から所定厚みの平板状に成形される被接合部材5と、前記圧縮に伴う前記被接合部材5の変形によって当該被接合部材5の穴部5aの内面に形成される前記突部4cへの密着面とを備えることを特徴としている。この構成により、前記接合部材4の突部4cを一部変形させたり、当該突部4cにあらかじめねじ山4eのような突起を設けたりするだけで大きな軸線方向の強度が得られる。
【0050】
なお、本発明の第1接合方法の各変形例はもちろんのこと、第2接合方法および第3接合方法においても、受け型6の水平方向配置、接合部材4よりも柔らかい材質の被接合部材5は適用可能である。また、本発明の各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0051】
3…負極側外部電極端子、
4…接合部材、
4a…軸部、
4b…段部、
4c…突部、
5…被接合部材、
5a…穴部、
5b…平板部、
6…受け型、
C…密着面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17