【文献】
XU, F. et al.,Organic Letters,2013年,Vol. 15, No. 6,pp. 1342-1345
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書においては、化合物I−3からβ−3作動薬製造の重要な中間体である化合物I−6の製造方法を記載している。
【化1】
【0007】
第1の実施形態において、化合物I−3から化合物I−6への多段階反応は、次の段階:
(a−2)KED酵素の存在下に、化合物I−3:
【化2】
【0009】
を製造する段階;
(b−2)触媒Dの存在下に、化合物I−4を化合物A−1:
【化4】
【0010】
とカップリングさせて、化合物I−5(a)を製造し、次に、酸によってイン・ジツで脱保護することで、化合物I−5(b):
【化5】
【0011】
を塩として得る段階;
(c−2)触媒Eの存在下に、化合物I−5(b)を環化および還元して、I−6−1を介して化合物I−6を製造する段階:
【化6】
【0012】
を含み、
ここで、P
1は、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、Ns、MozおよびTsからなる群から選択され;そして
Yは、Cl、I、BrおよびOTfから選択され;そして
Rは、H、TMS、TES、TBDMS、TIPSおよびTBDPSからなる群から選択され;そして
R
Nは、P
1またはHである。
【0013】
さらに、本明細書においては、多段階反応によって化合物I−3から化合物I−7を製造する方法について記載される。
【化7】
【0014】
第2の実施形態において、化合物I−3から化合物I−7への多段階反応は、次の段階:
(a−2)KRED酵素の存在下に、化合物I−3:
【化8】
【0015】
を還元して、化合物I−4:
【化9】
【0016】
を製造する段階;
(b−2)触媒Dの存在下に、化合物I−4を化合物A−1:
【化10】
【0017】
とカップリングさせて化合物I−5(a)を製造し、次にイン・ジツで酸で脱保護して、化合物I−5(b):
【化11】
【0018】
を塩として製造する段階;
(c−2)触媒Eの存在下に、化合物I−5(b)を環化および還元して、I−6−1を介して化合物I−6:
【化12】
【0019】
を製造する段階;
(d−2)カップリング剤および場合により塩基の存在下に、化合物I−6を化合物A−2:
【化13】
【0020】
とカップリングさせて、化合物I−7:
【化14】
【0021】
を製造する段階を含み、
ここで、P
1は、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、Ns、MozおよびTsからなる群から選択され;そして
Xは、Na、LiおよびKから選択され;
Yは、Cl、I、BrおよびOTfから選択され;そして
Rは、H、TMS、TES、TBDMS、TIPSおよびTBDPSからなる群から選択され;そして
R
Nは、P
1またはHである。
【0022】
さらに本明細書において、化合物I−1からβ−3作動薬を製造するための主要中間体である化合物I−6を製造する方法についても記載される。
【化15】
【0023】
第3の実施形態において、化合物I−1から化合物I−6への多段階反応は、次の段階:
(a−1)溶媒、酸化剤および触媒Aの存在下に、
化合物I−1:
【化16】
【0024】
を反応させて、イン・ジツでアルデヒドを形成し、次にX−CNおよびアンモニウム塩および保護試薬、P
12OまたはΡ
1Cl存在下で縮合することで、化合物I−2:
【化17】
【0025】
を製造する段階;
(b−1)フェニルグリニャール試薬の存在下に、化合物I−2を反応させて、化合物I−3:
【化18】
【0026】
を製造する段階;
(c−1)KRED酵素の存在下に、化合物I−3を還元して、化合物I−4:
【化19】
【0027】
を製造する段階;
(d−1)触媒Dの存在下に、化合物I−4を化合物A−1:
【化20】
【0028】
とカップリングさせて、化合物I−5(a)を製造し、次にイン・ジツで酸で脱保護して、化合物I−5(b):
【化21】
【0029】
を塩として製造する段階;
(e−1)触媒Eの存在下に、化合物I−5(b)を環化および還元することで、I−6−1を介して化合物I−6:
【化22】
【0030】
を製造する段階を含み、
ここで、P
1は、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、Ns、MozおよびTsからなる群から選択され;そして
Xは、Na、LiおよびKから選択され;
Yは、Cl、I、BrおよびOTfから選択され;そして
Rは、H、TMS、TES、TBDMS、TIPSおよびTBDPSからなる群から選択され;そして
R
Nは、P
1またはHである。
【0031】
一実施形態において、上記第1の実施形態に記載のように、段階(a−1)における溶媒は、THF、MTBE、CH
2Cl
2、MeCN、EtOAc、i−PrOAc、Me−THF、ヘキサン、ヘプタン、DMAc、DMF、メチルシクロペンチルエーテル、トルエンおよび前記溶媒の2以上を含む混合物からなる群から選択される。ある好ましい実施形態において、段階(a−1)で使用される溶媒はMeCNである。別の実施形態において、酸化剤はNaOCl、NaClO
2、PhI(OAc)
2、過酸化水素、ピリジン・三酸化硫黄/Et
3N/DMSOおよび各種モファット変種(Ketones: Dialkyl Ketones. Parkes, Kevin E. B. and Richardson, Stewart K. in Comprehensive Organic Functional Group Transformations, Volume 3, 1995, Pages 111−204、編者:Katrizky, Alan R.; Meth−Cohn, Otto; Rees, Charles Wayne, Elsevier, Oxford, UK参照)、PCC、DCC、スワン酸化(塩化オキサリル−DMSO−トリアルキルアミン;Ketones: Dialkyl Ketones. Parkes, Kevin E. B. and Richardson, Stewart K. in Comprehensive Organic Functional Group Transformations, Volume 3, 1995, Pages 111−204、編者:Katrizky, Alan R.; Meth−Cohn, Otto; Rees, Charles Wayne, Elsevier, Oxford, UK参照)またはその変種、TPAP/NMOからなる群から選択される。
【0032】
別の実施形態では、上記第1の実施形態に記載の段階(a−1)の酸化は、TEMPO/漂白剤/NaBr、TEMPO/トリクロロイソシアヌル酸、TEMPO/NCS/TBACl、TEMPO/NCS(これらに限定されるものではない)を含むTEMPOおよびその変形形態を含む、触媒Aを用いて行う。別の実施形態では、触媒Aは、臭化物塩の存在下または非存在下でのTEMPOまたはTEMPO類縁体である。別の実施形態では、好ましいTempo酸化組み合わせは、TEMPO−漂白剤−臭化物塩およびTEMPO−PhI(OAc)
2である。別の実施形態では、TEMPO−PhI(OAc)
2と、HOAcおよび水などの別の添加剤との組み合わせを用いる。別の実施形態では、保護基はBocである。さらに別の実施形態では、(Boc)
2OによるBoc保護を、EtOAcまたはi−PrOAcを用い、約35から約45℃の温度で行う。
【0033】
あるいは、化合物I−2は、亜硫酸水素塩付加物を介して製造することができる。
【化23】
【0034】
一実施形態において、上記第1の実施形態に記載の段階(b−1)における反応は、約−20℃から約40℃の温度で行う。別の実施形態において、上記第1の実施形態に記載の段階(b−1)における反応は、約−15℃から約5℃の温度で行う。
【0035】
別の実施形態において、上記第1の実施形態に記載の段階(b−1)における反応は、THF、MTBE、CH
2Cl
2、Me−THF、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロペンチルエーテル、トルエンおよび前記溶媒のうちの2以上を含む混合物からなる群から選択される溶媒の存在下に行う。
【0036】
別の実施形態において、上記第1の実施形態に記載の段階(b−1)におけるグリニャール試薬は、PhMgBrまたはPhMgClである。
【0037】
一実施形態において、上記第1、第2または第3の実施形態に記載の段階(c−1またはa2)におけるKRED酵素存在下での動的速度論的還元は、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその活性断片を含むポリペプチドである。別の実施形態において、上記第1、第2または第3の実施形態に記載の段階(c−1またはa2)における反応は、約pH8より高いpH範囲で行う。さらに別の実施形態において、上記第1、第2または第3の実施形態に記載の段階(c−1またはa2)における反応は、約10±0.5のpHで行う。別の実施形態において、上記第1、第2または第3の実施形態に記載の段階(c−1またはa2)における反応は、約30℃から約50℃の温度範囲で行う。さらに別の実施形態において、上記第1、第2または第3の実施形態に記載の段階(c−1またはa2)における反応は、約43℃から約47℃の温度範囲で行う。
【0038】
上記第1、第2または第3の実施形態に記載の段階(d−1またはb−2)で行われるソノガシラカップリング反応は、末端アルキンとアリールもしくはビニルハライドとのカップリングであり、パラジウム触媒、銅(I)共触媒またはアミン塩基を用いて行う(Sonogoshira, K. In Handbook of Organoパラジウム Chemistry for Organic Synthesis;Negishi, E., Ed.; Wiley−Interscience: New York, 2002;pp493−529参照)。一実施形態において、段階(d−1またはb−2)におけるソノガシラ反応で使用される触媒Dは、CuI、CuBrおよびCuClから選択される触媒量の材料の存在下または非存在下、Pd(PPh
3)
4、PdCl
2、(PPh
3)
2PdCl
2、Pd(dppe)Cl、Pd(dppp)Cl
2、Pd(dppf)Cl
2およびPd(OAc)
2/Ph
3Pまたは他の配位子からなる群から選択される。別の実施形態において、触媒組み合わせは、(PPh
3)
2PdCl
2およびCuIである。別の実施形態において、上記第1、第2または第3の実施形態に記載の段階(d−1またはb−2)における反応は、THF、IPA、MeOH、EtOH、n−PrOH、NMP、DMF、DMAc、MTBE、CH
2Cl
2、MeCN、Me−THF、メチルシクロペンチルエーテルおよびトルエン、および前記溶媒のうちの2以上を含む混合物、から選択される溶媒の存在下に行う。別の実施形態において、上記第1、第2もしくは第3の実施形態に記載の段階(d−1またはb−2)における反応は、THFおよびIPAの混合物から構成される溶媒の存在下に行う。一実施形態において、カーバメート保護基の脱離のために上記第1、第2もしくは第3の実施形態に記載の段階(d−1またはb−2)における反応で使用される酸は、HCl、HBr、TFA、MeSO
3H、H
2SO
4、p−トルエンスルホン酸、フェニルスルホン酸、カンファースルホン酸、ブロモ−カンファースルホン酸、および、RSO
3H(RはC
1−6アルキル、アリールまたは置換されたアリールである。)などの他のスルホン酸から選択される。別の実施形態において、上記第1、第2もしくは第3の実施形態に記載の段階(d−1またはb−2)における反応で使用される塩は、HClである。さらに別の実施形態において、上記第1、第2もしくは第3の実施形態に記載の段階(d−1またはb−2)における反応生成物は、固体HCl塩として単離される。
【0039】
一実施形態において、上記第1、第2もしくは第3の実施形態に記載の段階(e−1またはc−2)において、化合物I−5(b)酸性塩を、Et
3N、i−Pr
2NEt、i−Pr
2NH、ピリジン、ルチジン、N−メチルモルフィン、t−BuOK、t−BuONa、t−BuOLi、NaH、NaHMDS、LiHMDSおよびKHMDS(これらに限定されるものではない)から選択される塩基と反応させて、分子内環化反応により化合物I−6−1を製造する。
【化24】
【0040】
一実施形態において、塩基は、Et
3N、i−Pr
2NEtまたはi−Pr
2NHである。別の実施形態において、塩基はi−Pr
2NEtである。
【0041】
一実施形態において、化合物I−6−1を、触媒の存在下に還元して化合物I−6とする。
【化25】
【0042】
I−6−1からI−6への変換の反応条件は、シス選択的水素化法を用いて制御することができる。一実施形態において、上記第1、第2もしくは第3の実施形態に記載の段階(e−1またはc−2)のシス選択的水素化は、Pt/アルミナ、Pd/アルミナ、Rh/アルミナ、Pd/C、Pd(OH)
2−C、Pt/アルミナ−V/炭素またはバナジウム酸塩、ラネーNi、Rh/C、Rh/Al、Pt/C、Ru/CおよびPtO
2からなる群から選択される触媒Eの存在下に行う。別の実施形態において、触媒EはPt/アルミナである。
【0043】
別の実施形態において、段階(e−1またはc−2)におけるI−6−1からI−6へのシス選択的水素化は、水酸基をイン・ジツで保護しジアステレオマー選択性を高めるヒドロキシル保護試薬の存在下に行う。保護試薬は、TMSCl、HMDS、TESCl、TIPSClおよびTBDMSClから選択することができる。別の実施形態において、保護試薬はTMSClである。
【0044】
一実施形態において、上記第1、第2もしくは第3の実施形態に記載の段階(e−1またはc−2)の水素化反応は、約10℃から約70℃で行う。別の実施形態において、上記第1、第2もしくは第3の実施形態に記載の段階(e−1またはc−2)の水素化反応は、約20℃から約50℃で行う。さらに別の実施形態において、上記第1、第2もしくは第3の実施形態に記載の段階(e−1またはc−2)の水素化反応は、約20℃で次に約50℃で段階的に行う。
【0045】
別の実施形態において、上記第1、第2もしくは第3の実施形態に記載の段階(e−1またはc−2)の還元反応は、水素ガスの存在下に行う。別の実施形態において、水素ガスの圧力は、約15から約400psi(約0.10から約2.76MPa)の範囲である。さらに別の実施形態において、水素ガスの圧力は約50から約100psi(約0.34から約0.69MPa)の範囲である。
【0046】
I−6とA−2の間の反応は、カップリング試薬の存在下に行うことができる。好適なカップリング試薬には、CDI、DCC、EDC、EDCメチオジド、T3P、HATU、HBTUおよび混合無水物を含み、これらに限定されるものではない。別の実施形態において、カップリング剤は、DCC、EDCまたはEDCメチオジドである。さらに別の実施形態において、カップリング試薬はEDCである。
【0047】
I−6とA−2との間の反応は、溶媒の存在下に行うことができ、その際に基質は、HCl、MeSO
3H、H
2SO
4などの酸で処理して、2級ピロリジンアミンを選択的に保護する。好適な溶媒には、MeOH、EtOH、イソプロピルアルコール(IPA)、n−PrOH、MeCN、DMF、DMAc、NMP、THF、EtOAc、IPAcまたはトルエンなどの水系および非水系の両方の溶媒を含み、これらに限定されるものではない。
【0048】
I−6とA−2との間の反応に、促進剤を用いることができる。好適な促進剤には、HOBTおよびHOPOを含み、これらに限定されるものではない。
【0049】
I−6とA−2との間の反応についての好適なpH値は、約2.5から約5.0、またはより具体的には約3.0から約4.0、またはさらにより具体的には約3.0から約3.5であることができる。そのpHは、HCl、HBr、HI、HNO
3、H
2SO
4、H
3PO
4、TFAおよびMeSO
3Hなどの酸を用いて所望の範囲に調節することができる。一実施形態において、pHは約3.0から約3.7である。別の実施形態において、pHは約3.3から約3.5である。
【0050】
一実施形態において、上記第2または第3の実施形態に記載の段階(d−2)における反応は、塩基の存在下に行う。さらに別の実施形態において、上記第2または第3の実施形態に記載の段階(d−2)における反応は、ピリジンまたはピリジン塩の存在下に行う。ピリジン塩には、相当するHCl塩、H
2SO
4塩、H
3PO
4塩、HBr塩、HI塩、HNO
3塩またはMeSO
3H塩を含み、これらに限定されるものではない。
【0051】
上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、KRED酵素には、配列番号1に記載のポリペプチド配列またはその活性断片を含む。
【0052】
上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、KRED酵素に加えて、補因子再利用系も存在する。好適な補因子再利用系には、配列番号1のポリペプチドのようなKRED酵素およびグルコースデヒドロゲナーゼ酵素を含み、これらに限定されるものではない。
【0053】
上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、配列番号1に記載のポリペプチド配列を含むKRED酵素またはその活性断片および補因子再利用系が、I−3からI−4への還元において存在する。
【0054】
上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、KRED酵素に加えて、水素化物を供与することができる補因子分子も存在する。一実施形態において、補因子はNADHおよびNADPHからなる群から選択される。
【0055】
上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、KRED酵素に加えて、補因子分子の再利用のために水素化物を提供することができる補基質分子も存在する。一実施形態において、補基質は、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノールおよび2−オクタノールを含む2級アルコールの群から選択され、これらに限定されるものではない。
【0056】
上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、I−3からI−4への酵素的還元は、溶媒中で行う。好適な溶媒は、2−プロパノール、sec−ブタノール、イソ−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、DMSO、DMF、DMAcおよびNMPならびにそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。一実施形態において、溶媒は2−プロパノールである。
【0057】
上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、I−3からI−4への動的速度論的分割(DKR)還元に好適な温度は、約0℃から約60℃、またはより具体的には約30℃から約50℃、またはさらにより具体的には約43℃から約47℃の範囲である。一実施形態において、温度は約45℃である。
【0058】
上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、KRED酵素を補因子再利用系と組み合わせて、NADPH補因子を用いて化合物I−3を還元して、化合物I−4を得る。I−3からI−4へのKRED触媒還元に好適な反応条件を、下記および実施例に提供する。
【0059】
上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、KRED酵素またはその活性断片は、固体支持体上に固定化することができる。一部の実施形態において、本開示のケトレダクターゼ活性を有するKRED酵素またはその活性断片を固体支持体に固定化して、配列番号1の基準ポリペプチドまたはその活性断片と比較して改善された活性、立体選択性および/または改善された他の特性が保持されるようにすることができる。そのような実施形態において、固定化ポリペプチドは、化合物I−3の基質またはその構造的類縁体の化合物I−4の生成物または相当する構造的類縁体(例えば、本明細書に記載の図式1の方法で示したもの)へのバイオ触媒変換を促進することができ、その反応が完了した後、容易に保持され(例えば、ポリペプチドが固定化された保持ビーズによって)、そしてその後の反応で再使用または再利用される。そのような固定化酵素法によって、さらなる効率およびコスト削減が可能となる。従って、本開示のKRED酵素またはその活性断片のいずれの使用方法も、固体支持体に結合または固定化された同じKRED酵素またはその活性断片を用いて行うことが可能であることがさらに意図される。
【0060】
酵素固定化方法は当業界で公知である。KRED酵素は、非共有結合的にまたは共有結合的に結合することができる。酵素の固体支持体(例えば、樹脂、膜、ビーズ、ガラスなど)の結合および固定化の各種方法は当業界で公知であり、例えばYi et al.,″Covalent immobilization of ω−transaminase from Vibrio fluvialis JS17 on chitosan beads,″ Process Biochemistry 42(5): 895−898 (May 2007); Martin et al., ″Characterization of free and immobilized (S)−aminotransferase for acetophenone production,″ Applied Microbiology and Biotechnology 76(4):843−851 (Sept. 2007); Koszelewski et al.,″Immobilization of ω−transaminases by encapsulation in a sol−gel/celite matrix,″ Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic, 63: 39−44 (Apr. 2010); Truppo et al.,″Development of an Improved Immobilized CAL−B for the Enzymatic Resolution of a Key Intermediate to Odanacatib, ″Organic Process Research & Development, published online: dx.doi.org/10.1021/op200157c; Hermanson, G. T., Bioconjugate Techniques, Second Edition, Academic Press (2008); Mateo et al, ″Epoxy sepabeads: a novel epoxy support for stabilization of industrial enzymes via very intense multipoint covalent attachment, ″Biotechnology Progress 18(3):629−34 (2002); and Bioconjugation Protocols: Strategies and Methods, In Methods in Molecular Biology, C. M. Niemeyer ed., Humana Press (2004)(それぞれの開示内容は参照によって本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0061】
本開示のKRED酵素を固定化する上で有用な固体支持体には、エポキシド官能基を有するポリメタクリレート、アミノエポキシド官能基を揺するポリメタクリレート、スチレン/DVBコポリマーまたはオクタデシル官能基を有するポリメタクリレートを含むビーズまたは樹脂を含み、これらに限定されるものではない。本開示のKRED酵素を固定化するのに有用な固体支持体の例には、キトサンビーズ、Eupergit(登録商標)CおよびSEPABEADS(登録商標)(Mitsubishi Chemical Company)、例えば次の各種SEPABEAD(登録商標):HP2MG;EC−EP、EC−HFA/S;EXA252、EXE119およびEXE120を含み、これらに限定されるものではない。一部の実施形態において、固体支持体は、カーボネート含有ビーズまたは樹脂であることができる。
【0062】
オキシドレダクターゼの種類に属するKRED酵素は、相当するラセミ体アルデヒドおよびケトン基質の立体特異的還元による相当するプロ立体異性体ケトン基質からの光学活性アルコールの合成に有用である。単離ケトレダクターゼは、ニコチンアミド補因子の存在を必要とする。水素および2個の電子が、還元されたニコチンアミド補因子(NADHまたはNADPH)から基質のカルボニル基に移動して、キラルアルコールの還元を行う。
【0063】
上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、化合物I−7は、結晶性無水遊離塩基の形態で得られる。上記で挙げた第1、第2または第3の実施形態において、化合物I−7は、結晶性遊離塩基半水和物の形態で得られる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、指定数の炭素原子を有する分岐および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、C
1−6アルキルには、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(Pr)、n−ブチル(Bu)、n−ペンチル、n−ヘキシル、ならびにイソプロピル(i−Pr)、イソブチル(i−Bu)、sec−ブチル(s−Bu)、tert−ブチル(t−Bu)、イソペンチル、sec−ペンチル、tert−ペンチルおよびイソヘキシルなどのそれらの異性体を含み、これらに限定されるものではない。
【0065】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、芳香族炭素環を指す。例えば、アリールには、フェニルおよびナフタリルを含み、これらに限定されるものではない。
【0066】
本願を通じて、下記の用語は、別段の断りがない限り、次に示した意味を有する。
【0067】
用語:意味
Ac:アシル(CH
3C(O)−)
Bn:ベンジル
BOC(Boc):t−ブチルオキシカルボニル
(Boc)
2O:ジ−tert−ブチルジカーボネート
t−BuOK:カリウムtert−ブトキシド
t−BuOLi:リチウムtert−ブトキシド
t−BuONa:ナトリウムtert−ブトキシド
Bz:ベンゾイル
Cbz:カルボベンジルオキシ
CDI:1,1′カルボニルジイミダゾール
DCC:N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM:ジクロロメタン
DKR:動的速度論的分割
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DMPM:3,4−ジメトキシベンジル
DMSO:ジメチルスルホキシド
DABCO:1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
dr(Dr):ジアステレオマー比
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ee:エナンチオ過剰
Et:エチル
EtOAc:酢酸エチル
FMOC:9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート
HBTU:O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート)
HMDS:ヘキサメチルジシラザン
HOBT:1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール
HOPO:2−ヒドロキシピリジン−N−オキサイド
Immobead(商標)150A:マクロ多孔性アクリルポリマーの非極性酵素キャリアビーズ
IPA:イソプロピルアルコール
KHMDS:カリウムビス(トリメチルシリル)アミド
KRED:ケトレダクターゼ
LC/MSまたはLC−MASS:液体クロマトグラフィー質量スペクトラム
LCAP:液体クロマトグラフィー面積パーセント
Me:メチル
MozまたはMeOZ:p−メトキシベンジルカルボニル
MTBE:メチルtert−ブチルエーテル
NaHMDS:ナトリウムヘキサメチルジシラジド
NADP:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸ナトリウム塩
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
Ns:4−ニトロベンゼンスルホニル
OTf:トリフレート
PCC:クロロクロム酸ピリジニウム
5%Pd/Al
2O
3:5重量パーセント酸化アルミニウム担持パラジウム
5%Pd/C:5重量パーセント活性炭担持パラジウム
10%Pd/C:10重量パーセント活性炭担持パラジウム
PdCl
2:塩化パラジウム(II)
(PPh
3)
2PdCl
2:ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド
Pd(
dppe)Cl
2:1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンクロロパラジウム
Pd(
dppp)Cl
2:1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンジクロロパラジウム(II)
Pd(
dppf)Cl
2:1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)
PhI(OAc)
2:ヨードベンゼンジアセテート
PhMgBr:フェニルマグネシウムブロマイド
(PPh
3)
2PdCl
2:トリフェニルホスフェート・パラジウムクロライド
5%Pt/Al
2O
3:5重量パーセント酸化アルミニウム担持白金
Ph:フェニル
i−PrOAc:酢酸イソプロピル
PrOH:プロピルアルコール
i−Pr
2NEt:ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)
i−Pr
2NH:ジイソプロピルアミン
5%Rh/Al
2O
3:5重量パーセント酸化アルミニウム担持ロジウム
T3P:プロパンホスホン酸無水物
TBACl:塩化テトラブチルアンモニウム
TBDMS:t−ブチルジメチルシリル
TBDPS:tert−ブチルジフェニルシリルエーテル
TBDMSCl:tert−ブチルジメチルシリルクロライド
TEAまたはΕt
3N:トリエチルアミン
TEMPO:1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
TES:トリエチルシリル
TESCl:トリエチルクロロシラン
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
TIPS:トリイソプロピルシリル
TIPSCl:トリイソプロピルクロロシラン
TMS:トリメチルシリル
TMSCl:トリメチルクロロシラン
TPAP/NMO:過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム/N−メチルモルホリン−N−オキサイド
Ts:p−トルエンスルホニル
XRPD:X線粉末回折。
【0068】
下記の反応図式は、本明細書に記載の化合物の合成で使用される合成段階、試薬および条件を示すものである。本発明の主題である化合物I−7の合成は、1以上の同様の経路によって行うことができる。
【0069】
実施例1
化合物I−6およびI−7の製造
化合物I−6およびI−7は、図式1で下記に記載のように化合物I−1から製造することができる。
【0070】
注:括弧[ ]に入った化合物は、単離されていない中間体を指す。
【化26】
【0071】
図式1において、4−ペンチン−1−オール(I−1)から出発して、TEMPO−PhI(OAc)
2酸化とそれに続くストレッカー反応(Nitriles: General Methods and Aliphatic Nitriles. North, Michael, Comprehensive 有機 Functional Group Transformations, Volume 3, 1995, pp.611−640、編者:Katrizky, Alan R.; Meth−Cohn, Otto; Rees, Charles Wayne, Elsevier, Oxford, UK参照)、およびイン・ジツでのBoc保護を介して、いずれの中間体も単離せずにI−2を製造した。化合物I−2は、固体として単離することができた。I−2をフェニルグリニャールで処理することで、ラセミ体ケトンI−3を得て、それを次に、酵素的(動的速度論的分割)DKR還元条件下に、二つの立体中心が1段階で作られるようにして、光学的に純粋なアルコールI−4に選択的に変換した。次に、ソノガシラ反応とそれに続く脱保護を介してI−5を製造し、結晶性HCl塩として単離した。温DMAc−THF中で、I−5 HCl塩のヒューニッヒ塩基(ジイソプロピルエチルアミン;ケトン類: α,β−不飽和ケトン類. Ebenezer、Warren J. and Wight, Paul、Comprehensive Organic Functional Group Transformations, Volume 3, 1995, pp.205−276、編者:Katrizky, Alan R.; Meth−Cohn, Otto; Rees, Charles Wayne, Elsevier, Oxford, UK参照)による処理によって、環化中間体I−6−1を得て、それをさらにTMSClで処理して、イン・ジツでOHを保護した。そうして、次にワンポット立体選択的水素化によって、所望のシス異性体を高収率で得た。最後に、I−6とピリミジノン酸A−2のナトリウム塩とのEDCカップリングによって、I−7の製造を完了した。詳細な実験条件を下記で説明する。
【0072】
段階1.化合物I−1からの化合物I−2の製造
【化27】
【0073】
オーバーヘッド撹拌機を取り付けた250mL三頸丸底フラスコに、4−ペンチン−1−オール(1−1)(10g、0.119mol)、アセトニトリル(100mL)、水(0.5mL)、酢酸(1.0mL)およびTEMPO(0.92g、5.8mmol)を入れた。冷水浴で内部温度を20から25℃に維持しながら、ヨードベンゼンジアセテート(39.4g、0.124mol)を、2.5時間かけて少量ずつ加えた。反応を室温で3.5時間熟成させた。その溶液を、次のストレッカー反応で直接用いた。
【0074】
オーバーヘッド撹拌機を取り付けた500mL三頸丸底フラスコに、水(40mL)、水酸化アンモニウム(28重量%、40mL)、酢酸アンモニウム(11.45g、0.149mol)およびシアン化カリウム(9.68g、0.149mol)を入れた。撹拌して固体を溶解した後、内部温度を<40℃に維持しながら、上記の酸化からの粗アルデヒド溶液を滴下した。反応液を45℃で7から10時間撹拌した。
【0075】
内部温度を<25℃に維持しながら、アセトニトリルを減圧下に除去した。EtOAc(200mL)を加えた。有機層を分離した。
【0076】
段階2.化合物I−2の結晶化
上記の粗有機溶液に、(BOC)
2O(26.0g、0.119mol)を加えた。反応混合物を35から40℃に徐々に昇温させ、35から40℃でさらに14時間熟成させた。そのバッチを環境温度に冷却し、7.5重量%NaHCO
3水溶液(50mL)を加えた。内部温度を35から45℃に維持しながら、分離された有機層について、減圧下に最終体積約300mLにヘプタンで溶媒切り換えを行った。得られたスラリーを20℃で2時間熟成させてから濾過した。湿ったケーキをヘプタン(100mL)で洗浄し、40℃で真空乾燥機乾燥して、生成物化合物I−2 18.3gを得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ5.09(s、br、1H)、4.74(s、br、1H)、2.43(m、2H)、2.08(t、J=2.8Hz、1H)、2.04(m、2H)、1.47(s、9H)。
【0077】
13C NMR(100MHz、CDCl
3):δ154.4、118.5、81.4、70.9、41.8、32.1、28.4、15.1。
【0078】
化合物I−2についての別途結晶化手順
分離された有機層を減圧下にて約50mLに濃縮し、それを次に、生成物(125mg)のシードを加えたヘプタン(375mL)のスラリーに、15から25℃で数時間かけて加えた。次に、そのバッチについて、内部温度を30℃以下に維持しながら、減圧下に最終体積250mLにヘプタンで溶媒切り換えした。得られたスラリーを20℃で2時間熟成させてから、濾過した。湿ったケーキをヘプタン(100mL)で洗浄し、40℃で真空乾燥機乾燥して、生成物化合物I−2 18.3gを得た。
【0079】
段階3.化合物I−2からの化合物I−3の製造
【化28】
【0080】
PhMgBrの溶液(1モル濃度、「M」、THF中、106mL、0.106mol)に、−10℃で、BocアミノニトリルI−2(10g、0.048mol)のTHF(20mL)中溶液を2から3時間かけて滴下した。反応スラリーを0℃でさらに4時間熟成させた。反応混合物を、内部温度を20℃以下に維持しながら、10重量%クエン酸水溶液(135mL)に、−5℃から0℃で0.5から1時間かけて加えた。反応停止した二層溶液を環境温度で1時間撹拌し、層を分離した。有機層を10%ブライン(20mL)で洗浄した。有機層について共沸的に最終体積約65mLにイソプロパノールで溶媒交換した。その溶液を35℃に加熱して、水(約25mL)を加えた。バッチにシードを入れた。35℃で30分間熟成した後、水(65mL)を1時間かけて滴下した。スラリーを35℃でさらに30分間熟成させ、環境温度に冷却した。バッチを数時間撹拌してから、濾過した。湿ったケーキを30%イソプロパノール/水(40mL)で洗浄した。窒素気流を用いる50℃での真空乾燥機乾燥によって、化合物I−3を得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ8.02(m、2H)、7.61(m、1H)、7.50(m、2H)、5.47(m、1H)、5.42(m、1H)、2.37(m、1H)、2.27(m、1H)、2.15(m、1H)、2.01(t、J=2.3Hz、1H)、1.75(m、1H)、1.46(s、9H)。
【0081】
13C NMR(100MHz、CDCl
3):δ198.9、155.8、134.6、134.1、129.1、129.0、83.3、80.2、69.6、54.5、32.9、28.6、15.2。
【0082】
段階4.化合物I−3からの化合物I−5の製造
【化29】
【0083】
テトラホウ酸ナトリウム・10水和物(18.7g、4.9mmol)の水(1リットル)中溶液に、環境温度で、5規定(「N」)NaOHを加えてpH約10とした。配列番号1を有するDKR酵素(2g)を加え、緩やかに撹拌して溶解させた。β−NADP−Na(0.2g、0.26mmol)の水(20mL)中溶液と次にフェニルケトンI−3(100g、0.348mol)のi−PrOH(1リットル)中溶液を環境温度で加えて、十分に混和した。バッチを45℃で少なくとも24時間撹拌した。バッチを環境温度に冷却し、MTBE(1リットル)を加えた。分離された水層をMTBE(0.5リットル)およびi−PrOH(0.5リットル)で抽出した。合わせた有機層を水(1リットル)で洗浄した。分離された有機層を、内部温度を45℃以下に維持しながら、減圧下に、最終体積約0.3リットルに共沸脱水した。得られた粗溶液を次の段階に直接用いた。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):主要回転異性体:δ7.34(m、4H)、7.28(m、1H)、4.75(s、br、1H)、4.73(m、1H)、3.82(m、1H)、3.27(s、1H)、2.27(m、2H)、1.97(t、J=2.6Hz、1H)、1.83(m、1H)、1.72(m、1H)、1.37(3、9H)。
13C NMR(100MHz、d
6−DMSO):主要回転異性体:δ156.7、141.9、128.5、127.9、126.5、83.9、79.9、76.0、69.1、56.2、30.6、28.5、15.7。
【0084】
その粗溶液に、THF(0.3リットル)を加え、次にp−ヨードニトロベンゼン(90.4g、0.363mol)を加えた。窒素で真空脱気した後、ビイソトリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロライド(2.43g、0.35mmol)と次にCuI(1.3g、0.68mmol)およびトリエチルアミン(36.7g、0.363mol)を加えた。バッチを環境温度で3時間撹拌した。i−PrOAc(1リットル)を加えた。バッチを10%NH
4Cl水溶液で2回(0.3リットルで2回)、1N HCl(0.3リットル)および水(0.3リットル)で洗浄した。分離された有機層について、内部温度を45℃以下に維持しながら、減圧下、共沸的にi−PrOHに溶媒切り換えして、最終体積約0.6リットルでスラリーを得た。濃HCl(37%)を加え、バッチを60℃で5時間撹拌した。スラリーを環境温度に冷却し、3時間熟成させてから濾過した。湿ったケーキを、i−PrOH(0.2リットル)と次にTHF(0.2リットルで2回)で置換洗浄した。湿ったケーキを、THF(0.76リットル)中、60℃で4時間にわたりスラリー化した。そのスラリーを濾過し、THFで置換洗浄した(0.2リットルで2回)。窒素気流を用いる40℃での真空乾燥機乾燥によって、化合物I−5 HCl塩を得た。
1H NMR(500MHz、CD
3OD):δ8.19(m、2H)、7.55(m、2H)、7.47(m、2H)、7.41(m、2H)、7.36(m、1H)、4.71(d、J=7.8Hz、1H)、2.54(t、J=7.2Hz、2H)、1.88(m、2H)。
【0085】
13C NMR(125MHz、CD
3OD):δ148.6、142.0、133.7、131.6、130.1、129.9、128.2、124.7、94.4、81.5、74.3、57.9、29.7、16.8。
【0086】
結晶性HCl塩型の化合物I−5(b)は、面間隔dでの下記の反射によりXRPDによって特性決定することができる。
【表1】
【0087】
段階5.化合物I−5(b)からの化合物I−6の製造
【化30】
【0088】
アミノアルコール・HCl塩(I−5(b))(100g、0.288mol)のTHF(500mL)およびDMAc(100mL)中のスラリーに、内部温度を25℃以下に維持しながら、窒素下、i−Pr
2NEt(151mL、0.87mol)を滴下した。バッチを55から65℃で3から5時間撹拌し、0から15℃に冷却した。TMSCl(55.3mL、0.433mol)を、内部温度を0から15℃に維持しながら1時間かけて滴下した。さらに0.5から1時間後、MeOH(35mL、0.87mol)を0.5時間かけて滴下し、バッチをさらに0.5時間熟成させた。反応液を、Pt/Al
2O
3(5重量%、15g)のTHF(500mL)中スラリーに環境温度で加えた。反応混合物を50から100psi(0.34MPaから0.69MPa)のH
2で20℃にて18時間水素化し、次にさらに50℃で6時間水素化した。次に、触媒をSOLKA−FLOC(登録商標)層での濾過によって除去し、THF(400mL)で洗浄した。バッチ温度を25℃以下に維持しながら、HCl(0.6N、約1.2リットル)を滴下してpH=2とした。バッチを環境温度で1時間撹拌した。酢酸イソプロピル(300mL)を加えた。所望の水層を分離し、酢酸イソプロピル(400mL)を加えた。次に、5N NaOH(約30mL)を滴下してpH=10に調節した。有機層を分離し、環境温度にて活性炭(Cuno活性炭、10g)で1時間処理した。炭素を濾過によって除去し、濾液について体積約35mLにIPAで溶媒切り換えを行った。バッチを50℃に昇温させ、水(30mL)を滴下した。次に、バッチに42℃でシードを加え、追加の水(50mL)を2時間かけて滴下した。添加後、バッチを10℃に徐々に冷却し、さらに数時間熟成させてから濾過した。湿ったケーキを25%IPA/水(50mL)で洗浄した。吸引乾燥によって、化合物I−6半水和物を得た。
【0089】
1H NMR(d
6−DMSO)δ7.27(m、4H)、7.17(m、1H)、6.81(d、J=8.1、2H)、6.45(d、J=8.1Hz、2H)、5.07(s、br、1H)、4.75(s、2H)、4.18(d、J=7.0Hz、1H)、3.05(m、2H)、2.47(dd、J=13.0、6.7Hz、1H)、2.40(dd、J=13.0、6.6Hz、1H)、1.53(m、1H)、1.34(m、1HO、1.22(m、2H)。
【0090】
13C NMR(d
6−DMSO)δ146.5、144.3、129.2、127.8、127.4、126.8、126.7、114.0、76.8、64.4、60.1、42.1、30.2、27.2。
【0091】
段階6a.化合物A−2の製造
【化31】
【0092】
段階6.化合物I−6および化合物A−2からの化合物I−7の製造
【化32】
【0093】
N
2導入管、熱電対プローブを取り付けた三頸フラスコに、ピロリジン半水和物I−6(10.3g)、ナトリウム塩A−2(7.87g)と、次にIPA(40mL)および水(24mL)を加えた。バッチ温度を35℃以下に維持しながら、5N HCl(14.9mL)を20分間かけてゆっくり加えて、pH=3.3から3.5に調節した。固体EDC塩酸塩(7.47g)を、30分間かけて少量ずつ加えた。反応混合物を室温でさらに0.5から1時間熟成させ、アンモニア水(14%)を滴下してpH約8.6とした。バッチにシードを加え、さらに1時間熟成させて、スラリー床を形成した。残りのアンモニア水(14%、合計53.2mL)を6時間かけて滴下した。得られた粘稠スラリーを2から3時間熟成させてから、濾過した。濡れたケーキを、30%IPA(30mL)、次に15%IPA(20mLで2回)および水(20mLで2回)で置換洗浄した。ケーキを終夜N
2下に吸引乾燥して、化合物I−7 14.3gを得た。
【0094】
1H NMR(DMSO)δ10.40(s、NH)、7.92(d、J=6.8、1H)、7.50(m、2H)、7.32(m、2H)、7.29(m、2H)、7.21(m、1H)、7.16(m、2H)、6.24(d、J=6.8、1H)、5.13(dd、J=9.6、3.1、1H)、5.08(brs、OH)、4.22(d、J=7.2、1H)、3.19(p、J=7.0、1H)、3.16−3.01(m、3H)、2.65(m、1H)、2.59−2.49(m、2H)、2.45(brs、NH)、2.16(ddt、J=13.0、9.6、3.1、1H)、1.58(m、1H)、1.39(m、1H)、1.31−1.24(m、2H)。
【0095】
13C NMR(DMSO)δ167.52、165.85、159.83、154.56、144.19、136.48、135.66、129.16、127.71、126.78、126.62、119.07、112.00、76.71、64.34、61.05、59.60、42.22、31.26、30.12、27.09、23.82。
【0096】
化合物I−7の結晶性遊離塩基無水I型について、面間隔dでの下記の反射によりXRPDによって特性決定することができる。
【表2】
【0097】
実施例2
化合物I−6から化合物I−7の製造
N
2導入管、熱電対プローブを取り付けた三頸フラスコに、ピロリジン半水和物I−6(10.3g)、ナトリウム塩A−2(7.87g)と、次にIPA(40mL)、ピリジン(0.42mL)および水(21mL)を加えた。バッチ温度を25℃以下に維持しながら、5N HCl(14.9mL)を20分間かけてゆっくり加えてpH=3.1から3.7に調節した。バッチを5から10℃に冷却した。バッチ温度を15℃以下に維持しながら、固体EDC塩酸塩(7.5g)を、30分から1時間かけて少量ずつ加えた。反応混合物を5から10℃でさらに0.5から1時間熟成させた。IPA(8mL)および水(7mL)を室温で加えた。アンモニア水(10%、約3.5mL)を滴下して、pH約7.9とした。バッチにシードを加え、さらに1時間熟成させて、スラリー床を形成した。追加のアンモニア水(10%、32mL)を6から10時間かけて滴下した。得られた粘稠スラリーを2から3時間熟成させてから、濾過した。濡れたケーキを30%IPA(30mL)と、次に15%IPA(20mLで2回)および水(20mLで2回)で置換洗浄した。ケーキを、終夜N
2下で吸引乾燥して、化合物I−7 14.3gを得た。
【0098】
実施例3
KRED酵素の固定化
リン酸ナトリウムカリウム(6.097g、3.5mmol)の水(35mL)中溶液に、環境温度で、KRED酵素(875mg)およびNADP(70mg)を加え、ゆっくり撹拌しながら溶解させた。ポリメタクリル酸樹脂DIAION(商標名)HP2MG(MITSUBISHI CHEMICALS)(10g)を加えた。混合物を25℃で少なくとも16時間にわたりゆっくり撹拌した。樹脂から全溶液を排液した。濡れた樹脂を二塩基リン酸カリウム溶液で洗浄し、次に排液した。濡れた樹脂を4℃で保存した。
【0099】
ケトン還元手順
固定化したKRED酵素(120mg)を、固定化カーボネート(50mg)を含む90%IPA/10%水混合物に溶かしたケトン(50mg)の溶液に加えた。混合物を25℃で少なくとも24時間撹拌した。バッチを濾過し、濃縮した。
【0100】
実施例4
樹脂Immobead(商標名)150A(IB−150A)によるKRED酵素の固定化
pH7.0の0.1Mリン酸ナトリウムカリウム溶液(20mL)に、環境温度で、配列番号1を有するKRED酵素(2g)を加え、ゆっくり撹拌しながら溶解させた。樹脂IB−150A(10g)(ChiralVision(商標名)(オランダ)から市販)を加え、25℃で24から48時間熟成させた。樹脂を濾過して全溶液を除去し、pH7の0.1Mリン酸ナトリウムカリウム溶液で3回洗浄し、乾燥させた。樹脂を4℃で用時まで保存した。
【0101】
固定化KRED酵素によるケトン還元によるフェニルアルコールの製造
1リットルフラスコに、25℃でIPA 360mLおよび水40mL、次にケトンI−3(21g、73.1mmol)および1,4−ジアザビシクロオクタン(41.0g、365mmol)を加えた。全てが溶解するまで混合物を撹拌した。固定化した配列番号1(10.5g、50重量%)をフラスコに加え、反応混合物をゆっくり撹拌しながら50℃に加熱した。約28時間熟成させ、反応では典型的には、変換率98%、99%eeおよび100:1Drが得られた。反応液を25℃に冷却し、濾過して固定化配列番号1を除去し、IPA 100mL(5倍体積)で洗った。回収した固定化配列番号1は、ケトン/DABCO IPA/水溶液の新鮮な溶液に加え、変換および選択性についての規格に達する間は9回まで再利用することができる。固定化酵素を除去した後、粗反応溶液を共沸脱水して水を除去し、反応体積を約5倍体積IPAまで減じた。リン酸(5当量、DABCOと1:1比)を25℃で加え、得られたスラリーを4時間熟成させた。そのスラリーを濾過して、少なくとも96%のDABCO塩を溶液から除去した。フェニルアルコールの粗溶液を次の段階で直接用いた。
【0102】
以上、ある特定の実施形態を参照しながら、本発明について記載および説明したが、本発明の主旨および範囲を逸脱しない限りにおいて、各種の変更、修正および置き換えを行うことが可能であることは当業者には明らかであろう。従って、本発明は添付の特許請求の範囲によって定義され、そのような特許請求の範囲は妥当な限り広く解釈されるものである。