特許第6383413号(P6383413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383413非同期機を作動するための方法および装置ならびに非同期機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383413
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】非同期機を作動するための方法および装置ならびに非同期機
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/08 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   H02P23/08
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-522364(P2016-522364)
(86)(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公表番号】特表2016-523506(P2016-523506A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2014061525
(87)【国際公開番号】WO2014206692
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】102013212054.0
(32)【優先日】2013年6月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイフェン,マンフレート
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−092803(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0018603(US,A1)
【文献】 特開平05−168274(JP,A)
【文献】 特開2005−130601(JP,A)
【文献】 特開2010−028921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(3)およびステータ(2)を備える非同期機(1)を作動する方法であって、
非同期機(1)のトルクが、ステータ(2)の回転磁界の目標磁束を設定し、ロータ(3)のロータ回転数と、回転磁界の回転数との間の目標滑りを設定することにより調節される方法において、
少なくとも負荷状態で、ステータの回転磁界の目標回転周波数がゼロに等しい場合に、回転磁界の実際回転周波数がゼロに等しくなくなるように、トルクが等しく保持された状態で目標磁束および目標滑りを変更することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
負荷状態でトルクが等しく保持されている場合に、前記目標滑りを低減し、前記目標磁束を増大する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
負荷状態でトルクが等しく保持されている場合に、前記目標滑りを増大し、前記目標磁束を低減する方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法において、
前記非同期機(1)が発電機として運転されている場合に実施する方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法によって、ステータ(2)およびロータ(3)を備える非同期機(1)を作動する装置であって、
前記非同期機(1)のトルクを調節するための機構を備え、トルクを調節するための機構が、前記ステータ(2)の回転磁界の目標磁束、および前記ロータ(3)のロータ回転数と回転磁界の回転数との間の目標滑りを設定する装置において、
前記機構が、少なくとも負荷状態で、回転磁界の目標回転周波数がゼロに等しい場合に、回転磁界の実際回転周波数がゼロに等しくなくなるように、トルクが等しく保持された状態で目標磁束および目標滑りを変更することを特徴とする非同期機(1)を作動する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記機構が、負荷状態でトルクが等しく保持されている場合に、目標滑りを低減し、目標磁束を増大する装置。
【請求項7】
請求項5に記載の装置において、
前記機構が、負荷状態でトルクが等しく保持されている場合に目標滑りを増大し、目標磁束を低減する装置。
【請求項8】
請求項から7までのいずれか一項に記載の装置において、
前記機構が、6つの半導体切換素子を備えるブリッジ回路を有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能に支承されたロータおよびケーシングに固定されたステータを備える非同期器を作動するための方法に関し、非同期機のトルクは、ステータの回転磁界の目標磁束を設定し、ロータのロータ回転数と、回転磁界の回転数との間の目標滑りを設定することにより調節される。
【0002】
さらに、本発明は、回転可能に支承されたロータとケーシングに固定されたステータとを備える非同期器を作動するための装置に関し、非同期器のトルクを調節するための機構、特にパワーエレクトロニクスを備え、トルクを調節するための機構は、ステータの回転磁界の目標磁束、およびロータのロータ回転数と回転磁界の回転数との間の目標滑りを設定する。
【0003】
さらに、本発明は対応する非同期機に関する。
【背景技術】
【0004】
冒頭で述べた形式の方法、装置、および非同期機は、従来技術により既知である。非同期機のトルクは、特に2つの値、すなわち、ステータの回転磁界の磁束およびロータ回転数と回転磁界の「回転数」との間の滑りに依存している。パワーエレクトロニクスによって非同期機を駆動する場合、2つの値は所望のトルクを達成するために適宜に設定される変数である。特に、非同期機が発電機として運転されている場合には、目標滑りは、回転磁界の回転周波数の値がロータの回転周波数よりも小さくなるように設定される。この場合、従来の調整アルゴリズムを使用して、ステータ磁界の回転周波数の目標値が0Hzとして計算されるが、ステータには有効な電流が流れる場合がある。
【0005】
パワーエレクトロニクス、もしくは非同期機を制御する機構の作動限界は、切換素子もしくはパワースイッチの熱抵抗性である。パワーエレクトロニクスによる電動機の作動時に、負荷状態で電流の大部分が長時間にわたって、例えばB6ブリッジで、単一のパワースイッチを介して流れた場合、危険な作動点が生じる。例えば、持続的に励起される機械によって坂道にさしかかる電気自動車において、すなわちトルクが要求され、電動機の回転数が、例えばまだゼロに等しい場合に生じる場合がある。
【発明の概要】
【0006】
請求項1に記載の特徴を有する本発明による方法は、個々のパワースイッチ、特に半導体切換素子の持続的な通電が防止されるという利点を有する。このために、本発明による方法では、少なくとも負荷状態で、あるいはステータの回転磁界の目標回転周波数がゼロに等しい場合には常に、回転磁界の実際回転周波数がゼロに等しくない、すなわち、最小回転周波数がゼロよりも大きい状態となるように、トルクが等しく保持された状態で目標磁束および/または目標滑りが変更される。これにより、簡単で安価な方法で、ステータ電流が単一のパワースイッチを通って長時間にわたって流れるのではなく、異なるパワースイッチを通って交互に流れることが達成され、したがってパワーエレクトロニクスは熱負荷から保護される。回転磁界の実際回転周波数をゼロに等しくない状態に保持するために、好ましくは、まず計算された目標回転周波数が適宜に変更されるか、もしくはゼロに等しくない状態に調節されるか、あるいは適宜な回転周波数をもたらす目標回転周波数もしくはオフセット値が付加される。
【0007】
本発明の別の有利な実施形態によれば、負荷状態でトルクが等しく保持されている場合に、目標滑りが低減され、ステータ電流に比例する目標磁束が増大される。すなわち、好ましくは、回転磁界の所望の回転周波数を達成するために、目標滑りが低減され、ステータ電流に比例する目標磁束が増大されることによって、トルクが等しく保持された状態で回転磁界の所望の最小回転周波数が達成される。
【0008】
本発明の代替的な実施形態によれば、目標滑りが増大され、目標磁束が低減されることによって、トルクが等しく保持された状態で回転磁界の所望の最小回転周波数が達成される。
【0009】
さらに好ましくは、本発明による方法は、非同期機が発電機として運転されている場合に実施される。特に発電機として運転されている場合には冒頭で述べた問題が生じる場合がある。この方法が発電機としての運転に制限された場合には、非同期機を制御するために不可欠な処理能力を全体として減じることができる。
【0010】
請求項5の特徴を備える本発明による装置は、ステータの回転磁界の目標回転周波数がゼロに等しい場合に、実際回転周波数がゼロに等しくなくなるように、負荷状態の機構が、トルクが等しく保持された状態で目標磁束および/または目標滑りを変更することにより優れている。これにより、上記利点が生じる。さらなる特徴および利点が、同様に既に述べた説明により明らかである。
【0011】
特に、実際回転周波数をゼロに等しくない値にするために、負荷状態でトルクが等しく保持されている場合に目標滑りが低減され、目標磁束が増大される。これにより、機構もしくはパワーエレクトロニクスのパワースイッチおよびモータ相の不均一な熱負荷が回避される。非同期機の性能もしくは出力はこれにより損なわれない。本発明の代替的な実施形態では、好ましくは、所望の最小回転周波数を得るために、トルクが等しく保持された状態で目標滑りが増大され、目標磁束が低減される。
【0012】
本発明の有利な別の実施形態によれば、機構は、ブリッジ回路、特にB6ブリッジを備える。B6ブリッジは、6つのパワースイッチ、特に半導体切換素子もしくはパワー半導体スイッチを備える。
【0013】
次に、図面に基づき本発明を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】非同期機を示す概略図である。
図2】非同期機を作動するための有利な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、図1に例として概略的に示した非同期機1を作動するための方法をフロー図で示している。非同期機1は、ケーシングに固定されたステータ2と、回転可能に支承されたロータ3と、作動のための装置4とを備える。この方法を実施するために構成された装置4は、特に、パワーエレクトロニクス5として構成された機構を含む。この機構は、特にステータの回転磁界の目標磁束を設定し、ロータの目標滑り、すなわち、ロータ回転数と回転磁界の回転数との差を設定することにより、非同期機1のトルクを調節する。パワーエレクトロニクスは、このために本実施例では6つのパワー半導体スイッチを有するB6ブリッジ、もしくはブリッジ回路を備える。
【0016】
この方法では、非同期機1を備える駆動装置が第1ステップS1で始動された後に、まず第2ステップS2で所望のトルクが検出される。所望のトルクに依存して、第2ステップS2では目標磁束および目標滑りが調節される。
【0017】
後続のステップS3では、どの目標回転周波数で、所定の目標磁束の目標回転数および回転磁界の所定の目標滑りが生じるかが決定される。
【0018】
次の質問ステップS4では、まず、負荷状態、すなわち、例えばトルク要求が生じているかどうか、電動機の回転数がゼロに等しいかどうかが検査され、次いで、検出された目標回転周波数がゼロに等しいかまたはゼロに等しくないかが検査される。好ましくは、この場合、ゼロからのわずかなずれはゼロ値として評価される。
【0019】
負荷状態が生じていること、および回転磁界の目標回転数がゼロに等しくないことが質問により確認された場合には、方法はステップS5に進み、目標値に関してこれまでに行われた調節が保持される。
【0020】
しかしながら、検出された目標回転周波数がゼロに等しいか、またはほぼゼロに等しいことが質問により確認された場合には、ステップS6で、目標滑りおよび/または目標磁束が変更され、ステップS2で検出された所望トルクが保持される。特に好ましくは、この場合、目標滑りは幾分低減され、目標磁束に比例するステータ電流は幾分増大される。代替的には、目標滑りを増大し、目標磁束を低減することもできる。トルクが等しく保持されている場合に目標滑りおよび目標磁束を変更することにより、回転磁界の回転周波数がゼロからゼロに等しくない値に変更されることが達成される。これにより、パワーエレクトロニクスでは、ステータ電流が交互に異なるパワー半導体スイッチを流れる。
【0021】
有利な方法により、非同期機の作動時に、回転磁界の目標回転周波数がゼロとなり、これによりいずれか1つのパワースイッチにおける高い熱負荷の発生防止が保証される。これにより、非同期機のパワーが損なわれることなしに、全体としてパワーエレクトロニクスの負荷が低減され、寿命が増大される。特に好ましくは、この方法は、非同期機が発電機として運転されている場合に実施される。
【0022】
パワースイッチおよび非同期機のモータ相に均一に負荷が加えられることが達成される。負荷状態が生じているかどうかが、例えば、要求されたトルクおよび電動機の回転数に依存して検出される。回転数が小さい場合に高いトルクが要求された場合には、例えば坂道にさしかかるなどの高い負荷、すなわち、負荷状態が生じていると推定することができる。
【0023】
この方法は、内燃機関と少なくとも1つの電動機とを有するハイブリッド駆動装置を備える自動車においても、駆動装置として少なくとも1つの電動機のみを備える自動車においても実施することができる。
図1
図2