【課題を解決するための手段】
【0029】
驚くべきことに、DIVAを可能にする野生型CSFV抗体に関する改善された診断試験によってこの目的が果たされ得、そのため、先行技術の不都合点が解決され得ることがわかった。この改善は、野生型CSFV E2抗体に関する診断アッセイのインキュベーション工程の改良と関連しており、この改良では、試験サンプルをCSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む固定化された担体とともにインキュベートし、ここに、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体との共インキュベーションを組み込む。この改良により、CSFV E2抗体に関する既存の診断アッセイのプロトコルに対して限定的な改良のみによって完全に偽陽性結果が低減されることがわかった。
【0030】
この改良型診断方法の好都合な効果はいくつかある:主な効果の1つは、この改良を既存の試験プロトコルに完全に一体化できることである。そのため、さらなるインキュベーション工程は必要とされず、改善された当該試験方法では、以前より多くの時間は必要とされない。これは、ある地域でCSFが大流行した場合に短時間で試験する必要があり得る試験サンプルが潜在的に非常に大量数であることを考慮すると、大きな利点である。
【0031】
さらに、ここでは、もはや、対応するCSFVワクチンまたはオリジナルの診断アッセイに対して劇的な変更を行う必要はない。それどころか、ここでは、既存のCSFV E2 ELISAの基本的なセットアップを、CSFVワクチンをワクチン接種した動物由来のサンプル中の野生型CSFV E2抗体の検出のために使用することが可能である。これにより、証明された信頼性または充分に確立された特異性プロフィールおよび感度プロフィールを伴って、確立されたCSFV診断アッセイに依存することが可能になる。
【0032】
この改良により、CSFV診断アッセイが、ここでは、感染動物とワクチン接種動物を有効に区別するために使用され得、したがって、本発明により、DIVAスクリーニングを可能にする野生型CSFVに関する改善された診断試験が提供され、本発明は、CSFV(マーカー)ワクチンのための随伴的診断法として、易罹患性動物集団におけるCSFVの発生を防除するために使用され得る。
【0033】
このような好都合な効果のために重要なステップは、本発明者による、CSFVに対するワクチン接種を野生型CSFVまたはC株ワクチンによる感染と識別できない原因の特定であった。
【0034】
この原因は、変異型TAVSPTTLRエピトープを有するE2を含むCSFV(マーカー)ワクチンにより、該ワクチンの変異型E2エピトープに特異的に結合し得るだけでなく、野生型CSFVおよびC株ワクチンのE2の未修飾TAVSPTTLRエピトープにも等しく高い親和性で特異的に結合し得る抗体が誘導されることであることがわかった。これにより、ワクチン接種動物の血清サンプルを野生型CSFVによる感染について試験した場合に偽陽性スコアが引き起こされた。対照的に、野生型CSFVによる感染もしくはC株ワクチンの接種により得られた抗体、または野生型TAVSPTTLR E2エピトープに対するモノクローナル抗体(例えば:V2(Prionics)、A18(IDEXX)もしくはWH303(Lin et al.,2000,上掲))は、CSFVワクチンの変異型TAVSPTTLRエピトープを有するE2タンパク質に対してなんら有意な親和性を有しないことがわかった。これが、なぜ、野生型CSFV E2タンパク質のTAVSPTTLRエピトープを含む担体との共インキュベーションによって、変異型TAVSPTTLRエピトープを有するワクチンに対する偽陽性スコアの問題が解決されないかの理由であった。
【0035】
この現象がどのようにして、またはなぜ起こるかは、現在、わかっていない。しかしながら、このような観察結果が説明され得る理論またはモデル(あれば)に拘束されないが、本発明者は、CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープの3次元形態の影響があると推測する;この3D形態は一次アミノ酸配列が変異すると変化する。これにより変異型E2エピトープに対する抗体が誘導され、該抗体は、依然として明らかにCSFV E2の野生型TAVSPTTLRエピトープに対する特異的結合能を有する。かかる抗体は、野生型CSFV E2タンパク質に基づいた診断アッセイにおいて交差反応性であり、高度に特異的な偽陽性スコアを引き起こす。
【0036】
偽陽性の試験スコアの問題の原因に対するこの見識により、本発明者は次いで、この問題に対処するための驚くべき方法を見出し、確立されたE2診断アッセイのプロトコルの一工程に:試験サンプルを、CSFV E2タンパク質のTAVSPTTLRエピトープを有する固定化された担体とともにインキュベートし、加えて:CSFV E2タンパク質の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体とともに共インキュベートする工程という解決策を施すことができた。これにより偽陽性スコアの問題が解決された。
【0037】
診断方法の改良が共インキュベーションという形態であり得るという事実は驚くべきことであった。それは、かかる手順が、通常、試験サンプル中のCSFV E2抗体とCSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む固定化された担体との適正で完全な結合に対して破壊性であると予測され得、したがって、通常、当業者によって考慮され得ないためである。
【0038】
したがって、第1の態様において、本発明は、野生型豚コレラウイルス(CSFV)に対する抗体を試験サンプル中において検出するための方法、ここで、前記サンプルはまたCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープに対する抗体も含むものであり得、前記試験サンプルをCSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む固定化された担体とともにインキュベートする工程を含む方法であって、該方法が、前記工程において、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体とともに共インキュベートすることを特徴とする方法に関する。
【0039】
本発明による「検出するための方法」は、試験サンプルの値または特性(多くの場合、「バイオマーカー」と称される)を調べるために試験サンプルに対して適用されるインビトロ方法であり、該方法の後、その結果に対して特定の意味がもたらされるようにアッセイの結果が解釈され得る。この解釈は、該方法を用いて試験サンプルで得られた結果と参照値または以前の測定値との比較に基づいてなされ、この解釈により、測定値が存在するか存在しないか、または増大したか低下したかが確立される。
【0040】
本発明では、測定値は、野生型CSFV E2タンパク質のTAVSPTTLRエピトープに特異的な抗体の定性的存在および定量的存在である。
【0041】
本発明による方法は、例えば:ラジオイムノアッセイ、免疫拡散アッセイ、免疫蛍光アッセイ、免疫沈降アッセイ、凝集アッセイ、溶血アッセイ、中和アッセイ、「酵素結合イムノソルベントアッセイ」(ELISA)またはAlphaLISA(商標)としてよく知られた種々の形態のうちの1つの診断試験であり得る。
【0042】
いくつかの教本に、利用可能なさまざまな診断試験およびその具体的な特長が記載されている;例えば:J.Huebner:Antibody−antigen interactions and measurements of immunologic reactions(Chapter 9 in:Pier,Lyczak and Wetzler(編):Immunology,infection,and immunity,ASM Press,Washington D.C.,2004,ISBN:1555812465,p.207−232);「Antibodies:A Laboratory Manual」(編集:Harlow and Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988,ISBN−10:0879693142);および:「Immunoassays:A Practical Approach」(J.P.Gosling edt.,Oxford University press,2000,ISBN−10:0199637105)。
【0043】
数多くの商事会社から、診断試験用の材料および試薬または完全な診断キットを得ることができ、あるいは試験および解析の提供を受けることができる。
【0044】
本発明による方法のためのプロトコル、材料および条件を考案し、最適化することは、充分に当業者の通常の能力の範囲内である。
【0045】
また、当該技術分野でよく知られているように、「抗体」は免疫グロブリンタンパク質であり、一般的に5つの種類が存在する。試験サンプルでは、抗体は、典型的にはIgGまたはIgM型のものであり、完全抗体である。しかしながら、本発明による方法において試薬として、例えば、二次抗体または標識抗体として使用され得るその他の抗体は完全免疫グロブリンである必要はなく(例えば、一本鎖抗体または免疫グロブリンの一部分);また、異なる形態のもの:かかる一部分の(合成)構築物であってもよいが、該抗体の一部分は依然として抗原結合部位を含んでいるものとする。免疫グロブリンのよく知られた部分断片は:Fab、Fv、scFv、dAbもしくはFd断片、Vhドメイン、またはかかる断片もしくはドメインの多量体である。
【0046】
診断アッセイにおける試薬としての使用のための抗体は、一般的に、ドナー動物を標的抗原で(過剰)免疫処置し、生成した抗体を該動物の血清から収集することにより作製される。よく知られたドナーはウサギおよびヤギである。別の例はニワトリであり、卵黄中に高レベルの抗体、いわゆるIgYが生成され得る。あるいはまた、抗体は、例えば、よく知られたモノクローナル抗体技術により不死化Bリンパ球培養物(ハイブリドーマ細胞)からインビトロで作製され得、その工業規模での生産システムが知られている。また、抗体またはその断片は、それ自体を組換え発現系内で、クローニングしたIgの重鎖および/または軽鎖の遺伝子を発現させることによって発現させてもよい。これらはすべて、当業者によく知られている。
【0047】
本発明では、および本文書全体を通して、抗体は、指向される標的に基づいて呼称する;例えば:CSFVに対する抗体は「CSFV抗体」と呼称し、「E2抗体」はE2タンパク質に対する抗体(別名は抗E2抗体)である、など。
【0048】
当該技術分野でよく知られているように、特定の標的に「対して」指向される抗体は、該標的上のエピトープに特異的な抗体であり、ここで、標的は特定の分子または実体である。抗体(またはその断片)は、エピトープに対して選択的に結合し得る場合、該エピトープに特異的である。
【0049】
抗体と標的間の相互作用が特異的および/または選択的であるか否かは、当業者によって容易にアッセイされ得る。例えば、阻害に基づいた免疫アッセイの結果の特異性は、阻害が、アッセイに使用した抗原または抗体の濃度と相関していることを示すことにより調べることができる。例えば、競合結合アッセイを使用し、このコート抗原に対する抗体結合を50%阻害するためには、どれだけ多くの抗原が必要とされるかを調べることができる(Bruderer et al.,1990,J.of Imm.Meth.,vol.133,p.263)。本発明の場合の一例としては:野生型CSFV E2タンパク質、およびTAVSPTLLRエピトープ特異的(モノクローナル)抗体の使用。
【0050】
診断イムノアッセイの状況において非常に重要なのは、抗体が偽陽性結合を示し、診断アッセイの偽陽性結果がもたらされる場合である。これは、該抗体の生成対象エピトープ以外のエピトープに対する比較的強力な結合によって引き起こされ得るか、または該抗体発生のエピトープに対する特異的結合であるが、異なる標的上に存在するため、その発生標的に対する特異的結合によって引き起こされ得る。
【0051】
イムノアッセイ手法の当業者には、どのようにして真陽性結果と偽陽性結果を識別するが理解されるであろう(例えば、異なる型の診断アッセイでの結果を確認すること、または異なる時点の試験サンプルでの結果を確認すること)。
【0052】
本発明による方法により、野生型CSFVのE2タンパク質に対する抗体に関して試験した場合、偽陽性スコアの有意な低減が得られ得る。本明細書において概略を示し、例示しているように、偽陽性スコアは5倍までの低減が達成され(例えば、ELISAで50%を超える阻害から10%未満の阻害まで)、間違ってCSFV陽性とみなされた動物の数は100%までの低減が達成された。
【0053】
本発明による方法を使用する種々の試験において、野生型CSFVに感染している豚由来の血清はすべて、感染から約3週間後、試験結果に基づいて陽性と判定されたが、vFlc−ΔPTa1をもとにしたワクチンを繰り返しワクチン接種した動物由来の血清はいずれも、3回目のワクチン接種後、最後の測定時点まで陽性にならなかった。
【0054】
また、本発明による方法を、Central Veterinary Institute(Lelystad,the Netherlands)の収蔵品であり、高濃度、低濃度、陰性であるかまたは疑わしいCSFV抗体を含む大量数の一組の約900例の試験サンプル、ならびにBVD抗体もしくはBVDV抗体、およびさらにはCSFV、BVDおよび/またはBVDVの数種類の混合感染を含むいくつかの血清においても試験した。本発明による方法により、ほぼすべてのサンプルを、優れた特異性と感度を伴って正しく同定することができた。本明細書における以下の実施例を参照されたい。
【0055】
実際、900例の収蔵サンプルを試験すると、本発明による方法での共インキュベートを適用した場合、試験したサンプルのほとんどで、さらに向上した感度が観察された。これは、野生型CSFV E2抗体に関するブロックELISAで観察された阻害パーセンテージがいくつかのサンプルで、本発明による方法を適用した場合、標準的な市販のCSFV E2抗体ブロックELISAの適用と比べて高かったことを意味する。これにより、先では疑わしいと示された5例のサンプルが、ここでは陽性にスコアリングされ、先では陰性であった2例のサンプルが、ここでは疑わしいとスコアリングされた(実施例2.3、および表2参照)。
【0056】
本発明では、「野生型」豚コレラウイルスは自然状態で存在し得るCSFVをいう。これは、かかる野生型CSFVがすべて同じであることを意味するものではない。それは、遺伝子組成および生物学的特長において多くの差異が考えられ得、または既に知られているからである。しかしながら、この用語は、本発明における使用で、修飾もしくは変異などによるヒトの介入の結果物、例えば、反復継代による、または組換えDNA手法による核酸の適合によるヒトの介入の結果物であるCSFVを除外することを意図する。
【0057】
本発明では、「豚コレラウイルス」または「CSFV」は、一般的には、CSFVのよく知られた特徴を有する分類学的にペスチウイルス属のウイルスをいう。これには、任意の様式で例えば亜種、株、単離菌、遺伝子型、血清型、血液型亜型、血清群、バリアントまたは亜型などとして下位分類されるCSFVも包含される。かかるCSFVは、分類学的に科の構成員の特徴的特長、例えば、ゲノム的、物理的、電子顕微鏡的および生化学的特徴、ならびに生物学的特徴、例えば、生理学的、免疫学的または病原的挙動を共有している。血清学的分類の次に、他の測定が、当該技術分野で知られているようなヌクレオチドシーケンシングまたはPCRアッセイに基づいてなされ得る。
【0058】
本発明の主題であるウイルス種では本明細書においてCSFVと命名しているが、これは、新たな見識によって新たなまたは異なる分類学的な群への再分類に至ったときに変更されるかもしれない分類学的分類であることは、当業者には自明であろう。しかしながら、これによって、関与する微生物またはその特徴的特長は変わらず、その学名または分類のみが変わるため、かかる再分類された生物体は依然として本発明の範囲に含まれる。
【0059】
本発明による方法における使用のための「試験サンプル」は、原則的には、抗体を含む任意の型のサンプル、例えば、動物の全血のサンプルから調製した血漿サンプルまたは血清サンプルであり得る。当業者は、かかる血漿サンプルまたは血清サンプルを動物から採取して調製するために必要とされる手法および材料を充分に承知している。
【0060】
好ましいのは血清サンプルであり、それは、より精製されており、例えば:凝固、遠心分離および補足的不活化のための工程を含む標準的な実験手法によって調製できるからである。
【0061】
試験サンプルを、例えば、シグナル強度を改善するため、またはバックグラウンドシグナルを低減させるために、さらに加工または精製してもよい。例えば、抗体を単離して取り出してもよい。抗体精製のためのよく知られた手法は、例えば、カプリル(Caprilic)酸もしくは硫酸アンモニウムを用いたかかる抗体の沈降、またはアフィニティクロマトグラフィーの使用である。
【0062】
本発明では、用語「comprise(〜を含む)」(ならびに「comprising」、「comprises」および「comprised」などの語尾変化形)は、本明細書で用いる場合、本文中のセクション、段落、請求項などに包含されている、または含まれているすべての要素および本発明に想定され得る任意の可能な組合せをいい、この場合、この用語は、かかる要素または組合せが明記されていない場合であっても使用され;かかる任意の(1または複数の)要素または組合せを排除することを示すものではない。そのため、任意のかかる本文中のセクション、段落、請求項などはまた、用語「comprise」(またはその語尾変化形)が「consist of(〜からなる)」、「consisting of」または「consist essentially of(本質的に〜からなる)」などの用語で置き換えられた1つ以上の実施形態にも関連し得る。
【0063】
「CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープ」は、CSFV E2タンパク質のAドメイン内の該名称を有するよく知られたエピトープをいい、9アミノ酸長の線状エピトープである。当業者には、このエピトープに対して示した名称「TAVSPTTLR」が、標準的な一文字IUPACコード(トレオニンはT、アラニンはA、などで示される)で示した場合のこのエピトープのアミノ酸配列とマッチしていることが明白であろう。
【0064】
CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープは野生型CSFVにおいて保存されており(Lin et al.,2000,上掲)、そのアミノ酸配列を本明細書において配列番号:1として示す。
【0065】
本発明では、CSFV E2の「変異型」TAVSPTTLRエピトープは、そのアミノ酸配列が少なくとも1つの位置において配列番号:1と異なるものである。変異は、1つの変更を伴うものであっても多数の変更を伴うものであってもよく、アミノ酸の挿入、欠失もしくは置換またはその組合せであり得る。
【0066】
本発明による方法における使用のためのCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープの一例は、vFlc−ΔPTa1などの変異型CSFVウイルスのE2タンパク質に存在する対応エピトープであり、この場合、このエピトープは:TAGSTLRTE(配列番号:2)である。別の例は、Reimann et al.(2010,上掲)に記載の組換えCSFV、例えば、ウイルスpA/CP7_E1E2alf_TLAであり、この場合、対応エピトープは:TLANKDTLA(配列番号:3)である。
【0067】
本発明による方法における使用のためのCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープは、天然または合成のいずれかのさまざまな供給源から得られ得る。最も簡便なのは、変異をCSFV E2のTAVSPTTLRエピトープ内に修飾または変異などによるヒトの介入によって、例えば、コードヌクレオチド配列を組換えDNA技術により適合させることによって導入した後、この変異型エピトープを含むタンパク質(例えば、CSFV E2タンパク質またはその一部分)をインビトロ組換え発現系内で発現させることである。
【0068】
本発明では、「インキュベートする」とは、抗体とその特異的なエピトープ間で結合を行わせることをいう。これには、かかる分子相互作用の形成に対して補助的であり、適正なバッファー、温度および持続期間の使用を含む反応条件が必要とされる。本発明のためのインキュベートするための材料および方法は、よく知られたハンドブックおよび市販の試験の供給元によって提供された使用説明書に記載されている。
【0069】
本発明との関連における「担体」は、CSFV E2タンパク質のエピトープを担持して提示し得る巨大分子構造体をいう。原則的に任意の構造体が適しているが、エピトープが抗体との結合に利用可能であるものとする。担体は、起源が生物系であっても鉱物であってもよく、天然であっても合成であってもよく、大きくても小さくてもよく、例えば、金属粒子、ポリマー、タンパク質または糖質であり得る。エピトープは共有結合によって結合されてもよく、非共有結合、例えば、任意の種類のイオン的、静電的、水力学的または分子的相互作用によって結合されてもよい。エピトープは担体内または担体上に含まれており、したがって、例えば、タンパク質内の内部要素または融合タンパク質として担体の一部であってもよい。担体にはまた、例えば、エピトープを含むタンパク質がリポタンパク質もしくは糖タンパク質またはコンジュゲートなどである場合のように、他の分子または基が含有されていてもよい。エピトープを担体に結合させるための方法は当該技術分野でよく知られており、生化学的手法または組換えDNA手法を含むものであり得る。
【0070】
本発明では、タンパク質はアミノ酸の分子鎖である。タンパク質はネイティブもしくは成熟タンパク質、プレ−タンパク質もしくはプロ−タンパク質、またはタンパク質の免疫原性断片であり得る。とりわけ:ペプチド、オリゴペプチドおよびポリペプチドはタンパク質の定義に包含される。
【0071】
本発明のための担体は、例えば吸着またはコーティングなどにより共有結合または非共有結合によって「固定化」されている:固相に結合されていることを意味する。これは、固相自体が不動であることを示唆するものではない。固相は原則的には任意の固相支持体であり得るが、本発明による検出方法の機能が可能であるものとし、種々のサイズ、形状または形態のもの、例えばプレート、粒子、膜などであり得る。
【0072】
担体を固相に固定化するための方法および材料は当該技術分野でよく知られており、例えば、炭酸バッファーおよび塩基性pH値の使用を伴うものであり得る。あるいはまた、固定化は、例えば、共有結合形成を引き起こす化学反応によるもの、または担体のビオチン化とアビジンコート固相支持体への結合によるものであってもよい。
【0073】
好ましくは、固相は、マイクロタイトレーションプレートのウェル、またはAlphaLISAアッセイにおける使用のための担体ビーズである。
【0074】
本発明では、「共インキュベートする」とは、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を、CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む固定化された担体および試験サンプルと一緒にインキュベートすることを示す。実際には、これは、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を、CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む固定化された担体と試験サンプルをインキュベートするための工程に適用されるインキュベーション混合物中に、該インキュベーションに必要とされる時間の少なくとも実質的部分の間、存在させることを意味する。どれだけの時間が「実質的部分」を構成するかは、使用される診断アッセイの具体的なプロトコルの詳細に依存する。例えば、IDEXX CSFV Ab試験の製造業者の使用説明書には、試験サンプルと固定化されたE2タンパク質をインキュベートするための工程の時間は2時間または一晩(12〜18時間)のいずれかであると示されている。
【0075】
本発明では、「時間の実質的部分」は、CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む固定化された担体と試験サンプルをインキュベートするための工程の時間の少なくとも25%をいう。好ましくは該時間の50%、より好ましくは該時間の75、90、95、99または100%(この順に好ましい)。
【0076】
この共インキュベーションは、本発明による方法において、試験サンプルと変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体をインキュベートするために別個のさらなる工程が使用され得、CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む固定化された担体とのインキュベーションの前に行われ得るプレインキュベーションとみなされ得るインキュベーションとは別に設定される。かかるプレインキュベーションは、不要な結合反応(あれば)を低減させる可能性の良好な制御が可能になるため、インキュベーションプロトコルを最適化する場合に当業者にとって標準的な選択肢であり得る。しかしながら、このようなインキュベーションが、試験の選択性と特異性に対して有害な効果を伴うことなく、共インキュベーションとして1つの工程に好都合に一体化できることは、本発明の驚くべき所見である。
【0077】
記載のように、顕著な利点の1つは、共インキュベーションが、診断アッセイを行うのに追加の時間を必要としないことである。さらなる利点の1つは、標準的な市販のE2 ELISAの基本プロトコルが、試験成分またはプロトコル自体に対して有意な補正を伴うことなく使用できることである。
【0078】
本発明による方法の一実施形態において、検出は酵素免疫測定法、より好ましくはELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)によるものである。
【0079】
ELISAはよく知られており、形式およびプロトコルにおいてさまざまな型が知られている。一般的な利点は、迅速で信頼性のある結果が得られ、容易に規模拡大できることである。
【0080】
本発明による方法の好ましい一実施形態では、ELISAは間接ブロックELISAである。当該技術分野で知られているように、これは、試験サンプル由来の抗体が検出体の標識抗体と、固定化されたエピトープに対する結合に関して競合するものであることを示す。試験サンプル中に存在する抗体が多いほど、その多くが固定化されたエピトープに結合し、保持され得る標識抗体が少ないほど、最大標識結合レベルの低減(阻害)がもたらされる。
【0081】
検出が間接ブロックELISAによるものである本発明による方法のための例示的なプロトコルは:
−CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む担体を固相にコーティングする、
−試験サンプルとCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を、コーティングされた該担体とともに共インキュベートした後、洗浄する、
−標識二次抗体とともにインキュベートした後、洗浄する、
−発色反応、および
−結果の読み取り
のための連続する工程のいくつかまたは全部を含むものであり得る。
【0082】
該工程のうちいくつかを別途に行ってもよく、第三者が行ってもよい。例えば、市販の試験として適用される場合、試験サンプルとの共インキュベーションにおける使用の準備ができたプレコート固相を市販の供給元から得てもよい。
【0083】
該プロトコルにさらに、偽陽性結合反応を遮断するための1つ以上の工程を含めてもよい。典型的には、これは、インキュベーション工程および/または洗浄工程に使用するバッファー中で、過剰の特異的タンパク質、例えば、脱脂粉乳または血清アルブミンとのインキュベーションを伴うものである。
【0084】
ELISAを、その試薬およびプロセス工程、例えば、インキュベーション工程の温度および持続時間;固定化または検出に使用する抗体または抗原の特異性および型;適用する固定化の量および方法;ならびに使用するインキュベーションバッファーおよび洗浄バッファーの組成を適合させることにより、さらに最適化してもよい。
【0085】
酵素免疫測定法に関する一般的な論及はさまざまな刊行物、とりわけ標準的な実験教本、例えば:「The Immunoassay Handbook(4th ed.:Theory and applications of ligand binding,ELISA and related techniques);D.G.Wild編,2013,ISBN−10:0080970370);および:「The ELISA Guidebook」(Methods in Molecular Biology,vol.149,J.R.Crowther,Humana Press,2000,ISBN−10:0896037282)にみられる。別の例は、市販の供給元によるマニュアル、例えば:「Technical guide for ELISA」,KPL Inc.,Gaithersburg,MD,USA,2013;および:「Assay guidance manual」(Eli Lilly&Co.による),chapter:Immunoassay methods,K.Cox et al.,May 2012である。
【0086】
さらなる好ましい一実施形態では、本発明のELISAは、CSFV E2抗体に関する市販のELISAと本質的に同様のもの、例えば:PrioCHECK(登録商標)CSFV Ab 2.0 ELISA(以前の名称はCeditest(登録商標)CSFV 2.0 ELISA、ともにPrionics AG(Schlieren−Zurich、Switzerland)から入手可能)、またはIDEXX CSFV Ab Test(IDEXX Europe B.V.(Hoofddorp,The Netherlands)から入手可能)と本質的に同様のものである。これに関して「本質的に同様」は、これらの市販の試験で使用されるプロトコルおよび材料に言及している。
【0087】
本発明による方法のための別のプロトコルを考案することもできる。例えば、本発明による方法を、当該技術分野でよく知られたAlphaLISA試験のプロトコルの特徴に基づいてセットアップしてもよい。かかる試験では洗浄工程が必要とされず、アッセイを手作業で行ってもよいが、自動化AlphaLISAが好ましい。
【0088】
AlphaLISAプロトコルの特徴は、抗原(本発明では:CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む担体)と抗体(本発明では:CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープに特異的な(モノクローナル)抗体)を担体ビーズに結合させ、これらの結合が発光によって検出可能であるというものである。
【0089】
CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む担体は、例えば、ビオチン化されてアビジンコートアクセプタービーズ上に固定化され、ドナービーズにコンジュゲートさせた抗体と一緒に使用され得る。そのため、かかるAlphaLISA試験の一工程は、CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む担体がコーティングされたアクセプタービーズを、試験サンプルおよびCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体とともに共インキュベートすることを含むものであり得る。逆の様式(CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む(comprising the comprising)担体をコーティングする)、またはどちらの担体もコーティングする中間の形態も等しく実現可能である。次いで、次の工程は抗体コートドナービーズとのインキュベーションであり、最後に結果の読み出しであり得る。
【0090】
したがって、本発明による方法の一実施形態では、検出は、AlphaLISA(登録商標)の特徴を有する診断試験によるものである。
【0091】
本発明による方法は、CSFVによる感染に易罹患性である動物由来のサンプルを試験するのに最も好都合である。動物は、ブタに分類される種々の動物である。
【0092】
したがって、本発明による方法の一実施形態では、試験サンプルはブタ動物に由来するものである。
【0093】
本発明では、「ブタ(porcine)」は、イノシシ科の動物をいい、好ましくはイノシシ属の動物、例えば:野生または家畜の豚(pig)、ぶた(swine)、ホッグ(hog)、野生のイノシシ、バビルサまたはイボイノシシをいう。また、これには、性別または年齢に言及した自由裁量の名称によって示されるブタ、例えば:雌豚(sow)、イノシシ、ホッグ、若い雌豚(gilt)、離乳したばかりの動物の子豚(weaner)または子豚(piglet)も包含される。
【0094】
本発明による方法のさらなる好都合な適用の一例は、CSFVに対してCSFVマーカーワクチンをワクチン接種したブタ動物のサンプルの試験である。
【0095】
よく知られているように、また上記のように、マーカーワクチンの抗原は野生型抗原と抗原的に異なり、野生型バージョンと比較すると、例えばエピトープが欠失しているもの、または異なるバージョンのエピトープを有するものをもとにしている。典型的には、マーカーワクチンの抗原は生化学的手法または組換えDNA手法によって適合または修飾されており、マーカーワクチンの修飾抗原に対する抗体応答が未修飾野生型抗原に対する抗体応答と識別され得るという結果になる。これにより、血清学的「感染動物とワクチン接種動物の識別」あるいは:DIVAが可能になる。
【0096】
したがって、本発明による方法の一実施形態では、試験サンプルは、CSFVに対してCSFVマーカーワクチンをワクチン接種したブタ動物に由来するものである。
【0097】
本発明による方法の特に都合の良い適用の一例は、CSFV(マーカー)ワクチンが、CSFV抗原として、CSFV E2のTAVSPTLLRエピトープにおける変異により野生型E2から外れたCSFV E2タンパク質を含むものである場合に自明となろう。上記のように、かかるワクチンをワクチン接種した動物のサンプルでは、CSFV抗体に関する既存の診断試験を用いた場合、偽陽性スコアがみられた。しかしながら、本発明による方法では真陽性スコアしか示されなかった。これは、獣医保健および養豚の経済性にとって大きな意味を有する。
【0098】
したがって、本発明による方法の好ましい一実施形態では、試験サンプルが、CSFに対して変異型TAVSPTTLRエピトープを含むCSFV E2タンパク質を含むCSFVワクチンをワクチン接種したブタ動物から採取したものである。
【0099】
上記のように、原則的には、CSFV E2の多くの形態の変異型TAVSPTTLRエピトープが、本発明による方法での共インキュベーションにおける使用に想定され得る。しかしながら、この方法は、共インキュベーションに使用されるCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープが、マーカーCSFVワクチンのものと同じである場合に最も好都合に適用される。
【0100】
したがって、本発明による方法の一実施形態では、本発明による方法での共インキュベーションにおける使用のための担体に含まれたCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープが、CSFVマーカーワクチンのCSFV E2タンパク質に存在する変異型TAVSPTTLRエピトープと同じである。
【0101】
さらなる考慮事項がCSFVマーカーワクチンのCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープに適用される:このワクチンは、TAVSPTTLRエピトープに対する変異にもかかわらず、なお、対象動物においてCSFVに対する有効な免疫応答を誘導する能力を有していなければならない。
【0102】
本発明では、好ましくは、本発明による方法の試験対象の試験サンプルが由来する動物をワクチン接種するために使用されたCSFVマーカーワクチンのCSFV E2の一方における変異型TAVSPTTLRエピトープと、本発明による方法での共インキュベーションにおける使用のための担体に含まれたCSFV E2の他方における変異型TAVSPTTLRエピトープがマッチしている。
【0103】
したがって、本発明による方法の一実施形態では、共インキュベーションにおける使用のための担体に含まれたCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープが、試験サンプルを採取したブタ動物にワクチン接種するために使用したCSFVワクチンのCSFV E2タンパク質に含まれた変異型TAVSPTTLRエピトープと同じである。
【0104】
当業者は、どの変異型TAVSPTTLRエピトープにより、かかる変異型エピトープを含むCSFV E2タンパク質を含むCSFVマーカーワクチンが有効な免疫原となるかを完璧に判断することができよう。
【0105】
例えば、ワクチン接種後またはチャレンジ感染後の免疫学的応答をモニタリングする(例えば、対象の疾患の臨床徴候、臨床的スコアリング、血清学的パラメータをモニタリングする)か、または病原体を再単離し、この結果を模擬ワクチン接種動物でみられる応答と比較することにより。
【0106】
注:CSFVは感染性が高く、多くの国で届出を行うべき疾患であるため、感染性CSFV(野生型または弱毒化体のいずれか)が含有されている可能性のあるサンプルの実験的使用または畜産学的使用はいずれも、適切なバイオセーフティー対策を伴って国内または国際ガイドラインに沿って行われなければならない。
【0107】
本発明による方法での共インキュベーションにおける使用のためのCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体とマッチするものであり得るCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを有するCSFV E2タンパク質を含むCSFVワクチンの例は当該技術分野で知られており、上記に記載したものである。例えば、Kortekaas et al.(2010,上掲)より;一例はvFlc−ΔPTa1と命名された変異型CSFVであり、これは、配列番号:2に示すアミノ酸配列:TAGSTLRTEを有する変異型TAVSPTTLRエピトープを含むCSFV E2タンパク質を有するものである。
【0108】
別の例は、Reimann et al.(2010,上掲)より:pA/CP7_E1E2alf_TLAと命名された変異型CSFVであり、これは、配列番号:3に示すアミノ酸配列:TLANKDTLAを有する変異型TAVSPTTLRエピトープを含むCSFV E2タンパク質を有するものである。
【0109】
したがって、本発明による方法の一実施形態では、共インキュベーションにおける使用のための担体に含まれたCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープはアミノ酸配列:TAGSTLRTE(配列番号:2)を有するものである。
【0110】
本発明による方法の別の一実施形態では、共インキュベーションにおける使用のための担体に含まれたCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープはアミノ酸配列:TLANKDTLA(配列番号:3)を有するものである。
【0111】
さらなる一実施形態では、本発明のための試験サンプルは、Kortekaas et al.(2011,上掲)に記載のCSFVワクチン、例えば上記の:vFlc−ΔPTa1と命名された変異型CSFVをもとにしたワクチンをワクチン接種したブタ動物に由来するものである。
【0112】
したがって、本発明による方法のさらなる一実施形態では、CSFVワクチンはvFlc−ΔPTa1ウイルスをもとにしたものである。
【0113】
本発明による方法における使用について記載した担体の異なる2つの実施形態は:固相に固定化するために使用されるCSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む担体、および共インキュベートするために使用されるCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体である。これらの担体は異なる形態を有するものであってもよく、変異型TAVSPTTLRエピトープおよび野生型TAVSPTTLRエピトープのための担体は同じ型であっても異なる型であってもよく;また、これらの担体は別個であってもよく、同じ実体、例えば、両方の型のTAVSPTTLRエピトープを含む1つの担体であってもよい。
【0114】
本発明による方法の一実施形態において、CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む固定化された担体またはCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体のいずれかがタンパク質であるか、または該担体がどちらもタンパク質である。
【0115】
このタンパク質は同じであっても異なっていてもよい。
【0116】
本発明による方法の好ましい一実施形態では、CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む固定化された担体またはCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体のいずれかがCSFV E2タンパク質であるか、または該担体がどちらもCSFV E2タンパク質である。
【0117】
野生型TAVSPTTLRエピトープを有するか、または変異型TAVSPTTLRエピトープを有するか以外にCSFV E2タンパク質担体の残部もまた、アミノ酸配列が異なり得る;CSFV E2のいくつかの例が文献に記載されており、その配列は、GenBank(商標)などの公のデータベースで入手可能である。
【0118】
CSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む固定化された担体がCSFV E2タンパク質である場合、これにより、試験サンプル由来のCSFVに対する抗体を検出するための最も良好な機会がもたらされる。
【0119】
同様に、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体がCSFV E2タンパク質である場合も、これにより、動物の試験サンプル中に存在しているかもしれず、本発明の場合以外では偽陽性結果を引き起こし得る交差反応性抗体(あれば)の捕捉のための最も良好な機会がもたらされる。これは、CSFV E2タンパク質により、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープの天然形態に非常に近いこのエピトープの3D提示が提供されるためである。
【0120】
したがって、本発明による方法の好ましい一実施形態では、該担体がどちらも完全成熟CSFV E2タンパク質である。
【0121】
しかしながら、当該技術分野で知られているように、E2のC末端膜貫通領域、実際にはC末端側の半分は、抗体との結合にあまり重要でない(van Rijn et al.,1994,J.of Virology,vol.68,p.3934;Chang et al.,2010,Virus Res.,vol.149,p.183)。そのため、当業者は、本発明による野生型CSFV抗体の検出方法を充分に発展または最適化することができよう。その場合、該担体のいずれか一方または両方が完全成熟E2タンパク質でないが、本発明による方法との関連における野生型CSFV抗体の良好な検出および偽陽性スコアの良好な低減が依然として可能であるその一部分(ただし、(変異型)TAVSPTTLRエピトープ自体はなお存在しているものとする)である。
【0122】
CSFV E2の(変異型)TAVSPTTLRエピトープを含む担体としての本発明による方法におけるCSFVタンパク質またはその一部分の使用は、共インキュベーションの量および条件を変えることによりさらに最適化され得る。例えば、本発明者は、変異型TAVSPTTLRエピトープを有するCSFV E2タンパク質を、よく知られたバキュロウイルス発現ベクター系を用いて発現させ、該タンパク質を精製し、この組換え発現E2タンパク質を共インキュベーションアッセイに使用した。
【0123】
発現されたE2タンパク質の純度および量は、例えば、SDS−ゲル−電気泳動、タンパク質染色、および光学密度測定による定量によってアッセイされ得る。択一的な方法は、TAVSPTTLRとは別のエピトープを介してE2に結合する抗体と既知濃度の参照サンプルを使用するElisaでの定量である。
【0124】
タンパク質の純度にもよるが、(変異型)TAVSPTTLRエピトープを含むE2タンパク質担体の量は、野生型CSFV抗体の最適な検出が得られるとともに、偽陽性スコアの最適な低減がもたらされるように選択される。本明細書に例示しているように、典型的には、96ウェルマイクロタイトレーションプレートのウェル1つあたりに必要とされるE2タンパク質は2μg未満であった。また、ウェル1つあたり1μgまたはさらには0.5μgも有効であった。
【0125】
記載のように、野生型CSFV抗体に関する既存の市販の診断試験は、その信頼性が、感度プロフィールおよび特異性プロフィールの測定についての非常に多数の試験データに基づいて確立されている。これは、国際的に認められている陽性参照標準サンプルと陰性参照標準サンプルの組によって維持される。このアッセイサンプルと参照サンプルの組合せの信頼性が、市場での是認およびかかるアッセイで試験される政府管轄下の輸出認証動物における使用の根拠となる。
【0126】
本発明による方法が確立されたかかるアッセイの参照値および以前の試験スコアに充分に統合されるようにするため、試験プロトコルに対してさらなる適合を行ってもよい。特に、アッセイプロトコルにおけるインキュベーション条件は、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープが導入される共インキュベーション工程のさらなる成分に適応するように適合され得る。
【0127】
本発明者は、前記工程のインキュベーション条件の適合を行わなくても、本発明による方法が依然として機能的であり、偽陰性スコアの低減に非常に有効であることを見出した;しかしながら、確立された標準サンプルを本発明による方法を用いて試験すると、得られる厳密なODスコアが、該標準の以前の結果から高値側または低値側のいずれかに外れる場合があり得る。これは、さらなる化合物を添加するのにいくらかの容量の液体をインキュベーション混合物に添加することが必要となる場合があり得、これによりインキュベーションバッファーと成分(塩、安定剤、デタージェントまたはブロック剤などが挙げられ得る)の希釈が引き起こされ、標準スコアとの偏差がもたらされ得るためである。
【0128】
したがって、一実施形態では、本発明による方法は、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体と共インキュベートすることを含む工程のインキュベーション条件を、前記担体の添加に適応するように適合させることを含む。
【0129】
この「適合」が行われ得る様式はいくつかある。最も直接的なものは、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を含む溶液を、本発明による方法における使用のためのインキュベーションバッファー中に含めることであり、ここで、インキュベーションバッファーは、該方法で使用される場合の最終濃度と比べて高い濃度にする。例えば、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を含む溶液とインキュベーションバッファーを等容量で合わせる場合、インキュベーションバッファーをその最終使用濃度の2倍のストック溶液として準備するのがよい。また、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を含む溶液中に既に存在している塩またはバッファー(あれば)に対して補正を行うことが必要となる場合もあり得る。この原則は、インキュベーションバッファーストック溶液の他の容量比および対応濃度に容易に適合される。
【0130】
あるいはまた、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を既に含んでいるインキュベーションバッファーの既製のプレミックス溶液を準備してもよく、この場合、インキュベーションバッファーはその最終使用濃度である。
【0131】
これまでの例は、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を溶液中に準備することに依存したものであった。しかしながら、これはタンパク質の安定性に最適でない場合があり得るため、代替法は、CSFV E2の変異型のエピトープを含むタンパク質を、最終使用濃度のインキュベーションバッファーの容器の隣の別個の容器内に凍結乾燥形態で準備することである。次いで、該タンパク質を使用直前にインキュベーションバッファーで再構成させると、これは該タンパク質の安定性に影響を及ぼさず、再構成によってインキュベーションバッファーの濃度が(目立つほど)変化することはない。
【0132】
当業者は、同様の溶液を得るための他の組合せを考案し、最適化することができよう。
【0133】
記載のように、本発明による方法を適用する都合の良い様式は、該方法を適用するために必要な種々の成分を備えた診断試験キットの使用によるものである。
【0134】
したがって、本発明のさらなる一態様は、本発明による方法を実施するための診断試験キットに関する。
【0135】
本発明では、「診断試験キット」は、本発明による方法を行うためのパーツのキットに関する。キットは、該方法を適用するための成分のうちの1種類以上、特に:固相に固定化されたCSFV E2のTAVSPTTLRエピトープを含む担体、およびCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を備えたものである。キットは、簡便な形態の容器で供給されるのがよく、サンプルの希釈およびインキュベーション、ブロックまたは洗浄のためのバッファーを備えていてもよく、該方法をどのようにして行うか、およびどのようにして結果を読み取り、解釈するかの使用説明を備えていてもよい。
【0136】
一実施形態では、キットは、多数のウェルを有する容器を備えたもの、例えばマイクロタイトレーションプレートを備えたものであり得る。容器のウェルは、本発明による方法における使用のための1種類以上の成分が収容されるように処理され得る。
【0137】
本発明による診断試験キットの好ましい一実施形態では、TAVSPTTLRエピトープを有するCSFV E2タンパク質は、マイクロタイトレーションプレートのウェルに固定化される。
【0138】
本発明による診断試験キットに含められていてもよい使用説明は、例えば、キットの構成要素が収納された箱に書かれたものであってもよく;その箱に小冊子で存在させてもよく;キットの販売業者などのインターネットのウェブサイトで見ることができる形態またはダウンロードできる形態であってもよい。
【0139】
本発明では、診断試験キットは、本発明による方法を含むアッセイにおける併用のために、例えばインターネットのウェブサイトで、記載のパーツ(商業規模に関連)を申し込めるものであってもよい。
【0140】
一実施形態では、本発明による試験キットは、野生型CSFV E2抗体に関する既知の市販の試験キットのうちの1つをベースにしたものであり得る、すなわち、さらなる成分との共インキュベーションに適応するように改良を加えて、例えばPrioCHECK(登録商標)CSFV Ab 2.0(Prionics)またはIDEXX CSFV Ab Test(登録商標)(IDEXX)と本質的に同じものであり得る。改良は、共インキュベートするための使用説明が提供されるように補正したユーザー使用説明に関するものであり得る。また、キットは、さらに、例えばCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を含むものであり、インキュベーションバッファー中に再懸濁させる凍結乾燥調製物を備えた容器を備えたものであってもよい。あるいはまた、試験キットは、最終使用濃度よりも高い濃度のインキュベーションバッファーのストック溶液を入れた容器と、共インキュベーションでインキュベーションバッファーストック溶液と使用するためのCSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を含む溶液を備えた容器とを備えたものであってもよい。本発明による診断試験キットの成分を組み込むための他のいくつかの実施形態が当業者に想定され得よう。したがって、かかる実施形態は本発明の範囲に含まれる。
【0141】
したがって、一実施形態では、本発明による試験キットは、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体を備えた容器を備えたものである。
【0142】
さらなる一態様において、本発明は、本発明による方法または本発明による診断試験キットでの共インキュベートするための、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体の使用に関する。
【0143】
かかる使用により、動物試験サンプル中、特に、CSFに対して変異型TAVSPTTLRエピトープを含むCSFV E2タンパク質を含むCSFVワクチンをワクチン接種した動物由来のサンプル中の野生型CSFV抗体の検出がもたらされる。この使用により、記載のように、偽陽性スコア(あれば)の低減がもたらされる。
【0144】
一実施形態では、本発明による使用は、CSFV E2の変異型TAVSPTTLRエピトープを含む担体の使用に関する。好ましくは、該担体はタンパク質であり、好ましくはタンパク質はCSFV E2タンパク質であり、好ましくはCSFV E2タンパク質は完全成熟タンパク質である。
【0145】
本発明による検出するための方法のさらなる好都合な適用の一例は、CSFVのワクチン接種および検出のためのDIVAアプローチに対する適用におけるものである。これにより、CSFVに対してワクチン接種された動物とCSFVに感染している動物の識別が可能になる。ワクチン接種が変異型TAVSPTTLRエピトープを含むCSFV E2タンパク質を含むCSFに対するワクチンの使用によるものであった場合、この様式での血清学的識別が可能であるのは、本発明による方法での場合のみであり、その結果、偽陽性スコアが解消される。
【0146】
したがって、さらなる一態様において、本発明は、野生型CSFVに感染した動物と、CSFVに対してCSFVワクチンをワクチン接種した動物を識別するための方法であって、該ワクチンが、変異型TAVSPTTLRエピトープを含むCSFV E2タンパク質を含む方法に関し、該方法は、本発明による検出方法の使用を含むもの、または本発明による診断試験キットの使用を含むものである。
【0147】
本発明による識別方法は、上記のような動物試験サンプルが使用されるインビトロ診断のための方法である。当業者には、本発明による識別方法はそれ自体が、検査対象の試験サンプルの診断のスコアの結果を伴うものであることが認識されよう。特に、CSFV E2タンパク質に対する抗体の検出は、これが存在するか存在しないか、またはその絶対値でのレベル、または対照サンプルの値との比較での相対値のいずれかによるものである。
【0148】
該方法のための供給物は被験体由来の試験サンプルである;被験体は、好ましくはブタ動物;試験サンプルは、好ましくは血液サンプル、より好ましくは血清または血漿のサンプル。
【0149】
感染動物とワクチン接種動物の最終識別を行うため、試験スコアが陽性であるか陰性であるかを解釈する必要がある;実際には、これは:特定の閾値より上であるか下かであるかを意味する。これは試験に、試験サンプルとともに試験するいくつかの参照標準サンプルを組み込むことにより簡便に行われ得る。これは本実施例に記載している。陽性参照サンプルおよび陰性参照サンプルは、動物において調製してもよく、いくつかの公共機関および参考検査室、例えば、ドイツのハノーバー獣医科大学のCommunity Reference Laboratory for CSFから入手することもできる。
【0150】
試験サンプルを陽性、陰性または疑わしいとスコアリングした後、これを外挿すると、試験サンプルを採取したドナー動物が野生型CSFVによる感染について陽性、陰性または疑わしいかが診断され得る。
【0151】
動物が陽性(疑わしい)と診断された場合、管理規則に沿って、動物は、ワクチン接種によって処置され得る、および/または検疫のため隔離され得るか、あるいは責任ある様式で処分され得る。
【0152】
したがって、本発明による識別方法の一実施形態では、該方法はまた、以下:
−試験サンプルを採取するための工程
−得られた試験結果を、陽性参照サンプルおよび陰性参照サンプルの結果との比較によって解釈するための工程
−サンプルで得られた試験結果を所定のカットオフ値と比較するための工程、
−サンプルを、野生型CSFVに対する抗体が含まれているかについて陽性、陰性もしくは疑わしいとスコアリングするための工程、
−サンプルドナーを、野生型CSFVによる感染について陽性、陰性または疑わしいと診断するための工程、または
−サンプルドナーを、野生型CSFVによる感染についての診断の陽性または疑わしいという結果に基づいて、ワクチン接種、検疫および/または処分によって処置する(ことを推奨する)ための工程から選択される1つ以上の工程も含むものである。
【0153】
1つ以上の好ましい実施形態では、サンプルは血清サンプルである、または:試験結果はELISAでの阻害パーセンテージのスコアである。
【0154】
好ましい一実施形態では、試験サンプルは、CSFに対して変異型TAVSPTTLRエピトープを含むCSFV E2タンパク質を含むCSFVワクチンをワクチン接種したブタ動物に由来するものである。
【0155】
別の一態様において、本発明は、CSFVによる感染を診断するためのインビトロ方法に関し、該方法は、本発明による検出方法の使用を含むもの、または本発明による診断試験キットの使用を含むものであり、野生型CSFVに対する抗体の存在を、陽性参照サンプルおよび陰性参照サンプルのスコアとの関連において判定する。
【0156】
本発明のさらなる一態様では、本発明による検出するための方法または本発明による診断試験キットは、CSFV疾患の根絶のため、または国内のサーベイランスプログラムにおいて、CSFVワクチンのワクチン接種として随伴的診断法として使用される。
【0157】
この組合せにより、CSFVに関するDIVAアプローチが適用でき、これにより感染動物とワクチン接種動物の識別が可能になる。
【0158】
したがって、さらなる一態様において、本発明は、変異型TAVSPTTLRエピトープを含むCSFV E2タンパク質を含むCSFVワクチンと本発明による診断試験キットの併用による、ブタ動物集団において野生型CSFVによる感染を防除するための方法に関する。
【0159】
本発明により、偽陽性スコアの大幅な低減がもたらされるため、ワクチン接種動物由来の(血清)サンプルは、ここでは、野生型CSFVに対する抗体について陰性であると確実に同定され得る。サーベイランスプログラム、撲滅プログラムまたは根絶プログラムの状況においては、真陽性の動物のみが選び出されて適切な防除および検疫の措置に供される必要がある。
【0160】
したがって、CSFVワクチンと診断方法のこの併用により、望ましくない非常に費用のかかる撲滅策を構造化されたワクチン系CSFV根絶プログラムで置き換えることが可能になり、苦しむ動物および経済費用が低減される。
【0161】
「ブタ動物集団」は、限局(飼育場)レベル、地域レベルまたはさらには全国レベルでの群として取り扱われ得る。「併用」のための詳細およびプロトコルは、使用される具体的な(マーカー)CSFVワクチンに対して指示されるワクチン接種プロトコルに依存する。また、併用の成果は、スクリーニングの要件および理由またはさらには順守する必要があり得る具体的な政府規制に依存する。
【0162】
一例は:定期ワクチン接種の場合、豚は、若年期に1回または2回、CSFVに対してワクチン接種され、例えば1年間隔でブースターワクチン接種を受ける。このような動物が、野生型CSFV感染の疑いが生じた場合、いつでも試験され得る。択一的に:ワクチン接種されている輸出が意図された豚は、意図された輸出期日の直前に試験され得る。また:CSFV感染が疑われる場合またはCSFV大流行の状況では、ワクチン接種および試験は数週間の短期間以内に、さらにはおそらく数日以内に行われ得る。当業者に想定され得るこれらおよび他の実施形態はすべて、本発明の範囲に含まれる。
【0163】
実際には、サンプルが野生型CSFV抗体について陽性か陰性にスコアリングされ得る場合、確認は、同じ対象由来のものであるが異なる時点のサンプルを再試験すること、または同じ家畜群もしくはエリアの他の動物を試験することにより得られ得る。あるいはまた、結果を、異なる手法および異なる型のサンプルを用いて、例えば、ウイルス中和アッセイによる血液、組織、鼻腔拭い液(swap)または糞中のウイルスの検出によって、またはウイルス核酸の検出によって(例えば、PCRによって)確認してもよい。