(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383428
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】変圧器の欠相状態を検出する方法
(51)【国際特許分類】
H02H 7/04 20060101AFI20180820BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
H02H7/04 A
H02H3/16 B
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-553595(P2016-553595)
(86)(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公表番号】特表2017-512450(P2017-512450A)
(43)【公表日】2017年5月18日
(86)【国際出願番号】US2014017678
(87)【国際公開番号】WO2015126412
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】300020418
【氏名又は名称】ザ ユーエイビー リサーチ ファンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】アリット ロバート エフ
(72)【発明者】
【氏名】ダガン ロジャー シー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン ウェイン イー
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン グレゴリー エイ
【審査官】
坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−331750(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/050323(WO,A1)
【文献】
特開2000−014017(JP,A)
【文献】
Amir Norouzi,Open phase conditions in transformers analysis and protection algorithm,2013 66th Annual Conference for Protective Relay Engineers,IEEE,2013年 4月,p.112-125
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/02−31/06
H01H25/00−25/06
89/00
H02H 3/08− 3/253
7/04− 7/055
7/22− 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低負荷又は無負荷状態にあり、かつ高圧側接地Y結線を有する変圧器の欠相状態を検出するための方法であって、前記変圧器の高圧側の中性結線を流れる電流を電圧リレイング又は電流リレイングにより監視して、電流の大きさの変化を特徴付けることができる信号内の欠相状態シグナチャを識別するステップと、変圧器ネットワーク・ゼロシーケンス・インピーダンスを監視するステップとを含み、前記欠相状態シグナチャは、数百又は数千オームからメガオームまでのインピーダンスの増大を含む、方法。
【請求項2】
低負荷又は無負荷状態にあり、かつ高圧側接地Y結線を有する変圧器の欠相状態を検出するための方法であって、前記変圧器の中性結線上に信号を注入するステップと、前記変圧器の高圧側の中性結線を流れる電流を監視して、電流の大きさの変化を特徴付けることができる信号内の欠相状態シグナチャを識別するステップと、を含む方法。
【請求項3】
前記監視はリアルタイムである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
変圧器中性端子上の電圧監視及び/又は電流監視を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記電圧リレイング及び/又は電流リレイングは、前記欠相状態を生じさせる事象によって作り出される電圧又は電流の不均衡を検出するように適合される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記注入信号又は中性電流周波数が60Hzの場合、前記欠相状態シグナチャは、前記中性電流の180Hz成分の減少、前記中性電流の60Hz成分の増大、又は前記中性電流の300Hz成分の増大のうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
欠相事象に無関係の伝送レベル事象に起因する信号を除去するように調節可能な時間遅延を達成するステップをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記変圧器は、Y−Δ変圧器、Y−Y三脚コア変圧器、埋込Δ付きY−Y三脚コア変圧器、又は埋込Δ付きY−Yシェルコア変圧器である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記変圧器は、発電所補助変圧器である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記変圧器は、起動変圧器である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記欠相状態シグナチャは、約20dBを超える前記注入信号の減少を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記欠相状態は、前記中性結線における注入源電流レベルの変化により検出される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記欠相状態は、前記中性結線における電力周波数電流レベルの変化により検出される、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記欠相状態は、前記中性結線における電力周波数電流の少なくとも1つの高調波のレベルの変化により検出される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの高調波のレベルの変化は、前記電力周波数電流の第3及び/又は第5高調波において検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
低負荷又は無負荷状態にあり、かつ高圧側接地Y結線を有する変圧器の欠相状態を検出するためのシステムであって、高圧側接地Y結線を有する前記変圧器の中性結線に磁気結合した注入電流変圧器と電気的に接続する注入信号源と、前記中性結線内又は前記注入電流変圧器の巻線内の電流を測定するように構成された電流測定プローブと、前記電流測定プローブと通信する電子コントローラと、を含むシステム。
【請求項17】
前記電子コントローラは、デジタル信号処理が可能である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記電子コントローラは、前記電流測定プローブからの出力を受ける少なくとも1つのアナログ入力と、警報又はトリップ機能を始動することができる少なくとも1つのリレー又はトランジスタ出力とを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記注入信号源は、単相又は三相可変周波数モータドライブを含み、前記可変周波数モータドライブの出力電圧は、前記注入電流変圧器の電圧区分を超えない、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年の送電系統の故障は、かかる系統において生じる可能性がある欠相状態を検出する必要性に焦点が当てられている。特に、系統保護を可能にするために、欠相中の系統補助変圧器の応答に対して、かかる状態を検出する方法が必要とされている。
【背景技術】
【0002】
1つの事象において、母線の不足電圧に起因して補助コンポーネントがトリップする。この事象の原因は、系統補助変圧器収益計量変圧器(system auxiliary transformer revenue-metering transformer)のC相碍子スタックの故障である。碍子スタックの一部が接地して、その結果、同時不平衡状態、すなわちC相開放−C相接地故障(C phase opened−C phase-to-ground faults)状態となる。この状態は、電圧不均衡をもたらし、これが系統補助変圧器を通って発電所母線まで連鎖的に伝わる。結果としてもたらされた欠相状態は、変圧器保護リレーを全く作動させないので、この状態が長時間にわたって存在する余地がある。中電圧モータ寄与分と三脚コア(three-legged core)型変圧器設計の磁気カップリングとの組合せである接地故障電流は系統補助変圧器から生じるが、この電流の大きさは約60Aであり、変圧器を保護する相過電流リレーのピックアップレベルをかなり下回る。
【0003】
同じプラントの別の事象において、系統補助変圧器のAフレーム構造体上の345kVアンダーハング型磁器碍子は、製造欠陥に起因して故障する。345kVラインが接地して相接地故障を引き起こし、これが系統補助変圧器ロックアウト・スキームをトリップし、該スキームは、6.9kV母線をユニット補助変圧器へ最初に移行し、緊急安全機能母線の電源を遮断し、次いでディーゼル発電機で再通電させる。
【0004】
従来のリレイング(relaying)を用いて特定の変圧器上の欠相状態を検出することは可能である。しかしながら、高圧側Y結線を組み込んだ変圧器を含む他の変圧器では、変圧器コア内の磁束に起因する変圧器の一次側及び二次側の高電圧再生(high voltage regeneration)が原因で、変圧器のグリッド側の1又は複数の欠相導体の存在を検出することは困難である。
【0005】
加えて、電力需要に関して軽負荷及び/又はゼロ負荷状態下の変圧器は、欠相状態を検出するのに問題が多い。軽負荷及び無負荷変圧器の例は、補助変圧器又はスタートアップ変圧器のようなスタンバイモードの変圧器である。低負荷及び無負荷状態は、大部分の発電所補助変圧器では一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、送電系統保護スキームでの使用のために、送電系統の変圧器において発生する可能性のある欠相状態を検出することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
高圧側接地Y結線(grounded-wye high voltage side connection)を有する変圧器の欠相状態を検出するための方法が提供され、該方法は、変圧器の高圧側の中性結線(neutral connection)を流れる電流を電圧リレイング又は電流リレイングにより監視して、電流の大きさの変化を特徴付けることができる信号内の欠相状態シグナチャ(signature)を識別することを含む。監視することは、リアルタイムで行うことができる。
【0008】
また、高圧側接地Y結線を有する変圧器の欠相状態を検出するための方法が提供され、該方法は、変圧器の中性結線上に信号を注入することと、変圧器の高圧側の中性結線を流れる電流を監視して、電流の大きさの変化を特徴付けることができる信号内の欠相状態シグナチャを識別することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】欠相監視のための中性点を示す、変圧器を有するシステムの単線接続図である。
【
図2】主題の方法で監視するのに適した変圧器の種々の型式を含む例示的なシステムの単線接続図である。
【
図3A】欠相事象前後の中性電流応答を示す波形プロットである。
【
図3B】欠相事象前後の磁化電流高調波を示す棒グラフである。
【
図4A】欠相事象前の磁化電流高調波測定を示すスクリーンショットである。
【
図4B】欠相事象後の磁化電流高調波測定を示すスクリーンショットである。
【
図5A】系統変圧器の欠相監視のための中性点を示す単線接続図である。
【
図5B】欠相事象前後の中性電流、及び欠相事象中のモータ始動(負荷)を示す線グラフである。
【
図5C】例示的な中性注入欠相検出システムを示す略図である。
【
図6】正常動作状態下の被監視変圧器の略図である。
【
図7】欠相状態を経た後の被監視変圧器の略図である。
【
図8A】実験室試験に供される例示的な変圧器構成を示す単線接続図である。
【
図8B】実験室試験に供される例示的な変圧器構成を示す単線接続図である。
【
図9A】欠相状態を伴わない、注入源信号及び一次中性電流を示すスクリーンショットである。
【
図9B】欠相状態を伴う、注入源信号及び一次中性電流を示すスクリーンショットである。
【
図10A】欠相状態発生前後両方の、埋込Δ付きY−Y三脚コア変圧器における中性電流周波数のシミュレーションされた挙動を示す。
【
図10B】欠相状態に対する中性電流周波数のFFT高調波数(成分)のシミュレーションされた応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、欠相監視のための中性結線を示した略図を示す。系統10は、変圧器12に物理的及び電気的に結合している。変圧器12は、高圧側14及び低電圧側16を含む。欠相検出装置18は、中性結線点20との中性電気接点を維持する。
【0011】
特定の例示的な実施形態によれば、変圧器は、発電所補助変圧器又は起動変圧器である。また、変圧器は、発電機変圧器とすることができ、これは電圧を送電レベルまで上げるが、送電系統から電圧を取得する場合には、変圧器は、工業用、商用又は家庭用の送電変電所において送電電圧を下げる。
【0012】
主題の方法は、変圧器がY−Δ(wye−delta)変圧器、Y−Y三脚コア変圧器、埋込Δ付きY−Y三脚コア変圧器、又は埋込Δ付きY−Yシェルコア変圧器である場合に、欠相状態を検出するのに適している。
【0013】
図2は、主題の方法で監視するのに適した変圧器の種々の型式を含む例示的なシステムの単線接続図である。
図2は、種々の型式の変圧器構成を有する変圧器システムの略図を示す。電源21は、変圧器システム22により中圧/低圧ネットワーク23に接続される。変圧器システム22は、種々の配線構成の変圧器コア24を含む。変圧器24は、任意のコア型のY−Δ巻線25、三脚コアを有するY−Y26、埋込Δ付きY−Y三脚コア27、埋込Δ付きY−Yシェルコア28を含むことができる。
【0014】
後者の変圧器では、3番目の、すなわち三次巻線は、Δ型に接続されているが、負荷接続のための端子は引き出されていない。むしろ、これはエンクロージャ内部に埋め込まれている。埋め込まれたΔ結線三次コイルは、全て同相の第3高調波電流を伝達する。これは、第3高調波電流が外部ラインに入ることを防ぎ、Y結線四線式配電系統における電力品質を高める。
【0015】
欠相事象の検出はこれらの変圧器に関する課題であり、その理由は、これらの変圧器型式で経験されるように、例えば、変圧器コア内の磁束に起因して変圧器の二次及び一次側で電圧が再生される場合、発電所補助変圧器のグリッド側の開放導体の存在を検出することが困難であることによる。また、軽負荷及び無負荷(スタンバイ)状態下の敏感な変圧器の欠相条件の検出も課題である。
【0016】
特定の実施形態において、本方法は、中性電流を監視して、変圧器のグリッド側の欠相状態の存在を検出する、すなわち中性電流法である。
【0017】
特定の実施形態において、本方法は、中性結線への注入信号を用いて、変圧器のグリッド側の欠相状態を能動的に監視する、すなわち中性注入法である。
【0018】
特定の実施形態において、本方法は、変圧器中性端子上の電圧監視及び/又は電流監視を含む。電圧リレイング及び/又は電流リレイングは、欠相状態を生じさせる事象により作り出される電圧又は電流の不均衡を検出するように適合させることができる。欠相状態は、デジタル信号処理能力と、電流測定プローブ出力型を受けるアナログ入力とを有するマイクロプロセッサ・リレー、又は業界で既知のその他のデータ取得装置を用いて検出することができる。
【0019】
特定の実施形態において、本方法は、変圧器ネットワーク・ゼロシーケンス・インピーダンスを監視することを含み、この場合、欠相シグナチャは、数百又は数千オームからメガオームまでのインピーダンスの増大を含む。
【0020】
変圧器を通る中性電流は、電流ループが正常な均衡状態にある場合と、電流ループが欠相状態にある場合とでは異なる。正常な均衡状態下の三相変圧器において、電流は、三相の各々の間で均等に分割される。典型的なシステム動作周波数は、典型的には50Hz又は60Hzである。
【0021】
正常な均衡状態下で、変圧器ネットワークは、ゼロシーケンス・ネットワークと呼ばれる。均衡ゼロシーケンス・ネットワークは、低電流インピーダンスにより特徴付けられる。ゼロシーケンス・ネットワークにおけるインピーダンスは、例えば、約300Ωから約1,000オームまでとすることができる。
【0022】
欠相状態下では、三相のうちの一相が電気的に開放され、他の二相は閉じられる。一相が開放されると、変圧器ネットワークは、変圧器の磁化インピーダンス特性により支配される高インピーダンス状態により特徴付けられることになる。欠相状態の変圧器ネットワークにおけるインピーダンスは、典型的にはメガオーム範囲であり、例えば約0.5MΩから約3MΩまでとなる。
【0023】
さらに、欠相状態は、変圧器システム高調波の高速フーリエ変換(FFT)検査により検出することができる。システムがゼロシーケンス・ネットワークから欠相状態にシフトするにつれて、第3高調波数の減少が表れ、同時に第1、第5、及び第7高調波数の増大が表れる。
【0024】
注入又は中性電流周波数が60Hzの場合、欠相状態シグナチャは、中性電流の180Hz成分(第3高調波)の減少、中性電流の60Hz成分の増大、又は中性電流の300Hz成分(第5高調波)の増大のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0025】
高調波解析は、周波数ドメインにおいて正弦波定常状態法を用いて行うことができる。高調波は、回路計算により装置出力波を導き、次いでフーリエ級数分析を行うこと、又は高調波スペクトル分析器若しくは電力品質分析器を用いた測定、のいずれかによって決定することができる。
【0026】
図3Aは、欠相状態の前後両方の、埋込Δ付きY−Y変圧器における中性電流周波数のシュミレーションされた挙動を示す。欠相事象32が生じる前、中性電流高調波のFFT周波数は、主として180Hzの第3高調波31である。中性電流周波数30は、欠相状態中の高調波の変化により特徴付けられる。
【0027】
図3Bは、欠相状態に対する中性電流周波数の高調波数のシミュレーションされた応答を示す。欠相状態前35の中性電流周波数のFFT高調波数は、第3及び第9高調波(180Hz及び540Hz)により特徴付けられる。欠相状態中36のFFT高調波数は、第1、第5及び第7高調波数(60Hz、300Hz及び420Hz)の増大、並びに第3高調波の減少により特徴付けられる。
【0028】
図4A及び
図4Bは、欠相状態前及び後のY−Y三脚コア(埋込Δなし)試験変圧器上の高調波測定を示すコンピュータスクリーンショットである。
図4Aに示すように、欠相状態が生じる前、中性電流の周波数スペクトルは、主として180Hzの第3高調波41である。
図4Bに示すように、欠相状態中、中性電流の周波数スペクトルは、主として60Hzであることが示される。
【0029】
特定の実施形態において、本方法は、欠相状態を監視するための中性注入信号を含む。注入電流変圧器モジュールは、変圧器の中性結線に磁気結合することができ、ここで結線の中性状態は変更されない。限定ではなく例示の目的で、中性結線を通じて約1ボルトから約10Vまで、かつ約10mAから100mAまで、の信号を注入することができる。ゼロシーケンス・ネットワークにおいて、結果として得られる電圧及び電流は、元の入力値に近いままである。欠相状態において、注入信号は、20dBを超えて降下することがある。
【0030】
信号注入を可能にするために、中性結線を破壊することなく磁気結合を介して電流を中性結線の中に注入するための所望の電圧を誘導するために必要な巻き量で、中性結線のまわりにコアが配置される。本方法は、小さい信号を注入するが、欠相状態を示す大きいインピーダンス変化を監視する。
【0031】
図5Aは、Y−Y三脚コア変圧器の中性ブッシング上の測定及び電流注入のための接続を示す単線接続図を示す。電源51は、Y中性ブッシング56上の測定/注入点58及び二次中性結線57を有する変圧器52に物理的及び電気的に結合している。変圧器52は、誘導モータ53及び抵抗負荷54に物理的及び電気的に接続している。
【0032】
図5Bは、欠相状態により作り出される高圧側の中性60Hz電流の変化を示す。無電気負荷ゾーン60が、250hpモータの始動62前に示されている。欠相状態61が、10秒における250hpモータの始動62前に生じており、これは電流(A)の小さい増大により示される。250hPモータ動作領域63において、負荷下の60Hz中性電流のより顕著な増大を検出することができる。欠相状態61が生じた後、中性電流の60Hz成分が増大する。欠相状態61が存在しない場合、250hpモータ動作領域63における電流の60Hz成分はゼロ付近になるであろう。
【0033】
図5Cは、電流測定プローブ67及び電子コントローラ66と共に電流変圧器に接続された交流電流(AC)電源(その周波数は電力系統周波数とは異なる)を含む、主題の方法を実施するのに有用な中性注入欠相検出システム70を示す。注入電流変圧器65は、欠相状態を検出することができる対象のY結線巻線の変圧器中性結線68に接続された導体69に、注入信号源64を磁気結合するような方式で、配置することができる。電流測定プローブ67は、変圧器中性結線68内、又は注入電流変圧器65巻線内のいずれかの電流を測定することができる。この中性電流測定プローブ67は、電子コントローラ66に接続することができる。
【0034】
本システムは、三相変圧器内の欠相状態を、本明細書で説明するように、変圧器中性電流を監視することにより検出する。正常状態下で、注入電流及びその高調波の基準レベルが確立される。欠相状態がY結線変圧器巻線上に生じると、注入信号源64から見た電流路の電気インピーダンスが増大する。この電気インピーダンスの増大の結果、注入源電流レベルが減少し、これが電子コントローラ66により検出される。注入源電流の減少と同時に、欠相状態により生じる相電流不均衡の結果として、変圧器中性結線68において電力周波数電流の増大が生じる。
【0035】
特定の実施形態において、欠相状態が生じると、変圧器中性結線における電力周波数電流の増大と共に、電力周波数電流の高調波の変化も生じる場合がある。電力周波数電流を電力周波数電流の高調波成分と共に監視することもでき、欠相状態を検出するために用いることができる。したがって、中性注入欠相検出システムは、1)変圧器中性結線における注入源電流レベルの変化、2)変圧器中性結線における電力周波数電流レベルの変化、並びに3)変圧器中性結線における電力周波数電流の高調波、特に電力周波数電流の第3及び第5高調波のレベルの変化、の3つの測定を利用して、三相変圧器のY結線巻線上の欠相状態を検出することができる。
【0036】
図6は、主題の方法による信号注入を伴う、低インピーダンス・ゼロシーケンス・モードで動作している被監視変圧器、例えば
図2に示すいずれかの型式の変圧器、を示す。変圧器は、高圧側一次巻線71及び電源変圧器二次巻線72を含む。注入源73は、一次巻線71の中性ブッシング79に磁気結合し、一次側に注入される電流74を誘導する。注入電流74は、3つの無傷の相75、76及び77のゼロシーケンス路内を流れ、電源変圧器二次巻線72を通って巻線から流出する。このゼロシーケンス・モード下で、インピーダンスは比較的低く、電流路は、3つ全ての相が閉じている又は無傷のままなので単純である。
【0037】
図7は、主題の方法による電流注入を伴う、同じ被監視変圧器を、高インピーダンス動作条件下で示す。変圧器は、高圧側一次巻線81及び電源変圧器二次巻線82を含む。注入源83は、一次巻線81に磁気結合し、一次側に注入される電流84を誘導する。注入電流84は、欠相状態85に起因する高インピーダンスを経験するが、それでもなお閉鎖相86及び87を通って流れることができる。相86及び87内で妨げられるが、電流84は、それでもなお二次巻線から流出することができる。
【0038】
図6と比較すると、
図7において、注入信号電流84は、欠相状態85に起因して発生する磁化インピーダンスにより大幅に減少する。インピーダンスの変化は、変圧器の比較的低いゼロインピーダンス・ネットワークに支配されるゼロシーケンス・ネットワークから、欠相状態の導入に起因する変圧器の磁化インピーダンスに支配される高インピーダンス状態へ変化する、ネットワークに大部分が起因する。
【0039】
図8Aは、電流注入監視方法の実施形態を示す。埋込Δ付きY−Yコア変圧器92は、208V三相電源90に電気接続される。欠相状態に関して変圧器92を監視するために、注入源91が中性ブッシング93に磁気結合される。従来の電圧検出法は、この構成の変圧器の欠相状態を検出することはできない。
【0040】
図8Bは、電流注入監視方法の実施形態を示す。Δ−Y変圧器96が、Y−Y三脚コア変圧器97と直列で、208V三相電源95に物理的及び電気的に接続される。欠相状態に関してシステムを監視するために、注入源98が中性ブッシング99に磁気結合される。従来の電圧検出法は、この構成の変圧器システムの欠相状態を検出することはできない。
【0041】
図9Aは、欠相状態を伴わない、注入源信号及び一次中性電流を示すスクリーンショットである。
図9Bは、欠相状態を伴う、注入源信号及び一次中性電流を示すスクリーンショットである。低インピーダンス・ゼロシーケンス・ネットワークが存在する場合、注入電圧100及び注入電流101は、両方とも正弦波挙動を示す。欠相状態が存在する場合、注入電圧110は、正弦波挙動を維持するが、注入電流111は、検出可能な量まで低減する。ゼロシーケンス・ネットワークにおける注入電流101は、約530mAと測定され、欠相状態における注入電流111は、わずか80mAと測定された。観測可能な電流の降下は、変圧器の磁化インピーダンスにより支配される、低インピーダンス・ゼロシーケンス・ネットワークの高インピーダンス状態への変換に起因する。
【0042】
したがって、中性電流又は信号注入は、従来の電圧又は相電流リレイングが無効な変圧器型式における欠相状態の検出を可能にする。
【0043】
モデル化の結果を確認する試験結果で示されるように、注入源電流は、回路インピーダンスの変化により顕著に低減する。この注入源電流の変化を、中性結線を通じて監視して、欠相状態を検出することができる。欠相状態が生じると、中性電流の検出可能な変化がある。加えて、欠相状態が生じると、中性電流の180Hz成分が減少し、60Hz及び300Hz成分が増大する。
【0044】
中性注入法は、低負荷及び無負荷変圧器の状況に対して特に有用である。特定の実施形態において、中性検出方法及び中性注入方法を組み合わせて、ロバストな検出システムを提供することができる。
【0045】
特定の実施形態において、本方法は、欠相事象に無関係な電圧低下に起因する迷惑な警報又はトリップを回避するために、調節可能な時間遅延を(関連付けられた警報装置又は回路遮断器内に)導入することをさらに含む。本方法は、欠相状態の存在を示す警報/トリップ信号を発するための時間−電流座標を含むことができる。
【0046】
図10Aは、欠相状態発生前後両方の、埋込Δ付きY−Y三脚コア変圧器における中性電流周波数のシミュレーションされた挙動を示す。中性電流波の振幅は、欠相状態120の発生後、約6倍変化した。
【0047】
図10Bは、欠相状態に対する中性電流周波数のFFT高調波数(成分)のシミュレーションされた応答を示す。欠相状態前130の中性FFT電流周波数の成分は、60Hz、180Hz及び540Hz周波数、すなわちそれぞれ第1、第3及び第9高調波数により特徴付けられる。欠相状態中131の成分は、60Hz、300Hz及び420Hz周波数(第1、第5及び第7高調波数)の増大、並びに180Hz及び540Hz周波数(第3及び第9高調波数)の減少により特徴付けられる。
【0048】
変圧器が100kW負荷を受けると、中性電流は、ネットワークノイズを上回り識別可能であった。負荷がかけられていないと、ネットワークノイズが中性電流の60Hz成分をマスクする場合があり、これは検出が困難な場合がある。100kW負荷が変圧器にかけられると、中性電流の高調波は、信号注入がなくても、決定がより容易になる。
図10Bにおいて、100kW負荷の下で、中性電流の60Hz成分は、欠相状態前130に識別され、欠相状態中131に大幅に増大した。
【0049】
中性信号の注入は、中性電流の60Hz成分が低すぎて、ノイズによってマスクされる場合に必要とされる。中性電流がノイズフロアを覆う場合、例えば十分に大きい負荷が存在する場合、欠相状態中の60Hz成分の増大を検出することができる。
【0050】
高圧側接地Y結線を有する変圧器の欠相状態を検出するためのシステムであって、高圧側接地Y結線を有する変圧器の中性結線に磁気結合した注入電流変圧器と電気的に接続する注入信号源と、中性結線内又は注入電流変圧器の巻線内の電流を測定するように構成された電流測定プローブと、電流測定プローブと通信する電子コントローラと、を含む、システムもまた提供される。
【0051】
特定の実施形態において、中性注入欠相検出システムは、以下の非限定的及び非網羅的リストの構成要素、すなわち比600:5及びC400区分の注入電流変圧器、感度1000mV/Aの電流測定プローブ、電子コントローラ、及び注入信号源を含むことができる。電子コントローラは、デジタル信号処理能力と、電流測定プローブ出力を受ける少なくとも1つのアナログ入力とを有する、任意のマイクロプロセッサベースのコントローラを含むことができ、警報及びトリップ機能のための少なくとも1つのリレー又はトランジスタ出力を含む。注入信号源は、単相又は三相可変周波数モータドライブとすることができる。可変周波数モータドライブの出力電圧は、注入電流変圧器の電圧区分を超えないものとすべきである。
【0052】
欠相事象又は状態が検出されたとき、電子コントローラは、リレー又はトランジスタ出力を介して従来の警報へ信号を送ってシステムオペレータへ警告を発することができ、又はシステム回路遮断器をトリップして欠相状態を補償することができる。
【0053】
特定の実施形態において、中性注入欠相検出システムの電子コントローラは、デジタル信号処理が可能である。
【0054】
特定の実施形態において、中性注入欠相検出システムの電子コントローラは、電流測定プローブからの出力を受ける少なくとも1つのアナログ入力と、警報又はトリップ機能を始動することができる少なくとも1つのリレー又はトランジスタ出力とを含む。
【0055】
特定の実施形態において、中性注入欠相検出システム注入信号源は、単相又は三相可変周波数モータドライブを含み、可変周波数モータドライブの出力電圧は、注入電流変圧器の電圧区分を超えない。
【0056】
実施形態を、上記説明及び前述の実施例を通じて詳細に説明したが、これらの実施例は、例示のみを目的とするものであり、当業者は、本開示の思想及び範囲から逸脱することなく、種々の変形及び修正を行うことができることが理解される。上述の実施形態は単なる選択肢ではなく、組み合わせることもできることを理解されたい。
【符号の説明】
【0057】
10:系統
12、52:変圧器
14:高圧側
16:低電圧側
18:欠相検出装置
20:中性結線点
21、51:電源
22:変圧器システム
23:中電圧/低電圧ネットワーク
24:変圧器コア
25:Y−Δ
26:Y−Y三脚コア
27:埋込Δ付きY−Y三脚コア
28:埋込Δ付きY−Yシェルコア
32、120:欠相事象
35、130:欠相状態前
36、131:欠相状態中
41:第3高調波
42:60Hz
53:誘導モータ
54:抵抗負荷
56、79、93、99:中性ブッシング
57:二次中性結線
58:測定/注入点
60:無電気負荷ゾーン
61:欠相状態
62:モータ始動
63:モータ動作領域
64:注入信号源
65:注入電流変圧器
66:電子コントローラ
67:電流測定プローブ
68:変圧器中性結線
69:導体
70:中性注入欠相検出システム
71、81:高圧側一次巻線
72、82:ソース変圧器二次巻線
73、83、91、98:注入源
74、84:注入電流
75、76、77、86、87:閉鎖相
85:欠相状態
90、95:三相電源
92:埋込Δ付きY−Yコア変圧器
96:Δ−Y変圧器
97:Y−Y三脚コア変圧器
100、110:注入電圧
101、111:注入電流