特許第6383448号(P6383448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383448環境試験装置における冷凍機の動作制御方法及び環境試験装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383448
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】環境試験装置における冷凍機の動作制御方法及び環境試験装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20180820BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20180820BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20180820BHJP
   F24F 11/84 20180101ALI20180820BHJP
【FI】
   F25B49/02 A
   F25B1/00 361D
   F25B1/00 371Z
   F25B1/00 304L
   F25B1/00 371B
   F25B49/02 510B
   F24F11/86
   F24F11/84
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-42586(P2017-42586)
(22)【出願日】2017年3月7日
(62)【分割の表示】特願2012-284570(P2012-284570)の分割
【原出願日】2007年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-106717(P2017-106717A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】山本 正樹
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−071457(JP,A)
【文献】 特開昭61−285349(JP,A)
【文献】 特開昭61−276660(JP,A)
【文献】 特開平02−078857(JP,A)
【文献】 特開2001−311567(JP,A)
【文献】 特開平10−274445(JP,A)
【文献】 特開平10−311615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F24F 11/84
F24F 11/86
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、電子式膨張弁及び蒸発器からなる冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うことで試験室を冷却する冷凍機を備え、前記圧縮機はインバータにより駆動モータの回転数を制御可能なものであり、前記電子式膨張弁の開度を調節することにより前記蒸発器を所定の蒸発温度に設定するようにした環境試験装置における冷凍機の動作制御方法であって、
前記試験室の温度制御を行うにあたって前記冷凍機の冷凍能力を減少させる場合、前記減少後に冷凍機が必要とする冷凍能力であって温度制御部によって試験室温度及び設定温度に基づいて導出された冷凍能力に応じた前記駆動モータの電源周波数を、電源周波数算出部が、記憶部に記憶されている算出式に基づいて求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで低くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げる工程と、
前記回転数を下げる工程において、予め設定されている可変範囲の最も低い電源周波数が算出されて、当該電源周波数まで下げられたときは、蒸発温度算出部が、当該電源周波数のもとで必要な冷凍能力を得るための前記蒸発器の蒸発温度を記憶部に記憶されている算出式に基づいて求め、前記温度制御部が、前記電子式膨張弁を絞ることにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで低くする工程と、を備えることを特徴とする環境試験装置における冷凍機の動作制御方法。
【請求項2】
前記試験室の温度制御を行うにあたって前記冷凍機の冷凍能力を増大させる場合、前記蒸発温度算出部が、前記増大後に冷凍機が必要とする冷凍能力に応じた前記蒸発器の蒸発温度を求め、前記温度制御部が、前記電子式膨張弁を開くことにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで高くする工程と、
前記蒸発温度を高くする工程において、予め設定されている可変範囲の最も高い蒸発温度が算出されて、当該蒸発温度となるように前記電子式膨張弁が開かれたときは、前記電源周波数算出部が、当該蒸発温度のもとで必要な冷凍能力を得るための前記駆動モータの電源周波数を求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで高くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を上げる工程と、を備えることを特徴とする請求項1記載の環境試験装置における冷凍機の動作制御方法。
【請求項3】
前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げる工程において、蒸発温度が一定の状態で前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げることを特徴とする請求項1記載の環境試験装置における冷凍機の動作制御方法。
【請求項4】
圧縮機、凝縮器、電子式膨張弁及び蒸発器からなる冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うことで試験室を冷却する冷凍機を備え、前記圧縮機はインバータにより駆動モータの回転数を制御可能なものであり、前記電子式膨張弁の開度を調節することにより前記蒸発器を所定の蒸発温度に設定するようにした環境試験装置における冷凍機の動作制御方法であって、
前記試験室の温度制御を行うにあたって前記冷凍機の冷凍能力を増大させる場合、前記増大後に冷凍機が必要とする冷凍能力であって温度制御部によって試験室温度及び設定温度に基づいて導出された冷凍能力に応じた前記蒸発器の蒸発温度を、蒸発温度算出部が、記憶部に記憶されている算出式に基づいて求め、前記温度制御部が、前記電子式膨張弁を開くことにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで高くする工程と、
前記蒸発温度を高くする工程において、予め設定されている可変範囲の最も高い蒸発温度が算出されて、当該蒸発温度となるように前記電子式膨張弁が開かれたときは、電源周波数算出部が、当該蒸発温度のもとで必要な冷凍能力を得るための前記駆動モータの電源周波数を記憶部に記憶されている算出式に基づいて求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで高くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を上げる工程と、を備えることを特徴とする環境試験装置における冷凍機の動作制御方法。
【請求項5】
圧縮機、凝縮器、電子式膨張弁及び蒸発器からなる冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うことで試験室を冷却する冷凍機を備え、前記圧縮機はインバータにより駆動
モータの回転数を制御可能なものであり、前記電子式膨張弁の開度を調節することにより前記蒸発器を所定の蒸発温度に設定するようにした環境試験装置であって、
前記蒸発器の蒸発温度を計測する蒸発温度センサと、
前記試験室の温度を計測する室温度センサと、
試験温度を含む試験条件を設定するための試験条件設定部と、
前記試験室の温度制御を行うにあたって前記冷凍機の冷凍能力を減少させる必要があるか増大させる必要があるかを判別する温度判別部と、
前記室温度センサによって計測された試験室温度及び前記試験条件設定部によって設定された試験温度に基づいて必要とする冷凍能力を導出するとともに、前記電子式膨張弁と前記駆動モータとを制御する温度制御部と
少なくとも前記駆動モータの設定すべき電源周波数を算出する算出式と前記蒸発器の設定すべき蒸発温度を算出する算出式とを記憶する記憶部と、
前記駆動モータの電源周波数を、前記電源周波数を算出する前記算出式に基づいて算出する電源周波数算出部と、
前記蒸発温度を、前記蒸発温度を算出する前記算出式に基づいて算出する蒸発温度算出部と、を備え、
記温度判別部により前記冷凍機の冷凍能力を減少させる必要があると判別された場合、前記温度制御部によって導出された前記減少後に冷凍機が必要とする冷凍能力に応じた前記駆動モータの電源周波数を前記電源周波数算出部が求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで低くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げる工程を行い、前記回転数を下げる工程において、予め設定されている可変範囲の最も低い電源周波数が算出されて、当該電源周波数まで前記駆動モータの電源周波数が下げられたときは、前記蒸発温度算出部が、当該電源周波数のもとで必要な冷凍能力を得るための前記蒸発器の蒸発温度を求め、前記温度制御部が、前記蒸発温度センサにより計測される蒸発温度に基づいて前記電子式膨張弁を絞ることにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで低くする制御を行うことを特徴とする環境試験装置。
【請求項6】
記温度判別部により前記冷凍機の冷凍能力を増大させる必要があると判別された場合、前記温度制御部によって導出された前記増大後に冷凍機が必要とする冷凍能力に応じた前記蒸発器の蒸発温度を前記蒸発温度算出部が求め、前記温度制御部が、前記蒸発温度センサにより計測される蒸発温度に基づいて前記電子式膨張弁を開くことにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで高くする工程を行い、前記蒸発温度を高くする工程において、予め設定されている可変範囲の最も高い蒸発温度が算出されて、当該蒸発温度となるように前記電子式膨張弁の開度を開いたときは、前記電源周波数算出部が、当該蒸発温度のもとで必要な冷凍能力を得るための前記駆動モータの電源周波数を求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで高くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を上げる制御を行うことを特徴とする請求項5記載の環境試験装置。
【請求項7】
前記温度制御部は、前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げる工程において、蒸発温度が一定の状態で前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げる制御を行うことを特徴とする請求項5記載の環境試験装置。
【請求項8】
圧縮機、凝縮器、電子式膨張弁及び蒸発器からなる冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うことで試験室を冷却する冷凍機を備え、前記圧縮機はインバータにより駆動モータの回転数を制御可能なものであり、前記電子式膨張弁の開度を調節することにより前記蒸発器を所定の蒸発温度に設定するようにした環境試験装置であって、
前記蒸発器の蒸発温度を計測する蒸発温度センサと、
前記試験室の温度を計測する室温度センサと、
試験温度を含む試験条件を設定するための試験条件設定部と、
前記試験室の温度制御を行うにあたって前記冷凍機の冷凍能力を減少させる必要があるか増大させる必要があるかを判別する温度判別部と、
前記室温度センサによって計測された試験室温度及び前記試験条件設定部によって設定された試験温度に基づいて必要とする冷凍能力を導出するとともに、前記電子式膨張弁と前記駆動モータとを制御する温度制御部と
少なくとも前記駆動モータの設定すべき電源周波数を算出する算出式と前記蒸発器の設定すべき蒸発温度を算出する算出式とを記憶する記憶部と、
前記駆動モータの電源周波数を、前記電源周波数を算出する前記算出式に基づいて算出する電源周波数算出部と、
前記蒸発温度を、前記蒸発温度を算出する前記算出式に基づいて算出する蒸発温度算出部と、を備え、
記温度判別部により前記冷凍機の冷凍能力を増大させる必要があると判別された場合、前記温度制御部によって導出された前記増大後に冷凍機が必要とする冷凍能力に応じた前記蒸発器の蒸発温度を前記蒸発温度算出部が求め、前記温度制御部が、前記蒸発温度センサにより計測される蒸発温度に基づいて前記電子式膨張弁を開くことにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで高くする工程を行い、前記蒸発温度を高くする工程において、予め設定されている可変範囲の最も高い蒸発温度が算出されて、当該蒸発温度となるように前記電子式膨張弁の開度を開いたときは、前記電源周波数算出部が、当該蒸発温度のもとで必要な冷凍能力を得るための前記駆動モータの電源周波数を求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで高くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を上げる制御を行うことを特徴とする環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、電気機器、高分子材料などの試験対象となる試料の環境試験を実施する環境試験装置における冷凍機の動作制御方法及び環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでから、電子部品、電気機器、高分子材料などの試験対象となる試料に対し所定の環境試験を実施する場合、例えば、水温制御加湿式の環境試験装置が用いられている。
【0003】
この環境試験装置は、電子部品、電気機器などの試験対象となる試料を収納して所定の環境試験を実施する試験室と、この試験室の空調を行う空調室とを備えており、空調室に配設された室加熱器により試験室を加熱すると共に、空調室に配設された蒸発加湿皿に注がれている加湿水を水加熱器により加熱することで試験室に蒸発水分を供給する一方、冷凍機により試験室を冷却することで試験室を所定の温度及び湿度に調節するようにしたものである(例えば、特許文献1)。ここで、冷凍機は、圧縮機、凝縮器、電子式膨張弁及び蒸発器からなる冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うようにしたものである。また、圧縮機は、インバータにより電源周波数を可変して駆動モータの回転数を制御可能に構成したものである。
【0004】
このように構成された環境試験装置は、試験温度を設定変更したことなどにより冷凍機の冷凍能力を減少させる必要が生じた場合には電子式膨張弁を絞り、それだけでは冷凍能力を十分に減少させることができないときにインバータにより電源周波数を低くすることにより圧縮機の駆動モータの回転数を下げるようにする一方、冷凍機の冷凍能力を増大させる必要が生じた場合にはインバータにより電源周波数を高くすることにより圧縮機の駆動モータの回転数を上げ、それだけでは冷凍能力を十分に増大させることができない場合には電子式膨張弁を開けるようにしている。
【0005】
これにより、試験室を所定の試験条件に設定することができ、電子部品、電気機器、高分子材料などの試験対象となる試料に対し所定の環境試験を容易かつ確実に実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−311567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記構成になる従来の環境試験装置では、試験対象となる試料に対し所定の環境試験を容易かつ確実に実施することができるとはいうものの、冷凍機の冷凍能力を増大させる必要が生じた場合にインバータにより電源周波数を高くして駆動モータの回転数を上げることを優先していることで圧縮機の消費電力を効果的に抑制することができないだけでなく、冷凍能力を減少させる必要が生じた場合に電子式膨張弁を絞って蒸発器の蒸発温度を低くすることを優先していることで圧縮機の消費電力を効果的に抑制することができないことから、省電力化という観点で不都合があるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、省電力化を効果的に促進することができる環境試験装置における冷凍機の動作制御方法及び環境試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、圧縮機、凝縮器、電子式膨張弁及び蒸発器からなる冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うことで試験室を冷却する冷凍機を備え、前記圧縮機はインバータにより駆動モータの回転数を制御可能なものであり、前記電子式膨張弁の開度を調節することにより前記蒸発器を所定の蒸発温度に設定するようにした環境試験装置における冷凍機の動作制御方法であって、前記試験室の温度制御を行うにあたって前記冷凍機の冷凍能力を減少させる場合、前記減少後に冷凍機が必要とする冷凍能力であって温度制御部によって試験室温度及び設定温度に基づいて導出された冷凍能力に応じた前記駆動モータの電源周波数を、電源周波数算出部が、記憶部に記憶されている算出式に基づいて求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで低くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げる工程と、前記回転数を下げる工程において、予め設定されている可変範囲の最も低い電源周波数が算出されて、当該電源周波数まで下げられたときは、蒸発温度算出部が、当該電源周波数のもとで必要な冷凍能力を得るための前記蒸発器の蒸発温度を記憶部に記憶されている算出式に基づいて求め、前記温度制御部が、前記電子式膨張弁を絞ることにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで低くする工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に係る方法において、前記試験室の温度制御を行うにあたって前記冷凍機の冷凍能力を増大させる場合、前記蒸発温度算出部が、前記増大後に冷凍機が必要とする冷凍能力に応じた前記蒸発器の蒸発温度を求め、前記温度制御部が、前記電子式膨張弁を開くことにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで高くする工程と、前記蒸発温度を高くする工程において、予め設定されている可変範囲の最も高い蒸発温度が算出されて、当該蒸発温度となるように前記電子式膨張弁が開かれたときは、前記電源周波数算出部が、当該蒸発温度のもとで必要な冷凍能力を得るための前記駆動モータの電源周波数を求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで高くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を上げる工程と、を備えることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1に係る方法において、前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げる工程において、蒸発温度が一定の状態で前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げることを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明は、圧縮機、凝縮器、電子式膨張弁及び蒸発器からなる冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うことで試験室を冷却する冷凍機を備え、前記圧縮機はインバータにより駆動モータの回転数を制御可能なものであり、前記電子式膨張弁の開度を調節することにより前記蒸発器を所定の蒸発温度に設定するようにした環境試験装置における冷凍機の動作制御方法であって、前記試験室の温度制御を行うにあたって前記冷凍機の冷凍能力を増大させる場合、前記増大後に冷凍機が必要とする冷凍能力であって温度制御部によって試験室温度及び設定温度に基づいて導出された冷凍能力に応じた前記蒸発器の蒸発温度を、蒸発温度算出部が、記憶部に記憶されている算出式に基づいて求め、前記温度制御部が、前記電子式膨張弁を開くことにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで高くする工程と、前記蒸発温度を高くする工程において、予め設定されている可変範囲の最も高い蒸発温度が算出されて、当該蒸発温度となるように前記電子式膨張弁が開かれたときは、電源周波数算出部が、当該蒸発温度のもとで必要な冷凍能力を得るための前記駆動モータの電源周波数を記憶部に記憶されている算出式に基づいて求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで高くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を上げる工程と、を備えることを特徴としている。
【0013】
請求項5の発明は、圧縮機、凝縮器、電子式膨張弁及び蒸発器からなる冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うことで試験室を冷却する冷凍機を備え、前記圧縮機はインバータにより駆動モータの回転数を制御可能なものであり、前記電子式膨張弁の開度を調節することにより前記蒸発器を所定の蒸発温度に設定するようにした環境試験装置であって、前記蒸発器の蒸発温度を計測する蒸発温度センサと、前記試験室の温度を計測する室温度センサと、試験温度を含む試験条件を設定するための試験条件設定部と、前記試験室の温度制御を行うにあたって前記冷凍機の冷凍能力を減少させる必要があるか増大させる必要があるかを判別する温度判別部と、前記室温度センサによって計測された試験室温度及び前記試験条件設定部によって設定された試験温度に基づいて必要とする冷凍能力を導出するとともに、前記電子式膨張弁と前記駆動モータとを制御する温度制御部と、少なくとも前記駆動モータの設定すべき電源周波数を算出する算出式と前記蒸発器の設定すべき蒸発温度を算出する算出式とを記憶する記憶部と、前記駆動モータの電源周波数を、前記電源周波数を算出する前記算出式に基づいて算出する電源周波数算出部と、前記蒸発温度を、前記蒸発温度を算出する前記算出式に基づいて算出する蒸発温度算出部と、を備え、前記温度判別部により前記冷凍機の冷凍能力を減少させる必要があると判別された場合、前記温度制御部によって導出された前記減少後に冷凍機が必要とする冷凍能力に応じた前記駆動モータの電源周波数を前記電源周波数算出部が求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで低くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げる工程を行い、前記回転数を下げる工程において、予め設定されている可変範囲の最も低い電源周波数が算出されて、当該電源周波数まで前記駆動モータの電源周波数が下げられたときは、前記蒸発温度算出部が、当該電源周波数のもとで必要な冷凍能力を得るための前記蒸発器の蒸発温度を求め、前記温度制御部が、前記蒸発温度センサにより計測される蒸発温度に基づいて前記電子式膨張弁を絞ることにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで低くする制御を行うことを特徴としている。
【0014】
請求項6の発明は、請求項5に係るものにおいて、前記温度制御部は、前記温度判別部により前記冷凍機の冷凍能力を増大させる必要があると判別された場合、前記温度制御部によって導出された前記増大後に冷凍機が必要とする冷凍能力に応じた前記蒸発器の蒸発温度を前記蒸発温度算出部が求め、前記温度制御部が、前記蒸発温度センサにより計測される蒸発温度に基づいて前記電子式膨張弁を開くことにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで高くする工程を行い、前記蒸発温度を高くする工程において、予め設定されている可変範囲の最も高い蒸発温度が算出されて、当該蒸発温度となるように前記電子式膨張弁の開度を開いたときは、前記電源周波数算出部が、当該蒸発温度のもとで必要な冷凍能力を得るための前記駆動モータの電源周波数を求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで高くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を上げる制御を行うことを特徴としている。
【0015】
請求項7の発明は、請求項5に係るものにおいて、前記温度制御部は、前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げる工程において、蒸発温度が一定の状態で前記圧縮機の駆動モータの回転数を下げる制御を行うことを特徴としている。
【0016】
請求項8の発明は、圧縮機、凝縮器、電子式膨張弁及び蒸発器からなる冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うことで試験室を冷却する冷凍機を備え、前記圧縮機はインバータにより駆動モータの回転数を制御可能なものであり、前記電子式膨張弁の開度を調節することにより前記蒸発器を所定の蒸発温度に設定するようにした環境試験装置であって、前記蒸発器の蒸発温度を計測する蒸発温度センサと、前記試験室の温度を計測する室温度センサと、試験温度を含む試験条件を設定するための試験条件設定部と、前記試験室の温度制御を行うにあたって前記冷凍機の冷凍能力を減少させる必要があるか増大させる必要があるかを判別する温度判別部と、前記室温度センサによって計測された試験室温度及び前記試験条件設定部によって設定された試験温度に基づいて必要とする冷凍能力を導出するとともに、前記電子式膨張弁と前記駆動モータとを制御する温度制御部と、少なくとも前記駆動モータの設定すべき電源周波数を算出する算出式と前記蒸発器の設定すべき蒸発温度を算出する算出式とを記憶する記憶部と、前記駆動モータの電源周波数を、前記電源周波数を算出する前記算出式に基づいて算出する電源周波数算出部と、前記蒸発温度を、前記蒸発温度を算出する前記算出式に基づいて算出する蒸発温度算出部と、を備え、前記温度判別部により前記冷凍機の冷凍能力を増大させる必要があると判別された場合、前記温度制御部によって導出された前記増大後に冷凍機が必要とする冷凍能力に応じた前記蒸発器の蒸発温度を前記蒸発温度算出部が求め、前記温度制御部が、前記蒸発温度センサにより計測される蒸発温度に基づいて前記電子式膨張弁を開くことにより前記蒸発器の蒸発温度を前記求めた蒸発温度まで高くする工程を行い、前記蒸発温度を高くする工程において、予め設定されている可変範囲の最も高い蒸発温度が算出されて、当該蒸発温度となるように前記電子式膨張弁の開度を開いたときは、前記電源周波数算出部が、当該蒸発温度のもとで必要な冷凍能力を得るための前記駆動モータの電源周波数を求め、前記温度制御部が、前記インバータにより電源周波数を前記求めた電源周波数まで高くすることにより前記圧縮機の駆動モータの回転数を上げる制御を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び3の発明によれば、冷凍機の冷凍能力を減少させる場合、電子式膨張弁を絞って蒸発器の蒸発温度を低くする動作よりも先に電源周波数を低くして圧縮機の駆動モータの回転数を下げるようにしているので、大きな駆動電力を要する圧縮機が効果的に機能ダウンされることで圧縮機における不要な電力消費を抑制することができる結果、省電力化を効果的に促進することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、請求項1に係る冷凍機の動作制御方法において、冷凍機の冷凍能力を増大させる場合、電源周波数を高くして圧縮機の駆動モータの回転数を上げるようにする動作よりも先に電子式膨張弁を開いて蒸発器の蒸発温度を上げるようにしているので、大きな駆動電力を要する圧縮機の機能アップが効果的に抑えられることで圧縮機における不要な電力消費を抑制することができる結果、省電力化を効果的に促進することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、冷凍機の冷凍能力を増大させる場合、電源周波数を高くして圧縮機の駆動モータの回転数を上げるようにする動作よりも先に電子式膨張弁を開いて蒸発器の蒸発温度を上げるようにしているので、大きな駆動電力を要する圧縮機の機能アップが効果的に抑えられることで圧縮機における不要な電力消費を抑制することができる結果、省電力化を効果的に促進することができる。
【0020】
請求項5及び7の発明によれば、冷凍機の冷凍能力を減少させる場合、電子式膨張弁を絞って蒸発器の蒸発温度を低くする動作よりも先に電源周波数を低くして圧縮機の駆動モータの回転数を下げるようにしているので、大きな駆動電力を要する圧縮機が効果的に機能ダウンされることで圧縮機における不要な電力消費を抑制することができる結果、省電力化を効果的に促進することができる環境試験装置を実現することができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、請求項5に係る環境試験装置において、冷凍機の冷凍能力を増大させる場合、電源周波数を高くして圧縮機の駆動モータの回転数を上げるようにする動作よりも先に電子式膨張弁を開いて蒸発器の蒸発温度を上げるようにしているので、大きな駆動電力を要する圧縮機の機能アップが効果的に抑えられることで圧縮機における不要な電力消費を抑制することができる結果、省電力化を効果的に促進することができる環境試験装置を実現することができる。
【0022】
請求項8の発明によれば、冷凍機の冷凍能力を増大させる場合、電源周波数を高くして圧縮機の駆動モータの回転数を上げるようにする動作よりも先に電子式膨張弁を開いて蒸発器の蒸発温度を上げるようにしているので、大きな駆動電力を要する圧縮機の機能アップが効果的に抑えられることで圧縮機における不要な電力消費を抑制することができる結果、省電力化を効果的に促進することができる環境試験装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る環境試験装置における冷凍機の動作制御方法が適用される環境試験装置の構成を概略的に示す図である。
図2】環境試験装置に適用される冷凍機における駆動モータの電源周波数をパラメータとした蒸発温度対冷凍能力の特性曲線図である。
図3】環境試験装置の温度制御動作を説明するためのフローチャートである。
図4】環境試験装置の温度制御動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る環境試験装置における冷凍機の動作制御方法が適用される環境試験装置の一構成例を概略的に示す図である。すなわち、本発明に係る環境試験装置における冷凍機の動作制御方法が適用される環境試験装置10は、電子部品、電気機器などの試験対象となる試料Sを収納し、この試料Sに対して所定の環境試験を実施する試験室12と、試験室12の空調を行う空調室14とを有する試験槽16を備えており、試験室12と空調室14とを区画する隔壁18の上部に所定の温度及び湿度に調節された空気を空調室14から試験室12に送り出すための送出口20が形成されると共に、隔壁18の下部に試験室12を経由した空気を試験室12から空調室14に戻すための返戻口22が形成されることで、試験室12と空調室14とが互いに通風可能な状態とされている。
【0025】
また、環境試験装置10は、試験室12の空気を加熱するもので、空調室14に配設された室加熱器26と、加湿水28を加熱して蒸発させることで試験室12に蒸発水分を供給するもので、空調室14に配設された蒸発加湿皿30と、蒸発加湿皿30に注がれた加湿水28を加熱するもので、蒸発加湿皿30に配設された水加熱器32と、試験室12を冷却して室加熱器26による発熱量とのバランスをとることで試験室12の温度を調節する冷凍機34と、送出口20及び返戻口22を介して試験室12と空調室14との間で空気を循環させることにより試験室12の温度及び湿度を均一化させるもので、空調室14に配設された送風機36とを備えている。
【0026】
さらに、環境試験装置10は、試験室12の温度を計測するためのもので、試験室12の送出口20近傍に配設された室温度センサ40と、試験室12の湿度を計測するためのもので、試験室12の送出口20近傍に配設された室湿度センサ42と、室加熱器26、水加熱器32及び冷凍機34の動作を制御することで試験室12を所定の試験温度及び試験湿度に維持するもので、試験槽16の外部に配設された環境制御部46とを備えている。
【0027】
ここで、室加熱器26及び水加熱器32は、電気ヒータなどにより構成されたものである。冷凍機34は、圧縮機50、凝縮器52、電子式膨張弁54及び蒸発器56からなる冷媒回路に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うもので、蒸発器56が空調室14に配設され、圧縮機50、凝縮器52及び電子式膨張弁54が試験槽16の外部に配設されたものである。なお、圧縮機50は、インバータ58により電源周波数を可変することにより回転数が制御される駆動モータ60を備えたものである。また、蒸発器56の入口側には、蒸発器56の入口温度を計測するための感温素子などで構成された蒸発温度センサ62が配設されている。
【0028】
また、室温度センサ40は、熱電対により構成されたものである。室湿度センサ42は、熱電対の計測部に吸水させたガーゼなどの吸水体を巻き付けた湿球温度計により構成され、送風機36は、ファン付きモータにより構成されたものである。環境制御部46は、演算処理を実行するCPU、処理プログラムやデータなどを記憶するROM、及び、データを一時的に記憶するRAMを備えたマイクロコンピュータなどで構成されたものである。
【0029】
この環境制御部46には、上述した室加熱器26、水加熱器32、冷凍機34(電子式膨張弁54、インバータ58)、送風機36、室温度センサ40、室湿度センサ42、及び、蒸発温度センサ62がそれぞれ図略のインターフェイス回路を介して接続されると共に、試験条件を設定するための試験条件設定部68、試験室12の湿度を算出する算出式、駆動モータ60の設定すべき電源周波数を算出する算出式、蒸発器56の設定すべき蒸発温度を算出する算出式、これら算出式に用いる所定のデータなどを記憶する記憶部70、及び、試験時間を計測するためのタイマー72が図略のインターフェイス回路を介して接続されている。
【0030】
また、環境制御部46には、室温度判別部76、電源周波数算出部78、蒸発温度算出部80、室温度制御部82、冷凍機判別部84、室湿度算出部86、室湿度判別部88、及び、室湿度制御部90としての各機能実現部を備えている。
【0031】
ここで、室温度判別部76は、室温度センサ40で検出された試験室12の温度と試験条件設定部68で設定された温度とを比較することにより試験室12の温度を判別する一方、試験条件設定部68で試験温度が設定変更されるなどした場合に試験室12の温度制御を行うにあたって冷凍機34の冷凍能力を減少させる必要があるか増大させる必要があるかを判別するものである。
【0032】
すなわち、室温度センサ40で検出された試験室12の温度が試験条件設定部68で設定された温度よりも低い場合は冷凍機34の冷凍能力を減少させる必要があると判別し、室温度センサ40で検出された試験室12の温度が試験条件設定部68で設定された温度よりも高い場合は冷凍機34の冷凍能力を増大させる必要があると判別する。なお、室温度センサ40が熱電対で構成されている場合、室温度センサ40に生成される起電力に基づき設定値と比較して判別されることになる。
【0033】
電源周波数算出部78は、室加熱器26の発熱量などに関連して定まる冷凍機34の必要とする冷凍能力に応じてインバータ58により設定される駆動モータ60の電源周波数を記憶部70に記憶されている算出式に基づき算出するものである。なお、駆動モータ60の電源周波数を算出するための算出式は、例えば、室加熱器26の発熱量や冷凍機34の冷凍能力などに基づき予め実験的に求められたものである。
【0034】
蒸発温度算出部80は、室加熱器26の発熱量などに関連して定まる冷凍機34の必要とする冷凍能力に応じた蒸発器56の蒸発温度を駆動モータ60の電源周波数に対応して記憶部70に記憶されている算出式に基づき算出するものである。なお、蒸発器56の蒸発温度を算出するための算出式は、例えば、室加熱器26の発熱量や冷凍機34の冷凍能力などに基づき予め実験的に求められたものである。
【0035】
室温度制御部82は、室加熱器26に図略の電源供給回路の動作を制御することで電力を供給する一方、室温度センサ40で検出された試験室12の温度と試験条件設定部68で設定された温度との比較結果、及び、室加熱器26の加熱量と予め定められた規定値との比較結果に対応して冷凍機34の冷凍能力を制御することにより室加熱器26による加熱動作と冷凍機34による冷却動作のバランスをとることで試験室12が試験条件設定部68で設定された温度となるようにするものである。
【0036】
すなわち、冷凍機34は、図2に示す特性曲線からも明らかなように、蒸発器56(図1)の蒸発温度が高くなるように設定されると冷凍能力が増大し、蒸発器56の蒸発温度が低くなるように設定されると冷凍能力が減少する。この場合、圧縮機50の駆動モータ60の電源周波数が高くなるほど蒸発温度の単位変化に対する冷凍能力の増大割合が大きくなり、圧縮機50の駆動モータ60の電源周波数が低くなるほど蒸発温度の単位変化に対する冷凍能力の増大割合が小さくなるという特性を有している。
【0037】
このため、電子式膨張弁54のアクチュエータを動作させて弁開度を大きくすることにより蒸発器56の蒸発温度が高くなるようにするか、あるいは、インバータ58により圧縮機50の駆動モータ60の電源周波数を高くすることで冷凍機34の冷凍能力を増大させることができる。また、電子式膨張弁54のアクチュエータを動作させて弁開度を小さくすることにより蒸発器56の蒸発温度が低くなるようにするか、あるいは、インバータ58により圧縮機50の駆動モータ60の電源周波数を低くすることで冷凍機34の冷凍能力を減少させることができる。
【0038】
従って、本実施形態では、試験室12の試験温度を設定変更したことなどにより温度制御を行うにあたって冷凍機34の冷凍能力を減少させる必要が生じた場合、インバータ58により駆動モータ60の電源周波数を低くすることにより圧縮機50の駆動モータ60の回転数を下げ、その後に電子式膨張弁54を絞ることにより蒸発器56の蒸発温度を低くするようにしている。
【0039】
すなわち、より具体的には、図2の点線矢印により模式的に示すように、インバータ58により電源周波数を可変範囲内における現在の設定値よりも低い値(好ましくは最も低い値)に設定し、その設定される周波数において必要とする冷凍能力となる蒸発温度になるように電子式膨張弁54を絞ることになる。この電子式膨張弁54は、蒸発温度センサ62で検出される温度が必要とする冷凍能力となる蒸発温度となるようにアクチュエータにより弁開度が調節される。
【0040】
このように、冷凍機34の冷凍能力を減少させる必要がある場合、電子式膨張弁54を絞る動作よりも先に電源周波数を低くして圧縮機50の駆動モータ60の回転数を下げることにより、大きな駆動電力を要する圧縮機50が効果的に機能ダウンされることで圧縮機50における不要な電力消費を抑制することができて省電力化を効果的に促進することができる。つまり、電源周波数を低くする動作よりも先に電子式膨張弁54を絞るようにすると、蒸発温度の下げ幅が大きくなって電源周波数の下げ幅が少なくなってしまう結果、圧縮機50が効果的に機能ダウンされないことになって効果的な省電力化を図ることができないことになる。但し、冷凍機34の冷凍能力を減少させる必要がある場合でも、その程度が僅かであるときは電子式膨張弁54はそのままで駆動モータ60の電源周波数を低くするだけでよい場合もある。
【0041】
また、試験室12の試験温度を設定変更したことなどにより温度制御を行うにあたって冷凍機34の冷凍能力を増大させる必要が生じた場合、電子式膨張弁54を開くことにより蒸発器56の蒸発温度を高くし、その後にインバータ58により電源周波数を高くすることにより圧縮機50の駆動モータ60の回転数を上げるようにしている。
【0042】
すなわち、より具体的には、図2の実線矢印により模式的に示すように、蒸発器56の蒸発温度を現在設定されている駆動モータ60の電源周波数における可変範囲内の高い値(好ましくは最も高い値)になるように電子式膨張弁54を開き、それにより設定される蒸発温度において必要とする冷凍能力となるようにインバータ58により駆動モータ60の電源周波数を調節する。この電子式膨張弁54は、蒸発温度センサ62で検出される温度が上述の所定の蒸発温度となるようにアクチュエータにより弁開度が調節される。
【0043】
このように、冷凍機34の冷凍能力を増大させる必要がある場合、駆動モータ60の電源周波数を高くする動作よりも先に電子式膨張弁54が開かれることから、大きな駆動電力を要する圧縮機50の機能アップが効果的に抑えられることで圧縮機50における不要な電力消費を抑制することができて省電力化を効果的に促進することができる。つまり、電子式膨張弁54を開く動作よりも先に駆動モータ60の電源周波数を高くすると、電源周波数の上げ幅が大きくなって蒸発温度の上げ幅が小さくなってしまう結果、圧縮機50の機能アップが効果的に抑えられないことになって効果的な省電力化を図ることができないことになる。但し、冷凍機34の冷凍能力を増大させる必要がある場合でも、その程度が僅かであるときは電子式膨張弁54を開いて蒸発器56の蒸発温度を高くするだけでよい場合もある。
【0044】
なお、インバータ58により設定された駆動モータ60の電源周波数、及び、アクチュエータにより調節された電子式膨張弁54の弁開度は記憶部70に記憶され、それらの値は設定されるごとに更新されることになる。
【0045】
冷凍機判別部84は、冷凍機34の現在の冷凍動作状態を判別するためのもので、インバータ58により設定された駆動モータ60の現在の電源周波数のレベル、及び、アクチュエータにより調節された電子式膨張弁54の現在の弁開度のレベルを記憶部70から読み出すことで実行される。この判別結果を得ることで、冷凍機34の冷凍能力を継続して制御することが可能となる。
【0046】
室湿度算出部86は、記憶部70に記憶されている算出式に基づき、室温度センサ40で検出された温度と室湿度センサ42で検出された温度とに基づいて試験室12の湿度(相対湿度)を算出するものである。なお、室湿度算出部86は、算出式に基づいて湿度を求めるのではなく、記憶部70などに記憶させたテーブルから読み出すことで求めるようにすることもできる。
【0047】
室湿度判別部88は、室温度センサ40で検出された温度と室湿度センサ42で検出された温度とに基づいて求めた試験室12の湿度と試験条件設定部68で設定された湿度とを比較することにより、試験室12の湿度が設定した湿度になっているか否かを判別するものである。
【0048】
室湿度制御部90は、室湿度判別部88での判別結果に対応して水加熱器32に供給される電力を制御することにより加湿水28の蒸発量を調節することで試験室12が試験条件設定部68で設定された湿度となるようにするものである。例えば、設定される湿度が高いほど水加熱器32に供給される電力を大きくして加湿水28の単位時間当たりの蒸発量が多くなるようにされる。
【0049】
このように構成された環境試験装置10は、試験条件設定部68により試験温度、試験湿度、試験時間などが設定され、図略のスタートボタンがオンされるなどすることで室加熱器26、水加熱器32、冷凍機34及び送風機36がそれぞれ所定のタイミングで作動される。そして、室温度判別部76や室温度制御部82などの作動により試験室12の試験温度が試験条件設定部68での設定温度に調節されると共に、室湿度算出部86、室湿度判別部88、室湿度制御部90などの作動により試験室12の試験湿度が試験条件設定部68での設定湿度に調節されて試料Sに対し所定の環境試験が実施される一方、タイマー72でカウントされる試験時間が試験条件設定部68での設定時間に達することで環境試験が終了される。
【0050】
図3及び図4は、環境試験装置10により環境試験を実施する場合の試験室12における温度制御動作の一例を概略的に説明するためのフローチャートである。図3は、試験温度が設定変更されるなどして冷凍機34の冷凍能力を減少させる必要が生じた場合の動作例であり、図4は、試験温度が設定変更されるなどして冷凍機34の冷凍能力を増大させる必要が生じた場合の動作例である。
【0051】
なお、図3は、駆動モータ60の電源周波数の調節だけでは冷凍能力を減少させることができないために電子式膨張弁54の弁開度も併せて調節することで冷凍能力を減少させる場合の例であり、図4は、電子式膨張弁54の弁開度の調節だけでは冷凍能力を増大させることができないために駆動モータ60の電源周波数も併せて調節することで冷凍能力を増大させる場合の例である。
【0052】
すなわち、図3に示すように、冷凍機34の冷凍能力を減少させる必要が生じた場合、現在設定されている蒸発温度のもとで冷凍能力を減少させるのに必要な駆動モータ60の電源周波数が電源周波数算出部78により算出される(ステップS1)。この例では、駆動モータ60の電源周波数の調節だけでは必要とする冷凍能力が得られないことから、予め設定されている可変範囲の最も低い値が算出されることになる。なお、この例とは異なるが、冷凍機34の冷凍能力を減少させる程度が僅かでよいために電源周波数を低くするだけで冷凍能力を減少させることができる場合は、それに必要な電源周波数が算出されることになる。
【0053】
次いで、電源周波数算出部78により算出された電源周波数になるように室温度制御部82によりインバータ58が制御される(ステップS3)。このインバータ58の制御は、記憶部70から現在設定されている電源周波数が冷凍機判別部84により読み出され、その読み出された電源周波数に基づいて実行される。これにより、駆動モータ60は、インバータ58により設定された可変範囲の最も低い値の電源周波数で回転駆動され、その駆動モータ60の回転駆動により圧縮機50が作動される。
【0054】
次いで、電源周波数算出部78により算出された電源周波数のもとで必要な冷凍能力を得るための蒸発器56の蒸発温度が蒸発温度算出部80により算出され(ステップS5)、その後に室温度制御部82によりアクチュエータが制御されることで電子式膨張弁54が絞られて蒸発温度算出部80により算出された蒸発温度に設定される(ステップS7)。この電子式膨張弁54の弁開度は、記憶部70から現在設定されている弁開度が冷凍機判別部84により読み出され、その読み出された弁開度に基づき調節される。
【0055】
次いで、試験室12が試験条件設定部68での設定温度になったか否かが室温度判別部76により判別される(ステップS9)。このステップS9での判別が肯定されると、試験温度が設定変更されるなどした場合の一連の温度制御動作は終了する。このステップS9での判別が否定されると、判別が肯定されるまで待機することになる。
【0056】
また、図4に示すように、冷凍機34の冷凍能力を増大させる必要が生じた場合、現在設定されている駆動モータ60の電源周波数のもとで冷凍能力を増大させるのに必要な蒸発器56の蒸発温度が蒸発温度算出部80により算出される(ステップS11)。この例では、蒸発器56の蒸発温度の調節だけでは必要とする冷凍能力が得られないことから、予め設定されている可変範囲の最も高い値が算出されることになる。なお、この例とは異なるが、冷凍機34の冷凍能力を増大させる程度が僅かでよいために蒸発器56の蒸発温度を高くするだけでよい場合は、それに必要な蒸発温度が算出されることになる。
【0057】
次いで、蒸発温度算出部80により算出された蒸発温度となるように室温度制御部82により電子式膨張弁54の弁開度が制御される(ステップS13)。この電子式膨張弁54の弁開度の制御は、記憶部70から現在設定されている弁開度が冷凍機判別部84により読み出され、その読み出された弁開度に基づいて実行される。これにより、蒸発器56は、蒸発温度センサ62で検出された温度が可変範囲の最も高い値の蒸発温度となるように電子式膨張弁54により調節されて作動される。
【0058】
次いで、蒸発温度算出部80により算出された蒸発温度のもとで必要な冷凍能力を得るための駆動モータ60の電源周波数が電源周波数算出部78により算出され(ステップS15)、その後に室温度制御部82によりインバータ58が制御されて電源周波数算出部78により算出され電源周波数に設定される(ステップS17)。このインバータ58の制御は、記憶部70から現在設定されている電源周波数が冷凍機判別部84により読み出され、その読み出された電源周波数に基づき実行される。
【0059】
次いで、試験室12が試験条件設定部68での設定温度になったか否かが室温度判別部76により判別される(ステップS19)。このステップS19での判別が肯定されると、試験温度が設定変更されるなどした場合の一連の温度制御動作は終了する。このステップS19での判別が否定されると、判別が肯定されるまで待機することになる。
【0060】
ここで、試験室12の温度は、図3及び図4のフローチャートに示す一連の温度制御動作が終了しても、環境試験が終了するまでの間に周囲温度の変化や送風機36の発熱などの種々の要因により変動することになるが、その変動に対応して所定の設定温度に維持するように室加熱器26に供給される電力量が制御されることになる。この場合、室温度制御部82は、室加熱器26に供給される電力量ができるだけ少なくなるようにし、冷凍機34の冷凍能力ができるだけ低くなるようにして室加熱器26による加熱動作と冷凍機34による冷却動作とのバランスをとることで試験室12が所定の設定温度となるように制御し、これにより省電力化を図るようにしている。
【0061】
このように、室加熱器26による加熱動作と冷凍機34による冷却動作とを制御するにあたり、室加熱器26に供給される電力量が試験室12の設定温度に対応して予め定められた規定値よりも大きくなっている場合には冷凍機34の冷凍能力を減少させ、それにより室加熱器26に供給される電力量を減少させて規定値となるように制御されることになるが、この場合にも図3のフローチャートに示す温度制御動作と同様の制御動作が実行されることになる。
【0062】
また、室加熱器26による加熱動作と冷凍機34による冷却動作とを制御するにあたり、室加熱器26に供給される電力量が試験室12の設定温度に対応して予め定められた規定値よりも小さくなっている場合には冷凍機34の冷凍能力を増大させ、それにより室加熱器26に供給される電力量を増大させて規定値となるように制御されることになるが、この場合にも図4のフローチャートに示す温度制御動作と同様の制御動作が実行されることになる。
【0063】
なお、室加熱器26に供給される電力量が試験室12の設定温度に対応して予め定められた規定値より大きくなっているか否かの判別及び予め定められた規定値より小さくなっているか否かの判別は、室温度判別部76により実行されることになる。
【0064】
以上のように、本発明に係る環境試験装置における冷凍機の動作制御方法及び環境試験装置10によれば、試験室12の温度制御を行うにあたって冷凍機34の冷凍能力を減少させる場合、インバータ58により電源周波数を低くすることにより圧縮機50の駆動モータ60の回転数を下げ、その後に電子式膨張弁54を絞ることにより蒸発器56の蒸発温度を低くするようにしている。このため、電源周波数が低く設定されることで大きな駆動電力を要する圧縮機50が効果的に機能ダウンされることになる結果、圧縮機50における不要な電力消費を抑制することができて省電力化を効果的に促進することができる。
【0065】
また、試験室12の温度制御を行うにあたって冷凍機34の冷凍能力を増大させる場合、電子式膨張弁54を開くことにより蒸発器56の蒸発温度を高くし、その後にインバータ58により電源周波数を高くすることにより圧縮機50の駆動モータ60の回転数を上げるようにしている。このため、蒸発器56の蒸発温度が高く設定されることで大きな駆動電力を要する圧縮機50の機能アップが効果的に抑えられることになる結果、圧縮機50における不要な電力消費を抑制することができて省電力化を効果的に促進することができる。
【0066】
なお、本発明に係る環境試験装置における冷凍機の動作制御方法及び環境試験装置10は、上記実施形態のように構成されるものであるが、この実施形態のものに限るものではない。例えば、以下に述べるような種々の変形態様を必要に応じて採用することができる。
【0067】
(1)上記実施形態では、環境試験装置10は、試験室12の湿度を制御可能に構成したものであるが、これに限るものではない。例えば、蒸発加湿皿30や水加熱器32などを除去して温度制御だけを行う構成とすることも可能である。
【0068】
(2)上記実施形態では、冷凍機34の冷凍能力を制御するにあたり、駆動モータ60の現在の電源周波数のレベルや電子式膨張弁54の現在の弁開度のレベルを記憶部70から読み出し、その読み出した値に基づいて電子式膨張弁54やインバータ58を制御するようにしているが、これに限るものではない。例えば、記憶部70から読み出した値に基づかないで電源周波数算出部78や蒸発温度算出部80で算出した値に基づいて直接的に電子式膨張弁54やインバータ58を制御することもできる。
【0069】
(3)上記実施形態では、冷凍機34の冷凍能力を減少させる必要が生じた場合の温度制御動作を説明する図3のフローチャートに示す例では、駆動モータ60の電源周波数の調節だけでは必要とする冷凍能力が得られないことから、予め設定されている可変範囲の最も低い値が算出され、その算出された電源周波数になるようにインバータ58が制御されるようになっているが、これに限るものではない。
【0070】
例えば、駆動モータ60の電源周波数の調節だけでは必要とする冷凍能力が得られない場合であっても、可変範囲の最も低い値ではなく、現在設定されている値よりも予め設定した所定値だけ低い値が算出され、その算出された電源周波数になるようにインバータ58が制御されるようになっていてもよい。
【0071】
このようにした場合でも、蒸発器56の蒸発温度を低くする動作よりも先に圧縮機50の駆動モータ60の回転数が下げられることになるので、大きな駆動電力を要する圧縮機50が効果的に機能ダウンされることで圧縮機50における不要な電力消費を抑制することができ、省電力化を効果的に促進することができる。
【0072】
(4)上記実施形態では、冷凍機34の冷凍能力を増大させる必要が生じた場合の温度制御動作を説明する図4のフローチャートに示す例では、蒸発器56の蒸発温度の調節だけでは必要とする冷凍能力が得られないことから、予め設定されている可変範囲の最も高い値が算出され、その算出された蒸発温度となるように電子式膨張弁54の弁開度が制御されるようになっているが、これに限るものではない。
【0073】
例えば、蒸発器56の蒸発温度の調節だけでは必要とする冷凍能力が得られない場合であっても、可変範囲の最も高い値ではなく、現在設定されている値よりも予め設定した所定値だけ高い値が算出され、その算出された蒸発温度となるように電子式膨張弁54の弁開度が制御されるようになっていてもよい。
【0074】
このようにした場合でも、圧縮機50の駆動モータ60の回転数を上げる動作よりも先に蒸発器56の蒸発温度が上げられることになるので、大きな駆動電力を要する圧縮機50の機能アップが効果的に抑えられることで圧縮機50における不要な電力消費を抑制することができ、省電力化を効果的に促進することができる。
【0075】
(5)上記実施形態では、試験室12に対して互いに通風可能な空調室14を備えているが、これに限るものではない。例えば、試験室12と空調室14とを区画している隔壁18を取り除いて全体を試験室12とすることも可能である。この場合には、室加熱器26、蒸発加湿皿30、送風機36及び蒸発器56を試験室12に配設すればよい。
【0076】
(6)上記実施形態では、試験室12が空気(気体)で満たされたものであるが、これに限るものではない。例えば、試験室12を窒素などの不活性ガス(気体)で満たすようにすることもできる。この場合、不活性ガスを循環させることで試験室12の温度及び湿度を均一化させることができる。
【符号の説明】
【0077】
10 環境試験装置
12 試験室
14 空調室
34 冷凍機
50 圧縮機
52 凝縮器
54 電子式膨張弁
56 蒸発器
58 インバータ
60 駆動モータ
76 室温度判別部(温度判別部)
82 室温度制御部(温度制御部)
図1
図2
図3
図4