(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
1.第4級アンモニウム化合物溶液
<第4級アンモニウム化合物(A)>
まず、本実施形態の第4級アンモニウム化合物溶液において用いる、式(1)で表される新規な第4級アンモニウム化合物(A)について説明する。
本実施形態の第4級アンモニウム化合物(A)は下記式(1)であらわされる。
[(R1)
m(R2)
4-mN
+]
nX
n- (1)
式中、R1は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状であり、置換アルキル基の置換基は、ハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基であり、非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。
R2は、各々独立して、炭素数が2〜60、酸素数が2〜30である、以下の式で表される基を表す。
−(RO)k―H
(ただし、Rは置換又は非置換のアルキル基を表し、kは2以上の自然数を表す。)
m及びnは、1〜3の整数を表わす。nが大きくなるほど副反応が多くなる可能性が高いため、純度の高いものを得るため、さらには入手のしやすさやの観点からnは1、mは3であることが特に好ましい。
Xは、水酸基、又は、炭素数1〜20のモノカルボン酸、水素酸、オキソ酸、無機チオ酸及び炭素数1〜20の有機チオ酸からなる群から選ばれる化合物の酸残基であって、窒素原子を含まない基を表す。
Xが窒素原子を含むと、加熱時におけるアセトアルデヒド及びアクロレインの発生抑制に効果的に働かない。
【0016】
式(1)において、R1は、入手のしやすさや製造のしやすさの観点から、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましい。
【0017】
また、式(1)において、R2は、炭素数が2〜60、酸素数が2〜30の以下の式で表される基を表す。
−(RO)k―H
(ただし、Rは置換又は非置換のアルキル基を表し、kは2以上の自然数を表す。)
R2として、このような基を選択することにより、加熱溶融等の高温加熱を行った場合のポリアセタールからのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアクロレインの発生を抑制することができる。
炭素数が60を超えるまたは、酸素数が30を超えると、第4級アンモニウム化合物を単離生成するのに時間を要する可能性がある。
第4級アンモニウム化合物の合成の観点から、R2の炭素数は2〜10、酸素数は2〜5であることが好ましく、ポリアセタールの溶融加熱後の着色性の観点から、炭素数が2〜6、酸素数が2〜3であることがより好ましい。
【0018】
式(1)において、Xは、入手の容易さから、モノカルボン酸の酸残基であることが好ましい。中でも取扱い性の容易さから、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の酸残基であることが好ましい。
【0019】
本実施形態の第4級アンモニウム化合物(A)の具体例としては、例えば、1−ヒドロキシメトキシ−N−((ヒドロキシメトキシ)メチル)−N,N−ジメチルメタンアンモニウム、2−(2−ヒドロキシエトキシ)−N−(2−(2−ヒドロキエトキシ)エチル)−N,N−ジメチルエタンー1−アンモニウム、N−エチルーN、N−ビス((ヒドロ木メトキシ)メチル)エタンアンモニウム、2−(2−ヒドロキシエトキシ)−N−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)−N,N−ジメチルエタンー1−アンモニウム、N,N,N−トリエチルー2−(2−(2−ヒドロキシ)エトキシ)エタンー1−アンモニウム、N−(2−(2−(ヒドロキシメトキシ)エトキシ)エチル)−N,N−ジプロピルプロパンー1−アンモニウム、N−(((ヒドロキシメトキシ)メトキシ)メチル)−N,N−ジプロピルプロパンー1−アンモニウム、N−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチル)−N,N−ジプロピルプロパンー1−アンモニウム等の、水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸燐酸、炭酸、硼酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸などのモノカルボン酸塩等が挙げられる。
これらのうち、水酸化物は強アルカリであり取り扱いに注意することが必要であるため、塩の形で使用することが好ましく、特にモノカルボン酸塩が好ましい。
【0020】
<動粘度>
本実施形態の第4級アンモニウム化合物溶液は、第4級アンモニウム化合物(A)の溶液であり、15℃における動粘度が0.4〜10.0mm
2/sの範囲である。動粘度はウベローデ粘度管を用いて測定することができる。
動粘度が10.0mm
2/s以下であると、色調が安定的かつ、熱安定性の良いポリアセタールを製造できる。
動粘度が0.4mm
2/s以上であると、十分な末端安定化が可能かつ不要な溶媒を除去するのに有利となる。多量の溶媒を用いなくてよいという観点から、0.7mm
2/s以上であることが好ましく、より好ましくは1.0mm
2/s以上である。
色調が安定的なポリアセタールを得る観点から、7.0mm
2/s以下であることが好ましく、5.0mm
2/s以下であることがより好ましく、4.0mm
2/s以下であることがさらに好ましい。
【0021】
<溶媒>
第4級アンモニウム化合物(A)の溶媒としては、溶解させうる液体であればよく、常温もしくは溶解させる所望の温度域で液体状態であればよい。具体例としては、たとえば、水、ケトン類、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭素類、ニトロ化合物類、酸無水物類、酸―ハロゲン化物類、アミン類、アミド類、ニトリル類が挙げられる。なお、溶解とは、ガラス製試験管に第4級アンモニウム化合物(A)と溶媒を入れよく混合した後、試験管を覗き、景色が認識可能であれば溶解している状態とする。
溶媒としては、入手のしやすさや取扱性の容易な観点から、水、アセトン、メタノール類等の原子数の少ない溶媒が好ましい。
溶媒として水を用いると、第4級アンモニウム化合物(A)の調製の際に、水を絶乾させる工程を設ける必要がなく、そのための熱エネルギーを節約することができ、さらに得られ屋第4級アンモニウム化合物(A)の変質・変色を防ぐことができる。また、ホルムアルデヒドは水と共沸することから第4級アンモニウム化合物溶液を粗ポリアセタールの安定化に使用する際に、ポリアセタールから発生するホルムアルデヒドの除去を促進することができる。
【0022】
<第4級アンモニウム化合物(C)>
本実施形態の第4級アンモニウム化合物溶液は、第4級アンモニウム化合物(A)に加えて、下記式(3)で表される第4級アンモニウム化合物(C)を含んでもよい。
[R3R4R5R6N
+]
lY
l- (3)
式中、R3、R4、R5、R6は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基及び置換アルキル基は、直鎖状、分岐状、または環状であり、置換アルキル基の置換基は、ハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基であり、非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルキルアリール基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。
lは、1〜3の整数を表わす。
Yは、水酸基、又は、炭素数1〜20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸、無機チオ酸及び炭素数1〜20の有機チオ酸からなる群から選ばれる化合物の酸残基を表わす。
【0023】
このような第4級アンモニウム化合物(C)としては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクタデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の、水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸燐酸、炭酸、硼酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。これらのうち、水酸化物は強アルカリであり取り扱いに注意することが必要である上、不安定末端部を有するポリアセタールの安定化に使用した場合には、得られる安定化ポリアセタールに着色が生じることもあるため、塩の形で使用することが好ましく、特にカルボン酸塩が好ましい。
上記第4級アンモニウム化合物(C)は単独で、又は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
2.ポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤
本実施形態の第4級アンモニウム化合物溶液は、ポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤として用いることができる。
本実施形態のポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤は、第4級アンモニウム化合物(A)、溶媒、及び、必要に応じて、上述の第4級アンモニウム化合物(C)を含み、さらに任意の添加剤を含有することのできる第4級アンモニウム化合物溶液を含む。
【0025】
本実施形態のポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤(第4級アンモニウム化合物溶液)が有効に作用するポリアセタールは、オキシメチレン基を主鎖に有する重合体であり、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールとを共重合させて得られたポリアセタールコポリマーを代表例としてあげることができる。また、単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマーや、多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーも用いることができる。さらに、両末端または片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーや、同じく両末端または片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルや環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーも用いることができる。
以上のように、本実施形態のポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤(第4級アンモニウム化合物溶液)は、ポリアセタールホモポリマー、コポリマーいずれに対しても用いることが可能である。
【0026】
ところで、ポリアセタールは、一般に、熱的に不安定な末端部(−CH
2OH基や−(OCH
2)
n−OH基等のヒドロキシメチル基を含む基)を含んでおり、そのため、加熱を施すと、ホルムアルデヒドや、場合によってはアセトアルデヒド、アクロレインを発生するが、本実施形態のポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤を利用すれば、加熱時にポリアセタールの不安定末端部を分解除去し、これによりホルムアルデヒド等の発生を抑制できる。特に、ポリアセタールコポリマーは不安定末端部を多く含むため、本実施形態のポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤は、ポリアセタールコポリマーに対して効果的に使用できる。
【0027】
そこで、以下に、ポリアセタールコポリマーについて詳述する。
ポリアセタールコポリマー中の1,3−ジオキソラン等のコモノマーの割合は、一般的にはトリオキサン1molに対して0.01〜60mol%、好ましくは0.03〜20mol%であり、更に好ましくは0.05〜15mol%、最も好ましくは0.1〜10mol%用いられる。
ポリアセタールコポリマーを重合する際に使用する重合触媒としては、特に限定はないが、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。
ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステルまたは無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、イソポリ酸類、ヘテロポリ酸類、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適例として挙げることができる。
ポリアセタールコポリマーの重合方法としては、特に限定されるものはなく、一般には塊状重合で行われ、バッチ式、連続式いずれも可能である。
重合装置としては、例えば、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混錬機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型押出混錬機が使用でき、溶融状態のモノマーが重合機に供給され、重合の進行とともに固体塊状のポリアセタールコポリマーが得られる。
【0028】
上述のような不安定末端基を有するポリアセタールは、本実施形態のポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤を用いて安定化させると、加熱処理によるホルムアルデヒド等の発生を低減できる。
【0029】
本実施形態のポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤は、得られるポリアセタール樹脂組成物中の、第4級アンモニウム化合物(A)の濃度が、下記数式(I)で表される、第4級アンモニウム化合物(A)に由来する窒素の濃度nに換算して質量基準で0.1ppb以上30ppm以下となるような量用いることが好ましい。
この範囲にあると、効率的にアクロレイン及びアセトアルデヒドの生成を抑制できる。0.1ppb以上であると、効果的にアクロレインを抑制することができ、30ppm以下であると、アセトアルデヒドの発生、及び、ポリアセタール樹脂の黄変を効果的に抑制することができる。より好ましい範囲は、0.1ppm以上25ppm以下であり、さらに好ましくは1ppm〜20ppmであり、特に好ましくは5ppm〜15ppmである。
【0030】
上述の第4級アンモニウム化合物(A)の窒素換算含有量nは、下記数式(I)で表わされる。
n=S×14/T (I)
式中、Sは第4級アンモニウム化合物(A)の、ポリアセタール及び第4級アンモニウム化合物(A)の合計量に対する量(質量ppm又はppb)を表し、14は窒素の原子量であり、Tは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。
ここで、第4級アンモニウム化合物(A)の含有量を、窒素換算量で規定するのは、第4級アンモニウム化合物(A)の分子量によって樹脂組成物中に含まれる第4級化合物のモル数が大きく変わってしまうことを回避するためである。
【0031】
なお、ポリアセタール樹脂組成物中の第4級アンモニウム化合物(A)由来の窒素量は、例えば、以下のようにしてNMR解析により定量することができる。
15kgのポリアセタール樹脂組成物ペレットをリンレックスミル等で凍結粉砕した後、100Lの撹拌機付SUS製オートクレーブに入れ、50Lの蒸留水を入れる。その後、120℃に設定したオーブンの中に入れ、24時間放置後室温にし、吸引濾過により固体液分離する。得られた液体をエバポレーターにて濃縮し、5ml程度にまで濃縮した液2.5ml程度と重水を1:1(体積比)で混合した液をNMR解析を行い、3.5ppm付近と3.9ppm付近のピーク面積から、第4級アンモニウム化合物(A)由来の窒素量の定量を行う。
また、窒素源が第4級アンモニウム化合物(A)のみであることが明らかである場合には、窒素分析計(例えば、三菱アナリテック製窒素分析計TN−2100H)により窒素原子量を定量することによって定量することもできる。
【0032】
また、本実施形態のポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤が、式(3)であらわされる第4級アンモニウム化合物(C)を含む場合、得られるポリアセタール樹脂組成物中の、第4級アンモニウム化合物(C)の濃度が、下記数式(II)で表わされる第4級アンモニウム化合物(C)由来の窒素の濃度n’’’に換算して、好ましくは0.5質量ppb〜500質量ppmとなるようにすることが好ましい。
n’’ ’=S’’’×14/T’’’ (II)
(式中、S’’’は第4級アンモニウム化合物(C)のポリアセタール及び第4級アンモニウム化合物(C)の合計量に対する量(質量ppb又はppm)を表し、14は窒素の原子量であり、T’’’は第4級アンモニウム化合物(C)の分子量を表す。)
第4級アンモニウム化合物(C)の濃度n’’’が0.5質量ppb以上であると、第4級アンモニウム化合物(C)の併用によるポリアセタールの不安定な末端部の分解速度が向上する効果が大きくなる。また、500質量ppm以下であると安定化後もポリアセタールの色調が損なわれない。
ここで、第4級アンモニウム化合物(C)の濃度を窒素換算量で規定するのは、第4級アンモニウム化合物(C)の分子量によってポリアセタールに対する第4級アンモニウム化合物(C)のモル数が変わってしまうことを回避するためである。
【0033】
以上のとおり、不安定末端基を有するポリアセタールであっても、本実施形態のポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤を用いて安定化すれば、加熱処理によるホルムアルデヒド等の発生を低減できる。
【0034】
本実施形態のポリアセタールからの揮発性有機化合物発生抑制剤を用いて安定化したポリアセタールは、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、蟻酸捕捉剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、補強材、電材、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、顔料等と組合わせて使用することができる。
熱安定剤としては、酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤又はこれらの併用が挙げられ、酸化防止剤と捕捉剤との併用が好ましい。
【0035】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、例えば、n−オクタデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3′−メチル−5−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N′−ビス−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N′−テトラメチレンビス−3−(3′−メチル−5′−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N′−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N′−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N′−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミド等が挙げられる。
これらヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、トリエチレングリコールービス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタンが好ましい。
【0036】
ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤として、具体的には、(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体、(ロ)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩及びアルコキシド等が挙げられる。
【0037】
(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物としては、(1)ジシアンジアミド、(2)アミノ置換トリアジン、(3)アミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共縮合物等が挙げられる。
(2)アミノ置換トリアジンとして、具体的には、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N′,N″−トリフェニルメラミン、N−メチロールメラミン、N,N′−ジメチロールメラミン、N,N′,N″−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン(アメライト)、2−オキシ−4,6−ジアミノ−sym−トリアジン(アメリン)、N,N′,N′−テトラシアノエチルベンゾグアナミン等がある。(3)アミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共縮合物として、具体的には、メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物等がある。これらの中でも、ジシアンジアミド、メラミン及びメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物が好ましい。
【0038】
(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素基を有する重合体としては、例えば、(1)ポリアミド樹脂、(2)アクリルアミド及びその誘導体又はアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られる重合体、(3)アクリルアミド及びその誘導体又はアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとをラジカル重合の存在下で重合して得られる重合体、(4)アミン、アミド、尿素及びウレタン等窒素基を含有する重合体等が挙げられる。
(1)のポリアミド樹脂として、具体的には、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等及びこれらの共重合物、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等が挙げられる。(2)アクリルアミド及びその誘導体又はアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られる重合体として、具体的には、ポリ−β−アラニン共重合体等が挙げられる。これらのポリマーは特公平6−12259号、特公平5−87096号、特公平5−47568号及び特開平3−234729号の各公報記載の方法で製造することができる。(3)アクリルアミド及びその誘導体又はアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとをラジカル重合の存在下で重合して得られる重合体は、特開平3−28260号公報記載の方法で製造することが出来る。
【0039】
(ロ)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩及びアルコキシドとして、具体的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウムなどの水酸化物、該金属の炭酸塩、りん酸塩、けい酸塩、ほう酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。該カルボン酸塩のカルボン酸は、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸等であり、これらのカルボン酸はヒドロキシル基で置換されていてもよい。飽和脂肪族カルボン酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、セロプラスチン酸が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸は、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等が挙げられる。また、アルコキシドとして、上記金属のメトキシド、エトキシド等が挙げられる。
【0040】
耐候(光)安定剤としては、例えば、(イ)ベンゾトリアゾール系物質、(ロ)シュウ酸アニリド系物質及び(ハ)ヒンダードアミン系物質が挙げられる。
(イ)ベンゾトリアゾール系物質として、具体的には、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブ チル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられ、好ましくは2−[2′−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。
(ロ)シュウ酸アニリド系物質として、具体的には、2−エトキシ−2′−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2′−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3′−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの物質はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ハ)ヒンダードアミン系物質として、具体的には、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート等が挙げられ、好ましくはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケートである。上記ヒンダードアミン系物質はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記ベンゾトリアゾール系物質、シュウ酸アニリド系物質とヒンダードアミン系物質の組合せがより好ましい。
【0041】
離型剤としては、アルコール、及びアルコールと脂肪酸のエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、シリコーンオイル等が挙げられる。
アルコールとして、具体的には、1価アルコール、多価アルコールがあり、例えば1価アルコールの例としては、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ベンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘブタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、ペヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、ユニリンアルコール等が挙げられる。多価アルコールとしては、2〜6個の炭素原子を含有する多価アルコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
アルコールと脂肪酸のエステルとしては、脂肪酸化合物の内、好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸から選ばれた脂肪酸とグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトールから選ばれた多価アルコールとから誘導された脂肪酸エステルがある。これらの脂肪酸エステル化合物の水酸基は有ってもよいし、無くてもよく、脂肪酸エステル化合物を制限するものではない。例えば、モノエステルであってもジエステル、トリエステルで有ってもよい。また、ほう酸等で水酸基が封鎖されていてもよい。
好ましい脂肪酸エステルとして、具体的には、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリントリパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリントリベヘネート、グリセリンモノモンタネート、グリセリンジモンタネート、グリセリントリモンタネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールジパルミテート、ペンタエリスリトールトリパルミテート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールモノベヘネート、ペンタエリスリトールジベヘネート、ペンタエリスリトールトリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールモノモンタネート、ペンタエリスリトールジモンタネート、ペンタエリスリトールトリモンタネート、ペンタエリスリトールテトラモンタネート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタントリベヘネート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンジモンタネート、ソルビタントリモンタネート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールジパルミテート、ソルビトールトリパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールジステアレート、ソルビトールトリステアレート、ソルビトールモノベヘネート、ソルビトールジベヘネート、ソルビトールトリベヘネートソルビトールモノモンタネート、ソルビトールジモンタネート、ソルビトールトリモンタネート等が挙げられる。
また、ほう酸等で水酸基を封鎖した脂肪族エステル化合物としてグリセリンモノ脂肪酸エステルのほう酸エステルも挙げられる。アルコールとジカルボン酸のエステルは、アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の飽和・不飽和アルコールと、ジカルボン酸としてシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカニン酸、ブラシリン酸、マレイン酸、フマール酸、グルタコン酸等とのモノエステル、ジエステル等が挙げられる。
【0042】
3.ポリアセタールの製造方法
本実施形態においては、熱的に不安定な末端部を有するポリアセタールを、本実施形態の第4級アンモニウム化合物溶液を用いて事前に安定化し、安定化ポリアセタールとして製造することもできる。
具体的には、熱的に不安定な末端部を有するポリアセタールに本実施形態の第4級アンモニウム化合物溶液を添加し、熱処理を行うことにより安定化することができる。
以下に、本実施形態の、熱的に不安定な末端部を有するポリアセタール(以下、「粗ポリアセタール」ということがある。)に第4級アンモニウム化合物溶液を添加して熱処理する工程を含む、本実施形態のポリアセタールの製造方法について、具体例を挙げて説明する。
【0043】
本実施形態においては、粗ポリアセタールの(共)重合工程を含むことができる。この際、(共)重合方法に限定はなく、常法に従って重合を行うことにより得ることができる。以下に、粗ポリアセタールを製造する際(ポリアセタールの(共)重合工程)に好ましく用いることのできる材料について説明する。
<トリオキサン>
トリオキサンとは、ホルムアルデヒドの環状3量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルマリン水溶液を反応させることにより得られる。
このトリオキサンは、水、メタノール、蟻酸、蟻酸メチル等の連鎖移動作用を有する不純物を含有している場合があるので、重合反応を行う工程の前段階として、例えば、蒸留等の方法でこれら不純物を除去精製することが好ましい。
その場合、前記連鎖移動作用を有する不純物の合計量をトリオキサン1molに対して、1×10
-3mol以下とすることが好ましく、より好ましくは0.5×10
-3mol以下とする。
前記不純物の量を上記数値のように低減化することにより、重合反応速度を実用上十分に高めることができ、優れた熱安定性を有するポリアセタールが得られる。
【0044】
<環状エーテル及び/又は環状ホルマール>
ポリアセタールが共重合体である場合には、コモノマーとして、環状エーテル及び/又は環状ホルマールを使用することができる。これらは、ホルムアルデヒドや前記トリオキサンと共重合可能な成分である。
環状エーテル又は環状ホルマールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクルロルヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキサタン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられる。入手のしやすさの観点から、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
環状エーテル及び/又は環状ホルマールの添加量は、得られるポリアセタール共重合体の機械的強度の観点から、前記トリオキサン1molに対して1×10
-2〜20×10
-2molの範囲が好ましく、より好ましくは1×10
-2〜15×10
-2molであり、さらに好ましくは1×10
-2〜10×10
-2molであり、さらにより好ましくは1×10
-2〜5×10
-2molである。
【0045】
<重合触媒>
ポリアセタールの(共)重合工程において用いる重合触媒としては、ルイス酸に代表されるホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモン化物が挙げられる。特に、入手のしやすさの観点から、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素系水和物、及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラートが好ましい例として挙げられる。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
重合触媒の添加量は、前記トリオキサン1molに対して0.1×10
-5〜0.1×10
-3molの範囲が好ましく、より好ましくは0.3×10
-5〜0.5×10
-4molの範囲であり、さらに好ましくは0.5×10
-5〜0.4×10
-4molの範囲である。
重合触媒の添加量を前記範囲内とすることにより、重合反応機の供給部におけるスケール発生量を低減化しながら、安定して長時間の重合反応を実施することができる。
【0046】
<低分子量アセタール>
ポリアセタールの(共)重合工程においては、下記一般式で示される低分子量アセタールを用いることもできる。
R−(CH
2−O)n−R
(式中、Rは、水素、分岐状又は直鎖状のアルキル基、分岐状又は直鎖状のアルコキシ基、及びヒドロキシル基からなる群より選ばれるいずれか1つを表す。nは1以上20以下の整数を表す。)
低分子量アセタールは、重合工程において連鎖移動剤として機能するものであり、分子量が200以下、好ましくは60〜170のアセタールである。上記分子量のアセタールを用いることにより、最終的に目的とするポリアセタールの分子量を調整することができる。
上記一般式で示される低分子量アセタールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラール等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
一般式で示される低分子量アセタールの添加量は、目的とするポリアセタールの分子量を好適な範囲に制御する観点から、前記トリオキサン1molに対して0.1×10
-4〜0.6×10
-2molの範囲が好ましく、0.1×10
-4〜0.6×10
-3molの範囲がより好ましく、0.1×10
-4〜0.1×10
-3molの範囲がさらに好ましい。
【0047】
本実施形態においては、粗ポリアセタールを、第4級アンモニウム化合物溶液を添加して、熱処理することによって安定化する。
ここで、第4級アンモニウム化合物溶液を添加した粗ポリアセタールの熱処理の態様に限定はないが、例えば、以下の2つを挙げることができる。
その1つは、粗ポリアセタールを加熱して溶融させる際に第4級アンモニウム化合物溶液を添加するものであり、他の1つは、第4級アンモニウム化合物溶液を粗ポリアセタールに添加してスラリー状態で加熱するものである。
【0048】
初めに、粗ポリアセタールを溶融させた状態で行う場合の熱処理について説明する。
粗ポリアセタールの溶融は、例えばベント付単軸スクリュー式押出機、ベント付2軸スクリュー式押出機等によって行うことができる。熱処理は、ポリアセタールの融点以上であって260℃以下である温度で行うことが好ましい。260℃を超えると、着色の問題、及びポリマー主鎖の分解(低分子量化)の問題が生ずる恐れがある。この場合、粗ポリアセタールを溶融する前に、第4級アンモニウム化合物溶液を粗ポリアセタールにあらかじめ添加してもよいし、また粗ポリアセタールを溶融させた後に、第4級アンモニウム化合物溶液を、溶融させた粗ポリアセタールに添加してもよい。
【0049】
溶融前の粗ポリアセタールに第4級アンモニウム化合物溶液をあらかじめ添加する方法としては、例えば、第4級アンモニウム化合物溶液を、粗ポリアセタールに対して、第4級アンモニウム化合物(A)の量に換算して0.1〜5質量%添加した後に混合することを挙げることができる。この場合、その混合は、水平円筒型、V型、リボン型、パドル型、高速流動型等の一般的な固体混合機を用いて行ってもよい。また、第4級アンモニウム化合物溶液を、ポリアセタールを押出機へ供給するシュート部分に直接添加するか、又は押出機の供給口からポリアセタールが溶融されるまでの間に押出機本体に直接添加してもよい。
【0050】
また、溶融前の粗ポリアセタールに第4級アンモニウム化合物溶液をあらかじめ添加する別の方法としては、例えば、第4級アンモニウム化合物溶液中に、粗ポリアセタールを投入していったんスラリーとし、このスラリーを適宜濾過、乾燥する方法を挙げることができる。この場合、第4級アンモニウム化合物(A)の使用量は、第4級アンモニウム化合物溶液中の第4級アンモニウム化合物(A)の濃度と濾過後のポリアセタールの含液率を制御することによって制御することができる。
【0051】
以上の方法により、第4級アンモニウム化合物溶液が添加された粗ポリアセタールは、そのままで、又は必要に応じて乾燥された後、押出機等で溶融され、熱処理に供される。溶融時に、従来から公知の分解促進剤であるアミン類等、水及びメタノール等のうちの少なくとも1種を添加して安定化してもよいし、また、他に何も添加せずに熱処理に供してもよい。アミン類等、水、メタノール等の従来から用いられている分解促進剤の添加量は、ポリアセタール100質量部に対して0.1〜5質量部添加することが好ましい。また、必要に応じて、その他の第4級アンモニウム化合物(第4級アンモニウム化合物(C)等)を更に添加してもよい。これらの、アミン類、水、メタノール、第4級アンモニウム化合物等の分解促進剤は、各々単独で、又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0052】
一方、粗ポリアセタールを溶融させた後に、第4級アンモニウム化合物溶液を溶融状態の粗ポリアセタールに添加する場合は、溶液に含まれる水やメタノール等の有機溶剤の添加量が粗ポリアセタール100質量部に対して0.1〜5質量部程度となるようにすることが好ましい。また、この際、第4級アンモニウム化合物溶液に加えて、従来から公知のアミン類、その他の第4級アンモニウム化合物(第4級アンモニウム化合物(C)等)を別途添加してもよい。
【0053】
本実施形態において、上記熱処理工程における第4級アンモニウム化合物(A)の使用量に限定はないが、第4級アンモニウム化合物(A)の濃度が、下記数式(I’)で表わされる第4級アンモニウム化合物(A)由来の窒素濃度n’に換算して、0.1質量ppb〜30質量ppmであることが好ましく、より好ましくは0.1質量ppm〜25質量ppm、さらに好ましくは1質量ppm〜20質量ppmであり、特に好ましくは5ppm〜10ppmである。
n’=S’×14/T’ (I’)
式中、S’は第4級アンモニウム化合物(A)の粗ポリアセタール及び第4級アンモニウム化合物(A)の合計質量に対する量(質量ppb又はppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、T’は第4級アンモニウム化合物(A)の分子量を表す。)
第4級アンモニウム化合物(A)由来の窒素濃度n’が0.1質量ppb以上であると、短時間で不安定な末端部を分解することができ、30質量ppm以下であると、安定化後もポリアセタールの色調が損なわれない。
ここで、第4級アンモニウム化合物(A)の濃度を窒素濃度に換算したもので表現したのは、前記と同様に第4級アンモニウム化合物(A)の分子量に依存することを回避するためである。
【0054】
なお、本実施形態のポリアセタールの製造方法において、第4級アンモニウム化合物溶液を添加した粗ポリアセタールの熱処理工程は、重合反応によって得られた粗ポリアセタール中に残留している重合触媒を失活させた後に行ってもよいし、また、重合触媒を失活させずに行ってもよい。
更に、本実施形態のポリアセタールの製造方法は、公知の安定化処理を含んでいてもよく、その場合、第4級アンモニウム化合物溶液を添加した粗ポリアセタールの熱処理工程は公知の安定化処理の後に、未だ不安定な末端部の一部が残留しているポリアセタールにも適用するようにしてもよい。
【0055】
重合触媒の失活は、重合反応によって得られた粗ポリアセタールを、アンモニア、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類、又はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、有機酸塩等の触媒中和失活剤の少なくとも一種を含む水溶液または有機溶剤溶液中に投入し、スラリー状態で一般的には数分〜数時間撹拌することにより行うことができる。この場合、触媒中和失活後のスラリーは濾過、洗浄により、未反応モノマーや触媒中和失活剤、触媒中和塩が除去された後、乾燥される。
また、アンモニア、トリエチルアミン等の蒸気と粗ポリアセタールとを接触させて重合触媒を失活させる方法や、ヒンダードアミン類、トリフェニルホスフィン及び水酸化カルシウム等のうちの少なくとも一種と粗ポリアセタールとを混合機で接触させて触媒を失活させる方法も用いることができる。また、重合触媒の失活を行わずに、粗ポリアセタールの融点以下の温度で、不活性ガス雰囲気下において加熱することによって、重合触媒が揮発低減されたポリアセタールを用いて上述の安定化方法を行ってもよい。
以上の重合触媒の失活操作及び重合触媒の揮発低減操作は、必要に応じて、重合反応によって得られた粗ポリアセタールを粉砕した後で行ってもよい。
【0056】
上述の熱処理工程(ポリアセタールの安定化)は、従来から公知の装置や操作方法を適宜用いて行うことができる。また、さらに、従来から公知のアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類等を併用してもよい。
【0057】
上述の熱処理工程(ポリアセタールの安定化)において、式(3)であらわされる第4級アンモニウム化合物(C)を併用する場合、第4級アンモニウム化合物(C)の使用量は、下記数式(II’)で表わされる第4級アンモニウム化合物(C)由来の窒素の濃度n’’’’に換算して、好ましくは0.5質量ppb〜500質量ppmであることが好ましい。
n’’’’=S’’’’×14/T’’’’ (II’)
(式中、S’’’’は第4級アンモニウム化合物(C)の粗ポリアセタール及び第4級アンモニウム化合物(C)の合計質量に対する量(質量ppb又はppm)を表し、14は窒素の原子量であり、T’’’’は第4級アンモニウム化合物(C)の分子量を表す。)
第4級アンモニウム化合物(C)の使用量n’’’’が0.5質量ppb以上であると、第4級アンモニウム化合物(C)の併用によるポリアセタールの不安定な末端部の分解速度が向上する効果。また、500質量ppm以下であると安定化後もポリアセタールの色調が損なわれない。
ここで、第4級アンモニウム化合物(C)の使用量を窒素換算量で規定するのは、第4級アンモニウム化合物(C)の分子量によってポリアセタールに対する第4級アンモニウム化合物(C)のモル数が変わってしまうことを回避するためである。
【0058】
以上のようにして得られた安定なポリアセタールは、一般に、必要に応じて酸化防止剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、蟻酸捕捉剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、離型剤、補強材、電材、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、顔料等の配合剤の一種以上と押出機等で混合された後、実用に供される。
配合剤の配合時期については特に制限はなく、その種類によって、例えば、不安定な末端部が分解除去される前の粗ポリアセタールにあらかじめ添加しておいてもよく、また、不安定な末端部が分解除去されたポリアセタールに添加してもよい。
【0059】
次に、本実施形態の第4級アンモニウム化合物溶液により安定化できるポリアセタールに含まれる末端基について述べる。
ポリアセタールを構成する複数のポリアセタール(共)重合体鎖が全体として有する末端基としては、上述の−CH
2OH基や−(OCH
2)
n−OH基等のヒドロキシメチル基を含む基以外に、メトキシル基(−OCH
3)等のアルコキシル基、ヒドロキシエチル基(−CH
2CH
2OH)等のヒドロキシアルキル基、及びホルメート基が挙げられる。
【0060】
末端アルコキシル基は、一般に、重合段階で添加される分子量調整剤であるホルマールにより形成される。例えば、メチラール((CH
3O)
2CH
2)が分子量調整剤として用いられた場合は、末端基としてメトキシル基が形成される。末端アルコキシル基の炭素数は、分子量調整剤であるホルマールの合成及び精製面から、炭素数1〜10、とりわけ炭素数1〜3、であることが一般的である。
【0061】
ヒドロキシエチル基やヒドロキシブチル基のような末端ヒドロキシアルキル基は、ポリアセタールの原料コモノマーとして用いられる前述の環状エーテル又は環状ホルマールに由来し、以下のような過程で形成される。
即ち、環状エーテル又は環状ホルマールに由来するオキシアルキレン基がポリアセタール単位の繰返し中に挿入されたポリアセタールを重合する際には、まず、原料中の微量な水等により、熱的に不安定な末端ヒドロキシメチル基(−CH
2OH)が生成する。この末端の不安定部分が安定化処理によって分解し、この分解が、ポリアセタール単位及びオキシアルキレン単位を含む主鎖中を内へ向かって進行し、オキシアルキレン単位の部位に到達すると、その部位のオキシアルキレン単位はヒドロキシエチル基やヒドロキシブチル基等の安定な末端ヒドロキシアルキル基に変わる。ヒドロキシアルキル基の炭素数は、環状エーテル及び環状ホルマールの合成及び精製面からは、少なくとも2個であり、2〜10個であることが一般的である。
【0062】
一方、ポリアセタールに末端基としてヒドロキシメチル基が存在すると、特に、成型等により加熱した場合には、ヒドロキシメチル基が末端から脱離しホルムアルデヒドを生成する。そのため末端ヒドロキシメチル基多く存在すると、生成するホルムアルデヒドが過剰になる。
この生成を抑制する役割を担うのが、本実施形態において用いるR2を有する第4級アンモニウム化合物(A)であり、この末端ヒドロキシメチル基が第4級アンモニウム化合物(A)の作用によって分解除去され、これによりホルムアルデヒドの生成が抑制されると考えられる。
さらに、本実施形態において用いる第4級アンモニウム化合物(A)は、上述末端ヒドロキシメチル基の分解除去に加え、ポリアセタール中に除去されずに残った微量な不安定末端由来から発生した微量のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアクロレインを、成型等の加熱溶融後の冷却時にアニオン重合によりポリマー化し、ポリアセタール樹脂組成物に固定化することにも関与し、これによってホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアクロレイン等の発生を低減していると考えられる。ただし、本実施形態の効果の機序はこれらに限定されない。
本実施形態において、第4級アンモニウム化合物(A)のR2の炭素数は2〜10、酸素数は2〜5である。このような炭素数、酸素数とすることにより、加熱を経ても第4級アンモニウム化合物(A)をポリアセタール中に効率的に残存させることができ、これにより上述の加熱溶融後の冷却時における揮発性有機物質の発生の低減が可能となる。
R2の炭素数及び酸素数は、揮発性有機物質の発生抑制の観点からは大きい方がよいが、一方で、あまり大きすぎるとこれを含む成型体の着色の原因となることもある。したがって、加熱処理温度や時間等を考慮して、揮発性有機物質の発生抑制と着色防止のバランスから適切な値とすることが好ましい。具体的には、炭素数2〜6、酸素数2〜3が好ましく、特に、炭素数4、酸素数2であることが好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明について、具体的な実施例と、これとの比較例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例、比較例において採用した各種特性の評価方法について説明する。
<動粘度の測定方法>
15℃に設定した恒温槽に、空のウベローデ粘度管を設置し、30分静置した。
その後、対象試料を入れ、測時球内の2本標線間の落下時間を測定し、動粘度を求めた。
<ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアクロレインの定量>
東芝(株)製IS−100GN射出成型機を用いて、ポリアセタール共重合体組成物ペレットから、シリンダー温度200℃、射出圧力60MPa、射出時間15秒、冷却時間20秒、金型温度80℃にて、組成物を加熱溶融して、寸法130mm×110mm×3mmの平板状の成型片を作製した。
23℃で50%の湿度に保たれた恒温室で、24時間放置後、アルミ袋に入れ、パッキングをした。成型後14日に開封し、バルブを有する10Lテドラー(登録商標)バッグに、この成型片を1枚入れ密封し、窒素置換を十分に行った。その後、内部の窒素を全て排出した後に、テドラー(登録商標)バッグ中に窒素を5.00L封入した。これを2つ用意した。
その後、内部の上部に、外部に連通したサンプリング口を2つ有するオーブン中に前記テドラー(登録商標)バッグを入れ、前記テドラー(登録商標)バッグをサンプリング口に接続後、80℃で2時間放置した。
その後、1つのテドラー(登録商標)バッグと接続したサンプリング口の外部側にDNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)カートリッジを接続し、テドラー(登録商標)バッグのバルブを開き、ポリアセタール共重合体組成物から発生したガス4.00Lを、DNPHカートリッジに通過させた。
DNPHカートリッジに一定速度で5mLのアセトニトリルを通液し、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを10mLメスフラスコに回収した。
その後、水により10mLまでメスアップし、十分に混合した。
この混合液をバイアル瓶に分注し、島津製作所製HPLCにて、標準液にDNPH標準液、分離液に水/アセトニトリル(52/48)を用い、流量1mL/分、カラム温度40℃の条件で定量し、ポリアセタール共重合体組成物の質量当たりに発生したホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドをppmで測定した。
【0065】
残る1つのテドラー(登録商標)バッグと接続したサンプリング口の外部側にCNET(O−(4−シアノ−2−エトキシベンジル)ヒドロキシルアミン)カートリッジを接続し、テドラー(登録商標)バッグのバルブを開き、ポリアセタール共重合体組成物から発生したガス4.00Lを、CNETカートリッジに通過させた。
CNETカートリッジに一定速度で5mLのアセトニトリルを通液し、アクロレインを10mLメスフラスコに回収した。
その後、水により10mLまでメスアップし、十分に混合した。
この混合液をバイアル瓶に分注し、島津製作所製HPLCにて、標準液にCNET標準液、分離液に水/アセトニトリル(40/60)を用い、流量1mL/分、カラム温度40℃の条件で定量し、ポリアセタール共重合体組成物の質量当たりに発生したアクロレインをppbで測定した。
【0066】
<パウダー色調>
ポリエチレンの袋に後述の粗ポリアセタール共重合体(P−1)100gと所定量の第4級アンモニウム化合物溶液を入れ、混合しよくまぜ、SUS製バッドの上に均一に広げ、150℃にて絶乾させた。
乾燥後のバットの上を目視確認し、パウダーの色調特性を評価した
色むらがある場合を×
色むらはないが、黄変・茶変している場合は△
色むらがなく、白い場合を○とした。
【0067】
<成型時の臭気>
東芝(株)製IS−100GN射出成形機を用いて、ポリアセタール共重合体組成物ペレットから、シリンダー温度200℃、射出圧力60MPa、射出時間15秒、冷却時間20秒、金型温度80℃にて、組成物を加熱溶融して、寸法130mm×110mm×3mmの平板状の成型片を作製した。
金型から出た成型片から出る臭いを以下の基準で評価し、○である場合を概ね臭気が低いと判定した。
強い鼻をつくホルムアルデヒド臭がした場合: ×
カラメルのような甘い臭気がした場合: △
ほとんど臭気がしない場合: ○
【0068】
<成型片色調>
東芝(株)製IS−100GN射出成型機を用いて、シリンダー温度200℃、射出圧力60MPa、射出時間15秒、冷却時間20秒、金型温度80℃にて、寸法40mm×60mm×3mmの平板状の試験片を1002枚作製した。
1001枚目と1002枚目の試験片を重ね、ミノルタ製ハンディカラーテスター(CR−200)を用いて、D65の光源にて黄度(b値)を測定した。
b値が−0.8以下の値であればおおむね良しとし、
b値が−0.8を超えるが−1.6以下の値であれば良しと判断した。
【0069】
<式(1)で表される第4級アンモニウム化合物(A)を含む溶液の製造>
以下の製造例1〜11で用いた水は全て脱イオン水であり、動粘度は全て15℃における値である。
〔製造例1〕
密閉可能な内容積60mlの耐圧容器に、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアセテート14.1g、トリメチルアミン5.6g、メタノール15.0g、水0.1gを導入し、振とう機にて撹拌しながら、120℃に加熱した。その後6時間反応させた後、冷却し内容物を得た。内容物の分析を行った結果、収率95%で2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル−N,N,N−トリメチルエタン−1−アンモニウムアセテートが得られた。
この溶液30gに水15gを入れた後、80℃のエバポレーターにて30gになるまで濃縮し、水を入れて60gにする。再度、30gになるまで濃縮し、次いで水を入れて60gにする。この操作を10回繰り返し、15gになるまで濃縮した後、水を徐々に加え、動粘度が1.5mm
2/sになるよう調整した。この第4級アンモニウム化合物溶液をA−1とした。
NMRによって確認されたA−1液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
【0070】
〔製造例2〕
2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアセテート14.1gの代わりに、2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチルアセテート18.2gを使用し、動粘度を1.9mm
2/sに調整した以外は製造例1と同様に実施した。この液をA−2とした。
NMRによって確認されたA−2液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
〔製造例3〕
トリメチルアミン5.6gの代わりに、トリエチルアミン7.8gを用い、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアセテートを11.4g用い、動粘度を1.6mm
2/sに調整した以外は、製造例1と同様に実施した。この液をA−3とした。
NMRによって確認されたA−3液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
〔製造例4〕
トリメチルアミン5.6gの代わりに、トリエチルアミン7.8gを用い、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアセテートの代わりに、2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エチルアセテート14.8gを用い、動粘度を2.1mm
2/sに調整した以外は製造例1と同様に実施した。この液をA−4とした。
NMRによって確認されたA−4液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
〔製造例5〕
トリメチルアミン5.6gの代わりに、2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール9.4gを用い、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアセテートを10.5g用い、動粘度を1.7mm
2/sに調整した以外は製造例1と同様に実施した。この液をA−5とした。
NMRによって確認されたA−5液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
【0071】
〔製造例6〕
10mlのマイクロウェーブリアクションチューブにトリメチルアミン5.0gと2−(2−クロロエトキシ)エタノール2.63gを入れ、マイクロウェーブを照射しながら150℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液を減圧乾燥して粉末結晶を得た。反応終了後の反応液をHPLCにより分析した結果、反応率が100%であることが確認された。得られた粉末結晶にジクロロエタンを加え撹拌した後、結晶を濾過した。この操作を3回繰り返し、減圧乾燥して粉末結晶を2.58g得た。
この粉末を40℃の水酸化ナトリウムの100gを溶解した1kgエタノール溶液を5.62g添加し、塩化ナトリウムをろ別してろ液を採取した。このろ液にギ酸/水=10/90(質量比)からなるギ酸水溶液を6.46g添加した後、エバポレーターにより5gになるまで濃縮し、水を10g添加した。
濃縮と水10gの添加を3回繰り返した後、水を徐々に加え、動粘度が1.5mm
2/sになるよう調整したものをA−6とした。
NMRによって確認されたA−6液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
【0072】
〔製造例7〕
トリメチルアミンを4.5g、2−(2−クロロエトキシ)エタノールのかわりに2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール3.21gを用いた以外は、製造例6と同様に実施し、粉末結晶を3.10g得た。
この粉末に製造例6で用いた水酸化ナトリウムのエタノール溶液5.44gと、ギ酸水溶液6.26gを用いて、製造例6と同様に塩化ナトリウムのろ別と濃縮を行い、水を徐々に加え、動粘度が2.2mm
2/sになるよう調整したものをA−7とした。
NMRによって確認されたA−7液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
〔製造例8〕
トリメチルアミンのかわりにトリエチルアミンを5.8g、2−(2−クロロエトキシ)エタノール1.79gを用いた以外は、製造例6と同様に実施し、粉末結晶を1.76g得た。
この粉末に製造例6で用いた水酸化ナトリウムのエタノール溶液3.11gと、ギ酸水溶液3.58gを用い製造例6と同様に塩化ナトリウムのろ別と濃縮を行い、水を徐々に加え、動粘度が1.5mm
2/sになるよう調整したものをA−8とした。
NMRによって確認されたA−8液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
【0073】
〔製造例9〕
トリメチルアミンのかわりにトリエチルアミンを5.4g、2−(2−クロロエトキシ)エタノールのかわりに2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール2.25gを用いた以外は、製造例6と同様に実施し、粉末結晶を2.18g得た。
この粉末に製造例6で用いた水酸化ナトリウムのエタノール溶液3.24gと、ギ酸水溶液3.72gを用い製造例6と同様に塩化ナトリウムのろ別と濃縮を行い、水を徐々に加え、動粘度が2.2mm
2/sになるよう調整したものをA−9とした。
NMRによって確認されたA−9液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
〔製造例10〕
トリメチルアミンを4.0g、2−(2−クロロエトキシ)エタノールのかわりに2−[2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エトキシ]エタノール3.60gを用いた以外は、製造例6と同様に実施し、粉末結晶を3.41g得た。
この粉末に製造例6で用いた水酸化ナトリウムのエタノール溶液5.02gと、ギ酸水溶液5.77gを用い製造例6と同様に塩化ナトリウムのろ別と濃縮を行い、水を徐々に加え、動粘度が3.5mm
2/sになるよう調整したものをA−10とした。
NMRによって確認されたA−10液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
〔製造例11〕
トリメチルアミンの代わりにトリエチルアミンを5.0g、2−(2−クロロエトキシ)エタノールのかわりに2−[2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エトキシ]エタノール2.63gを用いた以外は、製造例6と同様に実施し、粉末結晶を2.50g得た。
この粉末に製造例6で用いた水酸化ナトリウムのエタノール溶液3.19gと、ギ酸水溶液3.67gを用い製造例6と同様に塩化ナトリウムのろ別と濃縮を行い、水を徐々に加え、動粘度が3.7mm2/sになるよう調整したものをA−11とした。
NMRによって確認されたA−11液中の第4級アンモニウム化合物(A)の構造式(R1、R2及びX)は表1に示す通りであった。
【0074】
〔製造例12〕
動粘度を5.5mm
2/sに調整した以外は製造例1と同様に実施した。この第4級アンモニウム化合物溶液をA−12とした。
〔製造例13〕
動粘度を7.2mm
2/sに調整した以外は製造例2と同様に実施した。この第4級アンモニウム化合物溶液をA−13とした。
〔製造例14〕
動粘度を12.8mm
2/sに調整した以外は製造例1と同様に実施した。この第4級アンモニウム化合物溶液をA−14とした。
〔製造例15〕
動粘度を13.9mm
2/sに調整した以外は製造例2と同様に実施した。この第4級アンモニウム化合物溶液をA−15とした。
〔製造例16〕
動粘度を15.8mm
2/sに調整した以外は製造例7と同様に実施した。この第4級アンモニウム化合物溶液をA−16とした。
なお、上記製造例は、必要量に応じ繰り返し実施した。
また、調製した第4級アンモニウム化合物溶液の使用時には、事前に微量全窒素分析装置 TN−2100Wにて窒素含有量を確認した。
【0075】
【表1】
【0076】
<式(3)で表される第4級アンモニウム化合物(C)>
C−1:コリン酢酸塩(アルドリッチ製)を水に溶解し、動粘度は1.5mm
2/sに調整した
C−2:水酸化コリン(多摩化学工業製)を水に溶解し、動粘度は2.1mm
2/sに調整した
【0077】
<粗ポリアセタール共重合体の製造方法>
熱媒を通すことのできるジャケット付き2軸パドル型連続重合反応機(栗本鐵工所製、径2B(2インチ)、L(重合反応機の原料供給口から排出口までの距離)/D(重合反応機の内径)=14.8)を80℃に調整した。
次いで、重合触媒として三フッ化ホウ素−ジ−n−エチルエーテラートを0.10g/hr、低分子量アセタールとしてメチラールを6.00g/hr、ジエチレングリコールジメチルエーテル95.70g/hr、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとして1,3−ジオキソランを110.9g/hr、トリオキサンを3300g/hrを配管にて重合反応機に連続的に供給し重合を行い、粗ポリアセタール共重合体(P−1)を得た。
【0078】
〔実施例1〜16 および 比較例1〜3〕
粗ポリアセタール共重合体(P−1)をトリエチルアミン0.5%溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。その後、濾過・洗浄し、粗ポリアセタール共重合体(P−1)100質量部に対して各製造例で作製した第4級アンモニウム化合物溶液を窒素濃度nが表2に示すようになる量添加し、均一に混合した後130℃で乾燥した。
得られた第4級アンモニウム化合物(A)を含有した粗ポリアセタール共重合体組成物100質量部に対して、酸化防止剤として2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)を0.2質量部添加し、ベント付き2軸スクリュー式押出機に供給した。
押出機中の溶融している粗ポリアセタール共重合体組成物に必要に応じて水を添加し、押出機の設定温度200℃、押出機における滞留時間5分で粗ポリアセタール共重合体の不安定末端部の分解を行った。不安定末端部の分解されたポリアセタール共重合体をベント真空度20Torrの条件下で脱揮し、押出機ダイス部よりストランドとして押出しペレタイズした。
用いた第4級アンモニウム化合物(A)の種類、及び、ポリアセタール共重合体及び第4級アンモニウム化合物(A)の合計質量に対する第4級アンモニウム化合物(A)の使用量(含有量)(第4級アンモニウム化合物(A)由来の窒素濃度n)、押出機に添加した水、トリエチルアミンの粗ポリアセタール共重合体組成物100質量部に対する添加量、得られたポリアセタール共重合体組成物から発生したホルムアルデヒド(FA)、アセトアルデヒド(AA)及びアクロレイン(AL)の量、パウダー色調、成型時の臭気、成型片色調を表2にまとめて示す。
〔比較例4〕
第4級アンモニウム化合物溶液を用いない以外は、実施例1と同様に実施した。
【0079】
結果を表2に示す。
【表2】
【0080】
表2に示すように、実施例1〜16においては、パウダー及び成型片の色調がすぐれ、成型時の臭気も少ないポリアセタールを得ることができ、またホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアクロレインの発生が抑制されたポリアセタールを得ることができ、色調にも優れるものが得られた。
なお、実施例12及び13においてb値が若干高くなった理由は、用いた第4級アンモニウム化合物溶液の動粘度が高めだったためにポリアセタールが着色し、それに伴い成型片の色調が若干悪化したと推測される。
一方、比較例1〜3においては、用いた第4級アンモニウム化合物溶液の動粘度が高すぎたため、パウダーの色調が悪化し、成型時に甘いにおいが漂った。また、比較例4において、第4級アンモニウム化合物溶液を使用しなかったため、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアクロレインの発生が抑制されたポリアセタールを得ることはできなかった。
【課題】色調がよく、加熱溶融等の加熱処理をしてもホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアクロレインの発生が少ない、ポリアセタールからの揮発性有機化合物抑制剤として使用するのに適した第4級アンモニウム化合物溶液を提供する。