(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
微多孔膜である、請求項6記載の成形体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
〔エチレン系重合体〕
本実施形態のエチレン系重合体は、極限粘度(η)が11以上28以下であり、示差走査熱量計(DSC)を用いた下記(1)〜(3)の測定条件によって得られる2回目の昇温過程のDSC曲線において、2回目の昇温過程の融解熱量(ΔH
2)に対して融点(Tm
2)より高い領域の融解熱量(ΔH
b)の割合(ΔH
b/ΔH
2×100で表される。以下、「融解熱量の特定の割合」ともいう。)が18%以上である。本実施形態のエチレン系重合体は、極限粘度が上記範囲内にあり、かつ融解熱量の特定の割合が特定の下限値以上であることにより、成形(例えば、薄膜成形などの成膜)の際に、優れた耐酸化性及び耐収縮性を付与できる。また、本実施形態のエチレン系重合体は、極限粘度を上記範囲内とし、融解熱量の特定の割合を、特定の下限値以上とすることにより、薄膜成形などに成膜の際、膜の均一性が高く、オイル抽出時の残留オイルのムラ、収縮ムラが小さい傾向にある。このため、本実施形態のエチレン系重合体を用いて成膜すると、膜のたわみが小さく、巻しわや巻ずれが発生しにくくなる傾向にあり、膜の品位が向上する。
(DSC測定条件)
(1)50℃で1分間保持後、10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温。
(2)180℃で5分間保持後、10℃/minの降温速度で50℃まで降温。
(3)50℃で5分間保温後、10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温。
【0011】
以下、本実施形態のエチレン系重合体の要件について説明する。
【0012】
(極限粘度)
本実施形態のエチレン系重合体の極限粘度(η)は、11以上28以下であり、好ましくは13以上26以下であり、より好ましくは15以上25以下である。極限粘度(η)が11以上であると、成形(例えば、薄膜成形などの成膜)の際に、最低限の耐酸化性を付与できる。また、薄膜に成形した際に、良好な膜強度を付与できる。一方で、極限粘度(η)が28以下であると、成形後の膜の収縮が抑制される。
【0013】
本実施形態のエチレン系重合体の極限粘度(η)は、後述するオレフィン系重合用触媒を用いて、重合条件等を適宜調整することで制御できる。具体的には、重合系に水素を存在させたり、重合温度を変化させたりすること等によって極限粘度(η)を制御できる。
【0014】
本実施形態のエチレン系重合体の極限粘度(η)は、具体的には、例えば、デカリン中にエチレン系重合体を異なる濃度で溶解した溶液を用意し、当該溶液の135℃における溶液粘度を測定し、測定された溶液粘度から計算される還元粘度を濃度0に外挿して求めることができる。より詳細には、実施例に記載の方法が用いられる。
【0015】
(融解熱量の特定の割合)
融解熱量の特定の割合は、18%以上(例えば、18%以上26%以下)であり、好ましくは19%以上25以下、より好ましくは20%以上25%以下である。融解熱量の特定の割合が、18%以上であると、エチレン系重合体中の結晶サイズ、厚みの大きいポリエチレン成分が多くなり、成形(例えば、薄膜成形などの成膜)する際、優れた耐酸化性を付与できる。一方で、融解熱量の特定の割合が26%以下であると、有機溶剤(例えば、流動パラフィンなど)に対する一層優れた溶解性を有するエチレン系重合体が得られ、成形(例えば、薄膜成形などの成膜)する際、優れた外観を付与できる。なお、融解熱量の特定の割合は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0016】
本実施形態のエチレン系重合体の融解熱量の特定の割合は、粘度平均分子量を調整したり、オレフィン系重合用触媒の活性種のサイズを大きくしたり、重合系にごく微量のアルコール成分を添加したりすることにより制御可能である。重合系にごく微量のアルコール成分を添加する具体的な方法としては、例えば、重合系内に重合レート(重合速度)10kg/hrに対して、1ppm/hrの添加速度でノルマルブタノールを添加する方法が挙げられる。重合系にごく微量のアルコール成分を添加すると、エチレン系重合体の結晶の成長を阻害するようなわずかな低分子量成分を生成させる活性点を失活させることができ、ΔH
bの割合を高めることができる。一方、粘度平均分子量を調整したり、オレフィン系重合用触媒の活性種のサイズを制御したりすることにより、ΔH
bの割合を低くすることができる。
【0017】
(DSCの発熱ピークの半値幅)
前記DSCの測定条件の降温過程における、発熱ピークの半値幅は、好ましくは3.0以上6.0以下であり、より好ましくは3.0以上5.5以下、さらに好ましくは3.0以上5.0以下であり、特に好ましくは3.0以上4.3以下である。発熱ピークの半値幅が3.0以上であると、一般的なポリエチレンと同様に比較的容易に成形(例えば、成膜)できる。一方で、発熱ピークの半値幅が6.0以下であれば、成膜(例えば、薄膜成形)の際に膜の均一性が一層良好となり、厚みムラが一層抑制される。なお、前記発熱ピークの半値幅は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0018】
上記発熱ピークの半値幅は、分子量分布を調整したり、単位触媒に含まれるチタンあたりの生産性を高くしたり、重合反応後に得られるエチレン系重合体を高温(例えば、70℃以上)のメタノールで洗浄したりすることにより制御可能である。特に、エチレン系重合体を高温のメタノールで洗浄すると、結晶化の起点になるような不純物を除去でき、エチレン系重合体の結晶化が均一に進むため、発熱ピークの半値幅を小さくすることができる。一方、分子量分布を調整したり、単位触媒に含まれるチタンあたりの生産性を制御したりすることにより、発熱ピークの半値幅を大きくすることができる。
【0019】
(プレスシート密度)
本実施形態の下記(1)〜(3)の加工条件によって得られるエチレン系重合体のプレスシート密度は、好ましくは910kg/m
3以上940kg/m
3以下であり、より好ましくは915kg/m
3以上935kg/m
3以下であり、さらに好ましくは920kg/m
3以上935kg/m
3以下である。プレスシート密度が910kg/m
3以上であると、ポリエチレンの結晶性が十分に高く、成形(例えば、薄膜成形などの成膜)の際に、より一層優れた耐酸化性を付与できる傾向にある。一方でプレスシート密度が940kg/m
3以下であると、ポリエチレンの粘度平均分子量が十分に高く、成形(例えば、成膜)の際に一層優れた強度(例えば、膜強度)を付与できる傾向にある。
(1)200℃、0.1MPaの条件で900秒間予熱。
(2)200℃、15MPaの条件で300秒間加圧。
(3)25℃、10MPaの条件で600秒間冷却。
【0020】
本実施形態のエチレン系重合体のプレスシート密度は、粘度平均分子量を調整したり、ポリエチレン鎖中に分岐を導入したりすることにより制御可能である。
【0021】
(エチレン系重合体)
本実施形態のエチレン系重合体としては、以下に限定されないが、エチレン単独重合体、又はエチレンと、他の1種以上のモノマーとの共重合体(例えば、二元又は三元共重合体)が挙げられる。共重合体の結合形式は、ランダムでもブロックであってもよい。他のモノマーとしては、以下に限定されないが、例えば、α−オレフィン、ビニル化合物が挙げられ、前記α−オレフィンとしては、以下に限定されないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、前記ビニル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ビニルシクロヘキサン、スチレン及びその誘導体等が挙げられる。また、必要に応じて、他のモノマーとして、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ポリエンを使用できる。これらの他のモノマーは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
本実施形態のエチレン系重合体は、オレフィン系重合用触媒由来の残留金属成分を含む場合があり、残留金属成分としては、例えば、チタン、塩素が挙げられる。
【0023】
(エチレン系重合体中のチタン含有量)
本実施形態のエチレン系重合体に含まれるチタン含有量は、エチレン系重合体全体に対し、重量換算で、好ましくは3ppm以下であり、より好ましくは1ppm以下であり、さらに好ましくは0.5ppm以下である。チタン含有量が3ppm以下であると、ポリエチレンの結晶サイズを大きくすることができ、成形(例えば、薄膜などの成膜)の際により優れた耐酸化性を付与できる傾向にある。なお、チタン含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0024】
本実施形態のエチレン系重合体に含まれるチタン含有量は、後述するオレフィン系重合用触媒を用いるか、単位触媒あたりの生産性を高めることで低減できる。
【0025】
(エチレン系重合体中の塩素含有量)
本実施形態のエチレン系重合体に含まれる塩素含有量は、エチレン系重合体全体に対し、重量換算で、好ましくは10ppm以下であり、より好ましくは5ppm以下であり、さらに好ましくは2ppm以下である。塩素含有量が10ppm以下であると、酸水溶液中でのエチレン系重合体の劣化を抑制でき、成形(例えば、薄膜などの成膜)の際により一層優れた耐酸化性を付与できる傾向にある。なお、塩素含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0026】
エチレン系重合体に含まれる塩素含有量は、後述する触媒を用いるか、単位触媒あたりの生産性を高めることで含有量を低減できる。
【0027】
(添加剤)
さらに、本実施形態のエチレン系重合体は、中和剤、酸化防止剤、及び耐光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
【0028】
中和剤はエチレン系重合体中に含まれる塩素キャッチャー、又は成形加工助剤等として使用される。中和剤としては、以下に限定されないが、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のステアリン酸塩が挙げられる。中和剤の含有量は、特に限定されないが、エチレン系重合体全体に対し、重量換算で、好ましくは5000ppm以下であり、より好ましくは4000ppm以下、さらに好ましくは3000ppm以下である。
【0029】
酸化防止剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、エチレン系重合体全体に対し、重量換算で、5,000ppm以下が好ましく、より好ましくは4,000ppm以下であり、さらに好ましくは3,000ppm以下である。
【0030】
耐光安定剤としては、以下に限定されないが、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系耐光安定剤;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系耐光安定剤が挙げられる。耐光安定剤の含有量は、特に限定されないが、エチレン系重合体全体に対し、重量換算で、好ましくは5000ppm以下であり、より好ましくは4000ppm以下、さらに好ましくは3000ppm以下である。
【0031】
本実施形態では、上記のような各成分以外にもエチレン系重合体の製造に有用な他の公知の成分を含むことができる。
【0032】
本実施形態のエチレン系重合体は、1種のエチレン系重合体(例えば、ポリエチレン)で構成されてもよく、異なる2種以上のエチレン系重合体(例えば、2種以上のポリエチレン)で構成されてもよい。2種以上の場合には、例えば、粘度平均分子量が異なるエチレン系重合体(例えば、ポリエチレン)を組み合わせてもよい。また、本実施形態のエチレン系重合体を構成するポリエチレンとしては、超高分子量ポリエチレンが好ましく、エチレン系重合体は、ポリエチレンとして超高分子量ポリエチレン単独で構成してもよく、超高分子量ポリエチレンと、他の樹脂とを組み合わせてもよい。他の樹脂としては、特に限定されず、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどの他のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが挙げられる。これらの他の樹脂は、一種を単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0033】
本実施形態のエチレン系重合体の形態としては、特に限定されないが、例えば、パウダー状(粒子状)の形態、ペレット状の形態であってもよく、これらの形態であれば、良好な取り扱い性が得られる。パウダー状のエチレン系重合体は、懸濁重合法や気相重合法を適用することにより得られ、ペレット状のエチレン系重合体は、重合により得られたエチレン系重合体を溶融混練後、ストランドを裁断することにより得られる。
【0034】
(エチレン系重合体の製造方法)
以下、本実施形態のエチレン系重合体の製造方法について説明する。
【0035】
(重合工程)
本実施形態のエチレン系重合体の製造方法は、例えば、オレフィン重合用触媒の存在下に少なくともエチレンを含む単量体を重合させてエチレン系重合体(エチレン単独重合体又はエチレン共重合体)を得る重合工程を含む。
【0036】
本実施形態における重合工程では、エチレンを単独で重合させ、エチレン単独重合体を得てもよく、エチレンと、他の1種以上のモノマーとを共重合させて、エチレン共重合体を得てもよい。前記モノマーとしては、エチレン系重合体の項で例示した他のモノマーが例示できる。
【0037】
本実施形態の重合工程に用いられるオレフィン重合用触媒としては、例えば、公知のチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒を使用できる。
【0038】
チーグラー・ナッタ触媒としては、例えば、特開平10−2189334号公報に記載のオレフィン系重合用触媒、特許第5782558号の〔ポリエチレンパウダーの製造方法〕の項で例示されたチーグラー・ナッタ触媒、特許第5829257号の[ポリエチレンの重合方法]で例示されたチーグラー・ナッタ触媒などが例示できる。より詳細には有機マグネシウム化合物とチタン化合物との反応により製造される固体触媒成分と、有機金属化合物成分(助触媒)とを組み合わせて得られる触媒、あるいは有機マグネシウム成分と塩素化剤との反応により調製された担体に、有機マグネシウム化合物とチタン化合物を担持することにより製造される触媒などが例示できる。
【0039】
メタロセン触媒としては、例えば、特許第5782558号の〔ポリエチレンパウダーの製造方法〕の項で例示されたメタロセン系触媒、特許第4868853号の超高分子量エチレン系重合体を製造する方法の項で例示されたメタロセン触媒などが例示できる。より詳細には、触媒成分として、環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と、この遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤とを組み合わせたメタロセン系触媒が例示できる。特許第5782558号に記載されているように、これらの触媒成分は、固体成分(例えば、シリカなど)に担持して担持型触媒として用いてもよく、さらに他の触媒成分として、有機アルミニウム化合物を組み合わせてもよい。また、前記遷移金属化合物と、前記活性化剤と、不純物又は不活性化合物のスカベンジャーとして用いられる液体成分とを組み合わせてもよい。前記液体成分としては、特開2015−180716号公報に記載された液体成分が例示できる。さらに、メタロセン系触媒とともに水素化剤を使用してもよく、さらに水素添加能を有する化合物を添加してもよい。水素化剤、水素添加能を有する化合物としては、特許第5782558号に記載された水素化剤、水素添加能を有する化合物が例示できる。
【0040】
本実施形態の重合方法としては、特に限定されないが、懸濁重合法、気相重合法が挙げられ、重合熱を効率的に除熱できる観点から懸濁重合法が好ましい。
【0041】
懸濁重合法においては、媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができ、さらにオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0042】
前記不活性炭化水素媒体としては、以下に限定されないが、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0043】
本実施形態の重合工程における重合温度は、通常、30℃以上100℃以下が好ましく、35℃以上90℃以下がより好ましく、40℃以上80℃以下がさらに好ましい。重合温度が30℃以上であれば、工業的に効率的な製造が可能であり、重合温度が100℃以下であれば、連続的に安定運転が可能である。一方、エチレン系重合体の極限粘度を制御する観点から、重合温度は、30℃以上85℃以下であることが好ましく、40℃以上80℃以下であることがより好ましく、50℃以上80℃以下であることがさらに好ましい。
【0044】
本実施形態の重合工程における重合圧力は、通常、常圧以上2MPa以下が好ましく、より好ましくは0.1MPa以上1.5MPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以上1.0MPa以下である。常圧以上であることにより残留金属量が低いエチレン系重合体が得られる傾向にあり、2MPa以下であることにより、塊状のスケールを発生させることがなく、エチレン系重合体を安定的に生産できる傾向にある。
【0045】
本実施形態の重合工程では、重合系内にごく微量のアルコール成分を添加することが好ましい。ごく微量のアルコール成分を添加すると、得られるポリエチレンの結晶の成長を阻害するようなごく微量の低分子量成分の生成を抑制でき、ごく微量の不純物を除去できるため、[エチレン系重合体]の項で前述した融解熱量の特定の割合を制御できる。アルコール成分としては、ノルマルブタノール、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどが例示できる。アルコール成分の添加速度は、重合速度10kg/hrに対して、好ましくは0を超え、1質量ppm/hr以下であり、より好ましくは0.8質量ppm/hr以下、さらに好ましくは0.5質量ppm/hr以下である。添加速度が1質量ppm/hr以下とすると、生産性を損なわずに、融解熱量の特定の割合を制御しつつ、エチレン系重合体を得ることができる傾向にある。
【0046】
また、得られるエチレン系重合体(例えば、ポリエチレン)の結晶の成長を阻害するようなごく微量の低分子量成分の生成を抑制できるという観点からは、他の手段としては重合触媒を窒素雰囲気下、不活性炭化水素媒体中で熱処理する方法や重合触媒を重合器に供給(フィード)する前にアルコールと接触させる方法も挙げられる。重合触媒を窒素雰囲気下、不活性炭化水素媒体中で熱処理する方法としては、80℃以上で処理することが好ましく、より好ましくは90℃以上である。また、100℃以下であれば触媒活性を損なわずに融解熱量の特定の割合を制御しつつ、エチレン系重合体を得ることができる傾向にある。重合触媒を重合器に供給(フィード)する前にアルコールと接触させる方法として、アルコール成分としては、ノルマルブタノール、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどが例示できる。アルコール成分の添加量は触媒重量に対して好ましくは0を超え、0.1質量ppb以下であり、より好ましくは0.08質量ppb以下、さらに好ましくは0.05質量ppb以下である。
【0047】
本実施形態の重合工程において、エチレン系重合体の極限粘度を制御する観点から、重合系に水素を連続的に供給させてもよい。
【0048】
(分離工程)
本実施形態のエチレン系重合体の製造方法は、重合工程において、溶媒が供給された場合には、重合工程の後に、重合スラリーから溶媒を分離する分離工程を含むことが好ましい。具体的な分離方法としては、デカンテーション法、遠心分離法、フィルター濾過法等が挙げられ、エチレン系重合体と溶媒との分離効率が高い観点から、遠心分離法が好ましい。
【0049】
(失活工程)
本実施形態のエチレン系重合体の製造方法は、重合工程の後に、前記オレフィン重合用触媒を失活させる失活工程を含むことが好ましい。本実施形態のエチレン系重合体を合成するために使用したオレフィン重合用触媒の失活方法は、特に限定されないが、分離工程の後に実施することが好ましい。エチレン系重合体(例えば、ポリエチレン)と溶媒とを分離した後にオレフィン重合用触媒を失活させるための薬剤を導入すると、溶媒中に含まれる低分子量成分や触媒成分等の析出を低減できるため好ましい。前記薬剤としては、特に限定されないが、酸素、水、アルコール類、グリコール類、フェノール類、一酸化炭素、二酸化炭素、エーテル類、カルボニル化合物、アルキン類などが挙げられる。
【0050】
(洗浄工程)
本実施形態のエチレン系重合体の製造方法は、[エチレン系重合体]の項で前述した発熱ピークの半値幅を制御する観点から、分離工程の後に、高温のメタノールでエチレン系重合体(例えば、ポリエチレン)を洗浄することが好ましい。洗浄するメタノールの温度は60℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。メタノールの温度が60℃以上であると、結晶化の起点になるような不純物を除去でき、エチレン系重合体の結晶化が均一に進むため、発熱ピークの半値幅を制御できる。
【0051】
(乾燥工程)
本実施形態のエチレン系重合体の製造方法は、分離工程の後に、エチレン系重合体を乾燥させる乾燥工程を含むことが好ましい。乾燥工程における乾燥温度は、通常、50℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上130℃以下がより好ましく、50℃以上100℃以下がさらに好ましい。乾燥温度が50℃以上であると、効率的な乾燥が可能である。一方、乾燥温度が150℃以下であると、エチレン系重合体の分解や架橋を抑制した状態で乾燥できる。
【0052】
(分級工程)
本実施形態のエチレン系重合体の製造方法は、乾燥工程の後に、エチレン系重合体を所定の目開きサイズ(例えば、425μm)の篩を用いて分級し、パウダー状(粒子状)の形態としてもよい。
【0053】
(成形体)
本実施形態の成形体は、本実施形態のエチレン系重合体を含むことを特徴とする。成形体としては、延伸成形体、微多孔膜、高強度繊維、ゲル紡糸などが挙げられ、微多孔膜が好ましい。本実施形態の微多孔膜は、二次電池用セパレータ(例えば、鉛蓄電池用セパレータ)として好適に用いられる。なお、これらの成形体は、公知の方法に準じて製造できる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0055】
〔実施例、比較例において用いた各種特性及び物性の測定方法〕
((1)極限粘度の測定)
実施例及び比較例で製造したエチレン重合体の極限粘度を、以下に示す方法によって求めた。
まず、溶解管にエチレン重合体10mgを秤量し、溶解管を窒素置換した後、20mLのデカヒドロナフタレン(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを1g/L加えたもの)を加え、150℃で2時間攪拌してエチレン重合体を溶解させた。その溶液を135℃の恒温槽で、ウベローデタイプの粘度計を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。同様に、エチレン重合体の質量を変えて3点の溶液を作製し、落下時間を測定した。ブランクとしてエチレン重合体を入れていないデカリンのみの落下時間(tb)を測定した。
以下の式(1)に従って求めたポリマーの還元粘度(ηsp/C)をそれぞれプロットして濃度(C)(単位:g/dL)とポリマーの還元粘度(ηsp/C)の直線式を導き、濃度0に外挿した極限粘度(η)を求めた。
(ηsp/C)=(t
s/t
b−1)/C (単位:dL/g) (1)
【0056】
((2)ΔH
b/ΔH
2×100および発熱ピークの半値幅)
DSC(パーキンエルマー社製、商品名:DSC8000)を用いて測定を行なった。8〜10mgのエチレン重合体をアルミニウムパンに挿填し、DSCに設置した後、以下の(1)〜(3)の測定条件で測定を行った。
(1)50℃で1分間保持後、10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温。
(2)180℃で5分間保持後、10℃/minの降温速度で50℃まで降温。
(3)50℃で5分間保温後、10℃/minの昇温速度で180℃まで昇温。
2回目の昇温過程で得られた吸熱ピークにおいて60℃から150℃の範囲から融解熱量ΔH
2、融点Tm
2、及びΔH
2における融点Tm
2よりも高温側(高い領域)の融解熱量ΔH
bを測定し、ΔH
b/ΔH
2×100を求めた。また、降温過程で得られた発熱ピークから半値幅を求めた。
【0057】
((3)プレスシート密度)
厚さ5mmの平滑な鉄板に厚さ0.1mmのアルミニウム板を載せ、さらにセロファンでコーティングされていない厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラー)を載せた。この上に縦60mm、横60mm、厚み2mmの金型を載せ、これに8gのエチレン重合体を入れ、この上に前述のポリエチレンテレフタレートフィルムを載せ、さらに前述のアルミニウム板を載せ、さらに前述の鉄板を載せた。これを200℃に温度調節された圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製 SFA−37)に入れ、200℃、0.1MPaで900秒間予熱後、5秒間エアー抜き(10MPa)を行い、200℃、15MPaで300秒間加圧を行った。加圧終了後サンプルを取り出し、取り出してから5秒後に25℃に温度調節された圧縮成型機(株式会社神藤金属工業所製 SFA−37)に入れ、25℃、10MPaにて600秒間加圧しながら15±2℃/分の冷却速度で冷却した。冷却速度は金型を厚紙で挟むことにより調節した。冷却後、取り出したプレスシートを120℃で1時間アニールし、密度を測定した。
【0058】
((4)エチレン重合体に含まれるチタン含有量)
エチレン重合体0.2gをテフロン(登録商標)製分解容器に秤取り、高純度硝酸を加えてマイルストーンゼネラル社製マイクロウェーブ分解装置ETHOS−TCにて加圧分解後、日本ミリポア社製超純水製造装置で精製した純水で全量を50mLとしたものを検液として使用した。上記検液に対し、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)Xシリーズ2を使用して、内標準法でチタンの定量を行った。
【0059】
((5)エチレン重合体に含まれる塩素含有量)
エチレン重合体を自動試料燃焼装置(三菱化学アナリテック社製 AQF−100)で燃焼後、吸収液(Na
2CO
3とNaHCO
3との混合溶液)に吸収させ、その吸収液をイオンクロマトグラフ装置(ダイオネクス社製、ICS1500、カラム(分離カラム:AS12A、ガードカラム:AG12A)サプレッサー ASRS300)に注入させ全塩素量を測定した。
【0060】
((6)オイル抽出後の収縮率)
流動パラフィンを抽出する前の膜から100mm×100mmの試験片を切り出し、ヘキサン含浸後の収縮率を測定した。収縮率は抽出前の試験片の対角線の長さL0とし、抽出後の試験片の対角線の長さをL1としたときに、(L0−L1)/L0×100として計算し、2本の対角線から得られた収縮率の平均値により、オイル抽出後の収縮率を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
◎:収縮率が2%未満
○:収縮率が2%以上4%未満
△:収縮率が4%以上5%未満
×:収縮率が5%以上
【0061】
((7)厚みムラ)
微多孔膜から100mm×100mmの試験片を切り出し、任意の10点の厚みを東洋精機製の微小測厚器(タイプKBM(登録商標))を用いて室温23℃で測定し、最も厚い部分と薄い部分の差を求め、厚みムラを評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:最も厚い部分と薄い部分との差が1μm以下
○:最も厚い部分と薄い部分との差が1μmを超え、3μm以下
△:最も厚い部分と薄い部分との差が3μmを超え、5μm以下
×:最も厚い部分と薄い部分との差が5μm以上
【0062】
((8)膜の耐酸化性)
微多孔膜からダンベル型試験片を切り出し、比重1.5の希硫酸中で80℃、80時間含浸させ、JIS K 7127に従って含浸前後の引張伸びの保持率を以下の条件で測定し、膜の耐酸化性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
装置:エーアンドデイ社製 テンシロン
サンプル形状:試験片タイプ5
チャック間距離:80mm
引張速度:300mm/min
◎:引張伸びの保持率が90%以上
○:引張伸びの保持率が80%以上90%未満
△:引張伸びの保持率が70%以上80%未満
×:引張伸びの保持率が70%未満
【0063】
((9)耐酸化性試験後の収縮率)
微多孔膜から100mm×100mmの試験片を切り出し、比重1.5の希硫酸中で80℃80時間含浸させた後に、(6)の方法と同様により耐酸化試験後の収縮率を測定した。評価基準は以下のとおりである。
◎:収縮率が3%未満
○:収縮率が3%以上5%未満
△:収縮率が5%以上10%未満
×:収縮率が10%以上
【0064】
〔触媒合成例〕
以下に本実施例及び比較例で用いた触媒について説明する。
【0065】
〔固体触媒成分[A]の調製〕
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブにヘキサン1,600mLを添加した。40℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液800mLと1mol/Lの組成式AlMg
5(C
4H
9)
11(OSi(C
2H
5)H)
2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液800mLとを2時間かけて同時に添加した。添加後、ゆっくりと昇温し、40℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1600mL除去し、ヘキサン1,600mLで4回洗浄することにより、固体触媒成分[A]を調製した。
【0066】
〔固体触媒成分[B]の調製〕
(1)(B−1)担体の合成
担体(B−1)の前駆体として、平均粒径9.5μm、比表面積480m
2/gのシリカを用いた。
窒素置換した容量8Lオートクレーブに加熱処理後のシリカ(130g)をヘキサン2500mL中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーに、攪拌下20℃にて、ルイス酸性化合物であるトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1M)を195mL加えた。その後、2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させて、トリエチルアルミニウムを吸着させた(B−1)担体のヘキサンスラリー2695mLを調製した。
【0067】
(遷移金属化合物成分[C]の調製)
遷移金属化合物(C−1)として、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「錯体1」と略称する)を使用した。また、有機マグネシウム化合物(C−2)として、組成式Mg(C
2H
5)(C
4H
9)(以下、「Mg1」と略称する)を使用した。
200mmolの錯体1をイソパラフィン炭化水素(エクソンモービル社製アイソパーE)1000mLに溶解し、これにMg1のヘキサン溶液(濃度1M)を40mL加え、更にヘキサンを加えて錯体1の濃度を0.1Mに調整し、遷移金属化合物成分[C]を得た。
【0068】
(活性化剤[D]の調製)
ボレート化合物(D−1)として、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)17.8gをトルエン156mLに添加して溶解し、ボレートの100mmol/Lトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液に(D−2)としてエトキシジエチルアルミニウムの1mol/Lヘキサン溶液15.6mLを室温で加え、さらにトルエンを加えて溶液中のボレート濃度が70mmol/Lとなるように調整した。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む活性化剤[D]を調製した。
【0069】
(固体触媒[E]の調製)
上記操作により得られた担体(B−1)のスラリー2695mLに、5℃にて500rpmで撹拌しながら、上記操作により得られた活性化剤[D]219mLと、遷移金属化合物成分[C]175mLと、を別のラインから定量ポンプを用い、同時に添加し、添加時間30分で、その後、3時間反応を継続することにより、固体触媒[E]を調製した。
【0070】
(液体成分[F]の調製)
有機マグネシウム化合物(F−1)として、組成式AlMg
6(C
2H
5)
3(C
4H
9)
12(以下、「Mg2」と略称する)を使用した。
200mLのフラスコに、ヘキサン40mLとMg2を、MgとAlの総量として38.0mmolを攪拌しながら添加し、20℃でメチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス;以下、「シロキサン化合物」と略称する)2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40mLを攪拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌下で反応させることにより、液体成分[F]を調製した。
【0071】
(水添触媒[G]の調製)
窒素置換した攪拌機付の容量2.0LのSUSオートクレーブに、チタノセンジクロライド37.3gをヘキサン1Lで導入した。500rpmで撹拌しながら、トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドの(9:1)の混合物0.7mol/L、429mLを室温で、1時間かけてポンプで添加した。添加後71mLのヘキサンでラインを洗浄した。1時間撹拌を継続し、濃青色の均一な100mM/L溶液[G]を得た。
【0072】
(固体触媒成分[H]の調製)
<(1)(H−1)担体の合成>
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに2mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1,000mLを仕込み、65℃で攪拌しながら組成式AlMg
5(C
4H
9)
11(OC
4H
9)
2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液2,550mL(マグネシウム2.68mol相当)を4時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。
反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し(H−1)担体を得た。
<(2)固体触媒成分[H]の調製>
上記(H−1)担体110gを含有するヘキサンスラリー1,970mLに65℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液110mLと1mol/Lの組成式AlMg
5(C
4H
9)
11(OC
4H
9)
2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液110mLとを同時に1時間かけて添加した。
添加後、65℃で1時間反応を継続させた。
反応終了後、上澄み液を1100mL除去し、ヘキサン1,100mLで4回洗浄することにより、固体触媒成分[H]を調製した。
【0073】
〔実施例1〕
(エチレン重合体の製造方法)
ヘキサン、エチレン、水素、及び触媒を、攪拌装置が付いたベッセル型300L重合反応器に平均滞留時間2時間の条件で連続的に供給した。重合圧力は0.35MPaであった。重合温度はジャケット冷却により75℃に保った。前記触媒としては、固体触媒成分[A]と、助触媒としてトリイソブチルアルミニウムとを使用した。トリイソブチルアルミニウムは10mmol/hrの速度で重合器に添加した。固体触媒成分[A]は、エチレン重合体の重合速度(製造速度)が10kg/hrとなるように供給した。水素を、気相濃度が2000ppmになるようにポンプで連続的に供給した。ノルマルブタノールの100mmol/Lヘキサン溶液をノルマルブタノールの量が重合速度(製造速度)10kg/hrに対して1ppm/hrとなるように供給し、重合スラリーを得た。得られた重合スラリーを遠心分離機に送り、ポリマー(ポリエチレン)とそれ以外の溶媒等を分離した後に、ポリマーと、60℃のメタノールとを1時間撹拌しながら接触させた。ポリマー及びメタノールを含む重合スラリーを遠心分離機に送り、ポリマーとそれ以外の溶媒等を分離し、エチレン重合体を得た。分離されたエチレン重合体は、70℃で窒素ブローしながら乾燥した。これにより得られたエチレン重合体を目開き425μmの篩を用いて、篩を通過しなかったものを除去することでパウダー状(粒子状)のエチレン重合体を得た。
得られたパウダー状のエチレン重合体の特性を、上述した方法により測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0074】
(微多孔膜の製造方法)
100mLのポリカップにパウダー状のエチレン重合体3.7g、流動パラフィン(松村石油(株)製P−350(商標))26.6g、シリカ(PPG製HiSil233)9.5g、カーボンブラック0.02g、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.02gを加えて薬さじで撹拌することにより、エチレン重合体を含む混合物(ポリエチレン混合物)を得た。
【0075】
得られたポリエチレン混合物を東洋精機製作所製ラボプラストミルミキサー(本体型式:4C150、ミキサー形式:R−60)に仕込み、回転数を50rpmに設定して200℃で10分間混練した。混練物をただちに250mm×250mm、厚み0.1mmの金型を用いて200℃10MPaの条件で300秒間加圧し、25℃10Mpaの条件で600秒間冷却することで、黒色膜を得た。
【0076】
この黒色膜をヘキサンに10分間含浸させて流動パラフィンを抽出し、乾燥させることにより、微多孔膜を得た。
【0077】
得られた微多孔膜の物性を、上述した方法により測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0078】
〔実施例2〕
重合工程において、固体触媒成分[A]及びトリイソブチルアルミニウムに代えて、固体触媒成分[E]を用いたこと、液体成分[F]をMgとAlの総量として6mmol/hrで供給したこと、重合圧力を0.8MPaGとしたこと水素は固体触媒成分[E]のフィード配管に2NL/hrで供給し、このフィード配管に、別途水添触媒[G]を反応器内濃度が1.1μmol/Lとなるように供給したこと以外は、実施例1と同様にしてエチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0079】
〔実施例3〕
重合工程において、固体触媒成分[A]に代えて、固体触媒成分[H]を用いたこと、重合温度を73℃とし、水素を供給しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてエチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0080】
〔実施例4〕
重合工程において、水添触媒[G]を反応器内濃度が1.6μmol/Lとなるように供給したこと以外は、実施例2と同様にして、エチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0081】
〔実施例5〕
重合工程において、水添触媒[G]を反応器内濃度が1.8μmol/Lとなるように供給したこと、1−ブテンを気相部の濃度が1.0mol%になるように供給したこと以外は、実施例2と同様にして、エチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0082】
〔実施例6〕
重合工程において、重合温度を65℃とし、重合圧力を0.45MPaとし、水素を供給しなかったこと、メタノールと接触させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、エチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0083】
〔実施例7〕
重合工程において、重合温度を70℃としたこと、水添触媒[G]を反応器内濃度が2.4μmol/Lとなるように供給したこと以外は、実施例2と同様にして、エチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0084】
〔実施例8〕
重合工程において、固体触媒成分[A]をそのまま用いたことに代えて、固体触媒成分[A]を窒素雰囲気下、90℃のヘキサン中で1時間撹拌した形態でを用いたこと、重合温度を75℃に代えて、70℃としたこと、水素を供給しなかったこと、さらには重合系内にノルマルブタノールの100mmol/Lヘキサン溶液を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、エチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0085】
〔比較例1〕
重合工程において、重合温度を74℃としたこと、水素を供給しなかったこと、重合系内にノルマルブタノールを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、エチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0086】
〔比較例2〕
重合工程において、重合温度を60℃とし、重合圧力を0.8MPaとしたこと、重合系内にノルマルブタノールを添加しなかったこと以外は、実施例3と同様にして、エチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0087】
〔比較例3〕
重合工程において、重合温度を73℃に代えて、75℃としたこと、水素を3000ppm供給したこと以外は、実施例3と同様にして、エチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0088】
〔比較例4〕
重合工程において、重合温度を75℃に代えて、60℃としたこと、重合圧力を0.35MPaに代えて、0.5MPaとしたこと、水素を供給しなかったこと、さらには重合系内にノルマルブタノールの100mmol/Lヘキサン溶液を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、エチレン重合体を得た。微多孔膜は、実施例1と同様にして製造した。
【0089】
【表1】