(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383488
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】3次元オブジェクトの生成
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20180820BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20180820BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20180820BHJP
【FI】
B29C64/393
G06T19/00 A
B33Y50/02
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-508048(P2017-508048)
(86)(22)【出願日】2014年9月22日
(65)【公表番号】特表2017-535443(P2017-535443A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】US2014056789
(87)【国際公開番号】WO2016032544
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】コルテス・イ・ヘルムス,セバスチア
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,スコット,エイ
【審査官】
中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/086309(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/026749(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00−64/40
B22F3/105
B22F3/16
B28B1/30
G06F3/12
G06F17/50−19/00
G06K15/00−15/22
G06Q10/00−10/10
G06Q30/00−30/08
G06Q50/00−50/20
G06Q50/26−99/00
G06T1/00
G06T11/00−19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形システムによる3次元オブジェクトの生成を管理する方法であって、
仮想構築ボリューム内の1つ以上の仮想オブジェクトの空間的な配置を生成し、
該仮想構築ボリュームに対応する構築材料の連続する複数の層を処理するよう積層造形システムを制御し、
該仮想構築ボリューム内の前記1つ以上の仮想オブジェクトを変更するための要求を受信し、
該仮想構築ボリュームのうち前記積層造形システムにより未だ処理されていない部分に基づいて前記要求を受け入れることができるか否かを判定し、該要求を受け入れることができると判定した場合に該仮想構築ボリューム内の前記1つ以上の仮想オブジェクトを変更し、
該変更した1つ以上の仮想オブジェクトを含む該仮想構築ボリュームに基づいて前記構築材料の層の処理を続行させるよう前記積層造形システムを制御する、
積層造形システムによる3次元オブジェクトの生成を管理する方法。
【請求項2】
前記要求を受信することが、オブジェクトの生成をキャンセルするための要求、新たなオブジェクトを追加するための要求、オブジェクトを移動するための要求、1つのオブジェクトを別のオブジェクトに置換するための要求、オブジェクトを複製するための要求、及びオブジェクトの特性を変更するための要求のうちの1つ以上を受信することからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記要求を受け入れることができるか否かを判定することが、前記積層造形システムにより処理された前記構築材料の層の数を判定することからなる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記判定した前記構築材料の層の数から、前記仮想構築ボリュームのうち前記積層造形システムにより未だ処理されていない部分を判定することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記受信した要求が新たなオブジェクトを追加するための要求である場合に、前記仮想構築ボリュームの前記未だ処理されていない部分内に該新たなオブジェクトを収容するための十分なスペースが存在するか否かを判定する、請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記受信した要求がオブジェクトを移動し又はキャンセルするための要求である場合に、該オブジェクトの一部が前記積層造形システムにより既に処理されているか否かを判定することを更に含む、請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記要求を受け入れることができるか否かを判定することが、オブジェクトに関するデータに基づいて行われる、請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記要求を受け入れることができるか否かを判定することが、前記仮想構築ボリューム内の新たな仮想オブジェクト又はその他の任意の仮想オブジェクトに1つ又は複数の幾何学的な操作を行うことに基づいて該新たな仮想オブジェクトを内部に含めることを可能にする前記仮想構築ボリューム内のオブジェクトの新たな空間的な配置を判定することである、請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記積層造形システムを制御することが、前記仮想構築ボリュームのスライスを表すデータを生成して該積層造形システムへ送信することからなり、更に、前記要求を受け入れることができると判定した場合に、該要求に従って前記仮想構築ボリューム内の前記1つ以上の仮想オブジェクトを変更し、該変更した1つ以上の仮想オブジェクトを含む該仮想構築ボリュームのスライスを表す変更したデータを生成して該積層造形システムへ送信することからなる、請求項1ないし請求項8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記構築材料の層の処理に割り込むことなく前記積層造形システムに前記変更したデータを送信することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
3次元オブジェクトの生成を管理するためのシステムであって、プロセッサを備えており、該プロセッサが、
1つ以上の仮想オブジェクトを取得し、
仮想構築ボリューム内の該1つ以上の仮想オブジェクトの空間的な配置を生成し、
該仮想構築ボリュームを処理するよう積層造形システムを制御し、
該仮想構築ボリューム内の前記1つ以上の仮想オブジェクトを変更するための要求を受信し、
該仮想構築ボリュームのうち前記積層造形システムにより未だ処理されていない部分に基づいて前記要求を受け入れることができるか否かを判定し、該要求を受け入れることができると判定した場合に該仮想構築ボリューム内の該1つ以上の仮想オブジェクトを変更し、
該変更した1つ以上の仮想オブジェクトを含む該仮想構築ボリュームに基づいて前記構築材料の層の処理を続行させるよう前記積層造形システムを制御する、
3次元オブジェクトの生成を管理するためのシステム。
【請求項12】
前記要求が、オブジェクトの生成をキャンセルするための要求、新たなオブジェクトを追加するための要求、オブジェクトを移動するための要求、1つのオブジェクトを別のオブジェクトに置換するための要求、オブジェクトを複製するための要求、及びオブジェクトの特性を変更するための要求のうちの1つ以上からなる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサが、前記積層造形システムにより処理された前記構築材料の層の数を判定することにより前記要求を受け入れることができるか否かを判定する、請求項11又は請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサが、前記仮想構築ボリュームのスライスを表すデータを生成して前記積層造形システムへ送信し、前記要求を受け入れることができると判定した場合に、該要求に従って該仮想構築ボリューム内の前記1つ以上の仮想オブジェクトを変更し、該変更した1つ以上の仮想オブジェクトを含む該仮想構築ボリュームのスライスを表す変更したデータを生成して前記積層造形システムへ送信することにより、該積層造形システムを制御する、請求項11ないし請求項13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
プロセッサが理解することができる命令が格納されたコンピュータ読み取り可能媒体であって、該命令が、プロセッサによる実行時に、
仮想構築ボリューム内の1つ以上の仮想オブジェクトの配置を生成し、
該仮想構築ボリュームの連続する複数のスライスを処理するよう積層造形システムを制御し、
該仮想構築ボリューム内の前記1つ以上の仮想オブジェクトを変更するための要求を受信し、
該要求を受け入れることができるか否かを、該仮想構築ボリュームのうち前記積層造形システムにより未だ処理されていない部分に基づいて判定し、該要求を受け入れることができると判定した場合に該仮想構築ボリューム内の前記1つ以上の仮想オブジェクトを変更し、
該変更した1つ以上の仮想オブジェクトを含む該仮想構築ボリュームの連続する複数のスライスを処理するよう前記積層造形システムを制御する、
プロセッサが理解することができる命令が格納されたコンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2014年8月29日出願の「MODIFYING DATA REPRESENTING THREE-DIMENSIONAL OBJECTS」と題するPCT出願第PCT/US2014/053405号を優先権主張の基礎とするものである。
【背景技術】
【0002】
多層ベース(layer-by-layer basis)で3次元オブジェクトを生成するための多数の異なるタイプの積層造形(additive manufacturing)技術が知られている。しかし、かかる技術の多くは、一般に低速であり、小さなオブジェクトを生成するためにもかなりの時間を要するものである。
【0003】
積層造形技術の中には、所定の体積の構築材料(以下、構築ボリュームと称す)内に3次元オブジェクトを生成するものがある。例えば、積層技術によっては、粉末又は液体の構築材料等の構築材料の複数の連続する層を支持プラットフォーム上に形成し、次いで該構築材料の各層の複数の部分を選択的に凝固させた後、構築材料の次の層が形成される。このようにして3次元オブジェクトを生成する積層造形システムは、例えば、SLS(Selective Laser Sintering:選択的レーザ焼結)システム、SLA(Stereo Lithography:ステレオリソグラフィ)システム、及びパウダーベースの3次元プリンティングシステムを含むことが可能である。
【0004】
3次元オブジェクトを生成するために、所定の仮想構築ボリューム内に1つ又は複数の仮想オブジェクトを空間的に配置することが可能である。仮想オブジェクトは、例えば、積層造形システムにより生成されることになるオブジェクトのディジタルモデルとすることが可能である。
【0005】
仮想構築ボリュームは、所与の積層造形システムの所与の構築ボリュームに対応するものであり、該構築ボリューム内には複数のオブジェクトを生成することが可能である。
【0006】
積層造形システムは、仮想構築ボリュームのそれぞれのスライス(slice)に対応する連続する複数の構築材料層を処理する。該処理として、例えば、仮想構築ボリュームの対応するスライス内に存在し得るオブジェクトの断面に従って構築材料の各層の複数の部分を選択的に凝固させることが挙げられる。
【0007】
かかるシステムは、所与の構築ボリューム内に複数のオブジェクトを生成するため、該構築ボリューム内の複数のオブジェクトの全ての生成が完了すると、該生成された複数のオブジェクトを該構築ボリュームから取り出すことが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この所与の構築ボリュームの処理は、例えば、使用される積層造形システムのタイプや構築ボリュームのサイズに依存して、多くの時間を要するものである。したがって、積層造形システムが構築ボリュームの処理を開始すると、該積層造形システムは、構築ボリューム全体の処理が完了するまで、又は構築処理がキャンセルされない限り、事実上ビジーとなる。しかし、構築ボリュームの処理のキャンセルした場合には、多大な時間を損失することになり、及び構築ボリューム内の完全に生成されなかったあらゆるオブジェクトは不完全なものとなる。更に、構築ボリューム全体の処理のキャンセルは、構築材料の大きな損失を招くものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態によるシステム100の概略図である。
【
図2】一実施形態による構築ボリュームマネージャのブロック図である。
【
図3】一実施形態による方法の概要を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態による構築ボリュームの一例である。
【
図5】一実施形態による仮想オブジェクトの一例である。
【
図6】一実施形態による仮想構築ボリュームの一例である。
【
図7】一実施形態によるタイムラインの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、添付図面を参照して非制限的な実施形態のみについて説明することとする。
【0011】
図1を参照すると、一実施形態によるシステム100の概略図が示されている。該システム100は、積層造形システム104により生成される構築ボリューム112内のオブジェクトの配置を管理するための構築ボリュームマネージャ102を備えている。一実施形態では、該構築ボリュームマネージャ102は、積層造形システム104を直接的又は間接的に制御するために使用することができる制御信号又はデータ103を生成することが可能である。
【0012】
一実施形態では、
図2に示すように、構築ボリュームマネージャ102は、持続性のコンピュータ読み取り可能メモリ204に(例えば、通信バス(図示せず)を介して)接続されたプロセッサ202(例えば、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ)から構成することが可能である。該メモリ204は、マシン読み取り可能命令である構築ボリューム管理命令206を格納し、該構築ボリューム管理命令206は、プロセッサ202による実行時に、本書で様々な実施形態に関して説明するように、該構築ボリュームマネージャ102に積層造形システムの構築ボリュームの管理を行わせる。
【0013】
ここで、
図3のフローチャートを更に参照して、該システム100の動作を説明する。
【0014】
ブロック302で、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108を生成する。該仮想構築ボリューム108は、1つ又は複数の仮想3次元オブジェクト(例えば、積層造形システム104により構築ボリューム112内で生成されるべき仮想オブジェクト106a,106b)の空間的な配置を含む。一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、1つ又は複数の3次元オブジェクトを表すデータから、仮想構築ボリュームの空間的な配置を表すデータを生成する。
【0015】
各々の仮想オブジェクトは、例えば、ベクトルデータ形式といった任意の適当なデータ形式で定義することが可能である。各々の仮想3次元オブジェクトは、例えば、適当なCAD(Computer-Aided Design)アプリケーションから、3次元スキャナから、又は任意の適当なソースから、生成することが可能である。
【0016】
一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、ソフトウェアドライバとして実施することが可能であり、又は、積層造形システムにより生成されるべき1つまたは複数のオブジェクトを定義する3次元プリントジョブを送信するためにユーザが使用するソフトウェアアプリケーションとして実施することが可能である。
【0017】
一実施形態では、構築ボリュームマネージャは、積層造形システム104により生成されるべき多数の仮想オブジェクト(たとえば、オブジェクト106a,106b)を取得することが可能である。お家区ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108内の取得した1つ以上の仮想オブジェクトの空間的な配置を、様々な基準に基づいて決定することが可能である。該空間的な配置は、仮想構築ボリューム108内の各オブジェクトの配向及び位置を含むことが可能である。かかる基準として、オブジェクト構築期限(deadline)、オブジェクト優先度、オブジェクト相互依存性、特定の部分の特定の配向に必要な構造的特徴、特定の部分の特定の配向についての許容可能な幾何学的な誤差の許容値、後処理操作を容易にするためのオブジェクトの空間的な配置、及び構築ボリュームの体積の最適化が挙げられるが、これらには限定されない。
【0018】
一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108の体積の最適化を決定することにより空間的な配置を決定することが可能である。例えば、構築ボリュームマネージャ102は、1つまたは複数の幾何学的な操作(例えば、効率的な空間的な配置を得るためのオブジェクトの回転や移動)を実行すると同時に適当な基準を順守することが可能であり、該基準として、最小オブジェクト間隔、(採用する積層造形技術によって決まる)適当な熱間隔(thermal spacing)、及び所望の強度軸(strength axes)が挙げられるが、これらには限定されない。構築ボリュームマネージャ102は、例えば、有限要素解析(FEA)を使用して、(例えば、所望のオブジェクト強度特性を満たすように)特定の部分の配向の決定を支援することが可能である。
【0019】
一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、構築ボリューム112を生成するために仮想構築ボリューム108の処理を開始するよう積層造形システム104を制御すべきときを決定する。別の実施形態では、構築ボリュームマネージャ102が構築ボリューム112を生成するために仮想構築ボリューム108の処理を開始すべきときをユーザが決定することが可能である。
【0020】
ブロック304で、構築ボリュームマネージャ102は、積層造形システム104を制御して、仮想構築ボリューム108内の仮想オブジェクト106a,106bの生成を開始する。一実施形態では、積層造形システム104は、仮想構築ボリューム108の複数のスライスに対応する構築材料の連続する複数の層を処理する。
【0021】
一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108を処理し、対応する制御データ103を積層造形システム104へ送信する。
【0022】
一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108の個々のスライス110a〜110nを表すデータを生成して送信することが可能であり、その各スライスは、構築ボリューム112内で積層造形システム104により処理されるべき構築材料の層114a〜114nに対応するものである。一実施形態では、各スライス110a〜110nが、構築材料の各層114a〜114nにそれぞれ1つずつ対応する。別の実施形態では、複数のスライスが構築材料の各層に対応することが可能である。
【0023】
一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108のスライス110a〜110nの全てを表すデータをを生成して積層造形システム104へ送信することが可能である。別の実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108の単一のスライスを表すデータを生成して送信することが可能であり、及び積層造形システム104により要求された際に仮想構築ボリューム108の次のスライスを表すデータを送信することが可能である。
【0024】
一実施形態では、制御データ103は、積層造形システム104の特性に基づいて構築ボリュームマネージャ102により適応させることが可能である。
【0025】
ブロック306で、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108を変更するための要求を受信するため又はそれ以外の態様で取得するために待機する。かかる要求が(例えば、構築ボリュームマネージャ102に対する適当な入力を介して)受信されると、ブロック308で、該要求を遂行することができるか否かを構築ボリュームマネージャ102が判定する。
【0026】
仮想構築ボリューム108を変更するための要求は、様々な形態をとることが可能であり、例えば、オブジェクトの生成をキャンセルするための要求、新たなオブジェクトを追加するための要求、オブジェクトを移動するための要求、特定のオブジェクトを別のオブジェクトに置換するための要求、オブジェクトを複製するための要求、及び特性(例えば、カラー特性、又はオブジェクトプロパティ特性(例えば、強度特性や平滑特性など))を変更するための要求のうちの1つ以上を含むことが可能であるが、これらには限定されない。
【0027】
仮想構築ボリューム108を変更するための要求を遂行することができるか否かに関する構築ボリュームマネージャ102による判定は、要求のタイプに依存し得るものであり、また、積層造形システム104による処理が既に完了している構築ボリューム112の層の数にも依存し得るものである。
【0028】
例えば、仮想構築ボリューム108内に新たなオブジェクトを追加するための要求を遂行するためには、構築ボリュームマネージャ102は、該新たなオブジェクトに収容するための十分なスペースが構築ボリューム112の未処理部分に存在するか否かを判定する必要がある。例えば、構築ボリューム112におけるオブジェクトの生成をキャンセルするため、オブジェクトを移動するため、又はオブジェクトの特性を変更するための要求を遂行するためには、構築ボリュームマネージャ102は、構築ボリューム112内にオブジェクトが既に生成されているか否か、又は少なくとも部分的に生成されているか否かを判定する必要がある。
【0029】
一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、積層造形システム104から、現在処理中の構築ボリューム112の層を決定する。これにより、積層造形システム104による処理が完了している層の数を構築ボリュームマネージャ102が判定することが可能となる。別の実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、現在の層(例えば、処理済みの最後に完成した層、処理されるべき次の層、又は他の任意の適当な層)とは異なる層を積層造形システム104から取得することが可能である。該層は、Zカウントとも呼ばれ、これは、該Zカウントが、処理中の構築材料の現在の層のZ軸におけるオフセットを表すからである。
【0030】
積層造形システム104による処理が完了した構築ボリューム112の層の数を知ることにより、構築ボリュームマネージャ102は、要求を遂行することができるか否かを判定することが可能となる。
【0031】
図4は、構築ボリューム112を示すものであり、その構築材料の層116a〜116eからなる部分402は、積層造形システム104による処理が完了している部分である。仮想オブジェクト106aに対応するオブジェクトの一部406が構築ボリューム112内に生成されており、仮想オブジェクト106bに対応するオブジェクトは未だ生成されていないことが分かる。また、構築ボリューム112の部分404が未処理のままであることが分かる。
【0032】
したがって、要求がオブジェクト406を変更することである場合、該要求を遂行することはできない。しかし、要求が、仮想オブジェクト106bの生成をキャンセルすることである場合には、該要求を遂行することができる。同様に、各層の高さと構築ボリューム112の最大高さを知ることにより、又は構築ボリューム112内の構築材料の層の数を知ることにより、構築ボリュームマネージャ102は、オブジェクトの空間的な配置の変更を行うことができる構築ボリューム112内の利用可能なスペースの量を判定することができる。
【0033】
例えば、仮想オブジェクト106bの生成をキャンセルするための要求、及び
図5に示す新たなオブジェクト502を生成するための要求を受信することが可能である。
【0034】
構築ボリュームマネージャ102は、仮想オブジェクト106bが未だ生成されていないこと又は部分的に生成されていないことを判定し(ブロック308)、仮想構築ボリューム108を適当に変更することにより(ブロック312)、仮想オブジェクト106bの生成をキャンセルするための要求を遂行することが可能である。構築ボリュームマネージャ102はまた、新たな仮想オブジェクト502を構築ボリューム112の未処理部分404内に生成することが可能であることを判定し(ブロック308)、構築ボリューム112の該部分404に対応する仮想構築ボリューム108を
図6に示すように変更する(ブロック312)ことが可能である。仮想オブジェクト106aは、構築ボリューム112内に既に部分的に構築されているので、仮想構築ボリューム108内の仮想オブジェクト106aは変更しない。
【0035】
既述のように、構築ボリュームマネージャ102は、新たな仮想オブジェクト502に対して、又は未だ処理されていない他の任意の仮想オブジェクトについて、1つまたは複数の幾何学的な操作(例えば、オブジェクトの回転や移動)を実行して、効率的な空間的な配置を得ると同時に、要求を遂行することができるか否かを判定するための任意の適当な基準(例えば、上述した基準)を順守することが可能である。例えば、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108内のオブジェクトの新たな空間的な配置(該仮想構築ボリューム108内に新たな仮想オブジェクトを含めることを可能にするもの)の判定を試行することが可能である。部分的に処理されたあらゆるオブジェクト(例えば、仮想オブジェクト106a)は、該オブジェクトの生成をキャンセルすることを除き、変更することはできない。
【0036】
ブロック304で、構築ボリュームマネージャ102は、例えば、適当なデータまたな制御信号を積層造形システム104へ送信することにより、修正された仮想構築ボリューム108を処理するよう積層造形システム104を制御する。
【0037】
一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、以前に受信したあらゆる制御データを無視するよう積層造形システム104に指示し、及び仮想構築ボリューム108の未処理部分604を表す新たなデータを処理するよう積層造形システム104に指示することが可能である。
【0038】
一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108の未処理部分604に対応する複数のスライスの全てを表すデータを積層造形システム104へ送信することが可能である。
【0039】
別の実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム108の単一のスライスを表すデータを送信することが可能であり、及び積層造形システム104により要求された際に仮想構築ボリューム108の次の1つのスライスを表すデータを送信することが可能である。
【0040】
更に別の実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、特定のオブジェクトのスライスのみを表すデータを、例えば、構築ボリューム内のオフセットと共に、送信することが可能である。
【0041】
積層造形技術(例えば、選択的レーザ焼結システム及びパウダーベースの3次元プリンティングシステム)の中には、構築材料の連続する複数の層の処理間に導入される遅延に敏感なものがある。例えば、層間(inter-layer)オブジェクト強度は、構築材料の複数の層又は構築材料の複数の層の様々な部分で維持される温度に関連するものとなる。したがって、一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、構築ボリューム112を変更するための要求を遂行することができるか否かを判定するまで、及びそれに続いて積層造形システム104を制御するための新たな制御データ又は信号を生成するまで、積層造形システム104による構築ボリューム112の複数の層の処理には割り込まない。
【0042】
要求を処理するために要する時間が、積層造形システム104が構築ボリューム112内の構築材料の1つの層を処理するために要する時間よりも長い場合には、構築ボリュームマネージャ102が該要求を処理している間に処理された構築材料のあらゆる層を考慮に入れる必要がある。これは、例えば、要求が、構築ボリューム内の新たなオブジェクトの追加又は複数のオブジェクトの空間的な配置の変更に関するものである場合である。
【0043】
構築ボリュームマネージャ102は、一実施形態によれば、積層造形システムのための動的なオブジェクトキュー(queue)マネージャとして使用することが可能である。
【0044】
その例示的な場合を
図7を参照して以下で説明する。
【0045】
時刻t0で、構築ボリュームマネージャ102は、仮想オブジェクト702及び仮想オブジェクト704を構築するための要求を受信する。該仮想オブジェクト702は、時間rt1を必要とすることを示す該仮想オブジェクト702に関するデータを有し、該仮想オブジェクト704は、時間rt3を必要とすることを示す該仮想オブジェクト704に関するデータを有する。
【0046】
時刻t1で、構築ボリュームマネージャ102は、仮想オブジェクト702,704を含む仮想構築ボリューム706を生成し、時刻t2で、該仮想構築ボリューム706の少なくとも一部を表すデータを積層造形システム104へ送信する。時刻t3で、積層造形システム104が、構築ボリュームの処理を開始する。
【0047】
時刻t4で、構築ボリュームマネージャ102は、更に別のオブジェクト708を構築するための要求を受信する。該仮想オブジェクト708は、時間rt2を必要とすることを示す該仮想オブジェクト708に関するデータを有する。
【0048】
構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリューム706から仮想オブジェクト704を削除して該仮想構築ボリューム706に該仮想オブジェクト708を追加することにより該要求を遂行することができることを判定する。
【0049】
時刻t5で、構築ボリュームマネージャ102は、仮想構築ボリュームのうち積層造形システム104により未だ処理されていない部分を変更して、変更された仮想構築ボリューム710を生成する。
【0050】
時刻t6で、構築ボリュームマネージャ102は、該変更された仮想構築ボリューム710の少なくとも一部を表すデータを積層造形システム104へ送信する。
【0051】
時刻t7で、積層造形システム104は、構築ボリュームの処理を完了し、このため、仮想オブジェクト702,708に対応する生成されたオブジェクトを処理済みの構築ボリュームから取り出すことが可能となる。
【0052】
時刻t8で、構築ボリュームマネージャ102は、仮想オブジェクト704を含む新たな仮想構築ボリュームを生成することが可能となり、該新たな仮想構築ボリュームを所要時間rt3で積層造形システム104により生成することが可能となる。
【0053】
本書で説明した構築ボリュームマネージャは、様々な態様で使用することが可能なものであり、及び積層造形システムにより動的な態様でオブジェクトの生成を管理するのに特に有用なものとなり得ることは自明である。これは、積層造形システムにより処理される構築ボリュームを、実質的にリアルタイムで、該構築ボリューム全体が処理されるのを待つことを必要とすることなく、変更することを可能にする場合に、特に都合の良いものである。
【0054】
図示した実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、積層造形システム104とは別個のものである。一実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、コンピュータサーバ等のローカルに又はリモートに接続された処理装置上で実行されるアプリケーションとすることが可能である。
【0055】
別の実施形態では、構築ボリュームマネージャ102は、積層造形システム104と一体化させることが可能である。
【0056】
本書で説明した実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで実施することが可能であることが理解されよう。かかるあらゆるソフトウェアは、揮発性又は不揮発性の記憶装置(例えば、ROM等の記憶装置(消去可能又は書換可能か否かには拘わらない))という形で、又は、メモリ(例えば、RAM、メモリチップ、デバイスもしくは集積回路)という形で、又は光学的又は磁気的な読み取り可能媒体(例えば、CD、DVD、磁気ディスク、又は磁気テープ)上に、格納することが可能である。かかる記憶装置及び記憶媒体は、実行時に本書で説明した実施形態を実施する1つ以上のプログラムを格納するのに適したマシン読み取り可能記憶手段の一例であることが理解されよう。したがって、実施形態によっては、本書で説明したシステム又は方法を実施するためのコードからなるプログラム及びかかるプログラムを格納したマシン読み取り可能記憶手段が提供される。
【0057】
本書(特許請求の範囲、要約書、及び図面の全てを含む)で開示した特徴の全て、及び/又は本書で開示した方法及びプロセスの各ステップの全ては、かかる特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることが可能である。
【0058】
本書(特許請求の範囲、要約書、及び図面の全てを含む)で開示した各特徴は、それと同一の、等価な、又は同様の目的を果たす代替的な特徴に置換することが(特に別段の記載がない限り)可能である。このため、特に別段の記載がない限り、本開示の各特徴は、包括的な一連の等価な又は同様の特徴の一例に過ぎないものである。