特許第6383494号(P6383494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383494周辺均等化のための最小バックグラウンド評価
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383494
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】周辺均等化のための最小バックグラウンド評価
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   A61B6/00 330Z
   A61B6/00 350D
   A61B6/00 350P
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-525066(P2017-525066)
(86)(22)【出願日】2015年11月16日
(65)【公表番号】特表2017-533768(P2017-533768A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】EP2015076662
(87)【国際公開番号】WO2016079042
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2017年12月5日
(31)【優先権主張番号】14193577.5
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ベルフネル フランク
(72)【発明者】
【氏名】ホマン ハンノ ヘイケ
(72)【発明者】
【氏名】グーセン アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ハンス インゴ
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0046814(US,A1)
【文献】 ULRICH BICK ET AL,Density Correction of Peripheral Breast Tissue on Digital Mammograms,RADIOGRAPHICS,1996年11月 1日,vol. 16, no. 6,pages 1403-1411
【文献】 TORTAJADA MERITXELL ET AL,Breast peripheral area correction in digital mammograms,COMPUTERS IN BIOLOGY AND MEDICINE,2014年 7月 1日,vol. 50,pages 32-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の関心対象を検査するためのX線検査装置であって、
対象データ及び非対象データを含む、X線イメージングにより取得された前記関心対象の画像の画像データを提供するストレージユニットと、
処理ユニットと、
を有し、前記処理ユニットが、
前記画像データから、前記対象データ及び前記非対象データをセグメント化するステップと、
等高線であり、前記関心対象の境界から一定の距離のところに延在し又は前記関心対象の一定の厚さに沿って延在するラインを決定するステップと、
前記等高線に沿って前記対象データの最小フィルタリングを実施し、それにより、前記等高線に位置する第1のピクセルのより高い強度値を、前記等高線に位置し及び前記第1のピクセルの近傍に位置する第2のピクセルのより低い強度値によって置き換えることによって、最小フィルタード画像を生成するステップと、
前記対象データの周辺均等化を実施するステップと、
前記最小フィルタード画像をローパスフィルタリングすることによってバックグラウンドデータ評価を決定するステップと、
前記バックグラウンドデータ評価を前記画像データから減算するステップと、
所望の均質なバックグラウンド減衰画像を前記画像データに加算するステップと、
を実施する、検査装置。
【請求項2】
前記処理ユニットが、最小フィルタリングに先立って、ローパスフィルタを使用して前記対象データをプレブラー処理するように構成される、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記等高線が、スペクトルデータの評価によって決定される、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記等高線は、前記非対象データ、前記画像データ、又は前記対象データから、前記関心対象の境界を識別することによって決定される、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記等高線に沿った前記対象データの前記最小フィルタリングが、前記第1のピクセルの選択、前記第1のピクセルの強度値の決定、前記等高線に位置し及び前記第1のピクセルと隣接する予め決められた数のピクセルの強度値の決定、及び前記予め決められた数の隣接するピクセルのうち最も低い強度値による、前記第1のピクセルの強度値の置き換え、を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記対象データの前記周辺均等化がローパスフィルタリングを含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検査装置が、2次元マンモグラフィ検査装置及びトモシンセシス検査装置の一方である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
処理ユニットによって実行される際、前記処理ユニットに、
対象データ及び非対象データを含む、X線イメージングにより取得された被検体の関心対象の画像の画像データにアクセスするステップと、
前記非対象データから前記対象データをセグメント化するステップと、
等高線であり、前記関心対象の境界から一定の距離のところに延在する又は前記関心対象の一定の厚さに沿って延在するラインを決定するステップと、
前記等高線に沿って前記対象データの最小フィルタリングを実施し、それにより、前記等高線上に位置する第1のピクセルのより高い強度値を、前記等高線上に位置し及び前記第1のピクセルの近傍に位置する第2のピクセルのより低い強度値によって置き換えることによって、最小フィルタード画像を生成するステップと、
前記最小フィルタード画像をローパスフィルタリングすることよってバックグラウンドデータ評価を決定し、前記バックグラウンドデータ評価を前記画像データから減算し、所望の均質のバックグラウンド減衰画像を前記画像データに加算することによって、前記対象データの周辺均等化を実施するステップと、
を実行させるためのプログラム要素を有するコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
処理ユニットによって実行される際、前記処理ユニットに、
対象データ及び非対象データを含む、X線イメージングにより取得された被検体の関心対象の画像の画像データにアクセスするステップと、
前記非対象データから前記対象データをセグメント化するステップと、
等高線であり、前記関心対象の境界から一定の距離のところに延在する又は前記関心対象の一定の厚さに沿って延在するラインを決定するステップと、
前記等高線に沿って前記対象データの最小フィルタリングを実施し、それにより、前記等高線上に位置する第1のピクセルのより高い強度値を、前記等高線上に位置し及び前記第1のピクセルの近傍に位置する第2のピクセルのより低い強度値によって置き換えることによって、最小フィルタード画像を生成するステップと、
前記最小フィルタード画像をローパスフィルタリングすることよってバックグラウンドデータ評価を決定し、前記バックグラウンドデータ評価を前記画像データから減算し、所望の均質のバックグラウンド減衰画像を前記画像データに加算することによって、前記対象データの周辺均等化を実施するステップと、
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項10】
被検体の関心対象を検査する方法であって、
対象データ及び非対象データを含む、X線イメージングにより取得された前記関心対象の画像の画像データにアクセスするステップと、
前記非対象データから前記対象データをセグメント化するステップと、
等高線であり、前記関心対象の境界から一定の距離のところに延在する又は前記関心対象の一定の厚さに沿って延在するラインを決定するステップと、
前記等高線に沿って前記対象データの最小フィルタリングを実施し、それにより、前記等高線上に位置する第1のピクセルのより高い強度値を、前記等高線上に位置し及び前記第1のピクセルの近傍に位置する第2のピクセルのより低い強度値によって置き換えることによって、最小フィルタード画像を生成するステップと、
前記最小フィルタード画像をローパスフィルタリングすることよってバックグラウンドデータ評価を決定し、前記バックグラウンドデータ評価を前記画像データから減算し、所望の均質のバックグラウンド減衰画像を前記画像データに加算することによって、前記対象データの周辺均等化を実施するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線イメージングの分野に関する。特に、本発明は、関心対象を検査する検査装置、関心対象を検査する方法、コンピュータ可読媒体、及びプログラム要素に関する。
【背景技術】
【0002】
X線イメージングにおいて、X線検査装置によって検査される関心のある対象は、特にその周辺部に、すなわちその境界領域に、一定でない厚さを有することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マンモグラフィ及び乳房トモシンセシスにおいて、患者の乳房、すなわち関心対象は、2つの圧迫パドルの間で圧迫され、X線源を使用してスキャンされることができる。周辺領域においては、乳房はパドルと接触せず、X線のX線減衰が、対象の中心領域より小さくなりうる。ビューのために単一のグレースケールウィンドウを与えるために、この効果は、補償される必要がありうる。この目的のために、いわゆる周辺均等化(peripheral equalization)方法が使用されることができる。
【0004】
ULRICH BICK ET AL: "Density Correction of Peripheral Breast Tissue on Digital Mammograms", RADIOGRAPHICS, vol. 16, no. 6, 1 November 1996 (1996-11-01), pages 1403-1411は、デジタルマンモグラムがビデオディスプレイ上でビューされる検査装置を記載する。マンモグラム上における女性乳房の暗い周辺部分を選択的に改善する(すなわち密度補正)ためのアルゴリズムが開発されている。
【0005】
関心対象の周辺領域において該関心対象の画像を改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の見地は、独立請求項に記述される。利点及び他の実施形態は、従属請求項、説明及び図面に記述される。
【0007】
本発明の第1の見地は、関心対象を検査するための検査装置に関する。検査装置は、ストレージユニット及び処理ユニットを有する。ストレージユニットは、女性乳房のような関心対象の画像の画像データを記憶し、それを処理ユニットに提供するように設計される。画像データは、関心対象に関連する対象データと、関心対象の外側の領域に関連する非対象データと、を含む。
【0008】
処理ユニットは、非対象データからの対象データのセグメント化を実施し、等高線(iso-contour)であって、関心対象の境界から一定の距離のところに延在し及び/又は関心対象の一定の厚さの領域に延在するラインを決定するようにプログラムされる。
【0009】
処理ユニットは更に、等高線に沿って対象データの最小フィルタリングを実施し、それによって、前記等高線上に位置する第1のピクセルのより高い強度値を、第1のピクセルの近傍の前記等高線上に位置する第2のピクセルのより低い強度値によって置き換えることによって、関心対象の最小フィルタード画像を生成するようにプログラムされ、かかる第2のピクセルは、例えば第1のピクセルの隣のピクセルであり、又は、第1のピクセルと第2のピクセルとの間に数ピクセル(例えば多くとも20又は30)があってもよい。こうして、新しい最小フィルタード画像が生成される。処理ユニットは更に、最小フィルタード画像の生成後、対象データの周辺均等化を実施するようにプログラムされる。
【0010】
本発明の要旨は、対象データの周辺均等化が、乳房の皮膚ラインまで等しい距離を有する経路に沿って減衰最小を見つけることによって改善されることと理解されることができる。これは、高減衰構造の周りの厚さの過大評価を低減することを助けることができ、多くの場合、これは、従来の周辺均等化によってもたらされるアンダーシュートアーチファクトを低減することを助けることができる。
【0011】
処理ユニットは、周辺均等化の間、最小フィルタード画像をローパスフィルタリングすることによってバックグラウンドデータ評価の決定を実施し、バックグラウンドデータ評価を画像データから減算し、所望の均質なバックグラウンド減衰画像を、バックグラウンドデータ評価が減算された画像データに加えるように構成され、すなわちプログラムされる。
【0012】
本発明の例示的な実施形態によれば、処理ユニットは、ローパスフィルタを使用して、最小フィルタリングに先立って対象データのプレブラー処理(事前のブラー処理、pre-blurring)を実施するように適応される。
【0013】
等高線は、検査プロシージャ中に取得されるスペクトルデータの評価によって決定されることができる。スペクトルX線イメージングにおいて、入力光子のエネルギーを判別することができる検出器が使用されることができる。このような検出器の1つの例は、少なくとも2つのエネルギー閾値を有する光子計数検出器である。X線管と検出器との間で行われるX線減衰は、主に、2つの大きな効果、すなわち光電効果及びコンプトン散乱に基づく。こうして、検出器の異なるエネルギーレベルからの測定を、これらの2つの効果に、すなわち光電効果及びコンプトン散乱により測定された減衰に、変換することが可能でありうる。
【0014】
マンモグラフィイメージングの場合、この変換は、代替として、腺組織及び脂肪組織が異なる光電/コンプトン特性を有するので、これら腺組織及び脂肪組織の交差長の評価を与えるために較正されることができる。
【0015】
測定された光子強度又はカウントを、複数の異なる材料を通る交差長の評価にマッピングするプロセスは、材料分解と呼ばれる。このプロセスは、関数を利用し、又はルックアップテーブルを利用するものでありえ、検出器素子のビームに、既知のそれぞれ異なる材料組成を挿入することによって、各検出器ごとに直接に較正される必要がありうる。こうして、2又はそれより多くのエネルギービンから受け取った検出器測定値を、較正された材料組み合わせに変換するマッピングが、導出されることができる。
【0016】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、等高線が、非対象データ、対象データ、及び/又は画像データから、関心対象の境界を識別することによって決定される。関心対象が乳房である場合、境界は、乳房の皮膚である。
【0017】
こうして、等高線は、対象の境界を識別し、関心対象まで一定の距離をもつ、境界ラインと平行なラインとして等高線を規定することによって、幾何学的に決定される。
【0018】
検査装置は、等高線に沿った対象データの最小フィルタリングが、第1のピクセルの選択、第1のピクセルの強度値の決定、第1のピクセルを通る等高線上に位置する、予め決められた数の各近傍ピクセルの各強度値の決定、を含み、それら近傍ピクセルが第1のピクセルと隣接する、というやり方で適応されることができる。対象データの最小フィルタリングによって生成される画像(すなわち「最小フィルタード画像」)において、より低い強度値が存在する場合、第1のピクセルの強度値を、予め決められた数の近傍ピクセルの最も低い強度値と置き換えることが実施される。第1のピクセルの強度値が、予め決められた数の近傍ピクセルの最も低い強度値より低い又はそれに等しい場合、強度値の置き換えは行われない。元の画像、すなわち元の対象データは、この最小フィルタリングプロセスの間、変更されなくてもよいが、最小フィルタード画像が生成される。
【0019】
その後、対応する最小フィルタリングが、第1のピクセルの隣のピクセルについて実施され、これは、(近傍ピクセルが、第1のピクセルの隣のピクセルより低い強度値を有する場合、)対象データの最小フィルタリングによって生成される画像の更新を生じさせることができ、かかる更新は、対象の周辺領域のすべてのピクセルが最小フィルタリングされ、最小フィルタード画像が生成されるまで実施される。
【0020】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、対象データの周辺均等化は、ローパスフィルタリングを含む。
【0021】
検査装置は、2次元マンモグラフィ検査装置又はトモシンセシス検査装置として適応されることができる。
【0022】
本発明の別の見地は、関心対象を検査する方法に関し、方法において、対象データ及び非対象データを含む関心対象の画像の画像データが取得される。次に、非対象データからの対象データのセグメント化が実施され、等高線であって、関心対象の境界から一定の距離のところに延在し及び/又は関心対象の一定の厚さに沿って延在するラインが、決定される。
【0023】
対象データの最小フィルタリングは、等高線に沿って実施され、それによって、等高線上に位置する第1のピクセルのより高い強度値を、該等高線上に位置し及び第1のピクセルの近傍に位置する第2のピクセルのより低い強度値によって置き換え、その結果として、最小フィルタード画像を与える。その後、対象データの周辺均等化が実施される。
【0024】
本発明の別の見地は、処理ユニットによって実行される際、処理ユニットに上述の(及び詳しく後述される)方法の各ステップを実行させるように命じるように適応されるプログラム要素を含むコンピュータ可読媒体に関する。
【0025】
本発明の1つの見地により、処理ユニットによって実行される際、処理ユニットに上述の(及び詳しく後述される)方法の各ステップを実行させるように適応されるプログラム要素が提供される。
【0026】
本発明のこれらの及び他の見地は、以下に記述される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の例示的な実施形態による検査装置を示す図。
図2】乳房の3つの画像を示す図。
図3】本発明の例示的な実施形態による方法の各ステップを示す図。
図4】ピクセルが等高線に沿って配置されている該等高線を示す図。
図5】本発明の例示的な実施形態による方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面は、概略的であり、一定の縮尺で描かれていない。同じ参照符号が、それぞれ異なる図面において使用されている場合、それらは、同一の又は同様の構成要素に関連しうる。しかしながら、同様の又は同一の構成要素は、それぞれ異なる参照符号よって標識化されることもできる。
【0029】
図1は、本発明の例示的な実施形態による検査装置100を示す。検査装置は、スペクトルX線検査装置、マンモグラフィ検査装置、及び/又はトモシンセシス検査装置として適応されることができる。
【0030】
検査装置100は、X線源123を有し、X線源123からのX線は、関心対象102、すなわち女性乳房に向かって放出されることができる。乳房は、2つ圧迫パドル又は圧迫プレート121、122の間に位置付けられる。乳房のより中心の領域124は、充分に圧迫され、一定の厚さを有し、乳房のより周辺の領域125は、部分的にのみ圧迫され、周辺縁部106、すなわち乳房の境界ライン又は皮膚ラインに向かって減少する厚さを有する。
【0031】
関心対象の反対側には、関心対象を通過したX線源の放射線を検出する検出器アレイ126が配置されることができる。
【0032】
検査装置100は、ストレージユニット101に接続される処理ユニット103によって制御され、検査装置によって取得される画像データが、ストレージユニット101に記憶される。
【0033】
マンモグラフィ及び乳房トモシンセシスにおいて、放射線医は、単一グレースケールレベル及びウインドウを使用して、すべての適切な画像の詳細を見ることを望むことがある。乳房102の減衰は、皮膚ライン106に向かって延在する非圧迫領域125ではより低く、いわゆる周辺均等化が、好適な平均乳房減衰まで減衰レベルを上げるために実施されることができ、これは、単一レベル/ウィンドウセッティングにフィットする。周辺均等化は、個別の領域の乳房(バックグラウンドデータ評価)の評価された平均減衰を減算し、一般に一様である所望のバックグラウンド減衰レベルを加算することによって、実施されることができる。バックグラウンドデータ評価を得るやり方は、ローパスフィルタリングによって、対象データ、すなわち乳房の画像をブラー処理することである。
【0034】
しかしながら、画像をブラー処理することは、より高い減衰を有する組織が、評価される平均減衰を増大させることを意味する。過大評価された値で画像を補正することは、特に高コントラスト構造の近くにアンダーシュートを引き起こしうる。これは、図2の画像202に示される(2つの矢印を参照)。参照数字201は、均等化のない元の画像を示す。
【0035】
本発明の例示的な実施形態により、最小フィルタリングが、等高線104に沿って実施され、かかる等高線104は、皮膚ライン106まで一定の距離を有するカーブしたラインである。理想的な例では、脂肪バックグラウンド組織のみが考慮され、脂肪バックグラウンド組織は、より少ない減衰を有し、腺組織のような構造ではなく、線組織は、より高い密度を有しうるがボリューム内で必ずしもより長い交差長をもたない。評価からこれらの構造を得ることは、乳房厚さの過大評価及び更にアンダーシュートを低減することができる。
【0036】
本発明の例示的な実施形態によれば、可能な場合、バックグラウンド評価のためのブラー処理の方法は、対象データから高コントラスト組織ピクセル値を取り除くことによって拡張される。
【0037】
これは、第1のピクセルの近傍にあるピクセルの中から最小強度のピクセル値を見つけることによって、行われることができ、すべてのこれらのピクセルは、皮膚ラインまでほぼ同じ距離を有し、及び/又は乳房の厚さが経路に沿って一定である該経路上に位置する。このアプローチは、バックグラウンドデータ評価から高減衰ピクセル値を取り除き、それらを低減衰組織ピクセル値で置き換えることができる。理想的な例において、これらは、脂肪組織が存在する場合には脂肪組織値である。
【0038】
最小フィルタリングの後、通常の周辺均等化が実施されることができ、これは、図2のピクチャ203から分かるように、より少ないオーバーシュートをもたらすことができる。更に、周辺領域におけるより高減衰構造(例えば腺組織)の強度値は、充分に圧迫された領域の対応する構造とより適合したものになる。
【0039】
ダイアグラム204は、画像201(プロット205を参照)、画像202(プロット206を参照)、及び本発明の例示的な実施形態(プロット207を参照)に従って処理された画像203に関する、交差208に沿ったピクセル強度を示す。ダイアグラム204から分かるように、プロット207は、元の画像(プロット205)より及び最小フィルタリングなしの従来の周辺均等化によって処理された画像202より、一層コンスタントなピクセル値を反映する。
【0040】
図3は、対象データ107及び非対象データ108を含む乳房102の元の画像データを示す。分離ステップにおいて、画像データは、2つのデータセットに分けられ、一方は、対象データを含み、他方は、非対象データを含む。対象データから生成された画像において、等高線104が規定され、等高線104は、関心対象102の皮膚ライン106から一定の距離105を有する。
【0041】
本発明の1つの見地によれば、最小フィルタリングが、乳房の複数の等高線に沿って実施され、それらの等高線は、乳房の周辺領域(乳房が一定でない厚さをもつところ)に位置する。方法は、それらの等高線に沿った乳房の厚さがほぼ等しいものであるという考えに基づく。更に、低減衰の脂肪組織は、高減衰の腺組織よりもバックグラウンド評価として適切でありえ、従って、脂肪組織が好ましい。最小フィルタリングは、選択された第1のピクセルの局所的な近傍においてのみ実施されることができ、従って、乳房バックグラウンドのバリエーションは、考慮される必要がない。最小フィルタリングが高減衰組織のみを見出す場合、フィルタ出力は、従来のアプローチと比べて少なくとも悪くはならない。
【0042】
スペクトルトモシンセシスの場合、このアプローチは、以下のように洗練されることができる。測定中に取得されるデータから、どれくらいの量の腺組織及び脂肪組織が対応するX線によって横切られたかについての評価が導出されることができる。正確な厚さ均等化のために、ボリュームの各部分における脂肪組織量を再構成する必要がありえるが、それは、制限された切断角度のため可能でないことがある。その代わりに、脂肪組織ボリュームが、例えばシフト加算方法又は反復法のような標準方法によって、近似的に再構成されることができ、これらの値は、厚さ均等化のための脂肪バックグラウンドの近似的な評価として使用されることができる。代替として、乳房の近似高さマップが、3Dで、例えばボクセルを通る異なる交差長の平均で、再構成されることができ、これらの値は、最小フィルタリングのための等高線評価として使用されることができる。
【0043】
更に、スペクトルイメージングは、2Dマンモグラフィイメージングの厚さ均等化問題を解決することを助けることもできる。乳房高さマップは、国際公開第2014097026A1号明細書に記載されるように生成されることができ、所与の最小フィルタリング方法のための実際の等高線ラインを導き出すために使用されることができる。代替として、測定された乳房高さの値は、圧迫パドルの間の距離の差及び所与のX線で測定された乳房厚さに従って、均質な減衰(例えば脂肪組織の減衰)を加算することによって、周辺均等化を実施するために使用されることができる。言い換えると、X線ビーム内の空気との交差長は、例えば脂肪組織で仮想的に充填され、これは、均質な画像外観につながる。
【0044】
図4は、複数のピクセルを横切る等高線104を示す。等高線104に沿った対象データの最小フィルタリングの間、等高線上の第1のピクセル109が識別され、その強度値が決定される。更に、近傍の第2のピクセル110の強度値が、決定され、これらの強度値のうちの1つが第1のピクセル109の強度値より低い場合、第1のピクセルの値が、この(最小)強度値によって置き換えられ、こうして、最小フィルタード画像を生成する。この最小フィルタリングステップの間に考慮される第1のピクセル及び近傍のピクセルは、すべて等高線104上にあり、仮想ボックス401内に位置し、すなわち、第1のピクセル109から最大距離以下のところにある。
【0045】
この最小フィルタリングステップの後、ボックス401は、(元の)対象データ内を、等高線104に沿って1ピクセル分遠くに移動され、「新しい」第1のピクセルは、現在ピクセル111である。同じプロシージャが、現在ピクセル111について実施され、これは結果的に、最小フィルタード画像において、ピクセル111の値を、(1ピクセル分右に移動された)ボックス401内の近傍ピクセルの中の1つのより低いピクセル値と置き換える。この方法は、等高線104上の各ピクセルについて実施されることができ、その後、皮膚ラインから1ピクセル分近い又遠い第2の等高線が決定される。関心対象の周辺領域のすべてのピクセルが、最小フィルタリング中に「第1のピクセル」になったのち、最小フィルタリングはストップすることができる。
【0046】
図5は、本発明の例示的な実施形態による方法のフローチャートを示す。ステップ501において、画像データが、検査装置によって取得され、ステップ502においてストレージユニットに記憶される。初期画像データからの対象データ(すなわち乳房)及び非対象データのセグメント化が、ステップ503において、適当なセグメント化方法を使用することによって、実施される。対象データから、乳房皮膚ラインまで同じ距離を有する、及び/又は、乳房が一定の厚さを有するラインに沿って延びる、等高線が導出される(ステップ504)。最小フィルタリングは負のノイズスパイクを受けやすいので、ステップ505において、対象データ又は画像は、ノイズピークを除くために小さいローパスフィルタによりブラー処理される。
【0047】
ステップ506において、各々の画像ピクセルを最小フィルタリングすることによって、出力画像が生成され、それは、所与の距離について同じ等高線ラインに沿って最小ピクセル値を調べることを含み、例えば両方向において15又は20のピクセルである。これは、乳房の等高線に沿ってより少ない高強度ピクセルを有し及びより多くのバックグラウンドピクセルを有する画像を与える。ステップ507において、画像は、乳房厚さの評価を得るために、1又は複数の周辺均等化方法により処理されることができ、それは、ステップ508において、最終の補正のために使用される。
【0048】
厚さ評価は複数の構造を組み込みうるので、最小フィルタード画像自体が適さないことがある。平均レベルの評価のためのローパスフィルタリングが、最小フィルタ後もなお必要とされることがある。
【0049】
本発明は、図面及び上述の説明において詳細に示され記述されているが、このような図示及び説明は、制限的なものではなく、説明的又は例示的なものと考えられることができる。本発明は、開示された実施形態に制限されない。
【0050】
開示された実施形態に対する他の変更例は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、請求項に記載の本発明を実施する際に当業者によって理解され達成されることができる。請求項において、「含む、有する(comprising)」という語は、他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を除外しない。単一プロセッサ又は他のユニットは、請求項に列挙されるいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される光学記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶され/配布されることができるが、他の形態で、例えばインターネット又は他のワイヤード又はワイヤレス通信システムを通じて、配布されることができる。請求項における任意の参照符号は、請求項の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。
【符号の説明】
【0051】
100 検査装置、101 ストレージユニット、102 関心対象、103 処理ユニット、104 等高線、105 一定の距離、106 周辺縁部(皮膚ライン)、107 対象データ、108 非対象データ、109 第1のピクセル、110 第2のピクセル、111 ピクセル、121 圧縮プレート、122 圧縮プレート、123 X線源、124 中心領域、125 周辺の非圧迫領域、201 元の画像、202 画像、203 画像、204 ダイアグラム、205 プロット、206 プロット、207 プロット、208 交差、401 ボックス、501 方法ステップ、502 方法ステップ、503 方法ステップ、504 方法ステップ、505 方法ステップ、506 方法ステップ、507 方法ステップ、508 方法ステップ。
図1
図2
図3
図4
図5