(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1コイル部材及び前記第2コイル部材は、互いに接合することにより複数の誘電加熱コイルを形成するように、複数のコイル部材からなる一組のコイル部材をそれぞれ有し、
前記一組のコイル部材において、複数のコイル部材の接合部は、接合相手側と対をなす少なくとも1本のステーにより配列され、
前記対をなす一方のステーには、貫通孔が形成され、他方のステーには、前記貫通孔に挿入される位置決めピンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された後熱処理装置。
【背景技術】
【0002】
騒音、振動等の発生の低減、或いは保守コストを低減するため、レール継ぎ目を溶接してロングレールとする技術が一般化されている。
図10に基づき説明すると、少なくとも2本のレールR1、R2が、その端面間で溶接され、溶接部Wを有するレールRとなる。
図10に示すようにレールRは、車輪との接触が生じる頭部r1、枕木と接する脚部r2、頭部r1と脚部r2とを連結する柱部r3を有する。
【0003】
溶接部Wにおいては、重荷重である貨物車両を始めとした車両の繰り返しの通過によりレールの柱部r3中に、又は柱部r3を起点として水平方向に疲労亀裂が発生する場合がある。この疲労亀裂は、溶接部Wにおいて柱部r3に生じる鉛直方向(周方向)の強い引張残留応力が影響する。この引張残留応力は、溶接の際の溶接部Wとその周辺との温度勾配により生じるものである。
【0004】
このような残留応力を低減するため、特許文献1には、レールの溶接中心から長さ方向に所定距離(20mm以上300mm以下)離間して配置され、レールの全周を加熱する誘導加熱コイルを備える後熱処理装置が開示されている。
この装置によれば、電磁誘導コイルを用いた速い加熱速度の加熱により溶接部に存在する残留応力を効果的に低減することができる。
また、誘導加熱コイルがレールの全周を加熱するため、レールの長さ方向の残留応力の増加を抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された方法によりレール溶接部に対し後熱処理を施す場合、従来は作業員の手作業により溶接部中心に基づく所定位置に誘導加熱コイルを配置し加熱作業を行っていた。
しかしながら、誘導加熱コイルの配置作業が前記のように人的作業である場合には、煩わしい上に、経験を積んだ作業員でなければ適切な位置からのずれが生じる虞があり、後熱処理後の品質が安定しないという課題があった。
即ち、後熱処理後に安定した品質のレールを効率的に得るには、溶接部中心を基準とする所定位置において自動的に誘電加熱コイルを配置し、加熱処理することが望ましい。
しかしながら、特許文献1に開示された装置にあっては、誘電加熱コイルを自動的に配置し後熱処理する方法については開示されていなかった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、レールの溶接部に後熱処理を行う後熱処理装置において、溶接部に基づく所定位置に誘電加熱コイルを自動的に配置し、レールの適切な位置で加熱処理を行うことのできる後熱処理装置及び後熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係る後熱処理装置は、溶接されたレールの後熱処理を行う後熱処理装置であって、前記レール上の溶接部の位置を検出する溶接部検出手段と、後熱処理の際、互いに接合されることにより前記レールの断面相似形をなす誘導加熱コイルを形成し、前記溶接部検出手段により検出された溶接部に基づくレールの所定位置に、前記レールの全周を覆うように配置される第1コイル部材及び第2コイル部材と、
第1コイル部材及び第2コイル部材がこの溶接部検出手段により検出された溶接部の位置に基づくレールの所定位置に配置されるよう、第1コイル部材及び第2コイル部材をレールの長手方向に沿って移動させる移動手段と、前記第1コイル部材を前記レールに対し所定距離を空けた位置まで移動させる第1コイル移動手段と、前記第2コイル部材を前記レールに対し所定距離を空けた位置であって、且つ前記第1コイル部材と接合する位置まで移動させる第2コイル移動手段と、前記第1コイル移動手段及び第2コイル移動手段により移動され互いに接合した第1コイル部材と第2コイル部材との接合部を押さえ込むクランプ手段と、前記クランプ手段により前記接合部が押さえ込まれた状態で、前記第1コイル部材及び前記第2コイル部材により形成された誘導加熱コイルに所定の電流を印加する電流印加手段と、を備えることに特徴を有する。
【0009】
尚、前記第1コイル移動手段は、前記レールに対し直交する方向に敷設された第1ガイドレールと、前記第1コイル部材を前記第1ガイドレールに沿って移動させる第1スライダと、前記第1スライダの前記第1ガイドレール上の所定の位置を検出する第1センサとを有し、前記第2コイル移動手段は、前記レールに対し直交する方向に敷設された第2ガイドレールと、前記第2コイル部材を前記第2ガイドレールに沿って移動させる第2スライダと、前記第2スライダの前記第2ガイドレール上の所定の位置を検出する第2センサとを有し、前記第1センサ及び第2センサの検出動作に基づき、前記第1ガイドレール及び第2ガイドレールに沿った前記第1スライダ及び第2スライダの移動が停止されることが望ましい。
【0010】
また、前記第2コイル移動手段は、更に前記第2スライダに固定された第1支持部材と、前記第1支持部材に対し前記レールの長さ方向と直交する方向に進退自在に支持されると共に前記第2コイル部材を支持する第2支持部材と、前記第1支持部材と第2支持部材との間に設けられた弾性部材とを有し、前記第2センサは、前記第1コイル部材に前記第2コイル部材が当接し、さらに前記弾性部材を圧縮しながら前記第2スライダが所定距離進んだ位置を検出し、前記第2スライダの移動が停止されることが望ましい。
【0011】
また、前記第1コイル部材及び前記第2コイル部材は、互いに接合することにより複数の誘電加熱コイルを形成するように、複数のコイル部材からなる一組のコイル部材をそれぞれ有し、前記一組のコイル部材において、複数のコイル部材の接合部は、接合相手側と対をなす少なくとも1本のステーにより配列され、前記対をなす一方のステーには、貫通孔が形成され、他方のステーには、前記貫通孔に挿入される位置決めピンが形成されていることが望ましい。
【0012】
また、前記クランプ手段は、前記第1コイル部材と第2コイル部材との接合部において前記一方のステーを他方のステーに対して押さえ込むクランプアームと、前記クランプアームを回動自在に支持するリンク機構と、前記クランプアームを前記リンク機構により回動させる回動駆動手段とを有することが望ましい。
【0013】
このような構成によれば、溶接部検出手段によりレールの溶接部の位置を検出するため、その中心位置に基づき第1コイル部材と第2コイル部材のレール長さ方向の位置を自動的に設定することができる。
また、前記レール長さ方向の位置において、レールの全周を囲むように第1コイル部材と第2コイル部材とが互いに当接され、例えば第1コイル部材側に設けられたステーの貫通孔に第2コイル部材側に設けられたステーの位置決めピンが挿入される。これにより、第1コイル部材と第2コイル部材とを互いに位置ずれすることなく接合することができる。
また、弾性部材の付勢力により第2コイル部材を第1コイル部材に対し押さえ付けるため、接合部を密着させることができる。
更に、クランプアームにより前記一方のステーを他方のステー側に押さえ込みクランプ固定するため、第1コイル部材と第2コイル部材とを強固に接合することができ、形成された誘導加熱コイルに対し加熱処理に必要な大電流を印加することができる。
また、溶接部の位置の検出からレールの後熱処理までを自動的に行うことができるため、後熱処理後に安定した品質のレールを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レールの溶接部に後熱処理を行う後熱処理装置において、溶接部に基づく所定位置に誘電加熱コイルを自動的に配置し、レールの適切な位置で加熱処理を行うことのできる後熱処理装置及び後熱処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る後熱処理装置及び後熱処理方法の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。尚、本発明に係る後熱処理装置及び後熱処理方法は、溶接により繋いだレールの溶接部を自動的に検出し、更に加熱処理を行うものであって、それによりレール溶接部に残存していた引張残存応力を除去するためのものである。
【0020】
図1は、本発明の後熱処理装置の平面図である。また、
図2は
図1の後熱処理装置の側面図であり、
図3は
図1のA−A矢視断面図である。
図示する後熱処理装置1は、溶接によって連結されたレールR(被熱処理対象)が上方に配置される第一基台15と、前記第一基台15上にレールRと平行に(Y方向に)敷設された一対のガイドレール2とを備える。
【0021】
また後熱処理装置1は、前記ガイドレール2に沿って移動可能なスライダ2aによって支持され、ガイドレール2に直交する方向(X方向)に長く形成された第二基台3を備える。第二基台3は、スライダ2aによってガイドレール2の長手方向(Y方向)に沿って移動可能となされている。
尚、図示しないが、ガイドレール2内には、例えばボールねじとそれを軸周りに回転させるステッピングモータが内蔵され、前記ボールねじの回転によりスライダ2aが移動する構造となっている。また、以下の説明において、他のガイドレールとそれに沿って移動するスライダについても同様の構成を採用することができる。
【0022】
また、
図3に示すように前記第二基台3上には、レールRの左右両側において、レールRに直交する方向(X方向)に一対のガイドレール4(第1ガイドレール、第1コイル移動手段)と一対のガードレール5(第2ガイドレール、第2コイル移動手段)とがそれぞれ敷設されている。
一対のガイドレール4上には、スライダ4a(第1スライダ)を介して箱形の支持台6がスライド移動可能に設けられている。また、支持台6の上には、第三基台7が配置され、この第三基台7上には図示しない高周波インバータ装置から高周波電流が供給される整合トランス装置8(高周波変流器、電流印加手段)が配置されている。
【0023】
整合トランス装置8の(レールR側の)一側面にはその出力端子に接続された導電線を内設した支持板22が設けられ、支持板22及び板状の支持部材である複数のコイルサポート9によって第1コイル部材10Aが支持されている。尚、コイルサポート9は、軽量かつ強度の高い材料、例えばFRPによって形成されている。
【0024】
前記のように第1コイル部材10Aは整合トランス装置8の一側面側に支持されるため、整合トランス装置8とともにガイドレール4に沿ってX方向に移動可能とされ、レールRに対し進退可能とされている。
前記第1コイル部材10Aは、
図3に示すようにレールRの断面相似形を2分割した一方の形(本実施形態では左右対称ではない)を有しており、レールRに近接することにより、その片側周囲を、所定間隔を空けて覆うことができるようになっている。前記整合トランス装置8と第1コイル部材10Aとは前記支持板22に内設された導電線を介して電気的に接続されている。
【0025】
また、
図1に示すように第三基台7上には、前記第1コイル部材10AがレールRに近接する際、適切な近接位置を検出するためのドグシャフト20、及びセンサ21(第1センサ、第1コイル移動手段)が設けられている。
前記ドグシャフト20は、レールR側に突出して設けられ、その先端がレールRに当接することによりセンサ21が検出動作するようになっている(スライダ4aがガイドレール4上の所定位置にあることを検出する)。また、センサ21が動作した際の第1コイル部材10Aの位置が、その適切な位置とされる。
【0026】
一方、ガイドレール5上には、スライダ5a(第2スライダ)を介して矩形板状の第四基台11が水平に配置され、X方向にスライド移動可能となっている。
図3に示すように前記第四基台11上には、鉛直方向に高く延びるブラケット12(第1支持部材)が設けられ、
図1、
図3に示すようにこのブラケット12の垂直面12aがレールR側に向けられている。
前記垂直面12aの上下左右の4箇所には、レールR側に突出するドグシャフト13が取り付けられている。また、これら4本のドグシャフト13の先端側により、クランプ取り付け板14(第2支持部材)が所定範囲内でX方向に進退自在に支持されている。そのため、ブラケット12の垂直面12aとクランプ取り付け板14との間の距離は、前記所定範囲内で可変とされている。また、前記4本のドグシャフト13の中央には、一端側がブラケット12に固定され、他端側がクランプ取り付け板14に固定されたスプリング24(弾性部材)が設けられている。前記スプリング24の伸長方向の付勢力により、第2クランプ部材10Bが第1クランプ部材10Aに当接しない間は、前記ブラケット12の垂直面12aとクランプ取り付け板14との間の距離は、可変範囲内で最大の状態となされている。
【0027】
また、前記クランプ取り付け板14は、レールRに対し垂直に片面14aを向けた状態で保持されている。前記クランプ取り付け板14のレールR側に臨む面14aにおいて、その上部及び下部には、それぞれ油圧クランプ装置16、17(回転駆動手段、クランプ手段)が設けられている。油圧クランプ装置16、17は、それぞれクランプアーム18、19を有し、それらはリンク機構18a、19aによって回動可能となっている。
また、前記クランプ取り付け板14の面14aにおいて、その中央部には、例えばFRPからなる複数のコイルサポート32が取り付けられ、それらコイルサポート32によって第2コイル部材10Bが支持されている。第2コイル部材10Bはガイドレール4に沿ってX方向に移動可能とされ、レールRに対し進退可能とされている。
【0028】
前記第2コイル部材10Bは、第1コイル部材10Aと結合することでレールRの断面相似形となる形状となっており、双方が近接し
図3のように接合することでレールRに対し所定の間隔を保った状態で、その周囲を完全に覆うことができる。
尚、前記したように前記ブラケット12とクランプ取り付け板14との間にはスプリング24が設けられており、第2コイル部材10Bが第1コイル部材10Aに当接した際の衝撃を吸収するようになされている。
また、前記ブラケット12には、センサ23(第2センサ、第2コイル移動手段)が取り付けられている。ガイドレール5に沿って第2コイル部材10BがレールRに近接し、第1コイル部材10Aに当接すると、スプリング24の反発力に抗して更にスライダ5a(ブラケット12)が所定距離を進みセンサ23がこれを検出するようになっている(ガイドレール5上のスライダ5aの位置を検出する)。センサ23が検出動作した際にスライダ5aの移動は停止し、これとともに停止したブラケット12がスプリング24の付勢力によりクランプ取り付け板14を押圧する。これにより第2コイル部材10Bが第1コイル部材に対し接合部において圧着されるように構成されている。
【0029】
また、
図1、
図2に示すように第一基台3上には、ブラケット30を介してX方向に延びるガイドレール31が設けられ、このガイドレール31に沿ってスライドするスライダ31a上にレーザ変位計35(溶接部検出手段)を保持するアーム33が設けられている。レーザ変位計35が発射するレーザ光は垂直下方に向けられており、その反射光を受光することにより変位を測定することができる。
この構成において、レーザ変位計35は、ガイドレール2によりY方向に移動可能であり、ガイドレール31によりX方向に移動可能となっている。そのため、レーザ変位計35は、レールRの長さ方向のいずれの位置においてもレールRの上を横切って、レールR表面の高さ変位を見ることができる。
【0030】
続いて、
図4、
図5に基づき第1コイル部材10A、及び第2コイル部材10Bの構成についてより詳しく説明する。
図4は分離状態の第1コイル部材と第2コイル部材の斜視図であり、
図5は第1コイル部材10Aと第2コイル部材10Bとを接合した状態の斜視図である。
図4、
図5に示すように第1コイル部材10Aと第2コイル部材10Bとは接合した状態で例えば4つの一巻きの誘導加熱コイル10a、10b、10c、10dを形成するように、それぞれ分割された銅管からなる一組のコイル部材10a1、10b1、10c1、10d1と、一組の10a2、10b2、10c2、10d2とを有している。
【0031】
第1コイル部材10Aにおいて、一組のコイル部材10a1、10b1、10c1、10d1の上端は、それらを揃えた状態で保持するための一本の角棒状のステー25に固定され、下端は、それらを揃えた状態で保持するための一本の角棒状のステー26に固定されている。また、前記ステー25の両端部には貫通孔25aがそれぞれ形成され、ステー26の両端部には貫通孔26aがそれぞれ形成されている。
【0032】
一方、第2コイル部材10Bにおいて、一組のコイル部材10a2、10b2、10c2、10d2の上端は、それらを揃えた状態で保持するための一本の角棒状のステー27に固定され、下端は、それらを揃えて保持するための一本の角棒状のステー28に固定されている。また、前記ステー27の両端部には位置決めピン27aがそれぞれ設けられ、ステー28の両端部には位置決めピン28aがそれぞれ設けられている。
【0033】
図5に示すように、第1コイル部材10A側の一組のコイル部材10a1、10b1、10c1、10d1の上端は、第2コイル部材10B側の一組のコイル部材10a2、10b2、10c2、10d2の上端とそれぞれ互いに当接する。また、第1コイル部材10A側の一組のコイル部材10a1、10b1、10c1、10d1の下端は、第2コイル部材10B側の一組のコイル部材10a2、10b2、10c2、10d2の下端とそれぞれ互いに当接する。
【0034】
このとき、コイル上端側のステー25とステー27とは対をなし、コイル下端側のステー26とステー28とは対をなす。そして、ステー25両端の貫通孔25aにステー27両端の位置決めピン27aが挿入され、ステー26両端の貫通孔26aにステー28両端の位置決めピン28aが挿入される。これにより、4つの各誘導加熱コイル10a、10b、10c、10dの接合部の位置ずれが生じることがない構造となっている。
また、前記貫通孔25a、26aに位置決めピン27a、28aが挿入された状態で、前記の油圧クランプ装置16、17が作動し、クランプアーム18によりステー25をステー27側に押さえ付け、クランプアーム19によりステー26をステー28側に押さえ付ける(接合部をクランプする)ようになっている。
また、第1コイル部材10Aと第2コイル部材10Bとの接合部には、電気的接続を確実なものとするために銀板部材29が設けられている。この銀板部材29はメンテナンス性向上のために取替自在に設けられることが望ましい。
【0035】
前記のようにして接合された第1コイル部材10Aと第2コイル部材10Bは、前記のように4つの誘導加熱コイル10a、10b、10c、10dを形成する。これらは、高周波電流が供給されることによりレールRの所定位置の全周を加熱するものである。
これらの誘導加熱コイル10a、10b、10c、10dを使用する際には、レールRの溶接中心を挟んだ両側にそれぞれ2つずつ、この溶接中心から長さ方向に所定距離離間して配置されることになる。
【0036】
また、後熱処理装置1は、前記レーザ変位計35の検出結果に基づきレール溶接部Wの位置検出を行うとともに、全体の動作制御を行うコンピュータからなる制御部50(制御手段)を備えている。
制御部50は、例えば作業員が操作できる操作パネル(情報表示機能を備えたタッチパネルなど)を有し、溶接部Wの検出に用いるビード高さの閾値の入力設定などを行うことができるように構成されている。
【0037】
続いて、本発明に係る後熱処理装置の動作について
図6のフローに基づき、
図7(a)〜(c)並びに
図8(a)〜(d)の状態遷移の図を用いながら説明する。
先ず、後熱処理装置1上に被後熱処理対象であるレールRが配置されると、制御部50は、図示しないセンサによりレールRが配置されたことを検出する(
図6のステップS1)。
【0038】
次いで、制御部50は、レールRの溶接部Wを検出するために
図7(a)に示すようにスライダ31aがガイドレール31上をレールRに向けて(X方向に)移動するよう制御し、レーザ変位計35からのレーザが例えばレールRの頭頂面に当たる位置で停止させる(
図6のステップS2)。尚、本実施の形態ではレールRの頭頂面にレーザ光を照射するものとするが、レール底面以外であれば、いずれの位置でもよい。
レーザ変位計35のX方向の位置が決定すると、制御部50はスライダ2aをガイドレール2に沿って所定速度で移動させる。即ち、
図7(b)に示すようにレーザ変位計35がレールRの頭頂面に対しレーザ光を当てた状態でレールRに沿って移動するよう制御する(
図6のステップS3)。
【0039】
ここで、レーザ変位計35の送りピッチをp、溶接部Wのビード高さ閾値をt、ビード幅閾値を5pとした場合、制御部50は、
図8に模式的に示すようにビード高さ閾値tよりも大きな変化が5回(5pの長さ分)連続した場合に、5つ前の測定地点を溶接部Wの開始地点として検出する(
図6のステップS4)。
その後、ビード高さ閾値tよりも小さな変化が5回(5pの長さ分)連続した場合に、5つ前の測定地点を溶接部Wの終了として検出し、
図7(c)に示すようにそれら開始地点と終了地点の中央を溶接中心と認識してレール長さ方向の位置決めを行う(
図6のステップS5)。
【0040】
尚、このようなレーザ光を用いた検出方法によれば、一般的なビード高さ1mmよりも低い溶接部の場合であっても、ビード高さ閾値tを0.5mm程度まで引き下げることにより、より低い高さの溶接部にも対応することができる。
また、ビード高さ閾値tよりも大きな変化が5pの長さ続いた場合に溶接部Wを認識するため、
図8に示すスパッタなどの幅の小さい異物の誤検出を防止することができる。
【0041】
溶接部Wのレール長さ方向中心位置が決定されると、制御部50はその位置(Y方向の位置)に第1コイル部材10A、及び第2コイル部材10Bの(Y方向の)中心位置を合わせ、
図9(a)の状態から先ず第1コイル部材10Aを(X軸に沿って)レールR側に移動開始させる。
図9(b)に示すようにドグシャフト20がレールRに当接するとセンサ21が作動し、第1コイル部材10AのX方向の移動が停止される(
図6のステップS6)。
【0042】
一方、制御部50は第2コイル部材10Bを(X軸に沿って)レールR側に移動開始させる。そして、第2コイル部材10Bが第1コイル部材10Aに当接し、ステー25の貫通孔25aにステー27の位置決めピン27aが挿入され、ステー26の貫通孔26aにステー28の位置決めピン28aが挿入される。更に、スプリング24の反発力に抗してスライダ5aがガイドレール5に沿って所定距離進むと、センサ23が作動しスライダ5aの移動が停止される(
図6のステップS7)。
ここで、第2コイル部材10Bが第1コイル部材10Aに接触する際、スプリング24が衝撃を吸収するため、コイルに対する機械的ダメージは大幅に軽減され、移動停止後の第1コイル部材10A及び第2コイル部材10Bの位置ずれが防止される。
また、スプリング24が圧縮された状態で第2コイル部材10Bが第1コイル部材10Aに接合されるため、スプリング24の伸長方向の付勢力により第2コイル部材10Bは第1コイル部材10Aに対し圧着される。
【0043】
次いで、
図9(c)に示すように油圧クランプ装置16が作動し、リンク機構18aによってクランプアーム18が回動し、アーム先端によって貫通孔25aを有するステー25側をステー27側に対して押さえ込む(接合部をクランプする)。また、油圧クランプ装置17が作動し、リンク機構19aによってクランプアーム19が回動し、アーム先端によって貫通孔26aを有するステー26側をステー28側に対して押さえ込む(接合部をクランプする)。
これにより
図9(d)に示すように、強固に第1コイル部材10Aと第2コイル部材10Bとが結合され、レールRの所定位置の全周を覆う誘導加熱コイル10a、10b、10c、10dが形成される(
図6のステップS8)。
【0044】
また、このとき、誘導加熱コイル10a、10b、10c、10dは、レールRの溶接部Wの中心を挟んだ両側にそれぞれ2つずつ、この溶接中心から長さ方向に所定距離(例えば20mm以上300mm以下)離間して配置されることになる。即ち、このように溶接中心から所定距離離間した位置からの電磁誘導コイルを用いた速い加熱速度の加熱により、溶接部に存在する残留応力を効果的に低減することができる。また、誘導加熱コイル10a、10b、10c、10dがレールRの全周を加熱するため、レールRの長さ方向の残留応力の増加を抑制することができる。
【0045】
続いて、図示しない高周波インバータ装置から整合トランス装置8に高周波電流が供給され、整合トランス装置8において変流された電流が誘導加熱コイル10a、10b、10c、10dに供給される。これによりレールRの所定部位が誘導加熱される(
図6のステップS9)。
【0046】
加熱処理が終了すると(
図6のステップS10)、制御部50は油圧クランプ装置16、17を駆動し、クランプアーム18、19を回動させてクランプを解除する(
図6のステップS11)。
そして、第1コイル部材10Aと第2コイル部材10Bとをそれぞれ後退させて分離し、作業完了となる(
図6のステップS12)。
【0047】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、制御部50がレーザ変位計35を用いてレールRの溶接部Wの位置を検出するため、その中心位置に基づき第1コイル部材10Aと第2コイル部材10Bのレール長さ方向の位置を自動的に設定することができる。
また、前記レール長さ方向の位置において、レールRの全周を囲むように第1コイル部材10Aと第2コイル部材10Bとが互いに当接され、第1コイル部材10A側に設けられたステー25,26の貫通孔25a、26aに第2コイル部材10B側に設けられたステー27,28の位置決めピン27a、28aが挿入される。これにより、第1コイル部材10Aと第2コイル部材10Bとを互いに位置ずれすることなく接合することができる。
また、スプリング24の付勢力により第2コイル部材10Bを第1コイル部材10Aに対し押さえ付けるため、接合部を密着させることができる。
更に、クランプアーム18、19により前記ステー25、26をステー27、28側に押さえ込みクランプ固定するため、第1コイル部材10Aと第2コイル部材10Bとを強固に接合することができ、形成された誘導加熱コイル10a〜10dに対し加熱処理に必要な大電流を印加することができる。
また、溶接部Wの位置の検出からレールRの後熱処理までを自動的に行うことができるため、後熱処理後に安定した品質のレールRを得ることができる。
【0048】
尚、前記実施の形態においては、2本を繋いだレールの1つの溶接部Wを検出し、後熱処理する例を示したが、本発明にあっては、その例に限定されず、複数本を繋いだレールの複数の溶接部を連続的に検出し、それを後熱処理する場合にも適用することができる。
また、本実施の形態においては、変位検出手段としてレーザ変位計35を用いるものとしたが、レーザを用いた変位検出に限定されず、超音波等、その他の素子を用いても実現することができる。
また、前記実施の形態においては、ステー25,26に形成された貫通孔25a、26aに、ステー27,28に形成された位置決めピン27a、28aを挿入するものとしたが、本発明にあっては、その構成に限定されず、ステー25、26に位置決めピンを形成し、ステー27、28に貫通孔を形成するようにしてもよい。