特許第6383516号(P6383516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383516集積アバランシェ・フォトダイオード・アレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383516
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】集積アバランシェ・フォトダイオード・アレイ
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/107 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   H01L31/10 B
【請求項の数】10
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-509143(P2016-509143)
(86)(22)【出願日】2014年4月21日
(65)【公表番号】特表2016-519435(P2016-519435A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】US2014034762
(87)【国際公開番号】WO2014172697
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】61/813,720
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515287860
【氏名又は名称】ライトスピン テクノロジーズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ハーモン、エリック、エス.
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−199675(JP,A)
【文献】 特開2012−099580(JP,A)
【文献】 米国特許第06495380(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0139071(US,A1)
【文献】 米国特許第5866936(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0024768(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0022077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/10−31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子であって、
基板層と、
前記基板の上方に配置され第1のドーパントでドープされた第1の半導体層と、前記第1の半導体層の上方でかつその近位に配置され第2のドーパントでドープされた第2の半導体層とを含む複数のドープ半導体層と、
前記第1の半導体層内において前記第2の半導体層に近位にある第1の空乏領域と、
前記第2の半導体層内において前記第1の半導体層に近位にあり前記第1の空乏領域よりも大きな厚さを有する第2の空乏領域と
を有し、
前記第1および第2の半導体層は、その選択された領域内にイオン注入がなされ、前記第1および第2の半導体層の各々の中に前記第1および第2の半導体層の垂直線に対して概ね正の側面角度のイオン注入プロファイルを有し、
前記イオン注入プロファイルは、さらに、前記第1および第2の半導体層のイオン注入されていない内側領域ならびに前記第1および第2の半導体層のイオン注入されている外側領域を画定し、前記第1の半導体層の前記イオン注入されていない前記内側領域は前記第2の半導体層の前記イオン注入されていない前記内側領域よりも大きな面積を有するものである
半導体素子。
【請求項2】
請求項1記載の半導体素子において、前記半導体素子は、前記第1の空乏領域と前記第2の空乏領域との間に、前記内側領域の中央部分でより大きく前記イオン注入プロファイル付近の部分でより小さい電界を有するものである半導体素子。
【請求項3】
請求項1記載の半導体素子において、さらに、
前記基板および前記第1または第2の半導体層のいずれかに連結された電気回路を有し、当該電気回路は、前記第1または第2の半導体層のうちのいずれかの層内における少なくとも1つの入射光子を検出し、前記検出された1若しくはそれ以上の光子に対応する電気的出力を提供するものである半導体素子。
【請求項4】
請求項3記載の半導体素子において、前記電気回路は、パッシブクエンチ回路を有するものである半導体素子。
【請求項5】
請求項1記載の半導体素子において、前記第1および第2の半導体層のうちの一方はp型ドーパントを有し、前記第1および第2の半導体層のうちの他方はn型ドーパントを有するものである半導体素子。
【請求項6】
請求項1記載の半導体素子において、前記イオン注入プロファイルは、前記第1および第2の半導体層内に前記イオン注入プロファイルに従って上向きかつ内向きに狭まる形状を有するメサを概ね画定するものである半導体素子。
【請求項7】
請求項1記載の半導体素子において、前記イオン注入プロファイルは、前記イオン注入の結果、比較的高い導電率を有する前記内側領域と比較的低い導電率を有する前記外側領域との間の境界を画定するものである半導体素子。
【請求項8】
請求項6記載の半導体素子において、前記空乏領域は、前記内側領域の中央部分の付近でより薄く、前記イオン注入プロファイル付近でより厚いものである半導体素子。
【請求項9】
請求項1記載の半導体素子において、前記外側領域は、前記内側領域の周りに電気的分離領域または保護領域を形成するものである半導体素子。
【請求項10】
請求項1記載の半導体素子において、前記第2の半導体層内のドーピング密度は、前記第1の半導体層内のドーピング密度よりも低いものである半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、光子検出器または光検出素子を対象とする。特に、光検出器の結果を改善させる製作技法を含む、単一光子アバランシェ検出器として使用することのできる、ドープ半導体材料を用いた光検出器を対象とする。
【0002】
本出願は、この参照により本明細書に組み込まれる、2013年4月19日付で出願され「Integrated SPAD Array」と題された米国仮出願第61/813,720号に関連し、これに対して便益および優先権を主張するものである。
【0003】
本発明の態様は、エネルギー庁によって授与されたSBIRフェーズI、補助金第DE−SC0009538号の下に米国政府による援助を享受している。米国特許法202条(c)(6)に基づく規定に従って、米国政府が本発明に一定の権利を有する場合がある。
【背景技術】
【0004】
アバランシェフォトダイオード(Avalanche Photodiodes:APDs)は、雪崩増倍を利用して内部利得を実現する光検出器である。この参照により本明細書内に組み込まれる、J.Lightwave Technology第25巻(1)(2007年刊)の109〜121ページに記載された、J.C.Campbellによる「Recent Advances in Telecommunications Avalanche Photodiodes」などの多くの先行技術の出典が、光検出器について述べている。単一光子アバランシェフォトダイオード(single photon avalanche photodiodes:SPADs)は、単一光子を検出することのできる特定の種類のアバランシェフォトダイオードである。SPADの例は、例えば、この参照により本明細書内に組み込まれる、J.Modern Optics第51巻(9〜10)(2004年刊)の1267〜1288ページに記載された、S.Cova他による「Evolution and prospects for single−photon avalanche diodes and quenching circuits」に述べられている。
【0005】
APDアレイおよびSPADアレイは当該技術分野においてもまた既知であり、これらには、シリコン光電子増倍管(silicon photomultiplier:SiPM)、多画素光子検出器(multi−pixel photon detector:MPPC)、および多数の同様な素子のようないろいろな素子が含まれる。この参照により本明細書内に組み込まれる、米国特許出願公開第2011/0079727号明、第2010/0127314号、および2010年刊IEEE Nuclear Science Symposium Conference Record(NSS/MIC)の1722〜1727ページに記載された、T.Frach他による「The Digital Silicon Photomultiplier−System Architecutre and Performance Evaluation」に開示されたデジタルSiPM(digital SiPM:dSiPM)手法について言及しておく。従来の素子のこの他の例は、いずれもこの参照により本明細書内に組み込まれる、フランスのLAL Orsayによる2012年刊、International Workshop on New Photon−detectors、提出時にhttp://indico.cern.ch/getFile.py/access?contribId=72&resId=0&materialId=slides&confId=164917でオンラインで見つけることのできたG.Collazuolによる「The SiPM Physics and Technology−a Review−」と題されたプレゼンテーション、IEEE Electron Dev.Lett第31巻(1)(2010年刊)41〜43ページに記載のW−S Sul他による「Guard Ring Structures for Silicon Photomultipliers」、IEEE J.Quantum Electronics第44巻(2)(2008年刊)157〜164ページに記載のA.G.Stewart他による「Performance of 1−mm2 Silicon Photomultiplier」に記述されている。簡単なSPADアレイ素子は、単一光子アバランシェダイオード(single photon avalanche diode:SPAD)とパッシブクエンチ回路とを組み込んでいる。前記パッシブクエンチ回路は、Sensors and Actuators A 140(2007年刊)113〜122ページに記載のS.Tiza他による「Electronics for single photon avalanche diode arrays」およびIEEE Trans.Nuclear Science第56巻(6)(2009年12月刊)3726〜3733ページに記載のS.Seifert他による「Simultation of Silicon Photomultiplier Signals」に記述されているようなバイパスコンデンサと並列な電流制限素子(通常は抵抗器)から構成されている。上記のすべての参考文献は、この参照により本明細書内に組み込まれる。
【0006】
従来技術のAPDアレイはまた、隣接するAPD素子同士を分離する様々な技法を使用してきた。例えば、PN接合分離法およびメサ分離法は従来技術分野において周知である。一般的に、PN接合分離法は、ドーピングの水平方向の範囲を制限して(n型基板上の)p型領域もしくは(p型基板上の)n型領域、またはその両方を分離することにより実現される。分離された素子におけるエッジ効果は、前記APD素子の周縁部に沿って電界集中を引き起こすことが多く、通常、これにより不均一なアバランシェ利得プロファイルが生じる。分離された素子におけるエッジ効果は、二重拡散構造体、ガードリング構造体、または当該技術分野において周知のその他の手法(例えば、1991年2月刊のJ.Lightwave Technology第10巻(2)に記載のY.Liu、S.R.Forrest、J.Hladky、M.J.Lange、G.H.Olsen、およびD.E.Ackleyによる「A Planar InP/InGaAs Avlanche Photodiode with Floating Guard Ring and Double Diffused Junction」ならびに1996年にマサチューセッツ州Boston市のPWS Publishing Companyによって発行された、B.J.BaligaによるChapter 3:Breakdown Voltage in Power Semiconductor Devicesの67〜127ページを参照されたい)の使用によって軽減される。
【0007】
メサ分離法を使用して、隣接するAPD素子間の導電路を部分的にまたは完全に除去することにより、APDの活性域を画定し、かつ隣接するAPD素子同士を水平方向に分離することができる。メサ分離法に傾斜した縁部構造を使用してエッジ効果を軽減することができるが、これには前記メサ構造体(傾斜角)および前記メサの表面準位密度に厳密さが要求される。縁部の傾斜したメサ構造体については、この参照により本明細書内に組み込まれる、マサチューセッツ州Boston市のPWS Publishing Companyによって発行された、B.J.Baligaによる「Power Semiconductor Devices」の103〜111ページに詳細に記載されている。
【0008】
半導体領域に絶縁、半絶縁、または非常に低い導電率を持たせるためには、イオン注入分離法が使用される。イオン注入分離法は、複合半導体素子に対して使用されることが多く、イオン注入が半導体領域内に十分な量の深準位を生じさせて前記半導体領域内のドーピングの一部を補償することにより、導電性を低下させ、多くの場合、前記領域を高抵抗とする。イオン注入分離法のすべての場合に、実験値で1×10オーム/平方を超える残留導電性が残るが、これよりも幾分低い値の抵抗率が一般的である。前記残留導電性は、多くの場合、残留自由キャリアによる導電性および/またはホッピング導電に起因する。GaAs、AlGaAs、GaInP、InGaAsP、およびInAlInNなどの複合半導体について、注入分離は、多くの場合、水素イオン、ヘリウムイオン、酸素イオン、窒素イオン、ホウ素イオン、フッ素イオン、ヒ素イオン、およびリンイオンの使用によって実現されるが、当業者であれば、任意の好適なイオンを使用できることを理解するであろう。前記残留導電性は、注入種、注入エネルギー、注入量、および注入プロファイルの関数である。ドーピングのための従来のイオン注入は、一般的に、ドーパント原子毎に(最大)1個の自由キャリアを実現するが、イオン注入分離は、相乗効果を実現するので単一原子(または種)の注入が自由キャリア濃度を10倍以上低下させることができる。これは、前記注入されたイオンによって引き起こされた格子損傷が、特定のイオン自体ではなく補償ドナー/アクセプタを生じさせるために起こる。場合によっては、GaAs内へのヒ素注入の使用によってのように、前記特定のイオンを補償準位として使用することもまた可能である。イオン注入分離法は、以下の参考文献のうちの1若しくはそれ以上によって例示されるように、文献において周知である。IEEE Photonics Technology Lett.第21巻(23)(2009年刊)の1734〜1736ページに記載の、Q.Zhou他による「Proton−Implantation−Isolated 4H−SiC Avalanche Photodiodes」、Optics Express第20巻(8)(2012年刊)の8575〜8583ページに記載の、I.Sandall他による「Planar InAs photodiodes fabricated using He ion implantation」、IEEE Photonics Technology Letters第23巻(5)(2011年刊)299〜301ページに記載の、Q.Zhou他による「Proton−Implantation−Isolated Separate Absorption Charge and Multiplication 4H−SiC Avalanche Photodiodes」、Appl.Phys.Lett.第48巻(1986年刊)1015〜1017ページに記載の、G.E.Bulman他による「Proton isolated In0.2Ga0.8As/GaAs strained layer superlattice avalanche photodiode」、J.Appl.Phys.第92巻(2002年刊)4261〜4265ページに記載の、I.Danilov他による「Electrical isolation of InGaP by proton and helium ion irradiation」、Materials science reports第4巻(8)(1990年刊)に記載の、S.J.Peartonによる「Ion Implantation for Isolation of III−V Semiconductors」、Vasteras Willy Hermansson他による「High Voltage Silicon Carbide Semiconductor device with bended edge」と題された米国特許第5,914,499号明細書(1999年発効)、Tzu−Yu Wangによる「Mathords for Angled Ion Implantation of Semiconductor Devices」と題された米国特許出願公開第2005/0078725号(2005年発効)、およびD.B.Slater他による米国特許第7,943,406号明細書「LED Fabrication via ion implant isolation」(2011年発効)。
【0009】
図1に図示した光検出器上に、縁部が傾斜した物理的なメサ構造体を製作することができる。当該技術分野において既知の技法を使用して、半導体基板100上に半導体層101および102が形成される。層101は厚さ111を有するn型半導体層である。層102は厚さ112を有するp型半導体層である。n型半導体層101のドーピング密度はp型半導体層102のドーピング密度よりも高く、接合部のp型側の空乏領域の厚さまたは幅133が前記接合部の前記n型側の空乏領域の厚さまたは幅134よりも大きくなっている。破線122は前記素子のp型側の空乏領域の縁部を表しており、破線121は前記素子のn型側の空乏領域の縁部を表している。
【0010】
層101および102内のドーピング密度ならびに傾斜角131の適切な選択により、前記素子の中央部の空乏層の全厚さ132を前記素子の周縁部の空乏層の全厚さ135よりも小さくすることができ、結果的に、前記素子の中央部での電界が前記素子の周縁部に沿った電界よりも大きくなり、したがって、これにより前記素子の性能に対する前記素子の中央部での半導体のバルク特性を支配的とすることができ、前記素子の周縁部での性能に対する依存度を低下させることができる。
【0011】
良好な性能およびスケーラビリティを有し、かつ良好な寸法上および製造上の特性を有する効果的なアバランシェ光検出素子を製作するための課題は残っている。本開示は、従来技術の物理的なメサ形光検出器および類似の素子のこれらの欠点およびその他の欠点に対処し、それらを改善するものである。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 欧州特許出願公開第0025749号明細書
(特許文献2) 欧州特許出願公開第0869561号明細書
(特許文献3) 特開昭61―199675号公報
(特許文献4) 米国特許第4,341,570号明細書
(特許文献5) 米国特許第4,403,397号明細書
(特許文献6) 米国特許第4,539,743号明細書
(特許文献7) 米国特許第5,204,520号明細書
(特許文献8) 米国特許第5,223,704号明細書
(特許文献9) 米国特許第5,329,112号明細書
(特許文献10) 米国特許第5,349,174号明細書
(特許文献11) 米国特許第5,914,499号明細書
(特許文献12) 米国特許第6,753,214号明細書
(特許文献13) 米国特許第7,943,406号明細書
(特許文献14) 米国特許第8,279,411号明細書
(特許文献15) 米国特許第9,029,772号明細書
(特許文献16) 米国特許第5,866,936号明細書
(特許文献17) 米国特許出願公開第2004/0169991号明細書
(特許文献18) 米国特許出願公開第2004/0188793号明細書
(特許文献19) 米国特許出願公開第2004/0245592号明細書
(特許文献20) 米国特許出願公開第2005/0078725号明細書
(特許文献21) 米国特許出願公開第2007/0085158号明細書
(特許文献22) 米国特許出願公開第2008/0164554号明細書
(特許文献23) 米国特許出願公開第2008/0220598号明細書
(特許文献24) 米国特許出願公開第2010/0091162号明細書
(特許文献25) 米国特許出願公開第2010/0127314号明細書
(特許文献26) 米国特許出願公開第2011/0079727号明細書
(特許文献27) 米国特許出願公開第2011/0272561号明細書
(特許文献28) 米国特許出願公開第2012/0009727号明細書
(特許文献29) 米国特許出願公開第2013/0099100号明細書
(特許文献30) 米国特許出願公開第2013/0207217号明細書
(特許文献31) 米国特許出願公開第2011/0024768号明細書
(特許文献32) 米国特許出願公開第2013/0022077号明細書
(特許文献33) 国際公開第2011/117309号
(非特許文献)
(非特許文献1) EPO,"Extended European Search Report − App.No.14784905.3−1504",Dec.6,2016.
(非特許文献2) S.AHMED ET AL.,"Implant isolation in GaAs device technology: Effect of substrate temperature",Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, vol.B 188,p.196−200,(2002),Elsevier.
(非特許文献3) S.AHMED ET AL.,"Electrical isolation of n−type GaAs devices by MeV/MeV−like implantation of various ion species",p.18−23(2002),Elsevier.
(非特許文献4) A.R.BRATSCHUN ET AL.,"A Study of Implant Damage and Isolation Properties in an InGaP HBT Process",CS Mantech Conference,May 2011.
(非特許文献5) G.E.BULMAN ET AL.,"Proton isolated In0.2Ga0.8As/GaAs strainedlayer superlattice avalanche photodiode",Appl.Phys.Lett.48,p.1015−1017(1986),American Institute of Physics.
(非特許文献6) J.C.CAMPBELL,"Recent Advances in Telecommunications Avalanche Photodiode",Journal of Lightwave Technology,vol.25,no.1,p.109−121(January 2007),IEEE.
(非特許文献7) C.CARMODY ET AL.,"Ultrafast trapping times in ion implanted InP",Journal of Applied Physics,vol.92,no.5,p.2420−2423(Sept.2002),American Institute of Physics.
(非特許文献8) G.COLLAZUOL,"The SiPM Physics and Technology − a review",PhotoDet,June.2012.
(非特許文献9) S.COVA ET AL.,"Evolution and prospects for single−photon avalanche diodes and quenching circuits",Journal of Modern Optics,vol.51,no.9−10,p.1267−1288(July 2004),Taylor & Francis.
(非特許文献10) S.DALIENTO ET AL.,"Helium implantation in silicon: detailed experimental analysis of resistivity and lifetime profiles as a function of the implantation dose and energy",Proceedings of the 18th International Symposium on Power Semiconductor Devices & IC’s(June 2006),IEEE.
(非特許文献11) I.DANILOV ET AL.,"Electrical isolation of InGaP by proton and helium ion irradiation",J.Appl.Phys.,vol.92,no.8,p.4261−4265(Oct.2002),American Institute of Physics.
(非特許文献12) J.P.DE SOUZA ET AL.,"Thermal stability of the electrical isolation in n−type gallium arsenide layers irradiated with H,He,and B ions",J.Appl.Phys.,vol.81,no.2,p.650−655(Jan.1997),American Institute of Physics.
(非特許文献13) J.P.DE SOUZA ET AL.,"Electrical isolation in GaAs by light ion irradiation: The role of antisite defects",Appl.Phys.Lett.,vol.68,no.4,p.535−537(Jan.1996),American Institute of Physics.
(非特許文献14) T.FRACH ET AL.,"The Digital Silicon Photomultiplier − System Architecture and Performance Evaluation",Nuclear Science Symposium Conference Record(NSS/MIC),p.1722−1727(2010),IEEE.
(非特許文献15) P.N.K.DEENAPANRAY ET AL.,"Implant isolation of Zn−doped GaAs epilayers: Effects of ion species, doping concentration,and implantation temperature",Journal of Applied Physics,vol.93,no.11,p.9123−9129(June 2003),AIP Publishing.
(非特許文献16) A.HENKEL ET AL.,"Boron Implantation into GaAs/Ga0.5In0.5P Heterostructures",J.Appl.Phys.,vol.36,p.175−180(Jan.1997).
(非特許文献17) C.HUANG ET AL.,"Implant Isolation of Silicon Two−Dimensional Electron Gases at 4.2 K",IEEE Electron Device Letters,vol.34,no.1,p.21−23(Jan.2013),IEEE.
(非特許文献18) A.KHODIN ET AL.,"Silicon Avalanche Photodiodes Array for Particle Detector: Modelling and Fabrication",June 2000,Belarus State University.
(非特許文献19) W.J.KINDT,"A Novel Avalanche Photodiode Array",Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference,p.164−167(1994),IEEE.
(非特許文献20) Y.LIU ET AL.,"A Planar InP/InGaAs Avalanche Photodiode with Floating Guard Ring and Double Diffused Junction",Journal of Lightwave Technology,vol.10,no.2,p.182−193(Feb.1992),IEEE.
(非特許文献21) M.MIKULICS ET AL.,"GaAs photodetectors prepared by high−energy and high−dose nitrogen implantation",Applied Physics Letters 89(2006),America Institute of Physics.
(非特許文献22) S.J.PEARTON ET AL.,"Ion implantation doping and isolation of In0.5Ga0.5P",Appl.Phys.Lett.59,p.1467−1469(1991),American Institute of Physics.
(非特許文献23) S.J.PEARTON,"Ion Implantation for Isolation of III−V Semiconductors",Materials Science Reports 4,p.313−367(1990),Elsevier Science Publishers B.V.
(非特許文献24) H.PERES ET AL.,"High Resistivity Silicon Layers Obtained by Hydrogen Ion Implantation",Brazilian Journal of Physics,vol.27/A,no.4,p.237−239(Dec.1997).
(非特許文献25) Q.ZHOU ET AL.,"Proton−Implantation−Isolated 4H−SiC Avalanche Photodiodes",IEEE Photonics Technology Letters,vol.21,no.23,p.1734−1736 (Dec.2009),IEEE.
(非特許文献26) Z.Y.SADYGOV ET AL.,"Avalanche Semiconductor Radiation Detectors",IEEE Transactions on Nuclear Science,vol.43,iss.3(June 1996),IEEE.
(非特許文献27) I.SANDALL ET AL.,"Planar InAs photodiodes fabricated using He ion implantation",Optics Express,vol.20,no.8,p.8575−8583(April 2012),OSA.
(非特許文献28) V.SAVELIEV ET AL.,"Silicon avalanche photodiodes on the base of metal−resistor−semiconductor(MRS)structures",Nuclear Instruments & Methods in Physics Research,section A 442,p.223−229(2000),Elsevier Science B.V.
(非特許文献29) S.SEIFERT ET AL.,"Simulation of Silicon Photomultiplier Signals",IEEE Transactions on Nuclear Science,vol.56,no.6,p.3726−3733(Dec.2009),IEEE.
(非特許文献30) A.SHUJA,"Implant Isolation of Gallium Arsenide − Thesis presented to the Department of Electronic and Electrical Engineering,University of Surrey,for the award of Doctor of Philosophy"(May 2002),University of Surrey.
(非特許文献31) A.G.STEWART ET AL.,"Performance of 1−mm2 Silicon Photomultiplier",IEEE Journal of Quantum Electronics,vol.44,no.2,p.157−164(Feb.2008),IEEE.
(非特許文献32) W.SUL ET AL.,"Guard−Ring Structures for Silicon Photomultipliers",IEEE Electron Device Letters,vol.31,no.1,p.41−43(Jan.2010),IEEE.
(非特許文献33) S.TISA ET AL.,"Electronics for single photon avalanche diode arrays",Sensors Actuators A 140,p.113−122(2007),Elsevier.
(非特許文献34) P.TOO ET AL.,"Electrical isolation of n−type InP layers by helium implantation at variable substrate temperatures",Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 188,p.205−209(2002),Elsevier Science B.V.
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(非特許文献36) P.WHITING,"Investigation of defects formed by ion implantation of H2+ into silicon(Thesis)",Thesis/Dissertation Collections(Aug.2009),The Rochester Institute of Technology.
(非特許文献37) F.ZAPPA ET AL.,"Impact of Local−Negative−Feedback on the MRS Avalanche Photodetector Operation",IEEE Transactions on Electron Devices,vol.45,no.1,p.91−97(Jan.1998),IEEE.
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【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の観点は、イオン注入分離法の使用によるアレイ内のAPDピクセルの分離を対象とする。その他の観点は、前記APDの周縁部付近における電界のピーキングを効果的に低減させるための仮想の傾斜縁部の幾何学的形状の製造を対象とする。さらに他の観点は、イオン注入分離法を使用した高抵抗層の形成によるパッシブクエンチ抵抗器の形成を対象とする。さらに他の観点は、イオン注入分離法を使用した、例えば、金属−絶縁体−半導体(metal−insulator−semiconductor:MIS)、金属−絶縁体−金属(metal−insulator−metal:MIM)、または半導体−絶縁体−半導体(semiconductor−insulator−semiconductor:SIS)構造などの、中央絶縁層を有する三層構造体を含むコンデンサ構造体の絶縁体の形成によるバイパスコンデンサの形成を対象とする。さらに他の観点は、前記絶縁体を前記パッシブクエンチ回路に必要な抵抗を実現するうえで好適な低残留導電率を有する漏洩性絶縁体と見なすことのできるMIS、MIM、またはSIS構造体の使用による、クエンチ抵抗器およびバイパス抵抗器の組み合わせを対象とする。したがって、前記MIS、MIM、またはSIS構造体は、前記パッシブクエンチ回路の重要な構成要素として機能し、必要な前記抵抗および静電容量の一部または全部に寄与することができる。その他の観点は、SPADピクセルの分離、パッシブクエンチ抵抗器の形成、および/またはバイパスコンデンサの形成の機能の任意の組み合わせを対象とする。
【0013】
別のSPADアレイの設計は、上述の抵抗器/コンデンサによるパッシブクエンチ回路に加えて、前記ピクセルレベルで追加的な回路を組み込むことができる。例えば、前記SPAD出力信号を増幅して信号対雑音を改善するために、またはピクセルレベルの閾値回路を提供して前記SPAD出力(一般的には1fC〜100fCの範囲の電荷)をデジタル電圧レベルに変換するために回路を使用することができる。この追加的な回路はまた、前記アレイ内の他の素子の寄生負荷容量および抵抗から前記SPAD素子を分離するために役立てることもできる。
【0014】
従来技術の弱点としては、前記メサ形幾何学的形状を正確に管理できないことを含む非平面APD素子構造体、メサ側壁の表面状態を不動態化することが困難なこと、メサ側壁の表面不動態化が安定しないこと、および暗電流の増加が挙げられる。従来の技術の追加的な弱点としては、前記傾斜角によるメサ分離を実現するために費やされる面積に起因する素子および素子アレイの感光域の減少が挙げられる。
【0015】
平面の幾何学的形状のAPDの従来技術の弱点としては、所望の水平方向にパターン化されたドーピング特性を実現することが困難なこと、拡散分離または注入分離によって引き起こされる結晶欠陥、および前記素子の周縁部付近の電界の抑制不足が挙げられる。平面の幾何学的形状の従来技術のさらなる弱点としては、ガードリングおよびその他の縁部終端手法の必要性、ならびにその結果として生じる前記ガードリングまたはその他の縁部終端手法によって費やされる面積に起因する素子およびアレイの感光域の減少が挙げられる。
【0016】
モノリシックに集積されたクエンチ回路を有するSPAD素子に関する従来技術のさらなる弱点としては、前記パッシブクエンチ回路の電流制限素子を確実に製造することが困難なこと、ピクセルに割り当てられるべき面積(real estate)のかなりの部分が前記パッシブクエンチ回路の電流制限素子のために割かれること、前記パッシブクエンチ回路の電流制限素子によって費やされる割当て(real estate)面積に起因する感光性の低下、および前記パッシブクエンチ回路の電流制限素子による前記SPAD素子の陰りに起因する感光性の低下が挙げられる。従来の技術のさらなる弱点としては、前記パッシブクエンチ回路のバイパスコンデンサによって費やされる割当て面積に起因する感光性の低下、および前記パッシブクエンチ回路のバイパスコンデンサによる前記SPAD素子の陰りに起因する感光性の低下が挙げられる。
【0017】
したがって、本発明の目的は、APDアレイおよびSPADアレイを含むAPD素子を分離する手段、素子の縁部付近での電界のピーキングを低減する手段を含むAPD素子の周縁部/縁部効果を軽減する手段、前記APD素子の暗電流を低減する手段、SPADピクセルのパッシブクエンチ回路の電流制限素子を形成する手段、SPADピクセルのパッシブクエンチ回路のバイパスコンデンサを組み込む手段、または上記の任意の組み合わせを含む。
【0018】
したがって、いくつかの実施形態は、半導体素子であって、基板層と、前記基板の上方に配置され第1のドーパントでドープされた第1の半導体層および前記第1の半導体層の上方かつその近位に配置され第2のドーパントでドープされた第2の半導体層を含む複数のドープ半導体層と、前記第1の半導体層内で前記第2の半導体層に近位にある第1の空乏領域と、前記第2の半導体層内で前記第1の半導体層に近位にある第2の空乏領域とを有し、前記第1および第2の半導体層は、その選択された領域内にイオン注入がなされ、前記第1および第2の半導体層の各々内に前記第1および第2の半導体層の垂直線に対して概ね正の側面角度のイオン注入プロファイルを有し、前記イオン注入プロファイルは、さらに、前記第1および第2の半導体層のイオン注入されていない内側領域および前記第1および第2の半導体層のイオン注入されている外側領域を画定し、前記第1の半導体層の前記イオン注入されていない内側領域は前記第2の半導体層の前記イオン注入されていない内側領域よりも大きな面積を有するものである、半導体素子を対象とする。
【0019】
その他の実施形態は、光検出器アレイであって、基板層と、前記基板の上方に配置され第1のドーパントでドープされた第1の半導体層と、前記第1の半導体層の上方かつその近位に配置され第2のドーパントでドープされた第2の半導体層とを含む複数のドープされた半導体層であって、前記第1および第2の半導体層はその複数の選択された領域内に前記第1および第2の半導体層の垂直線に対して概ね正の側面角度でイオン注入がなされ、前記第1および第2の半導体層内に対応する傾斜した側面プロファイルを有する複数のメサ構造体が形成されるものである、前記複数のドープされた半導体層と、前記メサ構造体のうちの1若しくはそれ以上との複数のオーミック接続を含む光子検出回路であって、前記メサ構造体内で検出された1若しくはそれ以上の光子の相互作用に対応する前記アレイの少なくとも1つの出力信号を提供するものである、前記光子検出回路と、を有する光検出器アレイを対象とする。
【0020】
さらに他の実施形態は、光検出素子であって、基板上に製作された多層半導体構造体と、前記多層半導体構造体内にイオン注入プロファイルによって形成された仮想傾斜縁部を有する少なくとも1つの光子検出領域であって、前記多層半導体構造体の垂直線に対して正の側面角度または傾斜を有し、それにより、前記基板に近位の前記光子検出領域のより広いエリアおよび前記基板から遠位のより狭いエリアが画定されるものである、前記光子検出領域と、前記多層半導体構造体に電気的接続を有するパッシブクエンチ回路であって、その中央に絶縁層を有する三層構造体を含み、前記中央絶縁層は隣接領域の残留抵抗率よりも大きな残留抵抗率を呈するイオン注入分離領域によってその少なくともいくつかの側面上で電気的に分離されているものである、前記パッシブクエンチ回路とを有する光検出素子を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本概念の性質および利点をより完全に理解するために、添付の図面に関連して以下の好適な実施形態の詳細な説明について述べる。
図1図1は、従来技術の光検出素子に使用できる物理的なメサ構造体の図である。
図2図2は、光検出素子に使用できる、正の傾斜縁部を有する仮想メサ型構造体の実施形態の図である。
図3図3は、基板を覆う例示的な多層構造体の図である。
図4図4は、素子の複数の半導体層を覆う酸化ケイ素マスクの例示的な断面の図である。
図5図5は、図4の構造体内にHe+イオン注入を行った結果の図である。
図6図6は、本明細書の一方法に従って処理を完了した時点での最終的な傾斜縁部を有する仮想メサ構造体の図である。
図7図7は、APD構造体の例示的な電流−電圧特性の図である。
図8図8は、いくつかの実施形態に係る例示的なAPDアレイの図である。
図9図9は、APDアレイ内のイオン注入および傾斜縁部を有する仮想メサ構造体の形成後の前記アレイの側面図である。
図10図10は、イオン注入後の上記の構造体の図である。
図11図11は、オーミック接点と回路とを接続後の上記の構造体の図である。
図12図12は、本発明に係る半導体APDアレイの別の例示的な実施形態の図である。
図13図13は、半導体構造体全体を覆うマスキングの図である。
図14図14は、第1のイオン注入工程の効果の図である。
図15図15は、第2のイオン注入段階の図である。
図16図16は、上記のAPD構造体を製作するさらなる工程の図である。
図17図17は、チップまたはダイの外側領域からアレイを分離する代替的な手段の図である。
図18図18は、本APD構造体の回路に使用される三層構造体の分解立体図である。
図19図19は、上図と同様の分解していない三層構造体の図である。
図20図20は、SPAD内に組み込まれたMIS三層構造体の図である。
図21図21は、SPAD内上のMIS三層構造体の図である。
図22図22は、さらに別のAPDアレイおよび同アレイを製作する方法の図である。
図23図23は、上記の構造体上での第1のイオン注入処理の図である。
図24図24は、上記の構造体上で第2の注入を行った結果の図である。
図25図25は、上記のAPD構造体を処理するさらなる工程の図である。
図26図26は、上記の構造体に係るAPDアレイのピクセルの詳細図である。
図27図27は、上記のピクセルのいくつかの寸法上の詳細を記述した図である。
図28図28は、傾斜縁部を有する仮想メサ構造体を形成するために使用される層構造体の実施形態の図である。
図29図29は、上記の構造体の深さ対密度のプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述のように、本発明は、単一光子アバランシェ検出素子を含む多数の改善および新しい素子ならびにこれらを製作し使用する方法を提供する。
【0023】
図2は、正の傾斜縁部を有する仮想メサ構造体を有する光検出器内で使用可能な素子の例示的な実施形態を図示している。即ち、前記メサ構造体は、前記構造体の層界面を画定する面に対して角度のついた、傾斜した、または非垂直な壁部を有する。さらに換言すれば、前記メサは、前記構造体の層の平面の垂直線に対して正の角度を有する側面の境界によって画定されている。この角度は、一般的には、前記構造体の前記基板により近いより大きなエリア、および前記構造体の前記基板から遠ざかって狭くなるまたは先細るより小さなエリアを作るように設計されている。
【0024】
前記構造体は、一般的に、基板層を覆って配置された選択された厚さの材料からなる複数の層によって実現される。図面は前記基板が底部にありその他の前記層が前記基板の上方にあるように図示しているものの、前記素子は、実際の製作および使用に際しては再配置し、回転させ、または反転させることができるのは自明である。したがって、前記基板が図面の底部にある慣例的な配置は、単に図示を目的としており限定とするものではない。
【0025】
図2の仮想メサ構造体は、傾斜縁部マスクを介してイオン注入分離法を利用して所望の幾何学的形状を実現し、非注入領域と比較して注入領域内の正味ドーピングを低減させることにより実現される。いくつかの実施形態において、前記注入領域の正味ドーピングは、前記非注入領域と比較して1桁以上低減させることができる。前記正の傾斜縁部を有する仮想メサ構造体は、前記APDピクセル内のp型半導体領域の、n型半導体領域と比較してより小さな水平方向の範囲を利用し、前記素子の周縁部付近での電界の大きさを前記APDピクセルの中央部分と比較してより小さくすることができる。当業者であれば、ドーピングの型(n型、p型)を記述する場合には、用途によっては本実施例を修正して逆の型のドーピング(p型、n型)を使用することができることを理解するであろう。
【0026】
図2は、例示的な実施形態に係る傾斜縁部を有する仮想メサの側壁205を図示している。注入分離された半導体領域201Bおよび202Bの幾何学的形状および寸法は、図示のとおりに、前記注入領域201Bおよび202Bと非注入領域201Aおよび202Aとの間の正の傾斜角231を実現するように選択されている。この実施形態において、前記注入分離された半導体領域を利用して、前記傾斜縁部を有する仮想APD構造体のp型半導体領域202Aおよびn型半導体領域201Aの水平方向の範囲が完全に限定されている。図示の実施形態において、n型半導体領域201およびp型半導体領域202はn型半導体基板200の上に成長する。面取りされたマスク(後述)を介した注入分離を利用して前記注入の水平方向の幾何学的形状が画定される。領域201Bおよび202Bはそれぞれ層201および202の体積であり、その分離注入は、領域201Bおよび202Bのドーピングを実施形態によっては少なくとも1桁分補償し、その結果、実施形態によっては領域201Bおよび202Bの抵抗率を非注入領域201Aおよび202Aに比して少なくとも1桁分上昇させるように選択される。層201の厚さは211であり、層202の厚さは212である。前記n型領域201Aの中央の空乏領域の厚さは234であり、p型領域202Aの中央の空乏領域の厚さは233であり、前記素子の中央の空乏領域の厚さの合計は232であり、前記仮想傾メサの傾斜縁部205に沿った空乏領域の厚さは235である。したがって、前記素子の1若しくはそれ以上の層の好適に角度を付けられたまたは傾斜している領域が図1の従来の技術の物理的なメサの代わりの機能を果たす前記仮想メサの概念が明確となる。層201および202の注入領域201Bおよび202B内に制限される非注入領域201Aおよび202Aを含む前記仮想メサが、従来の技術に対する性能および製造上の利点、ならびにその他の利点を提供する。例えば、前記仮想メサは、図1の従来の技術で必要であった前記素子の層の上方に前記メサの物理的な延長部を必要としない。
【0027】
層202内のp型ドーピングの大きさよりも大きい層201内のn型ドーピングの大きさを前記仮想傾斜角231ならびに201Bおよび202Bの不動態化特性と組み合わせて使用することにより、前記仮想メサ傾斜外縁部205に沿った空乏領域の幅235を前記素子の中央の空乏領域232の幅よりも広くすることができ、これを利用してこの素子内の周縁部効果を効果的に軽減することができる。即ち、前記メサ構造体の中央付近の空乏領域はその外側縁部付近のそれよりも薄いため、前記仮想メサの中央領域付近の電場勾配は前記仮想メサの外縁部領域付近の電場勾配よりも大きい。
【0028】
次に、上述の傾斜縁部を有する仮想メサ構造体を有する光検出素子および同素子の製作方法の実施形態を図示する。図3は、n+GaAs基板300の上に成長した半導体層を含む前記素子の初期の層構造を図示している。一態様において、これらの層は、金属有機化学蒸着法を使用して成長する。当業者であれば、図示の層構造体を実現する任意の好適な方法を使用できることを理解するであろう。厚さ311の層301は、基板300の上に直接成長したn型GaAsバッファ層であり、高品質のエピタキシャル成長を開始するために使用される。層301は、5×1017cmのドーピング密度でn型にドープされ、500nmの厚さ311に成長したGaAs層を含んでいる。層302は、5×1018cmのドーピング密度でn型にドープされ、50nmの厚さ312に成長したGa0.51In0.49P層を含んでいる。層303は、1×1018cmのドーピング密度でn型にドープされ、100nmの厚さ313に成長したGa0.51In0.49P層を含んでいる。層304は、250nmの厚さ314に成長した非意図的にドープされたGa0.51In0.49P層を含んでおり、つまり、一般的に、前記層はある程度のドーパントを含んでいてもよいということである。層305は、1×1017cmのドーピング密度でp型にドープされ、950nmの厚さ315に成長したGa0.51In0.49P層を含んでいる。層306は、5×1018cmのドーピング密度でp型にドープされ、50nmの厚さ316に成長したGa0.51In0.49P層を含んでいる。層307は、5×1019cmのドーピング密度でp型にドープされ、120nmの厚さ317に成長したGaAs接触層を含んでいる。層307の厚さ317は、部分的には、良好なオーミック接触を実現可能とすると共に、層305よりも50倍高いドーピングを有することのできることから約50倍高い損傷を必要とする層306内でイオン注入損傷のピークを発生させる15keVのエネルギーを使用してHe+注入することを可能とする、前記分離注入のための犠牲層を提供するように選択される。
【0029】
本明細書内で提供する寸法、材料、濃度、およびその他の特定の例は単に例示的であるに過ぎず、当業者であれば本開示を検討する際にそれぞれの目的に適うその他特定の実施を認識するであろうことについて、繰り返しておく必要がある。このように、本明細書内で述べるパラメータおよび定量的な値はいずれも限定的であることが意図されていない。これには、所与の実施形態の構成要素となる層の順番および極性が含まれ、これらは特定の用途に適するために必要に応じて修正することもできる。
【0030】
図4は、一実施形態においては電子サイクロトロン共鳴(electron cyclotron resonance:ECR)プラズマ化学蒸着(ECR−plasma enhanced chemical vapor deposition:ECR−PECVD)を使用して約1,800nmであることのできる厚さ352に堆積した二酸化ケイ素マスク351の例示的な断面を図示している。前述のとおり、本明細書内で提供する例示的な材料および寸法は例証であり、限定的であることは意図されていない。当業者であれば、記述の要素について他の幾何学的形状および大きさを認識することができる。
【0031】
次に、二酸化ケイ素351はフォトリソグラフィおよび湿式化学エッチングを使用して図面に示すメサ形状にパターン化され、湿式化学エッチングがおおよそ等方性であることから約45度である傾斜角331が生じる。前記マスクの角度および厚さは、特定の要求に適うように変更することができる。前記フォトレジストを除去後、表Iに示すエネルギーおよび注入量を使用して前記構造体にHe+イオンが注入される。図4の層構造体はGaAs基板100の上に111Aの方向に向かって10度切り落として成長しているので、前記注入角は前記ウェーハの面に対して垂直である。前記角度および厚さは例示的である。この実施例では、SRIM(Stopping and Range of Ions in Matter:SRIM)を使用して表Iのエネルギーおよび注入量を計算した。
【0032】
表Iは、図3Aの層構造体に注入して前記傾斜縁部を有する仮想メサを形成するために使用される例示的なHe+イオンのエネルギーおよび注入量を例示している。
【0033】
【表1】
【0034】
図5は、図4の構造体内にHe+イオン注入を行った結果を図示している。領域304B、305B、306B、および307Bはそれぞれ、層304、305、306、および307の前記分離注入に暴露した部分であり、領域304A、305A、306A、および307Aはそれぞれ、層304、305、306、および307の、マスク351によって前記分離注入から保護されている領域である。結果として生じる前記領域307A、306A、305A、および304Aは、傾斜角が331Bである仮想傾斜メサ構造体を形成する。当業者であれば、PN接合が層304の関連のある領域を完全に空乏化するので、選択された注入エネルギーが層304を完全に貫通できなくても、前記p型層(層305、306、および307)の十分な分離が実現できることを理解するかもしれない。また、当業者であれば、結果として生じる前記縁部の傾斜したメサ構造体が実現できる限り、かつ前記注入領域が非注入領域よりも少なくとも1桁低い自由キャリア濃度を呈する限り、異なる注入エネルギーおよび注入量を利用することができることを理解するかもしれない。前記注入が完了次第、前記注入損傷を部分的に回復させ前記構造体を安定させるために、前記構造体全体がアニール処理される。
【0035】
次に、前記p+GaAs層307をエッチングしてこの層を導電路として除去するためのマスクとして二酸化ケイ素マスク351が使用され、図6に示す最終的な構造体が生じる。
【0036】
ここで、前記処理の完了時には前記最終的な傾斜縁部を有する仮想メサ構造体を示す図6について述べる。金属端子398がp+GaAs層307Aとのオーミック接触を形成し、金属端子399が前記n−GaAs基板300とのオーミック接触を形成する。
【0037】
図7は、前述の開示に従って製作されたAPD構造体の例示的な電流−電圧特性を図示している。前記傾斜縁部を有する仮想メサの直径は約50ミクロンであり、前記注入アニール温度は400℃であった。軸371は電圧軸を表し、前記電圧は、図示のとおり、線形目盛上で−35ボルト〜0ボルトに亘っている。軸372は電流軸を表し、前記電流は、図示のとおり、対数目盛上で1×10−12アンペア〜1×10−3アンペアに亘っている。これらの値は単に例示的であり、本発明または実施形態を限定するものではない。曲線375は暗電流を表し、前記仮想傾斜縁部を有する素子が10pAよりも小さい、増加しない暗電流を実現することを示している。曲線376は、明電流を表している。挿入図は前記曲線の降伏点付近の領域を示しており、電圧軸371Bは図面内に示すように線形目盛上で−35ボルト〜30ボルトに亘っている。前記挿入図はまた、図示のように対数目盛上に1〜1000に亘る、前記素子の計算上の利得を示す追加の軸371Bを含んでいる。前記挿入図内の曲線377は前記計算上の利得を表し、前記素子には100を超える利得を呈する能力があることを示している。
【0038】
この素子はまた、外部クエンチ回路を使用してガイガーモードでも動作でき、34.6Vの電圧(約1ボルトの過剰バイアス)で動作することができる。前記素子は、50〜60kcpsの暗計数率および20%を超える内部単一光子検出効率を実証しており、前記傾斜縁部を有する仮想メサ構造体が成功であることを示している。減光フィルターで光源を減衰させることにより小さな光電流値が実現されるとき、前記内部単一光子検出効率は、光子数を前記光電流(電子/秒の単位)で除したものとして定義される。前記SPADは前記非減衰光電流を測定するために使用されるので、この測定値には、面反射、陰り、および再結合損失の影響が考慮されない。
【0039】
図8は、マスク機構410A、410B、および411を含む例示的な半導体層構造体の側面図481ならびに本発明に係るAPDを処理するために使用される第1のマスクの平面図482を図示している。側面図481において、前記素子の層構造体は簡略化されており、前記n型半導体領域400と、非意図的にドープされた領域401と、前記p型半導体層402と、勾配ドープされたp型層403と、高濃度にドープされたp型接触層404とのみを示している。層402、401、および400の組み合わせがPINダイオード構造体を形成し、これにより本発明のアバランシェフォトダイオード構造体の基礎が形成される。前記PINダイオード構造体の上に層403が追加されて前記p型半導体層402と前記高濃度にドープされたp型接触層404との間の円滑な勾配が提供される。
【0040】
後述するように、層403中のドーピングの勾配は、前記ドーピングのプロファイルと前記注入損傷のプロファイルとの間におおよその一致を提供するように選択される。前記素子の領域を注入過剰としたり、または注入不足としたりする必要がないように、前記ドーピングのプロファイルと前記注入損傷のプロファイルとの間のおおよその一致が望ましい。注入過剰とされた領域の場合、注入分離の注入量が多すぎる可能性があり、これにより欠陥密度が高くなりすぎて、発熱速度が速くなり、分離効果が低下する。注入不足となった領域の場合、注入分離の注入量が少なすぎる可能性があり、これにより欠陥密度が低くなりすぎて、ドナー原子の補償が不十分となり、導電率が上昇する。層間に急激なドーピングの変化がある場合、前記層のうちの一方の少なくとも一部が注入過剰または注入不足のいずれかとなり、最適とは言えない性能を招く可能性がある。
【0041】
高濃度にドープされた接触層404は、前記PINダイオードとのオーミック接触を実現する手段を提供すると共に、表面フェルミ準位のピニングに起因する表面空乏領域を最小限に抑える方法を提供する。このような表面空乏および表面フェルミ準位のピニングは、前記表面付近で吸収されるより短い波長に関するPINダイオードの量子効率を低下させる。当然ながら、前記構造体を反転させてNIPダイオード構造体を形成することもでき、APD素子の設計はドープされていない領域401の使用を必要としないので、本発明はPN層設計およびNP層設計にも好適である。
【0042】
図8は例示的な4ピクセルAPDアレイの設計を対象としており、したがって、それぞれピクセル1、2、3、および4の仮想傾斜メサを画定するために使用されるマスク領域410A、410B、410C、および410Dを含んでいる(当然ながら、前記ピクセルの番号付けは本発明にとって重要ではなく任意である)。
【0043】
アレイ内のピクセルの数およびそれらの配置は一般的であり、図示したものとは異なる構成で実施することができる。図示の実施形態において、前記マスクはまたガードリング411をも含んでおり、これは前記アレイ全体の周囲を囲み、前記ガードリングの外側にあるもの(前記半導体チップまたはダイの他の領域など)から前記アレイのピクセルを分離する手段を提供している。側面図481に示すように、前記平面図482のマスクパターンは、厚さ421および傾斜角422の面取りされたマスキング材料内に複製されている。前記マスキング材料の厚さは、前記注入イオンの実質的にすべてが前記マスクの下側のp型層402に達するのを止めるのに十分であるように選択すべきである。前記マスキング材料としては、傾斜角422が本発明の仮想傾斜縁部を生成するのに十分である限り、ウェットエッチングまたはドライエッチングされた二酸化ケイ素、窒化ケイ素、金属、またはフォトレジストを挙げることができる。さらに、前記図の側面図481に示す傾斜角422は台形であるが、本発明は、前記マスクの厚さが薄い厚さから仮想傾斜縁部が望まれる前記領域付近の全厚さ421まで変化する限り、前記マスク縁部として任意の湾曲形状を使用することができる。
【0044】
図9は、図8の側面図481上のイオン注入の効果を図示している。イオン注入装置内で前記基板の方向に向かって入射イオン471が加速している。前記入射イオン471は、マスキング層411、410A、および410Bの全厚さ421によって阻止され、前記マスクの妨げのない開口部では層404、403、および402の中に通過することが許される。前記マスクの傾斜縁部領域では、前記入射イオン471は前記マスキング材料によって拡散され、前記入射イオン471のエネルギーが減少し、これによりこれらが中を通って移動する前記マスク層の厚さに依存する前記イオン471の可変浸透深さがもたらされる。この結果、図面に示すように、前記注入領域(402Bおよび403B)におおよそ台形の形状が生じる。前記注入領域のこの台形形状は例証の目的だけのもので、イオンが前記マスキング層および半導体素子の層の中に浸透するときにイオンの水平方向の分散および拡散によって幾分丸みを帯びる。注入領域404Bは層404の部分であり、ここには前記入射イオンがそのエネルギーのかなりの割合を注ぎ込み、層404のp型ドーピングを部分的に補償するように作用する比較的大きな欠陥密度が生じる。その後の処理工程を使用して領域404Bを除去(エッチング)し、これらの領域を通る一切の残留導電性を取り除くことができるので、層404の完全な補償は要件ではないことに留意されたい。領域403Aは層403のほとんど注入がなされない領域であり、したがって、これら領域の本来のp型ドーピング、自由キャリア濃度、および抵抗率のかなりの割合を維持する。同様に、領域403Bは層403の注入がなされる領域であり、領域403Aは層403のほとんど注入がなされない領域である。そして、領域402Bは層402の注入がなされる領域であり、領域402Aは層402のほとんど注入がなされない領域である。前記注入領域と前記非注入領域との間の遷移は急激ではないかもしれず、むしろ前記イオン軌道に従って高損傷領域(注入領域)から低損傷領域(非注入領域)へと徐々に遷移するかもしれないことに留意されたい。このようなイオン軌道は、モンテカルロ解析用ソフトウェアを使用してモデル化することができる。
【0045】
前記注入イオンは、前記層のドーピングを補償する手段を提供する限り、任意の好適なイオンであってよい。III−V族化合物半導体について、前記イオンの候補としては、水素、ヘリウム、酸素、窒素、ヒ素、およびリンが挙げられるが、これらに限定はされない。さらに、ケイ素およびスズなどのドーピングイオンは損傷を生じさせるだけではなくp型層402および403にカウンタードーピングの供給源をも提供するので、これらを考慮することもできる(同様に、n型層のためにベリリウムおよび亜鉛を考慮することもできる)。IV族半導体について、酸素、ケイ素、およびアルゴンなどのイオンを使用して損傷を発生させることができる。例えば、IEEE Electron Dev.Let.第34巻(1)(2013年1月刊)21〜23ページに記載のC−T Huang、J−Y Li、およびJ.C.Sturmによる「Implant Isolation of Silicon Two−Dimensional Electron Gases at 4.2K」を参照されたい。カウンタードーピングの供給源を提供するために、その他のドーパントイオンもまた考慮することができる。本発明の一観点は、前記イオン注入が、ドープされた領域を補償し、その導電率を低下させ、例えば、前記正味ドーピングを少なくとも10倍低下させてその導電率を10倍低下させる手段を提供することである。他の観点において、注入領域の変換が前記仮想傾斜側壁に沿って前記APDの中央部よりも小さな電界を有する所望の前記仮想傾斜メサを生じさせる限り、前記注入領域を、p型領域をn型に変換し、またはn型領域をp型に変換するなど、反対の半導体の型に変換することが望ましいかもしれない。
【0046】
前記イオン注入が完了すると、前記サンプルは、通常、前記注入損傷の一部を回復させ前記イオン注入領域を安定させるためにアニール処理される。したがって、層404の注入領域404Bをエッチングして、この高濃度のp型領域の一切の残留導電性が素子の性能に影響するのを防止することができる。次に、前記マスク層を除去し、図10に示す側面図の構造体を得ることができる。図中、それぞれに傾斜縁部を有する仮想構造体を伴う2つのピクセル462Aおよび462Bならびに前記周囲ガードリング461が見える。
【0047】
ここで、図11について述べる。製作を終了するために、ガードリング461とのオーミック接点442が作られ、APDのp型側462Aとのオーミック接点441Aが作られ、APDのp型側462Bとのオーミック接点441Bが作られ、前記n型半導体基板とのオーミック接点443が作られて前記アレイのすべてのダイオードとの共通カソード接続が提供される。前記APDアレイをSPADアレイとして動作させるために、各APD素子に、図に示すような抵抗器およびコンデンサの並列接続からなるパッシブクエンチ回路が接続される。コンデンサ435および抵抗器436が接点441Aでピクセル462Aに接続され、コンデンサ437および抵抗器438が接点441Bでピクセル462Bに接続される。接続431を介して負のバイアスが供給され、前記APD素子のガイガーモード動作を実現するために必要なバイアスが提供される。接点443で前記共通カソード接続を介して出力信号が読み出される。図中、前記共通カソード接続443と接地432との間に簡単な負荷抵抗器439が接続されているが、当業者であれば、前記電流信号を読み出すために、インピーダンス変換増幅器または電荷増幅器などの増幅回路を含むより複雑な回路を使用できることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ガードリング461をフローティングさせておいてもよく、他の実施形態では、図に示すようにガードリング461をガード電圧430に接続するのが望ましいかもしれない。前記共通カソード接続443は前記アレイのAPDピクセルのすべてを流れる電流のアナログ和を提供し、前記APDピクセルがガイガーモードで動作しているときは、前記アレイの活性域上に入射する単一光子の数を数える手段を提供する。
【0048】
さらに本発明の他の実施形態および観点を以下の論考および図面で提示する。図12は、マスク機構510Aおよび510Bを含む前記半導体層構造体の側面図581ならびに本発明に係るAPDを処理するために使用される第1のマスクの平面図582を図示している。側面図581において、前記素子の層構造体は簡略化されており、前記p型半導体領域500と、非意図的にドープされた領域501と、前記n型半導体層502と、勾配ドーピングp型層503とのみを示している。前述したように、層503中のドーピングの勾配は、上述の勾配ドーピング層403に対するのと同様の要件で、前記ドーピングのプロファイルと前記注入損傷のプロファイルとの間におおよその一致を提供するように選択される。層502、501、および500の組み合わせがNIPダイオード構造体を形成し、これにより前記アバランシェフォトダイオード構造体の一部が形成される。図12は4ピクセルAPDアレイの設計を図示しており、したがって、それぞれピクセル1、2、3、および4(これらは図面中の4つのピクセルの任意の符号である)の仮想傾斜メサを画定するために使用されるマスク領域510A、510B、510C、および510Dを含んでいる。側面図581に示すように、前記平面図582のマスクパターンは、厚さ521および傾斜角522の傾斜縁部を有するマスキング材料内に複製されている。前記マスキング材料の厚さは、前記注入イオンの実質的にすべてが前記マスクの下側のp型層502に達するのを止めるのに十分であるように選択すべきである。前記マスキング材料としては、傾斜角522が本発明の仮想傾斜縁部を生成するのに十分である限り、ウェットエッチングまたはドライエッチングされた二酸化ケイ素、窒化ケイ素、金属、またはフォトレジストを挙げることができる。さらに、前記図の側面図581に示す傾斜角522は台形であるが、本発明は、前記マスクの厚さが薄い厚さから仮想傾斜縁部が望まれる前記領域付近の全厚さ521まで変化する限り、前記マスク縁部として任意の湾曲形状を使用することができる。
【0049】
図13は、第2のマスキング層509を前記第1のマスキング層(510Aおよび510Bが図示されているが、マスキング層509は図示されていない510Cおよび510Dの上にもまた堆積するであろうと考えられる)の上にブランケット堆積させることができる様子を図示している。前記ブランケット堆積した第2のマスキング層は厚さ521Bに堆積するが、前記厚さ521Bは、前記注入量のピーク損傷を勾配ドーピング層503内に位置づけ、層503を補償するには表面注入量が不十分となること、または必要とする表面注入量が多くなりすぎて層503と層502との間の界面を潜在的に過剰補償し残留導電率の上昇を招くこととなるいずれかが考えられる、前記注入の最終局面の影響を軽減することができるように設計される。
【0050】
図13は、図12の側面図581上の第1のイオン注入の効果を図示している。イオン注入装置内で前記基板の方向に向かって入射イオン571が加速している。前記入射イオン571はマスキング層510Aおよび510Bの全厚さ521によって阻止され、機構510Aと機構510Bとの間の妨げのない開口部内で層503、502、および501の中に通過することが許される(第2のマスキング層509の効果は、実質的にすべての入射イオンが第2のマスキング層509の中を通過することができるように選択されたマスキング層509の厚さで前記入射イオン571のエネルギーを僅かに減衰させることにある)。前記マスクの傾斜縁部領域では、前記入射イオン571は前記マスキング材料によって拡散され、前記入射イオン571のエネルギーが減少し、これによりこれらが中を通って移動する前記マスク層の厚さに依存する前記イオン571の可変浸透深さがもたらされる。この結果、図面に示すように、前記注入領域(501B、502B、および503B)におおよそ台形の形状が生じる。前記注入領域のこの台形形状は例証の目的だけのもので、イオンが前記マスキング層および半導体素子の層の中に浸透するときにイオンの水平方向の分散および拡散によって幾分丸みを帯びる。注入領域503Bは層503の一部であり、ここには前記入射イオンがそのエネルギーのかなりの割合を注ぎ込み、層503のn型ドーピングを補償するように作用する比較的大きな欠陥密度が生じる。領域503Aは層503のほとんど注入がなされない領域であり、したがって、これら領域の本来のn型ドーピング、自由キャリア濃度、および抵抗率のかなりの割合を維持する。同様に、領域502Bは層502の注入がなされる領域であり、領域502Aは層502のほとんど注入がなされない領域である。同様に、領域501Bは層501の注入がなされる領域であり、領域501Aは層501のほとんど注入がなされない領域である。前記注入領域と前記非注入領域との間の遷移は急激ではなく、むしろ前記イオン軌道に従って高損傷領域(注入領域)から低損傷領域(非注入領域)へと徐々に遷移する。このようなイオン軌道は、モンテカルロ解析用ソフトウェアを使用してモデル化することができる。
【0051】
前記第1のイオン注入が完了すると、マスク層509、510A、510B、510C、および510Dは従来の技法を使用して取り除かれ、前記サンプルは、通常、前記注入損傷の一部を回復させ前記イオン注入領域501B、502B、および503Bを安定させるために第1のアニール温度でアニール処理される。次に、前記領域550内に第2のマスク層が堆積し、パターン化されるが、この層は、前記活性ピクセルの仮想傾斜を有する注入領域を保護し、前記APDアレイの外側を第2のイオン注入工程に暴露させるように設計されている。
【0052】
図14は、前記第2のイオン注入の入射イオンのほとんどすべてを領域502Aから遮断するのに十分な厚さ551を有する前記パターン化されたマスク550を図示している。前記第2の注入の目的は前記APDアレイを前記チップまたはダイの外側領域から分離することにあり、したがって、実施によっては、側壁が垂直である(したがって、傾斜角がないかほとんどない)従来のフォトレジストマスクを使用することができることに留意されたい。
【0053】
図15は、図14の側面図581上の第2の注入572の効果を図示している。図に示すように、入射イオン572は、前記アレイの活性域の外側の領域573に注入分離を提供する。この第2の注入分離は、通常、領域573のシート抵抗を最大化して前記チップまたはダイ上の活性アレイと前記アレイの外側との間に有効な分離を提供するように選択されるので、通常は上記のガードリング461の代わりに使用されるであろうと考えられるが、代替の実施形態では、前記ガードリングおよび前記第2の注入分離の両方を組み込むことができる。
【0054】
図16は、上記のAPDアレイを製作するさらなる工程を図示している。マスク550が前記サンプルから除去され、前記サンプルは、領域573内の注入損傷を安定させると共に領域573の抵抗率を最適化するために第2のアニール温度でアニール処理される。前記第2のアニール温度は、通常、注入領域501B、502B、503B、および573の別個の最適化を可能とするために、前記第1のアニール温度よりも低く設定される。次に、従来の処理を使用して、APDピクセル(この図に示す2つのピクセルとして任意に選ばれた)1および2にオーミック接点541Aおよび541Bがそれぞれ堆積し、前記共通カソード層500にオーミック接触を提供するオーミック接点543が堆積する。前記共通カソード接続543は前記アレイのAPDピクセルのすべてを流れる電流のアナログ和を提供し、前記APDピクセルがガイガーモードで動作しているときは、前記アレイの活性域上に入射する単一光子の数を数える手段を提供する。
【0055】
ここで、チップまたはダイの外側領域から前記アレイを分離する代替的な手段を示す図17について述べる。ここでは、図17によって提示される処理工程が図16によって提示される処理ステップに取って代わることとなり、第2の注入は使用されないであろうと想定される。その代わりに、前記アレイの外側部分の従来のメサ分離を可能とするためにマスク550を使用することが考えられ、図17に示す構造体を実現するために従来のウェットエッチング技法またはドライエッチング技法を使用することができる。このメサ分離法は前記傾斜縁部を有する仮想メサとは実質的に区別されるという事実により、メサの傾斜角および側壁の不動態化の要件はかなり緩和される。
【0056】
図18は、並列接続されたコンデンサおよび抵抗器の構造体を形成するために使用できる金属/絶縁体/金属(metal/insulating/metal:MIM)などの三層構造体の分解立体図を図示している。前記構造体は、第1の金属601と、厚さ610のイオン注入された半絶縁半導体領域602と、第2の金属603とを含む3層を有する。前記MIM構造体の横方向寸法は、611および612である。前記イオン注入された半導体領域602は、注入分離によって容易に実現されるように、前記抵抗率を大幅に上昇させるようにイオン注入された任意の半導体領域からなる。上記の構造体は第1の金属(M)、漏洩性絶縁体(I)、および第2の金属(M)からなるが、水平MIM構造を使用して類似の平面構造体が容易に形成され、この場合、前記上部金属および底部金属が、半導体の上に、両者間に0.1〜10ミクロンの間隙寸法の小さな間隙をおいて共平面ストリップライン構成で定置された平面金属ストリップによって置き換えられる。
【0057】
ここで、図18のMIM構造体の分解されていない図を示す図19について述べる。これらMIM構造体の利点は、SPAD素子のためのパッシブクエンチ回路に必要な静電容量(静電容量の値は1fF〜1000fFの範囲である)および抵抗(通常、抵抗値は10kオーム〜100Mオームの範囲である)の組み合わせを提供することにある。Rが前記MIM構造体の抵抗(そしてIは漏洩性絶縁体である)であり、Cが前記MIM構造体、前記SPADの固有静電容量、および前記MIM構造体と前記APDとの間のノードにおける一切の(接地に対する)追加的な浮遊静電容量即ち寄生静電容量の合成静電容量であるとき、前記静電容量の値は、通常、クエンチされる前記APDの固有静電容量の10倍以内であるように選択され、前記抵抗値は前記リセット/再充電サイクルに必要なRC時定数を提供するように選択される。当業者であれば、前記垂直MIM構造体を垂直MIS構造体、平面MIS構造体、平面MIM構造体、平面SIS構造体、または垂直SIS構造体で置き換えることができることを理解するであろう。
【0058】
図20は、上記の図面のMIM構造体をSPAD素子699とモノリシックに一体化できる様子を図示している。前記SPAD素子699は、613および614の横方向寸法を有している。
【0059】
図21は、前記第2の金属603を取り除いて前記イオン注入された半導体領域602をSPAD699の陽極または陰極に密着させて定置することにより、上記の構造体の三層MIMを垂直MIS構造体に変換することができる様子を図示している。適切なマスキングおよびイオン注入工程を使用してSPAD699の上に前記MIS構造体を簡単に直接形成することができるので、前記第2の金属603を排除することによって処理が大幅に簡略化される。
【0060】
ここで、本発明の垂直メサ構造体を伴う光検出器アレイ構造体、パッシブクエンチ回路、製作方法、およびその他の観点を含む本発明のさらに別の1組の実施形態を提示する。
【0061】
図22は、マスク機構710Aおよび710Bを含む半導体層構造体の側面図781ならびに本発明に係るAPDを処理するために使用される第1のマスクの平面図782を図示している。側面図781において、前記素子の層構造体は簡略化されており、前記n型半導体領域700と、非意図的にドープされた領域701と、前記p型半導体層702と、高濃度にドープされたp型層703とのみを示している。他の箇所でも述べたように、当業者であれば、ここで提示する好適な実施例は、その他のアレイの幾何学的形状、アレイ素子の数、形状および大きさ、ならびにドーピングの種類に適応するための普遍性を損なうことなく修正できることを理解できるであろう。
【0062】
図22は4ピクセルAPDアレイの設計を図示しており、したがって、それぞれピクセル1、2、3、および4(のピクセルの番号付けは任意である)の仮想傾斜メサを画定するために使用されるマスク領域710A、710B、710C、および710Dを含んでいる。側面図781に示すように、平面図782のマスクパターンは、厚さ721および傾斜角722の傾斜縁部を有するマスキング材料内に複製されている。前記マスキング材料の厚さは、前記注入イオンの実質的にすべてが前記マスクの下側のp型層702に達するのを止めるのに十分であるように選択すべきである。前記マスキング材料としては、傾斜角722が本発明の仮想傾斜縁部を生成するのに十分である限り、ウェットエッチングまたはドライエッチングされた二酸化ケイ素、窒化ケイ素、金属、またはフォトレジストを挙げることができる。
【0063】
ここで、上記のアレイの側面図781上の第1のイオン注入の効果を図示する図23について述べる。イオン注入装置内で前記基板の方向に向かって入射イオン771が加速している。前記入射イオン771は、マスキング層710Aおよび710Bの全厚さ721によって阻止され、機構710Aと710Bとの間で前記機構に隣接する妨げのない開口部では層703および702の中に通過することが許される。前記マスクの傾斜縁部領域では、前記入射イオン771は前記マスキング材料によって拡散され、前記入射イオン771のエネルギーが減少し、これによりこれらが中を通って移動する前記マスク層の厚さに依存する前記イオン771の可変浸透深さがもたらされる。この結果、図面に示すように、前記注入領域(701Bおよび702B)におおよそ台形の形状が生じる。注入領域703Bは層703の部分であり、ここには前記入射イオンがそのエネルギーのかなりの割合を注ぎ込み、層703のp型ドーピングを補償するように作用する比較的大きな欠陥密度が生じる。領域703Aは層703のほとんど注入がなされない領域であり、したがって、これら領域の本来のp型ドーピング、自由キャリア濃度、および抵抗率のかなりの割合を維持する。同様に、領域702Bは層702の注入がなされる領域であり、領域702Aは層702のほとんど注入がなされない領域である。
【0064】
前記第1のイオン注入が完了すると、前記素子は、前記注入損傷の一部を回復させ前記イオン注入領域702Bを安定させるために第1のアニール温度でアニール処理される。次に、マスク領域710A、710B、710C、および710Dを使用して領域703Bがエッチングされることで、これらの層を経由する一切の残留導電性が防止される。マスク領域710A、710B、710C、および710Dは、従来の技術を使用して除去される。次に、領域750内に第2のマスク層が堆積し、パターン化されるが、この層は、前記活性ピクセルの仮想傾斜を有する注入領域を保護し、前記APDアレイの外側を第2のイオン注入工程に暴露させるように設計されている。前記パターン化されたマスク750は、前記第2のイオン注入の入射イオンのほとんどすべてを領域702Bから遮断するのに十分な厚さ751を有する。前記第2の注入の目的は前記APDアレイを前記チップまたはダイの外側領域から分離することにあり、したがって、実施によっては、側壁が垂直である(したがって、傾斜角がないかほとんどない)従来のフォトレジストマスクを使用することができることに留意されたい。
【0065】
図24は、上記の図面の側面図781上の第2の注入772の効果を図示している。図面に示すように、入射イオン772は、前記アレイの活性域の外側の領域773に注入分離を提供する。この第2の注入分離は、通常、領域773のシート抵抗を最大化して前記チップまたはダイ上の活性アレイと前記アレイの外側との間に有効な分離を提供するように選択される。
【0066】
図25は、上記のAPD構造体を処理するさらなる工程を示している。MIS構造体の金属「M」領域が金属779、前記MIS構造体の漏洩性絶縁体「I」領域がイオン注入領域702B、および前記MIS構造体の半導体「S」領域が領域703Aおよび702Aの結合であるとき、ピクセル1と、2と、3と、4との間の間隙内に金属779が堆積し、前記MIS構造体を形成する。金属779は、図面に示すように、幅780および横方向寸法781を有する。ピクセル1の活性域は762A、ピクセル2の活性域は762Bとして示されている。接点743が、前記n型半導体領域700との共通カソード接続を形成している。接点779と743との間に好適なバイアスを印加することにより、前記構造体にバイアスを印加することができる。前記バイアスが前記降伏電圧よりも高く、前記MIS構造体が適切なパッシブクエンチ回路の特性を呈するならば、前記アレイの4つのピクセルは、共通カソード接続743が前記アレイのAPDのすべてを流れる電流のアナログ和を提供するモノリシックSPADアレイとして動作する。
【0067】
図26は、上述のAPDアレイ上のピクセル762Aおよび762Bの詳細を図示している。ピクセル間の水平方向の間隔は781であり、前記ピクセルの活性領域の水平方向の広さは782である。寸法783はピクセル間の間隙であり、寸法784は前記MIS構造体の「I」領域の水平方向の広さである。機構778は前記MIS構造体の「I」領域の水平方向の広さを画定する間隙である。
【0068】
ここで、図27を参照すると、これらの寸法は素子の設計の制約(ピクセルの大きさ、ピクセルの密度)および素子技術(リソグラフィ)の両方によって決定されるが、寸法781は、通常、5ミクロン〜100ミクロンの範囲となり、金属幅780および間隙784は、通常、0.1〜5.0ミクロンの寸法を有する。有限要素モデリングまたは共平面スロットライン理論(coplanar slotline theory)を使用して単位長当たりの静電容量を推定することができるが、これは、通常、0.1〜1.0fF/ミクロンの範囲となるので、10ミクロン×10ミクロンのピクセルは4〜40fFのバイパス容量を実現でき、多くのパッシブクエンチ回路の用途にはこの容量で十分である。図面に示す幾何学的形状は前記ピクセルを完全に取り囲む前記MIS構造体を示しているが、代替的な設計では、前記構造体の2つの側面だけまたは前記構造体の1つの側面だけのMIS構造体を考慮することもできることに留意されたい。
【0069】
図28は、前記傾斜縁部を有する仮想メサ構造体を形成するために使用する、n+GaAs基板800上に成長した半導体層を有する、注入前の前記層構造体の実施形態を図示している。厚さ811の層801は、基板800の上に直接成長したn型GaAsバッファ層であり、高品質のエピタキシャル成長を開始するために使用される。層801は、5×1017cmのドーピング密度でn型にドープされ、500nmの厚さ811に成長したGaAs層を含んでいる。層802は、5×1018cmのドーピング密度でn型にドープされ、50nmの厚さ812に成長したGa0.51In0.49P層からなっている。層803は、1×1018cmのドーピング密度でn型にドープされ、100nmの厚さ813に成長したGa0.51In0.49P層を含んでいる。層804は、1000nmの厚さ814に成長した非意図的にドープされたGa0.51In0.49P層を含んでいる。層805は、1×1017cmのドーピング密度でp型にドープされ、800nmの厚さ815に成長したGa0.51In0.49P層を含んでいる。層806は、前記ドーピングが層805との界面での5×1017cmのp型ドーピング密度から層807との界面での5×1018cmのp型ドーピング密度まで線形的に勾配しているGa0.51In0.49P層を含んでいる。層806の厚さ816は100nmである。層806は、通常おおよそガウス分布を呈する注入損傷のプロファイルにほぼ一致するように設計されており、したがって、ドーピングの急激な変化は、前記素子の層のうちのいくつかを補償過剰または補償不足のいずれともならないように正確に補償するのが困難であるかもしれない。層807は、5×1018cmのドーピング密度でp型にドープされ、30nmの厚さ817に成長したGa0.51In0.49P層を含んでいる。層808は、5×1018cmのドーピング密度でp型にドープされ、30nmの厚さ818に成長したAl0.52In0.48P層を含んでいる。層808は、下層のGa0.51In0.49P層807を不動態化し、層807と層808との間の界面での表面再結合を低減するための窓層として設計されており、これにより短波長光(即ち、青色波長)に関する性能を改善することができる。最後に、層809は、5×1019cmのドーピング密度でp型にドープされ、120nmの厚さ819に成長したGaAs接触層を含んでいる。層307の厚さ317は、部分的には、良好なオーミック接触を実現可能とすると共に、層807および808内でイオン注入損傷のピークを発生させる20keVのエネルギーを使用してHe+注入することを可能とする、分離注入のための犠牲層を提供するように選択される。記載の他の実施形態と同様に、すべての寸法、厚さ、ドーピング濃度、およびその他の特徴は単なる例示に過ぎないことに留意されたい。当業者であれば、普遍性を損なうことなく眼前の特定の用途に最適な他の構成を選択することができる。
【0070】
図29は、上記の構造体の深さ対密度のプロットを図示している。軸899は、1×1014/cmの最低密度から1×1019/cmの最高密度に亘る対数目盛上の密度である。軸898は、図28のサンプルの0〜1.50ミクロンの深さに亘る線形目盛を表しており、但し、0は図28中の構造体の層809の空気に暴露している側に当たる上面を表し、前記1.5ミクロンの深さはドープされていない層804の中間にある。破線852は、前記層の設計上のドーピングプロファイルを表している。実線851は、He+イオン注入損傷の効果を促進するためにSRIM(Stopping and Range of Ions in Matter:SRIM)を使用して計算されたガリウム空孔密度の計算を表している。前記計算上のガリウム空孔密度は前記サンプル内の欠陥の密度の推定を提供するために使用される。本明細書内で言及するSRIMまたは類似のソフトウェアは結晶構造のチャネリングの効果を計算しないので、その結果として生じる注入損傷が最も正確に結晶のチャネリング方向に対する角度での注入を表したことに留意されたい。
【0071】
目的は前記意図的なドーピング濃度(曲線852)と注入損傷プロファイル(曲線851)との間に妥当な一致を提供することであり、このとき、妥当な一致とは、前記ドーピング濃度の約2倍以内の注入損傷プロファイル(ガリウムの変位)を有することと定義される。ここで、SRIMなどのソフトウェアを使用して計算される前記損傷プロファイルは、入手可能な最善の実験上および理論上の解析に基づく近似であることを付記しておく。さらに、我々のアプローチはイオン注入損傷によって生じる欠陥の密度の代用としてガリウム空孔を使用するが、インジウム空孔、リン空孔、総空孔、総変位などを使用することも等しく有効であろうと考えられる。さらに、前記SRIMプログラムは前記注入が絶対零度で行われることを前提としており、その他の温度で行われる注入についてはその場アニール処理を行うこともできる。最後に、前記SRIMプログラムは、前記欠陥損傷を減少させ前記注入分離を安定させるために頻繁に使用される注入後のアニール処理の効果については評価しない。He+イオンエネルギーおよび注入量の値を表IIに示す。第1のイオン注入を使用する前記仮想傾斜縁部の幾何学的形状の形成に関して、実際のHe+イオン注入量は表IIの値よりも1〜10倍高いはずであると推定され、その後、300℃〜600℃の温度で第1のアニール処理が行われる。前記分離注入の形成に関して、前記He+イオン注入量は表IIの値よりも5倍〜25倍高くてもよく、その後、350℃〜600℃の温度で第2のアニール処理が行われる。
【0072】
表IIは、前記Ga空孔濃度の曲線851を計算するために使用されるHe+イオンエネルギーおよび注入量を例示している。
【0073】
【表2】
【0074】
本発明は上述の特定の実施形態に限定されるとみなすべきではなく、むしろ添付の請求項に適正に述べる本発明のすべての観点を網羅すると理解すべきである。本開示の検討の際には、本発明を適用できる様々な修正、等価な処理、ならびに多数の構造は、本発明が対象とする技術分野の当業者には明白となるであろう。請求項は、このような修正および等価物を網羅することが意図されている。
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