特許第6383536号(P6383536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383536
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】車両空調用安全装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   B60H1/22 611D
   B60H1/22 611Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-254265(P2013-254265)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-112917(P2015-112917A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100167520
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 良太
(72)【発明者】
【氏名】神山 直久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 武
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏起
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−203254(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/147308(WO,A1)
【文献】 特開2013−220708(JP,A)
【文献】 特開平10−287123(JP,A)
【文献】 特開2013−230021(JP,A)
【文献】 特開2007−075647(JP,A)
【文献】 特開平10−299561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータによって冷媒を加熱する加熱装置に異常が発生した場合に、復帰可能異常か復帰不可異常かどうか判定する異常判定手段と、
前記復帰可能異常、または前記復帰不可異常を前記異常判定手段判定すると、前記ヒータによる加熱を禁止する加熱禁止手段と、
前記復帰可能異常であると判定された場合に、前記復帰可能異常が解除されたかどうか判定する解除判定手段と、
前記復帰可能異常が解除された場合に、前記ヒータによる加熱を復帰させる加熱復帰手段と、を備え、
前記加熱禁止手段は、前記復帰不可異常が発生している場合には、前記ヒータによる加熱の禁止を継続し、
前記復帰可能異常は、前記ヒータへ電流を通電、または遮断するスイッチング素子、または前記ヒータの少なくとも一方の温度が各所定温度よりも高くなることを含み、
前記復帰不可異常は、前記スイッチング素子の駆動に関する異常である、
ことを特徴とする車両空調用安全装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両空調用安全装置であって
記加熱禁止手段は、前記復帰可能異常が発生した場合には、前記冷媒を循環させるポンプを駆動させつつ、前記ヒータによる加熱を禁止することを特徴とする車両空調用安全装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両空調用安全装置であって、
前記異常判定手段は、前記復帰不可異常が発生しているかどうか判定し、前記復帰不可異常が発生していない場合に、前記復帰可能異常を判定することを特徴とする車両空調用安全装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両空調用安全装置であって
記加熱禁止手段は、前記復帰不可異常が発生した場合には、前記ヒータによる加熱を禁止し、前記ポンプを停止させることを特徴とする車両空調用安全装置。
【請求項5】
ヒータによって冷媒を加熱する加熱装置に異常が発生した場合に、復帰可能異常か復帰不可異常かどうか判定し、
前記復帰可能異常であると判定された場合に、前記復帰可能異常が解除されたかどうか判定し、
前記復帰可能異常、または前記復帰不可異常を判定すると、前記ヒータによる加熱を禁止し、
前記復帰可能異常の発生により前記ヒータによる加熱を禁止した後に、前記復帰可能異常が解除された場合に、前記ヒータによる加熱を復帰させ、
前記復帰不可異常が発生している場合には、前記ヒータによる加熱の禁止を継続し、
前記復帰可能異常は、前記ヒータへ電流を通電、または遮断するスイッチング素子、または前記ヒータの少なくとも一方の温度が各所定温度よりも高くなることを含み、
前記復帰不可異常は、前記スイッチング素子の駆動に関する異常である、
ことを特徴とする車両空調用安全装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両空調用安全装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異常が発生した場合に、異常の内容に応じて運転を停止するとともに、電源開閉手段に電源遮断指令を送信し、電源開閉手段を開として電源オフした後、バッテリから電源の供給を受けて電源開閉手段を閉として再度、電源オンとし、電源をリセットするものが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−218447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の技術では、異常が解除されたかどうかに関わらず、電源オンとした時に電源をリセットするので、異常が解除されていない場合には、電源オンとした後に、再度異常が発生し、電源オン後、直ぐに運転が停止される、といった問題点がある。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、異常が発生し、異常が解除されていない場合に、運転復帰、停止が繰り返し行われることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る車両空調用安全装置は、ヒータによって冷媒を加熱する加熱装置に異常が発生した場合に、復帰可能異常か復帰不可異常かどうか判定する異常判定手段と、前記復帰可能異常、または前記復帰不可異常を前記異常判定手段判定すると、前記ヒータによる加熱を禁止する加熱禁止手段と、前記復帰可能異常であると判定された場合に、前記復帰可能異常が解除されたかどうか判定する解除判定手段と、前記復帰可能異常が解除された場合に、前記ヒータによる加熱を復帰させる加熱復帰手段と、を備え、前記加熱禁止手段は、前記復帰不可異常が発生している場合には、前記ヒータによる加熱の禁止を継続し、前記復帰可能異常は、前記ヒータへ電流を通電、または遮断するスイッチング素子、または前記ヒータの少なくとも一方の温度が各所定温度よりも高くなることを含み、前記復帰不可異常は、前記スイッチング素子の駆動に関する異常である
【0007】
本発明の別の態様に係る車両空調用安全装置の制御方法は、ヒータによって冷媒を加熱する加熱装置に異常が発生した場合に、復帰可能異常か復帰不可異常かどうか判定し、前記復帰可能異常であると判定された場合に、前記復帰可能異常が解除されたかどうか判定し、前記復帰可能異常、または前記復帰不可異常を判定すると、前記ヒータによる加熱を禁止し、前記復帰可能異常の発生により前記ヒータによる加熱を禁止した後に、前記復帰可能異常が解除された場合に、前記ヒータによる加熱を復帰させ、前記復帰不可異常が発生している場合には、前記ヒータによる加熱の禁止を継続し、前記復帰可能異常は、前記ヒータへ電流を通電、または遮断するスイッチング素子、または前記ヒータの少なくとも一方の温度が各所定温度よりも高くなることを含み、前記復帰不可異常は、前記スイッチング素子の駆動に関する異常である
【発明の効果】
【0008】
これら態様によると、車両空調用の加熱装置に復帰可能異常が発生し、復帰可能異常が解除されていない場合にはヒータによる加熱が禁止されるので、ヒータによる加熱復帰、停止が繰り返し行われることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の車両用空調装置の概略構成図である。
図2】加熱部の回路図である。
図3】加熱部の一部を示す断面図である。
図4】ヒータユニットの制御方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の車両用空調装置1の概略構成図である。ここでは、ハイブリッド車両や電動車両に搭載される車両用空調装置1について説明するが、これに限られることはない。
【0012】
車両用空調装置1は、ブロワ3によって風路2を流れる空気を冷却(除湿)するクーラユニット4と、空気を温めるヒータユニット5と、コントローラ25とを備える。
【0013】
クーラユニット4は、冷媒を圧縮し、循環させるコンプレッサ4aと、圧縮した冷媒を冷却するコンデンサ4bと、圧縮、冷却した冷媒を蒸発させるエバポレータ4cと、エバポレータ4cに冷媒を噴射する膨張弁4dとを備える。クーラユニット4は、エバポレータ4cで冷媒が蒸発する時に、風路2を流れる空気を冷却(除湿)する。
【0014】
ヒータユニット5は、冷却水(冷媒)を循環させるウォータポンプ5aと、冷却水を温める加熱部5bと、温めた冷却水によって風路2を流れる空気を温めるヒータコア5cと、冷却水から空気を除去する空気抜きタンク5dとを備える。なお、ヒータコア5cに流れる空気の流量はミックスドア5eによって調整することができる。
【0015】
次に加熱部5bについて、図2を用いて説明する。図2は加熱部5bの回路図である。加熱部5bは、直流電源11と、直流電源11から供給される電流によって作動する電気ヒータ12と、電気ヒータ12を収容するタンク13と、電気ヒータ12への電流を供給、遮断する安全装置14とを備える。
【0016】
直流電源11は、ハイブリッド車両や電動車両などに搭載される強電バッテリである。直流電源11の出力電圧は、30V以上の強電であり、ここでは350Vである。直流電源11からの電流は、供給ライン15を通じて電気ヒータ12に供給される。直流電源11に代えて、交流電源を電源として用いてもよい。直流電源11は、コンプレッサ4aなどにも電流を供給している。
【0017】
電気ヒータ12としては、例えば、通電することによって発熱するシーズヒータ又はPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ等を挙げることができる。
【0018】
安全装置14は、供給ライン15に設けられるトランジスタとしてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)20と、IGBT20を制御する制御電流を切り換えるバイメタルスイッチ22と、IGBT20に制御電流(DC12V)を供給する電源装置24とを備える。
【0019】
また、安全装置14は、供給ライン15における電気ヒータ12の上流と下流とを短絡可能な短絡ライン30と、直流電源11と短絡ライン30との間の供給ライン15に設けられる電力ヒューズ31と、短絡ライン30に設けられるバイメタルスイッチ32とを備える。
【0020】
IGBT20は、制御電流が遮断されると電気ヒータ12へ供給される電流を遮断し、制御電流が通電すると電気ヒータ12へ供給される電流を通電させる。IGBT20は、短絡ライン30が短絡する位置と比較して電気ヒータ12の近くの供給ライン15に設けられる。IGBT20には、短絡ライン30が短絡したときには、直流電源11からの電流が流れない。これにより、IGBT20は、短絡ライン30が短絡したときの大電流から保護される。
【0021】
IGBT20は、電気ヒータ12の上流と下流とに一対設けられる。具体的には、一方のIGBT20は、供給ライン15の電流の流れ方向において、短絡ライン30の一端30aとの接点の下流かつ電気ヒータ12の上流に設けられ、他方のIGBT20は、電気ヒータ12の下流かつ短絡ライン30の他端30bとの接点の上流に設けられる。
【0022】
IGBT20は、制御電流が通電している場合には、供給ライン15の電流の流れを許容する。一方、IGBT20は、水温センサ23からの電気信号などに基づいてコントローラ25が電源装置24からの制御電流を遮断するようにドライバ20aに指令を行った場合、又はバイメタルスイッチ22によって制御電流が遮断された場合には、その機能を停止して供給ライン15の電流の流れを遮断する。
【0023】
IGBT20は、例えば、図3に示すようにタンク13と接するように配置され、ウォータポンプ5aによって循環する冷却水によって冷却される。図3は、電気ヒータ12、タンク13の概略断面図である。なお、IGBT20は、図3の位置に限られず、冷却水によって冷却可能となるように配置されればよい。
【0024】
バイメタルスイッチ22は、通常の状態で通電状態に切り換えられているノーマルクローズタイプである。バイメタルスイッチ22は、通電状態に切り換えられたときにバイメタルスイッチ32と比較して小さな電流を流す弱電側のバイメタルスイッチである。バイメタルスイッチ22は、図3に示すように電気ヒータ12と伝熱可能に接触する。バイメタルスイッチ22は、電気ヒータ12の温度が第1設定温度に達したときに制御電流を遮断し、電気ヒータ12の温度が第1設定温度と比較して低い第2設定温度に低下したときに制御電流を通電させる。バイメタルスイッチ22は、一対設けられ、電源装置24と各々のIGBT20との間にそれぞれ介装される。
【0025】
第1設定温度は、タンク13内の冷却水の許容温度範囲の上限水温Tw_limと比較して高い温度に設定される。これにより、バイメタルスイッチ22は、コントローラ25によるIGBT20の制御が正常に行われている場合には通電状態に維持される。一方、第2設定温度は、バイメタルスイッチ22が制御電流を遮断してからタンク13内の冷却水の温度が充分に下がった場合の温度に設定される。
【0026】
図2に示すように、短絡ライン30は、供給ライン15の電流の流れ方向において、電力ヒューズ31の下流かつ電気ヒータ12の上流に一端30aが接続され、電気ヒータ12の下流かつ直流電源11の上流に他端30bが接続される。短絡ライン30は、供給ライン15に接続される一端30aと他端30bとの間を接続する極めて抵抗の小さな導体である。換言すれば、短絡ライン30が電気ヒータ12の上流と下流とを短絡したときには、短絡ライン30の抵抗は、電気ヒータ12の抵抗よりも小さくなっている。
【0027】
バイメタルスイッチ32は、通常の状態で開放状態に切り換えられているノーマルオープンタイプである。バイメタルスイッチ32は、通電状態に切り換えられたときにバイメタルスイッチ22と比較して大きな電流を流す強電側のバイメタルスイッチである。バイメタルスイッチ32は、図3に示すように電気ヒータ12と伝熱可能に接触する。
【0028】
バイメタルスイッチ32は、電気ヒータ12の温度が第1設定温度と比較して高い第3設定温度に達したときに通電状態に切り換えられる。短絡ライン30は、電気ヒータ12の温度が第3設定温度未満の状態では短絡されていない。短絡ライン30は、電気ヒータ12の温度が第3設定温度に達してバイメタルスイッチ32が通電状態に切り換えられることによって短絡状態となる。
【0029】
第3設定温度は、バイメタルスイッチ32のバイメタルの臨界温度である。第3設定温度は、電気ヒータ12の温度が第1設定温度に達してバイメタルスイッチ22がIGBT20への制御電流を遮断して供給ライン15を遮断状態とした後にオーバーシュートによって上昇する電気ヒータ12の最大温度と比較して高い温度に設定される。そのため、バイメタルスイッチ22及びIGBT20が正常に作動している場合には、電気ヒータ12の温度が第3設定温度に達することはない。
【0030】
電力ヒューズ31は、短絡ライン30が短絡したときに瞬間的に流れる大電流(過電流)によって切断される。短絡ライン30の抵抗は極めて小さいため、短絡ライン30が短絡すると、電力ヒューズ31には、短絡ライン30の短絡前に電気ヒータ12に流れていた電流と比較して大きな大電流(過電流)が流れる。電力ヒューズ31は、直流電源11から供給される電流によって、当該電流を供給するためのハーネス(図示省略)の発熱が許容温度を超える前に切断される。この許容温度は、ハーネスを構成する部品が損傷しない程度の温度に設定される。
【0031】
コントローラ25は、水温センサ23からの信号などに基づいてウォータポンプ5aやドライバ20aなどを制御し、クーラユニット4、及びヒータユニット5を制御する。
【0032】
次に、ヒータユニット5の制御方法について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0033】
ステップS100では、コントローラ25は、フェールフラグがONとなっているかどうか判定する。処理は、フェールフラグがONの場合にはステップS102に進み、フェールフラグがOFFの場合にはステップS101に進む。
【0034】
ステップS101では、コントローラ25は、新たにフェールを検知したかどうか判定する。処理は、新たにフェールを検知した場合にはステップS102に進み、新たなフェールを検知していない場合にはステップS113に進む。
【0035】
ステップS102では、コントローラ25は、フェールが復帰不可異常であるかどうか判定する。復帰不可異常とは、IGBT20の駆動に関わる異常であり、例えばIGBT20の入力信号と駆動信号とが一致していないIGBT機能異常や、IGBT20を駆動させるドライバ20aが故障しているドライバ異常などである。処理は、フェールが復帰不可異常である場合には、ステップS103に進み、フェールが復帰不可異常ではなく、復帰可能異常である場合には、ステップS106に進む。復帰可能異常とは、直流電源11の電圧異常、IGBT20の温度が設定温度よりも高くなるIGBT温度異常、電気ヒータ12の温度が設定温度よりも高くなるヒータ温度異常などである。ヒータ温度異常は、例えば冷却水が漏れた場合や、バイメタルスイッチ22が作動した場合に生じる。
【0036】
ステップS103では、コントローラ25は、フェールフラグをONにする。
【0037】
ステップS104では、コントローラ25は、電気ヒータ12をOFFにし、電気ヒータ12がONになることを禁止し、電気ヒータ12によって冷却水が加熱されることを禁止する。なお、復帰不可異常が発生した場合には、復帰不可異常の原因となった箇所が修理されるまで電気ヒータ12がONになることが禁止される。
【0038】
ステップS105では、コントローラ25は、ウォータポンプ5aを停止する。
【0039】
ステップS106では、コントローラ25は、復帰可能異常が解除されたかどうか判定する。具体的には、フェールフラグがONとなった原因の復帰可能異常が解除されたかどうか判定する。処理は、復帰可能異常が解除された場合には、ステップS107に進み、復帰可能異常が解除されていない場合にはステップS110に進む。
【0040】
ステップS107では、コントローラ25は、ヒータユニット5の機能が正常かどうか判定する。ステップS106では、フェールフラグがONになった原因の復帰可能異常が解除されたかどうか判定しているが、ここでは、その他の復帰可能異常が発生していないかどうか判定する。処理は、他の復帰可能異常が発生しておらず、ヒータユニット5の機能が正常な場合にはステップS108に進み、ヒータユニット5の機能が正常ではない場合にはステップ110に進む。
【0041】
ステップS108では、コントローラ25は、フェールフラグをOFFにする。
【0042】
ステップS109では、コントローラ25は、ウォータポンプ5aの駆動を継続する。
【0043】
ステップS110では、コントローラ25は、フェールフラグをONにする。
【0044】
ステップS111では、コントローラ25は、電気ヒータ12をOFFにし、電気ヒータ12がONになることを禁止し、電気ヒータ12によって冷却水が加熱されることを禁止する。なお、ここでは、フェールフラグがONとなっている間、電気ヒータ12をONにすることはできないが、ステップS104とは異なり、フェールフラグがOFFになると、電気ヒータ12をONにすることができる。
【0045】
ステップS112では、コントローラ25は、ウォータポンプ5aの駆動を継続する。復帰可能異常が発生している場合には、例えばIGBT20の温度が高くなっていることがあり、IGBT20などを冷却する必要がある。そのため、復帰可能異常が発生し、ヒータユニット5の機能が正常ではない場合には、ウォータポンプ5aの駆動を継続し、冷却水によって例えばIGBT20を冷却し、復帰可能異常が解除されるようにする。
【0046】
ステップS113では、コントローラ25は、水温センサ23の信号が正常であるかどうか判定する。具体的には、水温センサ23によって検出した冷却水の温度TwをA/D変換した値が「open」または「close」の状態から動かないかどうか判定し、A/D変換した値が「open」または「close」の状態から動かない場合には正常ではないと判定する。処理は、水温センサ23の信号が正常である場合には、ステップS114に進み、水温センサ23の信号が正常ではない場合には、ステップS119に進む。
【0047】
ステップS114では、コントローラ25は、ウォータポンプ5aが正常に駆動しているかどうか判定する。具体的には、コントローラ25は、ウォータポンプ5aから駆動信号が出力されているかどうか判定し、駆動信号が出力されている場合には正常であると判定する。処理は、ウォータポンプ5aが正常に駆動している場合にはステップS116に進み、ウォータポンプ5aが正常に駆動していない場合にはステップS115に進む。
【0048】
ステップS115では、コントローラ25は、ウォータポンプ5aの駆動を停止する。
【0049】
ステップS116では、コントローラ25は、水温センサ23からの信号に基づいて電気ヒータ12がOFFになってから冷却水の温度Twが上昇したかどうか判定する。処理は、冷却水の温度Twが上昇した場合にはステップS117に進み、冷却水の温度Twが上昇していない場合にはステップS118に進む。なお、電気ヒータ12がONとなっている場合も、処理は、ステップS118に進む。
【0050】
ステップS117では、コントローラ25は、フェールフラグをONにする。なお、このフェールは、復帰不可異常である。電気ヒータ12をOFFとした後に、冷却水の水温Twが上昇する場合には、電気ヒータ12、ドライバ20a、IGBT20に異常が発生している可能性がある。そのため、本実施形態では、このフェールを復帰不可異常とし、電気ヒータ12がONになることを禁止している。
【0051】
ステップS118では、コントローラ25は、冷却水の水温Twが許容温度範囲の上限水温Tw_limよりも低いかどうか判定する。処理は水温Twが上限水温Tw_limよりも低い場合にはステップS120に進み、水温Twが上限水温Tw_lim以上の場合にはステップS119に進む。
【0052】
ステップS119では、コントローラ25は、電気ヒータ12をOFFにする。
【0053】
ステップS120では、コントローラ25は、ヒータコア5cによって温められた空気が所望の温度となるように、電気ヒータ12によって冷却水を温める。
【0054】
ステップS121では、コントローラ25は、ウォータポンプ5aの駆動を継続する。
【0055】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0056】
復帰可能異常が発生して電気ヒータ12をOFFとし、電気ヒータ12による冷却水の加熱を禁止した後に、復帰可能異常が解除された場合には、電気ヒータ12による加熱を復帰させる。復帰可能異常が解除されたことを確認した後に、電気ヒータ12による加熱を可能とすることで、例えばイグニッションスイッチがONにされる度に、電気ヒータ12がONになり、その後、復帰可能異常の発生により直ぐに電気ヒータ12がOFFとなることを抑制することができる。このように、復帰可能異常が発生し、復帰可能異常が解除されていない間に、電気ヒータ12のOFF/ONが繰り返し行われることを抑止することができる。これにより、運転者に違和感を与えることを抑制することができる。また、電気ヒータ12のOFF/ONが繰り返し行われると、ヒータユニット5で更なる異常が発生することも考えられるが、本実施形態では、これを抑制することができる。
【0057】
復帰可能異常には、IGBT20の温度、または電気ヒータ12の温度の少なくとも一方が各設定温度よりも高くなることが含まれており、復帰可能異常が発生した場合には、ウォータポンプ5aの駆動を継続しつつ、電気ヒータ12による加熱を禁止する。これにより、ウォータポンプ5aによって冷却水を循環させて、IGBT20や電気ヒータ12を冷却して復帰可能異常を早期に解除することができる。
【0058】
電気ヒータ12をOFFにした後に、冷却水の温度Twが上昇した場合には、電気ヒータ12がONとなることを禁止する。これにより、冷却水の温度Twがさらに上昇することを抑制することができ、ヒータユニット5で更なる異常が発生することを抑制することができる。
【0059】
復帰不可異常が発生しているかどうか、まず判定し、復帰不可異常が発生していない場合に、復帰可能異常が発生しているかどうか判定する。そして復帰不可異常が発生している場合には、復帰可能異常が発生、解除された場合でも、電気ヒータ12による加熱を禁止する。これにより、ヒータユニット5の更なる異常発生を抑制することができる。
【0060】
IGBT20の駆動に関わる異常が発生した場合には、復帰不可異常が発生したと判定し、電気ヒータ12による加熱を禁止する。これにより、ヒータユニット5の更なる異常発生を抑制することができる。
【0061】
フェールフラグがONとなった原因となる復帰可能異常が解除された場合でも、ヒータユニット5が正常に動作することを確認した後に、電気ヒータ12をONにする。これにおり、電気ヒータ12がONとなって直ぐにOFFとなることを抑制することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0063】
1 車両用空調装置
5 ヒータユニット
5a ウォータポンプ(ポンプ)
5b 加熱部(加熱装置)
12 電気ヒータ(ヒータ)
14 安全装置
20 IGBT(スイッチング素子)
25 コントローラ(異常判定手段、解除判定手段、加熱禁止手段、加熱復帰手段)
図1
図2
図3
図4