特許第6383540号(P6383540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383540
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】スピニング成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/14 20060101AFI20180820BHJP
   B21D 37/16 20060101ALI20180820BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B21D22/14 Z
   B21D37/16
   H05B6/10 371
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-13935(P2014-13935)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-139804(P2015-139804A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年12月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂根 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】今村 嘉秀
(72)【発明者】
【氏名】三上 恒平
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勇人
(72)【発明者】
【氏名】北野 博
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−041965(JP,A)
【文献】 特開2013−161767(JP,A)
【文献】 特開2007−294165(JP,A)
【文献】 特開2005−136095(JP,A)
【文献】 特開2006−294396(JP,A)
【文献】 特開2006−212705(JP,A)
【文献】 特開2006−341310(JP,A)
【文献】 特開2011−218427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/14
B21D 37/16
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形されるべき板材を回転させる回転軸と、
前記板材における変形対象部位を押圧して前記板材を変形させる加工具と、
前記板材を挟んで前記加工具と反対側に配置された、前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する裏側加熱器であって、前記回転軸の周方向に延びる、前記板材に沿った二重円弧状のコイル部を有する電通管を含む裏側加熱器と、
前記板材に対して前記加工具と同じ側に配置された、前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する表側加熱器であって、前記回転軸の周方向に延びる、前記板材に沿った二重円弧状のコイル部を有する電通管を含む表側加熱器と、
前記裏側加熱器の電通管および前記表側加熱器の電通管と電気的に接続され、かつ、前記裏側加熱器の電通管および前記表側加熱器の電通管と連通する一対の接続箱を含むヒートステーションと、
前記一対の接続箱の一方に冷却液を供給するとともに、他方から冷却液を回収することによって、前記裏側加熱器の電通管および前記表側加熱器の電通管に冷却液を循環させる循環装置と、を備え、
前記ヒートステーションは、前記表側加熱器の電通管と前記裏側加熱器の電通管に電流が直列に流れ、かつ、前記表側加熱器の電通管と前記裏側加熱器の電通管に冷却液が並列に流れるように構成されている、スピニング成形装置。
【請求項2】
前記表側加熱器の電通管および前記裏側加熱器の電通管のそれぞれは、前記コイル部から前記回転軸の径方向外向きに延びる一対のリード部を有し、
前記ヒートステーションは、前記表側加熱器の前記一対のリード部とそれぞれ接続された表側第1中継箱および表側第2中継箱と、前記表側第1中継箱と前記一対の接続箱の一方を連通させる導電性の第1中継管と、前記裏側加熱器の前記一対のリード部とそれぞれ接続された裏側第1中継箱および裏側第2中継箱と、前記裏側第2中継箱と前記一対の接続箱の他方を連通させる導電性の第2中継管と、前記表側第1中継箱と前記裏側第1中継箱を連通させる絶縁性の第1支流管と、前記表側第2中継箱と前記裏側第2中継箱を連通させる絶縁性の第2支流管と、前記表側第2中継箱と前記裏側第1中継箱を電気的に接続する導電部材を含む、請求項に記載のスピニング成形装置。
【請求項3】
前記導電部材は、内部に冷却液が流れるように構成された中空の部材であり、
前記第1支流管と前記第2支流管の一方は、前記表側加熱器または前記裏側加熱器の前記電通管を流れた冷却液を前記表側第2中継箱または前記裏側第1中継箱から前記導電部材に導く上流チューブと、前記導電部材から前記裏側第2中継箱または前記表側第1中継箱に冷却液を導く下流チューブと、を含む、請求項に記載のスピニング成形装置。
【請求項4】
前記導電部材に接しながら前記導電部材に沿って延びる冷却管をさらに備え、
前記第1支流管と前記第2支流管の一方は、前記表側加熱器または前記裏側加熱器の前記電通管を流れた冷却液を前記表側第2中継箱または前記裏側第1中継箱から前記冷却管に導く上流チューブと、前記冷却管から前記裏側第2中継箱または前記表側第1中継箱に冷却液を導く下流チューブと、を含む、請求項に記載のスピニング成形装置。
【請求項5】
前記回転軸に取り付けられた、前記板材の中心部を支持する受け治具をさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載のスピニング成形装置。
【請求項6】
前記裏側加熱器と前記表側加熱器のそれぞれは、前記コイル部の内側円弧部を前記板材と反対側から覆う第1コアと、前記コイル部の外側円弧部を前記板材と反対側から覆う第2コアと、前記コイル部の内側円弧部および前記第1コアを被覆する内側遮熱層と、前記コイル部の外側円弧部および前記第2コアを被覆する外側遮熱層と、を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のスピニング成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を回転させながら所望の形状に成形するスピニング成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、板材を回転させながらその板材に加工具を押圧して当該板材を変形させるスピニング成形装置が知られている。例えば、特許文献1には、図13に示すようなチタン合金用のスピニング成形装置100が開示されている。
【0003】
図13に示すスピニング成形装置100は、成形されるべき板材Wをマンドレル(成形型)110に押し付けるヘラ120と、ヘラ120により押圧される部分(変形対象部位)を高周波誘導加熱により局所的に加熱するコイル130を含む。コイル130は、先端部以外はヘラ120と平行であり、コイル130の先端部は、ヘラ120の先端部に近づくように折り曲げられている。すなわち、コイル130は、先端部で点状に加熱を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−218427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明の発明者らは、スピニング成形装置では、板材における変形対象部位の局所的な加熱を板材の回転方向に連続的に行えば、良好な成形性が得られることを見出した。このような観点から、本発明の発明者らは、スピニング成形装置に好適な加熱器として、板材の回転方向に延びる、板材に沿った二重円弧状のコイル部を有する加熱器を開発した。
【0006】
ところが、板材の回転方向に延びる二重円弧状のコイル部は、その長さ故に通電による発熱量が多くなる。しかも、板材に沿っているため、板材から熱輻射を受ける面積が大きくなる。従って、スピニング成形中にコイル部が溶融するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、二重円弧状のコイル部が溶融することを防止できるスピニング成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のスピニング成形装置は、成形されるべき板材を回転させる回転軸と、前記板材における変形対象部位を押圧して前記板材を変形させる加工具と、前記変形対象部位を誘導加熱により局所的に加熱する加熱器であって、前記回転軸の周方向に延びる、前記板材に沿った二重円弧状のコイル部を有する電通管を含む加熱器と、前記電通管に冷却液を循環させる循環装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、電通管を循環する冷却液によって電通管が冷却されるので、電通管のコイル部が溶融することを防止できる。
【0010】
上記のスピニング成形装置は、前記電通管と電気的に接続され、かつ、前記電通管と連通する一対の接続箱を含むヒートステーションをさらに備え、前記循環装置は、前記一対の接続箱の一方に冷却液を供給するとともに、他方から冷却液を回収することによって、前記電通管に冷却液を循環させてもよい。この構成によれば、ヒートステーションの一対の接続箱と電通管との接続によって、電力ラインと冷却液ラインの双方が形成される。このため、シンプルな構成とすることができる。
【0011】
前記加熱器は、前記板材を挟んで前記加工具と反対側に配置された裏側加熱器と、前記板材に対して前記加工具と同じ側に配置された表側加熱器の両方であってもよい。この構成によれば、板材を板厚方向の両側から加熱することができ、成形性をより向上させることができる。
【0012】
前記ヒートステーションは、前記表側加熱器の電通管と前記裏側加熱器の電通管に電流が直列に流れ、かつ、前記表側加熱器の電通管と前記裏側加熱器の電通管に冷却液が並列に流れるように構成されていてもよい。この構成によれば、表側加熱器の電通管と裏側加熱器の電通管に電流が直列に流れるため、双方の電通管41,51を含む共振回路における共振周波数を小さくすることができる。誘導加熱では共振周波数が低いほど電流浸透深さ(電流の深さ)が深くなるため、板材を表面から内部まで厚さ方向に均一に加熱することができる。また、表側加熱器の電通管と裏側加熱器の電通管に冷却液が並列に流れるため、双方の電通管に同じ温度の冷たい冷却液を導くことができ、双方の電通管を効果的に冷却することができる。
【0013】
例えば、前記表側加熱器の電通管および前記裏側加熱器の電通管のそれぞれは、前記コイル部から前記回転軸の径方向外向きに延びる一対のリード部を有し、前記ヒートステーションは、前記表側加熱器の前記一対のリード部とそれぞれ接続された表側第1中継箱および表側第2中継箱と、前記表側第1中継箱と前記一対の接続箱の一方を連通させる導電性の第1中継管と、前記裏側加熱器の前記一対のリード部とそれぞれ接続された裏側第1中継箱および裏側第2中継箱と、前記裏側第2中継箱と前記一対の接続箱の他方を連通させる導電性の第2中継管と、前記表側第1中継箱と前記裏側第1中継箱を連通させる絶縁性の第1支流管と、前記表側第2中継箱と前記裏側第2中継箱を連通させる絶縁性の第2支流管と、前記表側第2中継箱と前記裏側第1中継箱を電気的に接続する導電部材を含んでもよい。
【0014】
前記導電部材は、内部に冷却液が流れるように構成された中空の部材であり、前記第1支流管と前記第2支流管の一方は、前記表側加熱器または前記裏側加熱器の前記電通管を流れた冷却液を前記表側第2中継箱または前記裏側第1中継箱から前記導電部材に導く上流チューブと、前記導電部材から前記裏側第2中継箱または前記表側第1中継箱に冷却液を導く下流チューブと、を含んでもよい。この構成によれば、表側加熱器または裏側加熱器の電通管を冷却後の冷却液を利用して、導電部材をも冷却することができる。
【0015】
あるいは、上記のスピニング成形装置は、前記導電部材に接しながら前記導電部材に沿って延びる冷却管をさらに備え、前記第1支流管と前記第2支流管の一方は、前記表側加熱器または前記裏側加熱器の前記電通管を流れた冷却液を前記表側第2中継箱または前記裏側第1中継箱から前記冷却管に導く上流チューブと、前記冷却管から前記裏側第2中継箱または前記表側第1中継箱に冷却液を導く下流チューブと、を含んでもよい。この構成でも、表側加熱器または裏側加熱器の電通管を冷却後の冷却液を利用して、導電部材をも冷却することができる。
【0016】
上記のスピニング成形装置は、前記回転軸に取り付けられた、前記板材の中心部を支持する受け治具をさらに備えてもよい。受け治具は、マンドレルと異なり、成形面を有しない。すなわち、マンドレルを用いた場合には、加工具によって板材の変形対象部位がマンドレルに押し付けられるが、受け治具を用いた場合には、板材の変形対象部位が、受け治具から離れた位置で加工具によって押圧される。換言すれば、板材の裏側(加工具と反対側)には空間が確保される。このため、加工中の板材の形状に拘らずに、裏側加熱器を板材の変形対象部位の直近に位置させることができ、変形対象部位を適切に加熱することができる。
【0017】
前記加熱器は、前記コイル部の内側円弧部を前記板材と反対側から覆う第1コアと、前記コイル部の外側円弧部を前記板材と反対側から覆う第2コアと、前記コイル部の内側円弧部および前記第1コアを被覆する内側遮熱層と、前記コイル部の外側円弧部および前記第2コアを被覆する外側遮熱層と、を含んでもよい。この構成によれば、コイル部およびコアが板材から受ける熱輻射を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、二重円弧状のコイル部が溶融することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係るスピニング成形装置の概略構成図である。
図2図1に示すスピニング成形装置における表側加熱器および裏側加熱器ならびにヒートステーションの断面側面図である。
図3図2のIII−III線に沿った位置での表側加熱器およびヒートステーションの平面図である。
図4図2のIV−IV線に沿った位置での裏側加熱器およびヒートステーションの平面図である。
図5図2のV−V線に沿った位置から見たヒートステーションの正面図である。
図6図2のVI−VI線に沿った位置から見たヒートステーションの正面図である。
図7】(a)は本発明の第2実施形態に係るスピニング成形装置における表側加熱 器の一部およびヒートステーションの平面図、(b)は同スピニング成形装置におけ る裏側加熱器の一部およびヒートステーションの平面図である。
図8】第2実施形態におけるヒートステーションの正面図である。
図9】第1変形例の裏側加熱器の一部の断面側面図である。
図10】第2変形例の裏側加熱器の一部の断面側面図である。
図11】第3変形例の裏側加熱器の一部の断面側面図である。
図12】第4変形例の裏側加熱器の一部の断面側面図である。
図13】従来のスピニング成形装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係るスピニング成形装置1を示す。このスピニング成形装置1は、成形されるべき板材9を回転させる回転軸21と、回転軸21と板材9の間に介在する受け治具22と、固定治具31を備えている。受け治具22は、回転軸21に取り付けられて板材9の中心部91を支持し、固定治具31は、受け治具22と共に板材9を挟持する。さらに、スピニング成形装置1は、板材9における回転軸21の軸心20から所定距離Rだけ離れた変形対象部位92を誘導加熱により局所的に加熱する表側加熱器5および裏側加熱器4と、変形対象部位92を押圧して板材9を変形させる加工具10を備えている。
【0021】
回転軸21の軸方向(軸心20が延びる方向)は、本実施形態では鉛直方向である。ただし、回転軸21の軸方向は、水平方向や斜め方向であってもよい。回転軸21の下部は基台11に支持されており、基台11内には回転軸21を回転させるモータ(図示せず)が配置されている。回転軸21の上面はフラットであり、この上面に受け治具22が固定されている。
【0022】
板材9は、例えばフラットな円形状の板である。ただし、板材9の形状は、多角形状や楕円状であってもよい。また、板材9は、必ずしも全面に亘ってフラットである必要はなく、例えば中心部91の厚さが周縁部93の厚さよりも厚かったり、全体または一部が予めテーパー状に加工されたりしてもよい。板材9の材質は、特に限定されるものではないが、例えばチタン合金である。
【0023】
受け治具22は、板材9における成形開始位置によって規定される円に収まるサイズを有している。例えば、受け治具22が円盤状である場合は、受け治具22の直径は、板材9における成形開始位置によって規定される円の直径以下である。また、従来のマンドレルと異なり、板材9は、受け治具22の径方向外向きの側面に押し付けられて変形されることはない。
【0024】
固定治具31は、加圧ロッド32に取り付けられている。加圧ロッド32は、駆動部33によって上下方向に駆動されることにより、固定治具31を介して板材9を受け治具22に押し付ける。例えば、加圧ロッド32および駆動部33は油圧シリンダであり、回転軸21の上方に配置されたフレーム12に駆動部33が固定され、駆動部33には加圧ロッド32を回転可能に支持するベアリングが内蔵される。
【0025】
なお、加圧ロッド32および駆動部33は必ずしも必要ではない。例えば、固定治具31は、ボルトやクランプなどの締結部材によって板材9と共に受け治具22に固定されてもよい。あるいは、固定治具31を省略し、例えばボルトによって板材9を受け治具22に直接的に固定してもよい。
【0026】
本実施形態では、板材9の変形対象部位92を押圧する加工具10が板材9の上方に配置され、加工具10によって板材9が受け治具22を収容するような下向きに開口する形状に加工される。すなわち、板材9の上面が表面であり、板材9の下面が裏面である。ただし、加工具10が板材9の下方に配置され、加工具10によって板材9が固定治具31を収容するような上向きに開口する形状に加工されてもよい。すなわち、板材9の下面が表面であり、板材9の上面が裏面であってもよい。
【0027】
加工具10は、径方向移動機構14により回転軸21の径方向に移動させられるとともに、軸方向移動機構13により径方向移動機構14を介して回転軸21の軸方向に移動させられる。軸方向移動機構13は、上述した基台11とフレーム12を橋架するように延びている。本実施形態では、加工具10として、板材9の回転に追従して回転するローラが用いられている。ただし、加工具10は、ローラに限定されず、例えばヘラであってもよい。
【0028】
表側加熱器5は、板材9に対して加工具10と同じ側に配置されており、裏側加熱器4は、板材9を挟んで加工具10と反対側に配置されている。本実施形態では、表側加熱器5および裏側加熱器4が同一のヒートステーション6に連結されている。表側加熱器5および裏側加熱器4は、回転軸20の軸方向で互いに対向するように配置されており、ヒートステーション6は、回転軸20の径方向において加熱器5,4の外側に配置されている。
【0029】
表側加熱器5および裏側加熱器4は、径方向移動機構16によりヒートステーション6を介して回転軸21の径方向に移動させられるとともに、軸方向移動機構15によりヒートステーション6および径方向移動機構16を介して回転軸21の軸方向に移動させられる。軸方向移動機構15は、上述した基台11とフレーム12を橋架するように延びている。
【0030】
例えば、表側加熱器5および裏側加熱器4のどちらか一方には、板材9の変形対象部位92までの距離を計測する変位計(図示せず)が取り付けられる。表側加熱器5および裏側加熱器4は、その変位計の計測値が一定となるように、回転軸21の軸方向および径方向に移動させられる。
【0031】
表側加熱器5および裏側加熱器4と加工具10との相対位置は、それらが回転軸21の軸心20を中心とするほぼ同一円周上に位置している限り、特に限定されるものではない。例えば、表側加熱器5および裏側加熱器4は、回転軸21の周方向に加工具10から180度離れていてもよい。
【0032】
次に、図2図6を参照して、表側加熱器5および裏側加熱器4ならびにヒートステーション6の構成を詳細に説明する。
【0033】
表側加熱器5は、内部に冷却液が流れる電通管51と、支持板50を含む。電通管51の断面形状は、本実施形態では正方形状であるが、その他の形状(例えば、円形状)であってもよい。支持板50は、例えば、耐熱性の材料(例えば、セラミック繊維系材料)からなり、図略の絶縁部材を介して電通管51を支持する。また、支持板50は、図略の絶縁部材を介してヒートステーション6の後述する本体60に固定される。なお、支持板50を絶縁性の樹脂で構成することも可能である。この場合は、支持板50が電通管51を直接的に支持していてもよいし、支持板50がヒートステーション6の本体60に直接的に固定されてもよい。
【0034】
電通管51は、回転軸21の周方向に延びる、板材9に沿った二重円弧状のコイル部54と、コイル部54から回転軸21の径方向外向きに延びる一対のリード部52,53を有する。一対のリード部52,53は、回転軸21の軸心20と垂直な面(本実施形態では、水平面)上で互いに平行であり、コイル部54の略中央から延びている。すなわち、コイル部54は、1つの内側円弧部55と、リード部52,53の両側に広がる2つの外側円弧部56を含む。内側円弧部55と外側円弧部56は、回転軸21の径方向に互いに離間している。コイル部54の開き角度(両端部間の角度)は、例えば60〜120度である。
【0035】
電通管51は、固有抵抗が小さく、かつ、熱伝導性が良好な材料であれば、どのような材料で構成されていてもよい。例えば、電通管51を構成する材料としては、純銅、銅合金、黄銅、アルミニウム合金などが挙げられる。
【0036】
また、表側加熱器5は、コイル部54の内側円弧部55を板材9と反対側から覆う1つの第1コア57と、外側円弧部56を板材9と反対側から覆う2つの第2コア58を含む。第1コア57および第2コア58は、内側円弧部55および外側円弧部56の周囲に発生する磁束を集約するためのものであり、第1コア57と第2コア58の間には僅かな隙間が確保されている。
【0037】
第1コア57における内側円弧部55の両側に位置する頂き面(本実施形態では、下面)は、内側円弧部55の1つの側面と同一平面上に位置し、これらによって連続したフラットな面が形成されている。換言すれば、第1コア57に形成された溝に、当該溝を埋めるように内側円弧部55が挿入されている。同様に、各第2コア58における外側円弧部56の両側に位置する頂き面は、外側円弧部56の1つの側面と同一平面上に位置し、これらによって連続したフラットな面が形成されている。換言すれば、第2コア57に形成された溝に、当該溝を埋めるように外側円弧部56が挿入されている。
【0038】
第1コア57および第2コア58は、図略の絶縁部材を介して支持板50に支持されている。第1コア57および第2コア58は、例えば、金属磁性粉末が樹脂中に分散されたものである。あるいは、第1コア57および第2コア58は、フェライトやケイ素鋼などからなっていてもよい。
【0039】
裏側加熱器4は、内部に冷却液が流れる電通管41と、支持板40を含む。電通管41の断面形状は、本実施形態では正方形状であるが、その他の形状(例えば、円形状)であってもよい。支持板40は、例えば、耐熱性の材料(例えば、セラミック繊維系材料)からなり、図略の絶縁部材を介して電通管41を支持する。また、支持板40は、図略の絶縁部材を介してヒートステーション6の後述する本体60に固定される。なお、支持板40を絶縁性の樹脂で構成することも可能である。この場合は、支持板40が電通管41を直接的に支持していてもよいし、ヒートステーション6の本体60に直接的に固定されてもよい。
【0040】
電通管41は、回転軸21の周方向に延びる、板材9に沿った二重円弧状のコイル部44と、コイル部44から回転軸21の径方向外向きに延びる一対のリード部42,43を有する。一対のリード部42,43は、回転軸21の軸心20と垂直な面(本実施形態では、水平面)上で互いに平行であり、コイル部44の略中央から延びている。すなわち、コイル部44は、1つの内側円弧部45と、リード部42,43の両側に広がる2つの外側円弧部46を含む。内側円弧部45と外側円弧部46は、回転軸21の径方向に互いに離間している。コイル部44の開き角度(両端部間の角度)は、例えば60〜120度である。
【0041】
電通管41は、固有抵抗が小さく、かつ、熱伝導性が良好な材料であれば、どのような材料で構成されていてもよい。例えば、電通管51を構成する材料としては、純銅、銅合金、黄銅、アルミニウム合金などが挙げられる。
【0042】
また、裏側加熱器4は、コイル部44の内側円弧部45を板材9と反対側から覆う1つの第1コア47と、外側円弧部46を板材9と反対側から覆う2つの第2コア48を含む。第1コア47および第2コア48は、内側円弧部45および外側円弧部46の周囲に発生する磁束を集約するためのものであり、第1コア47と第2コア48の間には僅かな隙間が確保されている。
【0043】
第1コア47における内側円弧部45の両側に位置する頂き面(本実施形態では、上面)は、内側円弧部45の1つの側面と同一平面上に位置し、これらによって連続したフラットな面が形成されている。換言すれば、第1コア47に形成された溝に、当該溝を埋めるように内側円弧部45が挿入されている。同様に、各第2コア48における外側円弧部46の両側に位置する頂き面は、外側円弧部46の1つの側面と同一平面上に位置し、これらによって連続したフラットな面が形成されている。換言すれば、第2コア48に形成された溝に、当該溝を埋めるように外側円弧部46が挿入されている。
【0044】
第1コア47および第2コア48は、図略の絶縁部材を介して支持板40に支持されている。第1コア47および第2コア48は、例えば、金属磁性粉末が樹脂中に分散されたものである。あるいは、第1コア47および第2コア48は、フェライトやケイ素鋼などからなっていてもよい。
【0045】
表側加熱器5および裏側加熱器4が連結されたヒートステーション6は、箱状の本体60と、本体60における回転軸21に対向する側面に固定された一対の接続箱(第1接続箱61および第2接続箱62)を含む。さらに、ヒートステーション6は、接続箱61,62の前方に配置された4つの中継箱(表側第1中継箱71、表側第2中継箱72、裏側第1中継箱75および裏側第2中継箱76)を含む。
【0046】
本体60の内部には、表側加熱器5の電通管51および裏側加熱器4の電通管41に電圧を印加するための交流電源回路が形成されている。第1接続箱61および第2接続箱62は、導電性の材料からなり、絶縁板65を挟んで互いに隣接している。第1接続箱61および第2接続箱62のそれぞれは、本体60内の電源回路と電気的に接続されている。本実施形態では、第1接続箱61および第2接続箱62が、表側加熱器5と裏側加熱器4に跨るように鉛直方向に延びている。
【0047】
第1接続箱61と第2接続箱62は、表側加熱器5の電通管51および裏側加熱器4の電通管41を介して互いに電気的に接続される。すなわち、接続箱61,62の一方から他方へ、電通管51,41を通じて交流電流が流れる。交流電流の周波数は、特に限定されるものではないが、5k〜400kHzの高周波数であることが望ましい。すなわち、表側加熱器5および裏側加熱器4による誘導加熱は、高周波誘導加熱であることが望ましい。板材9が大きな場合(例えば、板材9の直径が1m程度の場合、または板厚が30mm程度の場合)や板材9が非磁性体である場合には、電通管51,41に流れる電流は大電流(例えば、3000A以上)となる。例えば、板材9がチタン合金からなる場合は、電通管51,41に大電流が流れることにより、板材9の変形対象部位92が約900℃程度に加熱される。
【0048】
また、本実施形態では、図6に示す循環装置8によって、第1接続箱61に冷却液が供給されるとともに、第2接続箱62から冷却液が回収される。これにより、表側加熱器5の電通管51および裏側加熱器4の電通管41に冷却液が循環させられる。具体的には、第1接続箱61に第1ポート63が設けられ、第2接続箱62に第2ポート64が設けられている。
【0049】
循環装置8は、冷却液を貯留するタンク83と、タンク83と第1接続箱61の第1ポート63とを接続する供給管81と、第2接続箱62の第2ポート64とタンク83とを接続する回収管82を含む。供給管81には、タンク83から第1接続箱81へ冷却液を送り出すポンプ84が設けられ、回収管82には、電通管51,41を流れることによって温度が上昇した冷却液を冷やすための放熱器85が設けられている。放熱器85は、冷却液と大気との間での熱交換器であってもよいし、冷却液と他の熱媒体との間での熱交換器であってもよい。冷却液は、例えば水であるが、その他の液体も使用可能である。
【0050】
ヒートステーション6は、表側加熱器5の電通管51と裏側加熱器4の電通管41に電流が直列に流れ、かつ、表側加熱器5の電通管51と裏側加熱器4の電通管41に冷却液が並列に流れるように構成されている。上述した4つの中継箱および後述する導電部材7は、これを実現するためのものである。
【0051】
表側第1中継箱71、表側第2中継箱72、裏側第1中継箱75および裏側第2中継箱76は、全て導電性の材料(例えば、鋼)からなる。また、中継箱71,72,75,76には、それぞれポート73,74,77,78が設けられている。表側第1中継箱71と表側第2中継箱72は、接続箱61,62の前方で左右に並んでおり、裏側第1中継箱75および裏側第2中継箱76は、それぞれ表側第1中継箱71および表側第2中継箱72の真下に配置されている。
【0052】
表側第1中継箱71は、表側加熱器5の一方(図3でヒートステーション6から回転軸21に向かって左側)のリード部52と接続されており、表側第2中継箱72は、他方(図3でヒートステーション6から回転軸21に向かって右側)のリード部53と接続されている。裏側第1中継箱75は、裏側加熱器4の一方(図4でヒートステーション6から回転軸21に向かって左側)のリード部42と接続されており、裏側第2中継箱76は、他方(図4でヒートステーション6から回転軸21に向かって右側)のリード部43と接続されている。
【0053】
また、表側第1中継箱71は、第1中継管6aにより第1接続箱61と連通されており、裏側第2中継箱76は、第2中継管6bにより第2接続箱62と連通されている。第1中継管6aは、導電性の材料からなり(例えば、銅管)、表側第1中継箱71と第1接続箱61を電気的に接続する。第2中継管6bは、導電性の材料からなり(例えば、銅管)、裏側第2中継管72と第2接続箱62を電気的に接続する。
【0054】
さらに、表側第1中継箱71は、絶縁性の第1支流管6cにより裏側第1中継箱75と連通されており、表側第2中継箱72は、絶縁性の第2支流管6dにより裏側第2中継箱76と連通されている。また、表側第2中継箱72は、導電部材7により裏側第1中継箱75と電気的に接続されている。
【0055】
本実施形態では、第1支流管6cが単一のチューブで構成され、第2支流管6dが、導電部材7によって分断された上流チューブ6eおよび下流チューブ6fを含む。ここで、「チューブ」とは、フレキシブルな樹脂性のホースを意味する。
【0056】
本実施形態では、導電部材7が、表側第2中継箱72の上面および裏側第1中継箱75の下面に面接触するようにクランク状に折れ曲がっている。このため、導電部材7を高さの異なるものに交換するか、あるいは表側第2中継箱72および裏側第1中継箱75の少なくとも一方と導電部材7との間に導電性のスペーサを挿入することにより、表側加熱器5のコイル部54と裏側加熱器4のコイル部44の間の間隔を変更することができる。
【0057】
導電部材7は、内部に冷却液が流れるように構成された中空の部材である。導電部材7の表側第2中継箱72側の端部には第1ポート7aが設けられ、導電部材7の裏側第1中継箱71側の端部には第2ポート7bが設けられている。そして、導電部材7の第1ポート7aが、上流チューブ6eにより表側第2中継箱72のポート74と接続され、第2ポート7bが下流チューブ6fにより裏側第2中継箱76のポート78と接続されている。なお、導電部材7に逆向きに冷却液が流れるように、上流チューブ6eが表側第2中継箱72のポート74と第2ポート7bを接続し、下流チューブ6fが第1ポート7aと裏側第2中継箱76のポート78を接続してもよい。
【0058】
上述した構成により、表側加熱器5の電通管51は、表側第1中継箱71および第1中継管6aを介して第1接続箱61と電気的に接続され、かつ、連通している。また、電通管51は、表側第2中継箱72、導電部材7、裏側第1中継箱75、裏側加熱器4の電通管41、裏側第2中継箱76および第2中継管6bを介して第2接続箱62と電気的に接続されているとともに、表側第2中継箱72、上流チューブ6e、導電部材7、下流チューブ6f、裏側第2中継箱76および第2中継管6bを介して第2接続箱62と連通している。
【0059】
また、裏側加熱器4の電通管41は、裏側第2中継箱76および第2中継管6bを介して第2接続箱62と電気的に接続され、かつ、連通している。また、電通管41は、裏側第1中継箱75、導電部材7、表側第2中継箱72、表側加熱器5の電通管51、表側第1中継箱71および第1中継管6aを介して第1接続箱61と電気的に接続されているとともに、裏側第1中継箱75、第1支流管6c、表側第1中継箱71および第1中継管6aを介して第1接続箱61と連通している。
【0060】
例えば、第1接続箱61から第2接続箱62へ電流が流れる場合、その電流は、第1中継管6a、表側第1中継箱71、表側加熱器5の電通管51、表側第2中継箱72、導電部材7、裏側第1中継箱75、裏側加熱器4の電通管41、裏側第2中継箱76および第2中継管6bの順に流れる。すなわち、表側加熱器5の電通管51と裏側加熱器4の電通管41には、同じ方向に電流が流れる。
【0061】
また、循環装置8により第1接続箱61に冷却液が供給されると、その冷却液は、表側第1中継箱61で、表側加熱器5の電通管51を流れる分と裏側加熱器4の電通管41を流れる分とに分配される。表側加熱器5の電通管51を流れた冷却液は、上流チューブ6eにより表側第2中継箱72から導電部材7に導かれる。導電部材7を流れた冷却液は、下流チューブ6fにより導電部材7から裏側第2中継箱76に導かれて、ここで裏側加熱器4の電通管41を流れた冷却液と合流する。合流後の冷却液は、循環装置8により、第2接続箱62から回収される。このように、冷却液も、表側加熱器5の電通管51と裏側加熱器4の電通管41とで同じ方向に流れる。
【0062】
なお、表側第1中継箱71は、必ずしも単一の箱である必要はなく、第1中継管6aおよびリード部52がそれぞれ接続された2つの分割箱と、それらの分割箱同士を接続する、T継手が組み込まれたチューブとで構成されていてもよい。この場合、2つの分割箱同士は、別の導電部材または分割箱同士のメタルタッチにより電気的に接続される。この変形は、裏側第2中継箱75についても同様に適用可能である。
【0063】
また、電気的な接続形態および冷却液の流路構成を変更することにより、表側加熱器5と裏側加熱器4とで、電流および/または冷却液の流れる方向を異ならせることも可能である。さらに、ヒートステーション6は、表側加熱器5の電通管51と裏側加熱器4の電通管41とに電流が並列に流れるように構成されていてもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のスピニング成形装置1では、双方の加熱器4,5の電通管41,51を循環する冷却液によって電通管41,51が冷却されるので、電通管41,51のコイル部54,55が溶融することを防止できる。
【0065】
また、本実施形態では、表側加熱器5の電通管51と裏側加熱器4の電通管41に電流が直列に流れるため、双方の電通管41,51を含む共振回路における共振周波数を小さくすることができる。誘導加熱では共振周波数が低いほど電流浸透深さ(電流の深さ)が深くなるため、板材9を表面から内部まで厚さ方向に均一に加熱することができる。また、表側加熱器5の電通管51と裏側加熱器4の電通管41に冷却液が並列に流れるため、双方の電通管41,51に同じ温度の冷たい冷却液を導くことができ、双方の電通管41,51を効果的に冷却することができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、第2支流管6dが導電部材7によって分断された上流チューブ6eおよび下流チューブ6fを含むので、表側加熱器5の電通管51を冷却後の冷却液を利用して、導電部材7をも冷却することができる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、図7(a)および(b)ならびに図8を参照して、本発明の第2実施形態に係るスピニング成形装置を説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0068】
本実施形態のスピニング成形装置は、冷却液が第1実施形態とは逆に流れるように構成されている。すなわち、第2接続箱62の第2ポート64に供給管81が接続され、第1接続箱61の第1ポート63に回収管82が接続されている。このため、循環装置8は、第2接続箱62に冷却液を供給し、第1接続箱61から冷却液を回収する。
【0069】
また、本実施形態では、裏側加熱器4の電通管41を流れた冷却液が、上流チューブ6eにより裏側第1中継箱75から導電部材7に導かれ、導電部材7を流れた冷却液が、下流チューブ6fにより導電部材7から表側第1中継箱71に導かれる。すなわち、第2中継箱72,76同士を連通させる第2支流管6dが単一のチューブで構成され、第1中継箱71,75同士を連通させる第1支流管6cが、導電部材7によって分断された上流チューブ6eおよび下流チューブ6fを含む。
【0070】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、第1支流管6cが導電部材7によって分断された上流チューブ6eおよび下流チューブ6fを含むので、裏側加熱器4の電通管41を冷却後の冷却液を利用して、導電部材7をも冷却することができる。
【0071】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0072】
例えば、第1および第2実施形態では受け治具22が用いられていたが、受け治具22の代わりにマンドレルが採用されていてもよい。ただし、マンドレルを用いた場合には、加工具によって板材の変形対象部位がマンドレルに押し付けられる。これに対し、受け治具22を用いた場合には、板材9の変形対象部位92が、受け治具22から離れた位置で加工具10によって押圧される。換言すれば、板材9の裏側(加工具10と反対側)には空間が確保される。このため、加工中の板材9の形状に拘らずに、裏側加熱器4を板材9の変形対象部位92の直近に位置させることができ、変形対象部位92を適切に加熱することができる。
【0073】
また、表側加熱器5と裏側加熱器4の双方が必ずしも採用されている必要はなく、どちらか一方だけが採用されていてもよい。この場合、中継箱および中継管を省略し、電通管(51または41)のリード部(52,53または42,42)をヒートステーション6の接続箱61,62に直接的に接続してもよい。ただし、第1および第2実施形態のように、表側加熱器5と裏側加熱器4の双方が採用されていれば、板材9を板厚方向の両側から加熱することができ、成形性をより向上させることができる。
【0074】
また、表側加熱器5の電通管51と裏側加熱器4の電通管41とに冷却液および電流の双方が並列に流れる構成を採用する場合には、中継箱および中継管を省略し、表側加熱器5の電通管51および裏側加熱器4の電通管41を接続箱61,62に直接的に接続することによって、接続箱61,62をヘッダーおよび分電器として使用してもよい。この場合、導電部材7が不要である。
【0075】
また、導電部材7は、必ずしも中空である必要はない。例えば、導電部材7は金属板であってもよい。この場合、図示は省略するが、電部材7に接しながら導電部材7に沿って延びる冷却管が設けられていてもよい。そして、上流チューブ6eが表側第2中継箱72または裏側第1中継箱75から前記冷却管に冷却液を導き、下流チューブ6fが前記冷却管から裏側第2中継箱76または表側第1中継箱71に冷却液を導いてもよい。この構成でも、表側加熱器5の電通管51または裏側加熱器4の電通管41を冷却後の冷却液を利用して、導電部材7をも冷却することができる。
【0076】
中空の導電部材7または導電部材7に沿う冷却管に冷却液が流れる場合、第1支流管6cおよび第2支流管6dの双方を単一のチューブで構成し、供給管81および回収管82から分岐する分岐管を導電部材7または冷却管に接続してもよい。
【0077】
また、ヒートステーション6は、必ずしも一対の接続箱61,62を含む必要はなく、これらの代わりに、本体60の側面に一対の端子が設けられていてもよい。この場合、中継管6a,6bに代えて、ケーブルで表側第1中継箱71と一方の端子および裏側第2中継箱76と他方の端子を接続してもよい。そして、循環装置8は、表側第1中継箱71に冷却液を供給するとともに裏側第2中継箱76から冷却液を回収してもよい。ただし、第1および第2実施形態のように、ヒートステーション6が加熱器の電通管と連通する一対の接続箱61,62を含む構成であれば、ヒートステーション6の一対の接続箱61,62と電通管との接続によって、電力ラインと冷却液ラインの双方が形成される。このため、シンプルな構成とすることができる。
【0078】
ところで、板材9の変形対象部位92を700℃以上の高温に加熱する場合には、表側加熱器5のコア57,58および/または裏側加熱器4のコア47,48の温度が、板材9からの熱輻射によって、キュリー点(磁性がなくなる温度)を超えるおそれがある。変形対象部位92を高温に加熱する場合は、例えば、板材9がチタン合金、鋼、ステンレス、Ni合金、銅合金などからなる場合である。このような観点からは、表側加熱器5および/または裏側加熱器4に、図9図12に示すような構成を採用することが望ましい。なお、図9図12では、第1〜第4変形例の裏側加熱器4を示すが、図9図12に示された構成が表側加熱器5に採用可能であることは言うまでもない。
【0079】
図9に示す第1変形例の裏側加熱器4では、第1コア47上に内側遮熱層35が形成されており、各第2コア48上に外側遮熱層36が形成されている。内側遮熱層35は、薄い扁平な層であり、内側円弧部45および第1コア47の頂き面を被覆している。同様に、外側遮熱層36は、薄い扁平な層であり、外側円弧部46および第2コア48の頂き面を被覆している。この構成によれば、コイル部およびコアが板材から受ける熱輻射を低減することができる。
【0080】
内側遮熱層35および外側遮熱層36は、絶縁性および耐熱性を有する材料であれば、どのような材料で構成されていてもよい。例えば、内側遮熱層35および外側遮熱層36は、遮熱塗料を硬化させた塗膜であってもよいし、セラミックス系耐熱材料からなる板であってもよい。
【0081】
図10に示す第2変形例の裏側加熱器4では、内側遮熱層35および外側遮熱層36として、扁平な冷却管が用いられている。この構成によれば、図9と同様の効果を得ることができるとともに、第1コア47および第2コア48を積極的に冷却することができる。冷却管には、電通管41とは独立して冷却用の熱媒体が流される。例えば、冷却管には、供給管81(図6参照)とは異なるルートでタンク83(図6参照)から冷却液が供給される。あるいは、冷却管に流れる熱媒体は、電通管41を流れる熱媒体と異なっていてもよい。冷却管は、例えばセラミックス系耐熱材料からなる。
【0082】
図11に示す第3変形例の裏側加熱器4では、第1コア47の内側曲面および第2コア48の外側曲面に密着して冷却管37が設けられている。この構成によれば、第1コア47および第2コア48を積極的に冷却することができる。冷却管37には、電通管41とは独立して冷却用の熱媒体が流される。冷却管37は、絶縁性および耐熱性を有する材料であれば、どのような材料で構成されていてもよい。例えば、冷却管37は、セラミックス系耐熱材料からなる。
【0083】
図12に示す第4変形例の裏側加熱器4では、裏側加熱器4を囲繞するカバー38が設けられている。また、カバー38内には、第1コア47および第2コア48に向かって風を送るファン39が配置されている。この構成によれば、板材9を冷却せずに、第1コア47および第2コア48ならびにコイル部44を冷却することができる。カバー38は、絶縁性および耐熱性を有する材料であれば、どのような材料で構成されていてもよい。例えば、カバー38は、セラミックス系耐熱材料からなる。
【0084】
なお、図9または図10に示す構成が、図11および/または図12に示す構成と組み合わせ可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、種々の素材からなる板材をスピニング成形する際に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1A,1B スピニング成形装置
10 加工具
21 回転軸
22 受け治具
35 内側遮熱層
36 外側遮熱層
4 裏側加熱器
5 表側加熱器
41,51 電通管
42,43,52,53 リード部
44,54 コイル部
47,57 第1コア
48,58 第2コア
6 ヒートステーション
61,62 接続箱
6a 第1中継管
6b 第2中継管
6c 第1支流管
6d 第2支流管
6e 上流チューブ
6f 下流チューブ
71 表側第1中継箱
72 表側第2中継箱
75 裏側第1中継箱
76 裏側第2中継箱
8 循環装置
9 板材
92 変形対象部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13