(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジカルボン酸成分(A)と、ジアミン成分(B)とを重合成分とするポリアミド樹脂であって、ジカルボン酸成分(A)が、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)と、芳香族ジカルボン酸成分及び脂環族ジカルボン酸成分から選択された少なくとも一種のジカルボン酸成分(A2)とを含み、
前記ジカルボン酸成分(A)が、前記フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)を20モル%以上の割合で含み、
前記フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)が、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類、そのアルキルエステル及びその酸ハライドから選択された少なくとも一種を含む、ポリアミド樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のポリアミド樹脂は、特定のジカルボン酸成分と、ジアミン成分とを重合成分とする。
【0022】
[ジカルボン酸成分]
ジカルボン酸成分(A)は、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)と、芳香族ジカルボン酸成分及び脂環族ジカルボン酸成分から選択された少なくとも一種のジカルボン酸成分(A2)とを含んでいる。
【0023】
(フルオレン系ジカルボン酸成分(A1))
フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)としては、フルオレン系ジカルボン酸(フルオレン骨格を有するジカルボン酸)およびそのエステル形成性誘導体が含まれる。なお、エステル形成性誘導体としては、例えば、エステル{例えば、アルキルエステル[例えば、メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル(例えば、C
1−4アルキルエステル、特にC
1−2アルキルエステル]、シクロアルキルエステル(シクロヘキシルエステルなど)、アリールエステル(フェニルエステルなど)など}、酸ハライド(酸クロライドなど)、酸無水物などが挙げられる。エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)又はジエステルであってもよい。フルオレン系ジカルボン酸成分は、ポリアミド樹脂の製造方法などに応じて、適宜選択してもよい。
【0024】
フルオレン系ジカルボン酸としては、フルオレンを構成する2つのベンゼン環に2つのカルボキシル基含有基が置換した化合物[例えば、フルオレンジカルボン酸(例えば、2,7−ジカルボキシフルオレンなど)]であってもよいが、通常、フルオレンの9位に2つのカルボキシル基含有基が置換した化合物であってもよい。このような化合物としては、例えば、9−ジカルボキシアルキルフルオレン[例えば、9−(1,2−ジカルボキシエチル)フルオレンなど]、ジ(9−カルボキシアルキルフルオレニル)アルカン[例えば、ジ(9−カルボキシエチル−9−フルオレニル)メタン、1,2−ジ(9−カルボキシエチル−9−フルオレニル)エタンなど]などであってもよく、特に、下記式(1a)(1b)で表される化合物を好適に使用できる。このような化合物は、後述の芳香族ジカルボン酸成分との組み合わせにおいて、耐熱性の向上効果が高いようである。
【0026】
(式中、X
1a,X
1bは、同一又は異なって、二価の炭化水素基、R
1はカルボキシル基でない置換基、nは1〜4の整数、kは0〜4の整数を示す。)
上記式(1a)(1b)において、基X
1a,X
1bで表される二価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基{例えば、アルキレン基(又はアルキリデン基、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ブタン−2−イリデン基、1,2−ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ペンタン−2,3−ジイル基などのC
1−8アルキレン基、好ましくはC
1−4アルキレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、シクロへプチレン基などのC
5−10シクロアルキレン基、好ましくはC
5−8シクロアルキレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−シクロアルキレン基[又はシクロアルキレン−アルキレン基、例えば、メチレン−シクロへキシレン基、エチレン−シクロへキシレン基、エチレン−メチルシクロへキシレン基、エチリデン−シクロへキシレン基などのC
1−6アルキレン−C
5−10シクロアルキレン基(好ましくはC
1−4アルキレン−C
5−8シクロアルキレン基)などの脂環式炭化水素基、ビ又はトリシクロアルキレン基(ノルボルナン−ジイル基など)などの橋架環式炭化水素基など]など}、芳香族炭化水素基{例えば、アリーレン基(フェニレン基、ナフタレンジイル基などのC
6−10アリーレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−アリーレン基[又はアリーレン−アルキレン基、例えば、メチレン−フェニレン基、エチレン−フェニレン基、エチレン−メチルフェニレン基、エチリデンフェニレン基などのC
1−6アルキレン−C
6−20アリーレン基(好ましくはC
1−4アルキレン−C
6−10アリーレン基、好ましくはC
1−2アルキレン−フェニレン基)などの芳香脂肪族炭化水素基など]など}が例示できる。なお、アルキレン−シクロアルキレン基およびアルキレン−アリーレン基とは、−R
a−R
b−(式中、R
aは、式(1)においてカルボキシル基又はフルオレンの9位に結合したアルキレン基、R
bはシクロアルキレン基又はアリーレン基を示す)で表される基を示す。なお、2つの基Xは、同一の又は異なる基であってもよい。
【0027】
これらのうち、二価の脂肪族炭化水素基、特に、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましい。X
1a及びX
1bで表されるアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−エチルエチレン基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などのC
1−8アルキレン基が例示できる。好ましいアルキレン基は直鎖状又は分岐鎖状C
1−6アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などのC
1−4アルキレン基)である。
【0028】
アルキレン基の置換基としては、例えば、アリール基(フェニル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基など)などが例示できる。
【0029】
X
1aは直鎖状又は分岐鎖状C
2−4アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基)である場合が多く、X
1bは直鎖状又は分岐鎖状C
1−3アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基)である場合が多い。置換基を有するアルキレン基X
1aは、例えば、1−フェニルエチレン基、1−フェニルプロパン−1,2−ジイル基などであってもよい。
【0030】
係数nは0〜4の整数から選択でき、通常、0〜2、好ましくは0又は1であってもよい。
【0031】
前記式(1a)(1b)において、基R
1としては、カルボキシル基でない置換基であればよく、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC
6−10アリール基)など]、アシル基(例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、ペンチルカルボニルなどのアルキルカルボニル基)などが挙げられ、特に、アルキル基などである場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC
1−12アルキル基(例えば、C
1−8アルキル基、特にメチル基などのC
1−4アルキル基)などが例示できる。なお、kが複数(2〜4)である場合、複数の基R
1は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、異なるベンゼン環に置換した基R
1は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、基R
1の結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2および7位などが挙げられる。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、2つの置換数kは、同一又は異なっていてもよい。
【0032】
代表的なフルオレン系ジカルボン酸成分としては、前記式(1a)において、X
1aが二価の脂肪族炭化水素基である化合物、例えば、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(1−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(1−カルボキシプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシブチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルブチル)フルオレン、9,9−ビス(5−カルボキシペンチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC
1−6アルキル)フルオレンなど]、9,9−ビス(カルボキシシクロアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシシクロヘキシル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC
5−8シクロアルキル)フルオレンなど]などが挙げられる。
【0033】
式(1a)で表される好ましい化合物は、X
1aがC
2−6アルキレン基である化合物、例えば、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC
2−6アルキル)フルオレン、及びこれらのエステル形成性誘導体などを含む。前記式(1b)で表される好ましい化合物は、n=0であり、かつX
1bがC
1−6アルキレン基である化合物、例えば、9−(1−カルボキシ−2−カルボキシエチル)フルオレン、n=1であり、かつX
1bがC
1−6アルキレン基である化合物、例えば、9−(2−カルボキシ−3−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9−(カルボキシ−カルボキシC
2−6アルキル)フルオレン、及びこれらのエステル形成性誘導体などを含む。フルオレン系ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0034】
これらのうち、好ましいフルオレン系ジカルボン酸成分には、式(1a)で表される化合物、例えば、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシC
1−4アルキル)フルオレン]およびそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種(9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン成分)などが含まれる。
【0035】
なお、ジカルボン酸成分(A)全体に対するフルオレン系ジカルボン酸成分(A1)の割合は、5モル%以上の範囲から選択でき、例えば、10モル%以上(例えば、20モル%以上)、好ましくは30モル%以上(例えば、35モル%以上)、さらに好ましくは40モル%以上(例えば、45モル%以上)であってもよい。なお、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)の割合を大きくすると、高温における貯蔵弾性率を効率よく向上させやすい。
【0036】
(ジカルボン酸成分(A2))
芳香族ジカルボン酸成分
芳香族ジカルボン酸成分(又は非フルオレン系芳香族ジカルボン酸成分は、単環式芳香族ジカルボン酸成分、多環式芳香族ジカルボン酸成分(非フルオレン系多環式芳香族ジカルボン酸成分)に大別できる。
【0037】
単環式芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC
1−4アルキルテレフタル酸)、フタル酸などのC
6−10アレーンジカルボン酸、これらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0038】
多環式芳香族ジカルボン酸成分としては、フルオレン骨格を有しない多環式芳香族ジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体(非フルオレン系多環式芳香族ジカルボン酸成分)が挙げられる。多環式芳香族ジカルボン酸としては、例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの異なる環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸;1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などの同一の環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C
10−24アレーン−ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C
10−16アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくは縮合多環式C
10−14アレーン−ジカルボン酸]、アリールアレーンジカルボン酸[例えば、ビフェニルジカルボン酸(2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)などのC
6−10アリールC
6−10アレーンジカルボン酸]、ジアリールアルカンジカルボン酸[例えば、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸などのジフェニルC
1−4アルカン−ジカルボン酸など)などのジC
6−10アリールC
1−6アルカン−ジカルボン酸]、ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、ジフェニルケトンジカルボン酸(4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)などのジC
6−10アリールケトン−ジカルボン酸]などが挙げられる。多環式芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0039】
なお、芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよく、単環式芳香族ジカルボン酸成分と多環式芳香族ジカルボン酸成分とを組み合わせてもよい。
【0040】
これらの芳香族ジカルボン酸成分のうち、単環式芳香族ジカルボン酸成分、多環式芳香族ジカルボン酸成分(縮合多環式芳香族ジカルボン酸)を好適に使用してもよい。特に、単環式芳香族ジカルボン酸成分においては、高耐熱性と高透明性とをバランスよくポリアミド樹脂に付与するなどの観点から、非対称の単環式芳香族ジカルボン酸成分(イソフタル酸成分など)を好適に使用することもできる。
【0041】
脂環族ジカルボン酸成分
脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC
5−10シクロアルカン−ジカルボン酸)、ジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸など)、これらのエステル形成性誘導体(前記誘導体など)などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0042】
ジカルボン酸成分(A2)において、芳香族ジカルボン酸成分と脂環族ジカルボン酸成分とは、それぞれ単独で使用してもよく、両者を組み合わせて使用してもよい。例えば、芳香族ジカルボン酸成分と脂環族ジカルボン酸成分とを、前者/後者(モル比)=100/0〜0/100(例えば、90/10〜10/90)程度、特に80/20〜20/80(例えば、70/30〜30/70)程度の割合で使用してもよい。
【0043】
フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)とジカルボン酸成分(A2)との割合は、前者/後者(モル比)=99.5/0.5〜5/95(例えば、99/1〜10/90)程度の範囲から選択でき、例えば、98/2〜15/85(例えば、97/3〜20/80)、好ましくは95/5〜20/80(例えば、95/5〜25/75)、さらに好ましくは93/7〜30/70(例えば、90/10〜35/65)程度であってもよく、通常、90/10〜40/60程度であってもよい。
【0044】
なお、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)およびジカルボン酸成分(A2)の総量の割合は、ジカルボン酸成分(A)全体に対して、例えば、50モル%以上(例えば、55モル%以上)、好ましくは60モル%以上(例えば、65モル%以上)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、75モル%以上)、特に80モル%以上(例えば、85モル%以上)であってもよい。
【0045】
(他のジカルボン酸成分)
ジカルボン酸成分(A)は、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)およびジカルボン酸成分(A2)のみで構成してもよく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、脂肪族ジカルボン酸成分を含んでいてもよい。
【0046】
脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アルカンジカルボン酸成分[例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、プラリシン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、これらのエステル形成性誘導体(前記誘導体など)などのC
2−30アルカンジカルボン酸成分など]などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0047】
脂肪族ジカルボン酸成分の割合は、例えば、ジカルボン酸成分(A)全体に対して、50モル%以下(例えば、45モル%以下)、好ましくは40モル%以下(例えば、35モル%以下)、さらに好ましくは30モル%以下(例えば、25モル%以下)、特に20モル%以下(例えば、15モル%以下)であってもよい。
【0048】
[ジアミン成分(B)]
ジアミン成分(B)としては、特に限定されず、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミンなどが挙げられる。ジアミン成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0049】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、アルカンジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、5−メチル−1,9−ノナメチレンジアミンなどのC
2−20アルカンジアミン、好ましくはC
2−12アルカンジアミン、さらに好ましくはC
2−8アルカンジアミン)などが挙げられる。脂肪族ジアミンは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0050】
脂環族ジアミンとしては、例えば、単環式シクロアルカンジアミン、橋架け環式シクロアルカンジアミン、イソホロンジアミンなどの他、後述の式(B1)において環Zが脂環族炭化水素環である化合物などが含まれる。脂環族ジアミンは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0051】
単環式シクロアルカンジアミンとしては、例えば、ジアミノシクロヘキサン(1,4−ジアミノシクロヘキサンなど)、メチルシクロヘキサンジアミン(3−メチル−1,4−ジアミノシクロヘキサンなど)などのシクロアルカンジアミン;ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−アミノメチルシクロヘキサンなど)、ビス(アミノメチル)メチルシクロヘキサンなどのビス(アミノメチル)シクロアルカンなどが例示できる。単環式シクロアルカンジアミンは、C
4−10シクロアルカンジアミン、ビス(アミノメチル)C
4−10シクロアルカンである場合が多い。
【0052】
前記橋架け環式シクロアルカンジアミンとしては、例えば、ビシクロオクタンジアミン、ビシクロノナンジアミン、トリシクロドデカンジアミン、ノルボルナンジアミンなどのビ又はトリシクロアルカンジアミン;ビス(アミノメチル)ビシクロオクタン、ビス(アミノメチル)ビシクロノナン、ビス(アミノメチル)トリシクロドデカン、ビス(アミノメチル)ノルボルナンなどのビス(アミノメチル)ビ又はトリシクロアルカンなどが例示できる。橋架け環式シクロアルカンジアミンは、C
6−14ビ又はトリシクロアルカンジアミン、ビス(アミノメチル)C
6−14ビ又はトリシクロアルカンである場合が多い。
【0053】
芳香族ジアミンとしては、例えば、アレーンジアミン(例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンなどのC
6−10アレーンジアミン)、アミノアルキル−アミノアレーン[例えば、α−(3−アミノフェニル)エチルアミンなどのアミノC
1−4アルキル−アミノC
6−10アレーンなど]、芳香脂肪族ジアミン[例えば、ジ(アミノアルキル)アレーン(例えば、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどのジ(アミノC
1−4アルキル)C
6−10アレーン)など]の他、後述の式(B1)において環Zが芳香族炭化水素環である化合物などが挙げられる。芳香族ジアミンは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0054】
耐熱性、屈折率を高めたるめに好ましいジアミン成分(B)は、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミンから選択された少なくとも1種を含む。なお、脂環族ジアミンおよび芳香族ジアミンには、下記式(B1)で表されるジアミン(ジアミン(B1)などということがある)も含まれる。このような脂環族ジアミンや芳香族ジアミンを用いると、高い耐熱性を効率よくポリアミド樹脂に付与できる場合がある。
【0056】
(式中、Eは連結基、Zは炭化水素環、R
2はアミノ基以外の置換基、nは0以上の整数を示す。)
上記式(B1)において、連結基E(二価の基)としては、特に限定されないが、例えば、直接結合、炭化水素基{例えば、脂肪族炭化水素基[例えば、アルキレン基(又はアルキリデン基)(例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基、2−プロピリデン基、ブチレン基などのC
1−10アルキレン基、好ましくはC
1−6アルキレン基、さらに好ましくはC
1−4アルキレン基)などの飽和脂肪族炭化水素基]、脂環族炭化水素基[例えば、シクロアルキレン基又はシクロアルキリデン基(1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基などのC
4−10シクロアルキレン基又はC
4−10シクロアルキリデン基、好ましくはC
5−8シクロアルキレン基又はC
5−8シクロアルキリデン基)などの飽和脂肪族炭化水素基]、芳香族炭化水素基[例えば、アリーレン基(例えば、フェニレン基などのC
6−10アリーレン基)、アリールアレーンジイル基(例えば、ビフェニル−4,4’−ジイル基などのC
6−10アリール−C
6−10アレーンジイル基)など]など}、ヘテロ原子を含む基{例えば、窒素原子を含む基[例えば、イミノ基(−NH−)、置換イミノ基(例えば、アルキルイミノ基など)、アミド基(−NHCO−)など]、酸素原子を含む基[例えば、酸素原子又はエーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−OCO−)など]、硫黄原子を含む基[例えば、硫黄原子又はチオ基(−S−)、スルフィニル基(−SO−)、スルホニル基(−SO
2−)など]など}、これらの基が連結した基{例えば、オキシアルキレン基(例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基などのオキシC
1−10アルキレン基)、オキシアリーレン基(例えば、オキシフェニレン基などのオキシC
6−10アリーレン基など)、アレーンジオキシ基(例えば、1,4−ベンゼンジオキシ基などのC
6−10アレーンジオキシ基)、ビスアリールジオキシ基(例えば、ビフェニル−4,4’−ジオキシ基などのビスC
6−10アリールジオキシ基)、ジアリールアルカンジオキシ基(例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ジオキシ基などのC
6−10アリールC
1−4アルカンジオキシ基)、ジアリールシクロアルカンジオキシ基(例えば、1,1−ジフェニルシクロペンタン−4,4’−ジオキシ基、1,1−ジフェニルシクロヘキサン−4,4’−ジオキシ基などのジC
6−10アリールC
5−8シクロアルカンジオキシ基)、ジアリールスルホンジオキシ基(例えば、ジフェニルスルホン−4,4’−ジオキシ基などのジC
6−10アリールスルホンジオキシ基など)など}などが挙げられる。
【0057】
なお、連結基は、その種類に応じて、置換基を有していてもよい。例えば、連結基としての炭化水素基には、置換基を有する炭化水素基が含まれる。置換基としては、後述のR
2と同様の置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子など)などが挙げられる。
【0058】
代表的な連結基には、脂肪族炭化水素基、ヘテロ原子を含む基が挙げられ、特にアルキレン基(又はアルキリデン基)、酸素原子を含む基、硫黄原子を含む基が好ましい。連結基Eは、直接結合、アルキレン基、シクロアルキレン基又はシクロアルキリデン基、−O−、−C(=O)−,−S−,−SO−,−SO
2−である場合が多い。
【0059】
前記式(B1)において、炭化水素環Zとしては、例えば、脂環族炭化水素環{例えば、単環式脂環族炭化水素環[例えば、シクロアルカン環(例えば、シクロヘキサン環などのC
4−10シクロアルカン環、好ましくはC
5−8シクロアルカン環、さらに好ましくはシクロヘキサン環)など]、多環式脂環族炭化水素環[例えば、ポリシクロアルカン環(例えば、デカリン環、ノルボルナン環、アダマンタン環、トリシクロデカン環などのC
4−15ジ又はトリシクロアルカン環)など]など}、芳香族炭化水素環{例えば、ベンゼン環、多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合環式アレーン環(例えば、ナフタレン環などのC
8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC
10−16縮合二環式アレーン)環、縮合三環式アレーン(例えば、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環など)環などの縮合二乃至四環式アレーン環]など}などが挙げられる。
【0060】
これらのうち、単環式炭化水素環(例えば、シクロアルカン環、ベンゼン環など)が代表的である。特に、環Zは芳香族炭化水素環(ベンゼン環など)であってもよい。環Zが芳香族炭化水素環であるジアミンは、フルオレン系ジカルボン酸成分との組み合わせにおいて、耐熱性や屈折率をより一層向上させやすく、好適である。なお、式(B1)において、2つのZは同一の又は異なる環であってもよく、特に同一の環であってもよい。
【0061】
式(B1)において、置換基R
2としては、特に限定されず、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC
1−12アルキル基、好ましくはC
1−8アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC
5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC
6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキル基など)など]、基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。][例えば、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC
1−8アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC
5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC
6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキルオキシ基)など]、基−SR(式中、Rは前記と同じ。)[例えば、アルキルチオ基(メチルチオ基などのC
1−8アルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基などのC
6−10アリールチオ基)など]、アシル基(アセチル基などのC
1−6アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC
1−4アルコキシ−カルボニル基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0062】
代表的な基R
2としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C
1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C
5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C
6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C
6−8アリール−C
1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C
1−4アルコキシ基など)、ハロゲン原子などが挙げられる。中でも、アルキル基[C
1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C
6−10アリール基(特にフェニル基)など]、アルコキシ基又はハロゲン原子などが好ましく、特に、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子、中でもアルキル基であるのが好ましい。
【0063】
なお、同一の環Zにおいて、nが2以上である場合、複数のR
2は同一又は異なる基であってもよい。また、異なる環Zにおいて、R
2は同一又は異なる基であってもよい。
【0064】
置換基R
2の数nは、0以上の整数であればよく、環Zの種類に応じて選択でき、例えば、0〜8、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、特に0〜2程度であってもよい。
【0065】
具体的なジアミン(B1)のうち、式(B1)において環Zがシクロアルカン環である化合物としては、例えば、ジ(アミノシクロアルキル)アルカン類{例えば、ジ(アミノシクロアルキル)アルカン[例えば、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルプロパンなどのジ(アミノC
4−10シクロアルキル)C
1−10アルカン、好ましくはジ(アミノC
5−8シクロアルキル)C
1−4アルカン]、ジ(アミノ−アルキルシクロアルキル)アルカン[例えば、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタンなどのジ(アミノ−C
1−10アルキルC
4−10シクロアルキル)C
1−10アルカン、好ましくはジ(アミノ−C
1−4アルキルC
5−8シクロアルキル)C
1−4アルカンなど]など}などが例示できる。
【0066】
式(B1)において環Zがアレーン環である化合物としては、ジ(アミノアリール)アルカン類{例えば、ジ(アミノアリール)アルカン[例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどのジ(アミノC
6−10アリール)C
1−10アルカン、好ましくはジ(アミノC
6−8アリール)C
1−4アルカン]など}、ジ(アミノアリールオキシアリール)アルカン類{例えば、ジ(アミノアリールオキシアリール)アルカン[例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどのジ(アミノC
6−10アリールオキシC
6−10アリール)C
1−10アルカンなど]、ジ(アルキル−アミノアリールオキシアリール)アルカン[例えば、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどのジ(C
1−10アルキル−アミノC
6−10アリールオキシC
6−10アリール)C
1−10アルカンなど]、ジ(ハロ−アミノアリールオキシアリール)アルカン[例えば、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどのジ(ハロ−アミノC
6−10アリールオキシC
6−10アリール)C
1−10アルカンなど]など}、ジ(アミノアリールオキシアリール)シクロアルカン類{例えば、ジ(アミノアリールオキシアリール)シクロアルカン[例えば、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロペンタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサンなどのジ(アミノC
6−10アリールオキシC
6−10アリール)C
5−8シクロアルカンなど]など}、ジ(アミノアリールオキシ)ビスアリール類{例えば、ジ(アミノアリールオキシ)ビスアリール[例えば、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルなど)などのジ(アミノC
6−10アリールオキシ)ビスC
6−10アリール]など}、ジ(アミノアリール)エーテル類{例えば、ジ(アミノアリール)エーテル[例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジ(アミノC
6−10アリール)エーテル、好ましくはジ(アミノC
6−8アリール)エーテル]など}、ジ(アミノアリールオキシアリール)エーテル類{例えば、ジ(アミノアリールオキシアリール)エーテル[例えば、ジ[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテルなどのジ(アミノC
6−10アリールオキシC
6−10アリール)エーテルなど]など}、ジ(アミノアリール)スルホン類{例えば、ジ(アミノアリール)スルホン[例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンなどのジ(アミノC
6−10アリール)スルホン、好ましくはジ(アミノC
6−8アリール)スルホン]など}、ジ(アミノアリールオキシアリール)スルホン類{例えば、ジ(アミノアリールオキシアリール)スルホン[例えば、ジ[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンなどのジ(アミノC
6−10アリールオキシC
6−10アリール)スルホンなど]など}などが挙げられる。ジアミン(B1)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0067】
これらのジアミン成分(B)は、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミンから選択された少なくとも1種を含むのが好ましい。このようなジアミン成(B)は、前記式(B1)で表される化合物であってもよい。このような特定の脂環族ジアミンや芳香族ジアミンを用いると、高い耐熱性を効率よくポリアミド樹脂に付与できる場合がある。
【0068】
なお、ジアミン成分(B)全体に対する、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミンから選択された少なくとも1種の割合は、10モル%以上(例えば、20モル%以上)程度の範囲から選択でき、例えば、30モル%以上(例えば、40モル%以上)、好ましくは50モル%以上(例えば、60モル%以上)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、80モル%以上)であってもよい。
【0069】
なお、ポリアミド樹脂の重合成分は、ジカルボン酸成分(A)およびジアミン成分(B)のみで構成してもよく、本発明の効果を害しない範囲であれば、アミノカルボン酸成分[アミノカルボン酸(例えば、6−アミノカプロン酸、12−アミノドデカン酸など)、ラクタム(ε−カプロラクタムなど)など]を重合成分として含んでいてもよい。
【0070】
このようなアミノカルボン酸成分の割合は、例えば、ジカルボン酸成分(A)1モルに対して、0.5モル以下、好ましくは0.3モル以下、さらに好ましくは0.2モル以下、特に0.1モル以下であってもよい。
【0071】
[ポリアミド樹脂]
ジカルボン酸成分(A)とジアミン成分(B)とを重合成分とするポリアミド樹脂は、高耐熱性、高屈折率などの優れた特性を有している。
【0072】
ポリアミド樹脂のガラス転移温度(Tg)は、120℃以上(例えば、140℃以上)の範囲から選択でき、例えば、150℃以上(例えば、160〜400℃)、好ましくは165℃以上(例えば、165〜370℃)、さらに好ましくは170℃以上(例えば、175〜350℃)、特に180℃以上(例えば、190〜320℃)であってもよく、200℃℃以上(例えば、200〜350℃、好ましくは210〜300℃、さらに好ましくは215〜280℃)とすることもできる。
【0073】
また、本発明のポリアミド樹脂は、高温においても貯蔵弾性率(E’)を保持する場合が多く、例えば、ポリアミド樹脂の270℃における貯蔵弾性率は、0.01MPa以上(例えば、0.01〜20MPa)、好ましくは0.02MPa以上(例えば、0.02〜15MPa)とすることもできる。このようなポリアミド樹脂は、リフローにも耐えうる高い耐熱性を有している。
【0074】
本発明のポリアミド樹脂の屈折率は、25℃、波長589nmにおいて、1.53以上(例えば、1.54以上)の範囲から選択でき、1.55以上(例えば、1.55〜1.75)、好ましくは1.56以上(例えば、1.56〜1.72)程度であってもよい。
【0075】
ポリアミド樹脂の相対粘度(ηrel)は、例えば、1.03〜5、好ましくは1.05〜3、さらに好ましくは1.07〜2.5程度であってもよく、通常1.1〜3(例えば、1.2〜3、好ましくは1.3〜2.5)程度であってもよい。
【0076】
なお、ポリアミド樹脂は、慣用の方法により製造できる。例えば、ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分(A)とジアミン成分(B)とを反応(重合又は縮合)させることにより製造できる。重合方法(製造方法)としては、使用するジカルボン酸成分の種類などに応じて適宜選択でき、慣用の方法、例えば、溶融重合法(又は溶融重縮合法、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを溶融混合下で重合させる方法)、溶液重合法(又は溶液重縮合法)、界面重合法(又は界面重縮合法)などが例示できる。
【0077】
具体的には、溶融重縮合法では、ジカルボン酸成分とジアミン成分から調製した塩や、ジカルボン酸成分、ジアミン成分などの原料を、その融点以上の温度に加熱、溶融させ、水やアルコールなどの脱離成分を減圧下、反応系より除きながら反応を行うことができる。また、溶液重縮合法では、溶媒中、脱離成分を共沸や、第3級アミンなどの酸受容体、亜リン酸トリフェニル/ピリジン混合系などの縮合剤などにより除きながら反応を行うことができる。さらに、界面重縮合法では、ジカルボン酸の酸ハロゲン化物を非極性溶媒に溶解し、水酸化ナトリウムなど、アルカリ性を示す化合物の水溶液との界面で、ジアミン成分との反応を行うことができる。
【0078】
また、溶融重縮合法において、ジカルボン酸成分とジアミン成分との塩は、それぞれを溶媒に溶解し、混合することで沈殿物として得ることができる。このような場合、溶媒としては、ジカルボン酸成分およびジアミン成分を溶解可能であれば特に限定されないが、例えば、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル類)、ケトン類(例えば、メチルエチルケトンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など)、ハロゲン含有溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類)、アミド類(例えば、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)、窒素含有溶媒(例えば、N−メチルピロリドンなど)などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0079】
なお、反応において、ジカルボン酸成分(A)やジアミン成分(B)などの使用量(使用割合)は、前記と同様の範囲から選択できるが、溶融重縮合法において、いずれかの成分(例えば、ジアミン成分(B))が揮発しやすい場合などには、揮発しやすい成分を過剰量(例えば、理論量よりも0.01〜3モル%以上多い割合で)用いてもよい。また、ジアミン成分などの揮発を防ぐため、反応初期において加圧下で反応させてもよい。重合反応は常圧下でも減圧下でもよいが、重合後期には、150Pa前後まで減圧し、反応系からの水やアルコールなどの脱離成分の除去を促すことが好ましい。
【0080】
[樹脂組成物および成形体]
本発明のポリアミド樹脂は、単独で成形体を構成することができる。なお、このような本発明のポリアミド樹脂は、添加剤(後述の成分など)とともに、樹脂組成物(又は樹脂成形体)を構成することもできる。
【0081】
なお、樹脂組成物は、その使用目的に応じて、各種添加剤[例えば、充填剤又は補強剤、着色剤(染顔料)、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤(シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末など)、耐熱性改良剤(硫黄化合物やポリシランなど)、炭素材など]を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0082】
また、本発明には、前記ポリアミド樹脂又は前記樹脂組成物で形成された成形体も含まれる。このような成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択でき、例えば、二次元的構造(フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(管状、棒状、チューブ状、中空状など)などが挙げられる。
【0083】
特に、本発明のポリアミド樹脂又は樹脂組成物は、光学的特性に優れているため、光学材料又は光学用成形体(特に、光学フィルム、光学レンズなど)を好適に形成してもよい。
【0084】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【0085】
特に、本発明の樹脂組成物は、種々の光学的特性に優れているため、フィルム(特に光学フィルム)を形成するのに有用である。そのため、本発明には、前記ポリアミド樹脂又は樹脂組成物で形成されたフィルム(光学フィルム)も含まれる。
【0086】
このようなフィルムの厚みは、1〜1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば、1〜200μm、好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜120μm程度であってもよい。
【0087】
このようなフィルム(光学フィルム)は、前記ポリアミド樹脂又は樹脂組成物を、慣用の成膜方法、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(又は成形)することにより製造できる。
【0088】
フィルムは、延伸フィルムであってもよい。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0089】
延伸倍率は、一軸延伸又は二軸延伸において各方向にそれぞれ1.1〜10倍(好ましくは1.2〜8倍、さらに好ましくは1.5〜6倍)程度であってもよく、通常1.1〜2.5倍(好ましくは1.2〜2.3倍、さらに好ましくは1.5〜2.2倍)程度であってもよい。なお、二軸延伸の場合、等延伸(例えば、縦横両方向に1.5〜5倍延伸)であっても偏延伸(例えば、縦方向に1.1〜4倍、横方向に2〜6倍延伸)であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸(例えば、縦方向に2.5〜8倍延伸)であっても横延伸(例えば、横方向に1.2〜5倍延伸)であってもよい。
【0090】
延伸フィルムの厚みは、例えば、1〜150μm、好ましくは3〜120μm、さらに好ましくは5〜100μm程度であってもよい。
【0091】
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(又は未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限がなく、一軸延伸の場合、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法ともいわれる)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0093】
なお、樹脂の特性は以下の方法により測定した。
【0094】
(相対粘度(ηrel))
サンプル0.25gをフェノール/エタノール混合溶媒(重量比:9/1)に溶解し、全量を50mLに調製した後、ウベローデ粘度計を用いて、25℃で測定した。
【0095】
(融点、ガラス転移温度(Tg))
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー株式会社製、EXSTAR6000 DSC6220)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で、25℃から280℃まで測定した。
【0096】
(5%重量減少温度(Td5))
示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイナノテクノロジー株式会社製、EXSTAR6000 TG/DTA6200)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で、25℃から500℃まで測定した。
【0097】
(貯蔵弾性率(E’))
サンプルをガラス転移温度+10℃でプレス成形し、フィルムを作製した。得られたフィルムを短冊状に切り出して試験片とし、動的粘弾性測定装置(株式会社ユービーエム製、Rheosol−G5000)を用いて、周波数1Hz、5℃/分の昇温速度で測定した。
【0098】
(屈折率、アッベ数)
多波長アッベ屈折計(株式会社アタゴ製、DR−M2(循環式恒温水層60−C3))を用いて、25℃で測定した。
【0099】
(実施例1)
撹拌機、窒素導入口、蒸留塔を備えた300mLフラスコに、FDP
(9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、別名9,9−フルオレン−ジプロピオン酸) 7.76g(25.00mmol)、イソフタル酸4.15g(24.98mmol)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン(すなわち、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン))11.97g(50.21mmol)、ジフェニルエーテル40.10gを仕込み、140℃に予熱したオイルバスで加熱した。0.5時間かけて240℃に昇温し、さらに2.5時間加熱した。この反応液を放冷後、ジメチルスルホキシド51.79gで希釈し、アセトン386.62g中に加えることで沈殿物(ポリアミド)を得た。この沈殿物をろ別し、50℃のアセトン500.77g中で洗浄した後、120℃で真空乾燥した(収量18.57g、収率84.1重量%)。
【0100】
得られた固体について、各種測定を行ったところ、相対粘度は1.27、ガラス転移温度は227.5℃、5重量%重量減温度は373.0℃、270℃における貯蔵弾性率は0.03MPa、屈折率(25℃、589nm)は1.564、アッベ数は31.3であった。
【0101】
実施例2
FDPのジメチルエステル体(以下、FDP−mという)2.54g(7.5mmol)、イソフタル酸ジメチル1.45g(7.5mmol)、メタキシリレンジアミン1.05g(7.5mmol)、3,3'−ジメチル−4,4’-ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン1.79g(7.5mmol)を試験管に仕込み、三方コックを取り付けた。この試験管内を窒素置換した後、200℃で1時間加熱した。その後、4時間かけて300℃、2000Paまで昇温、減圧し、さらに1時間加熱した。常圧に戻し透明な塊(ポリアミド)を得た。
【0102】
得られた固体について、各種測定を行ったところ、相対粘度は1.13、ガラス転移温度は169.8℃、5重量%重量減温度は392.7℃、屈折率(25℃、589nm)は1.588、アッベ数は29.5であった。
【0103】
実施例3
FDP−m1.27g(3.75mmol)、イソフタル酸ジメチル2.18g(11.25mmol)、3,3'−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン3.40g(14.25mmol)、1,12−ジアミノドデカメチレン0.15g(0.75mmol)を試験管に仕込み、三方コックを取り付けた。この試験管内を窒素置換した後、200℃で1時間加熱した。その後、4時間かけて300℃、2000Paまで昇温、減圧し、さらに1時間加熱した。常圧に戻し透明な塊(ポリアミド)を得た。
【0104】
得られた固体について、各種測定を行ったところ、相対粘度は1.12、ガラス転移温度は174.7℃、5重量%重量減温度は387.9℃、屈折率(25℃、589nm)は1.555、アッベ数は34.4であった。
【0105】
実施例4
FDP−m3.38g(10.00mmol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル2.44g(10.00mmol)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン3.19g(20.70mmol)を試験管に仕込み、三方コックを取り付けた。この試験管内を窒素置換した後、170℃で1時間加熱した。その後、4時間かけて285℃、4000Paまで昇温、減圧し、さらに3時間加熱した。常圧に戻し透明な塊(ポリアミド)を得た。
【0106】
得られた固体について、各種測定を行ったところ、相対粘度は1.20、ガラス転移温度は185.7℃、5重量%重量減温度は401.6℃、屈折率(25℃、589nm)は1.612であった。
【0107】
実施例5
FDP−m3.38g(10.00mmol)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル2.03g(10.15mmol)、3,3'−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン4.80g(20.20mmol)を試験管に仕込み、三方コックを取り付けた。この試験管内を窒素置換した後、200℃で3時間加熱した。その後、2時間かけて285℃、7000Paまで昇温、減圧し、さらに4時間加熱した。常圧に戻し透明な塊(ポリアミド)を得た。
【0108】
得られた固体について、各種測定を行ったところ、相対粘度は1.14、ガラス転移温度は192.6℃、5重量%重量減温度は397.3℃、屈折率(25℃、589nm)は1.548、アッベ数は37.2であった。
【0109】
(参考例1)
撹拌機、温度計を備えた500mLフラスコに、FDP46.92g(151.19mmol)、テトラヒドロフラン281.74gを仕込み、フラスコ内の温度を50℃に調整し溶解させた後、1,6−ヘキサメチレンジアミン17.63g(151.72mmol)とメタノール53.45gの混合溶液を0.5時間かけて滴下した。室温で2.5時間撹拌した後、析出物をろ別した。この析出物をメタノール100.45gで洗浄し、50℃で真空乾燥した(析出物の収量63.01g、融点234℃)。
【0110】
得られた析出物を試験管に4.77g仕込み、三方コックを取り付けた。この試験管内を窒素置換した後、260℃で2時間加熱、さらに減圧しながら260℃で2時間加熱した(最終的な真空度は170Paであった)。その後、常圧に戻し、透明な塊(ポリアミド)を得た。
【0111】
得られた固体について、各種測定を行ったところ、相対粘度は1.23、ガラス転移温度は134.8℃、5重量%重量減温度は394.1℃、270℃における貯蔵弾性率は検出されず、屈折率(25℃、589nm)は1.599、アッベ数は29.8であった。
【0112】
(参考例2)
撹拌機、温度計を備えた300mLフラスコに、FDP23.37g(75.30mmol)、テトラヒドロフラン140.06gを仕込み、フラスコ内の温度を50℃に調整し溶解させた後、メタキシリレンジアミン10.32g(75.78mmol)とテトラヒドロフラン10.25gの混合液を0.5時間かけて滴下した。室温で2.5時間撹拌した後、析出物をろ別した。この析出物をメタノール50.6gで洗浄し、50℃で真空乾燥した(析出物の収量33.16g、融点197℃)。
【0113】
得られた析出物を試験管に5.23g仕込み、三方コックを取り付けた。この試験管内を窒素置換した後、260℃で2時間加熱、さらに減圧しながら260℃で2時間加熱した(最終的な真空度は170Paであった)。その後、常圧に戻し、透明な塊(ポリアミド)を得た。
【0114】
得られた固体について、各種測定を行ったところ、相対粘度は1.22、ガラス転移温度は157.8℃、5重量%重量減温度は390.1℃、270℃における貯蔵弾性率は検出されず、屈折率(25℃、589nm)は1.630、アッベ数は25.8であった。
【0115】
これらの結果を表に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
表1中、貯蔵弾性率の欄の「−」は検出されなかったことを示す。
【0118】
上記結果から明らかなように、フルオレン系ジカルボン酸成分と芳香族ジカルボン酸成分及び/又は脂環族ジカルボン酸成分とを組み合わせることで、高い屈折率を維持しつつ、いずれもTgが高く、ポリアミド樹脂の耐熱性を特異的に向上できることがわかった。なお、Tgが高いもののTgとTd5との差は100℃以上あり、十分に溶融成形可能なポリマーであることもわかった。