(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383547
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】建物の基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/34 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
E02D27/34 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-43205(P2014-43205)
(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-168944(P2015-168944A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大堀 太志
(72)【発明者】
【氏名】田中 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】高山 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】山田 政雄
(72)【発明者】
【氏名】櫻川 典男
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−228727(JP,A)
【文献】
特開平08−232273(JP,A)
【文献】
特開2013−091924(JP,A)
【文献】
特開2010−196346(JP,A)
【文献】
特開平06−294136(JP,A)
【文献】
特開2012−219540(JP,A)
【文献】
米国特許第04058941(US,A)
【文献】
特開2003−119798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に構築され、建物の躯体柱を支持する第1支持構造体と、
前記地盤中に構築され、前記地盤上に設けられた土間コンクリート床スラブを支持し、下端部が前記地盤の下方に形成された支持層に達する柱状の第2支持構造体と、
を有する建物の基礎構造。
【請求項2】
前記第1支持構造体及び前記第2支持構造体は、地盤改良体である請求項1に記載の建物の基礎構造。
【請求項3】
前記第2支持構造体は、前記土間コンクリート床スラブに対して均等に配置されている請求項1又は2に記載の建物の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土間コンクリート床スラブを有する建物の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤上に建物を建てる基礎として杭基礎が挙げられる。杭基礎では、軟弱地盤上への建物の建設において、軟弱地盤中に設けた杭によって建物を支持する。例えば、特許文献1には、杭本体の外周に多孔質の透水層が形成された液状化対策支持杭が開示されている。
【0003】
しかし、このような杭によって支持された建物において、この建物の最下層の床部が、地盤に直接支持される土間コンクリート床スラブである場合、地震により地盤が液状化した際に床部が沈下してしまうことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−316874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、地盤中に構築された支持構造体に支持された建物に設けられた、土間コンクリート床スラブの沈下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の発明は、地盤中に構築され、建物を支持する第1支持構造体と、前記地盤中に構築され、前記地盤上に設けられた土間コンクリート床スラブを支持する柱状の第2支持構造体と、を有する建物の基礎構造である。
【0007】
第1態様の発明では、土間コンクリート床スラブを第2支持構造体で支持することによって、地盤上に設けられた土間コンクリート床スラブが、地盤の液状化等により沈下するのを抑制することができる。
【0008】
第2態様の発明は、第1態様の建物の基礎構造において、前記第1支持構造体及び前記第2支持構造体は、地盤改良体である。
【0009】
第2態様の発明では、第1支持構造体と第2支持構造体が同じ地盤改良体なので、第1支持構造体の施工時に第2支持構造体を施工すれば、効率よく第2支持構造体を施工することができる。
【0010】
第3態様の発明は、第1又は第2態様の建物の基礎構造において、前記第2支持構造体は、前記土間コンクリート床スラブに対して均等に配置されている。
【0011】
第3態様の発明では、第2支持構造体を、土間コンクリート床スラブに対して均等に配置することにより、地盤の液状化等による土間コンクリート床スラブの不同沈下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記構成としたので、地盤中に構築された支持構造体に支持された建物に設けられた、土間コンクリート床スラブの沈下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る建物を示す立面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る建物の基礎構造を示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る地盤改良体の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る建物の基礎構造について説明する。
【0015】
図1の立面図には、本実施形態の建物の基礎構造10が示されている。建物の基礎構造10は、第1支持構造体としての柱状の地盤改良体12と、第2支持構造体としての柱状の地盤改良体14を有して構成されている。地盤改良体12、14は、地盤としての軟弱地盤16中に構築されており、下端部が軟弱地盤16の下方に形成された支持層(不図示)に達している。
【0016】
図1、及び
図2の正面図に示すように、地盤改良体12上には、鉄骨造の建物18の躯体柱20がフーチング24を介して建てられており、これにより、地盤改良体12は建物18を支持している。建物18の1階の床部は、軟弱地盤16に直接支持されるようにして軟弱地盤16上に設けられた土間コンクリート床スラブ22によって構成されており、この土間コンクリート床スラブ22は、地盤改良体12、14によってフーチング24、26を介して支持されている。
【0017】
図1、及び
図3の平面図に示すように、地盤改良体14は、土間コンクリート床スラブ22の下面に対して平面視にて略均等に配置されている。ここで、地盤改良体14が土間コンクリート床スラブ22の下面に対して平面視にて略均等に配置されているとは、各地盤改良体14が負担する土間コンクリート床スラブ22の荷重が略等しくなるように、地盤改良体14を点在させて配置することを意味する。例えば、
図3に示す領域A1、A2、A3のように、各地盤改良体14に割り当てられる土間コンクリート床スラブ22の下面の面積が略等しくなるように、地盤改良体14を点在させて配置する。なお、地盤改良体12が配置されている位置では、この地盤改良体12に、土間コンクリート床スラブ22を支持する役割りを兼ねさせることにより、地盤改良体14は設けていない。
【0018】
次に、本発明の実施形態に係る建物の基礎構造の作用と効果について説明する。
【0019】
本実施形態の建物の基礎構造では、
図2に示すように、土間コンクリート床スラブ22を地盤改良体14で支持することによって、軟弱地盤16上に設けられた土間コンクリート床スラブ22が、軟弱地盤16の液状化等により沈下するのを抑制することができる。
【0020】
また、これにより、土間コンクリート床スラブ22の沈下を抑制するために、土間コンクリート床スラブ22を厚くしなくてよい。また、建物18の1階の床部を、基礎梁を必要とする構造床スラブにしなくてよい。すなわち、建物18の1階の床部の施工手間を軽減することができる。
【0021】
さらに、本実施形態の建物の基礎構造10において、土間コンクリート床スラブ22から作用する長期荷重を、液状化していない軟弱地盤16によって支持させ(地盤改良体14による支持は期待せずに)、軟弱地盤16が液状化した際に土間コンクリート床スラブ22が沈下しないだけの支持力を地盤改良体14に持たせるように設計を行えば、土間コンクリート床スラブ22及び地盤改良体14の負担荷重を小さくする(例えば、土間コンクリート床スラブ22の厚さを薄くしたり配筋を少なくしたり、地盤改良体14の断面を小さくしたりする)ことができ、これによって建物の基礎構造10のコストダウンを図ることができる。
【0022】
また、本実施形態の建物の基礎構造10では、建物18を支持する第1支持構造体と、土間コンクリート床スラブ22を支持する第2支持構造体が同じ地盤改良体(地盤改良体12、14)であり、同じ施工方法で構築することができるので、地盤改良体12の施工時に地盤改良体14を施工すれば、厚い土間コンクリート床スラブや、基礎梁を必要とする構造床スラブを構築するよりも、短期間で効率よく建物の基礎構造10を構築することができる。
【0023】
さらに、本実施形態の建物の基礎構造10では、地盤改良体14を、土間コンクリート床スラブ22の下面に対して平面視にて略均等に配置することにより、軟弱地盤16の液状化等による土間コンクリート床スラブ22の不同沈下を抑制することができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0025】
なお、本実施形態では、第1及び第2支持構造体としての地盤改良体12、14の下端部が支持層に達している例を示したが、第1支持構造体は、軟弱地盤16が液状化した際に建物18を支持することができ、第2支持構造体は、軟弱地盤16が液状化した際に土間コンクリート床スラブ22を支持することができれば、第1及び第2支持構造体は、下端部が支持層まで達していても達していなくてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、第1及び第2支持構造体を、地盤改良体12、14とした例を示したが、第1支持構造体は、軟弱地盤16が液状化した際に建物18を支持できる支持構造体であればよく、第2支持構造体は、軟弱地盤16が液状化した際に土間コンクリート床スラブ22を支持できるものであればよい。例えば、第1及び第2支持構造体は、杭であってもよい。この場合、杭は、鉄筋コンクリート杭、プレストレスト高強度コンクリート杭、鋼管杭等のさまざまな杭を用いることができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、第2支持構造体としての地盤改良体14を、土間コンクリート床スラブ22の下面に対して平面視にて略均等に配置した例を示したが、第2支持構造体は、土間コンクリート床スラブ22の下面に対して必ずしも略均等に配置しなくてもよい。第2支持構造体を、土間コンクリート床スラブ22の下面に対して略均等に配置しない場合においては、土間コンクリート床スラブ22の配筋、第2支持構造体の強度や断面の大きさ等の設定によって、軟弱地盤16の液状化等に起因して土間コンクリート床スラブ22が沈下したり、不同沈下したりするのを、第2支持構造体により抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態で示した建物18は、地下階を有する建物であってもよい。この場合、建物の地下階最下層の床部を構成する土間コンクリート床スラブを地盤改良体14によって支持させる。
【0029】
さらに、本実施形態では、建物18を鉄骨造の建物とした例を示したが、建物18は、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート構造)、それらの混合構造など、さまざまな構造や規模の建物であってもよい。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
10 建物の基礎構造
12 地盤改良体(第1支持構造体)
14 地盤改良体(第2支持構造体)
16 軟弱地盤(地盤)
18 建物
22 土間コンクリート床スラブ