特許第6383552号(P6383552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383552スフィンゴモナス属細菌の検出方法及びそのプライマー、生物処理槽の活性予測方法
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  • 特許6383552-スフィンゴモナス属細菌の検出方法及びそのプライマー、生物処理槽の活性予測方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383552
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】スフィンゴモナス属細菌の検出方法及びそのプライマー、生物処理槽の活性予測方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/689 20180101AFI20180820BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20180820BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   C12Q1/689 ZZNA
   C12Q1/686 Z
   C02F3/12 P
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-67275(P2014-67275)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-188359(P2015-188359A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 祐二
(72)【発明者】
【氏名】和田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】中土 雄太
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 敦志
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−020423(JP,A)
【文献】 特開2010−220498(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/080501(WO,A1)
【文献】 特開2002−142771(JP,A)
【文献】 特開2001−112485(JP,A)
【文献】 特開2005−278639(JP,A)
【文献】 特開2006−136791(JP,A)
【文献】 特開2009−072162(JP,A)
【文献】 特開2009−072737(JP,A)
【文献】 特開2006−166874(JP,A)
【文献】 特開2011−019505(JP,A)
【文献】 特開2013−183663(JP,A)
【文献】 特開2012−085551(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146319(WO,A1)
【文献】 特開2001−149073(JP,A)
【文献】 特表2010−509932(JP,A)
【文献】 特開2001−120271(JP,A)
【文献】 特開2001−120277(JP,A)
【文献】 特開2006−101891(JP,A)
【文献】 特開2006−136338(JP,A)
【文献】 特開2006−149400(JP,A)
【文献】 特開2001−046063(JP,A)
【文献】 特開平11−123093(JP,A)
【文献】 特開2012−085552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を含む試料中のDNAを鋳型とし、
列番号1で表される塩基配列を含むフォワードプライマーと
列番号2で表される塩基配列を含むリバースプライマーと、を用いてPCRを行うことを特徴とする、スフィンゴモナス属細菌の検出方法。
【請求項2】
微生物を含む試料中のDNAを鋳型とし、
列番号3で表される塩基配列を含むフォワードプライマーと
列番号4で表される塩基配列を含むリバースプライマーと、を用いてPCRを行うことを特徴とする、スフィンゴモナス属細菌の検出方法。
【請求項3】
微生物を含む試料中のDNAを鋳型とし、
列番号5で表される塩基配列を含むフォワードプライマーと
列番号6で表される塩基配列を含むリバースプライマーと、を用いてPCRを行うことを特徴とする、スフィンゴモナス属細菌の検出方法。
【請求項4】
微生物を含む試料中のDNAを鋳型とし、
列番号7で表される塩基配列を含むフォワードプライマーと
列番号8で表される塩基配列を含むリバースプライマーと、を用いてPCRを行うことを特徴とする、スフィンゴモナス属細菌の検出方法。
【請求項5】
列番号1で表される塩基配列を含むフォワードプライマーと、
列番号2で表される塩基配列を含むリバースプライマーと、からなることを特徴とするスフィンゴモナス属細菌検出用プライマー。
【請求項6】
列番号3で表される塩基配列を含むフォワードプライマーと、
列番号4で表される塩基配列を含むリバースプライマーと、からなることを特徴とするスフィンゴモナス属細菌検出用プライマー。
【請求項7】
列番号5で表される塩基配列を含むフォワードプライマーと、
列番号6で表される塩基配列を含むリバースプライマーと、からなることを特徴とするスフィンゴモナス属細菌検出用プライマー。
【請求項8】
列番号7で表される塩基配列を含むフォワードプライマーと、
列番号8で表される塩基配列を含むリバースプライマーと、からなることを特徴とするスフィンゴモナス属細菌検出用プライマー。
【請求項9】
洗濯排水を活性汚泥により処理した生物処理槽由来の試料を検出対象とし、
微生物を含むDNAを鋳型とし、
配列番号1のフォードプライマーと配列番号2のリバースプライマーとの組合せの検出用PCRプライマー、配列番号3のフォワードプライマーと配列番号4のリバースプライマーとの組合せの検出用PCRプライマー、配列番号5のフォードプライマーと配列番号6のリバースプライマーとの組合せの検出用PCRプライマー、配列番号7のフォワードプライマーと配列番号8のリバースプライマーとの組合せの検出用PCRプライマー、
のいずれかを用いてPCRを行い、PCR産物を確認し、
一方、比較として大腸菌から抽出された染色体DNAを鋳型とし、
配列番号1のフォードプライマーと配列番号2のリバースプライマーとの組合せの検出用PCRプライマー、配列番号3のフォワードプライマーと配列番号4のリバースプライマーとの組合せの検出用PCRプライマー、配列番号5のフォードプライマーと配列番号6のリバースプライマーとの組合せの検出用PCRプライマー、配列番号7のフォワードプライマーと配列番号8のリバースプライマーとの組合せの検出用PCRプライマー、
のいずれかを用いてPCRを行い、PCR産物が得られないことを確認し、
前記試料中の前記微生物を含むDNAを鋳型とした前記PCR産物の有無により、
前記生物処理槽の活性を予測することを特徴とする生物処理槽の活性予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラント設備の作業員の作業服を洗浄した際に発生する排水を、生物処理によって浄化する生物処理装置の、生物処理槽の特定菌であるスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出方法及びスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌検出用プライマー、生物処理槽の活性予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばプラント設備から排出される洗濯排水もしくは洗浄排水(以下、代表的に「洗濯排水」という)には、例えば洗剤、布繊維、脂肪分、炭水化物のような有機物質の他に、極微量の放射性物質が含まれている。そして、排水処理においては、放流規制値を満足させるために、これらの物質を除去し無害化しなければならない。
【0003】
従来、洗濯排水を無害化する処理方法としては、プラント設備から排出される洗濯排水を、生物処理槽に導入し、ここで活性汚泥と曝気混合し、得られた混合液を精密ろ過膜によって固液分離するようにしたプラント設備からの洗濯排水を効果的に処理できる洗濯排水の処理装置の提案がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−210486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の活性汚泥を用いる生物処理での活性汚泥運転監視は、排水処理能力で評価しており、例えば洗濯排水の場合はCOD(化学的酸素要求量:Chemical Oxygen Demand)値によっている。例えばその計測の一例であるCOD-Mn法では、例えば300ppmの洗濯排水COD−Mnを例えば20ppm以下の所定値にすることで確認している。
また、活性汚泥の評価は活性汚泥浮遊物質(MLSS:Mixed Liquor Suspended Solids)や酸素消費量、pHなどの間接手法で行っている。
【0006】
このため、従来技術においては、生物処理における活性汚泥を構成している微生物の個々性能を用いて、生物処理設備の制御を行うことを狙った、迅速評価手法はなかった。
【0007】
この結果、排水処理プラントでの活性汚泥状況はいわゆる“成り行き”で運転している状況となり、突発的な不具合と、数時間から数日経過してから確認される生物処理能力低下(例えば停電等による曝気停止があると、生物処理能力が低下し、異物混入等による微生物死滅があると、生物処理能力が低下する。)への迅速対応(例えば、曝気量の増減、排水流入量削減等)は必ずしも適切に行われる状況になかった。この結果、不安定な生物処理プラントの運転となる、という問題がある。
【0008】
よって、洗濯排水における生物処理能力の低下を迅速に確認することができる技術の出現が切望されている。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出方法及びスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌検出用プライマー、生物処理槽の活性予測方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明は、下記の特徴を有する。
(1) 微生物を含む試料中のDNAを鋳型とし、
(F1−1)配列番号1で表される塩基配列、
(F1−2)配列番号1で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F1−3)配列番号1で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(F1−4)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むフォワードプライマーと、
(R1−1)配列番号2で表される塩基配列、
(R1−2)配列番号2で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R1−3)配列番号2で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(R1−4)配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むリバースプライマーと、を用いてPCRを行うことを特徴とする、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出方法。
(2) 微生物を含む試料中のDNAを鋳型とし、
(F2−1)配列番号3で表される塩基配列、
(F2−2)配列番号3で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F2−3)配列番号3で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(F2−4)配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むフォワードプライマーと、
(R2−1)配列番号4で表される塩基配列、
(R2−2)配列番号4で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R2−3)配列番号4で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(R2−4)配列番号4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むリバースプライマーと、を用いてPCRを行うことを特徴とする、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出方法。
(3) 微生物を含む試料中のDNAを鋳型とし、
(F3−1)配列番号5で表される塩基配列、
(F3−2)配列番号5で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F3−3)配列番号5で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(F3−4)配列番号5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むフォワードプライマーと、
(R3−1)配列番号6で表される塩基配列、
(R3−2)配列番号6で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R3−3)配列番号6で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(R3−4)配列番号6で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むリバースプライマーと、を用いてPCRを行うことを特徴とする、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出方法。
(4) 微生物を含む試料中のDNAを鋳型とし、
(F4−1)配列番号7で表される塩基配列、
(F4−2)配列番号7で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F4−3)配列番号7で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(F4−4)配列番号7で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むフォワードプライマーと、
(R4−1)配列番号8で表される塩基配列、
(R4−2)配列番号8で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R4−3)配列番号8で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(R4−4)配列番号8で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むリバースプライマーと、を用いてPCRを行うことを特徴とする、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出方法。
(5)(F1−1)配列番号1で表される塩基配列、
(F1−2)配列番号1で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F1−3)配列番号1で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(F1−4)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むフォワードプライマーと、
(R1−1)配列番号2で表される塩基配列、
(R1−2)配列番号2で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R1−3)配列番号2で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(R1−4)配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むリバースプライマーと、からなることを特徴とするスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌検出用プライマー。
(6)(F2−1)配列番号3で表される塩基配列、
(F2−2)配列番号3で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F2−3)配列番号3で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(F2−4)配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むフォワードプライマーと、
(R2−1)配列番号4で表される塩基配列、
(R2−2)配列番号4で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R2−3)配列番号4で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(R2−4)配列番号4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むリバースプライマーと、からなることを特徴とするスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌検出用プライマー。
(7)(F3−1)配列番号5で表される塩基配列、
(F3−2)配列番号5で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F3−3)配列番号5で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(F3−4)配列番号5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むフォワードプライマーと、
(R3−1)配列番号6で表される塩基配列、
(R3−2)配列番号6で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R3−3)配列番号6で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(R3−4)配列番号6で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むリバースプライマーと、からなることを特徴とするスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌検出用プライマー。
(8)(F4−1)配列番号7で表される塩基配列、
(F4−2)配列番号7で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F4−3)配列番号7で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(F4−4)配列番号7で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むフォワードプライマーと、
(R4−1)配列番号8で表される塩基配列、
(R4−2)配列番号8で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R4−3)配列番号8で表される塩基配列と同一性が80%以上である塩基配列、又は
(R4−4)配列番号8で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列、
を含むリバースプライマーと、からなることを特徴とするスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌検出用プライマー。
(9) 前記(1)乃至(4)のいずれか一つに記載のスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出方法を用いて生物処理槽の活性を予測することを特徴とする生物処理槽の活性予測方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本発明のスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌検出用プライマー、及びこれを用いたスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出方法により、洗濯排水中のスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌を迅速かつ特異的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、判定用DNAを用いた洗濯排水用活性汚泥主要微生物の検出の検出用プライマーを用いた特異性確認試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態及び実施例を詳細に説明する。なお、この実施形態及び実施例により本発明が限定されるものではない。
【0014】
<スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出方法>
[実施形態]
本実施形態のスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出方法(以下、本実施形態の検出方法ということがある。)は、試料中にスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌が存在していた場合には、PCRによってプライマー設計から期待される大きさのPCR産物が得られる。
【0015】
先ず、洗濯排水を生物処理する生物処理用の活性汚泥を、次世代シーケンサー(ロシュ社製「GS FLX(商品名)」)を使い菌叢解析し、活性汚泥中に含まれる微生物叢の解析を行った。
その結果、この活性汚泥に含まれる優占属として、スフィンゴモナス属(Sphingomonas属)とその近縁属であるNovosphingobium属、Sphingopyxis属、Sphingobacterium属、Sphingoterrabacterium属、Sphingobium属(この5つの微生物属は、以降では「スフィンゴモナス属の近縁属」と略する)を選抜し、シークエンスデータ(876データ)のアライメント配列を作成した。
【0016】
この作成したアライメント配列(配列番号13)を「表1」に示す。表1は、スフィンゴモナス属及び近縁属の16SrDNA遺伝子アライメント解析から得られた、コンセンサス配列(Bioeditを使ってのコンセンサス配列自動作成結果)を得た後、このコンセンサス配列で、アライメント結果と比較して、共通性が希薄であるとして削除が必要な部分を削除した遺伝子配列である。
このアライメント配列を使って、検出用PCRプライマー(配列番号1〜10)を求めた。このPCRプライマーを「表2」に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
本実施形態においては、多種多様な細菌の中からスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌を特異的に迅速に検出することが重要である。このため、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出用プライマー中のスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の染色体DNAとハイブリダイズする領域は、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の染色体DNAの塩基配列と相同性(塩基配列の同一性)が高い塩基配列であることが好ましい。
【0020】
すなわち、本実施形態の検出方法は、微生物を含む試料中のDNAを鋳型とし、領域1のアンチセンス鎖と特異的にハイブリダイズするフォワードプライマーと、領域2のセンス鎖と特異的にハイブリダイズするリバースプライマーとを用いてPCRを行うことを特徴とする。
【0021】
フォワードプライマーとして用いられるプライマーは、具体的には、下記の(F1−1)〜(F1−4)のいずれかの塩基配列を含む。
(F1−1)配列番号1で表される塩基配列、
(F1−2)配列番号1で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F1−3)配列番号1で表される塩基配列と相同性(塩基配列の同一性)が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、又は
(F1−4)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列。
【0022】
リバースプライマーとして用いられるプライマーは、具体的には、下記の(R1−1)〜(R1−4)のいずれかの塩基配列を含む。
(R1−1)配列番号2で表される塩基配列、
(R1−2)配列番号2で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R1−3)配列番号2で表される塩基配列と相同性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、又は
(R1−4)配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列。
【0023】
フォワードプライマーとして用いられるプライマーは、具体的には、下記の(F2−1)〜(F2−4)のいずれかの塩基配列を含む。
(F2−1)配列番号3で表される塩基配列、
(F2−2)配列番号3で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F2−3)配列番号3で表される塩基配列と相同性(塩基配列の同一性)が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、又は
(F2−4)配列番号3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列。
【0024】
リバースプライマーとして用いられるプライマーは、具体的には、下記の(R2−1)〜(R2−4)のいずれかの塩基配列を含む。
(R2−1)配列番号4で表される塩基配列、
(R2−2)配列番号4で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R2−3)配列番号4で表される塩基配列と相同性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、又は
(R2−4)配列番号4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列。
【0025】
フォワードプライマーとして用いられるプライマーは、具体的には、下記の(F3−1)〜(F3−4)のいずれかの塩基配列を含む。
(F3−1)配列番号5で表される塩基配列、
(F3−2)配列番号5で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F3−3)配列番号5で表される塩基配列と相同性(塩基配列の同一性)が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、又は
(F3−4)配列番号5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列。
【0026】
リバースプライマーとして用いられるプライマーは、具体的には、下記の(R3−1)〜(R3−4)のいずれかの塩基配列を含む。
(R3−1)配列番号6で表される塩基配列、
(R3−2)配列番号6で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R3−3)配列番号6で表される塩基配列と相同性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、又は
(R3−4)配列番号6で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列。
【0027】
フォワードプライマーとして用いられるプライマーは、具体的には、下記の(F4−1)〜(F4−4)のいずれかの塩基配列を含む。
(F4−1)配列番号7で表される塩基配列、
(F4−2)配列番号7で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(F4−3)配列番号7で表される塩基配列と相同性(塩基配列の同一性)が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、又は
(F4−4)配列番号7で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列。
【0028】
リバースプライマーとして用いられるプライマーは、具体的には、下記の(R4−1)〜(R4−4)のいずれかの塩基配列を含む。
(R4−1)配列番号8で表される塩基配列、
(R4−2)配列番号8で表される塩基配列において、1〜数個の塩基が欠失、置換又は付加されている塩基配列、
(R4−3)配列番号8で表される塩基配列と相同性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、又は
(R4−4)配列番号8で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列。
【0029】
尚、本発明及び本願明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の方法が挙げられる。例えば、5×SSC(20×SSCの組成:3M塩化ナトリウム、0.3Mクエン酸溶液、pH7.0)、0.1重量%のN−ラウロイルサルコシン、0.02重量%のSDS、2重量%の核酸ハイブルダイゼーション用ブロッキング試薬、及び50%のフォルムアミドから成るハイブリダイゼーションバッファー中で、55〜70℃で数時間から一晩インキュベーションを行うことによりハイブリダイズさせる条件を挙げることができる。
尚、インキュベーション後の洗浄の際に用いる洗浄バッファーとしては、好ましくは0.1重量%のSDS含有1×SSC溶液、より好ましくは0.1重量%SDS含有0.1×SSC溶液である。
【0030】
より特異性に優れているため、フォワードプライマーとして用いられるプライマーは、前記(F1−1)〜(F1−4)、(F2−1)〜(F2−4)、(F3−1)〜(F3−4)、(F4−1)〜(F4−4)の塩基配列を3’末端に有していることが好ましく、配列番号1で表される塩基配列を3’末端に有していることがより好ましく、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の染色体DNAとハイブリダイズする領域が配列番号5で表される塩基配列のみであることがさらに好ましい。
同様に、リバースプライマーとして用いられるプライマーは、前記(R1−1)〜(R1−4)、(R2−1)〜(R2−4)、(R3−1)〜(R3−4)、(R4−1)〜(R4−4)の塩基配列を3’末端に有していることが好ましく、配列番号2、4、6又は8で表される塩基配列を3’末端に有していることがより好ましく、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の染色体DNAとハイブリダイズする領域が配列番号6で表される塩基配列のみであることがさらに好ましい。
【0031】
配列番号1で表される塩基配列からなるフォワードプライマーと、配列番号2で表される塩基配列からなるリバースプライマーとを用いて、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の染色体DNAを鋳型としてPCRを行った場合、107塩基対長のPCR産物が得られる。
【0032】
配列番号3で表される塩基配列からなるフォワードプライマーと、配列番号4で表される塩基配列からなるリバースプライマーとを用いて、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の染色体DNAを鋳型としてPCRを行った場合、205塩基対長のPCR産物が得られる。
【0033】
配列番号5で表される塩基配列からなるフォワードプライマーと、配列番号6で表される塩基配列からなるリバースプライマーとを用いて、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の染色体DNAを鋳型としてPCRを行った場合、292塩基対長のPCR産物が得られる。
【0034】
配列番号7で表される塩基配列からなるフォワードプライマーと、配列番号8で表される塩基配列からなるリバースプライマーとを用いて、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の染色体DNAを鋳型としてPCRを行った場合、211塩基対長のPCR産物が得られる。
【0035】
フォワードプライマーとして用いられるプライマー及びリバースプライマーとして用いられるプライマーは、いずれも、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の染色体DNAとハイブリダイズする領域の5’端側に、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の染色体DNAとはハイブリダイズしないその他の塩基配列からなる領域を有していてもよい。当該その他の塩基配列としては、例えば、制限酵素認識配列等、PCRプライマーに一般的に付加される塩基配列が挙げられる。
【0036】
本実施形態の検出方法に供される微生物を含む試料は、特に限定されるものではないが、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌が含まれていることが期待される、又はそのおそれのある試料であることが好ましく、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌が含まれていることが期待される又はそのおそれのある試料であることがより好ましい。
【0037】
スフィンゴモナス属細菌は、菌の表層にスフィンゴ脂質を有し、疎水的雰囲気を有する表層で例えばPCB、クレオソート、ペンタクロロフェノール、除草剤のような有毒な有機化合物を取り込み、微生物のエネルギー源として利用するものである。
【0038】
従って、検査対象となる試料としては、洗濯排水を活性汚泥により処理した生物処理槽由来の試料を検査対象とすることが好ましい。
尚、検査対象である試料からのDNAの抽出及び精製は、分子生物学の分野で公知の手法の中から適宜選択して用いることができる。
【0039】
本実施形態の検出方法は、特定のスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出用プライマーを用いる以外は、常法により実施することができる。すなわち、PCRに用いるポリメラーゼ、反応用バッファー、dNTP等の各種試薬は、当該技術分野で使用されている公知の試薬等を通常の態様で使用することができる。また、PCRの温度サイクル条件は、使用するポリメラーゼの特性及び用いるプライマーのTm値等を考慮して適宜決定される。
【0040】
また、PCR産物の検出も、分子生物学の分野で公知の手法の中から適宜選択して用いることができる。本実施形態の検出方法では、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出用プライマーを用いてPCRを行うため、検査対象である試料にスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌が存在していた場合には、これらの試料中のDNAを鋳型とした場合に、200〜300塩基長程度という検出が容易な大きさのPCR産物を得ることができる。このため、例えば、電気泳動法等の汎用されている簡便な手法により、PCR産物を検出することができる。
【0041】
本実施形態の検出方法により、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌を迅速かつ特異的に検出することができる。このため、当該方法を用いることにより、生物処理槽の活性汚泥の活性化度合いを予測することができる。例えば、検査対象である金属片中のDNAを鋳型とし、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出用プライマーを用いてPCRを行い、PCR産物が得られた場合には、当該生物処理槽は、活性が良好であると、予測することができる。
【0042】
すなわち、本検出方法により、例えば原子力設備や一般プラント設備等での例えば作業衣や使用布等を洗濯処理した洗濯排水を分解処理できるであろう、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌がどれくらい存在するかを迅速に確認することができる。
【実施例】
【0043】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
洗濯排水生物処理での菌叢解析((ロシュ社製「GS FLX(商品名)」))を実施し、活性汚泥中で優占種となる微生物を特定した。これら微生物と検出PCRプライマーとして、表1及び表2に示したSPG5〜SPG10を作成した。
これらのPCRプライマーを使い、洗濯排水生物処理プラントから採取した汚泥試料と、別途培養した大腸菌(JM109)をテンプレートとしたPCRを実施し、本発明の検出方法を行った。
【0045】
具体的には、1μLの鋳型DNA溶液と、PCR酵素(「KOD−Plus−(商品名)」;東洋紡社製);『5μLの10×PCR buffer for KOD−Plus』、『5μLのdNTP solution(2mM、終濃度0.2mM each)』、『2μLのMgSO4 solution(25mM、終濃度1.0mM)』、『KOD−Plus−(1U/μL、終濃度1U/50μL)』)と、1.5μLのフォワードプライマー(10μM、終濃度0.3μM)と、1.5μLのリバースプライマー(10μM、終濃度0.3μM)と、を添加し、さらに適量の水を添加して50μLの反応溶液を調製した。当該反応溶液をPCR装置(アスペック社製)にセットし、94℃で10分間の変性工程後、1サイクルが94℃で120秒間、60℃で30秒間、68℃で60秒間を30サイクル行い、その後68℃で60秒間の伸長工程を行い、4℃で保存する温度条件で、PCRを行った。
【0046】
PCR後の各反応液を、4%の短フラグメント核酸分析用アガロース「NuSieve(商品名)3:1アガロース;タカラバイオ社製)」にアプライし、電気泳動を行った後、当該アガロースゲルをエチジウムブロマイドで染色した。
【0047】
図1に電気泳動後のアガロースゲルのエチジウムブロマイド染色像を示す。
図1中、レーン3はフォワードプライマーとして配列番号1で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液;レーン4はフォワードプライマーとして配列番号3で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号4で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液;レーン5はフォワードプライマーとして配列番号5で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号6で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液;レーン6はフォワードプライマーとして配列番号7で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号8で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液を、それぞれアプライしたレーンである。
尚、レーン1は、表3に示す環境中の全細菌の16S rRNAを対象とするユニバーサルプライマー(27F(配列番号11)、519R(配列番号12))である。
レーン2はフォワードプライマーとして配列番号9で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号10で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液;
レーン7はフォワードプライマーとして配列番号11で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号12で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液を、それぞれアプライしたレーンである。
【0048】
【表3】
【0049】
このPCRプライマーを用いた判定の結果を「表4」に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
表4及び図1に示すように、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌に共通する配列由来のプライマーを用いたレーン3〜6に200〜300塩基対長付近に1本のバンドが検出され、所定の塩基対長のPCR産物が得られたことが確認された。
一方で、レーン1,9ではバンドが薄く、これらのレーンではPCR産物があまり得られないことが確認された。
このレーンの中で、特にレーン5のSPG7のプライマー対は、292塩基対長付近に1本の明瞭な広がりが少ないバンドが検出され、所定の塩基対長のPCR産物が得られたことが確認された。
よって、このレーン5の配列番号5のフォワードプライマーと配列番号6のリバースプライマーによるプライマー対(SPG7)がスフィンゴモナス属及びその近縁属の細菌の検出用プライマーとして、特に好ましいものとなる。
【0052】
[比較例]
大腸菌から抽出された染色体DNAを鋳型として用いた以外は、実施例と同様の方法で、菌の検出を行った。
図1のレーン8〜14に、電気泳動後のアガロースゲルのエチジウムブロマイド染色像を示す。
図1中、レーン10はフォワードプライマーとして配列番号1で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号2で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液;レーン11はフォワードプライマーとして配列番号3で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号4で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液;レーン12はフォワードプライマーとして配列番号5で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号6で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液;レーン13はフォワードプライマーとして配列番号7で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号8で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液を、それぞれアプライしたレーンである。
レーン8は、表3に示すユニバーサルプライマー(27F、519R)である。
レーン9はフォワードプライマーとして配列番号9で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号10で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液;レーン14はフォワードプライマーとして配列番号11で表される塩基配列からなるプライマーと、リバースプライマーとして配列番号12で表される塩基配列からなるプライマーを用いた反応溶液を、それぞれアプライしたレーンである。なお、レーン15は表3に示すユニバーサルプライマー(27F、519R)で、水を用いたブランクある。
【0053】
図1に示すように、大腸菌から抽出された染色体DNAを鋳型とし、本発明のスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌検出用プライマーを用いてPCRを行った場合、PCR産物が得られないことが確認された。
【0054】
このように、洗濯排水生物処理汚泥から抽出したゲノムではDNAは、想定サイズのDNA断片の増幅が確認できたが、大腸菌ゲノムでは、DNA断片の増幅は確認できなかった。これにより、配列番号1〜配列番号8はスフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌の検出に際して特異的なPCRプライマーであると判断した。
この結果、本発明の検出方法によれば、スフィンゴモナス属細菌を特異的に検出できることが確認された。
【0055】
また、微生物を含む試料から抽出されたDNAを鋳型とし、スフィンゴモナス属細菌及びその近縁属細菌に特異的にハイブリダイズする配列1、3、5、7のいずれか一つのフォワードプライマーと、スフィンゴモナス属細菌に特異的にハイブリダイズする配列2、4、6、8のリバースプライマーと、を用いてPCRを行う「スフィンゴモナス属細菌の検出方法」を用いて、洗濯排水を処理する生物処理槽の活性状態を予測する生物処理槽の活性予測方法を提供することができる。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]