特許第6383554号(P6383554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383554
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】燃料改質装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20180820BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20180820BHJP
【FI】
   C01B3/38
   H01M8/0612
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-69725(P2014-69725)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-189648(P2015-189648A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100123641
【弁理士】
【氏名又は名称】茜ヶ久保 公二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友行
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−149402(JP,A)
【文献】 特開2007−055892(JP,A)
【文献】 特開2007−330966(JP,A)
【文献】 特開2003−327407(JP,A)
【文献】 特開2007−099560(JP,A)
【文献】 特開2008−063193(JP,A)
【文献】 特開2000−016801(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/151986(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0107938(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0104731(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B3/00−6/34
H01M8/04−8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被改質ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成し、該燃料ガスを燃料電池に供給するための燃料改質装置であって、
燃焼器を内部に収容する円筒形状の内筒と、
前記内筒を内部に収容する円筒形状の外筒と、を備え、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とによって区画された円筒形状の空間が、供給された水を加熱して改質用の水蒸気にするための蒸発部となっており、
前記蒸発部には、あらかじめ螺旋状の流路が形成された円筒形状の吸水性部材が配置され、
前記流路は、前記吸水性部材の外周面に沿って形成された溝であることを特徴とする、燃料改質装置。
【請求項2】
被改質ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成し、該燃料ガスを燃料電池に供給するための燃料改質装置であって、
燃焼器を内部に収容する円筒形状の内筒と、
前記内筒を内部に収容する円筒形状の外筒と、を備え、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とによって区画された円筒形状の空間が、供給された水を加熱して改質用の水蒸気にするための蒸発部となっており、
前記蒸発部には、あらかじめ螺旋状の流路が形成された円筒形状の吸水性部材が配置され、
前記流路は、前記吸水性部材の内周面に沿って形成された溝であることを特徴とする、燃料改質装置。
【請求項3】
被改質ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成し、該燃料ガスを燃料電池に供給するための燃料改質装置であって、
燃焼器を内部に収容する円筒形状の内筒と、
前記内筒を内部に収容する円筒形状の外筒と、を備え、
前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とによって区画された円筒形状の空間が、供給された水を加熱して改質用の水蒸気にするための蒸発部となっており、
前記蒸発部には、あらかじめ螺旋状の流路が形成された円筒形状の吸水性部材が配置され、
前記流路は、前記吸水性部材の内周面及び前記外周面のいずれにも露出しないように、前記吸水性部材の内部に形成されていることを特徴とする、燃料改質装置。
【請求項4】
前記吸水性部材では、前記溝の底部における吸水率が、他の部分における吸水率よりも低いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料改質装置。
【請求項5】
前記流路は、
前記吸水性部材の外周面に沿って形成された第一流路と、
前記吸水性部材の内周面に沿って形成された第二流路と、を含み、
前記吸水性部材をその中心軸に沿って切断した場合の断面において、鉛直方向に沿って、前記第一流路と前記第二流路とが交互に並ぶように形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料改質装置。
【請求項6】
螺旋状に形成された前記流路の幅は、前記吸水性部材の上方側では狭く、前記吸水性部材の下方側では広いことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の燃料改質装置。
【請求項7】
螺旋状に形成された前記流路のピッチは、前記吸水性部材の上方側では狭く、前記吸水性部材の下方側では広いことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の燃料改質装置。
【請求項8】
前記吸水性部材の吸水率は、前記吸水性部材の上方側では低く、前記吸水性部材の下方側では高いことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燃料改質装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被改質ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成し、該燃料ガスを燃料電池に供給するための燃料改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原燃料である被改質ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成する燃料改質装置が開示されている。この燃料改質装置は、燃焼器を内部に収容する内筒と、この内筒を内部に収容する外筒と、を備えている。内筒と外筒との間(円筒形状の空間)には、水を加熱して改質用の水蒸気を生成する蒸発部が形成されている。また、蒸発部には吸水性部材が配置されている。
【0003】
吸水性部材は、特許文献1の例えば図5に示されるように、内筒の外周面に巻き付けられた金属フェルトと、この金属フェルトに対して外側から螺旋状に巻き付けられた金属製のワイヤーと、から構成されている。ワイヤーが螺旋状に巻き付けられて金属フェルトが内筒の外周面に押し付けられることによって、金属フェルトにはワイヤーに沿った螺旋状のくびれが形成されており、このくびれが、被改質ガスと水との混合ガスが通る流路となっている。
【0004】
外部から供給された水は、このように形成された螺旋状の流路に沿ってその大部分が流れる。その間に、当該水は、燃焼器からの熱によって加熱されて水蒸気となり、更に流路に沿って流れた後に、蒸発部から触媒部に向けて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4870491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の燃料改質装置を製作するに当たっては、内筒の外周面に金属フェルトを巻き付けた後、当該金属フェルトに対してワイヤーを巻き付ける必要がある。このため、複数の部品と複数の組立工程とが必要であり、製造コストが増加する。また、ワイヤーは金属フェルトの外側から巻き付けられるので、金属フェルトの外周面に沿ってしか流路を形成することができない。つまり、特許文献1に記載の燃料改質装置は、流路の形成位置の自由度が低い。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、製造コストを抑制するとともに流路の形成位置の自由度を向上させることができる燃料改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る燃料改質装置は、被改質ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成し、該燃料ガスを燃料電池に供給するための燃料改質装置であって、燃焼器を内部に収容する円筒形状の内筒と、内筒を内部に収容する円筒形状の外筒と、を備え、内筒の外周面と外筒の内周面とによって区画された円筒形状の空間が、供給された水を加熱して改質用の水蒸気にするための蒸発部となっており、蒸発部には、あらかじめ螺旋状の流路が形成された円筒形状の吸水性部材が配置されている。
【0009】
このような燃料改質装置では、内筒と外筒との間に区画された円筒形状の空間に形成された蒸発部に、あらかじめ螺旋状の流路が形成された円筒形状の吸水性部材が配置されている。このような構成であるから、例えば螺旋状に形成された配管を取り付ける必要はなく、螺旋状の空間を維持するための部材(ワイヤー等)も不要となる。従って、製造コストを抑制することができる。しかも、螺旋状の流路は、吸水性部材を内筒に巻きつけた後に形成されたものではなく、あらかじめ吸水性部材に形成されているものであるから、流路の位置は吸水性部材の外周面に限定されることはなく、任意の位置に流路を形成することが可能である。すなわち、本発明によれば、流路の形成位置の自由度を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る燃料改質装置においては、流路は、吸水性部材の外周面に沿って形成された溝であってよく、また、吸水性部材の内周面に沿って形成された溝であってもよい。さらに、流路は、吸水性部材の内周面及び外周面のいずれにも露出しないように、吸水性部材の内部に形成されてもよい。
【0011】
特に、吸水性部材の外周面に沿って形成された溝を流路とした場合には、燃焼器からの熱が内筒の外周面から直接水に伝達されるので、水を極めて効率的に蒸発させることができる。尚、流路を吸水性部材のどの位置に形成するかは、燃焼器における発熱量や、供給される水の流量などに応じて適宜選択すればよい。
【0012】
また、本発明に係る燃料改質装置によれば、吸水性部材の内周面又は外周面に沿って形成された溝の底部における吸水率が、他の部分における吸水率よりも低い。こうした構成によれば、溝の底部の吸水率が他の部分の吸水率よりも低いので、水が溝の壁面を通過して(吸水性部材の内部を通って)鉛直方向に流れる現象、所謂ショートパスの発生を抑制することができる。その結果、水の大部分は螺旋状の空間に沿って流れることとなるため、効率的に水を蒸発させることができる。
【0013】
また、本発明に係る燃料改質装置では、流路は、吸水性部材の外周面に沿って形成された第一流路と、吸水性部材の内周面に沿って形成された第二流路と、を含み、吸水性部材をその中心軸に沿って切断した場合の断面において、鉛直方向に沿って、第一流路と第二流路とが交互に並ぶように形成されていることも好ましい。
【0014】
このような態様の燃料改質装置においては、それぞれの流路(第一流路、第二流路)の螺旋のピッチが長くなるため、たとえ水のショートパスが発生したとしても、水は吸水性部材の内部(流路同士の間の部分)を通過する間に十分に加熱されて水蒸気となる。つまり、水が液体のままショートパスしてしまう可能性を低くすることができる。
【0015】
また、本発明に係る燃料改質装置では、螺旋状に形成された流路の幅(流路方向に対して垂直な方向に沿った寸法)は、吸水性部材の上方側では狭く、吸水性部材の下方側では広いことも好ましい。このような態様の燃料改質装置においては、吸水性部材のうち上方側部分、すなわち液体の水が供給されて流れる部分において水を確実に蒸発させることができる。また、吸水性部材のうち下方側部分、すなわちほとんどの水が水蒸発となっている部分においては、その流路抵抗が小さくなるため、蒸発部から水蒸気をスムーズに排出することができる。
【0016】
また、本発明に係る燃料改質装置では、螺旋状に形成された流路のピッチは、吸水性部材の上方側では狭く、吸水性部材の下方側では広いことも好ましい。このような態様の燃料改質装置においては、吸水性部材のうち上方側部分、すなわち液体の水が供給されて流れる部分における流路長が長くなるため、水を確実に蒸発させることができる。また、吸水性部材のうち下方側部分、すなわちほとんどの水が水蒸発となっている部分における流路長は短くなるため、蒸発部から水蒸気をスムーズに排出することができる。
【0017】
また、本発明に係る燃料改質装置では、吸水性部材の吸水率は、吸水性部材の上方側では低く、吸水性部材の下方側では高いことも好ましい。このような態様の燃料改質装置においては、吸水性部材のうち上方側部分、すなわち液体の水が供給されて流れる部分における吸水率が低いので、ショートパスの発生を抑制することができる。その結果、水の大部分は螺旋状の空間に沿って流れることとなるため、効率的に水を蒸発させることができる。また、吸水性部材のうち下方側部分、すなわちほとんどの水が水蒸発となっている部分における吸水率は高い(通気性も高い)ので、水蒸気は螺旋状の空間のみならず、吸水性部材の内部をも通ってスムーズに蒸発部から排出される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、製造コストを抑制するとともに流路の形成位置の自由度を向上させることができる燃料改質装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一実施形態に係る燃料改質装置の構造を概略的に示す垂直断面図である。
図2】本発明の第二実施形態に係る燃料改質装置の一部の構造を概略的に示す垂直断面図である。
図3】本発明の第三実施形態に係る燃料改質装置の一部の構造を概略的に示す垂直断面図である。
図4】本発明の第四実施形態に係る燃料改質装置の一部の構造を概略的に示す垂直断面図である。
図5】本発明の第五実施形態に係る燃料改質装置の一部の構造を概略的に示す垂直断面図である。
図6】本発明の第七実施形態に係る燃料改質装置の一部の構造を概略的に示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る燃料改質装置10の構造を概略的に示す垂直断面図である。図1では、燃料改質装置10を、後述の吸水性部材22の中心軸に沿って垂直に切断した断面を示している。この燃料改質装置10は、水蒸気改質反応を用いて原燃料ガス(例えば都市ガスやLPG等の炭化水素系燃料)を改質して水素を主成分とした燃料ガスを生成し、生成した燃料ガスを燃料電池(図示せず)に供給するものである。
【0021】
燃料改質装置10は、円筒形状の内筒11と、内筒11を内部に収容する円筒形状の外筒12と、外筒12を内部に収容する筐体13と、を備えている。また、内筒11の内部には円筒形上の燃焼筒16が配置されており、更にその内部にはバーナー14(燃焼器)が収容されている。内筒11、外筒12、筐体13、燃焼筒16、及びバーナー14は、いずれもステンレス鋼により形成されている。
【0022】
バーナー14は燃焼筒16の内部において、その中心軸が鉛直方向に沿うように配置されている。バーナー14の内部には、その上下方向に沿って不図示のガス流路が形成されており、バーナー14の上端には、当該ガス流路の入り口として供給口15が開口形成されている。
【0023】
供給口15には、燃焼用の空気とガス(本実施形態では、原燃料ガスと同一のガスである)との混合気体が供給される。混合気体は、バーナー14内のガス流路を下方に向かって流れて、バーナー14の下端から噴射されて燃焼する。燃焼筒16の内部のうちバーナー14の下端よりも下方側の空間は、燃焼空間116となっている。混合気体が燃焼することにより、燃焼空間116では高温の燃焼排ガスが発生する。
【0024】
内筒11の下端は底部111によって閉じられている。また、燃焼筒16の下端は開放されており、当該下端と底部111との間が離間している。このため、燃焼空間116で発生した燃焼排ガスは、燃焼筒16の下端から、内筒11と燃焼筒16との間の空間(以下、「排ガス流路17」と表記する)に流入して、排ガス流路17内を上方に向かって流れる。
【0025】
内筒11の上端部近傍には、排ガス流路17の出口である排出口18が形成されている。高温の燃焼排ガスは、内筒11を内側から加熱しながら排ガス流路17内を上方に向かって流れた後、排出口18から排出される。後に説明するように、高温の燃焼排ガスは、改質部25において水蒸気改質反応を生じさせるための熱源となるものである。
【0026】
外筒12は、上方側の部分である上部筒12aと、下方側の部分である下部筒12bとにより構成されている。上部筒12a及び下部筒12bは、いずれも円筒形状であって、それぞれの中心軸を共有した状態で上下に並んでいる。下部筒12bの直径は、上部筒12aの直径よりも大きい。
【0027】
筐体13の下端は底部131によって閉じられており、底部131と底部111とは離間している。また、外筒12(下部筒12b)の下端は開放されており、当該下端と底部131との間が離間している。内筒11と外筒12との間に形成された円筒形上の空間は、水蒸気改質によって燃料ガスを生成するための空間となっている。当該空間で生成された燃料ガスは、外筒12(下部筒12b)の下端から、外筒12と燃焼筒16との間の空間に流入して、当該空間内を上方に向かって流れる。
【0028】
外筒12(上部筒12a)の上端部近傍には、水の入り口である水供給口19と、原燃料ガスの入り口である原燃料供給口20が形成されている。水供給口19から供給された水(液体)は、内筒11と上部筒12aとの間の空間において燃焼排ガスの熱によって加熱され、水蒸気となる。このため、当該空間を以下では「蒸発部21」とも表記する。蒸発部21の内部の構成については、後に詳しく説明する。
【0029】
内筒11と下部筒12bとの間にも空間が形成されており、当該空間には改質触媒が配置されている。尚、改質触媒としては、例えばルテニウム系やニッケル系の水蒸気改質触媒が用いられる。
【0030】
蒸発部21で生成された水蒸気と、原燃料供給口20から供給されて蒸発部21を通過した原燃料ガスは、混合された状態となってこの改質触媒に到達する。改質触媒の働きにより、蒸発部21からの水蒸気と原燃料ガスとの間で水蒸気改質反応が生じ、水素を主成分とする水素含有ガス、すなわち燃料ガスが生成される。このため、内筒11と下部筒12bとの間の空間(改質触媒が配置されている空間)を、以下では「改質部25」とも表記する。
【0031】
尚、水蒸気改質反応は所謂吸熱反応であるため、安定して反応を生じさせるためには周囲から熱を加え続けることが必要となる。本実施形態においては、燃焼空間116で生じた後に排ガス流路17内を上方に向かって流れる高温の燃焼排ガスを、水蒸気改質反応を生じさせるための熱源として利用している。つまり、排ガス流路17を流れる燃焼排ガスが、改質部25に配置された改質触媒を(内筒11を介して)加熱することにより、吸熱反応である水蒸気改質反応が安定して生じる構成となっている。
【0032】
筐体13の上端部近傍には、燃料ガスの出口である燃料ガス排出口29が形成されている。改質部25で生成された燃料ガスは、筐体13と外筒12との間の空間を上方に向かって流れた後、燃料ガス排出口29から排出され、燃料電池の燃料として利用される。
【0033】
尚、改質部25で生成された燃料ガスは、水素の他に一酸化炭素を含有している。このため、筐体13と外筒12との間の空間には、一酸化炭素の濃度を低下させることを目的として、変成部26及び選択酸化(PROX:Preferential Oxidation)部27が配置されている。変成部26は選択酸化部27よりも上流側(下方側)に配置されている。
【0034】
変成部26にはシフト触媒が配置されている。シフト触媒は、CO変成反応によって改質ガス中の一酸化炭素の濃度を0.5%程度以下まで低下させるものである。
【0035】
選択酸化部27には選択酸化触媒が配置されている。選択酸化触媒は、選択酸化反応によって改質ガス中の一酸化炭素の濃度をさらに10ppm以下程度まで低下させるものである。筐体13のうち、変成部26と選択酸化部27との間となる位置には、選択酸化用の空気を内部に導入して選択酸化部27に供給するための空気供給口28が形成されている。
【0036】
以上のような変成部26及び選択酸化部27を順に通過させることにより、一酸化炭素の濃度が低下した燃料ガスが燃料ガス排出口29から排出される。
【0037】
続いて、蒸発部21の内部の構成について具体的に説明する。既に述べたように、蒸発部は内筒11と上部筒12aとの間に形成されており、水蒸気改質に必要な水蒸気を発生させて改質部25に排出(供給)するものである。
【0038】
蒸発部21には、円筒形状の吸水性部材22が配置されている。吸水性部材22はメッシュ状の金属製フェルトを円筒形状に成形したものであり、吸水性及び通気性を有している。
【0039】
吸水性部材22は、その内側面全体が内筒11の外側面に当接しており、その外側面全体が外筒12の内側面に当接している。また、吸水性部材22の外側面には、螺旋状の溝が形成されており、当該溝と外筒12の内側面とによって区画された空間が、水供給口19から供給された水の流路24となっている。吸水性部材22よりも上方側の空間(水供給口19からの水が最初に流入する空間)と、吸水性部材22よりも下方側の空間(改質部25)とは、流路24によって連通している。
【0040】
水供給口19から供給された水は、主にこの流路24を通って下方側に向かって流れる。その間、内筒11の内側を流れる燃焼排ガスの熱によって加熱されて水蒸気となる。当該水蒸気、及び原燃料供給口20から供給された原燃料ガスは、いずれもその大部分が流路24を通って改質部25に到達するのであるが、一部は、(通気性を有する)吸水性部材22の内部を通過して改質部25に到達する。
【0041】
また、水供給口19から供給された水の一部は、吸水性部材22の内部に浸透した状態で加熱されて水蒸気となり、吸水性部材22の内部または流路24を通過して改質部25に到達する。
【0042】
尚、吸水性部材22に流路24を形成するための方法としては、様々な方法が考えられる。例えば、内筒11の外周面に吸水性部材22を取り付けた後において、吸水性部材22に外側からワイヤーを螺旋状に巻きつけることによっても形成することは可能である。しかしながら、このような方法では、螺旋状にワイヤーを巻きつけるという煩雑な工程が必要となる上に、ワイヤーという別部品も必要となってしまうため、製造コストの観点からは好ましいものではない。更に、吸水性部材22の外周面に沿ってしか溝を形成することができないため、流路24の形成位置の自由度は低い。
【0043】
これに対し、本実施形態における吸水性部材22は、その外側面にあらかじめ溝(流路24)が形成された後に、内筒11の外周面に取り付けられたものである。具体的には、吸水性部材22の外周面を螺旋状に加圧していくことで当該部分を変形させ、螺旋状の溝をあらかじめ形成した後に、これを内筒11の外周面に取り付けたものである。
【0044】
このような流路24は、上記のように簡便な方法によって形成することができる上、その形状を維持するためのワイヤー等が不要である。更に、吸水性部材22の外周面以外の部分(例えば内周面)にも形成することができる。従って、製造コストを抑制するとともに流路24の形成位置の自由度が向上している。
【0045】
尚、本実施形態においては、流路24の断面形状は矩形であるが、本発明の実施形態としてはこのような態様に限られない。矩形の他、例えば半円や半楕円、三角形、台形などのその他の形状であってもよい。
【0046】
本発明のその他の実施形態について、図2乃至6を参照しながら説明する。尚、図2以降に示した燃料改質装置は、これまでに説明した第一実施形態に係る燃料改質装置10とほぼ同様な構成となっており、吸水性部材22の形状等についてのみ異なる構成となっている。従って、以下の説明においては、第一実施形態に係る燃料改質装置10と共通する部分については図示及び詳細な説明を省略する。また、第一実施形態と同一の構成要素には、全て同一の参照符号を付すこととする。
【0047】
図2は、本発明の第二実施形態に係る燃料改質装置10の一部の構造を概略的に示す垂直断面図である。本実施形態に係る燃料改質装置10では、流路24が、吸水性部材22の外周面ではなく、内周面に沿って形成された溝となっている。既に説明したように、このような位置における溝の形成は、吸水性部材22が内筒11の外周面に取り付けられる前に溝加工を行うこととしたために、可能となったものである。
【0048】
このように、吸水性部材22の外周面に沿って形成された溝を流路24とした場合には、バーナー14からの熱(すなわち、排ガス流路17を通る燃焼排ガスからの熱)が内筒11の外周面から直接水に伝達されるので、水を極めて効率的に蒸発させることができる。
【0049】
図3は、本発明の第三実施形態に係る燃料改質装置10の一部の構造を概略的に示す垂直断面図である。この燃料改質装置10では、流路24が、吸水性部材22の内周面及び外周面のいずれにも露出しないように、吸水性部材22の内部に形成されている。既に説明したように、このような位置における溝の形成は、吸水性部材22が内筒11の外周面に取り付けられる前に溝加工を行うこととしたために、可能となったものである。
【0050】
このように、吸水性部材22の内部に流路24を形成した場合には、流路24を流れる水が直接内筒11や外筒12に触れることが無い。例えば、内筒11及び外筒12の温度が非常に高温となり、突沸の恐れがあるような構成の燃料改質装置においては、このような位置に流路24を形成した方が望ましい場合もある。このように、流路24を吸水性部材22のどの位置に形成するかは、バーナー14における発熱量や、供給される水の流量などに応じて適宜選択すればよい。
【0051】
図4は、本発明の第四実施形態に係る燃料改質装置10の一部の構造を概略的に示す垂直断面図である。この燃料改質装置10では、流路24が単一の流路ではなく、吸水性部材22の外周面に沿って形成された第一流路24aと、吸水性部材22の内周面に沿って形成された第二流路24bと、の二つの流路からなっている。第一流路24a及び第二流路24bは、いずれも螺旋状の流路であって、これらが互いに略平行に(つまり、2条ねじのねじ山のように)配置されている。このような第一流路24a及び第二流路24bの配置は、中心軸に沿って吸水性部材22を切断した場合の断面において、第一流路24aと第二流路24bとが鉛直方向に沿って交互に並ぶような配置ということもできる。
【0052】
このような構成においては、第一流路24a、第二流路24bのそれぞれの螺旋のピッチが長くなるため、水が第一流路24a等の壁面を通過して鉛直方向に流れる現象(所謂ショートパス)が発生したとしても、水は吸水性部材22の内部を通過する間に十分に加熱されて水蒸気となる。
【0053】
つまり、第二流路24bの下方には第一流路24aが存在するのであるが、真下に存在しているのではなく、吸水性部材22の径方向(図4では左右方向)に沿ってずれた位置に存在している。このため、吸水性部材22の内部を第二流路24bの下方に向けて水が浸透した場合であっても、当該水は下方の第一流路24aに流入するのではなく、その更に下方(つまり遠方)にある第二流路24bに向かって更に浸透していくこととなる。その結果、水は第二流路24bに再び流入する前に十分に加熱されて、高い確率で水蒸気となってしまうのである。このように、流路24をこのように形成すれば、水が液体のままショートパスしてしまう可能性を低くすることができる。
【0054】
図5は、本発明の第五実施形態に係る燃料改質装置10の一部の構造を概略的に示す垂直断面図である。この燃料改質装置10では、吸水性部材22には第一実施形態で説明したものと同様の流路24が形成されている。すなわち、吸水性部材22の外周面に溝を形成することにより、流路24が形成されている。
【0055】
ただし、本実施形態においては、流路24を形成するにあたって、吸水性部材22の外周面から内周面に向かって圧力をかけて、金属フェルトを押し潰すことによって溝(流路24)を形成している。その結果、金属フェルトである吸水性部材22は、流路24の底(内周側)となっている部分(以下、溝底部22aという)の密度が、それ以外の部分(以下、溝間部22bという)の密度よりも高くなっている。また、これにより、溝底部22aの吸水率が溝間部22bの吸水率よりも低くなっている。
【0056】
本実施形態の吸水性部材22では、溝底部22aにおける吸水率が溝間部22bにおける吸水率よりも低いので、水が、内筒11の外側面に沿って溝底部22aを鉛直方向に通過するような現象、すなわちショートパスが更に生じにくくなっている。その結果、水の大部分は螺旋状の流路24内を流れることとなるため、効率的に水を蒸発させることができる。
【0057】
図6は、本発明の第六実施形態に係る燃料改質装置10の一部の構造を概略的に示す垂直断面図である。この燃料改質装置10では、螺旋状に形成された流路24の溝幅(流路24の流路方向に対して垂直な方向に沿った寸法、すなわち、略鉛直方向に沿った寸法)が、吸水性部材22の上方側では狭くなっており、下方側に行くほど次第に広くなるように形成されている。このため、上方側においては水との接触面積を確保し、効率的に水蒸気を発生させる一方で、下流側においては、発生した水蒸気をスムーズに排出することができる。
【0058】
このような態様に替えて、又はこのような態様と共に、螺旋状に形成された流路24のピッチ(鉛直方向に沿って隣り合う流路24同士の間隔を、吸水性部材22の上方側では狭くして、下方側に行くほど次第に広くなるように形成してもよい。このような態様においては、吸水性部材22のうち上方側部分、すなわち液体の水が供給されて流れる部分における流路長が長くなるため、水を確実に蒸発させることができる。また、吸水性部材22のうち下方側部分、すなわちほとんどの水が水蒸発となっている部分における流路長は短くなるため、蒸発部21から水蒸気をスムーズに排出することができる。
【0059】
第七実施形態に係る燃料改質装置10について説明する。尚、本実施形態に係る燃料改質装置10の形状は、図1に示した第一実施形態に係る燃料改質装置10の形状と同一である。
【0060】
この燃料改質装置10では、金属フェルトである吸水性部材22の密度が、吸水性部材22の上方側で高くなっている一方で、吸水性部材22の下方側においては低くなっている。吸水性部材22のうち上方側部分、すなわち液体の水が供給されて流れる部分における吸水率が低いので、ショートパスの発生を抑制することができる。その結果、水の大部分は螺旋状の流路24内を流れることとなるため、効率的に水を蒸発させることができる。また、吸水性部材22のうち下方側部分、すなわちほとんどの水が水蒸発となっている部分における吸水率は高い(通気性も高い)ので、水蒸気は螺旋状の空間のみならず、吸水性部材22の内部をも通ってスムーズに蒸発部21から排出される。
【0061】
尚、以上の各実施形態について説明したそれぞれの特徴は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第五〜第七実施形態に係る燃料改質装置10において、流路24は、吸水性部材22の内周面又は外周面のいずれに形成されてもよく、又は、内周面及び外周面のいずれにも露出しないように吸水性部材22の内部に形成されてもよい。
【0062】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明したものの、本発明はこれらの具体例に限定されない。本発明の特徴を備えている限り、これらの具体例に当業者が設計変更を加えたものも本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各構成要素やその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されず、適宜変更されてもよい。また、各構成要素は、技術的に可能な限り組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0063】
10:燃料改質装置
11:内筒
12:外筒
12a:上部筒
12b:下部筒
13:筐体
14:バーナー
15:供給口
16:燃焼筒
17:排ガス流路
18:排出口
19:水供給口
20:原燃料供給口
21:蒸発部
22:吸水性部材
22a:溝底部
22b:溝間部
24:流路
24a:第一流路
24b:第二流路
25:改質部
26:変成部
27:選択酸化部
28:空気供給口
29:燃料ガス排出口
111:底部
116:燃焼空間
131:底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6