特許第6383558号(P6383558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383558
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】フーチング基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   E02D27/12 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-78901(P2014-78901)
(22)【出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2015-200094(P2015-200094A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】木原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】大野 正人
(72)【発明者】
【氏名】野澤 裕和
(72)【発明者】
【氏名】奥出 久人
(72)【発明者】
【氏名】菅原 敏晃
(72)【発明者】
【氏名】松尾 享
(72)【発明者】
【氏名】中野 達男
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−231799(JP,A)
【文献】 特開平07−292686(JP,A)
【文献】 特開平07−166559(JP,A)
【文献】 特開平05−339951(JP,A)
【文献】 特開平02−308011(JP,A)
【文献】 実開昭63−014642(JP,U)
【文献】 特開2001−355246(JP,A)
【文献】 特開平08−074271(JP,A)
【文献】 特開2006−291641(JP,A)
【文献】 特開平04−347214(JP,A)
【文献】 特開2001−132275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00〜 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁主筋が突出して設けられ、杭の杭頭部を覆う凹部が下面に形成されたプレキャストコンクリート製のフーチング部材と、
前記凹部と前記杭頭部の間に充填されて、前記杭頭部に前記フーチング部材を接合する充填材と、
前記杭頭部の周辺地盤に設置され、前記フーチング部材を所定の平面位置に配置する位置決めマークが付された複数の設置プレートと、
を有し、
前記フーチング部材は、前記梁主筋が設けられた側面の下辺が前記設置プレート上に置かれているフーチング基礎構造。
【請求項2】
前記フーチング部材には、前記フーチング部材の外面から前記凹部の内面へ貫通し、前記凹部と前記杭頭部の間へ前記充填材を送り込む充填材供給孔が複数形成されている請求項1に記載のフーチング基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の杭基礎を構成する杭の杭頭部に設けられるフーチング基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の杭基礎を構成する杭の杭頭部に現場打ちコンクリートによってフーチングを施工する場合、フーチングには、杭頭補強筋、柱主筋、梁主筋、せん断補強筋等の鉄筋が混在し、これらの鉄筋が密に配置されたり、複雑に交錯して配置されたりするために、施工が煩雑になる。
【0003】
例えば、特許文献1には、主鉄筋を介して場所打ちRC杭にフーチングが接合された接合構造が開示されている。この接合構造では、杭頭接合部の強度を向上させるために、この部分に多くの帯鉄筋が主鉄筋を取り囲むようにして密に配筋されているので、施工が煩雑になることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−299760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、フーチングの施工性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の発明は、梁主筋が突出して設けられ、杭の杭頭部を覆う凹部が下面に形成されたプレキャストコンクリート製のフーチング部材と、前記凹部と前記杭頭部の間に充填されて、前記杭頭部に前記フーチング部材を接合する充填材と、を有するフーチング基礎構造である。
【0007】
第1態様の発明では、フーチング部材をプレキャスト化することにより、フーチング部材の施工において手間の掛かる配筋作業やコンクリート打設作業を工場等で行う(現場で行わなくする)ことができる。また、下面に形成された凹部が杭の杭頭部を覆うようにしてプレキャストコンクリート製のフーチング部材を設置し、この凹部と杭頭部の間へ充填材を充填するだけで、杭頭部にフーチング部材を容易に接合することができる。これらにより、フーチング部材の施工性を向上させることができる。
【0008】
第2態様の発明は、第1態様のフーチング基礎構造において、前記フーチング部材は、前記杭頭部の周辺地盤に設置された設置プレート上に置かれる。
【0009】
第2態様の発明では、設置プレート上にフーチング部材を置くことにより、地盤上に捨てコンクリートを打設せずに、フーチング部材を所定の高さに設置することができる。
【0010】
第3態様の発明は、第1又は第2態様のフーチング基礎構造において、前記フーチング部材には、前記フーチング部材の外面から前記凹部の内面へ貫通し、前記凹部と前記杭頭部の間へ前記充填材を送り込む充填材供給孔が複数形成されている。
【0011】
第3態様の発明では、充填材供給孔を設けることにより、凹部と杭頭部の間へ充填材を確実に送り込むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記構成としたので、フーチングの施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るフーチング部材の設置方法を示す正面断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るフーチング部材を示す正面図である。
図3図2のA−A矢視図である。
図4図2のB−B矢視図である。
図5】本発明の実施形態に係るフーチング部材の設置状況を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係るフーチング基礎構造のバリエーションを示す正面断面図である。
図7】本発明の実施形態に係るフーチング基礎構造のバリエーションを示す正面図である。
図8】本発明の実施形態に係るフーチング部材と基礎梁の接合方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係るフーチング基礎構造について説明する。
【0015】
図1(c)の正面断面図に示すように、本実施形態のフーチング基礎構造10は、プレキャストコンクリート製のフーチング部材12と、充填材14とを有して構成されている。充填材14は、コンクリートからなり、鉄筋コンクリートによって形成され地盤16中に埋設された杭18の杭頭部20にフーチング部材12を接合している。
【0016】
図2の正面図、図2のA−A矢視図である図3、及び図2のB−B矢視図である図4に示すように、フーチング部材12は、鉄筋コンクリートによって形成された略八角柱状のブロックである。フーチング部材12内には、フーチング部材12の上面36に設置される柱(不図示)の柱主筋に繋がれる柱主筋22と、フーチング部材12の側面に接合される基礎梁(不図示)の梁主筋に繋がれる梁主筋24が複数設けられている。柱主筋22は、フーチング部材12の上面36から突出して設けられており、梁主筋24は、フーチング部材12の側面から突出して設けられている。また、フーチング部材12内には、柱主筋22や梁主筋24を取り囲むようにして、柱主筋22や梁主筋24の軸方向へせん断補強筋(不図示)が複数設けられている。
【0017】
図1(b)の正面断面図、及び図4に示すように、フーチング部材12の下面38には、円錐台状の凹部26が形成されている。凹部26は、凹部26の天井面28の半径をR、杭頭部20の半径をr、杭18の施工誤差(平面配置の誤差)を±αとしたときに、天井面28の半径Rがr+αよりも大きくなるように形成されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、フーチング部材12の上部には、切欠き部30、32、34が形成されており、フーチング部材12の軽量化を図っている。
【0019】
図1(b)、図3、及び図4に示すように、フーチング部材12の上面36の略中央には、凹部26の天井面28からフーチング部材12の上面36へ貫通する空気抜き孔40が略鉛直に形成されている。また、空気抜き孔40の周囲には、切欠き部30、32、34の底面42、44、46から凹部26の天井面28へ貫通し、充填材14の送り込みを行う充填材供給孔48、50、52、54が略鉛直に形成されている。すなわち、フーチング部材12には、フーチング部材12の外面から凹部26の内面へ貫通する複数の充填材供給孔48、50、52、54が形成されている。空気抜き孔40及び充填材供給孔48、50、52、54は、フーチング部材12中に設けられている柱主筋22、梁主筋24、及びせん断補強筋と干渉しないようにして形成されている。
【0020】
図2図3、及び図4に示すように、フーチング部材12の側面には、平板上の突出部56、58、60が形成されており、梁主筋24は、この突出部56、58、60の外面からフーチング部材12の外側へ突出している。
【0021】
次に、フーチング部材の設置方法について説明する。
【0022】
まず、図1(a)の正面断面図に示すように、杭頭部20の周辺地盤62に、コンクリート製の平板からなる設置プレート64を設置する。設置プレート64は、この設置プレート64の上にフーチング部材12を置いたときに、フーチング部材12が設計で決められた高さに水平に配置されるように設置する。例えば、上面が所定高さに位置するとともに水平になるように、設置プレート64を設置する。また、図5の斜視図に示すように、設置プレート64と、フーチング部材12の下部側面には、フーチング部材12を所定の平面位置に配置するための位置決めマーク66、68が付けられている。
【0023】
次に、図1(b)に示すように、凹部26が杭頭部20を覆うようにしてフーチング部材12を設置プレート64の上に置いて、フーチング部材12を周辺地盤62の上に設置する。これにより、凹部26の下方に、周辺地盤62の上面、杭頭部20の外周面、杭頭部20の上面、及び凹部26の内面によって囲まれた空間70が形成される。また、図5に示すように、設置プレート64に付けられたマーク66と、フーチング部材12に付けられたマーク68とを合わせるようにしてフーチング部材12を設置することにより、フーチング部材12は、所定の平面位置に配置される。
【0024】
次に、図1(c)に示すように、充填材供給孔48、50、52、54(図3を参照のこと)から空間70へ充填材14を送り込む。すなわち、凹部26と杭頭部20の間に充填材14を充填する。具体的には、例えば、1つの充填材供給孔48から充填材14を空間70へ送り込む。このとき、空間70内に残っている空気は、空気抜き孔40や充填材供給孔50、52、54から排出される。さらに、充填材供給孔48から空間70への充填材14の送り込みを続けるとともに、充填材14の進入開始が確認された充填材供給孔50、52、54へ充填材14を送り込む。
【0025】
そして、空間70への充填材14の充填が完了した後、空間70へ充填した充填材14を硬化させることにより、杭18の杭頭部20にフーチング部材12が接合される。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係るフーチング基礎構造の作用と効果について説明する。
【0027】
柱主筋、梁主筋、せん断補強筋等の複数種の鉄筋が混在するフーチング部材の現場施工は煩雑であり、さらに、これらの鉄筋が密に配置されたり複雑に交錯して配置されたりする場合には、現場での施工はより煩雑になる。これに対して、本実施形態のフーチング基礎構造10では、フーチング部材12をプレキャスト化することにより、フーチング部材12の施工において手間の掛かる配筋作業やコンクリート打設作業を工場等で行う(現場で行わなくする)ことができる。また、図1(b)、(c)に示すように、フーチング部材12の凹部26により杭18の杭頭部20を覆うようにしてプレキャストコンクリート製のフーチング部材12を設置し、凹部26と杭頭部20の間へ充填材14を充填するだけで、杭頭部20にフーチング部材12を容易に接合することができる。これらにより、フーチング部材12の施工性を向上させることができる。
【0028】
なお、フーチング部材に設けられる鉄筋が梁主筋だけの場合においても、フーチング部材のプレキャスト化により、フーチング部材の施工性向上の効果を発揮することができるが、本実施形態に示すような複数種の鉄筋が混在するフーチング部材の場合に、特に有効となる。
【0029】
また、本実施形態のフーチング基礎構造10では、杭頭補強筋を用いずに杭頭部20にフーチング部材12を接合するので、フーチング部材12の工場等での製作手間を低減することができる。また、杭頭部20にフーチング部材12を半固定状態で接合する(杭頭部20に作用するせん断力と鉛直力を杭18に伝え、曲げモーメントは杭18に伝えないように接合する)ことにより、フーチング部材12に接合される基礎梁や杭18に生じる応力を低減することができ、基礎梁や杭18の必要強度を小さくすることができる。
【0030】
さらに、本実施形態のフーチング基礎構造10では、図1(b)に示すように、杭頭部20の外形よりもフーチング部材12の凹部26を大きく形成しておくことにより、杭18の施工誤差(平面配置の誤差)を吸収することができる。例えば、本実施形態で示した例のように、杭頭部20の半径rに杭18の施工誤差αを足した値よりも凹部26の天井面28の半径Rが大きくなるように凹部26を形成すれば、フーチング部材12を正規の位置に設置することができる。
【0031】
また、本実施形態のフーチング基礎構造10では、図1(b)に示すように、設置プレート64の上にフーチング部材12を置くことにより、杭頭部20の周辺地盤62上に捨てコンクリートを打設せずに、フーチング部材12を所定の高さに水平に設置することができる。
【0032】
さらに、本実施形態のフーチング基礎構造10では、フーチング部材12に充填材供給孔48、50、52、54を設けることにより、凹部26と杭頭部20の間へ充填材14を確実に送り込むことができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0034】
なお、本実施形態では、フーチング部材12に、柱主筋22、梁主筋24、及びせん断補強筋が設けられている例を示したが、フーチング部材12に設けられる鉄筋が、梁主筋24のみ、又は梁主筋24とせん断補強筋のみであってもよい。
【0035】
また、杭頭部20とフーチング部材12の中心同士がずれた状態でフーチング部材12が設置されることに起因して杭頭部20とフーチング部材12の接合部に生じるモーメントを負担できるように、梁主筋24、及びこの梁主筋24に繋がれる基礎梁の梁主筋の鉄筋量を増やして(鉄筋本数を増やす、又は鉄筋径を大きくする)、フーチング部材12及び基礎梁の曲げ強度を高くしてもよい。
【0036】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、フーチング部材12をプレキャストコンクリート製の部材とした例を示したが、フーチング部材12の下部をプレキャストコンクリートによって形成し、フーチング部材12の下部を地盤上に設置した後にフーチング部材12の上部を現場打ちコンクリートで形成してもよい。
【0037】
また、本実施形態では、図1(a)に示すように、周辺地盤62の地盤面から杭頭部20が突出している杭18にフーチング部材12を接合した例を示したが、地盤中に杭頭部20が入り込んでしまっているような場合には、図6の正面断面図に示すように、杭頭部20周囲の周辺地盤62を除去し、凹部26と杭頭部20の間に充填される充填材14によって杭頭部20が取り囲まれるようにすればよい。
【0038】
さらに、本実施形態では、設置プレート64をコンクリート製の平板とした例を示したが、設置プレートは、フーチング部材12を確実に置けるものであればよい。例えば、設置プレートを鋼板としてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、周辺地盤62に設置した設置プレート64の上にフーチング部材12を置くことによって、周辺地盤62上の所定位置にフーチング部材12を設置した例を示したが、図7の正面図に示すように、地盤16に設置した設置プレート64の上に基礎梁72を置くことによって、地盤16上の所定位置に基礎梁72設置するようにしてもよい。この場合、例えば、図8の平面図に示すように、フーチング部材12の突出部58側面と、基礎梁72の端部側面に止め型枠74の端部を当てるようにして止め型枠74を配置し、止め型枠74の外側を埋戻し土76で覆って固定してもよい。このようにすれば、簡易な型枠建て込み方法によって、フーチング部材12と基礎梁72の接合部78にコンクリートVを打設することができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、充填材14をコンクリートとした例を示したが、充填材は、空間70に充填することができ、杭18の杭頭部20にフーチング部材12を接合できるものであればよい。例えば、充填材をグラウト材としてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、杭18を鉄筋コンクリート杭とした例を示したが、本実施形態のフーチング基礎構造10は、鉄筋コンクリート杭、プレストレストコンクリート杭、プレストレスト高強度コンクリート杭、鋼管杭などのさまざまな構造の既成杭や場所打ち杭に対して適用することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
10 フーチング基礎構造
12 フーチング部材
14 充填材
18 杭
20 杭頭部
24 梁主筋
26 凹部
48、50、52、54 充填材供給孔
62 周辺地盤
64 設置プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8