(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二次元画像表示装置の画像をレンズ光学系で投影する場合、灯具前方に形成される配光パターンに色収差が生じる可能性がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次元画像表示装置を用いた車両用灯具において、配光パターンの色収差を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、二次元画像表示装置と、二次元画像表示装置からの光を灯具前方に投影する投影レンズ群とを備える。投影レンズ群は、二次元画像表示装置側に配置された第1レンズと、第1レンズよりも像側に配置された第2レンズとを備える。第1レンズと第2レンズとの間には間隙が設けられており、第1レンズと第2レンズは、互いにアッベ数が異なる。
【0007】
第1レンズの屈折率は、第2レンズの屈折率よりも高くてもよい。第1レンズのアッベ数は、第2レンズのアッベ数よりも低くてもよい。
【0008】
第1レンズと第2レンズとの間の間隙は、光軸上で24mm以下であってもよい。
【0009】
第1レンズと第2レンズの入射面および出射面は、非球面から構成されてもよい。
【0010】
第1レンズの出射面の最大半径Cと、第1レンズの軸上の厚さDの比率D/Cは、0.5以上であってもよい。
【0011】
第1レンズと第2レンズの入射面および出射面は、二次元画像表示装置に形成された画像が水平方向に引き伸ばされて投影されるよう形成された自由曲面から構成されてもよい。
【0012】
第1レンズの出射面の最大半径Cと、第1レンズの軸上の厚さDの比率D/Cは、0.75以上であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次元画像表示装置を用いた車両用灯具において、配光パターンの色収差を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
【
図2】第1実施例に係る投影レンズ群の概略鉛直断面図である。
【
図3】第1実施例に係る投影レンズ群の第1面〜第4面それぞれにおける曲率、コーニック定数、非球面係数を示す図である。
【
図4】第2実施例に係る投影レンズ群の概略鉛直断面図である。
【
図5】第2実施例に係る投影レンズ群の第1面〜第4面それぞれにおける曲率、コーニック定数、非球面係数を示す図である。
【
図6】
図6(a)および(b)は、本発明の第1実施例に係る投影レンズ群を用いて投影されたパターンの一例を説明するための図である。
【
図7】第3実施例に係る投影レンズ群の概略斜視図である。
【
図8】第3実施例に係る投影レンズ群の概略側面図である。
【
図9】第3実施例に係る投影レンズ群の概略上面図である。
【
図10】第3実施例に係る投影レンズ群の概略鉛直断面図である。
【
図11】第3実施例に係る投影レンズ群の概略水平断面図である。
【
図12】第3実施例に係る投影レンズ群の第1面〜第4面それぞれにおける自由球面係数を示す図である。
【
図13】
図13(a)および(b)は、本発明の第3実施例に係る投影レンズ群を用いて投影されたパターンの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る車両用灯具について詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。本実施形態に係る車両用灯具1は、車両前方の左右に配置される一対の前照灯ユニットを有する車両用前照灯装置である。一対の前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、
図1には車両用灯具1として一方の前照灯ユニットの構造を示す。
【0017】
車両用灯具1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成される。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、光源10と、リフレクタ12と、二次元画像表示装置14と、投影レンズ群20とが収容される。各構成要素は、図示しない支持機構によりランプボディ2に取り付けられる。
【0018】
光源10は、LED、半導体レーザ、バルブなどであってよい。光源10は、リフレクタ12に向けて光を照射するよう配置される。リフレクタ12は、曲面状の反射面12aを有する。リフレクタ12は、光源10からの光を二次元画像表示装置14に向けて反射する。なお、リフレクタ12は必須ではなく、光源10からの光が直接に二次元画像表示装置14に照射されるよう構成されてもよい。
【0019】
本実施形態の二次元画像表示装置14は、MEMSミラーアレイである。二次元画像表示装置14は、複数のマイクロミラー(
図1には3つのマイクロミラー14a〜14cを示す、以下では総称する場合は「マイクロミラー14」と呼ぶ)がアレイ状に配列されたものである。
【0020】
各マイクロミラー14は、制御部60からの制御信号に応じてその傾斜角度を変えることにより、リフレクタ12からの光を灯具前方に位置する投影レンズ群20に向けて反射する状態(以下「オン状態」と呼ぶ)と、光源10からの光を投影レンズ群20から外れるように反射する状態(以下「オフ状態」と呼ぶ)とを個別に切り替え可能である。各マイクロミラー14の傾斜角を変えることで二次元画像表示装置14は二次元画像を表示することができる。例えば
図1において、マイクロミラー14a、14bはオン状態にある。オン状態にあるマイクロミラー14a、14bにより灯具前方に反射した光L1、L2は、投影レンズ群20に入射する。
【0021】
投影レンズ群20は、その光軸Axが灯具前方を向くとともに、その後側焦点が二次元画像表示装置14の像形成面の中心に位置するように配置される。投影レンズ群20は、二次元画像表示装置14により表示された二次元画像を、反転像として灯具前方に投影する。
【0022】
本実施形態において、光源10からの光の出射強度調節、二次元画像表示装置14の各マイクロミラーの傾斜角度の制御は、制御部60によりなされる。制御部60は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。なお、制御部60は、
図1では灯室3外に設けられているが、灯室3内に設けられてもよい。制御部60は、撮像装置62に接続された画像処理装置61、図示しないライトスイッチ等からの信号を受信する。そして、制御部60は、受信した信号に応じて、光源10および二次元画像表示装置14に各種の制御信号を送信する。
【0023】
撮像装置62は、灯具前方を撮像するよう配置される。画像処理装置61は、撮像装置62で撮像された画像データを取得し、画像処理を施す。これにより、画像処理装置61は、画像データ中に含まれる車両、歩行者、レーンマーク等を特定し、これらの位置を検出する。これらを特定する技術や位置を検出する技術は公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。検出された位置情報は制御部60に送られる。これらの位置情報を使用して、制御部60はマイクロミラー14の傾斜角度を制御し、二次元画像表示装置14に所望の二次元画像を形成させる。
【0024】
次に、本実施形態に係る車両用灯具1で用いる投影レンズ群20について詳細に説明する。この投影レンズ群20は、二次元画像表示装置14側に配置された第1レンズ21と、第1レンズ21よりも投影像側に配置された第2レンズ22から構成される。第1レンズ21は、入射面21aと、出射面21bとを備える。第2レンズ22は、入射面22aと、出射面22bとを備える。第1レンズ21の入射面21aは、二次元画像表示装置14に対向している。第1レンズ21の出射面21bは、第2レンズ22の入射面22aと対向している。第2レンズ22の出射面22bは、灯具前方に向けられている。
【0025】
本実施形態に係る車両用灯具1において、第1レンズ21と第2レンズ22は、互いに屈折率の波長依存性を表すアッベ数が異なる。より詳細には、第1レンズ21のアッベ数は、第2レンズ22のアッベ数よりも低い(すなわち、第1レンズ21の分散は第2レンズ22よりも高い)。また、第1レンズ21と第2レンズ22は、互いに屈折率が異なる。より詳細には、第1レンズ21の屈折率は、第2レンズ22の屈折率よりも高い。まとめると、第1レンズ21は、相対的に高屈折・高分散の材料から形成され、第2レンズ22は、相対的に低屈折・低分散の材料から形成される。例えば、第1レンズ21の材料として高屈折・高分散のポリカーボネート樹脂を選択し、第2レンズ22の材料として低屈折・低分散のアクリル樹脂(PMMA)を選択することができる。あるいは、第1レンズ21の材料として高屈折・高分散の重フリントガラス(例えばSF2)を選択し、第2レンズ22の材料として低屈折・低分散のクラウンガラス(例えばBK7)を選択することができる。さらに樹脂とガラスの両方を選択することも可能である。例えば、第1レンズ21の材料が樹脂、第2レンズ22の材料がガラスという組み合わせや、第1レンズ21の材料がガラス、第2レンズ22の材料が樹脂という組み合わせも可能である。
【0026】
このように、本実施形態に係る車両用灯具1では、互いにアッベ数が異なる第1レンズ21と第2レンズ22を組み合わせて用いることにより、第1レンズ21と第2レンズ22のそれぞれに起因する色収差が互いに打ち消し合うように作用するので、灯具前方に投影される配光パターンの色収差を防止することができる。
【0027】
また、本実施形態に係る車両用灯具1では、第1レンズ21と第2レンズ22との間には間隙23が設けられている。このように第1レンズ21と第2レンズ22との間には間隙23を設けることにより、投影レンズ群20にレンズ面を4面とることができる。このようにレンズ面を4面確保することにより、例えば第1レンズと第2レンズと当接した場合(レンズ面は実質的に3面)と比較して、レンズ光学系の設計自由度を高めることができる。以下においては、入射面21a、出射面21b、入射面22a、出射面22bを、それぞれ第1面21a、第2面21b、第3面22a、第4面22bとも呼ぶ。
【0028】
さらに、本実施形態に係る車両用灯具1では、二次元画像表示装置14と投影レンズ群20とが所定距離(例えば20mm)以上離間している。このように二次元画像表示装置14と投影レンズ群20とを離間させることにより、リフレクタ12で反射した光を好適に二次元画像表示装置14に入射させることができる。
【0029】
以下、投影レンズ群20の実施例について説明する。
【0030】
(第1実施例)
図2は、第1実施例に係る投影レンズ群20の概略鉛直断面図である。この第1実施例に係る投影レンズ群20は、二次元画像表示装置14により形成された画像の縦横比を維持したまま、灯具前方に投影するよう構成されている。第1実施例に係る投影レンズ群20では、第1面〜第4面は、以下に示す非球面式(1)で規定される。
【数1】
ここで、rは光軸Axからの距離、cは曲率、kはコーニック定数、α
1,α
2・・・は非球面係数である。
図3は、第1実施例に係る投影レンズ群20の第1面〜第4面それぞれにおける曲率c、コーニック定数k、非球面係数α
1〜α
5を示す。なお、本実施例ではrの10次までを考慮しているが、さらに高次の項を加えてもよい。
【0031】
第1実施例に係る投影レンズ群20において、第1レンズ21の出射面(第2面)21bの最大半径Cと、第1レンズ21の光軸上の厚さDの比率D/Cは、0.9334である。
【0032】
第1実施例に係る投影レンズ群20において、フラウンホーファーのF線(486nm)とC線(656nm)に対する焦点位置のズレ量の、焦点距離に対する比率は、0.07%であった。通常の一枚レンズでは、この比率は1.5%〜2%である。これから、本第1実施例は、色収差を防止できていることが分かる。
【0033】
(第2実施例)
図4は、第2実施例に係る投影レンズ群20の概略鉛直断面図である。この第2実施例に係る投影レンズ群20も、二次元画像表示装置14により形成された像の縦横比を維持したまた、灯具前方に投影するよう構成されている。第2実施例に係る投影レンズ群20においても、第1〜第4面は上記の非球面式(1)で規定される。
図5は、第2実施例に係る投影レンズ群20の第1面〜第4面それぞれにおける曲率c、コーニック定数k、非球面係数α
1〜α
5を示す。
【0034】
第2実施例に係る投影レンズ群20において、第1レンズ21の出射面(第2面)21bの最大半径Cと、第1レンズ21の光軸上の厚さDの比率D/Cは、0.8177である。
【0035】
第2実施例に係る投影レンズ群20において、フラウンホーファーのF線(486nm)とC線(656nm)に対する焦点位置の、ズレ量の焦点距離に対する比率は、0.07%であった。これから、本第2実施例においても、色収差を防止できていることが分かる。
【0036】
上記第1および第2実施例のように投影レンズ群20の第1面〜第4面を非球面式(1)で規定する場合、第2面21bの最大半径Cと、第1レンズ21の光軸上の厚さDの比率D/Cは、0.5以上とすることが好ましい。
【0037】
図6(a)および(b)は、本発明の第1実施例に係る投影レンズ群を用いて投影されたパターンの一例を説明するための図である。
図6(a)は、比較例として一枚の投影レンズを用いて投影された市松模様パターンを示す。
図6(b)は、本第1実施例に係る投影レンズ群を用いて投影された市松模様パターンを示す。
図6(a)に示すように、比較例に係る投影パターンでは収差が発生して市松模様パターンがぼやけているが、
図6(b)に示すように、本第1実施例に係る投影パターンでは収差が抑制されて鮮明な市松模様パターンが投影されていることが分かる。
【0038】
(第3実施例)
図7は、第3実施例に係る投影レンズ群20の概略斜視図である。
図8は、第3実施例に係る投影レンズ群20の概略側面図である。
図9は、第3実施例に係る投影レンズ群20の概略上面図である。
図10は、第3実施例に係る投影レンズ群20の概略鉛直断面図である。
図11は、第3実施例に係る投影レンズ群20の概略水平断面図である。この第3実施例に係る投影レンズ群20は、二次元画像表示装置14により形成された像の縦横比を変えて灯具前方に投影するよう構成されている。
【0039】
第3実施例に係る投影レンズ群20の第1面〜第4面は、二次元画像表示装置14に形成された画像が水平方向に引き伸ばされて投影されるよう形成された自由曲面から構成される。以下に、第1面〜第4面を規定する自由曲面式(2)を示す。
【数2】
ここで、α
1,α
2・・・は自由曲面係数である。
図12は、第3実施例に係る投影レンズ群20の第1面〜第4面それぞれにおける自由球面係数α
1〜α
20を示す。なお、本実施例ではx、yの10次までを考慮しているが、さらに高次の項を加えてもよい。
【0040】
第3実施例に係る投影レンズ群20において、第1レンズ21の出射面(第2面)21bの最大半径Cと、第1レンズ21の光軸上の厚さDの比率D/Cは、0.82である。本第3実施例のように、投影レンズ群20の第1面〜第4面を自由曲面式(2)で規定する場合、第2面21bの最大半径Cと、第1レンズ21の光軸上の厚さDの比率D/Cは、0.75以上とすることが好ましい。
【0041】
第3実施例に係る投影レンズ群20において、フラウンホーファーのF線(486nm)とC線(656nm)に対する焦点位置のズレ量の、焦点距離に対する比率は、0.13%であった。これから、本第3実施例においても、色収差を防止できていることが分かる。
【0042】
図13(a)および(b)は、本発明の第3実施例に係る投影レンズ群を用いて投影されたパターンの一例を説明するための図である。
図13(a)は、比較例として一枚の投影レンズを用いて投影された市松模様パターンを示す。
図13(b)は、本第3実施例に係る投影レンズ群を用いて投影された市松模様パターンを示す。
図13(a)に示すように、比較例に係る投影パターンでは収差が発生して市松模様パターンがぼやけているが、
図13(b)に示すように、本第3実施例に係る投影パターンでは収差が抑制されて鮮明な市松模様パターンが投影されていることが分かる。さらに、本第3実施例に係る投影パターンでは、市松模様パターンが水平方向に引き伸ばされて投影されていることが分かる。
【0043】
MEMSミラーアレイは、縦横比が4:3や16:9であるものが多い。従って、このような縦横比のMEMSミラーアレイを、横方向の長さが縦方向の長さに比べて極端に長い配光パターンを形成する車両用灯具に用いた場合、MEMSミラーアレイの一部のμミラーはパターンの形成に利用することができず、無駄となる。しかしながら、本第3実施例に係る投影レンズ群20を用いて二次元画像表示装置14に形成された画像を水平方向に引き伸ばして投影することで、MEMSミラーアレイの全てのマイクロミラーをパターン形成に有効活用することができる。
【0044】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0045】
例えば、上述の実施形態では、二次元画像表示装置として複数のマイクロミラーを備えるMEMSミラーアレイを例示したが、二次元画像表示装置はMEMSミラーアレイに限定されず、例えば複数の可動リボンを備える回折型MEMSアレイや、液晶パネルなどであってもよい。