【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、ポリウレタン化合物の分析方法とポリウレタン弾性繊維の性能評価のための各種評価方法について述べる。
【0049】
(1)ポリウレタン化合物の分子量測定
LiBrを0.02mol/L含有するジメチルアセトアミド溶液にて、固形分濃度が0.25重量%になるようにポリウレタン化合物を溶解し、測定サンプルとする。
作製したサンプルをShodex社製GPC−101にて、以下に示す条件で測定する。尚、ポリウレタン化合物の分子量は、Shodex社製のポリスチレン標準サンプル(SM−105)を全サンプル測定し、ピークトップ分子量から求めた検量線から算出した数平均分子量のことを指す。
カラム:(サンプル側)→KD−G→KD−806M→KD−806M→KD−802.5→KD−801×3→RI−71S(検出器)(以上は全てShodex社製)
カラムオーブン温度:60℃
流量:1.0ml/min
溶離液:LiBrを0.02mol/Lの濃度で含有するジメチルアセトアミド溶液
【0050】
(2)ポリウレタン化合物の流出開始温度測定
ポリウレタン化合物をフローテスターCFT−500D型((株)島津製作所製)を使用して測定する。ポリウレタン化合物がペレットなどの粒子形状の場合、最大外径が2mmを超える際は、2mm以下になるように細化した後に測定する。また、ポリウレタン化合物がジメチルアセトアミド等の溶媒に溶解している場合は、乾燥後の厚みが100μm程度になるようにその溶液をガラスの平板にキャストし、50℃の乾燥庫で12時間以上乾燥させてフィルム化した後に5mm幅の短冊上に切り出し、さらに1mm間隔に切り刻み、1mm×5mm×100μm程度に細化して測定する。
一回の測定に必要なサンプルの量は1.5gで、ダイ(ノズル)は直径0.5mm、厚み1.0mmのものを使用し、5kgの押出荷重を加え、初期設定温度80℃で予熱時間240秒後、3℃/分の速度で250℃まで等速昇温した時のストローク長(mm)と温度の曲線を求める。温度上昇に伴い、トナー内部のポリマーが加熱され、ダイからポリマー流出し始める。この時の温度を流出開始温度とする。
【0051】
(3)熱接着剥離応力(湿熱98℃でのポリウレタン弾性繊維同士)
5cm幅でサンプリング(両端は両面テープに挟んで固定)した2本の試験糸を、
図1に示すように中心で交絡させ、1cmの間隔を空けて金型に固定する。原糸が100%伸長となるように伸長させた状態で、98℃のスチームで20分間処理する。処理後、金枠からサンプルを外し、交絡を解除して、融着部だけで2本が接する状態にする。各々の試験糸両端は重ねておく。
引張試験機(オリエンテック(株)社製UTM−III−100型(商品名))を用い、各々の試験糸両端を試験機上下チャックにあわせてつかみセットする。50cm/分で引張り接着部が剥がれる際の最大応力P(cN)を測定し、ポリウレタン弾性繊維サンプルの繊度(dt)で除する。
【0052】
(4)熱接着剥離応力(乾熱180℃でのポリウレタン弾性繊維同士)
5cm幅でサンプリング(両端は両面テープに挟んで固定)した2本の試験糸を、
図1のように中心で交絡させ、1cmの間隔を空けて金型に固定する。原糸が100%伸長となるように伸長させた状態で、湯洗を90℃10分間行った後、乾熱で180℃1分間処理する。処理後、金枠からサンプルを外し、交絡を解除して、融着部だけで2本が接する状態にする。各々の試験糸両端は重ねておく。
引張試験機(オリエンテック(株)社製UTM−III−100型(商品名))を用い、各々の試験糸両端を試験機上下チャックにあわせてつかみセットする。50cm/分で引張り接着部が剥がれる際の最大応力P(cN)を測定し、ポリウレタン弾性繊維サンプルの繊度(dt)で除する。
【0053】
(5)編地解編応力
本実施形態のポリウレタン弾性繊維をナイロン66糸13dT/7fで1600T/m、カバリングドラフト2.3でカバリングした後、その糸を24ゲージ/2.54cmの一口丸編機で、1g荷重の編み張力で一口丸編地を作製する。作製した丸編地を98℃のスチームで20分間プレセット処理した後、100℃の水で30分間ボイルし、120℃のスチームで20秒間ファイナルセットする。熱処理した編地を編目に沿って切断し、引張試験機(オリエンテック(株)社製UTM−III−100型(商品名))を用い、
図2のように上部チャックに編地をセットし、編地の端から引き出したポリウレタン弾性繊維の端を下部チャックにセットし、50cm/分の速度で引張り、編地の一端からポリウレタン弾性繊維を抜き出す際の応力T(cN)を測定し、ポリウレタン弾性繊維サンプルの繊度(dt)で除する。
【0054】
(6)ラン評価
前項で作製した処理後の編地を膝部の直径33cmの足型に履かせ、膝部の糸を二目半切断した後、屈伸運動を50回させ、ランの長さ(cm)を測定し、全くランしない場合を「○」、1cm未満のランの場合を「△」、1cm以上ランした場合を「×」とした。
【0055】
[
参考例1]
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールに対し、1.6倍モル当量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液とした。
一方、エチレンジアミン及びジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下添加して、ポリウレタン固形分濃度30重量%、粘度450Pa・s(30℃)のポリウレタンウレア溶液PA1を得た。
【0056】
また、別に、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、それに対し2.5倍モル当量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、ポリスチレン換算で分子量110000、流出開始温度154℃のポリウレタンを得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU1を得た。
【0057】
得られたポリウレタンウレア溶液とポリウレタン溶液をPA1:PU1=80:20の重量比で混合し、ポリウレタンウレアとポリウレタンを合わせた固形分に対し、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1重量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量%をポリウレタン溶液と混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。
【0058】
この紡糸原液を紡糸速度800m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、得られたポリウレタン弾性繊維をパッケージに巻き取られる前に、仕上げ剤として、ポリジメチルシロキサン80重量%、鉱物油18重量%、ステアリン酸マグネシウム2重量%からなる油剤を、ポリウレタン弾性繊維に対して4重量%付与し、紙製の紙管に巻き取ることで、22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0059】
[実施例2]
参考例1のポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、それに対し2.5倍モル当量の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、分子量65000、流出開始温度133℃のポリウレタンを得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU2を得た。
得られたポリウレタン溶液をPA1:PU2=80:20で混合し、
参考例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0060】
[
参考例3]
参考例1のPU1の代わりに、実施例2のPU2をPA1:PU2=40:60の重量比で混合し、
参考例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0061】
[実施例4]
参考例1のポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、それに対し2.5倍モル当量の4,4’−ジシクロメタンジイソシアネート(H12MDI)を、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、分子量100000、流出開始温度118℃のポリウレタンを得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU3を得た。
得られたポリウレタン溶液をPA1:PU2=80:20で混合し、
参考例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0062】
[実施例5]
参考例1のポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、それに対し4倍モル当量の4,4’−ジシクロメタンジイソシアネート(H12MDI)を、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、分子量135000、流出開始温度184℃のポリウレタンを得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU4を得た。
得られたポリウレタン溶液をPA1:PU4=80:20で混合し、
参考例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0063】
[実施例6]
参考例1のポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、それに対し2.5倍モル当量のイソホロンジイソシアネート(IPDI)を、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、分子量120000、流出開始温度145℃のポリウレタンを得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU5を得た。
得られたポリウレタン溶液をPA1:PU5=70:30で混合し、
参考例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0064】
[実施例7]
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールとそれに対し、1.6倍モル当量の混合ジイソシアネート(MDI:1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(1,3−H6XDI)=7:3(モル比))を乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液とした。
一方、エチレンジアミン及びジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下添加して、ポリウレタン固形分濃度30重量%、粘度430Pa・s(30℃)のポリウレタンウレア溶液PA2を得た。
得られたポリウレタンウレア溶液PA2と
参考例1のPU1をPA2:PU1=80:20(重量比)で混合し、
参考例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0065】
[実施例8]
実施例5において、ポリウレタン溶液PU1の代わりに、
参考例3で用いたPU3を、PA2:PU3=80:20(重量比)で混合し、
参考例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0066】
[比較例1]
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールに対し、1.6倍モル当量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミドを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液とした。
一方、エチレンジアミン及びジエチルアミンを乾燥ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を用意し、これを前記プレポリマー溶液に室温下添加して、ポリウレタン固形分濃度30重量%、粘度450Pa・s(30℃)のポリウレタンウレア溶液PA1を得た。
得られたポリウレタンウレア溶液PA1中の固形分に対し、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1重量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量%をポリウレタン溶液と混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。
この紡糸原液を紡糸速度800m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、得られたポリウレタン弾性繊維をパッケージに巻き取られる前に、仕上げ剤として、ポリジメチルシロキサン80重量%、鉱物油18重量%、ステアリン酸マグネシウム2重量%からなる油剤を、ポリウレタン弾性繊維に対して4重量%付与し、紙製の紙管に巻き取ることで、22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0067】
[比較例2]
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、それに対し2.5倍モル当量の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、ポリスチレン換算で分子量110000、流出開始温度154℃のポリウレタンを得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU1を得た。
得られたポリウレタン溶液PU1中の固形分に対し、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1重量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを0.5重量%をポリウレタン溶液と混合して、均一な溶液とした後、室温減圧下で脱泡して、これを紡糸原液とした。
この紡糸原液を紡糸速度800m/分、熱風温度310℃で乾式紡糸し、得られたポリウレタン弾性繊維をパッケージに巻き取られる前に、仕上げ剤として、ポリジメチルシロキサン80重量%、鉱物油18重量%、ステアリン酸マグネシウム2重量%からなる油剤を、ポリウレタン弾性繊維に対して4重量%付与し、紙製の紙管に巻き取ることで、22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0068】
[比較例3]
参考例1のポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、それに対し2.5倍モル当量のMDIを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、分子量160000、流出開始温度177℃のポリウレタンを得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU6を得た。
得られたポリウレタン溶液をPA1:PU6=80:20で混合し、
参考例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0069】
[比較例4]
参考例1のPU1の代わりに、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、それに対し2.5倍モル当量の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、分子量30000、流出開始温度118℃のポリウレタンを得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU7を得た。
参考例1のPU1の代わりにPU6をPA1:PU7=80:20の重量比で混合し、
参考例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
【0070】
[比較例5]
参考例1のポリウレタン溶液PU1の代わりに、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと、それに対し2.5倍モル当量の4,4’−ジシクロメタンジイソシアネート(H12MDI)を、乾燥窒素雰囲気下、80℃において3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーとした後、1,4−ブタンジオールを前記プレポリマーに室温下添加して、分子量160000、流出開始温度155℃のポリウレタンを得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度30重量%のポリウレタン溶液PU8を得た。
得られたポリウレタン溶液をPA1:PU8=80:20で混合し、
参考例1と同様にして22デシテックス/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
以上の各
参考例、実施例及び比較例における組成、性能を以下の表1に示す。
【0071】
【表1】