特許第6383571号(P6383571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383571インバータ装置、このインバータ装置を備えた誘導加熱装置およびワイヤレス給電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383571
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】インバータ装置、このインバータ装置を備えた誘導加熱装置およびワイヤレス給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20180820BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20180820BHJP
   H05B 6/06 20060101ALI20180820BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20180820BHJP
【FI】
   H02M7/48 A
   H05B6/12 324
   H05B6/06 301
   H02J50/10
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-114715(P2014-114715)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-231243(P2015-231243A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100115369
【弁理士】
【氏名又は名称】仙波 司
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】横田 真郎
(72)【発明者】
【氏名】鷲田 晃暢
【審査官】 小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−222180(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/104969(WO,A1)
【文献】 特開2010−213414(JP,A)
【文献】 特開2011−228220(JP,A)
【文献】 特開平07−222444(JP,A)
【文献】 特開平09−065656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02J 50/10
H05B 6/06
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのスイッチング素子が直列接続された先行アームと、2つのスイッチング素子が直列接続された追従アームとが並列接続されたインバータ回路と、
前記インバータ回路の先行アームのスイッチング素子に入力される先行駆動信号の位相と、追従アームのスイッチング素子に入力され、前記先行駆動信号より位相が遅れる追従駆動信号の位相との差を変化させることで、前記インバータ回路の出力を制御する制御回路と、
を備えており、
前記追従アームのスイッチング素子には、第1のダイオードが逆並列接続されており、
前記先行アームのスイッチング素子には、前記第1のダイオードより逆回復電荷が小さい第2のダイオードが逆並列接続されており、
前記先行アームのスイッチング素子は、ワイドバンドギャップ半導体を用いたMOSFETである
ことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記第2のダイオードは、ファーストリカバリダイオードである、
請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記第2のダイオードは、前記ワイドバンドギャップ半導体を用いたダイオードである、
請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化ケイ素である、
請求項1ないし3のいずれかに記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、窒化ガリウムである、
請求項1ないし3のいずれかに記載のインバータ装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載のインバータ装置を備えている、
ことを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載のインバータ装置を備えている、
ことを特徴とするワイヤレス給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーズシフト制御を行うインバータ装置、このインバータ装置を備えた誘導加熱装置およびワイヤレス給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導を利用して加熱を行う誘導加熱装置が開発されている。誘導加熱装置は、インバータ装置を用いて高周波電流を加熱用コイルに供給し、磁界を変化させる。そして、この磁界に配置された金属製の加熱対象物に、渦電流を発生させる。加熱対象物に渦電流が流れることで電気抵抗によるジュール熱が発生し、自己発熱によって加熱対象物が加熱される。
【0003】
誘導加熱装置のインバータ装置において、インバータ装置の各スイッチング素子に入力する駆動信号の位相差を変化させることで出力の制御を行うフェーズシフト制御が用いられる場合がある。例えば、特許文献1には、フェーズシフト制御を行うインバータ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4346391号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェーズシフト制御を行うインバータ装置では、先行アームが進み力率運転になりやすい。進み力率運転においては、逆回復期間に、フリーホイールダイオードの逆回復に基づく逆回復電流が流れる。大きな逆回復電流が流れると、スイッチング素子やフリーホイールダイオードが故障する懸念がある。
【0006】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、先行アームが進み力率運転になっても、大きな逆回復電流が流れることを抑制することができるインバータ装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面によって提供されるインバータ装置は、2つのスイッチング素子が直列接続された先行アームと、2つのスイッチング素子が直列接続された追従アームとが並列接続されたインバータ回路と、前記インバータ回路の先行アームのスイッチング素子に入力される先行駆動信号の位相と、追従アームのスイッチング素子に入力され、前記先行駆動信号より位相が遅れる追従駆動信号の位相との差を変化させることで、前記インバータ回路の出力を制御する制御回路とを備えており、前記追従アームのスイッチング素子には、第1のダイオードが逆並列接続されており、前記先行アームのスイッチング素子には、前記第1のダイオードより逆回復電荷が小さい第2のダイオードが逆並列接続されていることを特徴とする。
【0009】
なお、スイッチング素子にダイオードが逆並列接続されているというのは、MOSFETなどのように、製造過程で寄生ダイオードが形成された場合も含まれる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第2のダイオードは、ファーストリカバリダイオードである。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第2のダイオードは、ワイドバンドギャップ半導体を用いたダイオードである。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記先行アームのスイッチング素子は、ワイドバンドギャップ半導体を用いたMOSFETである。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化ケイ素である。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ワイドバンドギャップ半導体は、窒化ガリウムである。
【0015】
本発明の第2の側面によって提供される誘導加熱装置は、本発明の第1の側面によって提供されるインバータ装置を備えている。
【0016】
本発明の第3の側面によって提供されるワイヤレス給電装置は、本発明の第1の側面によって提供されるインバータ装置を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、先行アームのスイッチング素子に逆並列接続されるダイオードには、第1のダイオードより逆回復電荷が小さい第2のダイオードが用いられている。したがって、先行アームが進み力率運転になっても、大きな逆回復電流が流れることを抑制することができる。また、進み力率運転になりにくい追従アームのスイッチング素子に逆並列接続されるダイオードには、第2のダイオードより逆回復電荷が大きい第1のダイオードが用いられている。逆回復電荷が大きい第1のダイオードが接続された追従アームのスイッチング素子は、第2のダイオードが接続された先行アームのスイッチング素子よりオン抵抗が小さいので、定常損失が小さくなる。したがって、追従アームのスイッチング素子に逆並列接続されるダイオードにも第2のダイオードが用いられる場合と比べて、定常損失を抑制することができる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る誘導加熱装置の全体構成を説明するための図である。
図2】ダイオードのスイッチング特性を説明するための図である。
図3】第2実施形態に係るワイヤレス給電装置の全体構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、本発明に係るインバータ装置を誘導加熱装置に用いた場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
図1は、第1実施形態に係る誘導加熱装置の全体構成を説明するための図である。
【0022】
誘導加熱装置A1は、直流電源1、インバータ装置、コイル5、および、共振用コンデンサ6を備えている。誘導加熱装置A1は、直流電源1が出力する直流電流をインバータ回路2で高周波電流に変換して、コイル5に流すことで、電磁誘導を利用して加熱対象物Bを加熱する。
【0023】
直流電源1は、直流電流を出力するものであり、例えば、電力系統から入力される交流電流を整流する整流回路と、平滑する平滑コンデンサとを備えている。なお、直流電源1は、交流電流を直流電流に変換して出力するものに限られず、例えば、燃料電池、蓄電池、太陽電池などの直流電流を出力するものであってもよい。
【0024】
インバータ装置は、直流電源1から入力される直流電流を高周波電流に変換して、コイル5に出力するものである。インバータ装置は、インバータ回路2と制御回路7とを備えており、以下では「インバータ装置8」と記載する。インバータ装置8の詳細については、後述する。
【0025】
コイル5は、磁界を発生させるためのものであり、導体線を螺線状に巻いたものである。本実施形態では、誘導加熱装置A1を加熱調理用のものとしており、コイル5の上部に加熱対象物Bとして鍋などを配置するので、コイル5を平面的に螺線状に巻いた渦巻形状としているが、これに限られない。コイル5の形状は、加熱対象物Bの形状や配置の状態に応じたものとすればよい。例えば、コイル5を円筒形状に巻いたいわゆるコイル形状として、その中央に加熱対象物Bを配置するようにしてもよい。コイル5は、インバータ装置8から入力される高周波電流が流れることで磁界を変化させる。これにより、この磁界に配置された例えば鍋などの加熱対象物Bに、渦電流が発生する。加熱対象物Bには、渦電流が流れることで電気抵抗によるジュール熱が発生し、自己発熱によって加熱対象物Bは加熱される。
【0026】
共振用コンデンサ6は、コイル5によるインピーダンスを打ち消すためのものであり、コイル5に直列接続されることで直列共振回路を構成している。
【0027】
コイル5と加熱対象物Bとは磁気結合しているので、コイル5、共振用コンデンサ6および加熱対象物Bをまとめて、インバータ装置8に接続された負荷と考えることができる。つまり、誘導加熱装置A1は、直流電源1が出力する直流電流をインバータ装置8が交流電流に変換して、負荷に供給するものである。インバータ装置8は、負荷に供給する電力を制御することができる。本実施形態では、インバータ装置8は、フェーズシフト制御により出力電力を制御する。
【0028】
インバータ装置8は、単相フルブリッジ型のインバータ回路2と制御回路7とを備えている。インバータ回路2は、4個のスイッチング素子2a〜2d、4個のフライホイールダイオード3a〜3d、および、4個のスナバコンデンサ4a〜4dを備えている。本実施形態では、スイッチング素子2a〜2dとしてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使用している。なお、スイッチング素子2a〜2dはMOSFETに限定されず、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor : 絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)などであってもよい。また、スナバコンデンサ4a〜4dの種類も限定されない。
【0029】
スイッチング素子2aと2bとは、スイッチング素子2aのソース端子とスイッチング素子2bのドレイン端子とが接続されて、直列接続されている。スイッチング素子2aのドレイン端子は直流電源1の正極側に接続され、スイッチング素子2bのソース端子は直流電源1の負極側に接続されて、ブリッジ構造を形成している。同様に、スイッチング素子2cと2dとが直列接続されてブリッジ構造を形成している。スイッチング素子2aと2bで形成されているブリッジ構造を先行アームとし、スイッチング素子2cと2dで形成されているブリッジ構造を追従アームとする。先行アームのスイッチング素子2aと2bとの接続点には出力ラインが接続され、追従アームのスイッチング素子2cと2dとの接続点にも出力ラインが接続されている。これら2つの出力ラインの間に、コイル5と共振用コンデンサ6とが直列接続されている。各スイッチング素子2a〜2dのゲート端子には、制御回路7から出力される駆動信号Pa’〜Pd’(後述)がそれぞれ入力される。
【0030】
各スイッチング素子2a〜2dは、それぞれ駆動信号Pa’〜Pd’に基づいて、オン状態とオフ状態とを切り替えられる。各アームの両端はそれぞれ直流電源1の正極と負極とに接続されているので、正極側のスイッチング素子がオン状態で負極側のスイッチング素子がオフ状態の場合、当該アームの出力ラインの電位は直流電源1の正極側の電位となる。一方、正極側のスイッチング素子がオフ状態で負極側のスイッチング素子がオン状態の場合、当該アームの出力ラインの電位は直流電源1の負極側の電位となる。これにより、直流電源1の正極側の電位と負極側の電位とが切り替えられたパルス状の電圧信号が各出力ラインから出力され、2つの出力ライン間の電圧である線間電圧が交流電圧となる。
【0031】
フライホイールダイオード3a〜3dは、スイッチング素子2a〜2dのドレイン端子とソース端子との間に、それぞれ逆並列に接続されている。すなわち、フライホイールダイオード3a〜3dのアノード端子はそれぞれスイッチング素子2a〜2dのソース端子に接続され、フライホイールダイオード3a〜3dのカソード端子はそれぞれスイッチング素子2a〜2dのドレイン端子に接続されている。フライホイールダイオード3a〜3dは、それぞれスイッチング素子2a〜2dの切り替えによって発生する逆起電力による逆方向の高い電圧がスイッチング素子2a〜2dに印加されないようにするためのものである。
【0032】
本実施形態において、フライホイールダイオード3a,3bは、MOSFETの寄生ダイオードをファーストリカバリダイオード化したものであり、フライホイールダイオード3c,3dはMOSFETのノーマルタイプの寄生ダイオードである。すなわち、スイッチング素子2aおよびフライホイールダイオード3a(スイッチング素子2bおよびフライホイールダイオード3b)が、寄生ダイオードがファーストリカバリダイオードの特性を有するように形成されたファーストリカバリダイオードタイプのMOSFETであり、スイッチング素子2cおよびフライホイールダイオード3c(スイッチング素子2dおよびフライホイールダイオード3d)が、寄生ダイオードがノーマルタイプのシリコンダイオードの特性を有するように形成されたノーマルタイプのMOSFETである。
【0033】
図2は、ダイオードのスイッチング特性を説明するための図であり、順方向電流IFが流れている状態から逆方向電圧を印加した時の、ダイオードに流れる電流I、および、ダイオードの端子間電圧Vの変化を示している。同図(a)は、ノーマルタイプのシリコンダイオード(フライホイールダイオード3c,3dに相当)のものであり、同図(b)は、ファーストリカバリダイオード(フライホイールダイオード3a,3bに相当)のものである。
【0034】
逆方向電圧が印加されると、ダイオードに流れる電流Iは急減し、逆方向に電流が流れる。pn接合部に蓄積されている少数キャリアがなくなるまで逆方向電流が増加し、電流Iは、逆回復電流ピーク値IR1から特定の逆方向電流IR2(通常、IR1の25%)を経てゼロになる。電流Iが急減してゼロになってからIR2になるまでの時間が逆回復時間trrであり、この期間の電流積分値(図における斜線部分の面積)が逆回復電荷Qrrである。図2(a)、(b)に示すように、ファーストリカバリダイオードは、ノーマルタイプのシリコンダイオードより、逆回復電荷Qrrが小さいので、逆回復時間trrが短く、逆回復電流ピーク値IR1が小さい。
【0035】
スナバコンデンサ4a〜4dは、スイッチング素子2a〜2dのドレイン端子とソース端子との間に、それぞれ接続されている。スナバコンデンサ4a〜4dは、スイッチング素子2a〜2dの切り替えによってドレイン端子とソース端子との間に印加されるサージ電圧を吸収するものである。なお、スナバコンデンサ4a〜4dにそれぞれ抵抗を直列接続してスナバ回路としてもよい。なお、スナバコンデンサ4a〜4dは、備えないようにしてもよい。
【0036】
制御回路7は、インバータ回路2の制御を行うものであり、直流電源1に入力される交流電力が目標電力になるように制御することで、インバータ回路2の出力電力を制御する。制御回路7は、フェーズシフト制御によってインバータ回路2の制御を行う。すなわち、追従アームのスイッチング素子2c(2d)に出力する駆動信号Pc’(Pd’)の位相を先行アームのスイッチング素子2a(2b)に出力する駆動信号Pa’(Pb’)の位相より遅らせるが、この位相差θを変化させることで、出力電力の制御を行う。位相差θを小さくすると、負荷に電圧が印加される時間が短くなり、電流の振幅が小さくなって、インバータ回路2の出力電力が小さくなる。逆に、位相差θを大きくすると、負荷に電圧が印加される時間が長くなり、電流の振幅が大きくなって、インバータ回路2の出力電力が大きくなる。
【0037】
制御回路7は、電力算出部71、電力設定部72、電力制御部73、パルス信号生成部74、および、ドライバ75を備えている。
【0038】
電力算出部71は、電力系統から直流電源1に入力される交流電力の電力値を算出するものである。図1においては図示されていないが、直流電源1には電力系統と整流回路との間に電流センサおよび電圧センサが設けられている。当該電流センサは、電力系統から直流電源1に入力される交流電流を検出して、電力算出部71に出力している。また、当該電圧センサは、電力系統から直流電源1に入力される交流電圧を検出して、電力算出部71に出力している。電力算出部71は、電流センサおよび電圧センサからの入力に基づいて、直流電源1に入力される交流電力の電力値Pを算出して出力する。なお、電力算出部71を直流電源1に設けて、電力値Pを直流電源1から制御回路7に入力するようにしてもよい。
【0039】
電力設定部72は、電力値Pの目標値P*を設定するものであり、設定された目標値P*を出力する。電力設定部72は、図示しない操作手段の操作に応じて、目標値P*を設定する。操作手段は、例えば、つまみの回動位置により目標値P*を変化させるものであり、一方方向(例えば反時計回り)につまみを回動させると目標値P*が小さい値に設定され、他方方向(例えば時計回り)につまみを回動させると目標値P*が大きい値に設定される。
【0040】
電力制御部73は、インバータ回路2に入力される電力の制御を行うためのものである。電力制御部73は、電力算出部71より出力される電力値Pと、電力設定部72より出力される目標値P*との電力偏差ΔP(=P*−P)を入力されて、当該電力偏差ΔPをゼロにするための電力補償値Xをパルス信号生成部74に出力する。電力制御部73は、例えば、比例積分(PI)制御を行っている。
【0041】
パルス信号生成部74は、パルス信号Pa〜Pdを生成するものである。パルス信号生成部74は、先行パルス信号生成部741および追従パルス信号生成部742を備えている。
【0042】
先行パルス信号生成部741は、先行アームのスイッチング素子2aおよび2bに入力される駆動信号Pa’およびPb’の元になるパルス信号PaおよびPbを生成して、ドライバ75に出力する。先行パルス信号生成部741は、所定の周期でデューティ比が50%であるパルス信号Paを生成して出力する。また、先行パルス信号生成部741は、パルス信号Paを反転させた信号をパルス信号Pbとして出力する。
【0043】
追従パルス信号生成部742は、追従アームのスイッチング素子2cおよび2dに入力される駆動信号Pc’およびPd’の元になるパルス信号PcおよびPdを生成して、ドライバ75に出力する。追従パルス信号生成部742は、所定の周期でデューティ比が50%であり、電力制御部73より入力される電力補償値Xに応じて位相を遅らせたパルス信号Pcを生成して出力する。また、追従パルス信号生成部742は、パルス信号Pcを反転させた信号をパルス信号Pdとして出力する。
【0044】
なお、パルス信号生成部74によるパルス信号の生成方法は、上述したものに限られない。電力制御部73より入力される電力補償値Xに応じて、パルス信号PcおよびPdの位相の遅れを変化させることができればよい。また、本実施形態においては、デューティ比を50%にした場合について説明しているが、これに限られない。50%はあくまで例示であって、50%以外の所定値としてもよい。
【0045】
ドライバ75は、パルス信号生成部74から入力されるパルス信号Pa〜Pdを増幅して、各スイッチング素子2a〜2dを駆動できるレベルの駆動信号Pa’〜Pd’として出力する。本実施形態では、ドライバ75を、パルストランス方式のゲートドライブ回路としている。なお、ドライバ75は、パルストランス方式のゲートドライブ回路に限定されず、フォトカプラ方式などの他の方式のゲートドライブ回路としてもよい。
【0046】
なお、制御回路7の各部はディジタル回路として実現してもよいし、アナログ回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを制御回路7として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0047】
次に、第1実施形態に係る誘導加熱装置の作用と効果について説明する。
【0048】
本実施形態においては、先行アームのスイッチング素子2a,2bにそれぞれ逆並列接続されるフライホイールダイオード3a,3bはファーストリカバリダイオードであり、追従アームのスイッチング素子2c,2dにそれぞれ逆並列接続されるフライホイールダイオード3c,3dはノーマルタイプのシリコンダイオードである。ファーストリカバリダイオードは、ノーマルタイプのシリコンダイオードより逆回復電荷Qrrが小さいので、逆回復時間trrが短く、逆回復電流ピーク値IR1が小さい。したがって、先行アームが進み力率運転になっても、大きな逆回復電流が流れることを抑制することができる。
【0049】
また、ノーマルタイプのMOSFET(スイッチング素子2cとフライホイールダイオード3c、および、スイッチング素子2dとフライホイールダイオード3d)のオン抵抗は、ファーストリカバリダイオードタイプのMOSFET(スイッチング素子2aとフライホイールダイオード3a、および、スイッチング素子2bとフライホイールダイオード3b)のオン抵抗よりより小さくなる。したがって、追従アーム側のMOSFET(スイッチング素子2cとフライホイールダイオード3c、および、スイッチング素子2dとフライホイールダイオード3d)もファーストリカバリダイオードタイプとした場合と比べて、定常損失を抑制することができる。また、ファーストリカバリダイオードタイプのMOSFETは、ノーマルタイプのMOSFETより高価である。したがって、追従アーム側のMOSFETもファーストリカバリダイオードタイプとした場合より、生産コストを抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、フライホイールダイオード3a〜3dがMOSFETの寄生ダイオードである場合について説明したが、これに限られない。各スイッチング素子2a〜2dにフライホイールダイオード3a〜3dをそれぞれ接続するようにしてもよい。
【0051】
本実施形態においては、フライホイールダイオード3a,3bがファーストリカバリダイオードである場合について説明したがこれに限られない。フライホイールダイオード3a,3bは、ノーマルタイプのシリコンダイオードより逆回復電荷が小さいダイオードであればよい。例えば、ファーストリカバリダイオードより逆回復特性をさらに高めたHED(High Efficiency Diode)やLLD(Low Loss Diode)であってもよい。また、ショットキーバリアダイオードであってもよい。
【0052】
また、フライホイールダイオード3a,3bを、シリコンより大きいバンドギャップを有するワイドバンドギャップ半導体(例えば、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)など)を用いたダイオードとしてもよい。ワイドバンドギャップ半導体を用いたダイオードも、ノーマルタイプのシリコンダイオードより逆回復電荷が小さい。
【0053】
また、スイッチング素子2a,2bを、ワイドバンドギャップ半導体を用いたMOSFETとしてもよい。すなわち、スイッチング素子2a,2bおよびフライホイールダイオード3a,3bを、ワイドバンドギャップ半導体を用いたものとしてもよい。また、ワイドバンドギャップ半導体を用いたMOSFETの寄生ダイオードをフライホイールダイオード3a,3bとしてもよい。
【0054】
上記第1実施形態においては、本発明に係るインバータ装置を誘導加熱装置に用いた場合について説明したが、これに限られない。本発明に係るインバータ装置は、ワイヤレス給電装置や溶接電源装置などの他の装置にも用いることができる。本発明に係るインバータ装置をワイヤレス給電装置に用いた場合を、第2実施形態として、以下に説明する。
【0055】
図3は、第2実施形態に係るワイヤレス給電装置を説明するための図である。
【0056】
図3に示すワイヤレス給電装置A2は、高周波電力を送電する送電装置A21、および、送電装置A21が送電した高周波電力を受電する受電装置A22を備えている。
【0057】
送電装置A21は、第1実施形態に係る誘導加熱装置A1と同様の構成であり、図1に示す誘導加熱装置A1と同一または類似の要素には、同一の符号を付している。送電装置A21は、直流電源1が出力する直流電流をインバータ回路2で高周波電流に変換し、コイル5に流すことで、コイル5に発生する磁界を変化させる。制御回路7は、システム効率を最大にするために、インバータ回路2への入力電力を一定にするフェーズシフト制御を行う。
【0058】
受電装置A22は、コイル5に磁気結合するコイル5’、コイル5’に直列接続されて、直列共振回路を構成する共振用コンデンサ6’、および、コイル5’が受電した高周波電力を消費する負荷9を備えている。負荷9は、高周波電力を整流する整流回路と、負荷9全体の抵抗値を最適な値にするために電圧電流比を変化させるDC/DCコンバータを備えている。
【0059】
第1実施形態に係る誘導加熱装置A1がコイル5に発生する磁界を変化させることで、加熱対象物Bに渦電流を発生させるのに対し、送電装置A21は、コイル5に発生する磁界を変化させることで、受電装置A22のコイル5’に高周波電流を発生させる点が異なる。
【0060】
第2実施形態においても、フライホイールダイオード3a,3bをファーストリカバリダイオードとし、フライホイールダイオード3c,3dをノーマルタイプのシリコンダイオードとしているので、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
本発明に係るインバータ装置、誘導加熱装置およびワイヤレス給電装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るインバータ装置、誘導加熱装置およびワイヤレス給電装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0062】
A1 誘導加熱装置
A2 ワイヤレス給電装置
A21 送電装置
A22 受電装置
1 直流電源
2 インバータ回路
2a、2b、2c、2d スイッチング素子(MOSFET)
3a、3b フライホイールダイオード(ファーストリカバリダイオード)
3c、3d フライホイールダイオード(ノーマルタイプのシリコンダイオード)
4a、4b、4c、4d スナバコンデンサ
5,5’ コイル
6,6’ 共振用コンデンサ
7 制御回路
71 電力算出部
72 電力設定部
73 電力制御部
74 パルス信号生成部
741 先行パルス信号生成部
741 追従パルス信号生成部
75 ドライバ
8 インバータ装置
9 負荷
B 加熱対象物
図1
図2
図3